説明

配管固定装置

【課題】耐久性のある金属部材のみから構成でき、各部材間の高い摩擦力を得ることができる配管固定装置を提供する。
【解決手段】配管Pを支持する支持部材2と、この支持部材2に固定される第1の把持部材3と、この第1の把持部材3との間に配管Pを挟んで第1の把持部材3に締め付けられる第2の把持部材4とを具備させて配管固定装置1を構成する。第1又は第2の把持部材3,4の少なくともいずれか一方には、配管Pの外周に圧接される断面円弧状の把持面8,14を具備させる。この把持面8,14には、左右回転方向の異なる少なくとも2条の螺旋溝を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管をそれの軸線方向、軸線直交方向及び回転方向に拘束するための配管固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
発電設備などに備えられる配管を配管支持部材へ固定する部分が、自重、機械荷重、流体振動、熱膨張及び地震などの外力を受けたときに、いずれの方向へも変位しない完全固定端になっている配管支持構造として、特許文献1に記載されたものが知られている。
この配管支持構造は、配管と、配管を支持する配管支持部材と、配管を配管支持部材に固定するバンド金具のような配管固定部材とを具備し、さらに、配管と配管支持部材との間及び配管と配管固定部材との間に、各部材どうしを直接接触させた場合よりも各部材間に作用する摩擦力を高める摩擦力体を挟み込むという構成である。摩擦力体としては、シリコンゴムのような、シート状のゴム状弾性体が用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−196542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この出願に係る発明は、ゴム状弾性体からなる摩擦力体のような耐久性に欠けきらいのある部材を用いることなく、耐久性のある金属部材のみから構成でき、各部材間の高い摩擦力を得ることができる配管固定装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するため、この出願に係る発明においては、配管Pを支持する支持部材2と、この支持部材2に固定される第1の把持部材3と、この第1の把持部材3との間に配管Pを挟んで第1の把持部材3に締め付けられる第2の把持部材4とを具備させて配管固定装置1を構成する。第1又は第2の把持部材3,4の少なくともいずれか一方には、配管Pの外周に圧接される断面円弧状の把持面8,14を具備させる。この把持面8,14には、左右回転方向の異なる少なくとも2条の螺旋溝を形成する。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明の装置によれば、左右回転方向の異なる少なくとも2条の螺旋溝により、軸線方向及び軸回転方向の配管拘束力を発揮する。螺旋溝は、加工が容易で、製造コストも抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る配管固定装置の側面図である。
【図2】図1の配管固定装置の正面図である。
【図3】図1の配管固定装置の平面図である。
【図4】図1の配管固定装置における第1の把持部材の平面図である。
【図5】図1の配管固定装置における第2の把持部材の底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
配管固定装置1は、配管Pを支持する支持部材2と、この支持部材2に固定される第1の把持部材3と、この第1の把持部材3との間に配管Pを挟んで第1の把持部材3にボルト5で締め付けられる第2の把持部材4とを具備する。以下、便宜上、配管Pに対して、支持部材2側を「下方」、その反対側を「上方」として説明するが、配管の延長方向によって、現実の上方、下方とは必ずしも一致しない。
【0009】
図示の実施形態において、支持部材2は、配管Pの下面に接して、配管Pの軸線と直交方向に交差するH型鋼材からなる。支持部材2は、既設の支持架構の一部であってもよい。図示の実施形態において、上下に対向して配管Pを把持する第1、第2の把持部材3,4は、2組が、既設の支持部材2における配管Pの軸線方向両側に対称に設けられるが、1組であってもよい。
【0010】
把持部材3は、それぞれ配管Pの軸線沿って延出する平行一対のリブ6を介して支持部材2に固定される。リブ6は、基端側において、既設の支持部材2の上下フランジ間(下フランジの上面、ウェブの側面及び上フランジの下面に)に溶着され、配管Pの軸線方向(支持部材2の軸線直交方向)に延出する。リブ6の上面と配管Pの外周下面との間には間隙7が形成される。
【0011】
第1の把持部材3は、リブ6の上面と配管Pの外周との間隙7に挿入され、リブ6に溶着される。第1の把持部材3は、断面円弧状の凹面である把持面8を上部に有し、その両側に、ボルト孔10を備えた接続部9を有する。接続部9は、第2の把持部材4とボルト5で結合される。ボルト5の締め付けにより、把持面8は、配管Pの外周に圧接される。接続部9の上面は、把持面8の両端に連続し、第2の把持部材4と突き合わされる平らな接合面11となっている。これらと反対側の下面は、接合面11と平行で平らなベース面12となっている。ベース面12が、リブ6の上面に載せられ、リブ6に溶着される。図4に示すように、把持面8には、左右回転方向の異なる少なくとも2条の螺旋溝13が形成される。
【0012】
第2の把持部材4は、断面円弧状の凹面である把持面14を下部に有し、その両側に、ボルト孔16を備えた接続部15を有する。接続部15は、下面の平らな接合面17を第1の把持部材3の接続部9と上下に突き合わされ、ボルト5で結合される。ボルト5の締め付けにより、把持面14は、配管Pの外周に圧接される。図5に示すように、把持面14には、左右回転方向の異なる少なくとも2条の螺旋溝18が形成される
【0013】
なお、螺旋溝13,18は、必要に応じて、第1、第2の把持部材3,4のいずれか一方のみに形成することができる。支持部材2に対する把持部材3の固定方法は、状況に応じて溶接のほか、ボルトによる結合も選択できる。
【0014】
この配管固定装置は、配管Pを、把持部材3,4により上下から挟み込み、ボルト5により規定のトルクで締結することにより、把持面8,14の溝13,18(又は当該溝間の突条)が配管Pの表面に密着し、拘束力を発揮する。滑り止めの溝は、拘束させたい方向に直角に形成することが望ましいが、この方向に複数の溝を形成することは加工の工数が多くなるためコスト高となる。螺旋溝13,18の加工は、比較的容易で、製作コストを抑えることができる。左右回転方向の異なる2条の螺旋溝13,18は、それぞれ配管Pの逆方向の軸回転変位に対して拘束力を発揮する。
【符号の説明】
【0015】
1 配管固定装置
2 支持部材
3 第1の把持部材
4 第2の把持部材
5 ボルト
6 リブ
7 間隙
8 把持面
9 接続部
10 ボルト孔
11 接合面
12 ベース面
13 螺旋溝
14 把持面
15 接続部
16 ボルト孔
17 接合面
18 螺旋溝
P 配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を支持する支持部材と、この支持部材に固定される第1の把持部材と、この第1の把持部材との間に配管を挟んで第1の把持部材に締め付けられる第2の把持部材とを具備し、
前記第1又は第2の把持部材の少なくともいずれか一方は、配管の外周に圧接される断面円弧状の把持面を具備し、この把持面には、左右回転方向の異なる少なくとも2条の螺旋溝が形成されることを特徴とする配管固定装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の把持部材が、配管の外周に圧接される断面円弧状の把持面を具備し、この把持面には、左右回転方向の異なる少なくとも2条の螺旋溝が形成されることを特徴とする請求項1に記載の配管固定装置。
【請求項3】
前記第1の把持部材が、前記支持部材に固着されるリブを介して支持部材に固定され、
前記リブは、基端側が前記支持部材に溶着され、配管の外周との間に間隔を置いて配管の軸線方向へ延出し、
前記第1の把持部材は、前記リブと配管の外周との間に挿入されてリブに固定されることを特徴とする請求項1に記載の配管固定装置。
【請求項4】
前記リブは、前記支持部材における配管の軸線方向両側に固着され、これら各リブ上に前記第1の把持部材が固定され、これら各第1の把持部材上に前記第2の把持部材が締め付けられることを特徴とする請求項3に記載の配管固定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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