説明

配管継手

【課題】解除部材を操作してロックリングによるロックを解除する際、ロックが実際に解除されたか否かを感覚的に容易に把握することができ、解除操作を無理なく円滑に行うことのできる配管継手を提供する。
【解決手段】外筒部26と、爪74を周方向に沿って複数有し、配管20の外面に爪74を食い込ませて配管20を抜止状態にロックするロックリング40と、前進移動によりロックリング40の爪74を拡開させてロックを解除する解除部材46とを備えた配管継手10において、少なくとも解除部材46の前進移動開始時から解除部材46がロックリング40の爪74を拡開開始するに到るまでの所定ストローク範囲に亘って弾性変形により解除部材46に操作荷重を与えるリリース用ばね52を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、配管を抜止状態にロックするロックリング及びロックリングによるロックを解除する解除部材を備えた配管継手に関し、詳しくはロック解除のための技術手段に特徴を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、内側に配管の挿入空間を形成する外筒部と、配管の挿入方向に向けて径方向内方に斜めに突出した爪を周方向に沿って複数有し、挿入空間に挿入された配管の外面に爪を食い込ませて配管を抜止状態にロックするロックリングと、軸方向に進退可能に設けられ、前進移動によりロックリングの爪を拡開させてロックリングによるロックを解除する解除部材と、を備えた配管継手が公知である。
【0003】
図7はその一例を示している(下記特許文献1に開示)。
同図において200は配管継手で、内側に配管の挿入空間202を形成する外筒部204と、挿入空間202に挿入された配管の外面に爪を食込ませて配管を抜止状態にロックするロックリング206と、軸方向の前進移動によりロックリング206の爪を拡開させて配管外面への食込みを解除し、ロックリング206によるロックを解除する解除部材207と、を備えている。
【0004】
ここで解除部材207は円筒部208と、外筒部204の軸方向の外側において円筒部208の軸端から径方向外方に延出したフランジ部210とから成っており、そのフランジ部210に対してロック解除のための操作力を加えるようになっている。
【0005】
この配管継手200では、外筒部204の内側の挿入空間202に配管を挿入すると、ロックリング206の爪が配管の外面に食い込んで配管を抜止状態にロックする。
【0006】
一方配管を抜き出す際には、解除部材207のフランジ部210に図中左向きの押込力を加える。
すると解除部材207が図中左向きに前進してロックリング206の爪を拡開させ、配管の外面に対する爪の食込みを解除する。
ここにおいて配管が抜き出し可能となり、そこで図中右向きに引抜力を加えると配管が挿入空間202から図中右向きに抜き出される。
【0007】
しかしながら、図7に示す配管継手200を含むこの種従来の配管継手の場合、解除部材207の先端がロックリング206の爪に当ってから爪を拡開させてロックリング206によるロックを解除するのに必要なストロークが極微小ストローク(例えば0.1〜0.2mm程度)であり、そのため作業者が解除操作をしたときにロックリング206によるロックが解除されたか否かが感覚的に分かり辛いといった問題があった。
この場合確実なロック解除を期して解除部材207を過剰に押し込むと、ロックリング206の爪が変形してしまうといった問題を生ずる。
【0008】
【特許文献1】特開2000−320768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上のような事情を背景とし、解除部材を操作してロックリングによるロックを解除する際、ロックが実際に解除されたか否かを感覚的に容易に把握することができ、解除操作を無理なく円滑に行うことのできる配管継手を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
而して請求項1のものは、(a)内側に配管の挿入空間を形成する外筒部と、(b)該配管の挿入方向に向けて径方向内方に斜めに突出した爪を周方向に沿って複数有し、該挿入空間に挿入された該配管の外面に該爪を食い込ませて該配管を抜止状態にロックするロックリングと、(c)軸方向に進退可能に設けられ、前進移動により該ロックリングの爪を拡開させて該ロックリングによるロックを解除する解除部材と、を備えた配管継手において、少なくとも前記解除部材の前進移動開始時から該解除部材が前記ロックリングの爪を拡開開始するに到るまでの所定ストローク範囲に亘って弾性変形により該解除部材に操作荷重を与える弾性部材を設けたことを特徴とする。
【0011】
請求項2のものは、請求項1において、前記弾性部材が、軸方向の圧縮弾性変形により隣接する各巻線が軸直角方向に重なり合ってフラット形状化可能な円錐コイルばねであることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0012】
以上のように本発明は、解除部材の前進移動時に解除部材がロックリングの爪を拡開開始するに到るまでの所定ストローク範囲に亘って弾性変形により解除部材に操作荷重を与える弾性部材を設けたもので、本発明によれば、作業者が解除部材を軸方向に前進移動させてロックリングによるロックを解除する際、所定ストローク範囲に亘って作業者に弾性部材の弾性変形に基づく操作感、所謂手応えを感じさせることができ、これにより作業者は実際にロックリングによるロックが解除されたか否かを感覚的に容易に把握できるようになり、ロック解除の際の操作性が良好となる。
【0013】
また解除部材を操作したときにロックが実際に解除されたか否かを感覚的に把握し易いため、従来のように解除部材を過剰に操作してロックリングの爪を無理に大きく押し拡げてしまい、爪を変形させてしまうといった問題も解消することができる。
【0014】
請求項2は上記弾性部材として、軸方向の圧縮弾性変形により各巻線が軸直角方向に重なり合ってフラット形状化可能な円錐コイルばねを用いたもので、この請求項2によれば、弾性部材を設けることによって配管継手、詳しくは解除部材の周辺部が軸方向に長大化するのを防止し得て、配管継手をコンパクトに維持することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1及び図2において10は金属製の配管継手、12は継手本体で、フランジ状の大径の工具掛部14を有しており、その工具掛部14の図中右側の外周面に雄ねじ16を有している。
また雄ねじ16とは反対側の図中左側に、円筒形状の内筒部18を一体に備えている。
そしてこの内筒部18に対して樹脂製の配管20が外嵌状態に軸方向から外挿され、内筒部18に接続されるようになっている。
ここで内筒部18の外周面には、軸方向に間隔を隔てて一対のOリング溝(保持溝)22-1,22-2が形成されており、そこに弾性を有する環状のシール部材としてのOリング24-1,24-2が保持されている。
【0016】
26は配管継手10に備えられた外筒部で、外スリーブ28と内スリーブ30とから成っており、その内スリーブ30と内筒部18との間に配管20の挿入空間32を形成している。
外スリーブ28は図中右端部に雌ねじ34を有していて、その雌ねじ34において継手本体12の雄ねじ36にねじ結合され、固定されている。
この外スリーブ28には段付形状の第1挟持部38が形成されていて、この第1挟持部38が内スリーブ30の端部にて構成される第2挟持部39とともに、金属製の皿ばね状のロックリング40のリング基部72(図3参照)を軸方向に挟持し保持している。
このロックリング40は、図3に示すように周方向に連続した円環状をなすフラットなリング基部72、及びリング基部72から配管20の挿入方向に向けて径方向内方に斜めに突出する形態で、リング基部72に沿って周方向に並んで形成された複数の爪74を有しており、挿入空間32に挿入された配管20の外面に爪74を食い込ませて、配管20を抜止状態にロックしている。
【0017】
図2及び図3において、54はOリング24-1,24-2の外周側において内筒部18に嵌装された金属製のコイルばねである。
このコイルばね54は、図3に示しているように隣接する巻線56と56との間に隙間を生ぜしめないで密着巻きして成る密巻部58と、巻線56と56との間に隙間を形成する状態で疎に巻いて成る疎巻部60とを有しており、その密巻部58を挿入前の配管20の先端面20A(図2参照)の側に、また疎巻部60を反対側に位置させる状態でOリング24-1,24-2の外周側に嵌装されている。
【0018】
このコイルばね54は、配管20の先端面20Aが斜めに切断されている場合において、配管20を挿入空間32に挿入して配管20を内筒部18に対し軸方向に外嵌状態に嵌め合わせる際、斜めの先端面20AにてOリング24-1,24-2がOリング溝22-1,22-2から浮き上がるのを防止するために設けられている。
詳しくは、配管20の挿入時に密巻部58にてOリング24-1,24-2を外側から被った状態として、Oリング24-1,24-2がOリング溝22-1,22-2から浮き上がり、はみ出すのを防止する。
【0019】
図1及び図2に示しているように上記配管継手10における外筒部26、詳しくは内スリーブ30の内周面は、挿入空間32の図中右側の奥部の側が大径部62とされ、また図中左側の挿入側が小径部64とされていて、それらの間に段付部66が形成されている。
【0020】
他方、上記コイルばね54もまた図3に示しているように図中右部が大径部68、左部が小径部70とされている。
コイルばね54は、このように構成された結果、配管継手10に嵌装された状態で大径部68が内スリーブ30の段付部66に当ることによって、かかる配管継手10から脱落防止される。
【0021】
図1〜図3において、46は配管20に対するロックリング40によるロックを解除するための解除部材で円筒部48と、外筒部26の軸方向外側において円筒部48の軸端から径方向外方に延出したフランジ部50とを有しており、このフランジ部50に対してロック解除のための操作力を加えるようになっている。
【0022】
この解除部材46は、軸方向に進退可能な状態で外筒部26に組み付けられており、軸方向(図中右方向)の前進移動によりロックリング40の爪74を拡開させて、配管20の外面に対する爪74の食込みを解除する働きをなす。
【0023】
解除部材46と外筒部26、詳しくは外スリーブ28との間には環状の凹所51が形成されており、そこにリリース用ばね(弾性部材)52が収容されている。
リリース用ばね52は図4(A)にも示すように円錐コイルばねから成っており、大径側の一端を凹所51の壁面に当接させ、また小径側の一端を、解除部材46に設けた段付形状且つ環状のばね受部53に当接させ、解除部材46を後退方向(図中左方向)に弾発している。
【0024】
ここで円錐コイルばねから成るリリース用ばね52は、軸方向に隣り合う各巻線のうち小径側の巻線の外径が、大径側の巻線の内径よりも小径とされている。
この結果リリース用ばね52は軸方向に圧縮弾性変形したときに各巻線が軸直角方向に重なり合ってフラット形状化することが可能である(図4(B)参照)。
【0025】
次に本実施例形態の作用を図5に基づいて説明する。
図5(I)は外筒部26の内側の挿入空間32に配管20が挿入され、そしてその配管20の外面にロックリング40の爪74が食い込んで配管20を抜止状態にロックしている状態を示している。
このとき解除部材46は、凹所51に収容されたリリースばね52の弾発力により後退端に位置している。
【0026】
この状態から配管20を抜き出すには、図5(II)に示すように解除部材46に対して図中右向きの押込力を加え、解除部材46を軸方向(図中右向き)に前進移動させる。
【0027】
このとき解除部材46にはリリース用ばね52の弾発力が働いており、その弾発力によって解除部材46に対し操作荷重が与えられている。
作業者はこの操作荷重の下に解除部材46を図中右向きに押し込むこととなり、その際に手応えを感じながら解除部材46を押込操作することができる。
【0028】
前進移動した解除部材46はある位置で先端をロックリング40の爪74に当接させ(図5(II)に示す状態)、更なる前進移動とともに爪74を拡開させて、配管20の外面に対する爪74の食込みを解除する。即ちロックリング40によるロックを解除する(図5(III)に示す状態)。
尚このときにもリリース用ばね52の弾発力は引続き解除部材46に加わっており、ロックリング40の爪74を拡開させる際、リリース用ばね52の弾発力が爪74の弾性変形による抵抗とともに加わっている。
【0029】
さて以上のようにしてロックリング40によるロックを解除したところで、配管20に対し図中左向きの引抜力を加えると、配管20が挿入空間32から図中左向きに抜き出される。
【0030】
上記解除動作の中で、リリース用ばね52は解除部材46の前進移動に応じて圧縮方向に弾性変形するが、リリース用ばね52の各巻線は干渉することなく軸直角方向に重なり合ってフラット形状化する(図5参照)ため、リリース用ばね52を設けることによって解除部材46の周辺部が軸方向に長大化するのを防ぐことができる。
【0031】
本実施形態では、解除部材46の前進移動時に、リリース用ばね52が弾性変形して解除部材46に操作荷重を与えるため、作業者が解除部材46を軸方向に前進移動させてロックリング40によるロックを解除する際、リリース用ばね52の弾性変形に基づく操作感、所謂手応えを感じることができ、これにより作業者は実際にロックリング40によるロックが解除されたか否かを感覚的に容易に把握できるようになり、ロック解除の際の操作性が良好となる。
【0032】
また解除部材46を操作したときにロックが実際に解除されたか否かを感覚的に把握し易いため、解除部材46を過剰に操作してロックリング40の爪74を無理に大きく押し拡げてしまい、爪74を変形させてしまう問題も解消することができる。
【0033】
図6は本発明の他の実施形態を示している。
この例は解除部材90を樹脂にて構成し、そしてその解除部材90に、解除操作の際に解除部材90に対して所定の操作荷重を与える樹脂製のリリース用ばね片92を一体に成形した例である。
このリリース用ばね片92は、上記実施形態におけるリリースばね52と同様の働きをなすもので、解除部材90から図中右向きに進むに連れて拡開した形状をなしており、その先端即ち拡開端を凹所51の壁面に弾性的に当接させている。
【0034】
尚このリリース用ばね片92は周方向に連続した環状をなしている。ただし周方向に沿ってリリース用ばね片92を部分的に設けておくこともできる。
【0035】
以上本発明の実施例形態を詳述したがこれはあくまで一例示であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態の配管継手を配管接続状態で一部切り欠いて示す図である。
【図2】同実施形態の配管継手を配管接続前の状態で示す図である。
【図3】同実施形態における配管継手を分解して示す斜視図である。
【図4】同配管継手のリリース用ばねの形状を示した図である。
【図5】同配管継手におけるロック解除の際の作用説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図7】従来の配管継手を示す図である。
【符号の説明】
【0037】
10 配管継手
20 配管
26 外筒部
32 挿入空間
40、90 ロックリング
46 解除部材
52 リリース用ばね(弾性部材)
74 爪
92 リリース用ばね片(弾性部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)内側に配管の挿入空間を形成する外筒部と、(b)該配管の挿入方向に向けて径方向内方に斜めに突出した爪を周方向に沿って複数有し、該挿入空間に挿入された該配管の外面に該爪を食い込ませて該配管を抜止状態にロックするロックリングと、(c)軸方向に進退可能に設けられ、前進移動により該ロックリングの爪を拡開させて該ロックリングによるロックを解除する解除部材と、を備えた配管継手において、
少なくとも前記解除部材の前進移動開始時から該解除部材が前記ロックリングの爪を拡開開始するに到るまでの所定ストローク範囲に亘って弾性変形により該解除部材に操作荷重を与える弾性部材を設けたことを特徴とする配管継手。
【請求項2】
請求項1において、前記弾性部材が、軸方向の圧縮弾性変形により隣接する各巻線が軸直角方向に重なり合ってフラット形状化可能な円錐コイルばねであることを特徴とする配管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−322575(P2006−322575A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−147639(P2005−147639)
【出願日】平成17年5月20日(2005.5.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】