説明

配送物受領証明方法及び装置

【課題】主たる課題は、電子署名を用いた簡易な居住者証明を可能とし、成りすましによる配送物の不正受領を防止する。
【解決手段】住民の情報を管理する住宅管理システムに各戸の住民個人情報と少なくとも各戸に一以上の電子署名情報を備えて住民の認証機関とし、前記認証機関の発行する電子署名情報を各戸に配布し、電子署名情報により署名を施した受領者名と受領日の情報を配送者に送付することにより配送物の受領証明を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は配送物の受領を証明する方法及び配送物受領証明機能を持つ宅配ロッカーに関する。
【0002】
【従来の技術】配達物や書留郵便は、厳密な本人確認ではなくその住所の住人であることを確認して配達されている。その際、受領の印には認印もしくはサインが用いられている。宅配ロッカーや管理人への配送物委託は、それに準じてその住所へ届けたことにより受領確認としているものである。現在実用化されている宅配ロッカーは、配送先の確認を暗証番号や識別番号を格納した世帯毎に配布される磁気カードによって行っているが、この情報は配達業者や荷物の発送元に送られていない。特開2001-175555号公報記載のように宅配ロッカーに通信機能を持たせメールやホームページ上で荷物の状況を知らせる例があるが、これも状況の通知のみで受領者を確認する情報は送信されていなかった。また認印やサインの代わりにユーザの電子署名を用いる例は特開2000-348092号公報に記載されているが、ここで用いられるユーザ署名はどのような機関によって署名内容を保証されるかについて言及していない。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】電子署名法に基づいて認印・サインの代わりに電子署名を用いるには、その住所の住人であることを証明する機関が必要である。またユーザの電子署名の改ざん・転用を防ぐ方法が必要である。加えて宅配ロッカーを用いて受領確認が必要な書留郵便等を受領するには受領時に電子署名を配達業者や荷物の発送元に送信する仕組みが必要である。
【0004】本発明の目的は、前記課題を解決する電子署名を用いた配送物受領証明方法と該方法を用いた宅配ロッカーを提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の配送物受領証明方法では、その住所の住人であることを証明する機関として、集合住宅等で住民情報を管理している住宅管理業者や、管理業者または管理組合から委託を受けたセキュリティサービス会社を認証機関とする。これらの会社では通常各戸の居住者名、居住人数、転入出をデータベースによって管理している。この認証機関は電子署名法で規定される認証機関に必要な事項を満たしていることとする。
【0006】認証機関は住民情報のデータベースと住民の電子署名情報データベースを備え、各戸に対して、あるいは居住者として登録された各人に対して、電子署名を行うために必要な情報と電子証明書を発行する。ここで用いられる電子署名は公開鍵暗号を用いたものでも他の暗号化技術を用いたものでも良い。公開鍵暗号を用いる場合、認証機関は上記情報として住民個別の秘密鍵を発行する。この秘密鍵はICカードのような記録媒体や電子署名用の専用端末に格納して発行しても良い。記録媒体に氏名や配送指定業者情報を格納し、文字入力を必要とせず業者番号を選択するだけで必要情報の暗号化が完了するようにしても良い。秘密鍵の発行とともに秘密鍵により電子署名を暗号化するために必要なアプリケーションを添付しても良い。電子署名の内容を確認するための公開鍵は、格納場所を示す情報を配布してもそのまま対象者に配布しても良い。
【0007】認証機関のもつ住民情報のデータベースには、住所や部屋番号と対応付けて、氏名や電話番号、必要に応じて性別、年齢等の居住者に関する個人情報が格納される。このデータベースは住民管理用のデータベースと兼用して情報を共有しても良い。電子署名情報データベースには電子署名データの発行先、有効期間、暗号化手法に応じた必要情報が格納される。
【0008】さらに電子署名の不正利用を防止するためには、認証機関に電子署名使用履歴データベースを設け、電子署名を発行する度に使用情報を取得することにより、各電子署名の使用日と相手先等の発行情報を対応付けて格納する。この情報と相手先から認証機関へ署名確認時に送信された情報を照合して不正使用されていないか確認する。
【0009】ユーザが電子署名を発行する処理は、各戸において配送物や書留郵便等を受領する場合、次のように行う。配送担当者は電子署名を受領する電子媒体または専用端末を所持していることとする。ユーザは専用端末や暗号化アプリケーションを備えたPC等により、ICカードまたは端末内に格納された秘密鍵と電子証明書を用いて、少なくとも受領者氏名と受領日を、必要に応じて署名発行先である配送業者または配送物の発送元を識別する情報を付加して暗号化する。暗号化された情報に電子証明書と公開鍵に関する情報を添付して、配送担当者の所持する電子媒体または専用端末に出力する。
【0010】電子署名の不正な利用を防止する場合は、上記発行処理の後に必要情報を認証機関に送信し、電子署名使用履歴データベースに登録する。これら一連の処理はアプリケーションによって連続して行われるのが望ましい。
【0011】本発明による電子署名を宅配ロッカーに適用する場合は、前記機能を実現するためにロッカーの制御システムに通信機能と送信先のアドレスを取得する機能と前記受領証明情報を取得して前記アドレスへ送信する機能を備える。通信機能は、電話回線やネットワークを通じて配送業者や郵便事業者、あるいは認証機関へ受領情報を送信する。認証機関との通信は一般回線でなく専用の回線を用いても良い。宅配ロッカーへの荷物預け入れ時に受領確認機能を利用するか否かを選択させ、受領確認が必要な場合には、送信先のアドレスを取得する。配送物受領時にユーザのICカード等に格納した情報を用いて電子署名を作成しこのアドレスへ送信する。電子署名を作成するためのアプリケーションはICカードに格納しても制御システムに備えても良い。受領履歴はロッカー制御システムで蓄積し、一定期間毎に認証機関に送信、または保守担当者が履歴情報を収集する。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明による配送物受領証明方法を図を用いて説明する。ここでは公開鍵暗号による電子署名を用いた場合について説明する。
【0013】図1に本発明の配送物受領証明方法において認証機関とする住宅管理システム100の構成を示す。住宅管理会社または住宅管理会社や管理組合から委託を受けた会社にこのシステムを設置する。
【0014】住宅管理システム100は各戸の住所、居住者数、居住者の氏名・年齢・性別、電話番号、居住者続柄、居住開始年月日等の住民の個人情報である住民データDB107とそれを管理する住民情報管理機能101、電子署名の認証機関としての機能である電子証明書発行機能102、公開鍵作成管理機能104、秘密鍵作成管理機能105、及び電子署名認証機能105と公開鍵DB109、各戸に発行する秘密鍵DB110、電子署名使用履歴DB108と使用履歴を管理する署名履歴管理機能106を備える。このうち住民データDB107とそれを管理する住民情報管理機能101は従来の住民管理システムと兼用しても良い。住民データDB107には各戸を識別するコードを設け、共通キー項目として用いる。電子署名のための管理情報としては、居住者氏名または各戸の代表者名、その者が用いる電子署名の公開鍵と秘密鍵、証明書の有効期間が必要である。秘密鍵DBには各戸識別コードと対応付けた各戸の秘密鍵情報及び居住者氏名または各戸の代表者名を格納する。公開鍵DB109には秘密鍵と対応する公開鍵の情報及び証明書の有効期間を格納する。
【0015】まず各戸に秘密鍵及び電子証明書を格納したICカードを配布して配送物受領証明を行う操作について説明する。図2にICカードによる受領証明を行うイメージ図を示す。各戸において配送物や書留郵便等を受領する場合、配送担当者は電子署名を受領する電子媒体または端末を所持していることとする。ユーザが署名用ICカード210を所持し、配送担当者が端末200を所持している場合、配送物受領時に配送担当者の端末200にICカード210を差し込み、ICカード210内または端末200内の電子署名作成機能211により、ICカード210内の個人情報と受領日となるシステム日付をICカード210内の秘密鍵を用いて暗号化して電子署名とし、電子証明書214を付加して受領証明とし、端末200に送信する。この時、端末200内の配送業者コードや配送物コード等の端末内の配送物に関する情報も付加して暗号化しても良い。電子証明書214は必要に応じて発行することとし、省略しても良い。簡易には電子証明書214を端末画面に表示し、その複製作成して配送担当者に送信しても良い。この場合複製を作成した日時と提出先名を履歴として記録し管理することが望ましい。図5にICカード210の署名情報212の一例を示す。少なくとも、個人情報である各戸の識別コード、住所情報または部屋番号、各戸代表者氏名と秘密鍵を格納する。この時、集合住宅では各戸識別コードを部屋番号としても良い。必要に応じて個人情報に居住者全員の氏名、電話番号やメールアドレス等の連絡情報を加えても良い。
【0016】さらに、電子署名の不正な利用を防止する場合には、ICカード210または端末200に署名使用履歴DB213を備え、電子署名を使用する毎に署名情報を蓄積する。署名使用履歴DB213に格納した各戸識別コードと取得した配送業者情報と署名発行日等の必要情報は、電子証明書の発行元である認証機関100に送信し、電子署名使用履歴DB108に登録する。
【0017】各戸にICカードを配布するのではなく、これらの情報を各戸に設けた専用端末に格納しても良い。図2の200を専用端末とした場合、前記ICカード内の情報や電子署名機能は全て端末200が保持し、配送担当者の記憶媒体210に受領証明を書込む、または配送担当者の端末201に受領証明を送信する機能を持たせる。この送信は端末間通信によっても、ネットワークを介したメール通信によっても良い。図3にインターホン機能と兼用の専用端末のイメージ図を示す。専用端末には電子署名を実施するためのボタン301や署名履歴を住宅管理システム100に送信するための送信ボタン302を設置しても良い。この端末は後述する宅配ロッカーとの通信機能を持たせて預かり配送物の有無を表示しても良い。
【0018】次に、居住者不在時に宅配ロッカーを利用して配送物の受領と受取り証明を行う場合について説明する。図4に本発明の宅配ロッカーのシステム構成の一例を示す。本発明の宅配ロッカーは、通常の宅配ロッカー部400と宅配ロッカー管理システム410からなる。宅配ロッカー部400は配送物をロッカー402に受入れ・施錠保管・受け出し処理を制御するロッカー制御部401を備える。宅配ロッカー管理システム410は宅配ロッカー内の制御部401の一機能として設定するか、外部に設けてロッカー制御部401と通信を行うこととする。宅配ロッカー管理システム410は住居番号等の配送先識別情報と、荷物の種別や形状等の配送物の情報、及び業者コード等の配送業者の情報を取得するデータ取得機能411とデータ登録機能412、配送の証明となるレシート発行機能413、配送物の有無を宛先者に通知する配送物有り通知機能414、電子署名作成機能415、配送業者や居住者へ情報を送信するメール送信機能416を備える。
【0019】通常の宅配ロッカーと同様に、配送担当者はロッカー利用時に上記配送情報をロッカー制御部401からのキー入力、または必要情報を格納したカードを差し込んで情報を送信する等の方法で入力する。この際、受領確認機能を利用するか否かを画面表示やメッセージ等により選択させ、書留郵便等受領確認が必要な配送物の場合には、送信先のアドレスを制御部401に入力させる。カード入力の場合にはアドレスを自動取得する。荷物の預け入れ時間は宅配ロッカーシステムの時計機能により自動的に取得する。これらの情報はデータ取得機能411、データ登録機能412により預け入れDB417に登録される。ロッカー制御部401により配送物に適した空きロッカーを検出し、ある場合は荷物を受け入れて施錠し、レシート発行機能413によりレシートを発行する。預かり荷物の有無は、通常の宅配ロッカーと同様にレシートを発行して郵便受けに入れるか、配送物有り通知機能414により各戸のセキュリティシステムへ通知しインターホンシステムに表示する等の機能で通知する。荷物預け入れが正常に完了すると、取得した情報を預け入れDB417に格納する。図6に預け入れDB417のデータの一例を示す。適当な空きロッカーが無い等の理由で受入れが行われなかった場合は、メール送信機能416によりこの情報を添付ファイルまたは定型メールの形式に加工して、配送先である住戸の宛先DB418からアドレスを取得しメール送信する。この場合も図3のような各戸のセキュリティシステムと連動した通知機能を利用して必要な情報を表示しても良い。配送物種別が生鮮物であったり冷却ロッカーを選択した場合には、預け入れ日605からの経過時間が予めシステムが設定した預かり期間を超過した場合、預け入れDB417の該当配送物に対応する配送業者アドレス603に宅配ロッカーシステムが不受理通知を送っても良い。
【0020】居住者が配送物を受領する場合、宅配ロッカーのロッカー制御部に前述したような各戸の秘密鍵及び電子証明書を格納したICカードを差し込むと、宅配ロッカーシステム410はカードの識別コード501に対応する預け入れDB417の該当データ601からロッカー番号602を判定し該ロッカーを解錠する。この際受領確認が指定されているか否かを預け入れDB417の識別フラグ605で判別する。確認要の場合、宅配ロッカー管理システム410はICカードの情報と電子署名作成機能415により、前述した各戸での受領方法と同様に電子署名を施した必要情報を作成し、配送業者アドレス603に送信する。
【0021】
【発明の効果】以上のように、本発明の配送物受領証明方法によれば電子署名を用いた簡易な居住者証明が可能となり、成りすましによる配送物の不正受領を防止することができる。また、本発明の配送物受領方法を使用した宅配ロッカーにより不在時にも書留郵便のような配達証明を必要とする配送物を安全に受領することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】住宅管理システムの構成の一例を示す図。
【図2】ICカードによる受領証明を行うイメージ図。
【図3】インターホン機能と兼用の専用端末のイメージ図。
【図4】本発明の宅配ロッカーのシステム構成の一例を示す図。
【図5】ICカード内の情報の一例を示す図。
【図6】預け入れDBの情報の一例を示す図。
【符号の説明】
100…住宅管理システム、107…住民データDB、108…電子署名使用履歴DB、109…公開鍵DB、110…秘密鍵DB、200…電子署名作成に用いる端末、210…ICカード、400…宅配ロッカー、410…宅配ロッカー管理システム。

【特許請求の範囲】
【請求項1】住民の情報を管理する住宅管理システムに各戸の住民個人情報と少なくとも各戸に一以上の電子署名情報を備えて住民の認証機関とし、前記認証機関の発行する電子署名情報を各戸に配布し、電子署名情報により署名を施した受領者名と受領日の情報を配送者に送付することにより配送物の受領証明を行うことを特徴とする配送物受領証明方法。
【請求項2】宅配ロッカー機能を有し、宅配ロッカーの格納物管理手段に配送者の送信先情報を取得する手段と請求項1に記載の受領証明情報を取得する手段と該受領証明情報を前記送信先に送信する手段を備えたことを特徴とする配送物受領証明装置。

【図5】
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【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2003−196350(P2003−196350A)
【公開日】平成15年7月11日(2003.7.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2001−393052(P2001−393052)
【出願日】平成13年12月26日(2001.12.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】