説明

配管継手

【課題】配管を継手本体の筒体に挿し込む際のOリングによる抵抗を少なくし、配管をスムーズに筒体に挿し込み得て、配管の接続作業性を良好となすことのできる配管継手を提供する。
【解決手段】内筒18の外周面の環状の保持溝22にOリング24を保持させ、内筒18に挿し込んだ配管20と内筒18との間をOリング24にてシールする配管継手10において、Oリング24を配管20の挿込み方向と直角方向に対して傾斜状態としておく。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は配管継手に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、筒体の環状の保持溝に弾性を有する環状のシール部材を保持させ、筒体に挿し込んだ配管と筒体との間をそのシール部材にてシールするようになした配管継手が広く用いられている。
図7はその一例を示している。
同図において200は配管継手で、202はその配管継手200に備えられた筒体である。
筒体202の外周面には環状の保持溝204が設けられていて、そこに弾性を有する環状のシール部材としてのOリング206が保持されており、筒体202の軸方向に外嵌状態に挿し込まれた配管208と筒体202との間をOリング206にてシールするようになっている。
【0003】
ところでこの配管継手200において、配管208を配管継手200に接続すべく筒体202に対して外嵌状態に挿し込む際、配管208の先端面208Aが配管208の軸直角方向の面をなしていると、図7(ロ)に示しているように配管208の先端面208Aが同時にOリング206の全周に当接してこれを縮径変形させることから、その際に大きな抵抗力が急激に発生し、そのため大きな抵抗力に打ち勝って強い力で配管208を筒体202に挿し込まなければならず、配管継手200への配管208の接続作業性が悪い問題があった。
尚図7は筒体に対して配管を外嵌状態に挿し込む場合の例であるが、筒体に対して配管を内嵌状態に挿し込み、そして筒体の内周面に保持させたシール部材にて筒体と配管との間をシールするようになした配管継手においても同様の問題が生ずる。
【0004】
本発明はこのような課題を解決するために案出されたものである。
尚、下記特許文献1には自在管継手についての発明が示され、そこにおいてOリングを管軸方向に対して傾斜した状態に設けた点が開示されているが、このものは一方の継手体の挿込方向に対してOリングは傾いておらず、本発明とは異なったものである。
【0005】
【特許文献1】特開平9−60776号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は以上のような事情を背景とし、配管を継手本体の筒体に挿し込む際のOリングによる抵抗を少なくし、配管をスムーズに筒体に挿し込み得て、配管の接続作業性を良好となすことのできる配管継手を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
而して請求項1のものは、筒体の環状の保持溝に弾性を有する環状のシール部材を保持させ、該筒体に挿し込んだ配管と該筒体との間を該シール部材にてシールするようになした配管継手において、前記保持溝の形状を、少なくとも前記筒体に対して前記配管を挿し込む際に前記シール部材を該配管の挿込み方向と直角方向に対して傾斜状態とする形状となしてあることを特徴とする。
【0008】
請求項2のものは、請求項1において、前記保持溝における前記配管の挿込み方向の奥側の面である溝後面及び前側の溝前面を含む保持溝全体が前記配管の挿込み方向に対して傾斜しており、前記シール部材の装着時に該シール部材を前記傾斜状態に拘束保持するものとなしてあることを特徴とする。
【0009】
請求項3のものは、請求項1において、前記保持溝における前記配管の挿込み方向の奥側の面である溝後面が前記傾斜形状の面となしてあるとともに、前側の溝前面が前記筒体の軸直角方向の面となしてあり、前記配管の挿込み時に前記シール部材が該配管に押されて傾斜するようになしてあることを特徴とする。
【0010】
請求項4のものは、請求項3において、前記傾斜形状の面を有するリングを前記筒体に嵌着することで前記溝後面が形成してあることを特徴とする。
【0011】
請求項5のものは、請求項1〜4の何れかにおいて、前記配管継手が前記配管を前記筒体に外嵌状態に挿し込ませるものであり、前記保持溝及び前記シール部材が該筒体の外周面に設けてあり、更に該筒体には、前記配管の挿込み時に該配管の先端面と対向する側の端面を、該先端面の形状に追従変形させることによって全周に亘り該先端面に当接させ、前記シール部材の径方向への突出を防止しつつ該配管の挿込みにつれて軸方向に圧縮弾性変形する弾性体が前記シール部材の外周側に嵌装してあることを特徴とする。
【発明の作用・効果】
【0012】
以上のように本発明は、筒体の保持溝の形状を、少なくとも筒体に対して配管を挿し込む際にシール部材を配管の挿込方向と直角方向に対し傾斜状態とするようになしたもので、本発明によれば、先端面が軸直角方向の面を成す配管を配管継手の筒体に挿し込む際、配管の先端面がシール部材に対して全周に亘り同時に当接して全体を一挙に弾性変形させるといったことがなく、配管の挿込みにつれて徐々にシール部材を弾性変形させつつシール部材を配管に弾性嵌合させることができる。
従って配管の挿込時に急激に大きな抵抗力を発生させることがなく、配管を円滑に筒体に挿込作業し得て、配管継手に対する配管の接続作業性を良好となすことができる。
【0013】
本発明においては、請求項2に従って保持溝全体を配管の挿込方向と直角方向に対して傾斜させ、シール部材をその保持溝の傾斜形状に拘束保持するようになしておくことができる。
この場合にはシール部材を筒体に装着した時点でシール部材が傾斜した状態に保持される。
【0014】
一方請求項3に従って保持溝における配管の挿込方向の奥側の面である溝後面を上記の傾斜形状の面に、また前側の溝前面を筒体の軸直角方向の面に形成しておき、配管の挿込時にシール部材が配管に押されて傾斜するようになしておくことができる。
【0015】
この場合において、上記の傾斜形状の面を有するリングを筒体に嵌着することで上記の溝後面を形成することができ(請求項4)、而してこのようにすれば請求項3の保持溝を容易に筒体に具備させることができる。
ところで上記のようにシール部材を傾斜状態とすると、その傾斜角度が一定以上の大きな急角度であるとき、配管の挿込時にシール部材が保持溝から浮上りを生じることが危惧される。
【0016】
ここにおいて請求項5は、配管が筒体に外嵌状態に挿し込まれる配管継手において、配管の挿込時に配管の先端面と対向する側の端面を配管の先端面の形状に追従変形させることによって、全周に亘り先端面に当接させ、筒体の外周面に保持させたシール部材の径方向への突出を防止しつつ、配管の挿込みにつれて軸方向に圧縮弾性変形する弾性体を筒体に且つシール部材の外周側に嵌挿するようになしたもので、この請求項5によれば、シール部材が傾斜した状態にあってもその浮上りを良好に防止することができる。
【0017】
尚本発明においては傾斜した状態のシール部材が配管の挿込みによって浮上りを生ずるのを防止すべく、その傾斜角度を7度以下となしておくことが望ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
次に本発明の実施形態を図面に基づいて詳しく説明する。
図1〜図3において、10は金属製の配管継手、12は継手本体で、フランジ状の大径の工具掛部14を有しており、その工具掛部14の図中右側の外周面に雄ねじ16を有している。
また雄ねじ16とは反対側の図中左側に円筒形状の内筒(筒体)18を一体に備えている。
そしてこの内筒18に対して樹脂製の配管20が外嵌状態に軸方向に挿し込まれ、内筒18に接続されるようになっている。
ここで内筒18の外周面には環状の保持溝22が形成されており、そこに弾性を有する環状のシール部材としてのOリング24が保持されている。
【0019】
26は配管継手10に備えられた外筒で外スリーブ28と内スリーブ30とから成っており、その内スリーブ30と内筒18との間に配管20の挿入空間32を形成している。
外スリーブ28は図中右端部に雌ねじ34を有していて、その雌ねじ34において継手本体12の雄ねじ36にねじ結合され、固定されている。
この外スリーブ28には段付形状の第1挟持部38が形成されていて、この第1挟持部38が、内スリーブ30の端部にて構成される第2挟持部39とともに、金属製の皿ばね状のロックリング40のリング基部42(図3参照)を軸方向に挟持し保持している。
【0020】
このロックリング40は、図3に示すように周方向に連続した円環状をなすフラットなリング基部42、及びリング基部42から配管20の挿込み方向に向けて径方向内方に斜めに突出する形態で、リング基部42に沿って周方向に並んで形成された複数の爪44を有しており、図1に示しているように挿入空間32に挿し込まれた配管20の外面に爪44を食い込ませて、配管20を抜止状態にロックしている。
【0021】
図2及び図3において、46はOリング24の外周側において内筒18に嵌装された金属製のコイルばねである。
このコイルばね46は、図3に示しているように隣接するコイル48と48との間に隙間を生ぜしめないで密着巻きして成る密巻部50と、コイル48と48との間に隙間を形成する状態で疎に巻いて成る疎巻部52とを有しており、その密巻部50を挿入前の配管20の先端面20A(図2参照)の側に、また疎巻部52を反対側に位置させる状態でOリング24の外周側に嵌装されている。
【0022】
このコイルばね46は、配管20を挿入空間32に挿し込んで配管20を内筒18に対し軸方向に外嵌状態に嵌め合わせる際、Oリング24が保持溝22から浮き上がるのを防止するために設けられている。
詳しくは、コイルばね46は密巻部50の端面を配管20の先端面20Aに全周に亘り密着状態に当接させ、そして配管20の挿し込みにつれて疎巻部52の大きな弾性変形に基づいて軸方向に圧縮弾性変形し、そして密巻部50にてOリング24を外側から覆った状態として、Oリング24が保持溝22から浮き上がり食み出すのを防止する。
【0023】
図1及び図2に示しているように、上記配管継手10における外筒26、詳しくは内スリーブ30の内周面は、挿入空間32の図中右側の奥部の側が大径部54とされ、また図中左側の挿入側が小径部56とされていて、それらの間に段付部58が形成されている。
他方、上記コイルばね46もまた図3に示しているように図中右部が大径部60、左部が小径部62とされている。
コイルばね46は、このように構成された結果、配管継手10に嵌装された状態で大径部60が内スリーブ30の段付部58に当ることによって、かかる配管継手10から脱落防止される。
【0024】
図1〜図3において、64はロックリング40に対するバックアップリングを兼ねたロック解除部材で円筒形状をなしており、外筒26、詳しくは外スリーブ28の内周面に沿って軸方向に進退可能に設けられている。
このロック解除部材64は軸方向、詳しくは図中右方向の前進移動によってロックリング40の爪44を拡開させ、配管20の外面に対する爪44の食込みを解除する働きをなす。即ち配管20に対するロックリング40によるロックを解除する働きをなす。
このロック解除部材64は、外スリーブ28の内周面に環状に突出形成された第1係合部66によって軸方向に抜け防止されている。
【0025】
このロック解除部材64の更に図中左側には、円筒形状をなす解除操作部材68が軸方向に所定ストローク進退移動可能に設けられている。
この解除操作部材68には被係合部72が径方向外方に突出する状態で設けられており、解除操作部材68は、この被係合部72に対して外スリーブ28の第2係合部70が軸方向に係合することで外筒26から軸方向に抜け止めされる。
尚この円筒形状をなす解除操作部材68には、その軸端部に径方向外方に突出したフランジ部74が設けられている。
【0026】
本実施形態においては、図2及び図4に示しているように保持溝22全体が内筒32の軸方向である配管20の挿込方向と直角方向に対して角度θ(図4(ロ)参照)で傾斜しており、そこに保持されているOリング24もまた、対応した角度の傾斜状態に保持されている。
詳しくは、配管20の挿込方向の奥側の面である溝後面22A及び前側の溝前面22B、更にこれら溝後面22A,溝前面22Bを含む保持溝22全体が、配管20の挿込前の状態において配管20の挿込方向と直角方向に対し傾斜させられている。
【0027】
従って本実施形態では、先端面20Aが軸直角方向の面を成す配管20を内筒18に対して外嵌状態に軸方向に挿し込む際、図4,図5に示すように先端面20Aが同時にOリング24に対し全周に亘り当接せず、先ずその一部(図5では下部)が部分的にOリング24に当接してこれを縮径方向に弾性変形させながらOリング24の下部に嵌り合い(図5(I))、更に配管20の前進移動につれてOリング24の中間部までが配管20に嵌り合い(図5(II))、そして最終的にOリング24全体が配管20に嵌り合って(図5(III))、配管20の内周面に弾性接触し、配管20と内筒18との間をシールする。
【0028】
従って本実施形態では、配管20の挿込時に急激に大きな抵抗力が発生するといったことがなく、配管20を小さな力で円滑に内筒18に挿込作業することができ、配管継手10に対する配管20の接続作業性を良好となすことができる。
【0029】
図6は本発明の他の実施形態を示している。
この実施形態は、内筒18に小径部76を部分的に形成して、そこに傾斜面を有し且つ周方向所定箇所に切目78を有する弾性リング80を嵌着して保持溝22を形成し、そして弾性リング80の傾斜面にて傾斜形状の溝後面22Aを形成するとともに、小径部76前端の段付面にて軸直角方向の溝前面22Bを形成し、かかる保持溝22にOリング24を装着し保持させるようにした例である。
【0030】
この実施形態では、Oリング24は内筒18へのセット時には、即ち保持溝76への装着時には軸直角方向に立った姿勢をなしているが、配管20を挿し込むと配管20の挿込みにつれてOリング24が傾斜し、その傾斜した状態でOリング24が図中下部から漸次配管20の内面に弾性嵌合して行く。
従ってこの実施形態においても、配管20の挿込時にOリング24の弾性変形に基づく急激な大きな抵抗が発生することはなく、配管20の挿込みにつれてOリング24の抵抗が徐々に生ずるため、配管20を小さな力で円滑に挿込作業することができる。
【0031】
また本実施形態では弾性リング80を内筒18の小径部76に嵌着することで傾斜形状の溝後面22Aを形成しており、この場合内筒18に保持溝22を容易に具備させることができる。
【0032】
以上本発明の実施形態を詳述したがこれはあくまで一例示である。
例えば本発明は、筒体の内周面に保持溝を形成してそこにシール部材を保持させておき、配管を筒体に内嵌状態に挿し込んで配管と筒体との間をシール部材にてシールする形態の配管継手に対しても適用することが可能であり、更に本発明は樹脂配管以外の他の材質から成る配管の接続に際して適用することも可能であるなど、その趣旨を逸脱しない範囲において種々変更を加えた形態で構成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の一実施形態の配管継手を配管接続状態で一部切り欠いて示す図である。
【図2】同実施形態の配管継手を配管接続前の状態で示す図である。
【図3】同実施形態における配管継手を分解して示す斜視図である。
【図4】同実施形態の配管継手に配管を挿入する際のコイルばねの作用説明図である。
【図5】同実施形態の配管継手に配管を挿入する際の傾斜Oリングの作用説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態を示す図である。
【図7】従来の配管継手を示す図である。
【符号の説明】
【0034】
10 配管継手
18 内筒(筒体)
20 配管
22 保持溝
22A 溝後面
22B 溝前面
24 Oリング
46 コイルばね
80 弾性リング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒体の環状の保持溝に弾性を有する環状のシール部材を保持させ、該筒体に挿し込んだ配管と該筒体との間を該シール部材にてシールするようになした配管継手において
前記保持溝の形状を、少なくとも前記筒体に対して前記配管を挿し込む際に前記シール部材を該配管の挿込み方向と直角方向に対して傾斜状態とする形状となしてあることを特徴とする配管継手。
【請求項2】
請求項1において、前記保持溝における前記配管の挿込み方向の奥側の面である溝後面及び前側の溝前面を含む保持溝全体が前記配管の挿込み方向に対して傾斜しており、前記シール部材の装着時に該シール部材を前記傾斜状態に拘束保持するものとなしてあることを特徴とする配管継手。
【請求項3】
請求項1において、前記保持溝における前記配管の挿込み方向の奥側の面である溝後面が前記傾斜形状の面となしてあるとともに、前側の溝前面が前記筒体の軸直角方向の面となしてあり、前記配管の挿込み時に前記シール部材が該配管に押されて傾斜するようになしてあることを特徴とする配管継手。
【請求項4】
請求項3において、前記傾斜形状の面を有するリングを前記筒体に嵌着することで前記溝後面が形成してあることを特徴とする配管継手。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかにおいて、前記配管継手が前記配管を前記筒体に外嵌状態に挿し込ませるものであり、前記保持溝及び前記シール部材が該筒体の外周面に設けてあり、更に該筒体には、前記配管の挿込み時に該配管の先端面と対向する側の端面を、該先端面の形状に追従変形させることによって全周に亘り該先端面に当接させ、前記シール部材の径方向への突出を防止しつつ該配管の挿込みにつれて軸方向に圧縮弾性変形する弾性体が前記シール部材の外周側に嵌装してあることを特徴とする配管継手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−24233(P2007−24233A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−209119(P2005−209119)
【出願日】平成17年7月19日(2005.7.19)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【Fターム(参考)】