配線配管貫通構造
【課題】
コンクリート壁体において、屋外からの破壊的要素に対して気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性、秘匿防犯性を同時に発揮して内部を安全に保護する高い空間分離性を維持する防災防護性を確保すること、且つ、高い保守性と拡張性をも兼ね備えることのできる配線配管貫通構造の提供である。
【解決手段】
配線配管用の貫通孔2を設けたコンクリート壁体1において、貫通孔2は、屋内側に配線配管ユニット6を格納するための配線配管ユニット挿入管4、屋外側に配線配管壁内接続スペース5を有し、コンクリートや金属、および埋込配線配管部材8とからなる凸型複合体である配線配管ユニット6を、配線配管ユニット挿入管3に屋内側から挿入して固定金物7で押込固定する。
コンクリート壁体において、屋外からの破壊的要素に対して気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性、秘匿防犯性を同時に発揮して内部を安全に保護する高い空間分離性を維持する防災防護性を確保すること、且つ、高い保守性と拡張性をも兼ね備えることのできる配線配管貫通構造の提供である。
【解決手段】
配線配管用の貫通孔2を設けたコンクリート壁体1において、貫通孔2は、屋内側に配線配管ユニット6を格納するための配線配管ユニット挿入管4、屋外側に配線配管壁内接続スペース5を有し、コンクリートや金属、および埋込配線配管部材8とからなる凸型複合体である配線配管ユニット6を、配線配管ユニット挿入管3に屋内側から挿入して固定金物7で押込固定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁体に配線や配管を貫通させる配線配管貫通構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建築土木構造物のコンクリート壁体に配線や配管を貫通させる配線配管貫通構造は様々なものが考案されている。
しかし、何れの配線配管貫通構造も、気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性、秘匿防犯性等の防災防護性と、保守性、拡張性の全ての性能要素を同時に満足するものではなく、これら性能要素の何れかに重点が置かれて形成される傾向があり(特許文献1参照)、想定範囲外の災害要因が発生した場合、当該配線配管貫通構造は何らかの損傷を受けて空間分離性が損なわれる可能性が考えられる。
【0003】
なお、前項でいう空間分離性とは、壁体で分割された互いの空間において、物理的に干渉し合う配線配管を除く部分の物理的干渉度の小ささを指し示すものと定義し、空間分離性が高いということは、物理的に干渉し合う配線配管を除く部分の物理的干渉度が小さく、理想的であるということである。
【0004】
また、何れの配線配管貫通構造も、壁体内の配線配管が老朽化/破損等することによって配線配管を交換しなければならない場合、あるいは新たな配線配管を追加/変更する場合、配線配管周囲の壁体の一部を取り壊す必要がある場合など、保守性、拡張性について効果的な構造とはいえない傾向がある。
【0005】
前述する可能性および傾向は、既存の配線配管貫通構造が限定的な性能要素を満足することや使用目的に特化した機能性/専用性/経済性等を追求して考案されたことに起因すると考えられる。
【0006】
このため、屋外からの破壊的要素に対し、高い空間分離性を維持して防災防護性を確保しなければならない核シェルターなどの構造物では、気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性、秘匿防犯性を同時に発揮して内部を安全に保護すること、また、長期待機期間での運用管理上で求められる保守性、時代の変遷とともに新たに必要となる配線配管の追加/変更などの拡張性をも確保することが望まれるが、これまでの配線配管貫通構造は何れもこれらの条件を満足する構造といえず、災害時に配線配管貫通構造部を通じて屋内側に悪影響を伝達してしまう可能性が高く、また、保守時、あるいは拡張時には不経済な作業を行わなければならないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−18608
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、建築土木構造物や核シェルターなどのコンクリート壁体において、屋外からの破壊的要素に対して気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性、秘匿防犯性を同時に発揮して内部を安全に保護する高い空間分離性を維持する防災防護性を確保すること、且つ、高い保守性と拡張性をも兼ね備えることのできる配線配管貫通構造の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、配線配管用の貫通孔を設けたコンクリート壁体において、コンクリート壁体は、貫通孔に対応する屋内側開口部と、当該屋内開口部の周囲に設けた配線配管ユニット固定アンカーと、が設けられた金属壁面板が一体的に形成され、貫通孔は、配線配管ユニットを屋内開口部側から格納するための貫通孔長さよりも短い配線配管ユニット挿入管と、当該配線配管ユニット挿入管の屋外側に配線配管壁内接続スペースと、を備え、配線配管ユニット挿入管は、屋内開口部側に形成する金属壁面板の開口部と一体的に形成し、屋外開口部側に貫通孔延長方向分割プレートを備えた金属製筒状体で、配線配管ユニットは、配線配管ユニット挿入管に対応する大きさで、屋内開口部側にブラインドフランジ部材貫通孔を有する金属製ブラインドフランジと屋外開口部側に金属製押当プレートとを備える凸型金属製筒状体に、金属製ブラインドフランジと金属製押当プレートで囲まれる空間内に充填した遮蔽コンクリートと、ブラインドフランジ部材貫通孔とコンクリートを貫通した配線配管部材と、を一体的に形成した凸型複合体であり、当該配線配管ユニットの金属製ブラインドフランジを配線配管ユニット固定アンカーに固定金物で固定することを、その特徴としている。
【0010】
また、請求項2の発明は請求項1の発明を前提として、配線配管ユニットは、複数の孔を有する金属板または編目状金属板からなる放射線遮蔽有孔板を、金属製ブラインドフランジと並行に遮蔽コンクリート内部に一体的に設けることを、その特徴としている。
【0011】
また、請求項3の発明は請求項1の発明を前提として、配線配管ユニット挿入管は、当該配線配管ユニット挿入管の貫通孔延長方向分割プレートに、配線配管壁内接続スペースに対応する大きさの金属製筒状体からなる配線配管壁内接続部保護管を一体的に設けることを、その特徴としている。
【0012】
また、請求項4の発明は請求項3の発明を前提として、配線配管壁内接続部保護管は、電気配線用サヤ管、または給排水配管用サヤ管、または両方、のサヤ管接続部を設けることを、その特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、配線配管用の貫通孔を設けたコンクリート壁体において、コンクリート壁体は、貫通孔に対応する屋内側開口部と、当該屋内開口部の周囲に設けた配線配管ユニット固定アンカーと、が設けられた金属壁面板が一体的に形成され、貫通孔は、配線配管ユニットを屋内開口部側から格納するための貫通孔長さよりも短い配線配管ユニット挿入管を備えているので、屋内側から配線配管ユニットを挿入、取り出し、再挿入することができるので、貫通孔に配線配管を設けた場合でも長期間に渡る保守が可能となり、また、時代の変遷とともに新たに必要となる配線配管の追加/変更ができるなど、高い拡張性を備えているので、常に正常な状態を維持することができるとともに、配線配管ユニットを交換することで、経済的に最新の配線配管貫通構造を形成することができ、核シェルターなどの長期待機期間を考慮しなければならない構造物に採用することができる。
【0014】
また、請求項1の発明では、当該配線配管ユニット挿入管の屋外側に配線配管壁内接続スペースを備えているので、配線配管接続部を壁内に収めることができるので、爆発等による飛散物との接触による配線配管、及び配線配管接続部の損傷を最小限に抑えることができるとともに、屋外から目立たず秘匿性が高いため、人為的な破壊工作にも効果的である。
【0015】
また、請求項1の発明では、配線配管ユニット挿入管は、屋内開口部側に形成する金属壁面板の開口部と一体的に形成し、屋外開口部側に貫通孔延長方向分割プレートを備えた金属製筒状体であるので、コンクリート壁体と一体的に形成されることで配線配管ユニット挿入管の剛性は極めて高くなり、コンクリート壁体の防湿防水性、電磁シールド性を損なうことなく、配線配管ユニットを格納する空間を確保することができるので、屋外側で何らかの損傷を受けたとしても、配線配管ユニットを屋内側に確実に取り出し、修理し、再挿入することができる。
【0016】
また、請求項1の発明では、配線配管ユニットは、配線配管ユニット挿入管に対応する大きさで、屋内開口部側にブラインドフランジ部材貫通孔を有する金属製ブラインドフランジ、屋外開口部側に金属製押当プレートを備える凸型金属製筒状体であるので、配線配管ユニット全体として高い防湿防水性/電磁シールド性、剛性、および金属製押当プレート部の平坦性を確保することができ、屋外での爆発による衝撃波/爆風圧/放射線/水/熱/炎等の破壊的要素に十分に抵抗するとともに、金属製押当プレートの高い平坦性は、貫通孔延長方向分割プレートとの密着性を高めることになり、より確実な気密性、防湿防水性を確保することができる。
【0017】
また、請求項1の発明では、配線配管ユニットは、金属製ブラインドフランジと金属製押当プレートで囲まれる空間内に充填した遮蔽コンクリート、ブラインドフランジ部材貫通孔と遮蔽コンクリートを貫通した配線配管部材とを一体的に形成した凸型複合体であるので、配線配管部材と遮蔽コンクリートとの間に隙間を生じさせないで高い気密性を確保しながら配線配管部材を高い密着性で固定することができ、その結果、気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性を有し、高い空間分離性を確保することで屋内側を防護することができる。
【0018】
また、請求項1の発明では、当該配線配管ユニットの金属製ブラインドフランジを配線配管ユニット固定アンカーに固定金物で固定するので、屋内側から屋外側に向かう強い固定力で配線配管ユニットの金属製押当プレートを配線配管ユニット挿入管の貫通孔延長方向分割プレートに押しつけ固定することができ、気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性を高めて高い空間分離性を確保し、屋内側を防護することができる。
【0019】
請求項1を前提とした請求項2の発明において、配線配管ユニットは、複数の孔を有する金属板または編目状金属板からなる放射線遮蔽有孔板を、金属製ブラインドフランジと並行に遮蔽コンクリート内部に一体的に設けるので、配線配管壁内接続スペースで失った壁体密度を補って壁体の遮蔽材としての連続性を確保して放射線遮蔽性を高めることができ、さらに、当該放射線遮蔽有孔板を幾層にも形成することで放射線遮蔽性を調節でき、遮蔽コンクリートを充填する際、当該放射線遮蔽有孔板は複数の孔を有する金属板、または網目状金属板であるため、隅々まで遮蔽コンクリートを充填することができ、容易に一体化することができる。
【0020】
請求項1を前提とした請求項3の発明において、配線配管ユニット挿入管は、当該配線配管ユニット挿入管の貫通孔延長方向分割プレートに、配線配管壁内接続スペースに対応する大きさの金属製筒状体からなる配線配管壁内接続部保護管を一体的に設けるので、当該配線配管壁内接続スペース形成時の生コンクリート打設時に於ける施工性、作業性、施工精度を高めることができ、建設工期の短縮と建設コストの低減につなげることができる。
【0021】
請求項3を前提とした請求項4の発明において、配線配管壁内接続部保護管は、電気配線用サヤ管、または給排水配管用サヤ管、または両方、のサヤ管接続部を設けるので、屋外側の配線配管をコンクリート壁体内部に収めるためのサヤ管を容易に接続することができるとともに、配線配管壁内接続スペースに屋外側配線配管を容易に到達させることができるので、建設工期の短縮と建設コストの低減につなげることができる。
【0022】
以上より、本発明における配線配管貫通構造は、気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性において、同時且つ常時において、これらの性能を発揮し高い空間分離性を維持しているので、何時発生するか予測できないあらゆる災害に於いて高い防災防護性を有することができ、また、秘匿防犯性が高いので、有事災害時などに於いても発見されにくく人為的な破壊行為に対しても安全であり、さらに、保守性が高いので、平時での運用管理上に於いても短時間での効果的な作業となり維持管理コストも最小に押さえることができ、さらに、現時点で予測が難しい将来における新たに必要となる配線配管の追加/変更についても、拡張性が高いので、工期の短縮やシステム化により経済的且つ効果的に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】配線配管貫通構造の基本構成図(壁厚方向断面)
【図2】配線配管貫通構造の標準図(壁厚方向断面)
【図3】配線配管ユニットの斜視図
【図3a】ブラインドフランジ側から見た斜視図
【図3b】金属製押当プレート側から見た斜視図
【図4】電気、情報配線用の配線貫通構造としての設計例
【図5】給排水配管用の配管貫通構造としての設計例
【図6】配線配管貫通構造の設計例(排ガス排気用配管貫通構造)
【図7】配線配管貫通構造の設計例(電力用コンセント)
【図8】配線配管貫通構造の設計例(耐熱/耐火処理)
【図9】配線配管貫通構造の設計例(配電BOX)
【図10】地下シェルター付住宅における配線配管貫通構造の配置例
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい形態を解説する。
【0025】
コンクリート壁体1に形成する本発明による配線配管貫通構造の基本構成を図1に示す。
【0026】
当該配線配管貫通構造は、貫通孔2を有するコンクリート壁体1と、配線配管ユニット6とで、構成している。このうち、コンクリート壁体は、貫通孔2に対応する金属壁面板屋内開口部3aと、当該金属壁面板屋内開口部3aの周囲に設けた配線配管ユニット固定アンカー3bと、が設けられた金属壁面板3が一体的に形成されている。
【0027】
貫通孔2は、コンクリート壁体1を貫通し、貫通孔2の屋内側の金属製筒状体からなる配線配管ユニット挿入管4と、屋外側の配線配管壁内接続スペース5とから構成され、当該両者は、配線配管ユニット挿入管4の屋外側端部に配置される貫通孔延長方向分割プレート4aを境に互いに異なる役割を果たすよう配置している。
【0028】
配線配管ユニット挿入管4は、貫通孔2の貫通孔屋内開口部2aに対応する金属壁面板屋内開口部3aを有する金属壁面板3と一体的に形成し、屋外側端部に貫通孔延長方向分割プレート4aを備えた金属製筒状体で、貫通孔2を設けることで失ったコンクリート壁体1の装甲壁としての諸性能を補填する配線配管ユニット6を格納するためのスペースを確保するとともに、配線配管ユニット6の金属製押当プレート6cとの密着性を高めることのできる平坦性を有する貫通孔延長方向分割プレート4aを備え、コンクリート壁体1の形成時の生コンクリート打設時に、コンクリート壁体1と一体的に形成する。
【0029】
配線配管壁内接続スペース5の役割は、屋外側で発生する、例えば、爆発による衝撃波、爆風、放射線、構造物の破片、有毒ガス、火災、熱、洪水などの破壊的要素によって屋外側のコンクリート壁体1の壁面に露出しないようにして配線配管が極力損傷を受けないようにしながら、配線配管ユニット6の埋込配線部材8aや埋込配管部材8b、またはその両方である埋込配線配管部材8と接続するためのスペースであり、屋外側配線配管9は、貫通孔屋外開口部2bから配線配管壁内接続スペース5に導くか、できる限り図1に示すように、任意に設定する配線配管壁内接続保護管5aのサヤ管接続部5cに接続されたサヤ管11の中を通して容易に配線配管壁内接続スペース5へと到達させることが望ましい。
【0030】
また、配線配管壁内接続スペース5は、貫通孔2の貫通孔屋外開口部2bに位置する配線配管壁内接続スペース5の屋外側にスプリンタープレート5bを設けて屋外との空間分離性を高めることができ、当該スプリンタープレート5bは、貫通孔2の屋内側から固定するようにして、屋外側からの人為的な破壊行為を抑止することができる。
【0031】
配線配管ユニット6は、工場生産され金属製ブラインドフランジ6aと金属製押当プレート6cを備える凸型金属製筒状体の内部に、遮蔽コンクリート6eと、ブラインドフランジ部材貫通孔6bと当該遮蔽コンクリート6eを貫通する埋込配線配管部材8とから形成される凸型複合体で、できる限りコンクリート壁体1よりも大きな密度になるよう任意に放射線遮蔽有孔板6fを配置して遮蔽コンクリート6eの充填性を阻害せずに放射線遮蔽性を高めながら、屋外からの破壊的要素に対して気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性、秘匿防犯性を同時に発揮して内部を安全に保護し、高い空間分離性を常に維持して防災防護性を確保するための配線配管ユニット挿入管4の大きさに対応する凸型複合体として形成する。
【0032】
また、配線配管ユニット6は、埋込配線配管部材8を内部に設定する際、埋込配線部材8aについては埋込配線ガイド6gに結束線や結束バンド等で位置を固定して、埋込配管部材8bについては埋込配管引抜防止抵抗部6hを設けて遮蔽コンクリート6eを流し込み、一体化することが望ましい。
【0033】
また、配線配管ユニット6は、余裕長を有する屋外側配線配管9を貫通孔屋内開口部2a付近まで引き付け、当該屋外側配線配管9と互いに接続すべき配線配管ユニット6の埋込配線配管部材8とを接続した後、貫通孔2の貫通孔屋内開口部2aに設けた金属壁面板3の金属壁面板屋内開口部3aから、配線配管ユニット6を図1に示す矢印の方向に挿入し、金属壁面板屋内開口部3aの周囲に形成した配線配管ユニット固定アンカー3bと、配線配管ユニット6の金属製ブラインドフランジ6aとを、固定金物7で固定し、屋内側配線配管10と互いに接続すべき配線配管ユニット6の埋込配線配管部材8とを接続し、図2に示す配線配管貫通状態とする。
【0034】
また、配線配管ユニット6は、固定金物7により配線配管ユニット6の金属製押当プレート6cを、配線配管ユニット挿入管4の貫通孔延長方向分割プレート4a、および配線配管ユニット6の金属製ブラインドフランジ6aと金属壁面板3とが、互いに接触するよう室内側から強い押込力で押込固定され、屋外側からの大きな外力に十分抵抗でき、また、当該接触部の互いの部材の間に任意の材質と性能を有するパッキン6dを挟み込むことで、高い空間分離性を維持する防災防護性を確保することができ、さらに、固定金物7を取り外すことで、容易に配線配管ユニット6を壁内から屋内側に取り出すことができるので、高い保守性と拡張性を有する経済的な配線配管貫通構造とすることができ、核シェルターなどの長期待機期間を考慮しなければならない構造物に採用することにつながる。
【0035】
本発明による配線配管貫通構造は、配線配管ユニット6および配線配管ユニット挿入管4の壁面方向断面について、様々な形状の断面に対応できるが、一般的な形状として方形断面および円形断面が考えられ、図3に方形断面の配線配管ユニット6の斜視図を示す。
【0036】
図3aは、金属製押当プレート6c側から見た斜視図で、配線配管ユニット6が凸型複合体であることが容易に理解でき、図3bは、金属製ブラインドフランジ6a側から見た斜視図で、複数の固定金物7により強力に押込固定できること、金属製ブラインドフランジ6aに固定金物7で固定するための複数のユニット固定孔6iがあるが、押込固定後、固定金物7により当該複数の孔はふさがるので金属板としての欠損部がなくなることが理解でき、電磁シールド性が確保できることが分かる。
【0037】
また、本発明による配線配管貫通構造は、図1〜3に示すように、電力配線や情報配線と給排水配管を1つの配線配管ユニット6にまとめて設定することができるが、水漏れによる漏電などの災害を防ぐために、できる限り図4〜5に示すように、電力配線や情報配線用の配線専用ユニットと、給排水配管用の配管専用ユニットとに、区別して設定することが望ましく、やむを得ない場合は、図1に示すように、給排水配管系は、必ず電力配線や情報配線系よりも、低い位置に配置するように設計する。
【0038】
本発明による配線配管貫通構造の別実施例を図6〜9に示す。
【0039】
図4に示すように、配線配管ユニット6の埋込配管部材8bの周りに断熱層を形成して耐熱性を有する遮蔽コンクリート6eを充填することで、核シェルターなどの屋内にエンジン発電機を設置するなどの場合に排出しなければならない高温状態の排ガスを屋外側に排気するための排ガス排気用配管貫通構造をとして使用することができ、その際、貫通孔屋外開口部2bにベントキャップ等の秘匿性金物12を取り付けることで、平時より風雨などの気象条件から内部を保護すると共に、第三者に対し、一般的な通気口と認識させることができ秘匿防犯性を高めることができる。
【0040】
図5に示すように、例えば、核シェルターの電源設備から供給される電力を屋外で使用する場合や、屋外の自動車などを発電機として核シェルター内部の蓄電手段に蓄電する場合に、配線配管壁内接続保護管5aの任意の位置にスプリンタープレート5bを形成して電力用コンセント13を設置したもので、コンクリート壁体1の壁面よりも屋外側に出ないように配置して、屋外側からの飛散物によって当該電力用コンセント13が破損されないよう配慮している。
【0041】
図6に示すように、配線配管壁内接続スペース5の屋外側近くで火災が発生し得る場合に、配線配管壁内接続スペース5の空隙部に延焼防止材として不燃性断熱材14を詰め込み、さらに配線配管壁内接続保護管5aの任意の位置にスプリンタープレート5bを形成して配線配管壁内接続スペース5を熱や炎から保護できるようにしている。
【0042】
図7に示すように、核シェルター内部の間仕切り壁等に位置する場合、配線配管壁内接続保護管5aを配電BOX15として兼用し、屋外側、屋内側の区別をしないで採用することができる。
【0043】
なお、本発明による配線配管貫通構造は、構造物や使用目的に応じて、当該構造物の任意の位置に設定が可能で、地下核シェルター付住宅などの建物においては、図10に示すような位置に当該配線配管貫通構造を設定することが可能で、図10では、電力通信配線用の配線配管貫通構造16は洪水対策としてできるだけ高い位置に設定し、給排水用の配線配管貫通構造17は住宅1階の床下に相当する部分に設定し、電力入出力コンセント用の配線配管貫通構造18は非常出口の地上部に設定している。
【0044】
以上、本発明による配線配管貫通構造は、核シェルターなどの特殊な用途に採用することができるが、その他、原子力関連施設や一般建築土木構造物にも採用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 コンクリート壁体
2 貫通孔
2a 貫通孔屋内開口部
2b 貫通孔屋外開口部
3 金属壁面板
3a 金属壁面板屋内開口部
3b 配線配管ユニット固定アンカー
4 配線配管ユニット挿入管
4a 貫通孔延長方向分割プレート
5 配線配管壁内接続スペース
5a 配線配管壁内接続保護管
5b スプリンタープレート
5c サヤ管接続部
6 配線配管ユニット
6a 金属製ブラインドフランジ
6b ブラインドフランジ部材貫通孔
6c 金属製押当プレート
6d パッキン
6e 遮蔽コンクリート
6f 放射線遮蔽有孔板
6g 埋込配線ガイド
6h 埋込配管引抜防止抵抗部
6i ユニット固定孔
7 固定金物
8 埋込配線配管部材
8a 埋込配線部材
8b 埋込配管部材
9 屋外側配線配管
10 屋内側配線配管
11 サヤ管
12 秘匿性金物
13 電力用コンセント
14 不燃性断熱材
15 配電BOX
16 電力通信配線用の配線配管貫通構造
17 給排水用の配線配管貫通構造
18 電力入出力コンセント用の配線配管貫通構造
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート壁体に配線や配管を貫通させる配線配管貫通構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から建築土木構造物のコンクリート壁体に配線や配管を貫通させる配線配管貫通構造は様々なものが考案されている。
しかし、何れの配線配管貫通構造も、気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性、秘匿防犯性等の防災防護性と、保守性、拡張性の全ての性能要素を同時に満足するものではなく、これら性能要素の何れかに重点が置かれて形成される傾向があり(特許文献1参照)、想定範囲外の災害要因が発生した場合、当該配線配管貫通構造は何らかの損傷を受けて空間分離性が損なわれる可能性が考えられる。
【0003】
なお、前項でいう空間分離性とは、壁体で分割された互いの空間において、物理的に干渉し合う配線配管を除く部分の物理的干渉度の小ささを指し示すものと定義し、空間分離性が高いということは、物理的に干渉し合う配線配管を除く部分の物理的干渉度が小さく、理想的であるということである。
【0004】
また、何れの配線配管貫通構造も、壁体内の配線配管が老朽化/破損等することによって配線配管を交換しなければならない場合、あるいは新たな配線配管を追加/変更する場合、配線配管周囲の壁体の一部を取り壊す必要がある場合など、保守性、拡張性について効果的な構造とはいえない傾向がある。
【0005】
前述する可能性および傾向は、既存の配線配管貫通構造が限定的な性能要素を満足することや使用目的に特化した機能性/専用性/経済性等を追求して考案されたことに起因すると考えられる。
【0006】
このため、屋外からの破壊的要素に対し、高い空間分離性を維持して防災防護性を確保しなければならない核シェルターなどの構造物では、気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性、秘匿防犯性を同時に発揮して内部を安全に保護すること、また、長期待機期間での運用管理上で求められる保守性、時代の変遷とともに新たに必要となる配線配管の追加/変更などの拡張性をも確保することが望まれるが、これまでの配線配管貫通構造は何れもこれらの条件を満足する構造といえず、災害時に配線配管貫通構造部を通じて屋内側に悪影響を伝達してしまう可能性が高く、また、保守時、あるいは拡張時には不経済な作業を行わなければならないと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−18608
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、建築土木構造物や核シェルターなどのコンクリート壁体において、屋外からの破壊的要素に対して気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性、秘匿防犯性を同時に発揮して内部を安全に保護する高い空間分離性を維持する防災防護性を確保すること、且つ、高い保守性と拡張性をも兼ね備えることのできる配線配管貫通構造の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、配線配管用の貫通孔を設けたコンクリート壁体において、コンクリート壁体は、貫通孔に対応する屋内側開口部と、当該屋内開口部の周囲に設けた配線配管ユニット固定アンカーと、が設けられた金属壁面板が一体的に形成され、貫通孔は、配線配管ユニットを屋内開口部側から格納するための貫通孔長さよりも短い配線配管ユニット挿入管と、当該配線配管ユニット挿入管の屋外側に配線配管壁内接続スペースと、を備え、配線配管ユニット挿入管は、屋内開口部側に形成する金属壁面板の開口部と一体的に形成し、屋外開口部側に貫通孔延長方向分割プレートを備えた金属製筒状体で、配線配管ユニットは、配線配管ユニット挿入管に対応する大きさで、屋内開口部側にブラインドフランジ部材貫通孔を有する金属製ブラインドフランジと屋外開口部側に金属製押当プレートとを備える凸型金属製筒状体に、金属製ブラインドフランジと金属製押当プレートで囲まれる空間内に充填した遮蔽コンクリートと、ブラインドフランジ部材貫通孔とコンクリートを貫通した配線配管部材と、を一体的に形成した凸型複合体であり、当該配線配管ユニットの金属製ブラインドフランジを配線配管ユニット固定アンカーに固定金物で固定することを、その特徴としている。
【0010】
また、請求項2の発明は請求項1の発明を前提として、配線配管ユニットは、複数の孔を有する金属板または編目状金属板からなる放射線遮蔽有孔板を、金属製ブラインドフランジと並行に遮蔽コンクリート内部に一体的に設けることを、その特徴としている。
【0011】
また、請求項3の発明は請求項1の発明を前提として、配線配管ユニット挿入管は、当該配線配管ユニット挿入管の貫通孔延長方向分割プレートに、配線配管壁内接続スペースに対応する大きさの金属製筒状体からなる配線配管壁内接続部保護管を一体的に設けることを、その特徴としている。
【0012】
また、請求項4の発明は請求項3の発明を前提として、配線配管壁内接続部保護管は、電気配線用サヤ管、または給排水配管用サヤ管、または両方、のサヤ管接続部を設けることを、その特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
請求項1の発明では、配線配管用の貫通孔を設けたコンクリート壁体において、コンクリート壁体は、貫通孔に対応する屋内側開口部と、当該屋内開口部の周囲に設けた配線配管ユニット固定アンカーと、が設けられた金属壁面板が一体的に形成され、貫通孔は、配線配管ユニットを屋内開口部側から格納するための貫通孔長さよりも短い配線配管ユニット挿入管を備えているので、屋内側から配線配管ユニットを挿入、取り出し、再挿入することができるので、貫通孔に配線配管を設けた場合でも長期間に渡る保守が可能となり、また、時代の変遷とともに新たに必要となる配線配管の追加/変更ができるなど、高い拡張性を備えているので、常に正常な状態を維持することができるとともに、配線配管ユニットを交換することで、経済的に最新の配線配管貫通構造を形成することができ、核シェルターなどの長期待機期間を考慮しなければならない構造物に採用することができる。
【0014】
また、請求項1の発明では、当該配線配管ユニット挿入管の屋外側に配線配管壁内接続スペースを備えているので、配線配管接続部を壁内に収めることができるので、爆発等による飛散物との接触による配線配管、及び配線配管接続部の損傷を最小限に抑えることができるとともに、屋外から目立たず秘匿性が高いため、人為的な破壊工作にも効果的である。
【0015】
また、請求項1の発明では、配線配管ユニット挿入管は、屋内開口部側に形成する金属壁面板の開口部と一体的に形成し、屋外開口部側に貫通孔延長方向分割プレートを備えた金属製筒状体であるので、コンクリート壁体と一体的に形成されることで配線配管ユニット挿入管の剛性は極めて高くなり、コンクリート壁体の防湿防水性、電磁シールド性を損なうことなく、配線配管ユニットを格納する空間を確保することができるので、屋外側で何らかの損傷を受けたとしても、配線配管ユニットを屋内側に確実に取り出し、修理し、再挿入することができる。
【0016】
また、請求項1の発明では、配線配管ユニットは、配線配管ユニット挿入管に対応する大きさで、屋内開口部側にブラインドフランジ部材貫通孔を有する金属製ブラインドフランジ、屋外開口部側に金属製押当プレートを備える凸型金属製筒状体であるので、配線配管ユニット全体として高い防湿防水性/電磁シールド性、剛性、および金属製押当プレート部の平坦性を確保することができ、屋外での爆発による衝撃波/爆風圧/放射線/水/熱/炎等の破壊的要素に十分に抵抗するとともに、金属製押当プレートの高い平坦性は、貫通孔延長方向分割プレートとの密着性を高めることになり、より確実な気密性、防湿防水性を確保することができる。
【0017】
また、請求項1の発明では、配線配管ユニットは、金属製ブラインドフランジと金属製押当プレートで囲まれる空間内に充填した遮蔽コンクリート、ブラインドフランジ部材貫通孔と遮蔽コンクリートを貫通した配線配管部材とを一体的に形成した凸型複合体であるので、配線配管部材と遮蔽コンクリートとの間に隙間を生じさせないで高い気密性を確保しながら配線配管部材を高い密着性で固定することができ、その結果、気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性を有し、高い空間分離性を確保することで屋内側を防護することができる。
【0018】
また、請求項1の発明では、当該配線配管ユニットの金属製ブラインドフランジを配線配管ユニット固定アンカーに固定金物で固定するので、屋内側から屋外側に向かう強い固定力で配線配管ユニットの金属製押当プレートを配線配管ユニット挿入管の貫通孔延長方向分割プレートに押しつけ固定することができ、気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性を高めて高い空間分離性を確保し、屋内側を防護することができる。
【0019】
請求項1を前提とした請求項2の発明において、配線配管ユニットは、複数の孔を有する金属板または編目状金属板からなる放射線遮蔽有孔板を、金属製ブラインドフランジと並行に遮蔽コンクリート内部に一体的に設けるので、配線配管壁内接続スペースで失った壁体密度を補って壁体の遮蔽材としての連続性を確保して放射線遮蔽性を高めることができ、さらに、当該放射線遮蔽有孔板を幾層にも形成することで放射線遮蔽性を調節でき、遮蔽コンクリートを充填する際、当該放射線遮蔽有孔板は複数の孔を有する金属板、または網目状金属板であるため、隅々まで遮蔽コンクリートを充填することができ、容易に一体化することができる。
【0020】
請求項1を前提とした請求項3の発明において、配線配管ユニット挿入管は、当該配線配管ユニット挿入管の貫通孔延長方向分割プレートに、配線配管壁内接続スペースに対応する大きさの金属製筒状体からなる配線配管壁内接続部保護管を一体的に設けるので、当該配線配管壁内接続スペース形成時の生コンクリート打設時に於ける施工性、作業性、施工精度を高めることができ、建設工期の短縮と建設コストの低減につなげることができる。
【0021】
請求項3を前提とした請求項4の発明において、配線配管壁内接続部保護管は、電気配線用サヤ管、または給排水配管用サヤ管、または両方、のサヤ管接続部を設けるので、屋外側の配線配管をコンクリート壁体内部に収めるためのサヤ管を容易に接続することができるとともに、配線配管壁内接続スペースに屋外側配線配管を容易に到達させることができるので、建設工期の短縮と建設コストの低減につなげることができる。
【0022】
以上より、本発明における配線配管貫通構造は、気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性において、同時且つ常時において、これらの性能を発揮し高い空間分離性を維持しているので、何時発生するか予測できないあらゆる災害に於いて高い防災防護性を有することができ、また、秘匿防犯性が高いので、有事災害時などに於いても発見されにくく人為的な破壊行為に対しても安全であり、さらに、保守性が高いので、平時での運用管理上に於いても短時間での効果的な作業となり維持管理コストも最小に押さえることができ、さらに、現時点で予測が難しい将来における新たに必要となる配線配管の追加/変更についても、拡張性が高いので、工期の短縮やシステム化により経済的且つ効果的に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】配線配管貫通構造の基本構成図(壁厚方向断面)
【図2】配線配管貫通構造の標準図(壁厚方向断面)
【図3】配線配管ユニットの斜視図
【図3a】ブラインドフランジ側から見た斜視図
【図3b】金属製押当プレート側から見た斜視図
【図4】電気、情報配線用の配線貫通構造としての設計例
【図5】給排水配管用の配管貫通構造としての設計例
【図6】配線配管貫通構造の設計例(排ガス排気用配管貫通構造)
【図7】配線配管貫通構造の設計例(電力用コンセント)
【図8】配線配管貫通構造の設計例(耐熱/耐火処理)
【図9】配線配管貫通構造の設計例(配電BOX)
【図10】地下シェルター付住宅における配線配管貫通構造の配置例
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、図面を参照しつつ本発明の好ましい形態を解説する。
【0025】
コンクリート壁体1に形成する本発明による配線配管貫通構造の基本構成を図1に示す。
【0026】
当該配線配管貫通構造は、貫通孔2を有するコンクリート壁体1と、配線配管ユニット6とで、構成している。このうち、コンクリート壁体は、貫通孔2に対応する金属壁面板屋内開口部3aと、当該金属壁面板屋内開口部3aの周囲に設けた配線配管ユニット固定アンカー3bと、が設けられた金属壁面板3が一体的に形成されている。
【0027】
貫通孔2は、コンクリート壁体1を貫通し、貫通孔2の屋内側の金属製筒状体からなる配線配管ユニット挿入管4と、屋外側の配線配管壁内接続スペース5とから構成され、当該両者は、配線配管ユニット挿入管4の屋外側端部に配置される貫通孔延長方向分割プレート4aを境に互いに異なる役割を果たすよう配置している。
【0028】
配線配管ユニット挿入管4は、貫通孔2の貫通孔屋内開口部2aに対応する金属壁面板屋内開口部3aを有する金属壁面板3と一体的に形成し、屋外側端部に貫通孔延長方向分割プレート4aを備えた金属製筒状体で、貫通孔2を設けることで失ったコンクリート壁体1の装甲壁としての諸性能を補填する配線配管ユニット6を格納するためのスペースを確保するとともに、配線配管ユニット6の金属製押当プレート6cとの密着性を高めることのできる平坦性を有する貫通孔延長方向分割プレート4aを備え、コンクリート壁体1の形成時の生コンクリート打設時に、コンクリート壁体1と一体的に形成する。
【0029】
配線配管壁内接続スペース5の役割は、屋外側で発生する、例えば、爆発による衝撃波、爆風、放射線、構造物の破片、有毒ガス、火災、熱、洪水などの破壊的要素によって屋外側のコンクリート壁体1の壁面に露出しないようにして配線配管が極力損傷を受けないようにしながら、配線配管ユニット6の埋込配線部材8aや埋込配管部材8b、またはその両方である埋込配線配管部材8と接続するためのスペースであり、屋外側配線配管9は、貫通孔屋外開口部2bから配線配管壁内接続スペース5に導くか、できる限り図1に示すように、任意に設定する配線配管壁内接続保護管5aのサヤ管接続部5cに接続されたサヤ管11の中を通して容易に配線配管壁内接続スペース5へと到達させることが望ましい。
【0030】
また、配線配管壁内接続スペース5は、貫通孔2の貫通孔屋外開口部2bに位置する配線配管壁内接続スペース5の屋外側にスプリンタープレート5bを設けて屋外との空間分離性を高めることができ、当該スプリンタープレート5bは、貫通孔2の屋内側から固定するようにして、屋外側からの人為的な破壊行為を抑止することができる。
【0031】
配線配管ユニット6は、工場生産され金属製ブラインドフランジ6aと金属製押当プレート6cを備える凸型金属製筒状体の内部に、遮蔽コンクリート6eと、ブラインドフランジ部材貫通孔6bと当該遮蔽コンクリート6eを貫通する埋込配線配管部材8とから形成される凸型複合体で、できる限りコンクリート壁体1よりも大きな密度になるよう任意に放射線遮蔽有孔板6fを配置して遮蔽コンクリート6eの充填性を阻害せずに放射線遮蔽性を高めながら、屋外からの破壊的要素に対して気密性、防湿防水性、耐震性、剛性、耐爆性、防火性、耐熱性、遮蔽性、電磁シールド性、防音性、秘匿防犯性を同時に発揮して内部を安全に保護し、高い空間分離性を常に維持して防災防護性を確保するための配線配管ユニット挿入管4の大きさに対応する凸型複合体として形成する。
【0032】
また、配線配管ユニット6は、埋込配線配管部材8を内部に設定する際、埋込配線部材8aについては埋込配線ガイド6gに結束線や結束バンド等で位置を固定して、埋込配管部材8bについては埋込配管引抜防止抵抗部6hを設けて遮蔽コンクリート6eを流し込み、一体化することが望ましい。
【0033】
また、配線配管ユニット6は、余裕長を有する屋外側配線配管9を貫通孔屋内開口部2a付近まで引き付け、当該屋外側配線配管9と互いに接続すべき配線配管ユニット6の埋込配線配管部材8とを接続した後、貫通孔2の貫通孔屋内開口部2aに設けた金属壁面板3の金属壁面板屋内開口部3aから、配線配管ユニット6を図1に示す矢印の方向に挿入し、金属壁面板屋内開口部3aの周囲に形成した配線配管ユニット固定アンカー3bと、配線配管ユニット6の金属製ブラインドフランジ6aとを、固定金物7で固定し、屋内側配線配管10と互いに接続すべき配線配管ユニット6の埋込配線配管部材8とを接続し、図2に示す配線配管貫通状態とする。
【0034】
また、配線配管ユニット6は、固定金物7により配線配管ユニット6の金属製押当プレート6cを、配線配管ユニット挿入管4の貫通孔延長方向分割プレート4a、および配線配管ユニット6の金属製ブラインドフランジ6aと金属壁面板3とが、互いに接触するよう室内側から強い押込力で押込固定され、屋外側からの大きな外力に十分抵抗でき、また、当該接触部の互いの部材の間に任意の材質と性能を有するパッキン6dを挟み込むことで、高い空間分離性を維持する防災防護性を確保することができ、さらに、固定金物7を取り外すことで、容易に配線配管ユニット6を壁内から屋内側に取り出すことができるので、高い保守性と拡張性を有する経済的な配線配管貫通構造とすることができ、核シェルターなどの長期待機期間を考慮しなければならない構造物に採用することにつながる。
【0035】
本発明による配線配管貫通構造は、配線配管ユニット6および配線配管ユニット挿入管4の壁面方向断面について、様々な形状の断面に対応できるが、一般的な形状として方形断面および円形断面が考えられ、図3に方形断面の配線配管ユニット6の斜視図を示す。
【0036】
図3aは、金属製押当プレート6c側から見た斜視図で、配線配管ユニット6が凸型複合体であることが容易に理解でき、図3bは、金属製ブラインドフランジ6a側から見た斜視図で、複数の固定金物7により強力に押込固定できること、金属製ブラインドフランジ6aに固定金物7で固定するための複数のユニット固定孔6iがあるが、押込固定後、固定金物7により当該複数の孔はふさがるので金属板としての欠損部がなくなることが理解でき、電磁シールド性が確保できることが分かる。
【0037】
また、本発明による配線配管貫通構造は、図1〜3に示すように、電力配線や情報配線と給排水配管を1つの配線配管ユニット6にまとめて設定することができるが、水漏れによる漏電などの災害を防ぐために、できる限り図4〜5に示すように、電力配線や情報配線用の配線専用ユニットと、給排水配管用の配管専用ユニットとに、区別して設定することが望ましく、やむを得ない場合は、図1に示すように、給排水配管系は、必ず電力配線や情報配線系よりも、低い位置に配置するように設計する。
【0038】
本発明による配線配管貫通構造の別実施例を図6〜9に示す。
【0039】
図4に示すように、配線配管ユニット6の埋込配管部材8bの周りに断熱層を形成して耐熱性を有する遮蔽コンクリート6eを充填することで、核シェルターなどの屋内にエンジン発電機を設置するなどの場合に排出しなければならない高温状態の排ガスを屋外側に排気するための排ガス排気用配管貫通構造をとして使用することができ、その際、貫通孔屋外開口部2bにベントキャップ等の秘匿性金物12を取り付けることで、平時より風雨などの気象条件から内部を保護すると共に、第三者に対し、一般的な通気口と認識させることができ秘匿防犯性を高めることができる。
【0040】
図5に示すように、例えば、核シェルターの電源設備から供給される電力を屋外で使用する場合や、屋外の自動車などを発電機として核シェルター内部の蓄電手段に蓄電する場合に、配線配管壁内接続保護管5aの任意の位置にスプリンタープレート5bを形成して電力用コンセント13を設置したもので、コンクリート壁体1の壁面よりも屋外側に出ないように配置して、屋外側からの飛散物によって当該電力用コンセント13が破損されないよう配慮している。
【0041】
図6に示すように、配線配管壁内接続スペース5の屋外側近くで火災が発生し得る場合に、配線配管壁内接続スペース5の空隙部に延焼防止材として不燃性断熱材14を詰め込み、さらに配線配管壁内接続保護管5aの任意の位置にスプリンタープレート5bを形成して配線配管壁内接続スペース5を熱や炎から保護できるようにしている。
【0042】
図7に示すように、核シェルター内部の間仕切り壁等に位置する場合、配線配管壁内接続保護管5aを配電BOX15として兼用し、屋外側、屋内側の区別をしないで採用することができる。
【0043】
なお、本発明による配線配管貫通構造は、構造物や使用目的に応じて、当該構造物の任意の位置に設定が可能で、地下核シェルター付住宅などの建物においては、図10に示すような位置に当該配線配管貫通構造を設定することが可能で、図10では、電力通信配線用の配線配管貫通構造16は洪水対策としてできるだけ高い位置に設定し、給排水用の配線配管貫通構造17は住宅1階の床下に相当する部分に設定し、電力入出力コンセント用の配線配管貫通構造18は非常出口の地上部に設定している。
【0044】
以上、本発明による配線配管貫通構造は、核シェルターなどの特殊な用途に採用することができるが、その他、原子力関連施設や一般建築土木構造物にも採用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 コンクリート壁体
2 貫通孔
2a 貫通孔屋内開口部
2b 貫通孔屋外開口部
3 金属壁面板
3a 金属壁面板屋内開口部
3b 配線配管ユニット固定アンカー
4 配線配管ユニット挿入管
4a 貫通孔延長方向分割プレート
5 配線配管壁内接続スペース
5a 配線配管壁内接続保護管
5b スプリンタープレート
5c サヤ管接続部
6 配線配管ユニット
6a 金属製ブラインドフランジ
6b ブラインドフランジ部材貫通孔
6c 金属製押当プレート
6d パッキン
6e 遮蔽コンクリート
6f 放射線遮蔽有孔板
6g 埋込配線ガイド
6h 埋込配管引抜防止抵抗部
6i ユニット固定孔
7 固定金物
8 埋込配線配管部材
8a 埋込配線部材
8b 埋込配管部材
9 屋外側配線配管
10 屋内側配線配管
11 サヤ管
12 秘匿性金物
13 電力用コンセント
14 不燃性断熱材
15 配電BOX
16 電力通信配線用の配線配管貫通構造
17 給排水用の配線配管貫通構造
18 電力入出力コンセント用の配線配管貫通構造
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線配管用の貫通孔を設けたコンクリート壁体において、
コンクリート壁体は、貫通孔に対応する屋内側開口部と、当該屋内開口部の周囲に設けた配線配管ユニット固定アンカーと、が設けられた金属壁面板が一体的に形成され、
貫通孔は、配線配管ユニットを屋内開口部側から格納するための貫通孔長さよりも短い配線配管ユニット挿入管と、当該配線配管ユニット挿入管の屋外側に配線配管壁内接続スペースと、を備え、
配線配管ユニット挿入管は、屋内開口部側に形成する金属壁面板の開口部と一体的に形成し、屋外開口部側に貫通孔延長方向分割プレートを備えた金属製筒状体で、
配線配管ユニットは、配線配管ユニット挿入管に対応する大きさで、屋内開口部側にブラインドフランジ部材貫通孔を有する金属製ブラインドフランジと屋外開口部側に金属製押当プレートとを備える凸型金属製筒状体に、金属製ブラインドフランジと金属製押当プレートで囲まれる空間内に充填した遮蔽コンクリートと、ブラインドフランジ部材貫通孔とコンクリートを貫通した配線配管部材と、を一体的に形成した凸型複合体であり、
当該配線配管ユニットの金属製ブラインドフランジを配線配管ユニット固定アンカーに固定金物で固定する
ことを特徴とする配線配管貫通構造。
【請求項2】
配線配管ユニットは、複数の孔を有する金属板または編目状金属板からなる放射線遮蔽有孔板を、金属製ブラインドフランジと並行に遮蔽コンクリート内部に一体的に設けることを特徴とする請求項1記載の配線配管貫通構造。
【請求項3】
配線配管ユニット挿入管は、当該配線配管ユニット挿入管の貫通孔延長方向分割プレートに、配線配管壁内接続スペースに対応する大きさの金属製筒状体からなる配線配管壁内接続部保護管を一体的に設けたことを特徴とする請求項1記載の配線配管貫通構造。
【請求項4】
配線配管壁内接続部保護管は、電気配線用サヤ管、または給排水配管用サヤ管、または両方、のサヤ管接続部を設けたことを特徴とする請求項3記載の配線配管貫通構造。
【請求項1】
配線配管用の貫通孔を設けたコンクリート壁体において、
コンクリート壁体は、貫通孔に対応する屋内側開口部と、当該屋内開口部の周囲に設けた配線配管ユニット固定アンカーと、が設けられた金属壁面板が一体的に形成され、
貫通孔は、配線配管ユニットを屋内開口部側から格納するための貫通孔長さよりも短い配線配管ユニット挿入管と、当該配線配管ユニット挿入管の屋外側に配線配管壁内接続スペースと、を備え、
配線配管ユニット挿入管は、屋内開口部側に形成する金属壁面板の開口部と一体的に形成し、屋外開口部側に貫通孔延長方向分割プレートを備えた金属製筒状体で、
配線配管ユニットは、配線配管ユニット挿入管に対応する大きさで、屋内開口部側にブラインドフランジ部材貫通孔を有する金属製ブラインドフランジと屋外開口部側に金属製押当プレートとを備える凸型金属製筒状体に、金属製ブラインドフランジと金属製押当プレートで囲まれる空間内に充填した遮蔽コンクリートと、ブラインドフランジ部材貫通孔とコンクリートを貫通した配線配管部材と、を一体的に形成した凸型複合体であり、
当該配線配管ユニットの金属製ブラインドフランジを配線配管ユニット固定アンカーに固定金物で固定する
ことを特徴とする配線配管貫通構造。
【請求項2】
配線配管ユニットは、複数の孔を有する金属板または編目状金属板からなる放射線遮蔽有孔板を、金属製ブラインドフランジと並行に遮蔽コンクリート内部に一体的に設けることを特徴とする請求項1記載の配線配管貫通構造。
【請求項3】
配線配管ユニット挿入管は、当該配線配管ユニット挿入管の貫通孔延長方向分割プレートに、配線配管壁内接続スペースに対応する大きさの金属製筒状体からなる配線配管壁内接続部保護管を一体的に設けたことを特徴とする請求項1記載の配線配管貫通構造。
【請求項4】
配線配管壁内接続部保護管は、電気配線用サヤ管、または給排水配管用サヤ管、または両方、のサヤ管接続部を設けたことを特徴とする請求項3記載の配線配管貫通構造。
【図1】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3a】
【図3b】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公開番号】特開2012−140780(P2012−140780A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293150(P2010−293150)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(710014694)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(710014694)
【Fターム(参考)】
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