説明

配管接続構造

【課題】安価な配管構造を構成できる配管接続構造を提供する。
【解決手段】ゴム製チューブ5を、ゴム製内側層73と、中間の樹脂製バリア層77と、ゴム製外側層75とから構成する。クイックコネクタ3のチューブ接続部13を、樹脂製バリア層77とゴム製内側層73との間の非接着個所に相対的に差し込む。ゴム製外側層75及び樹脂製バリア層77がチューブ接続部13の外周に全長にわたってきつく嵌り、ゴム製内側層73がチューブ接続部13の大径部31に全長にわたって入り込むようにする。パイプ体7の挿入端部83を軸方向他方側からクイックコネクタ3及びリテーナー11内に相対的に挿入し、パイプ体7の挿入端部83と大径部31とでゴム製内側層73を挟み込んで圧縮する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車のガソリン燃料配管の接続に用いられる配管接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ガソリン燃料配管などの流体配管で、チューブ(流体配管部材)とパイプ体とを接続する接続構造としては、例えば特許文献1に記載されているように、パイプ体の挿入端部の外周面に環状係合突部を形成しておき、この環状係合突部がコネクタのリテーナー手段とスナップ係合するようにパイプ体の挿入端部をコネクタに相対的に挿入嵌合してパイプ体とコネクタとを抜け止め状態とし、このようなコネクタとパイプ体との抜け止め接続を介して、コネクタのチューブ接続部に嵌め付けられているチューブをパイプ体に接続するといった構成のものが用いられている。
【0003】
この配管接続構造では、接続部分の長さを短くして配管構造をコンパクトなものにするために、パイプ体の挿入端部が、コネクタに、チューブ接続部の内周に達するまで相対的に挿入されて接続されるように構成されている。また、コネクタのチューブ接続部とパイプ体の挿入端部との間を効果的に密封するために、チューブ接続部内には複数本の密封用Oリングが配置される。
【0004】
コネクタのチューブ接続部に嵌め付けられるチューブとしては、例えば特許文献2に記載されているような、可撓性に優れたゴム製チューブ(ゴムホース)が好ましい。このようなゴム製チューブはまた、マンドレルを用いて容易に曲げ加工ができるし、径が徐々に変化する形状にも加工することができる。しかしながら、ゴム製チューブでは、チューブ接続部に嵌め付けたときのチューブ接続部に対する十分な締め付け力を確保することができないので、チューブ接続部への嵌め付け部分をクランプ部材で締め付け固定する必要がある。ところが、自動車配管などでは、部品が密集している狭い個所に配管接続構造を構成しなければならないので、ゴム製チューブの端部外周に外側に突出する形状のクランプ部材を取り付けることができないといった場合もあり、こういった理由で樹脂製チューブも多く用いられている。
【0005】
【特許文献1】特開2005−155910
【特許文献2】特開2007−292303
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、樹脂製チューブでは、チューブに可撓性を付与するために蛇腹部を形成しなければならない。また、チューブを予め曲げ形状に形成しておく場合には、チューブに蛇腹部を形成した後に、このチューブを金型に収容し、加熱して必要な曲げ形状を形成するので、チューブ製造作業が煩雑である。したがって、このような樹脂製チューブを用いると配管構造がコストの高いものとなってしまう。さらに、樹脂製チューブでは径が徐々に変化する形状は成形し難いし、例えばフィラー配管にこのような蛇腹樹脂チューブを用いると、蛇腹部によって注入燃料に泡立ちが生じてしまい、給油不良が発生するおそれもある。
【0007】
また、ここで使用されているコネクタは、例えば図7に示すようにして組み立てられる。すなわち、まずコネクタハウジングAのチューブ接続部B内に、軸方向一端側から、OリングC、スペーサブッシュD、別のOリングE及び筒状ブッシュFを組み込み(a)、軸方向一方側に密封構造を備えたコネクタハウジングAを構成する(b)。次に、コネクタハウジングAのリテーナー保持部G内に、軸方向他方側からリテーナーHを配置して(c)、コネクタIを組み立てる(d)。そして、このように構成されたコネクタIのチューブ接続部Bの外周に、図8に示すように、配管チューブJをきつく嵌め付け(a)、コネクタ付配管チューブKが構成される(b)。
【0008】
ここで、OリングC、スペーサブッシュD、別のOリングE及び筒状ブッシュFは、一括して一度にチューブ接続部B内に組み込まれるわけではなく、一つずつチューブ接続部B内に仮圧入していき、最後にこれらの内装部品を組み込んでいる。したがって、このような構造のコネクタを用いると、内装部品点数が多いだけでなく、内装部品の組み込み作業に手間がかかるため、コネクタが価格の高いものとなって配管接続のコストが増大する。また、Oリングの数を減らして内装部品の組み込みコストを削減すると、パイプ体の挿入端部とコネクタのチューブ接続部との間の密封機能が低下する。
【0009】
そこで本発明は、このような不都合の少なくとも1つを解消できる配管接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するための本発明の配管接続構造は、軸方向一方側に筒状のチューブ接続部が形成され、軸方向他方側にリテーナー手段が設けられたコネクタと、このコネクタの前記チューブ接続部に接続された配管チューブと、前記コネクタに、軸方向他方側から相対的に挿入されて前記リテーナー手段により抜け止めされた挿入端部を有するパイプ体と、を具備する配管接続構造であって、前記配管チューブは、ゴム製内側層及びこのゴム製内側層の外側に積層されたゴム製外側層を有する積層構造を備えたゴム製チューブであり、前記ゴム製内側層が前記チューブ接続部の内周に嵌り込み、前記ゴム製外側層が前記チューブ接続部の外周にきつく被さった状態で前記チューブ接続部に接続されていて、前記パイプ体の前記挿入端部は、前記チューブ接続部内まで延びるように前記コネクタ内に挿入され、前記ゴム製内側層を前記チューブ接続部とで圧縮するように挟み付けているものである。ゴム製外側層をチューブ接続部の外周にきつく被せ又は嵌め付け、ゴム製内側層をパイプ体の挿入端部及びチューブ接続部で挟み付けることにより、ゴム製チューブとコネクタのチューブ接続部との間に必要な抜け止め力を確保することが可能となるので、ゴム製チューブの端部を締め付けるクランプ部材を使用しなくても、ゴム製チューブとチューブ接続部とを抜け止め接続することができる。また、パイプ体の挿入端部とコネクタとの間は、ゴム製チューブのゴム製内側層をシール手段として密封される。配管チューブのゴム製内側層をシール手段として用いるため、チューブ接続部内のOリングやブッシュを省略したり、Oリングの数を減らしたりすることができる。さらに、パイプ体とコネクタ(チューブ接続部)とは、ゴム製内側層を介して回り止めされるので、配管接続部分へのエンジン振動などの伝達により、パイプ体とコネクタとが相対的に回動することが防止される(配管チューブとしてゴム製チューブを用いているので、振動がゴム製チューブで吸収され、振動の配管接続部分への伝達自体が緩和されて、回り止め効果がそれだけ大きくなる)。したがって、例えばチューブ接続部内にOリングを設ける場合には、このOリングの磨耗を効果的に防ぐことができる。しかも、この配管接続構造では、配管チューブをコネクタのチューブ接続部に嵌め付ける際に、同時にシール手段を構成することができる。
【0011】
チューブ接続部の内周に嵌り込んでいる配管チューブのゴム製内側層の軸方向長さは、チューブ接続部の軸方向長さの半分を超えていることが好ましい。このように構成することにより、ゴム製内側層とチューブ接続部との間の抜け止め力及びゴム製内側層を介したコネクタとパイプ体との回り止め力を十分な大きさのものとすることができる。また、コネクタのチューブ接続部とパイプ体の挿入端部との間を十分長い範囲にわたってシールすることが可能となる。
【0012】
配管チューブの積層構造は、配管チューブが内部流体に対する耐透過性を有するように樹脂製バリア層を備えることが好ましい。そして、この樹脂製バリア層をゴム製外側層の内側に設けておき、チューブ接続部に、樹脂製バリア層及びゴム製外側層を被せるように嵌め付ければ、樹脂製バリア層とチューブ接続部との間の大きな係合力により、配管チューブのチューブ接続部に対する抜け止め力が大きくなる。樹脂製バリア層は、例えば、チューブ接続部に直接被せられる。
【0013】
コネクタとパイプ体の挿入端部との間が、チューブ接続部の内周に嵌め込まれた配管チューブのゴム製内側層よりも軸方向他方側に配置されている防水・防塵性の環状シール部材で密封されていれば、配管チューブのゴム製内側層とパイプ体との間に異物が侵入することを効果的に防止できる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明の配管接続構造を用いれば、ゴム製チューブを使用して効果的な配管構造を構成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明に係る配管接続構造を示す斜視図、図2はこの配管接続構造で用いられているクイックコネクタの斜視図、図3はクイックコネクタの断面図である。この配管接続構造は、自動車のガソリン燃料配管、より具体的には、給油口と燃料タンクとの間のフィラー配管に用いられる。
【0017】
配管接続構造1は、樹脂製のクイックコネクタ3と、このクイックコネクタ3の軸方向一方側に嵌め付けられたゴム製のフィラーホース(ゴム製の配管チューブ又はゴム製チューブ)5と、クイックコネクタ3に軸方向他方側から相対的に挿入された、車体側又は燃料タンクから突出する金属製のパイプ体7と、を備えている。
【0018】
クイックコネクタ3は、筒状のコネクタハウジング9と、ほぼ環状のリテーナー11と、を備えて構成されている。コネクタハウジング9はガラス繊維強化ポリアミド(PA+GF)を素材として形成され、軸方向一方側の円筒状のチューブ接続部13と、軸方向他方側のほぼ円筒状のリテーナー保持部15とから一体的に構成され、軸方向一端から軸方向他端に貫通する貫通孔17を有している。チューブ接続部13は、外周面が軸方向他方側に向かって緩やかに拡径する断面直角三角形状の軸方向一方側部19と、軸方向一方側部19の軸方向他方側でほぼ単純な円筒状に延びている外周面に、断面四角形状の抜け止め環状突出部21及び軸方向他方側に向かって拡径する断面直角三角形状の2本の抜け止め環状突出部23、23が、軸方向一方側から軸方向他方側に向かって順次、軸方向に間隔を有して形成された軸方向他方側部25と、から構成され、外周又は外周面にゴム製チューブ又はゴム製フィラーホース5がきつく嵌め付けられて接続される。軸方向他方側部25の軸方向一端外周面27(軸方向一方側部19と抜け止め環状突出部21との間)は小径にあるいは深い環状溝として形成されていて、この軸方向一端外周面27には、チューブ接続部13とゴム製チューブ5との間を密封するシール用Oリング29が嵌め付けられる(特に図3参照)。
【0019】
チューブ接続部13の内周面は、軸方向一方側の大径部31と、軸方向他方側の小径部33と、から形成され、大径部31の軸方向長さは、小径部33の軸方向長さよりも長く、チューブ接続部13の軸方向長さのほぼ70%となっている。小径部33には環状のシール溝35が形成され、このシール溝35内にはOリング37が嵌め込まれている。Oリング37には、フッ素ゴム(FKM)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、NBRとポリ塩化ビニルとのブレンド(NBR+PVC)、フロロシリコーンゴム(FVMQ)、エチレン・プロピレン・ジエン重合体ゴム(EPDM)又はサーモプラスチックオレフィン(TPO)などの防水・防塵性を有する弾性材料を用いることができる。
【0020】
ほぼ円筒状のリテーナー保持部15には、径方向対称位置に対向して同一構造の係合窓39、39が形成され、係合窓39、39の間のそれぞれの外周面には、径方向対称に位置するように、同一形状の平面部分41、41が設けられていて、平面部分41はリテーナー保持部15の軸方向全長にわたって形成され、かつ、リテーナー保持部15の外径のほぼ3分の1の幅(周方向の長さ)を有している。それぞれの平面部分41の軸方向一方側には、軸方向に僅かの間隔を設けて2本の同一形状の突条43、43が平行して周方向に延びるように形成されていて、それぞれの突条43は平面部分41の全幅にわたって延びている。一対のこの突条43、43間にはパイプ体7とクイックコネクタ3との接続状態を確認するためのチェッカー(図示せず)が取り付けられる。
【0021】
それぞれの平面部分41の軸方向他方側には、幅方向中間に互いに同一形状の膨出部45が形成されていて、この膨出部45は、突条43と同一の突出高さを有して、平面部分41の軸方向他端から軸方向他方側の突条43に接続されるまで軸方向に延びている。
【0022】
リテーナー保持部15内にはPA製のリテーナー11が嵌め付けられていて、このリテーナー11は比較的柔軟であり、弾性変形可能なように形成されている。リテーナー11は、軸方向他端部の径方向対称位置に、径方向外側に突出した一対の同一形状の係合爪部47、47が形成されている、周方向両端部間に比較的大きな変形用隙間が設けられた断面C形(ほぼ環状形)の本体部49を有し、この本体部49の内面は、変形用隙間と対向する部分を除いて軸方向一方側に向かって縮径する状態に形成されている。なお、符号51は、本体部49の軸方向一方側に、細い区分け片53を介して周方向又は幅方向に並んで形成された、2つの同一形状の切欠状凹部を示し、また、符号55は、変形用隙間と対向する本体部49部分の外面に設けられた、断面四角形状(長方形状)の係合凸部(軸方向に短く延びている)を示す。
【0023】
リテーナー11の本体部49の軸方向他端部には、係合爪部47、47と対応した位置から軸方向他方側に向かって径方向外側に傾斜して延びる一対の操作アーム57、57が一体的に設けられていて、それぞれの操作アーム57の軸方向他端部には径方向外側に突出した操作端部59が形成されている。本体部49の軸方向一方側にはまた、周方向に延びる係合スリット61、61が対向して形成されていて、このような構成のリテーナー11は、係合爪部47が、リテーナー保持部15の係合窓39内に入り込んで係合窓39の軸方向他端63と係合状態あるいは係合可能状態となり、操作端部59、59が、リテーナー保持部15の軸方向他端部に係合窓39、39と対応して形成された一対の収容凹部65、65に嵌まり込んで係合状態となるように、軸方向他端開口からリテーナー保持部15内に押し込まれて嵌め付けられている。リテーナー保持部15の軸方向他端部に収容凹部65を形成し、この収容凹部65内に操作アーム57の操作端部59を収めることにより、また、操作端部59がリテーナー保持部15の外周面から大きくは突出しないようにすることにより、操作端部59、したがってリテーナー11に不意に外力が加わりにくい構造となっている。操作アーム57、57から係合スリット61、61まで延びる、リテーナー11の対向している断面円弧状の内面67、67はそれぞれ、軸方向一方側に向かって中心又は中心軸方向にほぼテーパ状に傾斜している。
【0024】
リテーナー保持部15の内周面には、それぞれの膨出部45位置で、この膨出部45に沿って、軸方向他端から膨出部45の軸方向一端まで延びる断面四角形状(長方形状)の係合凹部69が形成され、この係合凹部69の断面形状は、例えば、軸方向他端部を除いて、リテーナーの係合凸部55の断面形状とほぼ同一に形成されていて、係合凸部55は、リテーナー11をリテーナー保持部15に嵌め付けるときに、係合凹部69内又は係合凹部69の軸方向一方側内に挿入されて嵌め込まれ、この係合凹部69と周方向に係合している(係合凹部69の軸方向他端部は係合凸部55よりも大きな断面形状に形成されて導入ガイド部を形成している)。また、リテーナー保持部15の内周面の軸方向一端部には、径方向内側に薄く突出する、同一形状の2つの回止突出部71、71が設けられ、この回止突出部71はリテーナー11の切欠状凹部51とほぼ同一の形状に形成されていて、それぞれの回止突出部71は、リテーナー11をリテーナー保持部15に嵌め付けるときに、それぞれの切欠状凹部51に嵌め込まれた状態となり、この切欠状凹部51と周方向に係合している。なお、リテーナー11を図1に示す状態から180度回転させた状態でもリテーナー保持部15内に同様に嵌め付けることができるように、回止突出部71、71は径方向対称位置に1組ずつ形成されている。なお、図示されたものでは、係合凹部69の断面形状と、係合凸部55の断面形状とは同一に形成されているが、必ずしも係合凹部69と係合凸部55とを同一断面形状とする必要はなく、リテーナー11の周方向、あるいは周方向かつ径方向の移動を規制できるような種々の断面形状関係で係合凹部69と係合凸部55とを形成することができる。
【0025】
図4はゴム製チューブ又はゴム製フィラーホース5の端部の断面図である。
【0026】
ゴム製チューブ5は、ゴム製内側層73及びゴム製外側層75の間に樹脂製バリア層77を介在させた積層構造を有していて、各層間の接着強度は10N/25mmを超え、各層は互いに強固に接着している。なお、密着強度を測定したサンプルでは、層同士が剥離する前に母材が破壊されてしまった。ゴム製チューブ5の端部では、ゴム製内側層73と樹脂製バリア層77とが非接着状態で分離し、かつ、ゴム製内側層73よりも樹脂製バリア層77及びゴム製外側層75が外側に長く延びている。ゴム製内側層73と樹脂製バリア層77との非接着状態の開始端79から樹脂製バリア層77及びゴム製外側層75の外端までの長さは、クイックコネクタ3のチューブ接続部13外周の軸方向長さにほぼ等しく、また、非接着状態の開始端79からゴム製内側層73の外端までの長さは、チューブ接続部13の大径部31の軸方向長さにほぼ等しい。なお、ゴム製チューブ5のこのような端部構造を形成するには、ゴム製チューブ5の成形後に、加硫に先立って、中空円筒形のスペーサ(図示せず)をゴム製チューブ5の端部のゴム製内側層73と樹脂製バリア層77との間に挿入し、このスペーサが挿入されている状態でゴム製チューブ5の加硫を行い、その後、ゴム製内側層73の先端部を切断すればよい。
【0027】
ゴム製内側層73の材料としては、NBR(全体に対するアクリロニトリル量30質量%以上)、NBR+PVC(全体に対するアクリロニトリル量30質量%以上)、FKM又は水素添加NBR(H−NBR)などを用いることができる。また、ゴム製内側層73の厚みは1.0乃至2.5mmとすることができる。樹脂製バリア層77の材料としては、フッ化ビニリデンと六フッ化プロピレンと四フッ化エチレンとの少なくとも3元共重合体から成る熱可塑性フッ素樹脂(THV)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、エチレンテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン‐ビニルアルコール(EVOH)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)などを用いることができる。また、樹脂製バリア層77の厚みは0.03乃至0.3mmとすることができる。ゴム製外側層75の材料としては、NBR、NBR+PVC(全体に対するアクリロニトリル量30質量%以上)、エピクロルヒドリン‐エチレンオキサイド共重合ゴム(ECO)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、アクリルゴム(ACM)、NBRとACMとのブレンド(NBR+ACM)、エチレン‐プロピレン‐ジエンゴム(EPDM)、NBRとEPDMとのブレンド(NBR+EPDM)、ブチルゴム(IIR)等を用いることができる。また、ゴム製外側層75の厚みは1.0乃至3.0mmとすることができる。
【0028】
なお、ゴム製内側層73を単層ではなく、複数のゴム層で形成することができる。また、ゴム製外側層75も単層ではなく、複数のゴム層で形成することができる。
【0029】
図5は配管接続構造1の構成過程を説明する図であり、クイックコネクタとゴム製チューブ5との接続過程を示す図、図6は、配管接続構造1の断面図である。
【0030】
配管接続構造1を構成するには、まず、ゴム製チューブ5をクイックコネクタ3のチューブ接続部13に嵌め付ける。ゴム製チューブ5の嵌め付けは、チューブ接続部13を、樹脂製バリア層77とゴム製内側層73との間の非接着個所81に相対的に差し込むことにより行なう(図5a)。ここでは、ゴム製外側層75及び樹脂製バリア層77の先端をフレア加工(処理)しておき、ゴム製外側層75及び樹脂製バリア層77の先端がもとの形状に復帰する前に、チューブ接続部13を、樹脂製バリア層77とゴム製内側層73との間にすばやく差し込む。そうすると、ゴム製外側層75及び樹脂製バリア層77がチューブ接続部13の外周に全長にわたってきつく嵌り、また、ゴム製内側層73がチューブ接続部13の大径部31に全長にわたって挿入される(図5b)。この状態では、非接着状態の開始端79は、チューブ接続部13の先端近くに位置している。また、例えば、ゴム製内側層73の外周面は大径部31に接触し又は押し付けられている。そして、チューブ接続部13の外周に直接接触しているのは樹脂製バリア層77であり、チューブ接続部13の抜け止め環状突出部21、23はこの樹脂製バリア層77に直接食い込んでいるので、チューブ接続部13とゴム製外側層75側は強固に抜け止めされることとなる。ゴム製内側層77の外径は、大径部31の内径と同一又はほぼ同一に設定できる。また、ゴム製内側層73の厚みは、すでに述べたように、1.0乃至2.5mmとすることができるが、さらに、大径部31の半径と小径部33の半径との差(大径部31の深さ)よりも若干大きく(例えば20%大きく)なるように設定しておく。すなわち、ゴム製内側層73は、小径部33よりも内側に突出するように形成される。
【0031】
次に、パイプ体7の挿入端部83を軸方向他方側からクイックコネクタ3及びリテーナー11内に相対的に挿入し、パイプ体7の挿入端部83の外周に形成されている環状係合突部85をリテーナー11の係合スリット61内に係合(スナップ係合)させる。パイプ体7は、環状係合突部85の係合スリット61への係合(嵌り込み)により、クイックコネクタ3に抜け止め状態で接続されることとなる(図6)。パイプ体7の挿入端部83の外径は、チューブ接続部13の小径部33の内径と同一又はほぼ同一に設定されているので、ゴム製内側層73の内径(パイプ体7が挿入されていないときの内径)よりも若干大きくなっている。そして、この状態では、パイプ体7の挿入端部83の挿入端(先端)は、チューブ接続部13の軸方向一端(先端)近くまで達していて、挿入端部83は、大径部31内に挿入されたゴム製内側層73を、大径部31とで挟み込んで圧縮している。したがって、チューブ接続部13とゴム製内側層73は強固に抜け止めされることとなる。また、パイプ体7の挿入端部83とチューブ接続部13の大径部31との間は、この圧縮されたゴム製内側層73によって良好に密封される。そして、チューブ接続部13外周のOリング27は、チューブ接続部13と樹脂製バリア層77との間を密封し、小径部35のOリング37は、パイプ体7の挿入端部83と小径部33との間を密封する。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明したように、本発明の配管接続構造は、例えば自動車のフィラー配管に使用されて、配管コストの低減などを達成する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明に係る配管接続構造を示す斜視図である。
【図2】配管接続構造で用いられているクイックコネクタの斜視図である。
【図3】クイックコネクタの断面図である。
【図4】ゴム製チューブの端部の断面図である。
【図5】配管接続構造の構成過程を説明する図であり、クイックコネクタとゴム製チューブとの接続過程を示す図である。
【図6】配管接続構造の断面図である。
【図7】従来のコネクタの組み立て過程を示す図である。
【図8】従来のコネクタと配管チューブとの組み付け過程を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
1 配管接続構造
3 クイックコネクタ
5 ゴム製チューブ(配管チューブ)
7 パイプ体
11 リテーナー(リテーナー手段)
13 チューブ接続部
15 リテーナー保持部
73 ゴム製内側層
75 ゴム製外側層
77 樹脂製バリア層
83 挿入端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向一方側に筒状のチューブ接続部が形成され、軸方向他方側にリテーナー手段が設けられたコネクタと、このコネクタの前記チューブ接続部に接続された配管チューブと、前記コネクタに、軸方向他方側から相対的に挿入されて前記リテーナー手段により抜け止めされた挿入端部を有するパイプ体と、を具備する配管接続構造であって、
前記配管チューブは、ゴム製内側層及びこのゴム製内側層の外側に積層されたゴム製外側層を有する積層構造を備えたゴム製チューブであり、前記ゴム製内側層が前記チューブ接続部の内周に嵌り込み、前記ゴム製外側層が前記チューブ接続部の外周にきつく被さった状態で前記チューブ接続部に接続されていて、
前記パイプ体の前記挿入端部は、前記チューブ接続部内まで延びるように前記コネクタ内に挿入され、前記ゴム製内側層を前記チューブ接続部とで圧縮するように挟み付けている、ことを特徴とする配管接続構造。
【請求項2】
前記チューブ接続部の内周に嵌り込んでいる前記配管チューブの前記ゴム製内側層の軸方向長さは、前記チューブ接続部の軸方向長さの半分を超えている、ことを特徴とする請求項1記載の配管接続構造。
【請求項3】
前記配管チューブの前記積層構造は、前記ゴム製外側層の内側に樹脂製バリア層を有し、この樹脂製バリア層及び前記ゴム製外側層が前記チューブ接続部の外周にきつく被さっている、ことを特徴とする請求項1又は2記載の配管接続構造。
【請求項4】
前記コネクタと前記パイプ体の前記挿入端部との間には、前記チューブ接続部の内周に嵌め込まれた前記配管チューブの前記ゴム製内側層よりも軸方向他方側で、防水・防塵性の環状シール部材が配置されている、ことを特徴とする請求項1、2又は3記載の配管接続構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−243493(P2009−243493A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−87696(P2008−87696)
【出願日】平成20年3月28日(2008.3.28)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】