配管系の漏洩確認方法
【課題】多数の伝熱管が積層状に配置されている伝熱管群において、個々の伝熱管の漏洩をきわめて簡単に検知することのできる、配管系の漏洩確認方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る配管系の漏洩確認方法は、配管系の漏洩を、ヒドラジンに反応する試験紙を利用して検知する。また、配管系は、発電プラント等における伝熱管群である。さらに、伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置するものである。また、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を、伝熱管群の中に挿入するものである。
【解決手段】本発明に係る配管系の漏洩確認方法は、配管系の漏洩を、ヒドラジンに反応する試験紙を利用して検知する。また、配管系は、発電プラント等における伝熱管群である。さらに、伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置するものである。また、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を、伝熱管群の中に挿入するものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発電プラント等における伝熱管群について、ヒドラジンに反応する試験紙を利用してその漏洩を検知する、配管系の漏洩確認方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合サイクル式の発電プラントP等においては、例えば、図8に示すように、発電機G、低圧蒸気タービンT1、高中圧蒸気タービンT2、ガスタービンGTが存在しており、ガスタービンGTからは、高温となっている大量の排気ガスが排出される。この排気ガスは、排熱回収ボイラを備えている施設Iに送り込まれる。
【0003】
排熱回収ボイラを備えている施設I内には、例えば、図9に示すように、多数の伝熱管dが積層状に配置されている伝熱管群Dが存在している。この伝熱管群Dにおいては、高温の排気ガスにより、伝熱管d内の液体が蒸気に変換されて、蒸気タービンT1、T2に再度送り込まれる構造となっている。
【0004】
この複数の伝熱管dにより構成されている伝熱管群Dにおいて、個々の伝熱管dに、経年変化による材料の腐食等を原因として損傷が生じると、当該損傷部分から高温・高圧の水や蒸気が漏洩し、プラントの発電機能を損なうと共に、最悪の場合には、発電プラントPの全体が停止してしまう危険性がある。
【0005】
その為、排熱回収ボイラを備えている施設I内に配置されている伝熱管群Dにおいては、個々の伝熱管dに所定の水圧を掛けて漏洩があるかどうかを確認する作業を、定期的に実施している。
【0006】
この伝熱管dにおける漏洩の確認は、例えば、図10・図11に示すように、作業員Sが伝熱管群Dの下側に移動し、伝熱管群Dの下方から個々の伝熱管dを見上げるように視認して、個々の伝熱管dから水滴が垂れているかどうかを確認していた。
【0007】
このとき、図11に示すように、作業員Sは、伝熱管群Dの下側から真上を見るのではなく、斜め上方を見ることにより、複数の伝熱管dの周面を視認して、漏洩を確認していた。
【0008】
この他、配管の漏洩を確認する手法として、例えば、特許文献1に示すように、液体シール部から滴下する液滴に向けて水平面でスリット状の平行光を照射する光源と、平行光の液滴による散乱光を検出して滴下液滴数を計数する光学的検出器から成る、滴下液滴の遠隔検出装置を使用した手法がある。
【0009】
また、特許文献2に示すように、被検査対象管の内部に水圧を負荷した後、近赤外線センサを備えている水分計を被検査対象管の外面に接近させ、この水分計により被検査対象管の外面に滲み出た漏水を検知して、被検査対象管の内部から外面に滲み出た漏水の有無を検査する手法がある。
【0010】
さらに、特許文献3に示すように、保温、断熱或いは遮音を目的として配管の外周に装着される抱持材であって、この抱持材の外周面には透明な防湿層が設けられ、また前記抱持材の配管と接触する内周面、または前記抱持材の防湿層と接触する外周面、または前記抱持材の内部に、水分に接触することで変色する物質を含んだ層が形成されている配管用抱持材により、配管の漏洩の有無を検出する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平2−57656号公報
【特許文献2】特開平4−145340号公報
【特許文献3】特開2006−284511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図10・図11に示すような、伝熱管dにおける従来の漏洩の確認方法においては、作業員Sが伝熱管群Dの下側に移動し、後頭部が背中側に近づくように自身の首を大きく曲げた状態で伝熱管群Dの下方から個々の伝熱管dを見上げるように視認することから、この首を大きく曲げた姿勢を長時間維持することが困難で、作業員Sが疲労してしまう要因となっていた。その為、作業員Sは、こまめに休憩する必要があり、漏洩の確認に長時間を要していた。
【0013】
また、多数の伝熱管dが積層状に配置されている伝熱管群Dを下方から視認すると、作業員Sは、伝熱管dの周面が連続して存在している略同一の景色を継続して視認することとなり、同じく作業員Sの疲労の原因となっていた。
【0014】
さらに、排熱回収ボイラを備えている施設Iが大型であるときには、伝熱管dも必然的に長くなり、個々の伝熱管dの数や積層する階層の数も増加することから、ある程度の人員を確保した、多人数による視認作業を実施しなければならなかった。
【0015】
この他、所定の配管の漏洩を確認する特許文献1に示す手法においては、水平面でスリット状の平行光を照射する光源と、平行光の液滴による散乱光を検出して滴下液滴数を計数する光学的検出器とから成る滴下液滴の遠隔検出装置を使用しており、基本的に水平面での滴下液滴数を計数することになる。その為、図10・図11に示すように、作業員Sが伝熱管群Dの下側から斜め上方を見て、複数の伝熱管dの漏洩を確認するような状況に適合するものではない。
【0016】
また、漏水の有無を検査する特許文献2に示す手法においては、被検査対象管の内部に水圧を負荷した後、近赤外線センサを備えている水分計を被検査対象管の外面に接近させ、この水分計により被検査対象管の外面に滲み出た漏水を検知することから、多数の伝熱管dが積層状に配置されている伝熱管群Dにおいて、内部側に存在する伝熱管dには、近赤外線センサを備えている水分計を接近させることができない事態が生じる。
【0017】
さらに、配管の漏洩の有無を検出する特許文献3に示す手法においては、内周面と外周面に、水分に接触することで変色する物質を含んだ層が形成されている配管用抱持材を、配管の外周に装着するものであるが、排熱回収ボイラを備えている施設Iにおいて、多数の伝熱管dの全てに配管用抱持材を装着するのは、現実的に困難である。
【0018】
そこで、本発明は、如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、多数の伝熱管が積層状に配置されている伝熱管群において、個々の伝熱管の漏洩をきわめて簡単に検知することのできる、配管系の漏洩確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る配管系の漏洩確認方法は、配管系の漏洩を、ヒドラジンに反応する試験紙を利用して検知することにより、上述した課題を解決した。
【0020】
また、配管系は、発電プラント等における伝熱管群であることにより、同じく上述した課題を解決した。
【0021】
さらに、伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置したことにより、同じく上述した課題を解決した。
【0022】
また、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を、伝熱管群の中に挿入したことにより、同じく上述した課題を解決した。
【0023】
加えて、伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置する工程と、漏洩が確認された部分の伝熱管群の中に、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を挿入する工程から成ることにより、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る配管系の漏洩確認方法は、配管系の漏洩を、ヒドラジンに反応する試験紙を利用して検知することから、この試験紙の変色により、配管系の漏洩を、誰もがきわめて簡単に検知することができる。
【0025】
また、配管系は、発電プラント等における伝熱管群であるときにも、試験紙の変色により、伝熱管群における漏洩を、誰もが簡単に検知することができる。
【0026】
即ち、発電プラント等においては、排熱回収ボイラを備えている施設内に配置されている伝熱管群を構成する個々の伝熱管に所定の水圧を掛けて、漏洩があるかどうかを確認する作業を定期的に実施している。
【0027】
このとき、個々の伝熱管に送り込む液体に、ヒドラジンを含有させている。その為、伝熱管から水滴が垂れて漏洩したときに、水滴が試験紙に付着すると、当該水滴が付着した部分の試験紙は、ヒドラジンに反応して変色することとなる。作業員は、この様な試験紙の変色を確認することにより、伝熱管群(伝熱管)において水滴が垂れて漏洩している事態を確実に認識できるのである。
【0028】
具体的には、伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置して、このシート上の試験紙の変色を確認することにより、伝熱管群(伝熱管)から水滴が垂れて漏洩している事態を認識するのである。
【0029】
また、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を、伝熱管群の中に挿入したときには、伝熱管群において、水滴が垂れて漏洩している伝熱管を具体的に特定することができる。
【0030】
即ち、漏洩確認装置を、それぞれの載置板が支持杆に沿うように配置されている折り畳み状態とし、伝熱管群の下側から斜め上方を向くようにして、伝熱管群の中に挿入していく。
【0031】
そして、漏洩確認装置の先端部が、伝熱管群の最上部に配置されている伝熱管に近接したとき、個々の載置板がいずれも水平に配置されている展開状態とし、個々の載置板を、伝熱管群を構成する個々の伝熱管に、極めて近接させた状態とする。
【0032】
このとき、個々の載置板の上には、それぞれヒドラジンに反応する試験紙を貼付していることから、特定の伝熱管から水滴が垂れて漏洩しているときに、水滴が試験紙に付着して試験紙が変色することとなる。作業員は、この試験紙が変色している載置板を確認することにより、伝熱管群において、水滴が垂れて漏洩している伝熱管を具体的に特定するのである。
【0033】
この様に、本発明に係る配管系の漏洩確認方法は、伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置する工程と、漏洩が確認された部分の伝熱管群の中に、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を挿入する工程から成ることから、シート上の試験紙の変色を確認することにより、伝熱管群(伝熱管)から水滴が垂れて漏洩している事態を認識することができると共に、漏洩が確認された部分の伝熱管群の中に漏洩確認装置を挿入して、水滴が垂れて漏洩している伝熱管を具体的に特定できるのである。
【0034】
その結果、経年変化による材料の腐食等を原因として損傷が生じ、水滴が垂れて漏洩している伝熱管に対して、必要な補修を確実に施すことができる。
【0035】
また、水滴が垂れて漏洩している伝熱管を確認するときに、作業員は、伝熱管群の下側に移動し、後頭部が背中側に近づくように自身の首を大きく曲げた状態で伝熱管群の下方から個々の伝熱管を見上げるように視認する必要も無いので、作業員が疲労してしまう事態も回避できる。
【0036】
さらに、作業員は、伝熱管の周面が連続して存在している略同一の景色を継続して視認する必要も無いので、極度な疲労を引き起こすことも無い。
【0037】
また、シート上の試験紙の変色を確認することにより、伝熱管群(伝熱管)から水滴が垂れて漏洩している事態を認識することができると共に、漏洩が確認された部分の伝熱管群の中に漏洩確認装置を挿入して、水滴が垂れて漏洩している伝熱管を具体的に特定できることから、全体の漏洩確認作業を、極めて少人数の作業員で、迅速に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置した状態を示す側面図である。
【図2】伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置した状態を示す斜視図である。
【図3】漏洩確認装置の構成を示すもので、(a)は一対の支持杆の間において、複数の載置板を水平に回動させた展開状態を、正面側から見た斜視図、(b)は同様の展開状態を、背面側から見た斜視図である。
【図4】漏洩確認装置の構成を示すもので、(a)は一対の支持杆の間において、複数の載置板を、支持杆に沿うように回動させた折り畳み状態を、正面側から見た斜視図、(b)は同様の折り畳み状態を、背面側から見た斜視図である。
【図5】伝熱管群の中に漏洩確認装置を挿入した状態を示すもので、(a)は複数の載置板を、支持杆に沿うように回動させた折り畳み状態を示す側面図、(b)は複数の載置板を水平に回動させた展開状態を示す側面図である。
【図6】長尺な載置板を複数備えている漏洩確認装置において、それぞれの載置板を水平に回動させた展開状態を、正面側から見た状態の斜視図である。
【図7】長尺な載置板を複数備えている漏洩確認装置において、それぞれの載置板を水平に回動させた展開状態を、背面側から見た状態の斜視図である。
【図8】発電機、低圧蒸気タービン、高中圧蒸気タービン、ガスタービンが存在している発電プラント等において、ガスタービンからの排気ガスが、排熱回収ボイラを備えている施設に送り込まれる状態を示す概略の説明図である。
【図9】伝熱管群による排熱回収ボイラを備えている施設の斜視図である。
【図10】作業員が伝熱管群の下側に移動し、伝熱管群の下方から個々の伝熱管を見上げるように視認して、個々の伝熱管から水滴が垂れているかどうかを確認している状態を示す斜視図である。
【図11】作業員が、伝熱管群の下側から斜め上方を見ることにより、複数の伝熱管の周面を視認して、個々の伝熱管から水滴が垂れているかどうかを確認している状態を示す概略の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明に係る配管系の漏洩確認方法は、配管系の漏洩を、ヒドラジンに反応する試験紙1を利用して検知するものである。ヒドラジンは、分子式NH2NH2で表示され、水によく溶ける無色・発煙性の液体であり、弱い塩基性を示すものである。
【0040】
配管系は、主として、発電プラントP等において、排熱回収ボイラを備えている施設I等に設置されている伝熱管群Dである。この伝熱管群Dは、例えば、図1・図9に示すように、多数の伝熱管dが積層状に配置されて構成されている。
【0041】
この排熱回収ボイラを備えている施設I内に配置されている伝熱管群Dにおいては、個々の伝熱管dに所定の水圧を掛けて漏洩があるかどうかを確認する作業を定期的に実施している。
【0042】
このとき、個々の伝熱管dに送り込む液体に、ヒドラジンを含有させている。その為、伝熱管dから水滴が垂れて漏洩したときに、水滴が試験紙1に付着すると、当該水滴が付着した部分の試験紙1は、ヒドラジンに反応して変色することとなる。作業員Sは、この様な試験紙1の変色を確認することにより、伝熱管群D(伝熱管d)から水滴が垂れて漏洩している事態を認識するのである。
【0043】
具体的には、例えば、図1・図2に示すように、伝熱管群Dの下方に、ヒドラジンに反応する試験紙1を貼付したシート2を設置して、伝熱管群D(伝熱管d)からの漏洩を確認している。
【0044】
シート2は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂製のシートを用いる。このシート2は、伝熱管群Dの全体的な配置形状に応じて、例えば、所定の大きさの方形状に形成されている。このシート2に貼付する試験紙1も、シート2と略同一形状に形成されている。具体的には、試験紙1は、シート2よりもやや小さい方形状に形成されている。
【0045】
試験紙1を貼付しているシート2は、その外縁部分が、複数のアンカー3により施設Iの所定の位置に固定されている。
【0046】
この様に、伝熱管群D(伝熱管d)の下方にヒドラジンに反応する試験紙1を貼付したシート2を設置して、この試験紙1が変色したとき、当該変色部分の上方に位置している伝熱管群D(伝熱管d)において、水滴が垂れている漏洩の事態が生じていることを確認できるのである。
【0047】
このとき、伝熱管群Dは、多数の伝熱管dが積層状に配置されて構成されていることから、この積層状に配置されているどの伝熱管dから水滴が垂れているのかを、さらに確認しなければならない。その為、漏洩が確認された部分の伝熱管群Dの中に、漏洩確認装置10を挿入する措置が実施される。
【0048】
この漏洩確認装置10は、図3(a)(b)に示すように、所定の長さを有する一対の支持杆11の間に、複数の載置板12を回動可能に配置している。また、個々の載置板12の上には、それぞれヒドラジンに反応する試験紙1を貼付している。
【0049】
載置板12は、略長方形の板状に形成されており、この載置板12に貼付される試験紙1も、載置板12よりもやや小さい長方形状に形成されている。この載置板12は、その基端部側が一対の支持杆11の間に配置されている。この載置板12の基端部側は、所定の軸止め機構を介して、一対の支持杆11の間に回動可能に取り付けられている。
【0050】
この他、載置板12の基端部側には、図3(b)に示すように、所定の長さを有する板片状の接続杆13が連設されている。この接続杆13は、一対の支持杆11と同様に長尺な板片状に形成され、その長手方向に沿った所定の間隔毎に、側方に向けて突き出た一対の突部14を設けている(図3(b)の拡大部分参照)。
【0051】
また、載置板12の基端部側の側縁中央部には、図3(b)とその拡大部分に示すように、2個の突出板片15が、所定の間隔を開けて固定されている。この突出板片15は、先端部が丸味を帯びている長方形の板状に形成され、その先端部に所定の孔16が設けられている。また、2個の突出板片15は、載置板12の基端部側の側縁において、載置板12の側方に突出するように固定されている。その為、2個の突出板片15は、載置板12の水平面に、直線状に連なるような状態を維持している。
【0052】
そして、接続杆13を、載置板12の基端部側の側縁に固定している2個の突出板片15の間に配置し、接続杆13に設けられている一対の突部14のそれぞれを、2個の突出板片15の孔16に内側から挿入して、それぞれの載置板12の基端部側に、接続杆13を連設している。
【0053】
このとき、所定の長さを有する接続杆13は、それぞれの載置板12に直交するような状態に配置されている。また、接続杆13の突部14は、載置板12に固定している2個の突出板片15の孔16の内部において、回転可能に保持されている。
【0054】
その為、漏洩確認装置10においては、この接続杆13を操作して、個々の載置板12がそれぞれ水平に配置されている図3(a)(b)に示す展開状態と、個々の載置板12がそれぞれ支持杆11に沿うように配置されている図4(a)(b)に示す折り畳み状態を、適宜維持できるようなっている。
【0055】
例えば、漏洩確認装置10において、個々の載置板12が、それぞれ水平に配置されている展開状態(図3(a)(b)参照)において、接続杆13を若干下方に移動させる。すると、接続杆13の突部14も、必然的に下方に移動する。この突部14は、載置板12に固定している2個の突出板片15の孔16に保持されていることから、接続杆13の突部14が下方に移動すると、載置板12に固定している2個の突出板片15自体も、その先端部側(孔16側)が下方に向けて移動する。
【0056】
その結果、個々の載置板12は、図4(a)(b)に示すように、いずれもその先端部側が上方に向けて回動し、それぞれの載置板12が支持杆11に沿うように配置されている折り畳み状態となる。
【0057】
尚、載置板12が支持杆11に沿うように配置されている折り畳み状態(図4(a)(b)参照)において、接続杆13を若干上方に移動させると、個々の載置板12は、図3(a)(b)に示すように、いずれもその先端部側が下方に向けて回動し、それぞれの載置板12が水平に配置されている展開状態となる。
【0058】
この様に構成された漏洩確認装置10は、試験紙1を貼付しているシート2により漏洩が確認された部分の伝熱管群Dの中に挿入される。
【0059】
このとき、漏洩確認装置10は、図4(a)(b)に示すように、それぞれの載置板12が支持杆11に沿うように配置されている折り畳み状態としておく。この折り畳み状態の漏洩確認装置10を、図5(a)に示すように、伝熱管群Dの下側から、斜め上方を向くようにして、伝熱管群Dの中に挿入していく。
【0060】
そして、漏洩確認装置10の先端部が、伝熱管群Dの最上部に配置されている伝熱管dに近接したとき、接続杆13を若干上方に移動させながら、漏洩確認装置10を伝熱管群Dの中にさらに押し込む。
【0061】
すると、漏洩確認装置10を構成する個々の載置板12が、いずれもその先端部側が下方に向けて回動し、それぞれの載置板12が水平に配置されている展開状態となり(図3(a)(b)参照)、個々の載置板12は、図5(b)に示すように、伝熱管群Dを構成する個々の伝熱管dに、極めて近接した状態となる。
【0062】
このとき、個々の載置板12の上には、それぞれヒドラジンに反応する試験紙1を貼付していることから、特定の伝熱管dから水滴が垂れて漏洩しているときに、水滴が試験紙1に付着して試験紙1が変色することとなる。作業員Sは、この試験紙1が変色している載置板12を確認することにより、伝熱管群Dにおいて、水滴が垂れて漏洩している伝熱管dを具体的に特定するのである。
【0063】
尚、漏洩確認装置10の構成は、図3・図4に示すものに限定されることはない。例えば、図6・図7に示すように、一対の支持杆11の間に回動可能に配置する個々の載置板12を、長尺な長方形状とし、載置板12に貼付される試験紙1も、載置板12よりもやや小さい長尺な長方形状に形成しても良い。
【0064】
この様な漏洩確認装置10によれば、伝熱管群Dの内部において、漏洩確認装置10を構成する個々の載置板12が水平に配置されている展開状態となったとき(図6・図7・図5(b)参照)、載置板12と試験紙1が、伝熱管dの長手方向に沿った所定の幅を維持しながら、個々の伝熱管dに極めて近接した状態となり、特定の伝熱管dにおいて、水滴が垂れて漏洩している部分を広い範囲で検知できる好ましいものとなる。
【0065】
この他にも、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での改良・変形等は、本発明に全て包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、発電プラント等における伝熱管群について、その漏洩を検知する配管系の漏洩確認方法であるが、発電プラント以外の配管系についても、ヒドラジンに反応する試験紙を利用することにより、その漏洩を検知するものとして、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
P…発電プラント
G…発電機
T1…低圧蒸気タービン
T2…高中圧蒸気タービン
GT…ガスタービン
I…排熱回収ボイラを備えている施設
S…作業員
D…伝熱管群
d…伝熱管
1…試験紙
2…シート
3…アンカー
10…漏洩確認装置
11…支持杆
12…載置板
13…接続杆
14…突部
15…突出板片
16…孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、発電プラント等における伝熱管群について、ヒドラジンに反応する試験紙を利用してその漏洩を検知する、配管系の漏洩確認方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複合サイクル式の発電プラントP等においては、例えば、図8に示すように、発電機G、低圧蒸気タービンT1、高中圧蒸気タービンT2、ガスタービンGTが存在しており、ガスタービンGTからは、高温となっている大量の排気ガスが排出される。この排気ガスは、排熱回収ボイラを備えている施設Iに送り込まれる。
【0003】
排熱回収ボイラを備えている施設I内には、例えば、図9に示すように、多数の伝熱管dが積層状に配置されている伝熱管群Dが存在している。この伝熱管群Dにおいては、高温の排気ガスにより、伝熱管d内の液体が蒸気に変換されて、蒸気タービンT1、T2に再度送り込まれる構造となっている。
【0004】
この複数の伝熱管dにより構成されている伝熱管群Dにおいて、個々の伝熱管dに、経年変化による材料の腐食等を原因として損傷が生じると、当該損傷部分から高温・高圧の水や蒸気が漏洩し、プラントの発電機能を損なうと共に、最悪の場合には、発電プラントPの全体が停止してしまう危険性がある。
【0005】
その為、排熱回収ボイラを備えている施設I内に配置されている伝熱管群Dにおいては、個々の伝熱管dに所定の水圧を掛けて漏洩があるかどうかを確認する作業を、定期的に実施している。
【0006】
この伝熱管dにおける漏洩の確認は、例えば、図10・図11に示すように、作業員Sが伝熱管群Dの下側に移動し、伝熱管群Dの下方から個々の伝熱管dを見上げるように視認して、個々の伝熱管dから水滴が垂れているかどうかを確認していた。
【0007】
このとき、図11に示すように、作業員Sは、伝熱管群Dの下側から真上を見るのではなく、斜め上方を見ることにより、複数の伝熱管dの周面を視認して、漏洩を確認していた。
【0008】
この他、配管の漏洩を確認する手法として、例えば、特許文献1に示すように、液体シール部から滴下する液滴に向けて水平面でスリット状の平行光を照射する光源と、平行光の液滴による散乱光を検出して滴下液滴数を計数する光学的検出器から成る、滴下液滴の遠隔検出装置を使用した手法がある。
【0009】
また、特許文献2に示すように、被検査対象管の内部に水圧を負荷した後、近赤外線センサを備えている水分計を被検査対象管の外面に接近させ、この水分計により被検査対象管の外面に滲み出た漏水を検知して、被検査対象管の内部から外面に滲み出た漏水の有無を検査する手法がある。
【0010】
さらに、特許文献3に示すように、保温、断熱或いは遮音を目的として配管の外周に装着される抱持材であって、この抱持材の外周面には透明な防湿層が設けられ、また前記抱持材の配管と接触する内周面、または前記抱持材の防湿層と接触する外周面、または前記抱持材の内部に、水分に接触することで変色する物質を含んだ層が形成されている配管用抱持材により、配管の漏洩の有無を検出する手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平2−57656号公報
【特許文献2】特開平4−145340号公報
【特許文献3】特開2006−284511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、図10・図11に示すような、伝熱管dにおける従来の漏洩の確認方法においては、作業員Sが伝熱管群Dの下側に移動し、後頭部が背中側に近づくように自身の首を大きく曲げた状態で伝熱管群Dの下方から個々の伝熱管dを見上げるように視認することから、この首を大きく曲げた姿勢を長時間維持することが困難で、作業員Sが疲労してしまう要因となっていた。その為、作業員Sは、こまめに休憩する必要があり、漏洩の確認に長時間を要していた。
【0013】
また、多数の伝熱管dが積層状に配置されている伝熱管群Dを下方から視認すると、作業員Sは、伝熱管dの周面が連続して存在している略同一の景色を継続して視認することとなり、同じく作業員Sの疲労の原因となっていた。
【0014】
さらに、排熱回収ボイラを備えている施設Iが大型であるときには、伝熱管dも必然的に長くなり、個々の伝熱管dの数や積層する階層の数も増加することから、ある程度の人員を確保した、多人数による視認作業を実施しなければならなかった。
【0015】
この他、所定の配管の漏洩を確認する特許文献1に示す手法においては、水平面でスリット状の平行光を照射する光源と、平行光の液滴による散乱光を検出して滴下液滴数を計数する光学的検出器とから成る滴下液滴の遠隔検出装置を使用しており、基本的に水平面での滴下液滴数を計数することになる。その為、図10・図11に示すように、作業員Sが伝熱管群Dの下側から斜め上方を見て、複数の伝熱管dの漏洩を確認するような状況に適合するものではない。
【0016】
また、漏水の有無を検査する特許文献2に示す手法においては、被検査対象管の内部に水圧を負荷した後、近赤外線センサを備えている水分計を被検査対象管の外面に接近させ、この水分計により被検査対象管の外面に滲み出た漏水を検知することから、多数の伝熱管dが積層状に配置されている伝熱管群Dにおいて、内部側に存在する伝熱管dには、近赤外線センサを備えている水分計を接近させることができない事態が生じる。
【0017】
さらに、配管の漏洩の有無を検出する特許文献3に示す手法においては、内周面と外周面に、水分に接触することで変色する物質を含んだ層が形成されている配管用抱持材を、配管の外周に装着するものであるが、排熱回収ボイラを備えている施設Iにおいて、多数の伝熱管dの全てに配管用抱持材を装着するのは、現実的に困難である。
【0018】
そこで、本発明は、如上のような従来存した諸事情に鑑み創出されたもので、多数の伝熱管が積層状に配置されている伝熱管群において、個々の伝熱管の漏洩をきわめて簡単に検知することのできる、配管系の漏洩確認方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明に係る配管系の漏洩確認方法は、配管系の漏洩を、ヒドラジンに反応する試験紙を利用して検知することにより、上述した課題を解決した。
【0020】
また、配管系は、発電プラント等における伝熱管群であることにより、同じく上述した課題を解決した。
【0021】
さらに、伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置したことにより、同じく上述した課題を解決した。
【0022】
また、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を、伝熱管群の中に挿入したことにより、同じく上述した課題を解決した。
【0023】
加えて、伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置する工程と、漏洩が確認された部分の伝熱管群の中に、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を挿入する工程から成ることにより、同じく上述した課題を解決した。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る配管系の漏洩確認方法は、配管系の漏洩を、ヒドラジンに反応する試験紙を利用して検知することから、この試験紙の変色により、配管系の漏洩を、誰もがきわめて簡単に検知することができる。
【0025】
また、配管系は、発電プラント等における伝熱管群であるときにも、試験紙の変色により、伝熱管群における漏洩を、誰もが簡単に検知することができる。
【0026】
即ち、発電プラント等においては、排熱回収ボイラを備えている施設内に配置されている伝熱管群を構成する個々の伝熱管に所定の水圧を掛けて、漏洩があるかどうかを確認する作業を定期的に実施している。
【0027】
このとき、個々の伝熱管に送り込む液体に、ヒドラジンを含有させている。その為、伝熱管から水滴が垂れて漏洩したときに、水滴が試験紙に付着すると、当該水滴が付着した部分の試験紙は、ヒドラジンに反応して変色することとなる。作業員は、この様な試験紙の変色を確認することにより、伝熱管群(伝熱管)において水滴が垂れて漏洩している事態を確実に認識できるのである。
【0028】
具体的には、伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置して、このシート上の試験紙の変色を確認することにより、伝熱管群(伝熱管)から水滴が垂れて漏洩している事態を認識するのである。
【0029】
また、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を、伝熱管群の中に挿入したときには、伝熱管群において、水滴が垂れて漏洩している伝熱管を具体的に特定することができる。
【0030】
即ち、漏洩確認装置を、それぞれの載置板が支持杆に沿うように配置されている折り畳み状態とし、伝熱管群の下側から斜め上方を向くようにして、伝熱管群の中に挿入していく。
【0031】
そして、漏洩確認装置の先端部が、伝熱管群の最上部に配置されている伝熱管に近接したとき、個々の載置板がいずれも水平に配置されている展開状態とし、個々の載置板を、伝熱管群を構成する個々の伝熱管に、極めて近接させた状態とする。
【0032】
このとき、個々の載置板の上には、それぞれヒドラジンに反応する試験紙を貼付していることから、特定の伝熱管から水滴が垂れて漏洩しているときに、水滴が試験紙に付着して試験紙が変色することとなる。作業員は、この試験紙が変色している載置板を確認することにより、伝熱管群において、水滴が垂れて漏洩している伝熱管を具体的に特定するのである。
【0033】
この様に、本発明に係る配管系の漏洩確認方法は、伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置する工程と、漏洩が確認された部分の伝熱管群の中に、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を挿入する工程から成ることから、シート上の試験紙の変色を確認することにより、伝熱管群(伝熱管)から水滴が垂れて漏洩している事態を認識することができると共に、漏洩が確認された部分の伝熱管群の中に漏洩確認装置を挿入して、水滴が垂れて漏洩している伝熱管を具体的に特定できるのである。
【0034】
その結果、経年変化による材料の腐食等を原因として損傷が生じ、水滴が垂れて漏洩している伝熱管に対して、必要な補修を確実に施すことができる。
【0035】
また、水滴が垂れて漏洩している伝熱管を確認するときに、作業員は、伝熱管群の下側に移動し、後頭部が背中側に近づくように自身の首を大きく曲げた状態で伝熱管群の下方から個々の伝熱管を見上げるように視認する必要も無いので、作業員が疲労してしまう事態も回避できる。
【0036】
さらに、作業員は、伝熱管の周面が連続して存在している略同一の景色を継続して視認する必要も無いので、極度な疲労を引き起こすことも無い。
【0037】
また、シート上の試験紙の変色を確認することにより、伝熱管群(伝熱管)から水滴が垂れて漏洩している事態を認識することができると共に、漏洩が確認された部分の伝熱管群の中に漏洩確認装置を挿入して、水滴が垂れて漏洩している伝熱管を具体的に特定できることから、全体の漏洩確認作業を、極めて少人数の作業員で、迅速に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置した状態を示す側面図である。
【図2】伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置した状態を示す斜視図である。
【図3】漏洩確認装置の構成を示すもので、(a)は一対の支持杆の間において、複数の載置板を水平に回動させた展開状態を、正面側から見た斜視図、(b)は同様の展開状態を、背面側から見た斜視図である。
【図4】漏洩確認装置の構成を示すもので、(a)は一対の支持杆の間において、複数の載置板を、支持杆に沿うように回動させた折り畳み状態を、正面側から見た斜視図、(b)は同様の折り畳み状態を、背面側から見た斜視図である。
【図5】伝熱管群の中に漏洩確認装置を挿入した状態を示すもので、(a)は複数の載置板を、支持杆に沿うように回動させた折り畳み状態を示す側面図、(b)は複数の載置板を水平に回動させた展開状態を示す側面図である。
【図6】長尺な載置板を複数備えている漏洩確認装置において、それぞれの載置板を水平に回動させた展開状態を、正面側から見た状態の斜視図である。
【図7】長尺な載置板を複数備えている漏洩確認装置において、それぞれの載置板を水平に回動させた展開状態を、背面側から見た状態の斜視図である。
【図8】発電機、低圧蒸気タービン、高中圧蒸気タービン、ガスタービンが存在している発電プラント等において、ガスタービンからの排気ガスが、排熱回収ボイラを備えている施設に送り込まれる状態を示す概略の説明図である。
【図9】伝熱管群による排熱回収ボイラを備えている施設の斜視図である。
【図10】作業員が伝熱管群の下側に移動し、伝熱管群の下方から個々の伝熱管を見上げるように視認して、個々の伝熱管から水滴が垂れているかどうかを確認している状態を示す斜視図である。
【図11】作業員が、伝熱管群の下側から斜め上方を見ることにより、複数の伝熱管の周面を視認して、個々の伝熱管から水滴が垂れているかどうかを確認している状態を示す概略の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明に係る配管系の漏洩確認方法は、配管系の漏洩を、ヒドラジンに反応する試験紙1を利用して検知するものである。ヒドラジンは、分子式NH2NH2で表示され、水によく溶ける無色・発煙性の液体であり、弱い塩基性を示すものである。
【0040】
配管系は、主として、発電プラントP等において、排熱回収ボイラを備えている施設I等に設置されている伝熱管群Dである。この伝熱管群Dは、例えば、図1・図9に示すように、多数の伝熱管dが積層状に配置されて構成されている。
【0041】
この排熱回収ボイラを備えている施設I内に配置されている伝熱管群Dにおいては、個々の伝熱管dに所定の水圧を掛けて漏洩があるかどうかを確認する作業を定期的に実施している。
【0042】
このとき、個々の伝熱管dに送り込む液体に、ヒドラジンを含有させている。その為、伝熱管dから水滴が垂れて漏洩したときに、水滴が試験紙1に付着すると、当該水滴が付着した部分の試験紙1は、ヒドラジンに反応して変色することとなる。作業員Sは、この様な試験紙1の変色を確認することにより、伝熱管群D(伝熱管d)から水滴が垂れて漏洩している事態を認識するのである。
【0043】
具体的には、例えば、図1・図2に示すように、伝熱管群Dの下方に、ヒドラジンに反応する試験紙1を貼付したシート2を設置して、伝熱管群D(伝熱管d)からの漏洩を確認している。
【0044】
シート2は、例えば、ポリエチレン等の合成樹脂製のシートを用いる。このシート2は、伝熱管群Dの全体的な配置形状に応じて、例えば、所定の大きさの方形状に形成されている。このシート2に貼付する試験紙1も、シート2と略同一形状に形成されている。具体的には、試験紙1は、シート2よりもやや小さい方形状に形成されている。
【0045】
試験紙1を貼付しているシート2は、その外縁部分が、複数のアンカー3により施設Iの所定の位置に固定されている。
【0046】
この様に、伝熱管群D(伝熱管d)の下方にヒドラジンに反応する試験紙1を貼付したシート2を設置して、この試験紙1が変色したとき、当該変色部分の上方に位置している伝熱管群D(伝熱管d)において、水滴が垂れている漏洩の事態が生じていることを確認できるのである。
【0047】
このとき、伝熱管群Dは、多数の伝熱管dが積層状に配置されて構成されていることから、この積層状に配置されているどの伝熱管dから水滴が垂れているのかを、さらに確認しなければならない。その為、漏洩が確認された部分の伝熱管群Dの中に、漏洩確認装置10を挿入する措置が実施される。
【0048】
この漏洩確認装置10は、図3(a)(b)に示すように、所定の長さを有する一対の支持杆11の間に、複数の載置板12を回動可能に配置している。また、個々の載置板12の上には、それぞれヒドラジンに反応する試験紙1を貼付している。
【0049】
載置板12は、略長方形の板状に形成されており、この載置板12に貼付される試験紙1も、載置板12よりもやや小さい長方形状に形成されている。この載置板12は、その基端部側が一対の支持杆11の間に配置されている。この載置板12の基端部側は、所定の軸止め機構を介して、一対の支持杆11の間に回動可能に取り付けられている。
【0050】
この他、載置板12の基端部側には、図3(b)に示すように、所定の長さを有する板片状の接続杆13が連設されている。この接続杆13は、一対の支持杆11と同様に長尺な板片状に形成され、その長手方向に沿った所定の間隔毎に、側方に向けて突き出た一対の突部14を設けている(図3(b)の拡大部分参照)。
【0051】
また、載置板12の基端部側の側縁中央部には、図3(b)とその拡大部分に示すように、2個の突出板片15が、所定の間隔を開けて固定されている。この突出板片15は、先端部が丸味を帯びている長方形の板状に形成され、その先端部に所定の孔16が設けられている。また、2個の突出板片15は、載置板12の基端部側の側縁において、載置板12の側方に突出するように固定されている。その為、2個の突出板片15は、載置板12の水平面に、直線状に連なるような状態を維持している。
【0052】
そして、接続杆13を、載置板12の基端部側の側縁に固定している2個の突出板片15の間に配置し、接続杆13に設けられている一対の突部14のそれぞれを、2個の突出板片15の孔16に内側から挿入して、それぞれの載置板12の基端部側に、接続杆13を連設している。
【0053】
このとき、所定の長さを有する接続杆13は、それぞれの載置板12に直交するような状態に配置されている。また、接続杆13の突部14は、載置板12に固定している2個の突出板片15の孔16の内部において、回転可能に保持されている。
【0054】
その為、漏洩確認装置10においては、この接続杆13を操作して、個々の載置板12がそれぞれ水平に配置されている図3(a)(b)に示す展開状態と、個々の載置板12がそれぞれ支持杆11に沿うように配置されている図4(a)(b)に示す折り畳み状態を、適宜維持できるようなっている。
【0055】
例えば、漏洩確認装置10において、個々の載置板12が、それぞれ水平に配置されている展開状態(図3(a)(b)参照)において、接続杆13を若干下方に移動させる。すると、接続杆13の突部14も、必然的に下方に移動する。この突部14は、載置板12に固定している2個の突出板片15の孔16に保持されていることから、接続杆13の突部14が下方に移動すると、載置板12に固定している2個の突出板片15自体も、その先端部側(孔16側)が下方に向けて移動する。
【0056】
その結果、個々の載置板12は、図4(a)(b)に示すように、いずれもその先端部側が上方に向けて回動し、それぞれの載置板12が支持杆11に沿うように配置されている折り畳み状態となる。
【0057】
尚、載置板12が支持杆11に沿うように配置されている折り畳み状態(図4(a)(b)参照)において、接続杆13を若干上方に移動させると、個々の載置板12は、図3(a)(b)に示すように、いずれもその先端部側が下方に向けて回動し、それぞれの載置板12が水平に配置されている展開状態となる。
【0058】
この様に構成された漏洩確認装置10は、試験紙1を貼付しているシート2により漏洩が確認された部分の伝熱管群Dの中に挿入される。
【0059】
このとき、漏洩確認装置10は、図4(a)(b)に示すように、それぞれの載置板12が支持杆11に沿うように配置されている折り畳み状態としておく。この折り畳み状態の漏洩確認装置10を、図5(a)に示すように、伝熱管群Dの下側から、斜め上方を向くようにして、伝熱管群Dの中に挿入していく。
【0060】
そして、漏洩確認装置10の先端部が、伝熱管群Dの最上部に配置されている伝熱管dに近接したとき、接続杆13を若干上方に移動させながら、漏洩確認装置10を伝熱管群Dの中にさらに押し込む。
【0061】
すると、漏洩確認装置10を構成する個々の載置板12が、いずれもその先端部側が下方に向けて回動し、それぞれの載置板12が水平に配置されている展開状態となり(図3(a)(b)参照)、個々の載置板12は、図5(b)に示すように、伝熱管群Dを構成する個々の伝熱管dに、極めて近接した状態となる。
【0062】
このとき、個々の載置板12の上には、それぞれヒドラジンに反応する試験紙1を貼付していることから、特定の伝熱管dから水滴が垂れて漏洩しているときに、水滴が試験紙1に付着して試験紙1が変色することとなる。作業員Sは、この試験紙1が変色している載置板12を確認することにより、伝熱管群Dにおいて、水滴が垂れて漏洩している伝熱管dを具体的に特定するのである。
【0063】
尚、漏洩確認装置10の構成は、図3・図4に示すものに限定されることはない。例えば、図6・図7に示すように、一対の支持杆11の間に回動可能に配置する個々の載置板12を、長尺な長方形状とし、載置板12に貼付される試験紙1も、載置板12よりもやや小さい長尺な長方形状に形成しても良い。
【0064】
この様な漏洩確認装置10によれば、伝熱管群Dの内部において、漏洩確認装置10を構成する個々の載置板12が水平に配置されている展開状態となったとき(図6・図7・図5(b)参照)、載置板12と試験紙1が、伝熱管dの長手方向に沿った所定の幅を維持しながら、個々の伝熱管dに極めて近接した状態となり、特定の伝熱管dにおいて、水滴が垂れて漏洩している部分を広い範囲で検知できる好ましいものとなる。
【0065】
この他にも、本発明は、前記した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での改良・変形等は、本発明に全て包含されるものである。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、発電プラント等における伝熱管群について、その漏洩を検知する配管系の漏洩確認方法であるが、発電プラント以外の配管系についても、ヒドラジンに反応する試験紙を利用することにより、その漏洩を検知するものとして、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0067】
P…発電プラント
G…発電機
T1…低圧蒸気タービン
T2…高中圧蒸気タービン
GT…ガスタービン
I…排熱回収ボイラを備えている施設
S…作業員
D…伝熱管群
d…伝熱管
1…試験紙
2…シート
3…アンカー
10…漏洩確認装置
11…支持杆
12…載置板
13…接続杆
14…突部
15…突出板片
16…孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管系の漏洩を、ヒドラジンに反応する試験紙を利用して検知することを特徴とする、配管系の漏洩確認方法。
【請求項2】
配管系は、発電プラント等における伝熱管群である請求項1に記載の配管系の漏洩確認方法。
【請求項3】
伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置した、請求項2に記載の配管系の漏洩確認方法。
【請求項4】
所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を、伝熱管群の中に挿入した請求項2に記載の配管系の漏洩確認方法。
【請求項5】
伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置する工程と、漏洩が確認された部分の伝熱管群の中に、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を挿入する工程から成る、配管系の漏洩確認方法。
【請求項1】
配管系の漏洩を、ヒドラジンに反応する試験紙を利用して検知することを特徴とする、配管系の漏洩確認方法。
【請求項2】
配管系は、発電プラント等における伝熱管群である請求項1に記載の配管系の漏洩確認方法。
【請求項3】
伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置した、請求項2に記載の配管系の漏洩確認方法。
【請求項4】
所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を、伝熱管群の中に挿入した請求項2に記載の配管系の漏洩確認方法。
【請求項5】
伝熱管群の下方に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付したシートを設置する工程と、漏洩が確認された部分の伝熱管群の中に、所定の長さを有する一対の支持杆の間に、複数の載置板を回動可能に配置し、個々の載置板に、ヒドラジンに反応する試験紙を貼付して構成している漏洩確認装置を挿入する工程から成る、配管系の漏洩確認方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−117973(P2012−117973A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−269519(P2010−269519)
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【Fターム(参考)】
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