説明

配線器具

【課題】配線器具の製造コストを低減する。本体とカバー体とを強固に固定する。
【解決手段】枠状のサポートを用いて壁面に埋込設置される3モジュールサイズの配線器具10を構成する。配線器具10は、樹脂製の本体と樹脂製のカバー体22とを備える。正面視で対角上の2カ所で、本体とカバー体22とをねじ75にて固定する。他の対角上の2カ所で、本体の係合受部とカバー体22の係合部とを係合する。本体とカバー体22とをかしめて連結するかしめ金具が不要になり、製造コストを低減できる。一般的なサポートを用いて設置でき、設置に要するコストを低減できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、サポートを用いて壁面に埋込設置される配線器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、スイッチやコンセントなどの配線器具を備えた配線装置は、配線器具を取付枠であるサポートに取り付け、造営材である壁面に埋め込まれた配線ボックスから引き出した配線を配線器具に接続し、サポートを配線ボックスにねじ止めし、サポートを覆って化粧プレートを取り付けて設置されている。
【0003】
そして、配線器具は、合成樹脂製の本体及びカバー体を備え、これら器具本体及びカバーの内側に、端子金具などが収納されている。また、これら本体及びカバー体は、サポートに係合する爪状のサポート取付部を設けた一対のあるいは環状の止め金具により互いに固定されている。
【0004】
このような配線器具について、本体あるいはカバー体にサポート取付部を一体に形成するとともに、これら本体及びカバー体を互いに係合させ、従来の止め金具を用いずに構成を簡略化して製造コストの低減を図る構成が考えられる。また、サポートについても、樹脂で一体に形成し、絶縁性を良好にするとともに構成を簡略化して製造コストの低減を図る構成が知られている。
【0005】
また、配線器具については、電話用のモジュラジャックを備え、JISの大角連用形の3モジュールサイズなど、大形の構成が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2005−117546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
壁面などに設置されたスイッチボックス、及びこのスイッチボックスに取り付けられたサポートについては、壁面のゆがみなどの影響を受けて、ねじれるようなゆがみが生じる場合があり、特に、合成樹脂製のサポートについては、ゆがみが大きくなる傾向がある。一方、合成樹脂製の本体及びカバー体の係合のみにて構成された配線器具は、ねじれるような力を受けると、係合部分が外れてしまうおそれがあり、強固な係合の構造を形成すると、かえって製造コストが上昇する問題を有している。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、構造が簡略で製造コストを低減できる配線器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の配線器具は、部品収納部、この部品収納部の両側に位置する側板部、及び各側板部に設けられた係合受部を備えた本体と;各係合受部に係合する係合部を備え、部品収納部を覆って本体に取り付けられるカバー体と;対角上の2点で本体とカバー体とを締め付け固定する締付具と;を具備しているものである。
【0009】
配線器具は、例えば、サポートを介して住宅の壁面に取り付けられる電源用あるいは通信線用のコンセントである。本体及びカバー体は、例えば、樹脂にて形成される。締付具は、例えば、ねじである。
【0010】
そして、この構成では、本体とカバー体とは、両側部の係合により互いに取り付けられる。対角上の2点に設けた締付具で本体とカバー体とを締め付け固定するため、配線器具にねじれるような力が加わっても、係合受部と係合部との係合の外れが防止される。本体及びカバー体の構造を簡略化して、製造コストが低減される。
【0011】
請求項2記載の配線器具は、請求項1記載の配線器具において、締付具は、正面視で本体及びカバー体の角部に位置してこれら本体とカバー体とを正面側から締め付け固定し、係合部及び係合受部は、締付具よりも、側板部の中央側かつ背面側に位置して互いに係合するものである。
【0012】
そして、この構成では、締付具は、正面視で本体及びカバー体の角部に位置してこれら本体とカバー体とを正面側から締め付け固定するため、ねじれるような力に対して、締付具よりも側板部の中央側かつ背面側に位置して互いに係合する係合部及び係合受部の外れが効果的に防止される。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の配線器具によれば、本体とカバー体とは、両側部の係合により互いに取り付けできる。対角上の2点に設けた締付具で本体とカバー体とを締め付け固定するため、配線器具にねじれるような力が加わっても、係合受部と係合部との係合の外れを防止できる。本体及びカバー体の構造を簡略化して、製造コストを低減できる。
【0014】
請求項2記載の配線器具によれば、請求項1記載の効果に加え、締付具は、正面視で本体及びカバー体の角部に位置してこれら本体とカバー体とを正面側から締め付け固定するため、ねじれるような力に対して、締付具よりも側板部の中央側かつ背面側に位置して互いに係合する係合部及び係合受部の外れを効果的に防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の配線器具の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の配線器具の一実施の形態を示す正面図である。図2は同上配線器具の右側面図である。図3は同上配線器具の左側面図である。図4は同上配線器具の背面図である。図5は同上配線器具の内部回路及び使用状態を示す構成図である。
【0017】
図において、10は配線器具で、この配線器具10は、取付枠であるサポートに取り付けられたうえで壁面などの造営物に設置される連用配線器具である大角連用形埋込配線器具で、本実施の形態では、3モジュールサイズの外郭形状を有し、正面側に3個のモジュラジャック11,12,13と切換器であるスイッチ14とを設けた電話用コンセントを含む情報コンセントを構成している。
【0018】
そして、配線器具10は、本体21と、この本体21の正面側を覆うカバー体22とを備えている。これら本体21及びカバー体22は、それぞれ絶縁性を有する合成樹脂にて一体に形成され、互いに組み合わされるようになっている。そして、本体21は、正面側を開口した略箱状をなし、内部に部品収納部が設けられ、この部品収納部に、各モジュラジャック11,12,13及びスイッチ14の本体部分と、配線金具24と、これら電気部品同士を接続する図5に示す回路基板25及び配線となどを収納している。そして、本体21は、部品収納部を囲み、両側の側板部31,32、長手方向両端の端板部33,34、および背面側の背板部35を備えている。なお、以下、一方の側板部31側を右側、他方の側板部32側を左側、一端の端板部33側を上側、他端の端板部34側を下側として説明する。
【0019】
そして、図2に示すように、本体21の右側の側板部31の上端部の近傍と、図3に示すように、本体21の左側の側板部32の下端部の近傍とに位置して、それぞれ係合受部41が形成されている。各係合受部41は、部品収納部側に凹設され正面背面方向に延びる凹設部42と、この凹設部42から四角状に突設された突設部43とを備えている。すなわち、これら係合受部41は、正面視で、右上と左下にいわば略対角状に配置されている。また、この本体21には、正面視で、左上の角部と、右下の角部とに対角状に位置し、締付受部を構成するねじ孔45,46が形成されている。さらに、本体21の背面には、配線金具24の位置に合わせて、図4に示すように、2対の入力端子部48と、4対の送り端子部(分岐配線端子)49とが形成されている。また、各端子部48,49の近傍には、配線金具24のリリースボタン24aを露出させるリリース孔50が形成されている。さらに、本体21の背面には、接続する配線を説明する表示52と、接続する配線の芯線の長さを示すゲージ53とが設けられている。
【0020】
また、カバー体22は、本体21の正面側を覆い、正面側に若干突設されたボス状のカバー本体部55と、このカバー本体部55の左右に設けられたサポート取付部56と、正面視で、右上と左下にいわば略対角状に配置された係合部61とを備えている。そして、各係合部61は、図2及び図3に示すように、側面視で四角枠状をなして背面側に突設され、両側方向に弾性変形可能に構成されている。そして、各係合部61は、本体21の各係合受部41に位置合わせして形成され、係合受部41の凹設部42内に配置された状態で、内側の開口部分が突設部43を囲んで係合するようになっている。一方、カバー本体部55には、各モジュラジャック11,12,13を露出させる3個の開口部64と、スイッチ14のつまみ部14aを操作可能に露出させる開口部65とが設けられている。また、各モジュラジャック11,12,13用の開口部64には、それぞれ上下にスライドして開閉可能な蓋体66が設けられている。さらに、各開口部64,65に近接して、説明用の表示68が設けられている。また、両側のサポート取付部56には、それぞれ外側方向に向かい突設された複数の爪部70と、内側方向に凹設された嵌合窓71とが形成されている。
【0021】
さらに、各サポート取付部56には、正面背面方向に貫通して、正面視で、左上の角部と、右下の角部とに対角状に位置し、締付受部を構成する取付孔72,73が形成されている。
【0022】
さらに、75,75は締付具としての組み立て用のねじであり、これらねじ75は、それぞれカバー体22の取付孔72,73に正面側から挿入され、本体21のねじ孔45,46に螺合して締め付けられ、本体21とカバー体22とを互いに締め付け強固に固定している。すなわち、これらねじ75は、ねじ孔45,46及び取付孔72,73の位置に応じて、正面視で、左上の角部と、右下の角部とに対角状に位置し、本体21とカバー体22とを互いに連結している。
【0023】
そして、この配線器具10は、本体21の部品収納部に、各部品を収納した状態で、部品収納部の開口を覆い、カバー体22を取り付ける。すると、このカバー体22の2カ所に設けた係合部61が、それぞれ本体21に設けた係合受部41に係合して、本体21にカバー体22が取り付けられる。さらに、ねじ75をそれぞれカバー体22の取付孔72,73に正面側から挿入し、本体21のねじ孔45,46に螺合して締め付けることにより、本体21とカバー体22とが強固に連結され、配線器具10が組み立てられる。
【0024】
そして、このように構成された配線器具10は、サポート取付部56の爪部70を樹脂製のサポートに係合して、サポートに取り付けられ、このサポートを介して、住宅の屋内の壁面などの造営物に設置される。また、この配線器具10には、背面側の入力端子部48に、いわゆる電話線である電話加入者線が接続され、送り端子部49には、住宅の他の部屋などに導かれる送り配線が接続され、配線装置が構成されている。なお、配線器具10をサポートに取り付けた状態で、ねじ75の頭部はサポートで覆われ、ねじ75の外れが防止される。また、サポートが金属製の場合には、サポート取付部56の嵌合窓71に、サポートから突設された係合部を係合する。
【0025】
そして、このように設置された配線装置の配線器具10は、図5に示すように、電話機用の第1のモジュラジャック11に、電話機77に接続されたモジュラプラグが接続されるとともに、必要に応じて、第2及び第3のモジュラジャック12,13に、スプリッタ78に接続されたモジュラプラグが接続される。さらに、このスプリッタ78には、ADSLモデムなどの接続装置79が接続され、この接続装置79に、コンピュータ80が接続される。
【0026】
そこで、電話加入者線に、電話の信号のみが入出力される場合は、スイッチ14を図5に破線で示す状態に切り替える。すると、電話加入者線は、この配線器具10を介して、第1のモジュラジャック11に接続された電話機に接続されるとともに、送り端子部49を介して接続された電話機に接続される。また、電話加入者線に、インターネット接続用のDSLなどの信号が重畳されている場合は、スイッチ14を図5に実線で示す状態に切り替える。すると、電話加入者線は、まず、いわばライン入出力となる第3のモジュラジャック13からスプリッタ78に接続され、このスプリッタ78で電話の信号とDSLの信号とが分離される。そして、電話の信号は第2のモジュラジャック13から配線器具10に戻され、この配線器具10から、第1のモジュラジャック11に接続された電話機及び送り端子部49を介して接続された電話機に接続される。一方、DSLの信号は、ADSLモデムなどの接続装置79を介して、コンピュータ80に接続され、コンピュータ80でインターネット接続等が可能となる。
【0027】
そして、本実施の形態の配線器具10によれば、樹脂製の本体21と樹脂製のカバー体22とを2カ所のみの係合により組み合わせるとともに、2本のみのねじ75を用いて筐体を形成でき、従来のかしめ金具を用いる構成に比べ、あるいは、多数の箇所を係合する構成に比べ、構造を簡略化して製造コストを低減できる。
【0028】
また、配線器具10すなわち本体21及びカバー体22の四隅に対して、係合部61と係合受部41との係合部分を、正面視で配線器具10の中心に対して対角上に配置し、ねじ75を、正面視で配線器具10の中心に対して、他の対角上すなわち係合部分を設けない側の対角上に配置したため、本体21とカバー体22とを互いに固定する絶対強度をねじ75により容易に確保でき、外部から力を受けた際にも、本体21とカバー体22との係合部分が外れないように保持できる。
【0029】
さらに、ねじ75は、配線器具10の最外角に位置させるとともに、係合部分は、配線器具10の最外郭よりも上下方向すなわち長手方向の若干中心側かつ背面側に位置させたため、配線器具10に加わるねじれるような力をねじ75で受け止め、係合部分を外れにくくすることができる。なお、係合部61と係合受部41との係合部分は、例えば、配線器具10の上下方向すなわち長手方向の中央部分に設けることもできる。
【0030】
また、必要最低限のねじのみにて本体とカバー体とを組み付ける構成に比べ、ねじ75に樹脂の弾性による係合を組み合わせることにより、本体21とカバー体22と密着させることができる。そこで、樹脂部品の製造時に発生する反りやひけ等による本体21とカバー体22との間の隙間が発生しにくく、外観を向上できる。
【0031】
また、従来のかしめ金具を用いないため、組立に際して専用の工具を必要とせず、一般的な工具のみを用いて配線器具10を組立できるため、製造コストを低減できる。
【0032】
なお、この構成は、配線器具の寸法が大きくなる2モジュールサイズ以上に効果的であり、特に3モジュールサイズの配線器具10について、構造を簡略化しつつ強度を確保できる点で効果的であるが、1モジュールサイズの配線器具に適用することもできる。
【0033】
また、この配線器具10を用いることにより、LANのハブや端子台を有するいわゆる情報分電盤を用いる構成に比べ、構造が簡略で初期のコストを低減できるとともに、ハブなどの交換も自由にできる。規格化された一般的なサポートやプレートなどの埋込形の配線装置の部品を用いることができ、汎用性を向上して製造コストを低減できるとともに、施行作業を容易にして、設置に要するコストを低減できる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば、サポートを用いて壁面に埋込設置される配線器具に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の配線器具の一実施の形態を示す正面図である。
【図2】同上配線器具の右側面図である。
【図3】同上配線器具の左側面図である。
【図4】同上配線器具の背面図である。
【図5】同上配線器具の内部回路及び使用状態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0036】
10 配線器具
21 本体
22 カバー体
31 側板部
41 係合受部
61 係合部
75 締付具としてのねじ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品収納部、この部品収納部の両側に位置する側板部、及び各側板部に設けられた係合受部を備えた本体と;
各係合受部に係合する係合部を備え、部品収納部を覆って本体に取り付けられるカバー体と;
対角上の2点で本体とカバー体とを締め付け固定する締付具と;
を具備していることを特徴とする配線器具。
【請求項2】
締付具は、正面視で本体及びカバー体の角部に位置してこれら本体とカバー体とを正面側から締め付け固定し、
係合部及び係合受部は、締付具よりも、側板部の中央側かつ背面側に位置して互いに係合する
ことを特徴とする請求項1記載の配線器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−158019(P2007−158019A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−351092(P2005−351092)
【出願日】平成17年12月5日(2005.12.5)
【出願人】(000003757)東芝ライテック株式会社 (2,710)
【出願人】(000146674)株式会社新光製作所 (1)
【Fターム(参考)】