説明

配膳車システム及びそれに適する食器

【課題】構造が簡単であり、低コストで、且つ、取り扱いが容易でありながら、食器毎に個別に加熱が可能な配膳車システム及びそれに適する食器を提供する。
【解決手段】配膳車1と、配膳トレイ4と、食器20,21で構成され、配膳車1は、配膳トレイ4を水平方向に複数列、垂直方向に複数段保持しうる収納棚11と、収納棚11の棚板12にそれぞれ設けられたワイヤレス給電のための第1コイル13と、交流電流又はパルス電流を前記第1コイルに供給する電源部8を備え、食器20,21は、それぞれワイヤレス給電のための第2コイル22と、第2コイル22に接続され、第2コイル22に発生される電力によって発熱される発熱体23を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器毎に個別に加熱及び保温可能な配膳車システム及びそれに適する食器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁誘導加熱を利用して食器毎に加熱可能な配膳車システムが提案されている。特許文献1に記載された配膳車システムでは、配膳トレイ側に複数の電磁誘導コイルを設けると共に、配膳車側には、配膳トレイ毎に各電磁誘導コイルを制御する個別の駆動回路及び各駆動回路を制御する1つ配膳トレイ制御部が設けられている。さらに、配膳車には、ユーザによって操作される操作部(操作パネルなど)及び配膳トレイ毎に設けられた複数の制御部を制御する主制御部(電源回路を含む)が設けられている。この配膳車及び配膳トレイに使用される食器は、下面に誘導加熱可能な磁性体が貼付された陶製の容器であったり、それ自体が誘導加熱可能なステンレス製の容器であったりする。
【0003】
このような配膳車システムを用いて配膳を行う場合、ユーザは、配膳される料理の献立に応じて食器を選択すると共に、配膳トレイ上における各食器を配置する場所、すなわちどの食器をどの電磁誘導コイルを用いて加熱するかを決定する。そして、ユーザは、操作部を介して、食品毎に食器の加熱温度及び加熱時間を入力する。それによって、食品毎に最適な温度に加熱して配膳することができる。
【0004】
この配膳車システムによれば、複数の駆動回路及び配膳トレイ制御部が、配膳車に搭載できる配膳トレイ数と同数組必要であり、回路構成が複雑で、コストアップの要因となる。また、献立に応じて、その都度、食器毎の加熱温度及び加熱時間を入力しなければならず、操作が煩雑となる。さらに、配膳トレイ上の食器の載置位置が限定されるため、仮に、食器の載置位置を間違えると、加熱不足や過剰加熱により、食品が適温に加熱されないといった問題が生じる。そのため、食器の取り扱いが煩雑となる。
【0005】
一方、特許文献2に記載された配膳車システムでは、配膳車側に電磁誘導コイルを設け、配膳トレイ側に磁性材料からなる発熱体を設け、発熱体上に耐熱性を有する食器を載置することにより、食器毎に過熱可能とする。発熱体は配膳トレイに断熱状態で保持されているため、配膳トレイの材料自体が発熱体の発熱温度に耐えられるものでなければならず、且つ、ユーザが配膳トレイを手で触れられるように、熱伝導性の低いものである必要がある。そのため、食器を効率よく加熱するために、発熱体の表面を配膳トレイから外部に露出させており、その上に食器が直接載置される。配膳トレイの表面には、発熱体を保持すると共に食器の底部と嵌合される突起が形成されており、配膳トレイの表面は平坦ではない。そのため、配膳トレイの洗浄が容易ではなく、また配膳トレイを積み重ねて保管することには適さない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−78537号公報
【特許文献2】特開2009−82168号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、構造が簡単であり、低コストで、且つ、取り扱いが容易でありながら、食器毎に個別に加熱が可能な配膳車システム及びそれに適する食器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様に係る配膳車システムは、配膳車と、配膳トレイと、食器で構成され、前記配膳車は、前記配膳トレイを水平方向に複数列、垂直方向に複数段保持しうる収納棚と、前記収納棚の棚板にそれぞれ設けられたワイヤレス給電のための第1コイルと、交流電流又はパルス電流を前記第1コイルに供給する電源部を備え、前記食器は、それぞれワイヤレス給電のための第2コイルと、前記第2コイルに接続され、前記第2コイルに発生される電力によって発熱される発熱体を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の他の一態様に係る配膳車システムは、配膳車と、配膳トレイと、食器で構成され、前記配膳トレイは、ワイヤレス給電のための第1コイルと、前記第1コイルに通電するための第1端子を備え、前記配膳車は、前記配膳トレイを水平方向に複数列、垂直方向に複数段保持しうる収納棚と、前記収納棚に前記配膳トレイを保持した状態で、前記第1端子に接続される第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子を介して、交流電流又はパルス電流を前記第1コイルに供給する電源部を備え、前記食器は、それぞれワイヤレス給電のための第2コイルと、前記第2コイルに接続され、前記第2コイルに発生される電力によって発熱される発熱体を備えたことを特徴とする。
【0010】
前記食器は、前記第2コイルと前記発熱体の間に接続され、所定温度に動作温度が設定されたサーモスタットをさらに備えることが好ましい。
【0011】
また、前記食器は、2組の前記発熱体と前記サーモスタットを備え、一方のサーモスタットの動作温度が食品の保温範囲の上限値と下限値に対応し、他方のサーモスタットの動作温度が食品の再加熱温度及び前記下限値よりも低い温度に対応することが好ましい。
【0012】
または、前記食器は、1組の前記発熱体と前記サーモスタットを備え、前記サーモスタットはサーミスタ及びICチップで構成され、前記ICチップには、食品の再加熱温度及び食品の保温範囲の上限値と下限値が設定されていることが好ましい。
【0013】
前記電源部は、前記収納棚に配膳トレイが載置されている間、常に前記第1コイルに交流電流又はパルス電流を通電することが好ましい。
【0014】
また、本発明の一態様に係る食器は、ワイヤレス給電システムを構成するコイルと、前記コイルに接続され、前記コイルに発生される電力によって発熱される発熱体を備えていることが好ましい。
【0015】
前記食器は、前記コイルと前記発熱体の間に接続され、所定温度に動作温度が設定されたサーモスタットをさらに備えることが好ましい。
【0016】
また、前記食器は、2組の前記発熱体と前記サーモスタットを備え、一方のサーモスタットの動作温度が食品の保温範囲の上限値と下限値に対応し、他方のサーモスタットの動作温度が食品の再加熱温度及び前記下限値よりも低い温度に対応することが好ましい。
【0017】
または、前記食器は、1組の前記発熱体と前記サーモスタットを備え、前記サーモスタットはサーミスタ及びICチップで構成され、前記ICチップには、食品の再加熱温度及び食品の保温範囲の上限値と下限値が設定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、配膳車の収納棚の棚板又は配膳トレイに設けられた第1コイルと、配膳トレイ上に載置された各食器の第2コイルが電磁誘導方式や磁気共鳴方式のワイヤレス給電システムを構成し、第1コイルに交流電流又はパルス電流を通電することにより、電磁誘導現象又は磁気共鳴現象により、第2コイルに電流が流れ、それによって発熱体が発熱する。発熱量は、あらかじめ個々の食器に設けられる発熱体の発熱量を設定しておくことにより、食器及びその中に収容された食品を所定温度に加熱することができる。また、電磁誘導加熱を利用していないので、第2コイル及び発熱体を備えていない食器及びその中の食品は、その材料を問わず、例えば金属製であっても、加熱されることはない。さらに、第1コイルが配膳車の収納棚の棚板に設けられている場合は、配膳車内部の配線構造が簡単になり、また配膳トレイの種類を問わない。一方、第1コイルが配膳トレイに設けられている場合は、棚板を取り外し式にしたり、あるいは棚板自体を省略したりすることができ、配膳車内部の洗浄などが容易になる。さらに、食器にサーモスタットを設けることにより、第1コイルへ電流を流し続けながら、各食器に収容される食品を適温に再加熱及び保温することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る配膳車の保温庫の扉を閉じた状態を示す図。
【図2】上記配膳車の保温庫の扉を開いた状態を示す図。
【図3】上記配膳車の収納棚に配膳トレイ及び食器を載置した状態を示す断面図。
【図4】本発明の配膳車システムに適する食器の構成を示す断面図。
【図5】本発明の配膳車システムに適する他の食器の構成を示す断面図。
【図6】上記配膳車の収納棚及び配膳トレイの他の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る配膳車システム及びそれに適する食器について説明する。このシステムにおける配膳車1は、例えば、保温庫(冷蔵庫)を備えたクックチル方式のものであり、同一の配膳トレイ上に冷蔵保温又は常温保存される食品と加熱及び保温される食品を一緒に載置可能なように構成されている。
【0021】
図1は、本実施形態に係る配膳車1の保温庫の扉6を閉じた状態を示し、図2は配膳車1の保温庫の扉6を開いた状態を示す。配膳車1は、基本的に、移動装置(台車)2と、移動装置2の上に搭載された再加熱・保温装置3で構成されている。移動装置2は、自走式のものであってもよく、あるいは手押し式のものであってもよい。また、自走式移動装置の場合、地図上における自己位置を認識しながらあらかじめ設定されたルートに沿って自律移動するタイプのものの外、あらかじめ床に埋設された誘導装置に誘導されながら移動するタイプのもの、ガイドレールに沿って移動するタイプのものなど、あるいは配膳担当者によって操作されるタイプのものなどであってもよい。配膳車1は、移動装置(台車)2及び再加熱・保温装置3など、配膳車1の全体を制御する制御部7と、配膳車1の各部に電力を供給する電源部8をさらに備えている。制御部7は、ユーザによって操作される操作ボタン(操作部)71、庫内温度やその他の設定温度などを表示するディスプレイ(表示部)72、手動操作を行うためのスイッチ部73などを有している。
【0022】
再加熱・保温装置3の本体30の内部は、見かけ上2つの保温庫31,32に仕切られているが、実質的には1つの冷蔵庫兼保温庫として機能する。再加熱・保温装置3の下部、例えば移動装置2には、冷却装置33が設けられており、保温庫31,32の内部を一定の温度範囲に保温(保冷)することができる。クックチル方式の場合、提供される食品の種類にもよるが、事前に調理され、冷凍又は冷蔵保温された食品を、配膳トレイ4の上に載置し、その配膳トレイ4をさらに保温庫31,32に設けられた収納棚11に載置し、その状態で冷蔵保存している。そして、配膳時間よりも一定時間前になると、加熱して提供される食品を一旦所定温度、例えば120〜130℃の高温に再加熱し、さらに60〜80℃程度に保温した状態で配膳される。
【0023】
従来の一般的なクックチル方式の配膳車の場合、冷蔵保温又は常温保温される食品と再加熱される食品をそれぞれ同じ配膳トレイの専用の領域に載置し、配膳トレイ上を断熱壁で仕切って、再加熱される食品のみを温風などで再加熱することが行われている。それに対して、この配膳車システムでは、後述するように、電磁誘導方式や磁気共鳴方式のワイヤレス給電システムを利用して、個々の食器に設けられた発熱体を発熱させて食品の再加熱及び保温を行う。ワイヤレス給電システムを用いた配膳車システムによれば、配膳トレイ4上に載置される食器側に受電用のコイル及び発熱体が設けられていない場合、その食器に収容された食品は全く加熱されないという利点を有する。すなわち、再加熱される食品と再加熱されない食品を同一の配膳トレイ4にランダムに載置することが可能である。そのため、保温庫31,32自体は、断熱機能を有していればよく、特に加熱装置を設ける必要はない。また、本実施形態で使用される配膳トレイ4は、いわゆるフラットトレイであり、特に冷凍又は冷蔵保温された食品と再加熱される食品を載置するスペースは仕切られていない。
【0024】
図3は、第1実施形態における再加熱・保温装置3の一部を成す上記収納棚11及びこの配膳車システムに適する食器20,21の構成を示す。上記のように、この配膳車システムでは、ワイヤレス給電システムを利用して、個々の食器20,21に設けられた発熱体23を発熱させて食品の再加熱及び保温を行う。そのため、収納棚11の床を成す棚板12には、ワイヤレス給電システムを成す送電用の第1コイル13が設けられている。一方、再加熱される食品を収容する食器20及び21の底部には、ワイヤレス給電システムを成す受電用の第2コイル22及び第2コイルに発生する電力によって加熱される、例えばカーボンヒータなどの発熱体23が設けられている。第1コイル13は、基本的に棚板12のほぼ全面に設けられていればよい。第1実施形態では、収納棚11の棚板12は固定式であり、電源部8と第1コイル13とが配線(図示せず)によって接続されており、電力は電源部8から供給される。食器20の材料は特に限定されず、耐熱性及び電気絶縁性を有するもの、例えば、陶器、磁器、耐熱性樹脂などを用いることができる。
【0025】
上記のように、再加熱される食品を温風などで再加熱する場合、再加熱時には庫内温度を120〜130℃の高温になるので、食品全体が再加熱された後、保温庫の断熱効果によって、ある程度の時間、庫内温度を上記60〜80℃程度に保温することができる。それに対して、本実施形態では、個々の食器20,21のみを加熱して、その内部に収容されている食品を再加熱する。そのため、本実施形態の配膳車システムでは、食品を再加熱するために必要な電力は、再加熱・保温庫の全体を加熱する場合に比べて大幅に低減されるけれども、保温性に関しては若干劣る。従って、例えば温度センサ10などを用いて、再加熱された食品の温度を検出し、適宜第1コイル13に通電して発熱体22を発熱させ、食品の温度を保温時の60〜80℃程度に維持することが好ましい。
【0026】
ワイヤレス給電システムは、電磁誘導方式及び磁気共鳴方式のいずれであっても、送電側の第1コイル13及び受電側の第2コイル22を必要とするが、その原理が異なる。電磁誘導方式の場合、第1コイル13及び第2コイル22がそれぞれトランスの1次コイル及び2次コイルとして機能し、第1コイル13に交流電流又はパルス電流を供給することによって、第2コイル22に起電力を発生させる。電磁誘導方式の場合、第1コイル13及び第2コイル22のコイルの軸が大きくずれないように配置する必要があり、加熱されるべき食器が複数存在する場合、その食器の数や大きさに合わせて、複数の第1コイル13を配置する必要がある。また、配膳トレイ4上の食器の載置位置もある程度限定される。それに対して、磁気共鳴方式の場合は、第1コイル13及び第2コイル22が同じ周波数で共振するように設定されていればよく、第1コイル13及び第2コイル22のコイルの軸が多少ずれていても、給電することができる。さらに、1つの第1コイル13によって複数の第2コイル22を同時に共振させることも可能である。従って、ワイヤレス給電システムは、電磁誘導方式及び磁気共鳴方式のいずれを採用するかは、用途やコストなどに応じて適宜選択可能である。
【0027】
次に、本発明の配膳車システムに適する食器の他の構成例について説明する。図3に示す食器20,21は第2コイル22と発熱体23のみを備え、温度制御は、温度センサ10により検出された食品の温度に基づいて、制御部7により第1コイルに電流を通電するか遮断するかを制御することによって行われる。それに対して、図4に示す食器25は、第2コイル22と発熱体24に直列接続されたサーモスタット24をさらに備えており、このサーモスタットを用いて温度制御が行われる。サーモスタット24の構造は特に限定されず、温度範囲を一定に保つことができるものであればよい。一般的に、コストや食器25の内部に組み込むことを考慮すると、バイメタルを使用したサーモスタット24が安価であり、且つ、取り扱いが容易である。周知のように、バイメタルを構成する2つの金属材料を適宜選択し、膨張率や熱容量の組み合わせを変えることによって、電流を遮断する温度と、電流を再投入する温度を任意に設定することができる。従って、例えば図3に示す例で、スープなどを収容する食器21による再加熱温度を80℃とし、メインディッシュを収容する食器20による再加熱温度を130℃とすることも可能である。
【0028】
図5は、1つの食器26に2組の発熱体23A,23Bとサーモスタット24A,24Bを用いた構成例を示す。例えば、一方のサーモスタット24Aの電流遮断温度を130℃、電流再投入温度を60℃とし、他方のサーモスタット24Bの電流遮断温度を90℃、電流再投入温度を70℃とすれば、食品の再加熱温度を130℃とし、その後食品を70〜90℃の範囲で保温することができる。あるいは、図4に示す1組の発熱体23とサーモスタット24を用いた構成例において、サーモスタット24として、サーミスタ及びICチップ(マイコン)を用いることも可能である。その場合、ICチップに再加熱温度、保温温度の上限値及び下限値の3つの温度を設定すれば、食品を所定温度に再加熱した後、それよりも低い温度範囲に保温することができる。これらの場合、再加熱温度と、その後の保温範囲を自動的に制御することができる。
【0029】
制御部7は、電源部8を駆動して、配膳トレイ4が収納棚11に載置されている間、常に第1コイル22に交流電流又はパルス電流を通電する。食器25又は26の温度管理は、サーモスタット24,24A,24Bによって行われるので、制御部7は温度管理を行う必要がない。さらに、食品によって、電流遮断温度及び電流再投入温度の異なるサーモスタットを備えた食器を用いれば、食品毎にそれぞれ異なる温度に再加熱及び保温することができる。
【0030】
また、図示していないが、第2コイル22及び発熱体23を備えた食器20,21,25,26に蓋を設けると共に、例えば二重構造にして、食器内部の熱を食器の外に漏らさないような構造にすれば、保温庫31,32を冷蔵庫として使用しつつ、食器20,21,25,26の内部に収容された食品を再加熱することができる。すなわち、冷蔵と加熱・保温を同時に行うことも可能である。
【0031】
次に、本実施形態に係る配膳車システムの他の構成例について説明する。図3に示す構成例では、収納棚11が棚板12を有し、第1コイル13が棚板12に設けられていたが、図6に示す構成例では、棚板12を省略し、第1コイル13を配膳トレイ4の底部に設けている。配膳車1を洗浄する際、棚板12を取り外すのが容易ではないが、このような構成では最初から棚板がないので洗浄が容易である。また、第1コイル13は、送電の際若干発熱するものの、それ自体の熱で食品を加熱するものではないため、例えば樹脂製の配膳トレイ4に第1コイル13を埋設しても、配膳トレイ4自体は高温にはならず、特に問題は生じない。配膳トレイ4の鍔部には、第1コイル13に接続され、電源部8からの電力が供給される第1端子14が設けられている。また、収納棚11のガイドレール部には、電源部8に接続され、第1端子14と接触することによって第1コイル13に電力を供給するための第2端子15が設けられている。このような構成によっても、上記と同様に機能することができる。
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、ワイヤレス給電システムを用いて、個々の食器に個別に電力を供給し、食器に設けられた発熱体を発熱させて食品を再加熱し、また必要に応じて保温することができる。そのため、再加熱される食品と再加熱されない食品を同一の配膳トレイに載置することが可能である。また、配線車の保温庫を冷蔵庫と再加熱・保温庫に仕切る必要が無くなり、配膳車自体の構造が簡単になり、且つ、コストダウンを図ることができる。さらに、食器の用途に応じて発熱体の発熱量を適宜変化させることにより、食品毎にそれぞれ異なった温度に再加熱することができる。さらに、発熱体とサーモスタットを組み合わせることにより、個々の食器側で再加熱温度や保温温度を制御することができ、配膳車全体の温度制御が簡単、且つ、容易になる。さらに、ワイヤレス給電システムとして、特に磁気共鳴現象を利用すれば、配膳トレイ上に載置される食器の位置の制限が緩和され、食器をランダムに載置することが可能であり、効率よく電力を供給することができる。さらに、ワイヤレス給電システムを構成する第1コイルは、収納棚の棚板又は配膳トレイの底部に設けられているため、配膳トレイの表面は平坦であり、配膳トレイの洗浄が容易であり、且つ、配膳トレイを積み重ねて保管することができる。特に、第1コイルが収納棚の棚板に設けられている場合は、配膳トレイの大きさや形状の制限が全くなくなり、市販のフラットトレイなど、さまざまなトレイを使用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 配膳車
3 再加熱・保温装置
4 配膳トレイ
7 制御部
8 電源部
11 収納棚
12 棚板
13 第1コイル
14 第1端子
15 第2端子
20,21,25,26 食器
22 第2コイル
23、23A,23B 発熱体
24,24A,24B サーモスタット
31,32 第1保温庫
41,42 第2保温庫

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配膳車と、配膳トレイと、食器で構成された配膳車システムであって、
前記配膳車は、前記配膳トレイを水平方向に複数列、垂直方向に複数段保持しうる収納棚と、前記収納棚の棚板にそれぞれ設けられたワイヤレス給電のための第1コイルと、交流電流又はパルス電流を前記第1コイルに供給する電源部を備え、
前記食器は、それぞれワイヤレス給電のための第2コイルと、前記第2コイルに接続され、前記第2コイルに発生される電力によって発熱される発熱体を備えたことを特徴とする配膳車システム。
【請求項2】
配膳車と、配膳トレイと、食器で構成された配膳車システムであって、
前記配膳トレイは、ワイヤレス給電のための第1コイルと、前記第1コイルに通電するための第1端子を備え、
前記配膳車は、前記配膳トレイを水平方向に複数列、垂直方向に複数段保持しうる収納棚と、前記収納棚に前記配膳トレイを保持した状態で、前記第1端子に接続される第2端子と、前記第1端子及び前記第2端子を介して、交流電流又はパルス電流を前記第1コイルに供給する電源部を備え、
前記食器は、それぞれワイヤレス給電のための第2コイルと、前記第2コイルに接続され、前記第2コイルに発生される電力によって発熱される発熱体を備えたことを特徴とする配膳車システム。
【請求項3】
前記食器は、前記第2コイルと前記発熱体の間に接続され、所定温度に動作温度が設定されたサーモスタットをさらに備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の配膳車システム。
【請求項4】
前記食器は、2組の前記発熱体と前記サーモスタットを備え、一方のサーモスタットの動作温度が食品の保温範囲の上限値と下限値に対応し、他方のサーモスタットの動作温度が食品の再加熱温度及び前記下限値よりも低い温度に対応することを特徴とする請求項3に記載の配膳車システム。
【請求項5】
前記食器は、1組の前記発熱体と前記サーモスタットを備え、前記サーモスタットはサーミスタ及びICチップで構成され、前記ICチップには、食品の再加熱温度及び食品の保温範囲の上限値と下限値が設定されていることを特徴とする請求項3に記載の配膳車システム。
【請求項6】
前記電源部は、前記収納棚に配膳トレイが載置されている間、常に前記第1コイルに交流電流又はパルス電流を通電することを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか一項に記載の配膳車システム。
【請求項7】
ワイヤレス給電システムを構成するコイルと、前記コイルに接続され、前記コイルに発生される電力によって発熱される発熱体を備えたことを特徴とする食器。
【請求項8】
前記食器は、前記コイルと前記発熱体の間に接続され、所定温度に動作温度が設定されたサーモスタットをさらに備えたことを特徴とする請求項7に記載の食器。
【請求項9】
前記食器は、2組の前記発熱体と前記サーモスタットを備え、一方のサーモスタットの動作温度が食品の保温範囲の上限値と下限値に対応し、他方のサーモスタットの動作温度が食品の再加熱温度及び前記下限値よりも低い温度に対応することを特徴とする請求項8に記載の食器。
【請求項10】
前記食器は、1組の前記発熱体と前記サーモスタットを備え、前記サーモスタットはサーミスタ及びICチップで構成され、前記ICチップには、食品の再加熱温度及び食品の保温範囲の上限値と下限値が設定されていることを特徴とする請求項8に記載の食器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−242061(P2012−242061A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115467(P2011−115467)
【出願日】平成23年5月24日(2011.5.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】