説明

配線・配管材固定具

【課題】屋根に簡単に取り付けることができる配線・配管材固定具を提供する。
【解決手段】配線・配管材固定具4は、屋根材2に取り付けられる被取付部5と、配線・配管材3を保持する保持部6とを備える。被取付部5は、屋根1の傾斜方向における下方側の屋根材201と上方側の屋根材202との重なり部分の隙間1aに外側から挿入される、挿入部5aを備える。この挿入部5aは、挿入部本体5bと爪部5cとを有する。爪部5cは、挿入部本体5bを隙間1aから抜け止めするようにその挿入部本体5bから、挿入部5aの反挿入方向Qを向くように斜めに起立して、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められる。また、被取付部5は、接着材の充填空間5gを形成する充填空間形成部5fを備えている。この充填空間形成部5fは、上面に、充填空間5gに通ずる孔5hを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、屋根の上に配線・配管材を固定するための配線・配管材固定具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋根にパイプ(配管材)を固定する固定具として、屋根に釘で取付け固定されるパイプ止め金具があった(例えば、特許文献1参照)。このパイプ止め金具は、帯状金属板を曲げて形成されるものであって、円弧状のパイプ押え部と、釘を通す挿通孔が設けられた平坦な被取付部とを備えていた。そこで、屋根にパイプを固定するにあたっては、このパイプ止め金具の二つを向き合わせて、パイプ押え部でパイプを挟んだ状態で、釘を被取付部の挿通孔から屋根の瓦の小孔を通して下地部分に打ち込んだ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−45370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記従来のパイプ押え金具にあっては、釘を用いるために、瓦に小孔をあけたときとか、釘を打ち込んだときに、瓦が割れないように細心の注意を払わなければならず、その作業が厄介だった。
【0005】
この発明は、上記した従来の欠点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、屋根に簡単に取り付けることができる、配線・配管材固定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る配線・配管材固定具は、前記目的を達成するために、次の構成からなる。すなわち、
請求項1に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具である。この配線・配管材固定具は、前記屋根材に取り付けられる被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを備える。ここで、前記被取付部は、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、挿入部と、接着材の充填空間を形成する充填空間形成部とを、備える。前記挿入部は、挿入部本体と、その挿入部本体を前記隙間から抜け止めするようにその挿入部本体から、前記挿入部の挿入方向とは反対の反挿入方向を向くように斜めに起立して、前記上方側の屋根材または前記下方側の屋根材に掛け止められる、爪部とを有する。そして、前記爪部は、前記挿入部本体側に倒れた状態に弾性的に変形可能に形成されて、その爪部が倒れた状態で、前記挿入部は、外側から前記隙間に挿入され、挿入された後には、前記爪部が復帰するようにして前記上方側の屋根材または前記下方側の屋根材に掛け止められる。また、前記充填空間は、前記下方側の屋根材の上面に臨むように下方が開放している。
【0007】
この配線・配管材固定具によると、配線・配管材を屋根に固定するにあたって、配線・配管材固定具の被取付部に備わる挿入部を、下方側の屋根材と上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入する。すると、倒れた状態の爪部が、復帰するようにして上方側の屋根材または下方側の屋根材に掛け止められる。こうして、被取付部、ひいては配線・配管材固定具は、屋根に取り付けられる。また、充填空間形成部における充填空間に接着材を充填すれば、充填空間形成部は、下方側の屋根材に接着される。したがって、この配線・配管材固定具を、爪部に加えて、接着材を用いて、屋根に取り付けることもできる。そして、保持部で配線・配管材を保持する。このように、配線・配管材固定具を屋根に取り付けるとともに、保持部で配線・配管材を保持することで、配線・配管材は、屋根に固定される。もっとも、配線・配管材固定具を屋根に取り付ける作業と、保持部で配線・配管材を保持する作業の順序は、特に問わない。
【0008】
また、請求項2に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具である。この配線・配管材固定具は、前記屋根材に取り付けられる被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを備える。ここで、前記被取付部は、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、挿入部と、接着材の充填空間を形成する充填空間形成部とを、備える。前記挿入部は、挿入部本体と、その挿入部本体を前記隙間から抜け止めするようにその挿入部本体から、前記挿入部の挿入方向とは反対の反挿入方向を向くように斜めに起立して、前記上方側の屋根材の前側に下方に向けて突出するように形成された前垂部に掛け止められる、爪部とを有する。そして、前記爪部は、前記挿入部本体側に倒れた状態に弾性的に変形可能に形成されて、その爪部が倒れた状態で、前記挿入部は、外側から前記隙間に挿入され、挿入された後には前記爪部が復帰するようにして前記上方側の屋根材の前記前垂部に掛け止められる。また、前記充填空間は、前記下方側の屋根材の上面に臨むように下方が開放している。
【0009】
この配線・配管材固定具によると、配線・配管材を屋根に固定するにあたって、配線・配管材固定具の被取付部に備わる挿入部を、下方側の屋根材と上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入する。すると、倒れた状態の爪部が、復帰するようにして上方側の屋根材の前垂部に掛け止められる。こうして、被取付部、ひいては配線・配管材固定具は、屋根に取り付けられる。また、充填空間形成部における充填空間に接着材を充填すれば、充填空間形成部は、下方側の屋根材に接着される。したがって、この配線・配管材固定具を、爪部に加えて、接着材を用いて、屋根に取り付けることもできる。そして、保持部で配線・配管材を保持する。このように、配線・配管材固定具を屋根に取り付けるとともに、保持部で配線・配管材を保持することで、配線・配管材は、屋根に固定される。もっとも、配線・配管材固定具を屋根に取り付ける作業と、保持部で配線・配管材を保持する作業の順序は、特に問わない。
【0010】
また、請求項3に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具において、前記充填空間形成部は、上面に、前記充填空間に通ずる孔を有する。これにより、この孔から充填空間に接着材を充填することで、この充填を、挿入部を屋根材の重なり部分の隙間に挿入した後にすることもできる。
【0011】
また、請求項4に記載の発明に係る破線・配管材固定具は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記充填空間形成部は、前記挿入部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限する、前記上方側の屋根材の前端面に係合可能な、規制部となっている。
【0012】
また、請求項5に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記充填空間形成部は、上方側の屋根材の前端面から隔たって位置する。このように、充填空間形成部が上方側の屋根材の前端面から隔たって位置することで、充填空間への接着材の充填作業が容易となる。
【0013】
また、請求項6に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項5に記載の配線・配管材固定具において、前記被取付部は、前記挿入部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限する、前記上方側の屋根材または前記下方側の屋根材に係合可能な、規制部を、前記充填空間形成部とは別に備える。
【0014】
また、請求項7に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項6に記載の配線・配管材固定具において、前記規制部は、前記上方側の屋根材の前端面と対向するように上方に突出形成される。
【0015】
また、請求項8に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記爪部は、前記挿入方向に並ぶように、複数設けられる。
【0016】
また、請求項9に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記爪部は、板状であって、先端において幅方向の中央が窪むM字状に形成される。
【0017】
また、請求項10に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具において、前記配線・配管材固定具は、前記被取付部を有するベース体と、前記保持部を有して前記ベース体に着脱可能に取付け固定される保持部材とを備える。
【0018】
また、請求項11に記載の発明に係る配線・配管材固定具は、請求項10に記載の配線・配管材固定具において、前記ベース体は、前記保持部材が取付け固定される取付部を有する。その取付部は、膨出形成されて、側面に、前記保持部材の基部が挿入される保持部材挿入孔が設けられ、かつ、上面に、前記挿入孔から前記取付部内に進入した前記基部を止めるための固着具が挿入される、固着具挿入孔が設けられる。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る配線・配管材固定具によれば、挿入部を屋根材の隙間に挿入することで、配線・配管材固定具を屋根に簡単に取り付けることができる。しかも、充填空間に接着材を充填することで、この配線・配管材固定具を、屋根に強固に取り付けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の一実施の形態の、模式図である。
【図2】同じく、図1における要部拡大断面図である。
【図3】同じく、ベース体の拡大正面図である。
【図4】同じく、ベース体の拡大平面図である。
【図5】同じく、図4におけるA−A線による断面図である。
【図6】この発明の第一の変形形態を示す、図1相当図である。
【図7】この発明の第二の変形形態を示す、図1相当図である。
【図8】この発明の第三の変形形態を示す、図1相当図である。
【図9】この発明の第四の変形形態を示す、図1相当図である。
【図10】この発明の第五の変形形態を示す、図1相当図である。
【図11】この発明の第六の変形形態であって、ベース体における取付部部分を示し、(A)は、平面図、(B)は、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、この発明に係る配線・配管材固定具を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
【0022】
図1〜図5は、本発明の一実施の形態を示す。図中符号1は、屋根である。2は、前記屋根1を形成する屋根材である。すなわち、屋根1は、その屋根1の傾斜方向における下方側の屋根材201(2)の一部に上方側の屋根材202(2)の一部が上に重なるようにして屋根材2、2が並んで形成される。3は、前記屋根1の上に配線・配管される配線・配管材3(配線材または配管材)であって、太陽光発電用の太陽電池に接続される電気ケーブル(配線材)とか、その電気ケーブルを収容保護する保護管とか、太陽光温水器に接続される通水管(配管材)とかからなる。4は、前記屋根1の上に配線・配管材3を固定するための、配線・配管材固定具である。
【0023】
ここで、配線・配管材固定具4は、屋根材2に取り付けられる被取付部5と、配線・配管材3を保持する保持部6とを備える。被取付部5は、下方側の屋根材201(2)と上方側の屋根材202(2)との重なり部分の隙間1aに外側から挿入される、挿入部5aを備える。この挿入部5aは、挿入部本体5bと、その挿入部本体5bを前記隙間1aから抜け止めするようにその挿入部本体5bから、挿入部5aの挿入方向Pとは反対の反挿入方向Qを向くように斜めに起立して、上方側の屋根材202または下方側の屋根材201(図示実施の形態においては、上方側の屋根材202の前側である前端に下方に向けて突出するように形成された前垂部2a)に掛け止められる、爪部5cとを有する。ここにおいて、爪部5cは、挿入部本体5b側に倒れた状態に弾性的に変形可能に形成されて、その爪部5cが倒れた状態で、挿入部5aは、外側から前記隙間1aに挿入され、挿入された後には、爪部5cが復帰(弾性復帰)するようにして上方側の屋根材202または下方側の屋根材201(図示実施の形態においては、上方側の屋根材202の前記前垂部2a)に掛け止められる。
【0024】
また、被取付部5は、接着材の充填空間5gを形成する充填空間形成部5fを備える。ここで、充填空間5gは、下方側の屋根材201の上面に臨むように下方が開放している。そして、充填空間形成部5fは、上面に、充填空間5gに通ずる孔5hを有する。また、充填空間形成部5fは、上方側の屋根材202の前端面2bから隔たって位置する。
【0025】
具体的には、配線・配管材固定具4は、前記被取付部5を有するベース体7と、前記保持部6を有してベース体7に着脱可能に取付け固定される保持部材8とを備える。
【0026】
ベース体7は、金属製であって、帯状の板材からなり、その長手方向の一方側に、前記被取付部5を有し、他方側に、保持部材8が取付け固定される取付部7aを有する。
【0027】
被取付部5においては、前記挿入部5aがベース体7の長手方向の一方端側に位置し、前記充填空間形成部5fがベース体7の中央側に位置するように並んでいる。挿入部5aにおける爪部5cは、前記反挿入方向Qを向くように斜め上方に起立する。そして、この爪部5cは、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められるとともに、上方側の屋根材202の下面2cに当接する。また、この爪部5cは、前記挿入方向Pに並ぶように(つまり、ベース体7の長手方向に並ぶように)、複数(図示実施の形態においては、三つ)設けられる。そして、複数の爪部5c、5cのうちの任意の爪部5c(図示実施の形態においては、最も充填空間形成部5f寄りに位置する爪部5c)が、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められ、その掛け止められた爪部5cと、その奥側に位置する爪部5c、5cが、上方側の屋根材202の下面2cに当接する。この爪部5cは、板状であって、先端において幅方向の中央が窪むM字状に形成されている。詳細には、爪部5cは、ベース体7において挿入部本体5bから前記反挿入方向Qを向くように斜めに切り起こされており、これにより、挿入部本体5bには、爪部5cが挿入部本体5b側に倒れた状態に弾性的に変形した際に、その爪部5cが入る孔5eが形成されることとなる。なお、爪部5cは、複数設けられなくとも、一つであってもよく、その数は、特に問わない。
【0028】
充填空間形成部5fは、中空形状の突部からなり、その突部の内部が、接着材が充填される前記充填空間5gとなっている。詳しくは、充填空間形成部5fは、ベース体7を構成する帯状の板材が、上側(つまり、屋根材2から離れる側)に膨出形成されて、その膨出した内部が、前記充填空間5gとなっている。
【0029】
取付部7aは、ベース体7を構成する帯状の板材が、上側(つまり、屋根材2から離れる側)に膨出形成されて、側面(ベース体7の長手方向側の側面)に、保持部材8の基部8aが挿入される保持部材挿入孔7bが設けられ、上面に、保持部材挿入孔7bから取付部7a内に進入した前記基部8aを止めるための固着具9が挿入される、固着具挿入孔7cが設けられる。図示実施の形態においては、固着具9は、ビス9aからなり、固着具挿入孔7cは、そのビス9aが螺合する螺合孔からなって、固着具挿入孔7cに螺合するビス9aの先端側が、保持部材8の基部8aに設けられた係止孔8bに挿入されることで、保持部材8は、ベース体7の取付部7aに取付け固定される。
【0030】
また、保持部材8は、金属製であって、帯状の板材からなり、その長手方向の一方側に前記保持部6を有し、他方側に前記基部8aを有する。保持部6は、逆U字状に曲げられて、その内側に配線・配管材3が保持される。つまり、保持部6に配線・配管材3を通したり保持部6を配線・配管材3に掛けたりすることで、配線・配管材3は保持される。そして、基部8aは、平板形状をして、その板面を貫通する前記係止孔8bを有し、前記保持部材挿入孔7bから取付部7a内に挿入される。
【0031】
次に、以上の構成からなる配線・配管材固定具4の作用効果について説明する。この配線・配管材固定具4によると、配線・配管材3を屋根1に固定するにあたって、配線・配管材固定具4の被取付部5に備わる挿入部5aを、下方側の屋根材201と上方側の屋根材202との重なり部分の隙間1aに外側から挿入する。すると、倒れた状態の爪部5cが、弾性復帰するようにして上方側の屋根材202または下方側の屋根材201(図示実施の形態においては、上方側の屋根材202の前垂部2a)に掛け止められる。こうして、被取付部5、ひいては配線・配管材固定具4は、屋根1に取り付けられる。
【0032】
また、充填空間形成部5fにおける充填空間5gに接着材を充填すれば、充填空間形成部5fは、下方側の屋根材201に接着される。したがって、この配線・配管材固定具4を、爪部5cに加えて、接着材を用いて、屋根1に取り付けることもできる。ここで、充填空間形成部5fは、上面に、充填空間5gに通ずる孔5hを有している。このため、この孔5hから充填空間5gに接着材を充填することで、この充填を、挿入部5aを屋根材201、202の重なり部分の隙間1aに挿入した後に(つまり、配線・配管材固定具4が、爪部5cによって保持された状態で)することもできる。そして、保持部6で配線・配管材3を保持する。
【0033】
このように、配線・配管材固定具4を屋根1に取り付けるとともに、保持部6で配線・配管材3を保持することで、配線・配管材3は、屋根1に固定される。もっとも、配線・配管材固定具4を屋根1に取り付ける作業と、保持部6で配線・配管材3を保持する作業の順序は、特に問わない。
【0034】
また、充填空間5gへの接着材の充填作業にあたっては、充填空間形成部5fは、上方側の屋根材202の前端面2bから隔たって位置する。このため、この充填作業が容易となる。また、この接着材の充填は、爪部5cだけでは、取付けが安定しない場合に有効であり、例えば、爪部5cが上方側の屋根材202の下面2cに当たらない場合であって、この爪部5cだけでは取付けが安定しない場合には、接着材を用いることで、被取付部5、ひいてはベース体7や配線・配管材固定具4を安定して屋根1に取り付けることができる。
【0035】
ここで、図示実施の形態では、配線・配管材固定具4は、被取付部5を有するベース体7と、保持部6を有する保持部材8とに分かれているため、ベース体7に保持部材8が取付け固定された状態で、保持部6に配線・配管材3を通したり保持部6を配線・配管材3に掛けたりする以外に、保持部材8単独の状態で、保持部6に配線・配管材3を通したり保持部6を配線・配管材3に掛けたりし、その後に、保持部材8をベース体7に取付け固定することもできる。
【0036】
このように、配線・配管材固定具4を屋根1に取り付けるとともに、保持部6で配線・配管材3を保持することで、配線・配管材3は、屋根1に固定される。そして、この配線・配管材固定具4によれば、挿入部5aを屋根材201(2)、202(2)の隙間1aに挿入することで、配線・配管材固定具4を屋根1に簡単に取り付けることができる。しかも、充填空間5gに接着材を充填することで、この配線・配管材固定具4を、屋根1に強固に取り付けることもできる。
【0037】
また、爪部5cは、M字状に形成されており、これにより、爪部5cは、屋根材202(2)に喰い込みやすく、さらには、M字の先端の二点で当たるため、爪部5c、ひいてはベース体7や配線・配管材固定具4が回り難くなる。また、この爪部5cが、屋根材202の下面に当たる場合であって、爪部5cが複数設けられると、それら複数の爪部5c、5cの各々が、二点で屋根材202(2)に当たることとなり、一層、ベース体7や配線・配管材固定具4は、回り難くなる。
【0038】
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。例えば、図6とか図7に示すように、被取付部5は、挿入部5aの、隙間1aに外側から挿入される挿入長さを制限する、上方側の屋根材202または下方側の屋根材201に係合可能(当接可能)な、規制部5dを、充填空間形成部5fとは別に備えてもよい。このような規制部5dを設けることで、挿入部5aを、屋根材2の隙間1aに外側から挿入した際に、規制部5dが屋根材2に係合することでその挿入長さが制限され、これとともに、挿入部5aに設けられた爪部5cが屋根材2に掛け止められる(図示実施の形態においては、爪部5cは、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められるが、爪部5cは、複数設けられているため、それら複数の爪部5c、5cのうちの、上方側の屋根材202の前垂部2aの奥行長さに対応する位置にある爪部5c(図では、最も充填空間形成部5f寄りに位置する爪部5c)が、前垂部2aに掛け止められる。)。すなわち、配線・配管材固定具4は、挿入部5aを屋根材2の隙間1aに挿入するものでありながら、規制部5dを設けることで、爪部5cを屋根材2の適所に配置することができる。図6においては、規制部5dは、上方側の屋根材202の前端面2bと対向するように上方に突出形成されており、特に、この規制部5dは、平板形状の突片5iからなっている。また、図7においては、規制部5dは、下方側の屋根材201の後側である後端に上方に向けて突出するように形成された後突部2dの前面と対向する、挿入部5a(詳細には、挿入部本体5b)の先端部5jからなっている。
【0039】
また、爪部5cは、上方側の屋根材202に掛け止められるものでなくとも、図8に示すように、反挿入方向Qを向くように斜めに(詳しくは、斜め下方に)起立して、下方側の屋根材201に掛け止められてもよい。詳細には、爪部5cは、下方側の屋根材201の後端面2eに掛け止められるように、挿入部5aの先端部分に設けられ、特に図示実施の形態においては、挿入部5aの先端が折り返されて形成される。ここで、爪部5cは、一つ設けられているが、前記挿入方向Pに並ぶように、複数設けられてもよい。また、この実施の形態において、配線・配管材固定具4に、前述した実施の形態に示すような各種の規制部5d(図6、図7参照)、つまり、上方側の屋根材202の前端面2bと対向する規制部とか、下方側の屋根材201の後突部2dの前面と対向する規制部とかが設けられてもよいのは勿論である。
【0040】
また、充填空間形成部5fは、挿入部5aと保持部6との間に設けられなくとも、図9に示すように、保持部6に対して、挿入部5aとは反対側に設けられてもよい。これにより、保持部6は、被取付部5を構成する挿入部5aと充填空間形成部5fとに挟まれ、この保持部6で配線・配管材3を保持することで、配線・配管材3は、屋根1に安定して固定される。もっとも、充填空間形成部5fは、上方側の屋根材202の前端面2bから隔たって位置するのであれば、どのような位置に設けられてもよい。また、この実施の形態において、爪部5cは、図8に示すような、下方側の屋根材201の後端面2eに掛け止められるものであってもよく、配線・配管材固定具4に、上述したような各種の規制部5d(図6、図7参照)、つまり、上方側の屋根材202の前端面2bと対向する規制部とか、下方側の屋根材201の後突部2dの前面と対向する規制部とかが設けられてもよい。
【0041】
また、前述した規制部5dを、充填空間形成部5fとは別に設けるのではなく、図10に示すように、充填空間形成部5fを、上方側の屋根材202の前端面2bと対向するように上方に突出形成することで、充填空間形成部5fそのものが、規制部5dとなってもよい。つまり、充填空間形成部5fは、挿入部5aの、前記隙間1aに外側から挿入される挿入長さを制限する、上方側の屋根材202の前端面2bに係合可能(当接可能)な、規制部5dとなる。また、この実施の形態において、爪部5cは、上方側の屋根材202の前垂部2aに掛け止められるものでなくとも、図8に示すような、下方側の屋根材201の後端面2eに掛け止められるものであってもよい。
【0042】
また、保持部材8が取付け固定される取付部7aは、ベース体7の長手方向(つまり、屋根1の傾斜方向となる縦方向)側の側面に、保持部材挿入孔7bが設けられているが、図11に示すように、ベース体7の長手方向に直交する方向(つまり、屋根1の傾斜方向に直交する横方向)側にも設けられてもよい。そこで、これら保持部材挿入孔7b、7bのうちの一つを選択して用いることで、保持部材8の保持部6によって保持される配線・配管材3を、屋根1の横方向に延びるように配備したり、屋根1の傾斜方向となる縦方向に延びるように配備したりすることができる。
【0043】
また、保持部材8は、その基部8aが取付部7aの保持部材挿入孔7bから内部に進入した状態で、取付部7aにビス9a(固着具9)を用いて取付け固定されなくとも、取付部7aの上面に、ビス等の固着具9を用いて取付け固定されてもよく、また、固着具9を用いることなく、取付部7aに嵌合したり係止されたりして取付け固定されてもよい。
【0044】
また、ベース体7と保持部材8とは、金属製でなくとも、例えば合成樹脂製であってもよい。
【0045】
また、配線・配管材固定具4は、被取付部5を有するベース体7と、保持部6を有する保持部材8とに分離されて構成されなくとも、それら被取付部5と保持部6とが一体に形成されてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 屋根
1a 隙間
2 屋根材
201 下方側の屋根材
202 上方側の屋根材
2a 前垂部
2b 前端面
3 配線・配管材
4 配線・配管材固定具
5 被取付部
5a 挿入部
5b 挿入部本体
5c 爪部
5d 規制部
5f 充填空間形成部
5g 充填空間
5h 孔
6 保持部
7 ベース体
7a 取付部
7b 保持部材挿入孔
7c 固着具挿入孔
8 保持部材
8a 基部
9 固着具
P 挿入方向
Q 反挿入方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具であって、
前記屋根材に取り付けられる被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを備え、
前記被取付部は、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、挿入部と、接着材の充填空間を形成する充填空間形成部とを、備え、
前記挿入部は、挿入部本体と、その挿入部本体を前記隙間から抜け止めするようにその挿入部本体から、前記挿入部の挿入方向とは反対の反挿入方向を向くように斜めに起立して、前記上方側の屋根材または前記下方側の屋根材に掛け止められる、爪部とを有し、かつ、
前記爪部は、前記挿入部本体側に倒れた状態に弾性的に変形可能に形成されて、その爪部が倒れた状態で、前記挿入部は、外側から前記隙間に挿入され、挿入された後には、前記爪部が復帰するようにして前記上方側の屋根材または前記下方側の屋根材に掛け止められ、
前記充填空間は、前記下方側の屋根材の上面に臨むように下方が開放していることを特徴とする、配線・配管材固定具。
【請求項2】
屋根の傾斜方向における下方側の屋根材の一部に上方側の屋根材の一部が上に重なるようにして屋根材が並ぶ屋根の上に配線・配管材を固定するための、配線・配管材固定具であって、
前記屋根材に取り付けられる被取付部と、前記配線・配管材を保持する保持部とを備え、
前記被取付部は、前記下方側の屋根材と前記上方側の屋根材との重なり部分の隙間に外側から挿入される、挿入部と、接着材の充填空間を形成する充填空間形成部とを、備え、
前記挿入部は、挿入部本体と、その挿入部本体を前記隙間から抜け止めするようにその挿入部本体から、前記挿入部の挿入方向とは反対の反挿入方向を向くように斜めに起立して、前記上方側の屋根材の前側に下方に向けて突出するように形成された前垂部に掛け止められる、爪部とを有し、かつ、
前記爪部は、前記挿入部本体側に倒れた状態に弾性的に変形可能に形成されて、その爪部が倒れた状態で、前記挿入部は、外側から前記隙間に挿入され、挿入された後には、前記爪部が復帰するようにして前記上方側の屋根材の前記前垂部に掛け止められ、
前記充填空間は、前記下方側の屋根材の上面に臨むように下方が開放していることを特徴とする、配線・配管材固定具。
【請求項3】
前記充填空間形成部は、上面に、前記充填空間に通ずる孔を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の配線・配管材固定具。
【請求項4】
前記充填空間形成部は、前記挿入部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限する、前記上方側の屋根材の前端面に係合可能な、規制部となっていることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項5】
前記充填空間形成部は、上方側の屋根材の前端面から隔たって位置することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項6】
前記被取付部は、前記挿入部の、前記隙間に外側から挿入される挿入長さを制限する、前記上方側の屋根材または前記下方側の屋根材に係合可能な、規制部を、前記充填空間形成部とは別に備えることを特徴とする、請求項5に記載の配線・配管材固定具。
【請求項7】
前記規制部は、前記上方側の屋根材の前端面と対向するように上方に突出形成されることを特徴とする、請求項6に記載の配線・配管材固定具。
【請求項8】
前記爪部は、前記挿入方向に並ぶように、複数設けられることを特徴とする、請求項1ないし7のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項9】
前記爪部は、板状であって、先端において幅方向の中央が窪むM字状に形成されることを特徴とする、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項10】
前記配線・配管材固定具は、前記被取付部を有するベース体と、前記保持部を有して前記ベース体に着脱可能に取付け固定される保持部材とを備えることを特徴とする、請求項1ないし9のいずれか1項に記載の配線・配管材固定具。
【請求項11】
前記ベース体は、前記保持部材が取付け固定される取付部を有し、
前記取付部は、膨出形成されて、側面に、前記保持部材の基部が挿入される保持部材挿入孔が設けられ、かつ、上面に、前記挿入孔から前記取付部内に進入した前記基部を止めるための固着具が挿入される、固着具挿入孔が設けられることを特徴とする、請求項10に記載の配線・配管材固定具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−154464(P2012−154464A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16373(P2011−16373)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000243803)未来工業株式会社 (550)
【Fターム(参考)】