説明

配線パターン形成基材

【課題】プラスチック基材の特性を維持することができると共に、カールしにくくすることができる配線パターン形成基材を提供する。
【解決手段】プラスチック基材2と、前記プラスチック基材2に設けられたバリア層3と、前記バリア層3に設けられた溶剤系接着剤層4と、前記溶剤系接着剤層4に設けられた配線パターン5とを備えて形成される。前記バリア層3が、前記溶剤系接着剤層4の溶剤が前記プラスチック基材2に浸入することを抑制するものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線パターンが基材の表面に形成された配線パターン形成基材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットの発達に伴い、無線LANが普及している。従来の無線LANでは、立体的なアンテナが使用されていたので場所を取っていたが、近年、このような問題を解決するためにフィルムタイプの2次元アンテナが開発されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
そして、上記のフィルムアンテナは、例えば、図2に示すような工程で配線パターン形成基材1として製造することができる。まず図2(a)(b)のようにポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂等のプラスチック基材2の表面に溶剤系接着剤層4を設けた後、図2(c)のように溶剤系接着剤層4の表面に銅箔等の金属箔6を貼り合わせて設ける。このように、溶剤系接着剤層4によってプラスチック基材2と金属箔6とが接着されている。そして、フォトエッチング法(フォトリソグラフィ)により配線パターン5をアンテナパターン状に形成することによって、図2(d)のような配線パターン形成基材1を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−252298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の配線パターン形成基材1は、通常、プラスチック基材2がポリエチレンテレフタレート樹脂で形成されている。この場合、屋内で配線パターン形成基材1を使用する場合には特性の劣化は特に問題とならないが、紫外線(UV)の非常に多い屋外で使用する場合には支障をきたすものである。
【0006】
また、ポリエチレンテレフタレート樹脂の代わりに耐候性の高いポリカーボネート(PC)樹脂で形成されたプラスチック基材2を用いると、図3(b)のように配線パターン形成基材1全体がカールしやすくなり、その後の加工や使用に困難を伴うものである。
【0007】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、プラスチック基材の特性を維持することができると共に、カールしにくくすることができる配線パターン形成基材を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る配線パターン形成基材は、プラスチック基材と、前記プラスチック基材に設けられたバリア層と、前記バリア層に設けられた溶剤系接着剤層と、前記溶剤系接着剤層に設けられた配線パターンとを備えて形成され、前記バリア層が、前記溶剤系接着剤層の溶剤が前記プラスチック基材に浸入することを抑制するものであることを特徴とするものである。
【0009】
前記配線パターン形成基材において、前記バリア層が、活性化エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれるもので形成されていることが好ましい。
【0010】
前記配線パターン形成基材において、前記プラスチック基材が、ポリカーボネート樹脂及びこの誘導体から選ばれるもので形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、プラスチック基材の特性を維持することができると共に、カールしにくくすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る配線パターン形成基材の製造方法の一例を示すものであり、(a)〜(d)は断面図である。
【図2】従来の配線パターン形成基材の製造方法の一例を示すものであり、(a)〜(d)は断面図である。
【図3】平面上に置かれた配線パターン形成基材を示すものであり、(a)は本発明(実施例1)の側面図、(b)は従来(比較例1)の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
本発明に係る配線パターン形成基材1は、プラスチック基材2と、バリア層3と、溶剤系接着剤層4と、配線パターン5とを備えて形成されている。このような配線パターン形成基材1は、例えば、図1に示すような工程で製造することができる。
【0015】
まず図1(a)のようにプラスチック基材2の表面にバリア層3を設ける。図1ではバリア層3はプラスチック基材2の片面に設けているが、両面に設けてもよい。
【0016】
ここで、プラスチック基材2としては、ポリカーボネート樹脂及びこの誘導体から選ばれるもので形成されたフィルムを用いることが好ましい。ポリカーボネート樹脂の誘導体の具体例としては、ポリエステルカーボネート樹脂等を挙げることができる。そして、ポリカーボネート樹脂及びこの誘導体は、耐候性、透明性、耐衝撃性、耐熱性、難燃性、加工性などにおいて高い物性を示すので、このような物性を配線パターン形成基材1に付与することができるものである。プラスチック基材2の厚さは1〜500μmであることが好ましく、取り扱いやすさの観点から20〜100μmであることがより好ましい。
【0017】
またバリア層3は、溶剤系接着剤層4の溶剤がプラスチック基材2に浸入することを抑制するものであり、プラスチック基材2と溶剤系接着剤層4とを接着するものでもある。溶剤系接着剤層4に含まれる溶剤は、具体的には親水性溶媒ではなく疎水性溶媒であり、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、トルエン、酢酸エチル等である。バリア層3は、このような疎水性溶媒を浸入させにくいものであれば特に限定されるものではないが、活性化エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれるもので形成されていることが好ましい。バリア層3の厚さは0.01〜100μmであることが好ましく、経済性の観点から0.1〜50μmであることがより好ましい。
【0018】
ここで、活性化エネルギー線硬化性樹脂は、紫外線等の電磁波や電子線(陰極線)等の照射により硬化する樹脂であり、例えば、アクリル酸メチル等を挙げることができる。そして、活性化エネルギー線硬化性樹脂0.1〜100質量部、開始剤0.1〜10質量部、レベリング剤0〜20質量部、親水性溶媒0〜99質量部を混合することによって、バリア層形成溶液を調製することができる。上記の開始剤としては、例えば、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン等を挙げることができる。上記のレベリング剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピレート等を挙げることができる。上記の親水性溶媒としては、例えば、イソプロピルアルコール、メタノール、エタノール、n−プロパノール、エチレングリコール等を挙げることができる。そして、上記のバリア層形成溶液をバーコート法等によりプラスチック基材2の表面に塗布し、40〜180℃で0.01〜30分間加熱乾燥させた後、紫外線等の活性化エネルギー線を照射することによって、バリア層3を形成することができる。プラスチック基材2として、例えば耐熱性の低いものを使用せざるを得ない場合には、上記のようにバリア層3を活性化エネルギー線硬化性樹脂で形成するようにすれば、プラスチック基材2の損傷を抑制することができるものである。
【0019】
また、熱硬化性樹脂は、加熱により硬化する樹脂であり、例えば、エポキシ樹脂等を挙げることができる。そして、熱硬化性樹脂0.1〜100質量部、硬化剤0.1〜20質量部、レベリング剤0〜20質量部、親水性溶媒0〜10質量部を混合することによって、バリア層形成溶液を調製することができる。上記の開始剤、レベリング剤及び親水性溶媒としては、既述のものを挙げることができる。そして、上記のバリア層形成溶液をバーコート法等によりプラスチック基材2の表面に塗布し、40〜250℃で0.01〜120分間加熱することによって、バリア層3を形成することができる。プラスチック基材2として、例えば活性化エネルギー線に対する耐性(耐候性など)の低いものを使用せざるを得ない場合には、上記のようにバリア層3を熱硬化性樹脂で形成するようにすれば、プラスチック基材2の損傷を抑制することができるものである。
【0020】
次に図1(b)のようにバリア層3の表面に溶剤系接着剤層4を設ける。溶剤系接着剤層4は、溶剤系接着剤を0.01〜125g/mの塗布量でバリア層3の表面に塗布することによって設けることができる。溶剤系接着剤層4の厚さは0.01〜50μmであることが好ましく、経済性の観点から0.1〜20μmであることがより好ましい。溶剤系接着剤は、主剤(溶剤として疎水性溶媒が含まれている)100質量部に対して硬化剤を0.1〜20質量部混合することによって調製することができる。主剤としては、例えば、エポキシ樹脂等を挙げることができる。硬化剤としては、例えば、メチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0021】
次に図1(c)のように溶剤系接着剤層4の表面に金属箔6を貼り合わせて設ける。金属箔6としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔、銀箔、亜鉛箔、金箔等を挙げることができる。金属箔6の厚さは0.1〜100μmであることが好ましく、エッチングしやすさの観点から1〜50μmであることがより好ましい。金属箔6の溶剤系接着剤層4に貼り合わせる側の面にはあらかじめ黒化処理(黒色酸化処理)を施しておくことが好ましい。黒化処理は、金属箔6を黒化処理溶液に20〜99℃で0.1〜30分間浸漬させることによって施すことができる。黒化処理溶液は、亜塩素酸ナトリウム水溶液(0.1〜50g/L)、水酸化ナトリウム水溶液(0.1〜50g/L)、リン酸三ナトリウム水溶液(0.1〜50g/L)を混合することによって調製することができる。そして、上記のように黒化処理を施しておくと、溶剤系接着剤層4に対する金属箔6の接着性を向上させることができ、その後に設けられる配線パターン5の接着性も向上させることができるものである。
【0022】
その後、フォトエッチング法により溶剤系接着剤層4に配線パターン5を設けることによって、図1(d)のような配線パターン形成基材1を得ることができる。配線パターン5は、アンテナパターン状や格子状など任意の形状に形成することができる。このようにして得られた配線パターン形成基材1は、フィルムアンテナとして使用できるのはもちろん、タッチパネルや太陽電池等の電極としても使用することができる。そのため、プラスチック基材2、バリア層3及び溶剤系接着剤層4はいずれも透明又は半透明であることが好ましい。
【0023】
そして、上記の配線パターン形成基材1にあっては、溶剤系接着剤層4の溶剤(疎水性溶媒)がプラスチック基材2に浸入することをバリア層3で抑制している。そのため、プラスチック基材2は、変形、変色、劣化等の変質を起こしにくく、プラスチック基材2の特性を維持することができるものである。この特性は、使用するプラスチック基材2によって変更可能である。また、プラスチック基材2は上記のように変質を起こしにくいので、配線パターン形成基材1全体をカールしにくくすることができるものである。また、配線パターン5を設けた後、この配線パターン5の表面に黒化処理を施すこともできる。通常、黒色処理溶液には疎水性溶媒が含まれていないので、配線パターン形成基材1を浸漬させても特に問題にはならないが、仮に疎水性溶媒を含む溶液を配線パターン5に塗布して各種機能を付与する場合でも、この溶液を配線パターン5が設けられた面のみに塗布するようにすれば、疎水性溶媒がプラスチック基材2に浸入することをバリア層3で抑制することができるものである。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0025】
(実施例1)
まず図1(a)のようにプラスチック基材2の片面にバリア層3を設けた。プラスチック基材2としては、厚さ100μmの透明なポリカーボネートフィルムを用いた。バリア層3を形成するためのバリア層形成溶液は、活性化エネルギー線硬化性樹脂である「ウレタンアクリレートUA−306H」(共栄社化学株式会社)30質量部、活性化エネルギー線硬化性樹脂である「アクリルモノマーPE−3A」(共栄社化学株式会社)20質量部、開始剤である「イルガキュアー184」(1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン)(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ株式会社)2.5質量部、親水性溶媒であるイソプロピルアルコール50質量部、レベリング剤である「BYK−307」(ビックケミー・ジャパン株式会社)0.15質量部を混合することによって調製した。そして、このバリア層形成溶液をバーコート法によりプラスチック基材2の片面に塗布し、100℃で3分間加熱乾燥させた後、メタルハライドランプにより400mJの紫外線を照射することによって、透明なバリア層3を形成した。このバリア層3の厚さは5μmであった。
【0026】
次に図1(b)のようにバリア層3の表面に溶剤系接着剤層4を設けた。溶剤系接着剤層4を形成するための溶剤系接着剤は、主剤である「ダイナレオVA−3020」(東洋インキ製造株式会社)と、硬化剤である「ダイナレオHD−701」(東洋インキ製造株式会社)とを主剤/硬化剤(質量比率)=100/7となるように混合することによって調製した。そして、この溶剤系接着剤を3g/mの塗布量でバリア層3の表面に塗布することによって、厚さ12μmの透明な溶剤系接着剤層4を設けた。
【0027】
次に図1(c)のように溶剤系接着剤層4の表面に金属箔6を貼り合わせて設けた。金属箔6としては、厚さ12μm銅箔を用いた。金属箔6の溶剤系接着剤層4に貼り合わせる側の面にはあらかじめ黒化処理を施しておいた。黒化処理は、金属箔6を黒化処理液に95℃で2分間浸漬させることによって施した。黒化処理液は、亜塩素酸ナトリウム水溶液(31g/L)、水酸化ナトリウム水溶液(15g/L)、リン酸三ナトリウム水溶液(12g/L)を混合することによって調製した。
【0028】
その後、フォトエッチング法により金属箔6の不要部分を除去して溶剤系接着剤層4に格子状の配線パターン5を設けることによって、図1(d)のような配線パターン形成基材1を製造した。その後、配線パターン5の表面に黒化処理を施した。
【0029】
上記のようにして得られた配線パターン形成基材1を150mm角に裁断し、図3(a)のように平面7上に置いた。そして、平面7から配線パターン形成基材1の端部までの高さを測定したところ4mmであった。このように、実施例1の配線パターン形成基材1はほとんどカールしていないことが確認された。
【0030】
なお、実施例1の配線パターン形成基材1ではプラスチック基材2であるポリカーボネートフィルムの特性は維持されていた。
【0031】
(比較例1)
まず図2(a)(b)のようにプラスチック基材2の片面に溶剤系接着剤層4を設けた。プラスチック基材2及び溶剤系接着剤層4を形成するための溶剤系接着剤としては、実施例1と同様のものを用いた。そして、この溶剤系接着剤を3g/mの塗布量でプラスチック基材2の表面に塗布することによって、厚さ12μmの透明な溶剤系接着剤層4を設けた。この段階で既にプラスチック基材2はコイル状にカールしたので、プラスチック基材2の周縁をテープでガラス板に留めてその後の作業を行うようにした。
【0032】
次に図2(c)のように溶剤系接着剤層4の表面に金属箔6を貼り合わせて設けた。金属箔6としては、実施例1と同様にあらかじめ黒化処理を施しておいた厚さ12μmの銅箔を用いた。
【0033】
その後、フォトエッチング法により金属箔6の不要部分を除去して溶剤系接着剤層4に格子状の配線パターン5を設けることによって、図2(d)のような配線パターン形成基材1を製造した。その後、配線パターン5の表面に黒化処理を施した。
【0034】
上記のようにして得られた配線パターン形成基材1をガラス板から剥がして150mm角に裁断し、平面7上に置いた。そして、平面7から配線パターン形成基材1の端部までの高さを測定しようとしたが、図3(b)のように配線パターン形成基材1がコイル状にカールしたので、上記の高さを測定することはできなかった。
【符号の説明】
【0035】
1 配線パターン形成基材
2 プラスチック基材
3 バリア層
4 溶剤系接着剤層
5 配線パターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材と、前記プラスチック基材に設けられたバリア層と、前記バリア層に設けられた溶剤系接着剤層と、前記溶剤系接着剤層に設けられた配線パターンとを備えて形成され、前記バリア層が、前記溶剤系接着剤層の溶剤が前記プラスチック基材に浸入することを抑制するものであることを特徴とする配線パターン形成基材。
【請求項2】
前記バリア層が、活性化エネルギー線硬化性樹脂及び熱硬化性樹脂から選ばれるもので形成されていることを特徴とする請求項1に記載の配線パターン形成基材。
【請求項3】
前記プラスチック基材が、ポリカーボネート樹脂及びこの誘導体から選ばれるもので形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の配線パターン形成基材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−213898(P2012−213898A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−80056(P2011−80056)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】