説明

配電システム

【課題】交流電力と直流電力とをそれぞれ配電するシステムにおいて、直流電力を出力するDC−DCコンバータを安定動作させ、安定した直流電力の供給を可能にする。
【解決手段】太陽電池1から出力される直流電力を交流電力系統ACの位相に同期した交流電力に変換して出力するパワーコンディショナ3と、太陽電池1から出力される直流電力の電圧レベルを所望の電圧レベルに変換して出力するDC−DCコンバータ5とを備え、これらのパワーコンディショナ3とDC−DCコンバータ5とが同時動作可能である構成において、DC−DCコンバータ5の入力電圧がパワーコンディショナ3の動作電圧範囲と同じかまたは狭い所定の範囲である場合のみ、この所定の動作電圧範囲においてDC−DCコンバータ5を動作させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交流電力と直流電力とを負荷機器に配電する配電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅、店舗、オフィスビルなどの建物において、交流電力と直流電力とを配電する配電システムとして、例えば特許文献1に記載のものがある。特許文献1の配電システムは、分電盤と交流電源用コンセントを有し、交流電源用コンセントに直流出力電源端子が設けられ、分電盤内に変圧器と整流器が配設されて構成されており、変圧器によって100ボルト又は200ボルトの交流電圧を6ボルト、3ボルト、1.5ボルトの3種類の交流電圧に変換した後、これらの交流電圧を整流器で整流することによって6ボルト、3ボルト、1.5ボルトの3種類の直流電圧を得るとともに、分電盤内で作成したこれら3種類の直流電圧を直流出力電源端子へ配電するものである。
【0003】
また、地球環境保護の観点から、自家発電用として太陽光発電装置のような直流発電設備を建物に設置し、直流発電設備の直流電力出力を交流電力に電力変換して電力会社から供給される商用電源(交流電力系統)と系統連系運転を行う配電システムが提案されている(例えば特許文献2参照)。この種の系統連系システムでは、直流発電設備で発電された直流電力を、直流電力から交流電力に変換する電力変換器(パワーコンディショナ)により交流電力に変換することによって、交流電源である商用電源と協調させる構成を採用している。ここで、建物内の負荷で消費される電力を超える電力が直流発電設備から供給されている場合、余剰分の電力を商用電源に逆潮流させること(いわゆる、売電)が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平4−128024号公報
【特許文献2】特開2003−284245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に記載のような配電システムにおいて、上記特許文献1のように直流電力を供給する場合、太陽光発電装置のような直流発電設備から出力される直流電力をパワーコンディショナにおいて交流電力に変換した後、再度交流電力から直流電力に変換することになる。このため、2段階の電力変換が必要であり、電力変換による電力損失が増加し、電力の利用効率が低下するという課題がある。そこで、交流電力と直流電力を効率よく配電するために、直流発電設備から出力される直流電力を交流電力に変換するパワーコンディショナと、直流発電設備から出力される直流電力の電圧レベルを所望の電圧レベルに変換するDC−DCコンバータとを設けて、パワーコンディショナから交流電力を、DC−DCコンバータから直流電力をそれぞれ供給するような構成を本出願人は提案している。このようなパワーコンディショナとDC−DCコンバータとを備えた構成において、両者を同時に動作可能とした場合、直流発電設備の発電量が少ない状態でDC−DCコンバータを動作させると、動作が不安定となり、安定して直流電力を供給できないという課題がある。また、DC−DCコンバータの動作が不安定であると、パワーコンディショナの動作を妨げてしまうことがある。
【0006】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、交流電力と直流電力とをそれぞれ配電するシステムにおいて、直流電力を出力するDC−DCコンバータを安定動作させることができ、安定した直流電力の供給が可能な配電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、直流電力源と交流電力系統とに接続され、前記直流電力源から出力される直流電力を前記交流電力系統の位相に同期した交流電力に変換して出力するとともに変換された交流電力を前記交流電力系統に逆潮流するパワーコンディショナと、前記直流電力源から出力される直流電力の電圧レベルを所望の電圧レベルに変換して出力するDC−DCコンバータとを備え、前記パワーコンディショナと前記DC−DCコンバータとが前記直流電力源に対して並列接続され、これらのパワーコンディショナとDC−DCコンバータとが同時動作可能であり、前記DC−DCコンバータの入力電圧が所定の範囲である場合のみ当該DC−DCコンバータを動作させるように制御する動作制御部を備える配電システムを提供する。
上記構成により、直流電力を出力するDC−DCコンバータを安定動作させることができ、安定した直流電力の供給が可能となる。
【0008】
また、本発明は、上記の配電システムであって、前記動作制御部は、前記所定の範囲を、前記パワーコンディショナの動作電圧範囲と同じかまたは狭い範囲とし、この範囲の動作電圧範囲において前記DC−DCコンバータを動作させるものを含む。
上記構成により、パワーコンディショナが動作している状態でDC−DCコンバータを動作させるため、入力電圧が安定した状態で動作させることができ、安定動作させることができる。また、DC−DCコンバータがパワーコンディショナの動作を妨げることを防げる。
【0009】
また、本発明は、上記の配電システムであって、前記動作制御部は、前記DC−DCコンバータの入力電圧が前記動作電圧範囲に入ってから所定時間後に当該DC−DCコンバータを動作開始させるものを含む。
上記構成により、パワーコンディショナが安定して動作するのを待ってからDC−DCコンバータを動作させることができ、DC−DCコンバータの動作をより安定させることが可能になる。
【0010】
また、本発明は、上記の配電システムであって、前記動作制御部は、前記DC−DCコンバータにおける単位時間あたりの入力電圧変化量が所定以下となった場合に当該DC−DCコンバータを動作開始させるものを含む。
上記構成により、パワーコンディショナの安定動作を確認してからDC−DCコンバータを動作させることができ、DC−DCコンバータの動作をより安定させることが可能になる。
【0011】
また、本発明は、上記の配電システムであって、前記交流電力系統の停電を検出する停電検出部を備え、前記動作制御部は、前記停電検出部により停電が検出された場合に、前記所定の範囲の動作電圧範囲を非停電時よりも拡大して前記DC−DCコンバータを動作させるものを含む。
上記構成により、停電時はパワーコンディショナの動作が停止するので、パワーコンディショナの動作と関係なく、より広い範囲でDC−DCコンバータを動作させることによって、太陽電池等の直流電力源による発電電力を有効利用することが可能になる。
【0012】
また、本発明は、上記の配電システムであって、前記交流電力系統の停電を検出する停電検出部を備え、前記動作制御部は、前記停電検出部により停電が検出された場合に、前記DC−DCコンバータの動作を停止させるものを含む。
上記構成により、停電時はパワーコンディショナの動作が停止するので、DC−DCコンバータの安定動作が困難になる場合があるため、動作停止することで不安定な動作を抑止可能となる。
【0013】
また、本発明は、上記の配電システムであって、前記直流電力源として太陽電池を備えており、前記動作制御部は、前記太陽電池の設置個数によって前記動作電圧範囲の設定を変更するものを含む。
上記構成により、太陽電池の発電量のピーク電圧に応じて、適切な動作電圧範囲でDC−DCコンバータを動作させることが可能になる。
【0014】
また、本発明は、直流電力源から出力される直流電力の電圧レベルを所望の電圧レベルに変換して出力するDC−DCコンバータを備え、前記直流電力源に対して、この直流電力源から出力される直流電力を交流電力系統の位相に同期した交流電力に変換して出力するパワーコンディショナとともに並列接続され、前記パワーコンディショナと同時動作可能であり、前記DC−DCコンバータの入力電圧が所定の範囲である場合のみ当該DC−DCコンバータを動作させるように制御する動作制御部を備える直流配電装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、交流電力と直流電力とをそれぞれ配電するシステムにおいて、直流電力を出力するDC−DCコンバータを安定動作させることができ、安定した直流電力の供給が可能な配電システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る配電システムの構成を示す図
【図2】(a)、(b)はパワーコンディショナの動作を説明する図
【図3】本実施形態におけるDC−DCコンバータの動作制御部の第1構成例を示す図
【図4】本実施形態の第1構成例の動作制御部によるDC−DCコンバータの動作範囲の第1例を示す図
【図5】本実施形態の第1構成例の動作制御部によるDC−DCコンバータの動作範囲の第2例を示す図
【図6】DC−DCコンバータの動作制御に関する入力電圧波形の第1例を示す図
【図7】DC−DCコンバータの動作制御に関する入力電圧波形の第2例を示す図
【図8】本実施形態におけるDC−DCコンバータの動作制御部の第2構成例を示す図
【図9】本実施形態の配電システムの応用例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る配電システムを戸建て住宅に適用した実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。但し、本発明に係る配電システムが適用可能な建物は戸建て住宅に限定されるものではなく、集合住宅の各住戸や事務所等にも適用可能である。
【0018】
図1は本発明の実施形態に係る配電システムの構成を示す図である。本実施形態の配電システムは、太陽電池1、中継端子箱(「接続箱」とも呼ばれる)2、パワーコンディショナ3、交流分電盤4、DC−DCコンバータ5、AC−DCコンバータ6を有して構成される。
【0019】
太陽電池1は、複数(図示例では3つ)の太陽電池モジュール1A,1B,1Cを有して構成され、直流電力源として用いられるものである。中継端子箱2は、各太陽電池モジュール1A〜1Cから直流出力を取り出すための出力ケーブル7を一つのケーブル8にまとめるものである。これらの太陽電池1と中継端子箱2とにより、直流発電設備の一例としての太陽光発電装置が構成されている。パワーコンディショナ3は、太陽電池1から出力される直流電力を商用電源(交流電力系統)ACの位相に同期した交流電力に変換するとともに、変換された交流電力を交流電力系統ACに逆潮流する。交流分電盤4は、交流電力系統ACまたはパワーコンディショナ3から出力される交流電力を分岐し、複数の分岐ブレーカ(図示せず)を介して宅内に配電する。DC−DCコンバータ5は、太陽電池1から出力される直流電力の電圧レベルを所望の電圧レベルに変換する。AC−DCコンバータ6は、交流分電盤4を介して供給される交流電力を所望の電圧レベルの直流電力に変換する。また、交流分電盤4から出力される交流電力を配電する交流配電路11には、交流負荷機器13が接続される。DC−DCコンバータ5またはAC−DCコンバータ6から出力される直流電力を配電する直流配電路12には、直流負荷機器14が接続される。
【0020】
太陽電池モジュール1A〜1Cは、複数個(図示例では8個)の太陽電池セルを図示しない外囲器に封入した従来周知の構成を有し、例えば、住宅の屋根に設置される。なお、中継端子箱2は、複数のストリング出力側と負荷側とを端子にて中継し、必要に応じて逆流防止素子、直流開閉器などを収納した密閉箱である(JIS C8960参照)。
【0021】
パワーコンディショナ3は、太陽電池1の直流出力を昇圧する昇圧チョッパ回路(図示せず)、昇圧チョッパ回路で昇圧された直流出力を交流電力系統ACの位相に同期した正弦波の交流出力に変換するインバータ(図示せず)、インバータを制御することで交流出力を調整するインバータ制御回路(図示せず)、系統連系保護装置などを有している。
【0022】
交流分電盤4は、いわゆる住宅用分電盤(住宅盤)と同様に、扉付のボックス内に1次側が交流電力系統ACに接続された主幹ブレーカ(図示せず)、及び主幹ブレーカの2次側に接続された導電バー(図示せず)に分岐接続された複数の分岐ブレーカ等が収納される。さらに、交流分電盤4のボックス内にパワーコンディショナ3の出力線が引き込まれ、ボックス内においてパワーコンディショナ3の出力線が交流電力系統ACに並列接続されている。また、分岐ブレーカの2次側に交流配電路11が接続され、この交流配電路11を介して宅内の交流負荷機器13に交流電力が供給される。交流配電路11の末端には、交流負荷機器13を接続するためのコンセント(図示せず)が設けられる。
【0023】
DC−DCコンバータ5は、例えばスイッチングレギュレータ等により構成され、出力電圧を検出するとともに検出した出力電圧が目標電圧と一致するように出力電圧を増減する制御(フィードバック制御)を行う定電圧制御方式によって、太陽電池1から出力される直流電力の電圧レベルを所望の電圧レベルに変換する。AC−DCコンバータ6は、例えばスイッチングレギュレータ、インバータ等により構成され、交流電圧を直流電圧に整流し、出力電圧の定電圧制御を行うことによって、交流分電盤4より出力される交流電力から所望の電圧レベルの直流電力に変換する。DC−DCコンバータ5及びAC−DCコンバータ6の各出力端は並列接続されて直流配電路12と接続され、この直流配電路12には保護回路(図示せず)が設けられる。そして、DC−DCコンバータ5、AC−DCコンバータ6でそれぞれ所望の電圧レベルに変換された直流電力のうち、いずれかの直流電力が直流配電路12を介して直流負荷機器14に供給される。上記DC−DCコンバータ5、AC−DCコンバータ6等の構成要素を含む直流電力を出力する機能部分を直流配電装置として構成することも可能である。直流配電路12の末端には、直流負荷機器14を接続するためのコンセント(図示せず)が設けられる。
【0024】
本実施形態では、パワーコンディショナ3とDC−DCコンバータ5とを並列接続し、両者を同時動作可能とした構成において、DC−DCコンバータ5を動作させる際に、入力電圧が所定の範囲である場合のみ動作させる。
【0025】
まず、本実施形態の配電システムにおけるパワーコンディショナ3の動作について説明する。図2の(a)、(b)はパワーコンディショナ3の動作を説明する図である。
【0026】
パワーコンディショナ3のインバータ制御回路においては、太陽電池1の温度変化や日射強度の変化に伴う出力電圧や出力電流の変動に対して、太陽電池1の動作点が常に最大出力点を追従して太陽電池1の直流出力を最大限とする最大出力追従制御(以下、MPPT制御(maximum power point tracking control))を行っている。このようなMPPT制御については従来周知であるので、詳細な説明は省略する。また、パワーコンディショナ3の系統連系保護装置は、交流電力系統ACの電圧を監視して適正値よりも上昇した場合に、インバータ制御回路に指令を与えてMPPT制御を停止してインバータの出力を低下させることにより、系統電圧の上昇を抑制している。
【0027】
図2(a)の曲線Aは、ある日射条件における太陽電池1の出力特性を示している。出力電力P1はDC−DCコンバータ5から直流配電路12を介して直流負荷機器14に供給される電力(直流需要電力)であって、インバータ制御回路の初期状態の動作点X1が当該直流需要電力P1によって決定される。インバータ制御回路がMPPT制御を開始すると、交流配電路11に供給する交流電力を調整しながら、出力特性(曲線A)のピークと一致する動作点X2に到達して太陽電池1から最大の出力(最大電力P2)を取り出すことができる。このとき、最大電力P2と直流需要電力P1の差分(P2−P1)が交流配電路11を介して交流負荷機器13に供給される。ここで、パワーコンディショナ3の供給電力(P2−P1)が交流負荷機器13の消費電力を下回っているときは、交流電力系統ACから供給される交流電力が交流配電路11を介して交流負荷機器13に供給される。一方、パワーコンディショナ3の供給電力(P2−P1)が交流負荷機器13の消費電力を上回っているときは、パワーコンディショナ3から供給される交流電力(P2−P1)の余剰分が交流電力系統ACに逆潮流される。
【0028】
また、図2(b)に示すように、日射が弱くなって太陽電池1の出力特性が曲線Aから曲線Bに低下し、太陽電池1の出力電力が直流需要電力P1を下回ると、インバータ制御回路が動作を停止する。このとき、直流負荷機器14については動作を停止するか、もしくは別途設けられる補助電源(蓄電池など)から電源が供給される。一方、太陽電池1の出力特性が曲線Aから曲線Bに低下しても太陽電池1の出力電力が直流需要電力P1を上回っている場合、インバータ制御回路が動作点をX2からX3へ移行させて太陽電池1の出力を減少させる。その後、再度、MPPT制御を行うことで出力特性(曲線B)のピークと一致する動作点X4に到達して太陽電池1から最大の出力(最大電力P4)を取り出すことができる。ただし、直流需要電力P1が変動した場合にも、上述した日射量の変動時と同様にしてMPPT制御の再調整によって太陽電池1から最大出力を取り出すことができる。
【0029】
本実施形態の配電システムでは、交流負荷機器13には従来と同様に交流分電盤4を経由して交流電力系統ACから供給される交流電力、またはパワーコンディショナ3から出力される交流電力を配電し、直流負荷機器14にはDC−DCコンバータ5で定電圧化された太陽電池1の直流電力、または交流分電盤4から供給される交流電力をAC−DCコンバータ6で変換した直流電力を配電する。この場合、パワーコンディショナ3から出力される交流電力を直流電力に変換して配電する場合と比較して直流電力を効率よく配電することができる。しかも、パワーコンディショナ3とDC−DCコンバータ5が太陽電池1に対して並列接続されているので、日射量や直流負荷(直流需要電力)の変動に対して直流負荷及び交流負荷への太陽電池1の出力電力の振り分けが自動的に調節される。ここで、DC−DCコンバータ5を介して直流負荷機器14に優先的に直流電力が供給され、その次に、パワーコンディショナ3によって交流負荷機器13に優先的に交流電力が供給され、最後に交流電力系統ACに交流電力が供給される。このように、直流負荷や交流負荷が変動した際でも、太陽電池1から出力される直流電力が自動的に直流負荷機器14、交流負荷機器13、交流電力系統ACに振り分けられ、その結果、電力効率の向上が図れるという利点がある。
【0030】
次に、本実施形態の配電システムにおけるDC−DCコンバータ5の動作について説明する。
【0031】
図3は本実施形態におけるDC−DCコンバータ5の動作制御部の第1構成例を示す図である。第1構成例では、DC−DCコンバータ5の動作制御部として、入力電圧監視回路21と、ON/OFF制御回路22とを備えている。入力電圧監視回路21は、太陽電池1からDC−DCコンバータ5への入力電圧、すなわち太陽電池1の発電により出力される直流電力の出力電圧を検出して監視する。ON/OFF制御回路22は、入力電圧監視回路21の検出結果に基づき、DC−DCコンバータ5に対して制御信号を出力して動作をオンオフする。この際、ON/OFF制御回路22は、DC−DCコンバータ5の入力電圧が所定の範囲である場合に、DC−DCコンバータ5の動作をオンし、所定の範囲を外れた場合はオフするように動作制御を行う。上記の入力電圧監視回路21、ON/OFF制御回路22は、DC−DCコンバータ5の内部に設けてもよいし、外部に設ける構成としてもよい。
【0032】
図4は図3に示した本実施形態の第1構成例の動作制御部によるDC−DCコンバータ5の動作範囲の第1例を示す図である。図4は、太陽電池1の出力電力の電圧と電流との関係、及びDC−DCコンバータ5が動作する電圧範囲を示したものである。太陽電池1は、日射強度の変化に伴い出力電圧及び電流が変化し、日射強度が強いほど高い電圧及び電流が出力される。本実施形態では、太陽電池1から最大限の出力電力が取得可能な高圧側の所定範囲をDC−DCコンバータ5の動作電圧範囲とし、ON/OFF制御回路22によって入力電圧がこの動作電圧範囲にある場合に動作させる。例えば、明け方または夕方など、太陽電池への日射強度が弱い場合は、発電量が少なく、出力電圧が低く不安定なときがある。このように直流発電設備の発電量が少ない状態でDC−DCコンバータ5を動作させると、動作が不安定となり、安定して直流電力を供給できない場合がある。そこで、本実施形態のように入力電圧が所定電圧より高い所定の範囲を動作電圧範囲とすることによって、DC−DCコンバータ5を安定動作させることができ、安定した直流電力の供給が可能となる。また、DC−DCコンバータ5がパワーコンディショナ3の動作を妨げることもない。
【0033】
図5は図3に示した本実施形態の第1構成例の動作制御部によるDC−DCコンバータ5の動作範囲の第2例を示す図である。図5の例では、DC−DCコンバータ5の動作電圧範囲を、パワーコンディショナ3の動作電圧範囲と同じかこれより狭い範囲とし、ON/OFF制御回路22によって入力電圧がこの動作電圧範囲にある場合に動作させる。パワーコンディショナ3が動作している状態であれば、上記のMPPT制御によって、太陽電池1の出力電圧、すなわちDC−DCコンバータ5の入力電圧が安定した状態となるため、DC−DCコンバータ5を安定して動作させることができる。
【0034】
DC−DCコンバータ5の動作は、上記の動作電圧範囲とともに、時間、電圧変動幅によって制御することも可能である。これらの変形例を以下に示す。
【0035】
第1変形例として、ON/OFF制御回路22は、計時を行うタイマを有し、DC−DCコンバータ5の入力電圧が所定の動作電圧範囲に入ってから、所定時間経過後に動作開始させるようにする。これにより、パワーコンディショナ3が動作するのを待ってからDC−DCコンバータ5を動作させることが可能である。また、DC−DCコンバータ5を動作させてから入力電圧が動作電圧範囲の最低動作電圧を下回った場合は直ちに動作を停止し、その後入力電圧が復帰してもしばらくは動作停止させたままとし、所定時間経過後に動作開始させるようにする。この場合、パワーコンディショナ3が安定動作した後でDC−DCコンバータ5が動作開始するので、DC−DCコンバータ5の動作をより安定させることができる。また、パワーコンディショナ3がDC−DCコンバータ5の安定動作を妨げることもない。
【0036】
第2変形例として、ON/OFF制御回路22は、入力電圧監視回路21の検出出力によってDC−DCコンバータ5の入力電圧を監視し、単位時間あたりの入力電圧変化量(例えば入力電圧変動幅)が所定値以下となった場合に動作開始させるようにする。これにより、パワーコンディショナ3の動作を確認してからDC−DCコンバータ5を動作させることが可能である。
【0037】
図6はDC−DCコンバータ5の動作制御に関する入力電圧波形の第1例を示す図である。図6の第1例は、DC−DCコンバータ5の入力電圧が上昇し、入力電圧変動幅が大きい状態からパワーコンディショナ3の動作によって入力電圧変動幅が小さくなる様子を示している。この場合、入力電圧を監視して単位時間あたりの電圧変動幅が所定値以下となったことを判定した時点でDC−DCコンバータ5の動作をオンする。図7はDC−DCコンバータ5の動作制御に関する入力電圧波形の第2例を示す図である。図7の第2例は、DC−DCコンバータ5の入力電圧が上昇する際、パワーコンディショナ3の動作によって入力電圧が一旦上昇した後、徐々に低下して安定する様子を示している。この場合、入力電圧を監視して一旦上昇した後に徐々に低下したことを判定した時点でDC−DCコンバータ5の動作をオンする。
【0038】
このように、DC−DCコンバータ5の入力電圧変動幅が所定値以下となった場合にDC−DCコンバータ5を動作させることで、入力電圧によってパワーコンディショナ3の安定動作を確認した後にDC−DCコンバータ5を動作させることができる。これにより、DC−DCコンバータ5をより安定的に動作させることができる。
【0039】
図8は本実施形態におけるDC−DCコンバータ5の動作制御部の第2構成例を示す図である。第2構成例では、DC−DCコンバータ5の動作制御部として、入力電圧監視回路21と、ON/OFF制御回路22と、停電検出部の機能を有する停電検出回路23とを備えている。停電検出回路23は、交流分電盤4、交流配電路11等の交流電力系統ACからの交流電力の供給路に接続され、交流電力系統ACの停電を検出する。ON/OFF制御回路22は、入力電圧監視回路21の検出結果に基づき、DC−DCコンバータ5の入力電圧が所定の範囲である場合に動作をオンするようDC−DCコンバータ5の動作制御を行う。また、ON/OFF制御回路22は、停電検出回路23の検出結果に基づき、停電時のDC−DCコンバータ5の動作を制御する。停電時のDC−DCコンバータ5の動作制御として、ON/OFF制御回路22は、以下の第1制御例または第2制御例のいずれかを行うものとする。
【0040】
停電時の第1制御例では、停電を検出した場合に、DC−DCコンバータ5の動作電圧範囲を非停電時よりも拡大し、より大きな電圧範囲においてDC−DCコンバータ5を動作させるようにする。停電時はパワーコンディショナ3の動作が停止するので、パワーコンディショナ3の動作と関係なく、より広い範囲でDC−DCコンバータ5を動作させることによって、太陽電池1による発電電力を有効利用することができる。この場合、停電時には太陽電池1からの直流電力を配電し、電力を利用可能である。
【0041】
一方、停電時の第2制御例では、停電を検出した場合に、DC−DCコンバータ5の動作を停止させるようにする。停電時はパワーコンディショナ3の動作が停止するので、DC−DCコンバータ5の安定動作が困難になる場合があるため、動作停止することで不安定な動作を抑止できる。
【0042】
なお、上述した本実施形態の構成及び動作の各例において、DC−DCコンバータ5の動作電圧範囲の設定を変更可能とし、太陽電池1の設置個数(発電量のピーク電圧)によって動作電圧範囲を切り替えることも可能である。この場合、ON/OFF制御回路22においてオンオフ制御するDC−DCコンバータ5の動作電圧範囲を、配電システムの設置工事のときに予め設定する際、太陽電池1の設置個数(太陽電池セルの直列枚数)によって切り替える。これにより、太陽電池1の発電量のピーク電圧に応じて、適切な動作電圧範囲でDC−DCコンバータ5を動作させることが可能になる。
【0043】
次に、本実施形態の配電システムを、太陽電池及び蓄電池を備え交流電力と直流電力を配電可能としたハイブリッド配電システムに適用した応用例の構成を示す。図9は本実施形態の配電システムの応用例を示す図である。
【0044】
この応用例の配電システムは、交流配電路106を介して交流負荷機器に交流電力を配電する交流分電盤104と、直流配電路107を介して直流負荷機器に直流電力を配電する直流配電装置を構成する直流分電盤110とを備えている。交流分電盤104は、入力端に交流電力源である商用電源(交流電力系統)105とパワーコンディショナ103とが接続され、出力端に交流配電路106と直流分電盤110とが接続されている。交流分電盤104は、商用電源105またはパワーコンディショナ103から供給される交流電力を分岐して交流配電路106と直流分電盤110に交流電力を出力する。
【0045】
配電システムの直流電力源としては、太陽光を受光して光電変換することで発電を行い直流電力を出力する太陽電池101と、直流電力の蓄電及び蓄電した直流電力の出力が可能な二次電池により構成される蓄電池102とを備えている。直流分電盤110は、入力端に太陽電池101、蓄電池102、交流分電盤104が接続され、出力端に直流配電路107が接続されている。直流分電盤110は、太陽電池用コンバータ111、蓄電池用コンバータ112、AC−DCコンバータ113、制御部114、表示部115を有して構成される。
【0046】
太陽電池101の出力線路は2つに分岐され、パワーコンディショナ103と直流分電盤110の太陽電池用コンバータ111とが並列接続されている。パワーコンディショナ103は、太陽電池101から出力される直流電力を商用電源105の位相に同期した交流電力に変換して出力するとともに、変換された交流電力を商用電源105に逆潮流する。太陽電池用コンバータ111は、DC−DCコンバータを有して構成され、太陽電池101から出力される直流電力を所望の電圧レベルに変換して出力する。蓄電池用コンバータ112は、DC−DCコンバータを有して構成され、蓄電池102から出力される直流電力を所望の電圧レベルに変換して出力する。AC−DCコンバータ113は、交流分電盤104から供給される交流電力を所望の電圧レベルの直流電力に変換して出力する。
【0047】
制御部114は、マイクロコンピュータ等を有してなる情報処理装置により構成され、直流分電盤110の各部の動作制御を司るものである。制御部114は、太陽電池用コンバータ111、蓄電池用コンバータ112、AC−DCコンバータ113の各コンバータの動作のON/OFF制御、並びに出力電圧制御を行うとともに、表示部115の表示制御を行う。表示部115は、液晶表示装置等により構成され、制御部114の指示に基づき、文字、数字、画像等によって直流分電盤110の動作状態等の各種情報を示す表示を行う。
【0048】
上記のような配電システムにおいても、太陽電池用コンバータ111のDC−DCコンバータに上述した本実施形態の構成を適用することによって、DC−DCコンバータを安定動作させることができ、安定した直流電力の供給が可能となる。
【0049】
なお、上記の実施形態では、直流電力源として太陽電池を有して構成される太陽光発電装置を備える構成を示しているが、これに限るものではなく、燃料電池を有して構成される燃料電池発電装置のような他の直流発電設備などを備える構成であっても、同様に適用可能である。
【0050】
なお、本発明は、本発明の趣旨ならびに範囲を逸脱することなく、明細書の記載、並びに周知の技術に基づいて、当業者が様々な変更、応用することも本発明の予定するところであり、保護を求める範囲に含まれる。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1 太陽電池
2 中継端子箱
3 パワーコンディショナ
4 交流分電盤
5 DC−DCコンバータ
6 AC−DCコンバータ
11 交流配電路
12 直流配電路
13 交流負荷機器
14 直流負荷機器
21 入力電圧監視回路
22 ON/OFF制御回路
23 停電検出回路
101 太陽電池
102 蓄電池
103 パワーコンディショナ
104 交流分電盤
105 商用電源
106 交流配電路
107 直流配電路
110 直流分電盤(直流配電装置)
111 太陽電池用コンバータ
112 蓄電池用コンバータ
113 AC−DCコンバータ
114 制御部
115 表示部
AC 交流電力系統

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電力源と交流電力系統とに接続され、前記直流電力源から出力される直流電力を前記交流電力系統の位相に同期した交流電力に変換して出力するとともに変換された交流電力を前記交流電力系統に逆潮流するパワーコンディショナと、
前記直流電力源から出力される直流電力の電圧レベルを所望の電圧レベルに変換して出力するDC−DCコンバータとを備え、
前記パワーコンディショナと前記DC−DCコンバータとが前記直流電力源に対して並列接続され、これらのパワーコンディショナとDC−DCコンバータとが同時動作可能であり、
前記DC−DCコンバータの入力電圧が所定の範囲である場合のみ当該DC−DCコンバータを動作させるように制御する動作制御部を備える配電システム。
【請求項2】
請求項1に記載の配電システムであって、
前記動作制御部は、前記所定の範囲を、前記パワーコンディショナの動作電圧範囲と同じかまたは狭い範囲とし、この範囲の動作電圧範囲において前記DC−DCコンバータを動作させる配電システム。
【請求項3】
請求項2に記載の配電システムであって、
前記動作制御部は、前記DC−DCコンバータの入力電圧が前記動作電圧範囲に入ってから所定時間後に当該DC−DCコンバータを動作開始させる配電システム。
【請求項4】
請求項1に記載の配電システムであって、
前記動作制御部は、前記DC−DCコンバータにおける単位時間あたりの入力電圧変化量が所定以下となった場合に当該DC−DCコンバータを動作開始させる配電システム。
【請求項5】
請求項1に記載の配電システムであって、
前記交流電力系統の停電を検出する停電検出部を備え、
前記動作制御部は、前記停電検出部により停電が検出された場合に、前記所定の範囲の動作電圧範囲を非停電時よりも拡大して前記DC−DCコンバータを動作させる配電システム。
【請求項6】
請求項1に記載の配電システムであって、
前記交流電力系統の停電を検出する停電検出部を備え、
前記動作制御部は、前記停電検出部により停電が検出された場合に、前記DC−DCコンバータの動作を停止させる配電システム。
【請求項7】
請求項2に記載の配電システムであって、
前記直流電力源として太陽電池を備えており、
前記動作制御部は、前記太陽電池の設置個数によって前記動作電圧範囲の設定を変更する配電システム。
【請求項8】
直流電力源から出力される直流電力の電圧レベルを所望の電圧レベルに変換して出力するDC−DCコンバータを備え、
前記直流電力源に対して、この直流電力源から出力される直流電力を交流電力系統の位相に同期した交流電力に変換して出力するパワーコンディショナとともに並列接続され、前記パワーコンディショナと同時動作可能であり、
前記DC−DCコンバータの入力電圧が所定の範囲である場合のみ当該DC−DCコンバータを動作させるように制御する動作制御部を備える直流配電装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−78215(P2011−78215A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−227423(P2009−227423)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】