説明

配管用熱膨張性耐火環状成形体およびその製造方法

【課題】内部に配管を挿通させた場合に、容易に破断せず位置合わせが容易で形状保持性に優れる配管用熱膨張性耐火環状成形体およびぞの製造方法を提供すること。
【解決手段】
[1]無機繊維100重量部に対し、樹脂成分を10〜100重量部、増強剤を0.5〜8重量部、および熱膨張性無機物を5〜40重量部の範囲で含むことを特徴とする、配管用熱膨張性耐火環状成形体。
[2]樹脂組成物を分散媒に懸濁させて懸濁液を得る工程と、
前記懸濁液を環状凹形状の吸引部を備えた濾過フィルターにより濾過することにより、前記濾過フィルターの環状凹形状の吸引部内に堆積した濾過物を分散媒から分離する工程と、
前記濾過フィルターの環状凹部内部に堆積した濾過物を乾燥する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、配管用熱膨張性耐火環状成形体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の外周に設置される熱膨張性耐火環状成形体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
火災等の災害に備えるための法令上の建築基準に対する要請に加え、火災等が実際に発生した場合でもその影響をできるだけ少なくするため、建築物等に対し様々な措置が施されている。
例えば、ビル等の建築物内部で火災が発生した場合、その火災が建物全体に広がらない様に建物内部には防火壁等で仕切られた防火区画が設けられている。この様にして、一つの防火区画で火災が発生した際に、その火災が他の防火区画へ広がらない様にされている。
しかしながら実際にはこの様な防火区画を備えたビル等の建築物の場合であっても、それぞれの防火区画を貫通する配管が設けられている場合が多く、これらの配管を伝わって火災や煙等が広がる等の問題がある。
【0003】
この様な問題に対応するためには、前記配管に熱膨張性耐火環状成形体を設置することが有効であるとされる。
実際に火災等が発生した場合には火災等の熱により前記配管に設置された熱膨張性耐火環状成形体が膨張し、これにより前記配管内部が閉塞され、結果として前記配管を伝わって火災や煙が広がることを防止することが可能となる。
この様な用途に使用する熱膨張性耐火環状成形体として、低密度ポリエチレンと熱膨張性黒鉛とからなる樹脂組成物をチューブダイスを用いてチューブ状に押出し、冷却後チューブ状の成形体を切断して得られる熱膨張性耐火環状成形体が提案されている(特許文献1)。
しかしながら低密度ポリエチレン等のポリオレフィン系プラスチックは比較的低温でも溶融するため、前記熱膨張性環状成形体が火災等の熱にさらされた場合、熱膨張性黒鉛が膨張する前にポリオレフィン系プラスチックが溶融する温度範囲におかれた場合には、前記熱膨張性環状成形体が設置場所から剥離脱落する等の理由から十分にその性能を活用できない場合があった。
【0004】
この一方、セラミックウール等の無機繊維と熱膨張性無機粉末を含む加熱膨張型無機質繊維フェルトが提案されている(特許文献2)。
前記加熱膨張型無機質繊維フェルトであればセラミックウール等の無機繊維がポリオレフィン系プラスチックと比較して十分高い軟化温度を持つため、火災等の熱による剥離脱落の問題は生じない。
しかしながら前記加熱膨張型無機質繊維フェルトは伸縮性に乏しい面がある。このため前記加熱膨張型無機質繊維フェルトを環状に成形してその内部に配管を挿通させた場合、配管の外径が前記環状の加熱膨張型無機質繊維フェルトの内径よりも大きい場合には前記環状の加熱膨張型無機質繊維フェルトが容易に破断する問題があった。
また逆に配管の外径が前記環状の加熱膨張型無機質繊維フェルトの内径よりも小さい場合には前記環状の加熱膨張型無機質繊維フェルトが前記配管に沿って容易に動くため設置のための位置合わせが困難になる問題もあった。
【0005】
また、配管を挿通させるための挿通孔を有する熱膨張性耐火環状成形体として、前記挿通孔の内周面に軸線方向に伸びる複数本の突条、すなわちリブが設置された熱膨張性耐火環状成形体が提案されている(特許文献3)。
このリブが設置された熱膨張性耐火環状成形体の場合は、配管の外径に多少の変動があった場合でも前記リブが前記配管の外周面に押しつぶされて、前記配管の外周面と前記リブが設置された熱膨張性耐火環状成形体の内周面との隙間が閉塞されるとされる。
しかしながら、前記隙間が設計通りに閉塞されない場合には区画を貫通する前記配管の周囲にモルタル等の流動性のある耐火材を流し込んだときに閉塞されていない隙間からモルタル等が漏れ出すため施工性に劣る場合があった。
さらにリブが設置された熱膨張性耐火環状成形体は構造が複雑であることから製造が容易ではないとの問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−226050号公報
【特許文献2】特開2000−199194号公報
【特許文献3】特許第3413061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記に説明した問題、すなわち前記配管の外径が前記熱膨張性耐火環状成形体の内径よりも大きい場合に、前記熱膨張性耐火環状成形体が容易に破断する問題の対策として、前記熱膨張性耐火環状成形体に含まれる樹脂成分を増量する手段が考えられる。
しかしながら前記熱膨張性耐火環状成形体に含まれる樹脂成分を増量すると得られる熱膨張性耐火環状成形体の形状保持性が低下する問題がある。
この形状保持性を向上させるために、リン化合物等の無機化合物を添加することも考えられるが、前記熱膨張性耐火環状成形体にモルタル等が接触した場合にはモルタルに含まれるアルカリ水によりリン化合物等の無機物が溶出する等して前記熱膨張性耐火環状成形体の耐火性が低下する問題もあった。
【0008】
本発明の目的は、内部に配管を挿通させた場合に容易に破断せず、配管に対する挿入性、配管に対する位置の保持性、さらに形状保持性に優れる配管用熱膨張性耐火環状成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討した結果、無機繊維100重量部に対し、樹脂成分を30〜120重量部、増強剤を1〜15重量部、および熱膨張性黒鉛を5〜40重量部の範囲で含む配管用熱膨張性耐火環状成形体が本発明の目的に適うことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち本発明は、
[1]無機繊維100重量部に対し、樹脂成分を30〜120重量部、増強剤を1〜15重量部、および熱膨張性無機物を5〜40重量部の範囲で含むことを特徴とする、配管用熱膨張性耐火環状成形体を提供するものである。
【0011】
また本発明は、
[2]前記増強剤が、ポリアクリルアミドである、上記[1]に記載の配管用熱膨張性耐火環状成形体を提供するものである。
【0012】
また本発明は、
[3]無機繊維100重量部に対して、樹脂成分を30〜120重量部、増強剤を1〜15重量部、および熱膨張性黒鉛を5〜40重量部の範囲で含む樹脂組成物を分散媒に懸濁させて懸濁液を得る工程と、
前記懸濁液を環状凹形状の吸引部を備えた濾過フィルターにより濾過することにより、前記濾過フィルターの環状凹形状の吸引部内に堆積した濾過物を分散媒から分離する工程と、
前記濾過フィルターの環状凹部内部に堆積した濾過物を乾燥する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、配管用熱膨張性耐火環状成形体の製造方法を提供するものである。
【0013】
また本発明は、
[4]筒状本体と、前記筒状本体の外周に設置された不燃耐火材層と、を備えた配管の少なくとも一方の端部に、
前記筒状本体の外周と前記不燃耐火材層の側面とに接して設置された配管用熱膨張性耐火環状成形体、
を有する耐火配管であって、
前記配管用熱膨張性耐火環状成形体が、上記[1]または[2]に記載の配管用熱膨張性耐火環状成形体であることを特徴とする、耐火配管を提供するものである。
【0014】
また本発明は、
[5]二以上の配管を組み合わせてなる配管の耐火接続構造であって、
第一の配管と第二の配管との間に、上記[1]または[2]に記載の配管用熱膨張性耐火環状成形体が設置されていることを特徴とする、配管の耐火接続構造を提供するものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体は伸縮性を有する。これにより内部に配管を挿通させた場合に、前記配管用熱膨張性耐火環状成形体が容易に破断しないことから配管に対する挿入性および位置の保持性が良好となり、施工性に優れる。
また本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体は柔軟性を有すると共に適度の強度も有することから形状保持性にも優れる。このため配管用熱膨張性耐火環状成形体が柔軟過ぎることによる形状の変化や配管用熱膨張性耐火環状成形体を保存している際の融着等の問題がなく取扱性に優れる。
【0016】
また配管用熱膨張性耐火環状成形体は原料となる樹脂組成物の懸濁液を環状凹形状の吸引部を備えた濾過フィルターにより濾過する工程を含む製造方法により得ることができ、熱膨張性耐火シートを環状に打ち抜いて製造する必要がないことから製造過程で再利用不能な余分の熱膨張性耐火シートの端材が出ることがない。このため原料となる懸濁液から効率よく配管用熱膨張性耐火環状成形体が得られることから生産性に優れる。
【0017】
また本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体を配管の接続部に設置することにより、火災等の熱により前記配管用熱膨張性耐火環状成形体が膨張するため、火災による炎等が配管の継ぎ目から配管の内部に侵入することを防止することができ、耐火性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体の製造に使用する濾過フィルターを説明するための模式断面図である。
【図2】配管用熱膨張性耐火環状成形体の製造に使用する濾過フィルターを上部から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
【図3】本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体を例示した模式斜視図である。
【図4】本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体を使用した耐火配管を説明するための模式斜視図である。
【図5】本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体を使用した耐火配管の製造方法を説明するための模式断面図である。
【図6】本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体を使用した耐火配管の製造方法を説明するための模式断面図である。
【図7】本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体を使用した耐火配管の製造方法を説明するための模式断面図である。
【図8】耐火配管の使用形態を説明するための模式断面図である。
【図9】耐火配管の使用形態を説明するための模式断面図である。
【図10】耐火配管の使用形態を説明するための模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は配管用熱膨張性耐火環状成形体に関するものであるが、最初に本発明に使用する原料について説明する。
本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体は、無機繊維、樹脂成分、増強剤、および熱膨張性無機物を少なくとも含む樹脂組成物を成形してなるものである。
【0020】
前記無機繊維としては、特に限定はないが、例えば、セラミック繊維等を挙げることができる。
この様なセラミック繊維としては、例えば、具体的にはシリカアルミナ繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、ジルコニア繊維等が挙げられる。
かかるセラミック繊維は、耐熱性の観点から融点が1300℃以上のものが好ましく、1500℃以上のものであればさらに好ましい。
なお本発明において融点という場合、純物質等の様にその融点を明確に示す物質についてはその融点を意味し、混合物等の様にその融点を明確に示さないものについては、JIS R3103−1に準じて測定された軟化点を意味するものとする。
【0021】
前記無機繊維の直径は、通常0.01〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜30μmの範囲である。
また前記無機繊維はシランカップリング剤等の集束剤により複数の繊維を一本にまとめたものを使用することができる。
【0022】
前記無機繊維を得るための製造方法に限定はないが、例えば、この無機繊維の原料を軟化させて線引きして得られた繊維を巻き取るロッド法、溶融させた前記原料をノズルから排出し、得られた繊維を巻き取るポット法、有機溶剤に溶かした前記原料の前駆体を繊維状にし、これをプレカーサーとして焼結して得られた繊維を巻き取る前駆ポリマー法等の方法により得られたもの等を市販品として入手することができる。
【0023】
前記無機繊維は、一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0024】
前記樹脂成分としては、例えば、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリ(1−)ブテン樹脂、ポリペンテン樹脂等のポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン−スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、エチレン−プロピレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂類、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、1,2−ポリブタジエンゴム(1,2−BR)、メチルメタクリレートブタジエンゴム(MBR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレンゴム(EPR、EPDM)、クロロスルホン化ポリエチレン(CSM)、アクリルゴム(ACM、ANM)、エピクロルヒドリンゴム(CO、ECO)、多加硫ゴム(T)、シリコーンゴム(Q)、フッ素ゴム(FKM、FZ)、ウレタンゴム(U)等のゴム類、ポリウレタン樹脂、ポリイソシアネート樹脂、ポリイソシアヌレート樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂類、上記熱可塑性樹脂類等のエマルション、上記ゴム類等のラテックス等を挙げることができる。
【0025】
中でも取り扱い性の面等から、アクリル系重合体エマルション、SBR系ラテックス、MBR系ラテックス等が好ましい。
【0026】
アクリル系重合体エマルションとしては、アルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレートと共重合が可能なラジカル重合性モノマー、多官能性モノマー等から構成される重合体ラテックスであって、具体的には、前記アルキル(メタ)アクリレートから選ばれた少なくとも1種のモノマーからなる重合体エマルション、
前記アルキル(メタ)アクリレートから選ばれた少なくとも1種のモノマーと、アルキル(メタ)アクリレートと共重合が可能なラジカル重合性モノマーから選ばれた少なくとも1種のモノマーとの共重合体エマルション、
前記アルキル(メタ)アクリレートと、前記多官能性モノマーとのそれぞれの群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとの共(部分架橋)重合体エマルション、
アルキル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレートと共重合が可能なラジカル重合性モノマー、ならびに多官能性モノマーのそれぞれの群から選ばれた少なくとも1種のモノマーとの共(部分架橋)重合体エマルションが挙げられる。
【0027】
アルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘプチル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−メチルヘプチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−メチルオクチル(メタ)アクリレート、n−ノニル(メタ)アクリレート、2−エチルヘプチル(メタ)アクリレート、n−デシル(メタ)アクリレート、2−メチルノニル(メタ)アクリレート、2−エチルオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の極性基含有(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの少なくとも一種が使用できる。
【0028】
アルキル(メタ)アクリレートと共重合が可能なラジカル重合性モノマーとしては、アクリル系共重合体ラテックスのガラス転移温度を任意に調節できるものが使用されるが、例えば、2−アクリロイルオキシエチルフタル酸などの極性基含有ビニルモノマー、スチレン、α−スチレン、p−クロロスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族ビニルモノマー、アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどの不飽和ニトリル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステルなどが挙げられ、これらの少なくとも一種が使用できる。
【0029】
多官能性モノマーとしては、単純アクリル系共重合体ラテックスやグラフトアクリル系共重合体ラテックスの部分架橋剤として作用し、ラテックス粒子のゴム弾性化に寄与し、ラテックス粒子の水中分散液での凝集を起こり難くするものである。
具体的には、例えば、ジ(メタ)アクリレートとして、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート等が挙げられ、トリ(メタ)アクリレートとして、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの少なくとも一種が使用される。
【0030】
また他の多官能性モノマーとして、例えば、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、ジアリルマレート、ジアリルフマレート、ジアリルサクシネート、トリアリルイソシアヌレートなどのジアリル又はトリアリル化合物、ジビニルベンゼン、ブタジエンなどのジビニル化合物などが挙げられ、これらの少なくとも一種が使用される。
【0031】
次に本発明に使用する熱膨張性無機物について説明する。
本発明に使用する熱膨張性無機化合物としては、加熱時に膨張するものであれば特に限定はないが、例えば、バーミキュライト、カオリン、マイカ、熱膨張性黒鉛等が挙げられる。これらの中でも、発泡開始温度が低いことから熱膨張性黒鉛が好ましい。
【0032】
前記熱膨張性黒鉛とは、従来公知の物質であり、天然鱗状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とで処理してグラファイト層間化合物を生成させたもので、炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
【0033】
上記のように酸処理して得られた熱膨張性黒鉛は、更にアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和したものを使用するのが好ましい。
【0034】
前記脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。上記アルカリ金属化合物及びアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0035】
前記熱膨張性黒鉛の粒度は、20〜200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度が200メッシュより小さくなると、黒鉛の膨張度が小さく、十分な耐火断熱層が得られず、また、粒度が20メッシュより大きくなると、黒鉛の膨張度が大きいという利点はあるが、熱膨張性無機質材料中に保持されにくくなる。
【0036】
前記中和処理された熱膨張性黒鉛の市販品としては、例えば、UCAR CARBON社製「GRAFGUARD」、東ソー株式会社製「GREP−EG」等が挙げられる。
【0037】
前記熱膨張性無機物は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0038】
次に本発明に使用される増強剤について説明する。
本発明に使用する増強剤は、本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体の柔軟性を維持しつつ形状保持性を付与するものであり、例えば、水溶性高分子化合物等が挙げられる。
【0039】
前記水溶性高分子化合物としては、例えば、多糖類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0040】
これらのなかでも、ポリアクリルアミドが柔軟性の維持および形状保持性に優れることから好ましい。
【0041】
次に本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体に使用される樹脂組成物に含まれる無機繊維、樹脂成分、増強剤、および熱膨張性無機物の量比関係について説明する。
【0042】
本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体は、無機繊維100重量部に対し、樹脂成分を10〜100重量部、増強剤を0.5〜8重量部、および熱膨張性無機物を5〜40重量部の範囲で含むものである。
前記樹脂成分の範囲が無機繊維100重量部に対し10重量部未満の場合には、得られる配管用熱膨張性耐火環状成形体の柔軟性が乏しく、容易に破断する。また100重量部を越える場合には形状保持性が低下する。
前記樹脂成分の範囲は、15〜80重量部の範囲がより好ましく、20〜60重量部の範囲であればさらに好ましい。
【0043】
また前記増強剤の範囲が無機繊維100重量部に対し0.5重量部未満の場合には、得られる配管用熱膨張性耐火環状成形体の強度が低下する。また8重量部を越える場合には伸びが低下する。
前記増強剤の範囲は、0.75〜6重量部の範囲が好ましく、1〜4重量部の範囲であればさらに好ましい。
【0044】
また前記熱膨張性無機物の範囲が無機繊維100重量部に対し5重量部未満の場合には、火災等の熱にさらされた場合の配管用熱膨張性耐火環状成形体の膨張率が十分ではない。また40重量部を越える場合には柔軟性が低下する。
前記熱膨張性無機物の範囲は、5〜30重量部の範囲が好ましく、8〜25重量部の範囲であればさらに好ましい。
【0045】
次に本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体の製造方法について説明する。
前記配管用熱膨張性耐火環状成形体を製造する方法としては、例えば、前記樹脂組成物を有機溶媒に懸濁させた懸濁液を金型に注入し、有機溶媒を蒸発させて成形する注形法、前記樹脂組成物を加熱された金型プレスにより成形する熱プレス法、前記樹脂組成物を分散媒に懸濁させた懸濁液を用いる抄造法等を挙げることができる。
前記配管用熱膨張性耐火環状成形体を製造する方法は抄造法であれば好ましい。
【0046】
前記抄造法としては、具体的には、乳化させた樹脂成分を分散媒中で無機繊維、増強剤、熱膨張性無機物等と混合して得られた懸濁液を濾過して分散媒から濾過物を分離し、この濾過物を乾燥させる等の方法を挙げることができる。
【0047】
前記抄造法に使用する分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール類、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類等の親水性有機溶媒、水等を挙げることができる。
前記分散媒は水であれば好ましい。
また前記分散媒は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0048】
また必要に応じて乳化分散剤、重合開始剤、pH調節剤、凝集剤、酸化防止剤等の一種もしくは二種以上を併用することもできる。
【0049】
前記乳化分散剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、部分鹸化ポリ酢酸ビニル、セルロース系分散剤、ゼラチン等が挙げられる。
【0050】
前記重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素水等の水溶性重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド等の有機系過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系開始剤が挙げられる。
【0051】
前記pH調節剤としては、例えば、硫酸アルミニウム等の硫酸バンド等が挙げられる。
【0052】
前記凝集剤としては、例えば、多価金属カチオン、第4級アンモニウム化合物等が挙げられる。
【0053】
次に濾過の工程について説明する。
図1は本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体の製造に使用する濾過フィルターを説明するための模式断面図である。
また図2は配管用熱膨張性耐火環状成形体の製造に使用する濾過フィルターを上部から見下ろした状態を例示した模式平面図である。
【0054】
濾過の工程は、例えば、前記樹脂組成物を分散媒に懸濁させた懸濁液を攪拌しながら前記濾過フィルターに導入することにより実施される。
図1に例示される様に、本発明に使用する濾過フィルター1は環状凹形状の吸引部2を備えるものである。
前記濾過フィルター1は前記懸濁液を入れた容器の底部に設置される(図示せず)。
前記濾過フィルター1において前記環状凹形状の吸引部2の底面には濾過材3が設置されていて、この濾過材3の下側を減圧するか、前記濾過材の上側を加圧することにより、分散媒から濾過物を分離することができる。分散媒は濾過フィルター1の下部から回収される。また濾過フィルター1の環状凹形状の吸引部2には濾過物が堆積する。
【0055】
濾過材3としては、例えば、金網、濾布、濾紙、多孔質セラミック、多孔質ガラス等を使用することができる。
濾過物が濾過フィルター1の上面4に達したところで濾過を終了すれば一定厚みの濾過物を得ることができる。
【0056】
濾過終了後、濾過フィルター1から濾過物を取り出し、得られた濾過物を乾燥することにより本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体を得ることができる。
【0057】
図2に示される濾過フィルターとして環状凹形状の吸引部2の形状が円環状である濾過フィルターを使用したが、この吸引部2の形状を、三角環、四角環、六角環等の多角環、長辺と短辺を有する長方形環、内角が異なる平行四辺形環、楕円形環等とすることにより、これらの形状に対応した所望の形状を有する配管用熱膨張性耐火環状成形体を得ることができる。
【0058】
図3は本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体を例示した模式斜視図である。
前記配管用熱膨張性耐火環状成形体6の内径、外径および厚みは濾過フィルターの環状凹形状の吸引部の形状を変更することにより調整することが可能である。
前記配管用熱膨張性耐火環状成形体6の大きさは、使用する配管の外形、配管に設置された不燃耐火材層の厚み等に応じて適宜設定される。
【0059】
通常、本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体の内径は10〜300mmの範囲である。
【0060】
また本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体の外径は40〜400mmの範囲で、前記内径より大きい値となる。
【0061】
また本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体の厚みは2〜6mmの範囲である。この範囲が2mmより薄いと取扱性や施工時の形状保持性が低下する場合があり、6mmより厚いとと経済的に不利となる場合がある。
【0062】
次に本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体の実施形態について説明する。
図4は本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体を使用した耐火配管を説明するための模式斜視図である。
図4では、筒状本体7と、前記筒状本体7の外周に設置された不燃耐火材層8とを備えた配管9が使用されている。
【0063】
前記筒状本体7としては、例えば、 前記筒状本体7の長軸方向に対し垂直方向の断面形状が三角形、四角形等の多角形、長方形等の互いの辺の長さが異なる形状、平行四辺形等の互いの内角が異なる形状、楕円形、円形等の形状が挙げられる。これらの中でも、断面形状が円形、四角形等であるものが施工性に優れることから好ましい。
【0064】
前記筒状本体7の断面形状の大きさは、この断面形状の重心からこの断面形状の外郭線までの距離が最も大きい辺の長さを基準として、通常、1〜1000mmの範囲であり、好ましくは5〜750mmの範囲である。
【0065】
また本発明に使用する筒状本体7の素材については特に限定はないが、例えば、金属材料、無機材料、有機材料等の一種もしくは二種以上からなるものを挙げることができる。
前記金属材料としては、例えば、鉄、鋼、ステンレス、銅、二以上の金属を含む合金等を挙げることができる。
また無機材料としては、例えば、ガラス、セラミック等を挙げることができる。
また有機材料としては、例えば、塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂等を挙げることができる。
前記素材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
【0066】
本発明に使用する配管は、前記金属材料管、無機材料管および有機材料管等の一種以上であるが、前記金属材料管、無機材料管および有機材料管等の二種以上を内筒や外筒に使用した積層管として使用することもできる。
【0067】
図4に例示した筒状本体7は塩化ビニル製のものであり、不燃耐火材層8としてモルタルが使用されている。
本発明に使用する不燃耐火材層としては、例えば、JIS A5758により規定されている建築用シーリング材、JIS A6914により規定されている石膏ボード用目地処理材、モルタル、パテ、コーキング等を挙げることができる。
【0068】
図5〜7は本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体を使用した耐火配管の製造方法を説明するための模式断面図である。
塩化ビニルからなる筒状本体7の両端の外周に、配管用熱膨張性耐火環状成形体6を設置する。
【0069】
次に図6に例示した様に前記筒状本体7および配管用熱膨張性耐火環状成形体6を、金型10により覆う。前記金型10は二つに分割されるものであり、それぞれの分割された部分を組み合わせることにより、前記筒状本体7および配管用熱膨張性耐火環状成形体6を覆うことができる。
前記筒状本体7の外周面、前記配管用熱膨張性耐火環状成形体6の側面、および前記金型10の内面の空隙11に、モルタルからなる不燃耐火材8を注入する。前記不燃耐火材8の固化を確認してから金型10を取り外して50〜70℃の温度範囲で6〜12時間養生することにより、図7に示される耐火配管9を得ることができる。
【0070】
本発明の配管用熱膨張性耐火環状成形体の使用対象となる配管としては、例えば冷媒管、給湯管、水道管、下水管、注排水管、燃料移送管、油圧配管等の液体移送用管類、ガス管、暖冷房用媒体移送管、通気管等の気体移送用管類等が挙げられる。
これらの配管に配管用熱膨張性耐火環状成形体を設置することにより耐火配管を得ることができる。
【0071】
次に耐火配管の使用形態について説明する。
図8〜図10は耐火配管の使用形態を説明するための模式断面図である。
第一の配管20は、筒状本体27と前記筒状本体27の外周に設置された不燃耐火材層28とを有するものである。
また第二の配管30も、同様に筒状本体37と前記筒状本体37の外周に設置された不燃耐火材層38とを有する。
【0072】
第一の配管20の少なくとも一方の端部に前記筒状本体27が突出していて、その前記筒状本体27の突出部29外面に配管用熱膨張性耐火環状成形体6が設置されている。
また第二の配管30の少なくとも一方の端部にも前記筒状本体37が突出している。
第一の配管20の前記筒状本体27の内面形状は第二の配管30の筒状本体37の突出部39の外面形状と略同一である。
このため図9に例示する様に、第一の配管20と第二の配管30とを組み合わせることにより、前記第二の配管30の筒状本体突出部39を、前記第一の配管20の筒状本体27内部に隙間なく設置することができる。
これにより第一の配管20と第二の配管30とによる耐火接続構造を得ることができる。
【0073】
第一の配管20と第二の配管30との間には配管用熱膨張性耐火環状成形体6が設置されている。このため前記耐火接続構造が火災等の熱にさらされた場合には前記配管用熱膨張性耐火環状成形体6が膨張して第一の配管20の不燃耐火材層28と第二の配管30の不燃耐火材層38との隙間を閉塞する。
これにより、火災等で発生した炎や煙等が配管20,30を伝わって広がることを防止することができる。
【0074】
また図10に例示する様に、第一の配管20と第二の配管30とを組み合わせた場合に、前記第二の配管30の筒状本体突出部39が前記第一の配管20の筒状本体27内部に隙間なく設置されず、外部に前記筒状本体突出部39が露出している場合でも、図10に示す耐火接続構造が火災等の熱にさらされた場合には前記配管用熱膨張性耐火環状成形体6が膨張して第一の配管20の不燃耐火材層28と第二の配管30の不燃耐火材層38との隙間を閉塞する。
これにより前記第二の配管30の筒状本体突出部39が前記第一の配管20の筒状本体27内部に隙間なく設置されていない場合でも、火災等で発生した炎や煙等が配管20,30を伝わって広がることを防止することができる。
【0075】
次に本発明について図面に基づき実施例により詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【実施例1】
【0076】
無機繊維100重量部(商品名SCバルク、新日化サーマルセラミックス社製)、アクリル系重合体エマルション40重量部(商品名LX852、日本ゼオン社製)、増強剤2重量部(ポリアクリルアミド、商品名ポリストロン117、荒川化学工業社製)、熱膨張性黒鉛20重量部(商品名GREP−EG、東ソー社製)、およびpH調整剤2重量部(硫酸バンド)を水に分散させ、乳化懸濁液を得た。
次に先の図1および図2に示した濾過フィルターを用いて前記乳化懸濁液により抄造を行い濾過物を得た。この濾過物を乾燥することにより、配管用熱膨張性耐火環状成形体1を得た。
【0077】
得られた配管用熱膨張性耐火環状成形体1を用いて試験を実施した。この結果を表1に示す。各試験条件は次の通りである。
【0078】
[熱膨張倍率]
電気炉を用いて600℃の温度により30分間加熱を行った。
600℃に加熱した電気炉に幅15mm、長さ15mm、および厚み4mmの試験片を投入し、加熱前後の厚みを測定し、加熱後の厚みを加熱前の厚みで除した値を膨張倍率とした。
【0079】
[形状保持性試験]
電気炉を用いて600℃の温度により30分間加熱を行った。
なお加熱後の状態を次の三段階で表示した。
○:手で持ち上げることができる
×:手で触ると崩れる
××:電気炉から取り出したときに崩れている
【0080】
[強度試験、伸び試験]
図1の環状凹形状の吸引部を有する濾過フィルターに変えて、円筒形状の吸引部を有する濾過フィルターを用いて同様に抄造を行い濾過物を得た。この濾過物を乾燥させた後、幅15mm、長さ15mm、および厚み4mmに切りだして試験片を得た。
前記試験片の固定冶具間の距離を50mmとし、30mm/分の速度にて引っ張り、破断点加重および破断点伸度を測定し、それぞれ強度および伸びとして示した。強度の単位kgfで示し、伸びの単位は増加分を百分率で示した。
なお強度が1.5kgf以上の場合には○を、それ未満の場合は×を表1に示した。
また伸びが10%以上の場合には○を、それ未満の場合は×を同様に表1に示した。
【実施例2】
【0081】
実施例1に使用したアクリル系重合体エマルションおよび熱膨張性黒鉛に代えて、SBR系重合体ラテックス30重量部(商品名SR107、日本エイアンドエル社製製)および熱膨張性黒鉛10重量部(商品名GREP−EG、東ソー社製)を使用した他は実施例1の場合と全く同様の操作を行い、配管用熱膨張性耐火環状成形体2を得た。結果を表1に示す。
【実施例3】
【0082】
実施例1に使用したアクリル系重合体エマルション、増強剤および熱膨張性黒鉛に代えて、SBR系重合体ラテックス30重量部(商品名SR107、日本エイアンドエル社製製)、増強剤1重量部(ポリアクリルアミド、商品名ポリストロン117、荒川化学工業社製)、および熱膨張性黒鉛10重量部(商品名GREP−EG、東ソー社製)を使用した他は実施例1の場合と全く同様の操作を行い、配管用熱膨張性耐火環状成形体3を得た。結果を表1に示す。
【0083】
[比較例1]
実施例1に使用した増強剤を使用しなかった他は実施例1の場合と全く同様の操作を行い、配管用熱膨張性耐火環状成形体4を得た。結果を表1に示す。
【0084】
[比較例2]
実施例1に使用したアクリル系重合体エマルション、増強剤および熱膨張性黒鉛に代えて、アクリル系重合体エマルション120重量部(商品名LX852、日本ゼオン社製)、増強剤3重量部(ポリアクリルアミド、商品名ポリストロン117、荒川化学工業社製)、および熱膨張性黒鉛30重量部(商品名GREP−EG、東ソー社製)を使用した他は実施例1の場合と全く同様の操作を行い、配管用熱膨張性耐火環状成形体5を得た。結果を表1に示す。
【0085】
[比較例3]
実施例1に使用した増強剤および熱膨張性黒鉛に代えて、増強剤10重量部(ポリアクリルアミド、商品名ポリストロン117、荒川化学工業社製)、および熱膨張性黒鉛25重量部(商品名GREP−EG、東ソー社製)を使用した他は実施例1の場合と全く同様の操作を行い、配管用熱膨張性耐火環状成形体6を得た。結果を表1に示す。
【0086】
[比較例4]
実施例1に使用したアクリル系重合体エマルション、増強剤および熱膨張性黒鉛に代えて、増強剤を使用せず、SBR系重合体ラテックス30重量部(商品名SR107、日本エイアンドエル社製製)、および熱膨張性黒鉛10重量部(商品名GREP−EG、東ソー社製)を使用した他は実施例1の場合と全く同様の操作を行い、配管用熱膨張性耐火環状成形体7を得た。結果を表1に示す。
【0087】
[比較例5]
実施例1に使用したアクリル系重合体エマルション、増強剤および熱膨張性黒鉛に代えて、SBR系重合体ラテックス30重量部(商品名SR107、日本エイアンドエル社製製)、増強剤10重量部(ポリアクリルアミド、商品名ポリストロン117、荒川化学工業社製)、および熱膨張性黒鉛10重量部(商品名GREP−EG、東ソー社製)を使用した他は実施例1の場合と全く同様の操作を行い、配管用熱膨張性耐火環状成形体8を得た。結果を表1に示す。
【0088】
[比較例6]
実施例1に使用したアクリル系重合体エマルション、増強剤および熱膨張性黒鉛に代えて、アクリル系重合体エマルション5重量部(商品名LX852、日本ゼオン社製)、増強剤1重量部(ポリアクリルアミド、商品名ポリストロン117、荒川化学工業社製)、および熱膨張性黒鉛10重量部(商品名GREP−EG、東ソー社製)を使用した他は実施例1の場合と全く同様の操作を行い、配管用熱膨張性耐火環状成形体9を得た。結果を表1に示す。
【0089】
【表1】

【符号の説明】
【0090】
1 濾過フィルター
2 環状凹形状の吸引部
3 濾過材
4 濾過フィルターの上面
6 配管用熱膨張性耐火環状成形体
7、27、37 筒状本体
8、28、38 不燃耐火材
9 配管
10 金型
11 空隙
20 第一の配管
29、39 筒状本体の突出部
30 第二の配管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機繊維100重量部に対し、樹脂成分を10〜100重量部、増強剤を0.5〜8重量部、および熱膨張性無機物を5〜40重量部の範囲で含むことを特徴とする、配管用熱膨張性耐火環状成形体。
【請求項2】
前記増強剤が、ポリアクリルアミドである、請求項1に記載の配管用熱膨張性耐火環状成形体。
【請求項3】
無機繊維100重量部に対し、樹脂成分を10〜100重量部、増強剤を0.5〜8重量部、および熱膨張性無機物を5〜40重量部の範囲で含む樹脂組成物を分散媒に懸濁させて懸濁液を得る工程と、
前記懸濁液を環状凹形状の吸引部を備えた濾過フィルターにより濾過することにより、前記濾過フィルターの環状凹形状の吸引部内に堆積した濾過物を分散媒から分離する工程と、
前記濾過フィルターの環状凹部内部に堆積した濾過物を乾燥する工程と、
を少なくとも有することを特徴とする、配管用熱膨張性耐火環状成形体の製造方法。
【請求項4】
筒状本体と、前記筒状本体の外周に設置された不燃耐火材層と、を備えた配管の少なくとも一方の端部に、
前記筒状本体の外周と前記不燃耐火材層の側面とに接して設置された配管用熱膨張性耐火環状成形体、
を有する耐火配管であって、
前記配管用熱膨張性耐火環状成形体が、請求項1または2に記載の配管用熱膨張性耐火環状成形体であることを特徴とする、耐火配管。
【請求項5】
二以上の配管を組み合わせてなる配管の耐火接続構造であって、
第一の配管と第二の配管との間に、請求項1または2に記載の配管用熱膨張性耐火環状成形体が設置されていることを特徴とする、配管の耐火接続構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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