説明

配管用フランジ継手構造

【課題】配管に外装したフランジの自重による配管軸方向に沿う移動を防止できて、管継手への配管の接続作業性を向上できる配管用フランジ継手構造の提供。
【解決手段】フランジ継手構造は、管継手7Aの本体8側に設けられた本体側フランジ部13を有した接続口部11に、配管4の端部4aを挿入させて、配管4に外装した円環状のフランジ17と本体側フランジ部13とを、ナット24止めするボルト23を挿通させて、相互に締結することにより、フランジ17と本体側フランジ部13との間に配設した円環状のシール用パッキン15を圧縮しつつ配管4の外周面に圧接させて、管継手7Aに配管4を接続させる。フランジ17の内周側には、配管4への外装時、フランジ17を配管4の軸方向に沿って移動可能で、かつ、フランジ17の自重による配管4の軸方向に沿う移動を防止可能として、配管4の外周面に当接する滑り止め材19が、配設されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管を管継手に接続させるフランジ継手構造に関し、特に、排水用の立て管を接続する際に好適となる配管用フランジ継手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の配管用フランジ継手構造では、管継手が、排水立て管の端部を挿入させる接続口部を備えた本体と、本体と別体とした円環状のフランジと、を備えて構成されていた(例えば、特許文献1参照)。接続口部には、外周面側に本体側フランジ部が配設されていた。さらに、フランジと本体側フランジ部との間には、フランジと本体側フランジ部との両者をボルトとナットとを利用して締結する際に、圧縮して立て管外周面に圧接させるための円環状のシール用パッキンを、配設させていた。
【0003】
そして、例えば、スラブに敷設した管継手に対して、下方から立て管を接続させるような場合には、まず、立て管の上端に、フランジを外装するとともに、シール用パッキンを嵌め、その状態で、管継手本体の接続口部に対し、下方から立て管の上端を挿入させて、さらに、ボルトを、本体側フランジ部の上方側から、フランジを貫通するまで、挿通させ、そして、各ボルトにナットを締め付けて、立て管を管継手に接続させていた。
【特許文献1】特開2001−108169公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の配管用フランジ継手構造では、立て管の上端にフランジを外装した後から、本体側フランジ部とフランジとに挿通させた各ボルトにナットを締め付けるまで、フランジが、自重により、立て管に沿って移動あるいは落下する場合があるため、移動しないようにフランジを保持しつつ、立て管を接続口部に挿入させたり、ボルトやナットを操作することとなって、接続時の作業性に課題があった。
【0005】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、配管に外装したフランジの自重による配管軸方向に沿う移動を防止できて、管継手への配管の接続作業性を向上させることができる配管用フランジ継手構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るフランジ継手構造は、管継手の本体側に設けられた本体側フランジ部を有した接続口部に、配管の端部を挿入させて、
配管に外装した円環状のフランジと本体側フランジ部とを、ナット止めするボルトを挿通させて、相互に締結することにより、
フランジと本体側フランジ部との間に配設した円環状のシール用パッキンを圧縮しつつ配管外周面に圧接させて、管継手に配管を接続させる構成の配管用フランジ継手構造であって、
フランジの内周側に、配管への外装時、フランジを配管の軸方向に沿って移動可能で、かつ、フランジの自重による配管の軸方向に沿う移動を防止可能として、配管外周面に当接する滑り止め材が、配設されていることを特徴とする。
【0007】
本発明に係る継手構造では、フランジを配管に外装させた際、フランジの内周側に配設された滑り止め材が、フランジを配管の軸方向に沿って移動可能で、かつ、フランジの自重による配管の軸方向に沿う移動を防止可能として、配管外周面に当接することから、上下方向に配設された配管に対して外装したフランジから、手を離しても、フランジは、配管に沿って移動したり落下しない。また、フランジは、手で持って力を加えれば、配管に沿って移動させることも可能であることから、配管の所定位置に容易に配置させることができて、ボルトを挿通させてナットを締め付ける作業が簡単に行え、配管を管継手に接続させる作業性が、良好となる。
【0008】
したがって、本発明に係る配管用フランジ継手構造では、配管に外装したフランジの自重による配管軸方向に沿う移動を防止できて、管継手への配管の接続作業性を向上させることができる。
【0009】
そして、滑り止め材は、内周側の先端を、配管外周面に圧接可能で、かつ、配管への外装後の移動時に配管の軸方向に沿って反転するように撓み可能な撓み片部、を設けて構成することが望ましい。
【0010】
このような構成では、フランジを上下方向に配設させた配管の上端側から下方に移動させるように外装する際、滑り止め材の撓み片部が、先端の内周側を上方に湾曲させるように撓ませて、容易に、配管の外周面上を滑らせて、フランジを下降させることができる。そしてその後、フランジを上昇させれば、撓み片部を、先端の内周側を下向きとするように、配管の軸方向に沿って反転させることができ、その撓み片部の先端を下向きにした状態は、配管の外周面に対して、フランジの自重による移動や落下に対して強く抵抗できるように、楔のように撓み片部を当接させる状態となることから、フランジの自重による移動や落下を確実に防止できる。勿論、この時、撓み片部は、先端側を下向きに撓ませており、フランジを本体側フランジ部に接近させるような上昇移動は、支障無く行えることから、フランジを本体側フランジ部に容易に接近させることができて、ボルト止め作業が容易となり、一層、配管の接続作業性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明すると、実施形態では、図1に示すように、スラブ1・2間に配置されている配管としての排水立て管4が、その上端4aを、フランジ継手構造として、管継手7(7A)に対して、接続させている。なお、立て管4の下端4b側は、直管形式の接続構造として、単に、管継手7(7B)の本体8における上端側の接続口部10に、挿入させて、接続させている。
【0012】
管継手7(7A・7B)は、筒状の本体8が、横枝管5を接続可能な接続口部9、立て管4の下端4bを直管形式で接続可能な接続口部10、及び、立て管4の上端4aをフランジ継手構造で接続可能な接続口部11、を備えて構成されている。
【0013】
接続口部10には、内周側に、立て管4の下端4bを受ける受け面10aが形成され、接続口部9と同様に、円環状のパッキンが装着されている。
【0014】
接続口部11は、図1・2に示すように、立て管4の上端4aを挿入させて受け可能な段差凹部12が配設され、段差凹部12の段差面12aに上端4aを当接可能に構成されている。また、段差凹部12の下端の内周縁には、円環状のシール用パッキン15を配設させるための開口端側に拡径するように配設された凹溝12bが、形成されている。さらに、接続口部11の外周面側には、本体側フランジ部13が突設され、フランジ部13には、ボルト23を挿通させるための上下方向に貫通する挿通孔13aが、三箇所に配設されている。
【0015】
本体側フランジ部13に対応して、立て管4の上端4aに外装されるフランジ17は、図1〜4に示すように、フランジ部13の外形形状と略一致するような円環状として、本体18と、本体18の内周面18a側に固着された滑り止め材19と、を備えて構成されている。本体18は、円環状として、管継手本体8とともに鋳鉄等の金属製としている。そして、本体18は、本体側フランジ部13の内周側の凹溝12bに対応して、パッキン15を受け可能な凹溝18bを備えるとともに、本体側フランジ部13の各挿通孔13aに対応して、ボルト23を挿通させる三個の挿通孔18cを備えて、構成されている。
【0016】
滑り止め材19は、エチレン・プロピレンゴム、ポリオレフィン系・ポリエチレン系の熱可塑性エラストマー等のゴムや合成樹脂等のゴム状弾性体として、本体18に接着剤や加硫接着を利用して、本体18の内周面18aに固着されている。そして、滑り止め材19は、図3・4に示すように、本体18の内周面18aに固着された厚肉の円筒状の固着部20と、固着部20の内周面から内周側へ先細りの断面で突出する撓み片部21と、を備えて構成されている。
【0017】
このフランジ17は、図4に示すように、滑り止め材19の固着部20の内径寸法d0が、立て管4の外径寸法Dより、大きく、また、撓み片部21の内径寸法d1が、立て管4の外径寸法Dより、小さく設定されている。そして、撓み片部21の固着部20から突出する長さや肉厚は、フランジ17を立て管4の上端4a(端部)側に外装した際、フランジ17を立て管4の軸方向に沿って移動可能で、かつ、自重でのフランジ17の移動や落下を防止可能として、立て管4の外周面に圧接可能な寸法に設定されている。さらに、撓み片部21の先端21a側は、断面が徐々に薄くなるように設定されて、立て管4への外装後におけるフランジ17の立て管軸方向に沿う移動時に、先端21a側が、立て管4の軸方向に沿って反転するように撓み可能な肉厚に、設定されている。
【0018】
実施形態のフランジ継手構造では、スラブ1に敷設した管継手7Aに対して、下方から立て管4を接続させる場合には、まず、図4のA〜Cに示すように、立て管4の上端4a側に、フランジ17を外装するとともに、図5のAに示すように、シール用パッキン15を嵌め、その状態で、図5のA・Bに示すように、管継手本体8の接続口部11に対し、下方から立て管4の上端4aを挿入させて、さらに、各ボルト23を、本体側フランジ部13の上方側から、挿通孔13a・18cを経て、フランジ17を貫通するまで、挿通させ、そして、図6のA・Bに示すように、各ボルト23にナット24を締め付けて、フランジ17とフランジ部13とで挟持したパッキン15を、圧縮しつつ立て管4の外周面に圧接させれば、管継手7Aに排水立て管4を接続させることができる。
【0019】
そして、実施形態のフランジ継手構造では、図4に示すように、フランジ17を立て管4に外装させた際、フランジ17の内周側に配設された滑り止め材19が、フランジ17を立て管4の軸方向に沿って移動可能で、かつ、フランジ17の自重による立て管4の軸方向に沿う移動や落下を防止可能として、立て管4の外周面に当接することから、外装したフランジ17から手を離しても、フランジ17は、立て管4に沿って移動したり落下しない。また、フランジ17は、立て管4に沿って移動させることも可能であることから、立て管4の所定位置に容易に配置させることができて、ボルト23を挿通させてナット24を締め付ける作業が簡単に行え、立て管4を管継手7Aに接続させる作業性が、良好となる。
【0020】
したがって、実施形態の立て管用フランジ継手構造では、立て管4に外装したフランジ17の自重による立て管4の軸方向に沿う移動を防止できて、管継手7Aへの立て管4の接続作業性を向上させることができる。
【0021】
そして、実施形態では、滑り止め材19が、内周側の先端21aを、立て管4の外周面に圧接可能で、かつ、立て管4への外装後の移動時に立て管4の軸方向に沿って反転するように撓み可能な撓み片部21、を設けて、構成されている。
【0022】
このような構成では、図4のAに示すように、フランジ17を立て管4の上端4a側から下方に移動させるように外装する際、滑り止め材19の撓み片部21が、先端21aの内周側を上方に湾曲させるように撓ませて、容易に、立て管4の外周面上を滑らせて、フランジ17を下降させることができる。そしてその後、図4のB・Cに示すように、フランジ17を上昇させれば、撓み片部21を、先端21aの内周側を下向きとするように、立て管4の軸方向に沿って反転させることができ、その撓み片部21の先端21aを下向きにした状態は、立て管4の外周面に対して、フランジ17の自重による移動や落下に対して強く抵抗できるように、楔のように撓み片部21を当接させる状態となることから、フランジ17の自重による移動や落下を確実に防止できる。勿論、この時、撓み片部21は、先端21a側を下向きに撓ませており、フランジ17を本体側フランジ部13に接近させるような上昇移動は、支障無く行えることから、フランジ17を本体側フランジ部13に容易に接近させることができて、ボルト23止め作業が容易となり、一層、立て管4の接続作業性を向上させることができる。
【0023】
なお、このような撓み片部21は、滑り止め材19の内周側に連続的に配設されていなくとも、フランジ17の自重による立て管4の軸方向に沿う移動や落下が防止できれば、立て管4の外周面の複数箇所に当接するように、断続的に配設されていてもよい。
【0024】
また、滑り止め材の撓み片部が、内周側の先端を、立て管(配管)の外周面に圧接可能で、かつ、配管への外装後の移動時に配管の軸方向に沿って反転するように撓み可能とし、楔のように先端を配管外周面に当接可能であれば、撓み片部21のようなリップ状でなくとも、図7〜9に示すフランジ17Aの滑り止め材19Aのように、本体18に固着された固着部20Aに多数の針状の撓み片22を接合させて形成したブラシ状の撓み片部21A、としてもよい。なお、撓み片22は、合成樹脂等からなる可撓性を有した短い線材から、形成されている。
【0025】
勿論、反転可能な撓み片部の構成を考慮しなければ、単に、滑り止め材の内周側に、配管(立て管)4の外周面に対し、反転不能として、連続状若しくは断続的に当接する凸部、を設けて、滑り止め材を構成してもよい。
【0026】
また、実施形態では、シール用パッキン15と別体として、フランジ17の内周側に滑り止め材19を配設したが、滑り止め材19からシール用パッキン15の部位を延設させるように構成してもよい。但し、このように、パッキン15を滑り止め材19と一体的に形成する場合には、配管4に外装したフランジ17を配管軸方向に沿って移動させる際の容易さを考慮すれば、パッキン15の内径寸法を配管4の外径寸法より大きくする必要が生ずる。一方、管継手7への配管4の接続時には、パッキン15の配管4への圧接力を一定に確保する必要が生ずる。そのため、フランジ17と本体側フランジ部13とを締結する際、フランジ17と本体側フランジ部13とによるパッキン15の圧縮力を高めて、両者を締結する必要が生ずる。
【0027】
さらに、実施形態の配管用フランジ継手構造では、上下方向に配設された配管(立て管)4の上端4aを管継手7Aの下部側に接続させる場合を示したが、配管の下端側を管継手の上部側に接続させる場合に適用してもよく、さらに、本発明に係る配管用フランジ継手構造は、上下方向に配置される配管ばかりでなく、水平方向に配設される配管のフランジ継手構造に利用してもよく、その場合でも、不用意に、フランジを移動させないことから、配管の接続作業性を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る一実施形態のフランジ継手構造を示す断面図である。
【図2】同実施形態のフランジ継手構造の拡大部分断面図である。
【図3】同実施形態のフランジの底面図である。
【図4】同実施形態の接続作業を順に示す説明図である。
【図5】同実施形態の接続作業を順に示す説明図であり、図4の後の状態を示す。
【図6】同実施形態の接続作業を順に示す説明図であり、図5の後の状態を示す。
【図7】実施形態のフランジの変形例を示す底面図である。
【図8】図7に示したフランジの撓み片部の反転状態を順に示す説明図である。
【図9】図7に示したフランジを使用したフランジ継手構造の拡大部分断面図である。
【符号の説明】
【0029】
4…(配管)排水立て管、
4a…上端、
7(7A・7B)…管継手、
8…本体、
11…接続口部、
13…本体側フランジ部、
13a…挿通孔、
15…シール用パッキン、
17・17A…フランジ、
19・19…滑り止め材、
21・21A…撓み片部、
23…ボルト、
24…ナット。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管継手の本体側に設けられた本体側フランジ部を有した接続口部に、配管の端部を挿入させて、
前記配管に外装した円環状のフランジと前記本体側フランジ部とを、ナット止めするボルトを挿通させて、相互に締結することにより、
前記フランジと前記本体側フランジ部との間に配設した円環状のシール用パッキンを圧縮しつつ前記配管外周面に圧接させて、前記管継手に前記配管を接続させる構成の配管用フランジ継手構造であって、
前記フランジの内周側に、前記配管への外装時、前記フランジを前記配管の軸方向に沿って移動可能で、かつ、前記フランジの自重による前記配管の軸方向に沿う移動を防止可能として、前記配管外周面に当接する滑り止め材が、配設されていることを特徴とする配管用フランジ継手構造。
【請求項2】
前記滑り止め材が、内周側の先端を、前記配管外周面に圧接可能で、かつ、前記配管への外装後の移動時に前記配管の軸方向に沿って反転するように撓み可能な撓み片部、を備えて構成されていることを特徴とする請求項1に記載の配管用フランジ継手構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−2892(P2006−2892A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181259(P2004−181259)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(390013516)株式会社小島製作所 (19)
【Fターム(参考)】