説明

配線回路基板の製造方法

【課題】絶縁層に気泡溜まりが生じることを防止しつつ、絶縁層を薄く形成することができ、さらには、工数の低減を図ることにより、製造効率および製造コストの低減を図ることのできる、配線回路基板の製造方法を提供すること。
【解決手段】回路付サスペンション基板1の製造方法において、金属支持基板2を用意する工程、金属支持基板2の上に、金属箔4を形成する工程、金属箔4の不要部分9が露出するように、金属箔4の上にベース絶縁層5を形成する工程、ベース絶縁層5をエッチングレジストとして、不要部分9をエッチングする工程、および、ベース絶縁層5の上に、複数の配線8を形成する工程を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線回路基板の製造方法に関し、詳しくは、回路付サスペンション基板などの配線回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクドライブには、磁気ヘッドが実装される回路付サスペンション基板が装備されている。回路付サスペンション基板は、通常、ステンレスからなる金属支持基板の上に、樹脂からなる絶縁層と、銅からなる導体パターンとが順次形成されている。
【0003】
このような回路付サスペンション基板では、金属支持基板がステンレスから形成されていることから、導体パターンでの伝送損失が大きくなる。
【0004】
そこで、伝送損失を低減させるために、ステンレスからなるサスペンションの上に、絶縁層を形成し、その絶縁層の上に、銅または銅合金からなる下部導体を形成し、その下部導体の上に、絶縁層、記録側導体および再生側導体を、順次形成することが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0005】
さらに、金属支持基板と、金属支持基板の上に形成される金属薄膜と、金属薄膜の上に形成される金属箔と、金属箔の上に形成されるベース絶縁層と、ベース絶縁層の上に形成される導体パターンとを備える回路付サスペンション基板が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
【0006】
この回路付サスペンション基板は、次のように製造されている。すなわち、まず、金属支持基板を用意し、その金属支持基板の表面全体に、スパッタリングにより、金属薄膜を形成する。次いで、金属薄膜の表面に、金属箔のパターンと反転するパターンでレジストを形成する。その後、レジストをめっきレジストとして、電解めっきにより、レジストから露出する金属薄膜の表面に金属箔を形成する。その後、レジストおよびレジストが形成されていた部分の金属薄膜を除去する。そして、金属箔および金属支持基板の表面に、合成樹脂の溶液(ワニス)を塗布し、乾燥および硬化させることにより、ベース絶縁層を形成する。そして、ベース絶縁層の表面に導体パターンを形成する。
【特許文献1】特開2005−11387号公報
【特許文献2】特開2006−245220号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかるに、上記の製造方法では、パターンとして金属箔を形成した後、金属箔および金属支持基板の表面に、ワニスを塗布し、その後、乾燥および硬化させることにより、ベース絶縁層を形成する。このとき、金属箔の側面に塗布されるワニスには、金属支持基板と金属箔との段差に起因して、気泡が溜まりやすいという不具合がある。
【0008】
また、上記の製造方法では、金属箔の表面にベース絶縁層を形成するには、金属支持基板の表面に、少なくとも金属箔の厚みを超える厚みでワニスを塗布する必要がある。そのため、ベース絶縁層が厚く形成されるとともに、コストが増加するという不具合もある。
【0009】
さらに、上記の製造方法では、めっきレジストの形成工程およびその除去工程など、工数が多く、そのため、製造効率および製造コストの低減を図るには限界がある。
【0010】
本発明の目的は、絶縁層に気泡溜まりが生じることを防止しつつ、絶縁層を薄く形成することができ、さらには、工数の低減を図ることにより、製造効率および製造コストの低減を図ることのできる、配線回路基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明の配線回路基板の製造方法は、金属支持基板を用意する工程、前記金属支持基板の上に、金属箔を形成する工程、前記金属箔の不要部分が露出するように、前記金属箔の上に絶縁層を形成する工程、前記絶縁層をエッチングレジストとして、前記不要部分をエッチングする工程、および、前記絶縁層の上に、複数の配線を形成する工程を備えていることを特徴としている。
【0012】
また、本発明の配線回路基板の製造方法において、前記絶縁層を形成する工程では、すべての配線に対応するように、前記配線が延びる方向と直交する方向において、前記絶縁層を連続して形成することが好適である。
【0013】
また、本発明の配線回路基板の製造方法において、前記絶縁層を形成する工程では、各前記配線に対応するように、前記配線が延びる方向と直交する方向において、前記絶縁層を互いに間隔を隔てて複数形成することも好適である。
【0014】
また、本発明の配線回路基板の製造方法において、複数の前記配線は、1対として複数設けられており、1対の前記配線毎に対応するように、前記配線が延びる方向と直交する方向において、前記絶縁層を互いに間隔を隔てて複数形成することも好適である。
【0015】
また、本発明の配線回路基板の製造方法は、回路付サスペンション基板の製造方法として、好適に用いられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の配線回路基板の製造方法によれば、金属箔の上に絶縁層を形成し、その後、絶縁層をエッチングレジストとして金属箔の不要部分をエッチングする。そのため、段差のある金属箔および金属支持基板の表面にワニスを塗布しないので、絶縁層に気泡溜まりが生じることを防止することができる。
【0017】
また、本発明の配線回路基板の製造方法によれば、まず、金属箔の上に絶縁層を形成してから、次いで、金属箔の不要部分をエッチングする。そのため、ベース絶縁層を、金属箔の厚みにかかわらず、任意の厚みで形成することができる。その結果、ベース絶縁層を薄く形成して、コストの低減を図ることができる。
【0018】
さらに、本発明の配線回路基板の製造方法によれば、絶縁層をエッチングレジストとして金属箔の不要部分をエッチングする。そのため、めっきレジストの形成工程およびその除去工程などの工程がなく、工数を低減することができ、製造効率および製造コストの低減を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の配線回路基板の製造方法により製造された回路付サスペンション基板の一実施形態を示す要部断面図である。なお、図1は、回路付サスペンション基板1の長手方向と直交する方向(以下、幅方向とする。)の要部断面図である。
【0020】
回路付サスペンション基板1は、長手方向に延びる金属支持基板2の上に、導体パターン6が一体的に形成されている。導体パターン6は、金属支持基板2の長手方向に沿って延びる複数の配線8と、各配線8の長手方向両端部に設けられる端子部(図示せず)とを備えている。
【0021】
回路付サスペンション基板1は、ハードディスクドライブに搭載され、金属支持基板2の長手方向一端部には、磁気ヘッドが実装される。導体パターン6の一方の端子部には、磁気ヘッドが電気的に接続される。導体パターン6の他方の端子部には、リード・ライト基板が電気的に接続される。磁気ヘッドによってハードディスクから読み取られる読取信号は、磁気ヘッドから、一方の端子部、配線8および他方の端子部を介して、リード・ライト基板へ伝達される。また、リード・ライト基板からハードディスクへ書き込む書込信号は、リード・ライト基板から、他方の端子部、配線8および一方の端子部を介して、磁気ヘッドへ伝達され、磁気ヘッドによってハードディスクへ書き込まれる。
【0022】
図1において、この回路付サスペンション基板1は、金属支持基板2と、金属支持基板2の上に形成される金属薄膜3と、金属薄膜3の上に形成される金属箔4と、金属箔4の上に形成される絶縁層としてのベース絶縁層5と、ベース絶縁層5の上に形成される導体パターン6と、金属薄膜3、金属箔4、ベース絶縁層5および導体パターン6を被覆するように、金属支持基板2の上に形成されるカバー絶縁層7とを備えている。
【0023】
金属支持基板2は、金属箔や金属薄板から平板形状に形成されている。金属支持基板2は、回路付サスペンション基板1の外形形状をなし、長手方向に延びるように形成されている。金属支持基板2を形成する金属としては、例えば、ステンレス、銅または銅合金、42アロイなどが用いられ、好ましくは、ステンレスまたは銅合金が用いられる。また、その厚みは、例えば、10〜50μm、好ましくは、15〜25μmである。
【0024】
金属薄膜3は、金属支持基板2の表面に、平面視おいて(換言すると、それらの厚み方向に投影したときに)金属箔4と重なるように、パターンとして形成されている。金属薄膜3を形成する金属としては、例えば、クロム、金、銀、白金、ニッケル、チタン、ケイ素、マンガン、ジルコニウム、およびそれらの合金、または、それらの酸化物などが用いられる。また、その厚みは、例えば、0.01〜1μm、好ましくは、0.1〜1μmである。
【0025】
また、金属薄膜3は、金属支持基板2と金属箔4との密着性を考慮して、例えば、金属支持基板2の表面に、金属支持基板2との密着力の高い金属からなる第1の金属薄膜3を形成した後、その第1の金属薄膜3の表面に、金属箔4との密着力の高い金属からなる第2の金属薄膜3を積層するなど、多層で形成することもできる。
【0026】
金属箔4は、金属薄膜3の表面に、平面視おいてベース絶縁層5と重なるように、パターンとして形成されている。金属箔4を形成する金属としては、例えば、銅、銀、ニッケル、金、はんだ、またはそれらの合金などが用いられる。好ましくは、銅が用いられる。また、その厚みは、例えば、2〜5μmであり、好ましくは、2〜4μmである。
【0027】
ベース絶縁層5は、金属箔4の表面に、平面視おいて少なくとも導体パターン6と重なるように、パターンとして形成されている。具体的には、ベース絶縁層5は、すべての配線8に対応するように、幅方向に連続して形成されている。ベース絶縁層5を形成する絶縁体としては、例えば、ポリイミド、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニルなどの合成樹脂が用いられる。これらのうち、好ましくは、感光性の合成樹脂が用いられ、さらに好ましくは、感光性ポリイミドが用いられる。また、その厚みは、例えば、50μm以下、好ましくは、5〜10μmである。
【0028】
導体パターン6は、上記したように、複数の配線8および端子部(図示せず)を備えている。複数の配線8は、金属箔4およびベース絶縁層5と平面視において重なるように、ベース絶縁層5の表面において、互いに幅方向に間隔を隔てて複数(4つ)設けられている。
【0029】
複数の配線8は、互いに隣接する2つの配線8が、上記した読取信号を送信するための読取信号用配線として、幅方向一方側に1対として設けられている。また、互いに隣接する2つの配線8が、上記した書込信号を送信するための書込信号用配線として、幅方向他方側に1対として設けられている。
【0030】
各配線8は、金属支持基板2の長手方向に沿って延び、長手方向両端部において端子部に接続されている。各配線8の幅は、例えば、10〜100μm、好ましくは、20〜50μmであり、各配線8間の間隔は、例えば、15〜100μm、好ましくは、20〜50μmである。また、各配線8の厚みは、例えば、5〜20μm、好ましくは、7〜15μmである。
【0031】
導体パターン6を形成する導体としては、例えば、銅、ニッケル、金、はんだ、またはそれらの合金などの金属が用いられる。これらのうち、好ましくは、銅が用いられる。
【0032】
カバー絶縁層8は、金属薄膜3、金属箔4、ベース絶縁層5および導体パターン6を被覆するように、金属支持基板2の表面に形成されている。具体的には、カバー絶縁層8は、平面視において、金属薄膜3、金属箔4、ベース絶縁層5および導体パターン6を含んで、金属支持基板2の表面に形成されている。
【0033】
なお、カバー絶縁層8には、両方の端子部を露出させるための開口部(図示せず)が形成されている。カバー絶縁層8の厚みは、例えば、2〜10μm、好ましくは、3〜6μmである。カバー絶縁層8を形成する絶縁体としては、上記したベース絶縁層5と同様の絶縁体が用いられる。
【0034】
次に、回路付サスペンション基板の製造方法について、図2および図3を参照して、説明する。
【0035】
まず、この方法では、図2(a)に示すように、金属支持基板2を用意する。
【0036】
次いで、この方法では、図2(b)に示すように、金属支持基板2の表面全面に、スパッタリングまたはめっき(電解めっきまたは無電解めっき)により、金属薄膜3を形成する。
【0037】
そして、この方法では、図2(c)に示すように、金属薄膜3の表面全面に、スパッタリングまたはめっき(電解めっきまたは無電解めっき)により、金属箔4を形成する。
【0038】
その後、この方法では、図2(d)および図2(e)に示すように、金属箔4の不要部分9(エッチングにより除去される部分)が露出するように、金属箔4の表面にベース絶縁層5をパターンとして形成する。
【0039】
具体的には、まず、図2(d)に示すように、金属箔4の表面全面に、感光性の合成樹脂の溶液(例えば、感光性ポリアミック酸樹脂のワニス)を塗布し、その後、乾燥して、皮膜10を形成する。次いで、フォトマスク11を介して、皮膜10を露光し、続いて、現像する。これによって、皮膜10をパターンとして形成する。
【0040】
なお、図2(d)では、ネガ画像、つまり、露光においては、フォトマスク11を不要部分9に対向配置し、現像においては、未露光部分を溶解することにより、皮膜10をパターンとして形成している。しかし、ポジ画像、つまり、露光においては、フォトマスク11を、不要部分9以外の部分(つまり、金属箔4として残存させる部分)に対向配置し、現像においては、露光部分を溶解することにより、皮膜10をパターンとして形成することもできる。
【0041】
そして、図2(e)に示すように、皮膜10を、必要に応じて、加熱して、硬化させることにより、合成樹脂からなるベース絶縁層5を、パターンとして形成する。
【0042】
なお、ベース絶縁層5の形成は、上記の方法に制限されず、例えば、予め合成樹脂をパターンとしてフィルムに形成し、そのフィルムを、金属箔4の表面に、接着剤層を介して貼着することもできる。
【0043】
次いで、この方法では、図3(f)に示すように、ベース絶縁層5をエッチングレジストとして、ベース絶縁層5から露出する不要部分9をエッチングする。不要部分9のエッチングは、エッチング液を用いる浸漬法やスプレー法などの公知の方法(ウエットエッチング法)が用いられる。また、このエッチングにより、金属箔4のエッチング部分に対応する金属薄膜3もエッチングされる。そのため、このエッチングにより、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5は、平面視において同一形状に形成される。
【0044】
その後、この方法では、図3(g)に示すように、ベース絶縁層5の表面に、導体パターン6を形成する。導体パターン6は、例えば、アディティブ法、サブトラクティブ法などのパターンニング法により、形成する。好ましくは、アディティブ法により形成する。
【0045】
すなわち、アディティブ法では、まず、ベース絶縁層5の表面およびベース絶縁層5から露出する金属支持基板2の表面に、スパッタリングまたはめっき(電解めっきまたは無電解めっき)などにより、金属薄膜(種膜)を形成する。次いで、金属薄膜の表面に、ドライフィルムレジストを積層して、それを露光および現像することにより、導体パターン6と反転パターンのめっきレジストを形成し、そのめっきレジストから露出する金属薄膜の表面に、電解めっきにより、導体パターン6を形成する。その後、めっきレジストおよびめっきレジストが形成されていた部分の金属薄膜をエッチングなどにより除去する。
【0046】
これによって、導体パターン6が、複数の配線8および端子部を備えるパターンとして形成される。
【0047】
その後、この方法では、図3(h)に示すように、カバー絶縁層8を、金属薄膜3、金属箔4、ベース絶縁層5および導体パターン6を被覆するように、金属支持基板2の表面に形成する。
【0048】
具体的には、まず、配線8の表面、配線8から露出するベース絶縁層5の表面、および、ベース絶縁層5から露出する金属支持基板2の表面に、感光性の合成樹脂の溶液(例えば、感光性ポリアミック酸樹脂のワニス)を塗布し、その後、乾燥して、皮膜を形成する。次いで、フォトマスクを介して、皮膜を露光し、続いて、現像する。これによって、皮膜を、端子部が露出するパターンとして形成する。
【0049】
その後、皮膜を、必要に応じて、加熱して、硬化させることにより、合成樹脂からなるカバー絶縁層8を、パターンとして形成する。
【0050】
このようにカバー絶縁層8を形成すれば、カバー絶縁層8によって配線8を被覆できるのみならず、ベース絶縁層5の表面(上面)および側面、金属箔4の側面、および、金属薄膜3の側面も、カバー絶縁層8によって被覆することができる。そのため、金属箔4および金属薄膜3の側面からの腐食を有効に防止することができる。
【0051】
なお、カバー絶縁層7は、感光性でない合成樹脂の溶液(ワニス)を、上記と同様に、塗布し、乾燥および加熱により硬化させた後、レーザやパンチなどの穿孔加工によって、端子部を露出させる開口部を形成することもできる。
【0052】
これによって、回路付サスペンション基板1を得る。
【0053】
そして、上記した回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、金属箔4の不要部分9が露出するように、金属箔4の表面にベース絶縁層5をパターンとして形成する。そのため、段差のある金属箔4および金属支持基板2の表面にワニスを塗布してベース絶縁層5を形成しないので、ベース絶縁層5に気泡溜まりが生じることを防止することができる。
【0054】
また、上記した回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、まず、金属箔4の表面にベース絶縁層5を形成してから、次いで、金属箔4の不要部分9をエッチングする。そのため、ベース絶縁層5を、金属箔4の厚みにかかわらず、任意の厚みで形成することができる。その結果、ベース絶縁層5を薄く形成して、コストの低減を図ることができる。
【0055】
さらに、上記した回路付サスペンション基板1の製造方法によれば、ベース絶縁層5をエッチングレジストとして金属箔4の不要部分9をエッチングする。そのため、めっきレジストの形成工程およびその除去工程などの工程がなく、工数を低減することができ、製造効率および製造コストの低減を図ることができる。
【0056】
なお、上記の説明では、金属支持基板2の上に、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5を、すべての配線8に対応するように、幅方向に連続するように形成している。
【0057】
しかし、例えば、図4に示すように、金属支持基板2の上に、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5を、各配線8に対応するように、幅方向に間隔を隔てて複数形成することもできる。なお、図4において、上記した部材と同一の部材には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0058】
図4において、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5は、平面視において各配線8とそれぞれ重なるように、金属支持基板2の上に、幅方向に分割して形成されている。
【0059】
また、カバー絶縁層7も、各配線8に対応して形成される金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5を、それぞれ被覆するように、金属支持基板2の上に、幅方向に分割して形成されている。
【0060】
各ベース絶縁層5の幅(幅方向長さ)は、例えば、0.01〜5mm、好ましくは、0.05〜1.5mmであり、各ベース絶縁層5間の間隔は、例えば、0.01〜5mm、好ましくは、0.1〜2mmである。
【0061】
次に、図4に示す回路付サスペンション基板の製造方法について、図5を参照して、説明する。
【0062】
この方法では、まず、上記と同様に、金属支持基板2の表面全面に金属薄膜3を形成し、その金属薄膜3の表面全面に金属箔4を形成する。
【0063】
次いで、図5(e´)に示すように、金属箔4の不要部分9(エッチングにより除去される部分)が露出するように、金属箔4の表面にベース絶縁層5をパターンとして形成する。具体的には、ベース絶縁層5は、上記と同様の方法により、各配線8に対応するように、幅方向に間隔を隔てて複数(4つ)形成する。
【0064】
次いで、この方法では、図5(f´)に示すように、ベース絶縁層5をエッチングレジストとして、ベース絶縁層5から露出する金属箔4の不要部分9、および、金属箔4のエッチング部分に対応する金属薄膜3をエッチングする。このエッチングにより、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5は、平面視において同一形状に形成される。つまり、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5は、1つの配線8毎に、幅方向に分割して形成される。
【0065】
その後、この方法では、図5(g´)に示すように、分割されているそれぞれのベース絶縁層5の表面に、配線8がそれぞれ配置されるように、導体パターン6を形成する。
【0066】
その後、この方法では、図5(h´)に示すように、カバー絶縁層8を、分割されているそれぞれの金属薄膜3、金属箔4、ベース絶縁層5および導体パターン6を、それぞれ被覆するように、金属支持基板2の表面に形成する。
【0067】
これによって、回路付サスペンション基板1を得る。
【0068】
図4に示す回路付サスペンション基板1は、配線8毎に、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5が形成されている。しかるに、上記の方法によれば、各配線8に対応する金属箔4毎に、ワニスを塗布してベース絶縁層5を形成しないので、各配線8に対応して形成されるベース絶縁層5に気泡溜まりが生じることを防止することができる。従って、上記の方法は、このような図4に示す回路付サスペンション基板1、および、次に述べる図6に示す回路付サスペンション基板1の製造に、とりわけ有効である。
【0069】
さらに、図6に示すように、金属支持基板2の上に、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5を、1対の配線8毎に対応するように、互いに間隔を隔てて複数設けることもできる。なお、図6において、上記した部材と同一の部材には、同一の参照符号を付し、その説明を省略する。
【0070】
図6において、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5は、平面視において1対の配線8とそれぞれ重なるように、金属支持基板2の上に、幅方向に分割して形成されている。具体的には、幅方向一方側の金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5は、読取信号用配線として幅方向一方側に1対として設けられている2つの配線8と平面視において重なるように設けられている。また、幅方向他方側の金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5は、書込信号用配線として幅方向他方側に1対として設けられている2つの配線8と平面視において重なるように設けられている。
【0071】
また、カバー絶縁層7も、1対の配線8に対応して形成される金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5を、それぞれ被覆するように、金属支持基板2の上に、幅方向に分割して形成されている。
【0072】
各ベース絶縁層5の幅(幅方向長さ)は、例えば、0.02〜5mm、好ましくは、0.05〜1.5mmであり、各ベース絶縁層5間の間隔は、例えば、0.01〜5mm、好ましくは、0.1〜2mmである。
【0073】
次に、図6に示す回路付サスペンション基板の製造方法について、図7を参照して、説明する。
【0074】
この方法では、まず、上記と同様に、金属支持基板2の表面全面に金属薄膜3を形成し、その金属薄膜3の表面全面に金属箔4を形成する。
【0075】
次いで、図7(e´´)に示すように、金属箔4の不要部分9(エッチングにより除去される部分)が露出するように、金属箔4の表面にベース絶縁層5をパターンとして形成する。具体的には、ベース絶縁層5は、上記と同様の方法により、1対の配線8毎に対応するように、幅方向に間隔を隔てて複数(2つ)形成する。
【0076】
次いで、この方法では、図7(f´´)に示すように、ベース絶縁層5をエッチングレジストとして、ベース絶縁層5から露出する金属箔4の不要部分9、および、金属箔4のエッチング部分に対応する金属薄膜3をエッチングする。このエッチングにより、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5は、平面視において同一形状に形成される。つまり、金属薄膜3、金属箔4およびベース絶縁層5は、1対の配線8毎に、幅方向に分割して形成される。
【0077】
その後、この方法では、図7(g´´)に示すように、分割されているそれぞれのベース絶縁層5の表面に、1対の配線8がそれぞれ配置されるように、導体パターン6を形成する。具体的には、幅方向一方側のベース絶縁層5の上に、読取信号用配線として、1対の配線8を形成し、幅方向他方側のベース絶縁層5の上に、書込信号用配線として、1対の配線8を形成する。
【0078】
その後、この方法では、図7(h´´)に示すように、カバー絶縁層8を、分割されているそれぞれの金属薄膜3、金属箔4、ベース絶縁層5および導体パターン6を、それぞれ被覆するように、金属支持基板2の表面に形成する。
【0079】
これによって、回路付サスペンション基板1を得る。
【0080】
図6に示す回路付サスペンション基板1では、金属薄膜3、金属箔4、ベース絶縁層5、導体パターン6およびカバー絶縁層7が、1対の配線8(1対の読取信号用配線または1対の書込信号用配線)毎に、平面視において重なるように形成されている。そのため、読取信号および書込信号が、差動信号である場合であっても、各配線8の伝送損失を十分に低減することができる。
【0081】
なお、上記の説明では、金属支持基板2と金属箔4と間の密着性の向上を図るべく、それらの間に金属薄膜3を設けている。しかし、その目的および用途によって、金属支持基板2の上に、金属箔4を直接設けることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の配線回路基板の製造方法により製造された回路付サスペンション基板の一実施形態を示す要部断面図である。
【図2】図1に示す回路付サスペンション基板の製造方法を示す製造工程図であって、(a)は、金属支持基板を用意する工程、(b)は、金属支持基板の表面全面に、金属薄膜を形成する工程、(c)は、金属薄膜の表面全面に、金属箔を形成する工程、(d)は、金属箔の表面全面に、皮膜をパターンとして形成する工程、(e)は、皮膜を硬化させて、ベース絶縁層5を形成する工程を示す。
【図3】図2に続いて、図1に示す回路付サスペンション基板の製造方法を示す製造工程図であって、(f)は、ベース絶縁層をエッチングレジストとして、ベース絶縁層から露出する不要部分をエッチングする工程、(g)は、ベース絶縁層の表面に、導体パターンを形成する工程、(h)は、カバー絶縁層を、金属薄膜、金属箔、ベース絶縁層および導体パターンを被覆するように、金属支持基板の表面に形成する工程を示す。
【図4】本発明の配線回路基板の製造方法により製造された回路付サスペンション基板の他の実施形態(金属支持基板の上に、金属薄膜、金属箔およびベース絶縁層が、各配線に対応するように複数形成されている態様)を示す要部断面図である。
【図5】図5に示す回路付サスペンション基板の製造方法を示す製造工程図であって、(e´)は、ベース絶縁層を、各配線に対応するように、幅方向に間隔を隔てて複数形成する工程、(f´)は、ベース絶縁層をエッチングレジストとして、ベース絶縁層から露出する不要部分をエッチングする工程、(g´)は、ベース絶縁層の表面に、導体パターンを形成する工程、(h´)は、カバー絶縁層を、分割されているそれぞれの金属薄膜、金属箔、ベース絶縁層および導体パターンをそれぞれ被覆するように、金属支持基板の表面に形成する工程を示す。
【図6】本発明の配線回路基板の製造方法により製造された回路付サスペンション基板の他の実施形態(金属支持基板の上に、金属薄膜、金属箔およびベース絶縁層が、1対の配線に対応するように複数形成されている態様)を示す要部断面図である。
【図7】図6に示す回路付サスペンション基板の製造方法を示す製造工程図であって、(e´´)は、ベース絶縁層を、1対の配線に対応するように、幅方向に間隔を隔てて複数形成する工程、(f´´)は、ベース絶縁層をエッチングレジストとして、ベース絶縁層から露出する不要部分をエッチングする工程、(g´´)は、ベース絶縁層の表面に、導体パターンを形成する工程、(h´´)は、カバー絶縁層を、分割されているそれぞれの金属薄膜、金属箔、ベース絶縁層および導体パターンをそれぞれ被覆するように、金属支持基板の表面に形成する工程を示す。
【符号の説明】
【0083】
1 回路付サスペンション基板
2 金属支持基板
4 金属箔
5 ベース絶縁層
6 導体パターン
8 配線
9 不要部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属支持基板を用意する工程、
前記金属支持基板の上に、金属箔を形成する工程、
前記金属箔の不要部分が露出するように、前記金属箔の上に絶縁層を形成する工程、
前記絶縁層をエッチングレジストとして、前記不要部分をエッチングする工程、および、
前記絶縁層の上に、複数の配線を形成する工程
を備えていることを特徴とする、配線回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記絶縁層を形成する工程では、すべての配線に対応するように、前記配線が延びる方向と直交する方向において、前記絶縁層を連続して形成することを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項3】
前記絶縁層を形成する工程では、各前記配線に対応するように、前記配線が延びる方向と直交する方向において、前記絶縁層を互いに間隔を隔てて複数形成することを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項4】
複数の前記配線は、1対として複数設けられており、
1対の前記配線毎に対応するように、前記配線が延びる方向と直交する方向において、前記絶縁層を互いに間隔を隔てて複数形成することを特徴とする、請求項1に記載の配線回路基板の製造方法。
【請求項5】
前記配線回路基板が回路付サスペンション基板であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の配線回路基板の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−32731(P2009−32731A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192215(P2007−192215)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】