説明

配線基板加工装置

【課題】配線基板の表面層を切削したり、回路パターンを切断したり、その表面を研磨する等の加工作業を最適な作業方法で高精度に行うことができる配線基板加工装置を提供する。
【解決手段】配線基板1の表面切削、前記配線基板1に形成された回路パターン3の切断および該回路パターン3の表面を研磨する導電性を有した加工具11,12と、加工具11を回転させる回転手段15と、加工具12を前記回路パターン3の延出方向に沿って往復動させる移動手段17と、前記回路パターン3に接触させる導電体からなる接触端子10と、この接触端子10と前記加工具11,12との間の導通、非導通を検出する導電検出手段19と、前記切削、切断または研磨の各加工を手動作業か自動作業の何れで行うかを選択する作業選択スイッチ7を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板の配線パターンをカットしたり研磨加工する配線基板加工装置に係り、特に、カットや研磨加工を高精度に行い得る配線基板加工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板は、回路を変更したり、電子部品の実装を容易にするため、配線パターンや基板自体の加工が必要な場合があり、その作業を容易にすべく各種の加工方法や装置が提案されている。
【0003】
多層のプリント基板においては、高精度でスタブ座ぐり、このスタブを短くすることを目的とした多層プリント配線板、そのスタブ座ぐり装置、方法が知られている。
このものは、基板に絶縁層を介して形成される複数の配線層と、基板を貫通し導通膜が設けられるヴィアホールと、配線層の内でヴィアホールを導通する電流検出層とを専用に設けている。
【0004】
そして、ヴィアホールを座ぐる工具に導電性ドリルを用い、このドリルの刃先がヴィアホールと接触したところを基準として、貫通ヴィアホールのスタブの座ぐり深さを制御するようになっている。
【0005】
この制御により、高精度にスタブを座ぐってその長さを短くすることができ、内層の所定の各層を接続する貫通ヴィアホールのスタブが長いことに起因する静電容量のため、インピーダンス不整合による反射、信号遅延、波形なまり等が発生する問題を防止できるというものである。
【特許文献1】特開2005−116945公報 また、外層に配線パターンを設けても、プリント基板が大きくならないようにする基板配線方式が知られている。
【0006】
この基板配線方式は、内層に内層配線パターンを有する配線基板の表面を切削工具で削り、内層配線パターンの所望位置を露出させてから、この配線パターンの切断や配線等の改造を施す。
【0007】
切削工具には、導電性のあるドリルを使用し、露出させようとする内層配線パターンとドリルとの間に導電検出手段(交流電流計)を設けている。そして、この交流電流計により導通が検出されるまで、ドリルにより配線基板の切削を続行するようになっている。
【0008】
これにより、交流電流計で導通が検出されたとき、内層配線パターンとドリルとの接触が確認されるので、内層配線パターンの基板表面の露出が熟練を要さず確実に検出できる。
【0009】
この結果、予め設計段階で内層配線パターン改造のための外周面の確保といった考慮が不要となり、外層面を有効活用できて、基板の小型化を図ることができる。
【特許文献2】特開平11−68324号公報また、同じく前記内層配線パターンを自動的に高精度でカットすることを目的とした配線基板加工装置が提案されている。この配線基板加工装置は、プリント基板を載置するY軸移動テーブルと、ドリルを装着するスピンドルモータおよび高さ検出センサを固定部材に支持したX軸移動手段と、前記ドリルの刃先を基板上に位置決めし、これを駆動して内層パターンのカットを制御する駆動制御部(サーボモータ制御部)を備えている。さらに、一方の接触子を基板のカット対象となる内層パターン直下に存在する下層導体に接触し、他方の接触子をドリルに接続してなる導電検出部や、前記サーボモータ制御部にデータを伝送して位置決めし、パターンカット等の一連の操作を行うパターンカット条件を格納した数値制御データ供給端末(NCデータ供給端末)等を具備して構成されている。これにより、パターンカット動作を開始させると、NCデータ供給端末がNCデータに基づいて、カットすべき基板を位置決めする。つぎに、サーボモータ制御部がドリルを回転させつつ下降させ、基板の内層パターンのカットを行わせる。この内層パターンのカット後もドリルは下降するが、グランド層に達した時点でドリルとの間に電流が流れ、これを導通検出部が検出する。すると、サーボモータ制御部がドリルの回転を停止させる。この後、サーボモータ制御部がドリルを上昇させることにより、内層パターンのカットが終了する。よって、多層プリント基板の層膜精度のバラツキや反り、たわみの影響を受けずに、内層パターンのカットが可能となり、設計変更に伴う改造工数の低減を図ることができる。
【特許文献3】特開平10−135647号公報また、多層配線基板の配線層を切り込み過ぎることなく完全に露出させる座ぐり加工する多層配線基板加工装置及び加工方法も提案されている。このものは、ドリルを備えた加工工具、回転モータおよび制御モータを備えている。また、前記加工工具に電圧を与える給電回路、加工工具が目的の下層配線に接触したことを検出する接触検出回路や検出導線、さらに、前記モータ類を制御する制御回路等を具備している。そして、前記加工工具が基板の絶縁部を削って所定の下層配線に達し、両者間に導通が生じると、接触検出回路からの信号を受ける制御回路が制御信号をモータに送出し、加工工具の送りを停止させるようになっている。これにより、金属ベース上の多層配線基板の製造で、これまでに実現できなかった座ぐりによる下層配線の露出を効率良く行うことができ、ハイブリッド電子回路等で素子の高密度化、信頼性の向上が達成可能になったというものである。
【特許文献4】特開平6−112659号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、上記特許文献1乃至4の発明は、何れも自動作業と手動作業の任意な選択ができないため、加工の途中に自動あるいは手動から他の作業へと自在に変更し、その加工にとって最適な加工を行えなかった。
また、レジスト層の切削、回路パターンの切断および該回路パターンの表面研磨等を選択し、それぞれを自動作業で高精度に行わせることもできなかった。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、配線基板の表面層を切削したり、回路パターンを切断したり、その表面を研磨する等の加工作業を最適な作業方法で高精度に行うことができる配線基板加工装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明は、配線基板の表面切削、前記配線基板に形成された回路パターンの切断および該回路パターンの表面を研磨する導電性を有した加工具と、この加工具を回転させる回転手段と、この加工具を前記回路パターンの延出方向に沿って往復動させる移動手段と、前記回路パターンに接触させる導電体からなる接触端子と、この接触端子と前記加工具との間の導通、非導通を検出する導電検出手段と、前記切削、切断または研磨の各加工を手動作業か自動作業の何れで行うかを選択する作業選択スイッチを備えるとともに、前記自動作業側には前記各加工のうち何れか1つを指定させる加工選択スイッチを設けた操作手段と、この操作手段から自動作業に続いて前記表面切削の指令を受けたとき、前記導電検出手段の検出信号が非導通を示すと前記回転手段を回転させ、次に、導通に変化したときは回転を継続させた後、非導通に変化したときに回転を停止させ、また、前記自動作業に続いて回路パターンの切断指令を受けたとき、前記導電検出手段の検出信号が導通を示すと前記回転手段を回転させた後、非導通に変化したときに回転を停止させ、また、前記自動作業に続いて回路パターンの表面研磨指令を受けたとき、前記導電検出手段の検出信号が非導通を示すと前記移動手段を作動させた後、導通に変化したときにこの動作を停止させる制御を行う制御手段と、を具備してなることを特徴としている。
また、配線基板の表面切削、前記配線基板に形成された回路パターンの切断および該回路パターンの表面を研磨する導電性を有した加工具と、この加工具を回転させる回転手段と、この加工具を前記回路パターンの延出方向に沿って往復動させる移動手段と、前記回路パターンに接触させる導電体からなる接触端子と、この接触端子と前記加工具との間の導通、非導通を検出する導電検出手段と、前記切削、切断または研磨の各加工を手動作業か自動作業の何れで行うかを選択する作業選択スイッチを備えるとともに、前記自動作業側には前記各加工のうち何れか1つを指定させる加工選択スイッチを設けた操作手段と、この操作手段から自動作業に続いて与えられる指令に応じて前記配線基板の表面切削、前記回路パターンの切断または表面研磨の何れかの加工モードに移行し、前記導電検出手段の検出信号が導通もしくは非導通の何れを示すかの違いとその後の変化に応じて前記回転手段の回転動作を制御するとともに、前記移動手段の往復動作を制御する制御手段と、を具備してなることを特徴としている。
また、前記制御手段が、前記表面切削モードに移行したとき、前記検出信号が非導通を示すと前記回転手段を回転させ、次に、導通に変化したときは回転を続行させ、非導通に変化したときに回転を停止させることを特徴としている。
また、前記制御手段が、前記切断モードに移行したとき、前記検出信号が導通を示すと前記回転手段を回転させ、非導通に変化したときに回転を停止させることを特徴としている。
また、前記制御手段が、前記研磨加工モードに移行したとき、前記検出信号が非導通を示すと前記移動手段を動作させ、導通に変化したときにその動作を停止させることを特徴としている。
また、前記回転手段が電気ドリルであり、前記加工具がこの電気ドリルに装着されるカッターであって、このカッターの刃先が略半円形に形成されてなることを特徴としている。
また、前記回転手段が電気ドリルであり、前記加工具がこの電気ドリルに装着されるカッターであって、このカッターの刃先が鋭角に形成されており、このカッターの刃先と前記回路パターンの延出方向との間に仰角が生じる向きで前記電気ドリルに保持されることを特徴としている。
また、前記制御手段が、前記検出信号から抵抗値を演算し、この抵抗値が設定値よりも小さいときに前記回転手段の回転速度を低下させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
以上のように本発明は、配線基板の表面切削、前記配線基板に形成された回路パターンの切断および該回路パターンの表面を研磨する各加工を手動作業か自動作業の何れでも行えるから、それぞれの加工にとって最適な作業方法を任意に選択できるうえ、加工の途中でも必要に応じて作業方法を適宜切り替えることもできる。
そして、制御手段が、自動作業に続いて表面切削の指令を受けたとき、導電検出手段の検出信号が非導通を示すと回転手段を回転させ、次に、導通に変化したときは回転を継続させた後、非導通に変化したときに回転を停止させるので、配線基板が表面側よりレジスト層、回路パターン、絶縁層となっている場合、加工具でレジスト層を切削してから回路パターンを切断する加工作業を高精度に行うことができる。
さらに、制御手段が、自動作業に続いて回路パターンの切断指令を受けたとき、導電検出手段の検出信号が導通を示すと回転手段を回転させた後、非導通に変化したときに回転を停止させるので、配線基板が表面側より回路パターン、絶縁層となっている場合、加工具で回路パターンのみを切断する加工作業を高精度に行うことができる。
加えて、制御手段が、自動作業に続いて回路パターンの表面研磨指令を受けたとき、導電検出手段の検出信号が非導通を示すと移動手段を作動させた後、導通に変化したときにこの動作を停止させるので、配線基板が表面側よりレジスト層、回路パターンとなっている場合、加工具でレジスト層を所要幅だけ研磨して回路パターンを露出させる加工作業を高精度に行うことができる、といった効果がある。
また、制御手段が、操作手段から自動作業に続いて与えられる指令に応じて配線基板の表面切削、回路パターンの切断または表面研磨の何れかの加工モードに移行し、導電検出手段の検出信号が導通もしくは非導通の何れを示すかの違いとその後の変化に応じて回転手段の回転動作を制御するとともに、移動手段の往復動作を制御するので、配線基板がレジスト層、回路パターン、絶縁層等で形成されている場合、その構造に応じて表面切削、回路パターンの切断および表面研磨を必要なレベルまで高精度に行うことができる効果がある。
また、制御手段が、表面切削モードに移行したとき、検出信号が非導通を示すと回転手段を回転させ、次に、導通に変化したときは回転を続行させ、非導通に変化したときに回転を停止させることから、配線基板が表面側よりレジスト層、回路パターン、絶縁層となっている場合、加工具でレジスト層を切削してから回路パターンを切断する加工作業を高精度に行うことができる利点がある。
また、制御手段が、切断モードに移行したとき、検出信号が導通を示すと回転手段を回転させ、非導通に変化したときに回転を停止させることから、配線基板が表面側より回路パターン、絶縁層となっている場合、加工具で回路パターンのみを切断する加工作業を高精度に行うことができる利点がある。
また、制御手段が、研磨加工モードに移行したとき、検出信号が非導通を示すと移動手段を動作させ、導通に変化したときにその動作を停止させることから、配線基板が表面側よりレジスト層、回路パターンとなっている場合、加工具でレジスト層を所要幅だけ研磨して回路パターンを露出させる加工作業を高精度に行うことができる利点がある。
また、回転手段が電気ドリルであり、加工具がこの電気ドリルに装着されるカッターであって、このカッターの刃先が略半円形に形成されていることから、加工面に対する刃先の接触面積が漸次拡がるため、レジスト層を切削したり、回路パターンを切断する場合、それぞれに必要な深さまで容易に加工することができる利点がある。
また、回転手段が電気ドリルであり、加工具がこの電気ドリルに装着されるカッターであって、このカッターの刃先が鋭角に形成されており、このカッターの刃先と前記回路パターンの延出方向との間に仰角が生じる向きで前記電気ドリルに保持されることから、レジスト層を研磨して回路パターンを露出させる場合、研磨面に対して鋭角な刃先が仰角を保ちつつ往復動するため、レジスト層を研磨した後、回路パターンを所要幅だけ適正に露出させることができる利点がある。
また、制御手段が、検出信号から抵抗値を演算し、この抵抗値が設定値よりも小さいときに回転手段の回転速度を低下させるので、回路パターンを切断する場合、略半円形な刃先と回路パターンとの接触面積が漸次小となって抵抗値が設定値より大きくなった段階で刃先の回転が低速となり、必要な深さまで切断したときにカッターの動作が停止するため、より適正な切断を行える利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明に係る配線基板加工装置の実施形態について、図面を参照しながら詳述する。
図1は、本発明の一実施形態に係る配線基板加工装置の概要構成を示す電気回路図である。
この配線基板加工装置は、操作部5、接触端子10、カッター11,12、電気ドリル15、カッター移動装置17、導電検出部19および制御部20等を備えており、配線基板1を切削、切断または研磨加工する構成となっている。
なお、本例における加工対象の配線基板1は、絶縁層2とレジスト層4との間に、回路パターン3が形成されている。
操作部5は、メインスイッチ6、作業選択スイッチ7、加工選択スイッチ8および手動スイッチ9を備えている。メインスイッチ6には、定電圧が導かれ、作業選択スイッチ7が接続されている。
この作業選択スイッチ7は、切替接点7a、手動側接点7bおよび自動側接点7cからなり、図示省略したキーの切替操作によって切替接点7aを手動側接点7bまたは自動側接点7cの何れかに切替えられる。
手動側接点7bは、制御部20に接続されており、図示省略したキーの操作で切替接点7aが手動側接点7b側に切替えられると、手動作業の指令信号が与えられる。
一方、自動側接点7cは、加工選択スイッチ8に接続されている。この加工選択スイッチ8は、切替接点8a、切削側接点8b、切断側接点8cおよび研磨側接点8dからなり、それぞれの接点が制御部20に接続されている。
【0014】
切削側接点8bには切削加工が、切断側接点8cには切断加工が、研磨側接点8dには研磨加工の指令がそれぞれ割り当てられている。
図示省略したキーの操作により、切替接点8aが何れかの接点8b〜8dに切替えられると、自動作業の指令に続いて、切削指令、切断指令または研磨指令信号が制御部20に与えられる。
手動スイッチ9は、所謂a接点スイッチであって、定電圧が導かれ、出力が制御部20に与えられている。
この手動スイッチ9は、操作キーを押すと可動接点が固定接点に接触し、オン信号が制御部20に送出される。
なお、接触端子10は、導電体からなり、回路パターン3の一端に押し当てて接触させる。
カッター11は、図2に示すように、基端11a側が偏平で、先端となる刃先11b側が略半円形に形成されており、導電性を有している。
このカッター11は、配線基板1の表面に形成されたレジスト層4を切削したり、配線基板1に形成された回路パターン3の切断に用いられる。
なお、刃先11bは、切削または切断する対象に合わせて曲率半径が予め設定される。また、この刃先11bの半円形部分には、多数の突起を設けており、切削や切断加工の効率を高めている。
カッター12は、図3に示すように、基端12a側が偏平で、先端となる刃先12b側が鋭角に形成されており、導電性を有している。
このカッター12は、レジスト層4を除去して、回路パターン3の表面を研磨するために用いられる。なお、刃先12bは、研磨する対象に合わせて傾斜角が予め設定されている。
電気ドリル15は、取付台14に本体が固定されており、下向きにした装着具13に、カッター11または12が装着される。
この装着具13は、導電性を有しており、外周に電気接触子を設けていて、導電検出部19からのリード線が接続されるようになっている。
この電気ドリル15は、モーター制御部16の制御信号を受けてカッター11を回転させる。
また、この電気ドリル15は、カッター移動装置17により、カッター12を保持した状態で往復動するようになっている。
カッター移動装置17は、モーター、クランクおよびシャフトからなる小型のピストン機構であり、モーターを回転させるとクランクが連動し、シャフトが前後に往復動する構成になっている。
このシャフトは、カッター移動装置17から水平方向に突出しており、その先端に取付台14が連結されている。
このカッター移動装置17は、往復動制御部18の制御信号を受けて、シャフトをピストン運動させることにより、カッター12を回路パターン3の延出方向に沿って往復動させる。
なお、回路パターン3の表面3aを研磨する際は、カッター12の刃先12bの横幅分だけ、所要の長さを研磨可能に保持される。
すなわち、図3に示したように、カッター12の刃先12bと回路パターン3の延出方向(表面3aに対して平行なA−B方向)との間に仰角αが生じる向きで、電気ドリル15の装着具13に装着される。このときは、電気ドリル15の回転を停止した状態でロックしておくと、カッター12が回転することなく定位置に保持される。
導電検出部19は、電流計であって、リード線を介し装着具13と接触端子10との間に接続されている。また、導電検出部19は、出力を制御部20に与えるようになっている。
この導電検出部19は、接触端子10とカッター11または12との間の導通、非導通を検出し、その検出信号をディジタルデータで制御部20側に送出する。
制御部20は、操作部5からの指令を受けたとき、導電検出部19が導通か非導通かの違いとその後の変化により、モーター制御部16を介して電気ドリル15を制御し、配線基板1の表面切削や回路パターン3の切断加工を行わせるとともに、往復動制御部18を介してカッター移動装置17を制御し、回路パターン3の表面研磨を実行させる。
また、この制御部20は、電気ドリル15の回転を低速にさせる設定値のデータやカッター移動装置17の往復動作を漸次低速にさせる設定値のデータを記憶するメモリを備えている。
そして、導電検出部19からの検出信号が入力したとき、その電流値のデータから抵抗値を演算処理し、その抵抗値のデータと設定値のデータとを比較することにより、電気ドリル15の回転を低速にさせたり、カッター移動装置17の往復動作を低速にさせる制御を行う構成となっている。
次に、上記配線基板加工装置の動作について、図7のフローチャートを参照しつつ説明する。
作業者が、手動作業で回路パターン3の切断加工(パターンカット)を行う場合、予め電気ドリル15にカッター11を装着しておく。
そして、操作部5のメインスイッチ6をオンにすると、制御部20が制御動作を開始し、自動作業か手動作業かを判別する(ステップS11)。
ここで、作業選択スイッチ7を手動側にすると、制御部20に手動作業の指令が与えられる。制御部20は、これに応じて手動作業モードに移行する。
この後、作業者が操作部5の手動スイッチ9をオンにすると、電気ドリル15のモーターが回転し、カッター11が作動する(ステップS12)。
【0015】
このカッター11を配線基板1側に接近させると、回転する刃先11bにより回路パターン3が切断されてゆく。
そして、所要の深さに達したとき、手動スイッチ9をオフにすると、モーターの回転が停止し、カッター11も作動を停止する(ステップS13)。これにより、回路パターン3が所望の箇所で切断される。
なお、この手動作業では、上記回路パターン3の切断以外に、この表面の研磨や配線基板1の表面(レジスト層)4を切削するといった加工もできる。
つぎに、作業者が、自動作業で配線基板の表面切削と回路パターンの切断を行う場合について説明する。
この場合も、予め電気ドリル15にカッター11を装着しておく。
そして、作業選択スイッチ7を自動側にすると、自動作業指令を受けた制御部20は表面切削、パターン切断あるいは研磨の何れが指定されるかを判別する(ステップS14)。
ここで、作業者がキー操作により、加工選択スイッチ8の切替接点8aを切削側接点8bに切り替えると、自動作業に続いて表面切削の指令が制御部20に与えられる。
この制御部20は、指令を受けると表面切削モードに移行し、図1に示したように、電気ドリル15に装着されたカッター11を配線基板1側に自動接近させた後、導電検出部19の出力信号をチェックする。
そして、導通確認を行うとともに、電流値のデータに基づいて抵抗値を検出(演算)する(ステップS15)。
この導通確認により導通か非導通かを判別したとき(ステップS16)、検出信号が導通を示すと、制御部20はモーター制御部16に起動指令を送出しない。従って、電気ドリル15のモーターは回転しない(ステップS17)。
一方、検出信号が非導通を示すと、図4(a)のように、絶縁性のレジスト層4にカッター11の刃先11bが接した状態となっており、制御部20はモーター制御部16に起動指令を送出する。
すると、モーター制御部16は、電気ドリル15のモーターを回転させて、カッター11を作動させる(ステップS18)。
これにより、回転するカッター11の刃先11bでレジスト層4が切削されてゆく。
続いて、制御部20は導通確認を行うとともに、電流値に基づいて抵抗値を検出する(ステップS19)。
この導通確認により導通か非導通かを判別したとき(ステップS20)、検出信号が導通を示さないときは、レジスト層4の切削が続けられている。
一方、検出信号が導通を示すと、レジスト層4の切削が終了し、刃先11bが回路パターン3に接触した状態となっている。
この非導通から導通へ変化したときは、制御部20からモーター制御部16への指令を変更せず、モーターの回転を継続させる。
このため、カッター11も作動し続けるので、図4(b)に示すように、レジスト層4の切削後、回路パターン3が切断されてゆく。
続いて、制御部20は導通確認を行うとともに、電流値に基づいて抵抗値を検出する(ステップS22)。
そして、検出された抵抗値のデータと設定値のデータとを比較し(ステップS23)、抵抗値が設定値よりも大きいときに、モーター制御部16へ指令を送出し、モーターの回転を低速にさせる(ステップS24)。すると、刃先11bの動作も低下し、回路パターン3の切断力が弱くなる。
このように、抵抗値が大きくなっているときは、回路パターン3の切断部と略円形状の刃先11bとの接触面積が小さくなり、切断が終了に近づいていることを示している。
続いて、制御部20は導通か非導通かを判別し(ステップS25)、非導通になった時点でモーターの回転を停止させ、カッター11の作動も停止させる(ステップS26)。
すなわち、検出信号が導通を示すときは、回路パターン3の切断が続いており、非導通のときに刃先11bが絶縁層2に達して、図4(c)のように、回路パターン3の切断が終了したことを示している。
以上のように、配線基板1のレジスト層4を切削してから回路パターン3を切断するとき、切断の直前にカッター11の作動を低下させるので、切断面にバリや凹凸が生じることなく、また、切断し過ぎることもないため、高精度の加工がなされる。
つぎに、作業者が、自動作業で回路パターンの切断のみを行う場合について説明する。
この場合は、図4(b),(c)の加工工程にほぼ等しく、作業者が作業選択スイッチ7を自動側にし、加工選択スイッチ8の切替接点8aを切断側接点8cに切り替えると、自動作業に続いて回路切断の指令が制御部20に与えられる。
この制御部20は、指令を受けると回路切断モードに移行し、カッター11を配線基板1側に自動接近させた後、導電検出部19の出力信号をチェックする。
そして、導通確認を行うとともに、電流値のデータに基づいて抵抗値を検出する(ステップS31)。
この導通確認により導通か非導通かを判別したとき(ステップS32)、検出信号が非導通を示すと、制御部20はモーター制御部16に起動指令を送出せず、電気ドリル15のモーターを回転させない(ステップS17)。
一方、検出信号が導通を示すと、図5(a)のように、回路パターン3にカッター11の刃先11bが接した状態となっており、制御部20はモーター制御部16に起動指令を送出する。
すると、モーター制御部16は、電気ドリル15のモーターを回転させて、カッター11を作動させる(ステップS33)。
これにより、回転するカッター11の刃先11bで回路パターン3が切断されてゆく。
続いて、制御部20は導通確認を行うとともに、電流値に基づいて抵抗値を検出する(ステップS34)。
そして、検出された抵抗値のデータと設定値のデータとを比較し(ステップS35)、抵抗値が設定値よりも大きいときに、モーター制御部16へ指令を送出し、モーターの回転を低速にさせる(ステップS36)。すると、刃先11bの動作も低下し、回路パターン3の切断力が弱くなる。
このように、抵抗値が大きくなっているときは、回路パターン3の切断部と略円形状の刃先11bとの接触面積が小さくなり、切断が終了に近づいていることを示している。
続いて、制御部20は導通か非導通かを判別し(ステップS37)、非導通になった時点でモーターの回転を停止させ、カッター11の作動も停止させる(ステップS38)。
すなわち、検出信号が導通を示すときは、回路パターン3の切断が続いており、非導通のときに刃先11bが絶縁層2に達して、図5(b)のように、回路パターン3の切断が終了したことを示している。
以上のように、回路パターン3のみを切断するとき、切断の直前にカッター11の作動を低下させるので、切断面にバリや凹凸が生じることなく、また、切断し過ぎることもないため、高精度の加工がなされる。
つぎに、作業者が、自動作業で回路パターンの表面研磨を行う場合について説明する。
この場合は、予め電気ドリル15にカッター12を装着しておく。このときは、カッター12の刃先12bと回路パターン3の延出方向(ここでは、レジスト層4の表面4aに対して平行な方向)との間に仰角αが生じる向きで、電気ドリル15の装着具13に装着される。
そして、作業者が作業選択スイッチ7を自動側にし、加工選択スイッチ8の切替接点8aを研磨側接点8dに切り替えると、自動作業に続いて表面研磨の指令が制御部20に与えられる。
この制御部20は、指令を受けると表面研磨モードに移行し、往復動制御部18を介してカッター移動装置17を制御することにより、回路パターン3の表面研磨を開始させる。
まず、カッター12を配線基板1側に自動接近させた後、導電検出部19の出力信号をチェックする。
そして、導通確認を行うとともに、電流値のデータに基づいて抵抗値を検出する(ステップS41)。
この導通確認により導通か非導通かを判別したとき(ステップS42)、検出信号が導通を示すと、制御部20はカッター移動装置17を動作させず、電気ドリル15のモーターも回転させない(ステップS17)。
一方、検出信号が非導通を示すと、レジスト層4にカッター12の刃先12bが接した状態となっており、制御部20は往復動制御部18に起動指令を送出し、カッター移動装置17を起動させる。
すると、このカッター移動装置17は、シャフトを往復動させて、カッター12を作動させる(ステップS33)。
これにより、図6(a)に示すように、往復動するカッター12の刃先12bの横幅分だけ、レジスト層4が削り取られてゆく。
続いて、制御部20は導通確認を行うとともに、電流値に基づいて抵抗値を検出する(ステップS44)。
そして、制御部20は導通か非導通かを判別し(ステップS45)、導通になった時点でカッター移動装置17の動作を漸次低速にさせる(ステップS46)。
すなわち、検出信号が導通を示すときは、図6(b)のように、レジスト層4の研磨が終了し、回路パターン3の表面3aにカッター12の刃先12bが達したことを示している。
この時点で、カッター12の往復動作を弱めると、レジスト層4の研磨面に凹凸が生じることなく、しかも、回路パターン3の表面3aをソフトタッチで研磨することができる。
この後、制御部20はカッター移動装置17の動作を停止させることにより、カッター12の往復動作を停止させる(ステップS47)。
これにより、レジスト層4が研磨された後、回路パターン3の表面3aが所要幅だけ露出する。
以上のように、回路パターン3の表面3aを研磨するとき、レジスト層4から表面3aへと研磨が進む直前にカッター12の往復速度を低下させるので、研磨面に凹凸が生じることなく、また、研磨し過ぎることもないため、高精度の加工がなされる。
なお、上記実施の形態では、加工対象の配線基板1が絶縁層2とレジスト層4との間に回路パターン3を形成した例について説明したが、他の構造にも広く適用し得ることは勿論である。
また、本発装置明は上記の各実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る配線基板加工装置の概要構成を示す電気回路図である。
【図2】刃先が略半円形な加工具を示す正面図である。
【図3】刃先が鋭角な加工具を示す正面図である。
【図4】配線基板の表面切削と回路パターンの切断工程を示す説明図である。
【図5】回路パターンの切断工程を示す説明図である。
【図6】回路パターンの表面研磨工程を示す説明図である。
【図7】配線基板加工装置の動作を説明するためのフローチャートである。
【符号の説明】
【0017】
1 配線基板
3 回路パターン
5 操作手段
7 作業選択スイッチ
8 加工選択スイッチ
10 接触端子
11 加工具
12 加工具
15 回転手段
17 移動手段
20 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線基板の表面切削、前記配線基板に形成された回路パターンの切断および該回路パターンの表面を研磨する導電性を有した加工具と、
この加工具を回転させる回転手段と、
この加工具を前記回路パターンの延出方向に沿って往復動させる移動手段と、
前記回路パターンに接触させる導電体からなる接触端子と、
この接触端子と前記加工具との間の導通、非導通を検出する導電検出手段と、
前記切削、切断または研磨の各加工を手動作業か自動作業の何れで行うかを選択する作業選択スイッチを備えるとともに、前記自動作業側には前記各加工のうち何れか1つを指定させる加工選択スイッチを設けた操作手段と、
この操作手段から自動作業に続いて前記表面切削の指令を受けたとき、前記導電検出手段の検出信号が非導通を示すと前記回転手段を回転させ、次に、導通に変化したときは回転を継続させた後、非導通に変化したときに回転を停止させ、
また、前記自動作業に続いて回路パターンの切断指令を受けたとき、前記導電検出手段の検出信号が導通を示すと前記回転手段を回転させた後、非導通に変化したときに回転を停止させ、
また、前記自動作業に続いて回路パターンの表面研磨指令を受けたとき、前記導電検出手段の検出信号が非導通を示すと前記移動手段を作動させた後、導通に変化したときにこの動作を停止させる制御を行う制御手段と、を具備してなる配線基板加工装置。
【請求項2】
配線基板の表面切削、前記配線基板に形成された回路パターンの切断および該回路パターンの表面を研磨する導電性を有した加工具と、
この加工具を回転させる回転手段と、
この加工具を前記回路パターンの延出方向に沿って往復動させる移動手段と、
前記回路パターンに接触させる導電体からなる接触端子と、
この接触端子と前記加工具との間の導通、非導通を検出する導電検出手段と、
前記切削、切断または研磨の各加工を手動作業か自動作業の何れで行うかを選択する作業選択スイッチを備えるとともに、前記自動作業側には前記各加工のうち何れか1つを指定させる加工選択スイッチを設けた操作手段と、
この操作手段から自動作業に続いて与えられる指令に応じて前記配線基板の表面切削、前記回路パターンの切断または表面研磨の何れかの加工モードに移行し、
前記導電検出手段の検出信号が導通もしくは非導通の何れを示すかの違いとその後の変化に応じて前記回転手段の回転動作を制御するとともに、前記移動手段の往復動作を制御する制御手段と、を具備してなる配線基板加工装置。
【請求項3】
前記制御手段が、前記表面切削モードに移行したとき、前記検出信号が非導通を示すと前記回転手段を回転させ、次に、導通に変化したときは回転を続行させ、非導通に変化したときに回転を停止させることを特徴とする請求項2に記載の配線基板加工装置。
【請求項4】
前記制御手段が、前記切断モードに移行したとき、前記検出信号が導通を示すと前記回転手段を回転させ、非導通に変化したときに回転を停止させることを特徴とする請求項2に記載の配線基板加工装置。
【請求項5】
前記制御手段が、前記研磨加工モードに移行したとき、前記検出信号が非導通を示すと前記移動手段を動作させ、導通に変化したときにその動作を停止させることを特徴とする請求項2に記載の配線基板加工装置。
【請求項6】
前記回転手段が電気ドリルであり、前記加工具がこの電気ドリルに装着されるカッターであって、このカッターの刃先が略半円形に形成されてなることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一つに記載の配線基板加工装置。
【請求項7】
前記回転手段が電気ドリルであり、前記加工具がこの電気ドリルに装着されるカッターであって、このカッターの刃先が鋭角に形成されており、このカッターの刃先と前記回路パターンの延出方向との間に仰角が生じる向きで前記電気ドリルに保持されることを特徴とする請求項2又は5の何れかに記載の配線基板加工装置。
【請求項8】
前記制御手段が、前記検出信号から抵抗値を演算し、この抵抗値が設定値よりも小さいときに前記回転手段の回転速度を低下させることを特徴とする請求項2乃至4の何れか一つに記載の配線基板加工装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate