説明

配電線の電圧調整装置

【課題】 不要な電圧調整動作を起こさず、高圧配電線の電圧調整を適切かつ容易に実施でき、電圧のアンバランス解消にも貢献する配電線の電圧調整装置を提供する。
【解決手段】 高圧配電線に設置された電圧計測手段からの電圧出力線の途中に監視電圧切換手段を介在させ、前記電圧計測手段からの各相間の線間電圧計測値が当該切換手段により切換可能され、前記いずれかの線間電圧計測値が監視対象として制御装置に入力されるようにしたことを特徴とする配電線の電圧調整装置。前記切換手段としては、2回路2接点スイッチを使用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電線の電圧管理を容易にすることができる配電線の電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線路には、高圧自動電圧調整装置(以下、単にSVRという。)、自動電圧調整用並列コンデンサ装置(以下、単にSSCという。)、静止型無効電力補償装置(以下、単にSVGという。)などの電圧調整装置が配置され、そこでの電圧を規定の電圧範囲に調整することが行われる。これにより、電力需要家における受電端電圧が所定の範囲内に収め、電圧の安定化を図っている。
【0003】
図3は、電圧調整装置の一例としてSVRを例にとり、その構成を模式的に示したものである。この図において、符号8は電圧調整変圧器(以下では、三相調整変圧器と呼ぶ)、10は負荷時タップ切換器、15は制御装置、16は電圧調整継電器、20は計器用変圧器である。計器用変圧器20は、三相調整変圧器8の2次側の配電線に設置され、U相、W相間の線間電圧を計測しており、その2次出力が信号線u2、w2を介して電圧調整継電器16に入力されている。また、符号22の矢印は、タップ切換器10が三相調整変圧器の各タップに対してその切換動作を行うことを示している。このように、SVRは、通常、U相、W相間の線間電圧を計測する計器用変圧器20から計測結果の入力を受けた電圧調整継電器16は、当該計測結果が所定の範囲を外れている場合に負荷時タップ切換器10にタップ切換指令を発する。負荷時タップ切換器10は、当該切換指令に応じて三相相互間の線間電圧を一括して調整するようになっている。このような制御系は、前記の他の電圧調整装置に関しても同様である。
【0004】
ところで、高圧配電線は、その需要端において電灯負荷と動力負荷との共用とされ、単相負荷がアンバランスに接続され、接続されている変圧器のインピーダンスが相違することにより、電圧が平衡しないケースがほとんどであり、通常、電圧についての不平衡の指標としての電圧不平衡率は約1〜3%程度となっている。しかし、前記のように電圧調整装置は、U−W相間の線間電圧のみを電圧監視対象とし、他の相間(U−V相間、V−W相間)の線間電圧の状況を監視せずに電圧調整動作を行うため、電圧不平衡率の低減を図ることができない。
【0005】
また、電圧調整装置は、U−W相間の線間電圧のみを電圧監視対象とし、他の相間(U−V相間、V−W相間)の線間電圧の状況を監視していないことから、当該他の相間の線間電圧では目標電圧と一致しない場合が見受けられる。すなわち、電圧調整装置は、煩瑣な電圧調整動作による当該装置の焼損などを防ぐため,不感帯として1〜2%が設定され、その範囲内では電圧調整動作を行わないようにしているが、不平衡率が約3%程度となると,電圧変動が最大±5%(100V設定にて95〜105Vの範囲で推移)となることが想定され、目標電圧管理に支障がある。監視対象であるU−W相間の線間電圧が他の相間の線間電圧よりも高い場合,後者の線間電圧は目標電圧より最大5%程度低く推移し,監視対象の線間電圧が低い場合には、その他の相間の線間電圧は最大5%程度高く推移することが予想される。しかし、監視相以外の線間電圧を把握できないため,高位側・低位側どちらへ推移するかは,他の測定点で別途測定して確認しなければならず,連携した管理が難しい。
【0006】
また、負荷や静電容量の平衡化をはかるため,配電線を捻架している箇所があり,必ずしも3線のうちの両外側の配電線が同一相でない可能性があるため、複数の電圧調整装置で運用している場合、各電圧調整装置の電圧監視対象の違いから相互に干渉しあい、各電圧調整装置の電圧調整動作が多くなり、当該各電圧調整装置の故障の原因となることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11―273972号公報
【特許文献2】特開2008−236867号公報
【特許文献3】特開2006−48334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記事情に鑑み、不要な電圧調整動作を起こさず、高圧配電線の電圧調整を適切かつ容易に実施でき、電圧のアンバランス解消にも貢献する配電線の電圧調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的は、本発明によれば、高圧配電線に設置された電圧計測手段からの電圧出力線の途中に監視電圧切換手段を介在させ、前記電圧計測手段からの各相間の線間電圧計測値が当該切換手段により切換可能され、前記いずれかの線間電圧計測値が監視対象として制御装置に入力されるようにしたことを特徴とする配電線の電圧調整装置によって達成される。
【0010】
本発明の配電線の電圧調整装置は、前記のように、電圧計測手段25からの各相間の線間電圧を監視電圧切換手段により切換え可能とすることを特徴としている。ここで、監視電圧切換手段としては、2回路2接点スイッチなどが好適に使用できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の自動電圧調整装置は、三相の各相間の線間電圧のいずれかに監視対象を切換できるようにしたので、いずれの線間電圧も監視できるだけでなく、電圧不平衡の状態に基づいて監視対象を変更でき目標電圧の電圧管理が容易になる。また、電圧を下げる方向に機能する自動電圧調整装置の場合は、最も高い線間電圧を監視対象としてこれを目標電圧の上限として制御し、電圧を上昇させる方向に機能する自動電圧調整装置では、最も低い線間電圧を監視対象としてこれを目標電圧の下限として制御ことが可能となり、電圧調整動作回数の低減が図られる。また、配電線路に複数の自動電圧調整装置が設置されている場合、線間電圧の監視対象を切り換えて自動電圧調整装置側で簡易に調整できるため、縁線での接続変更工事の実施などの制約がなくなり、工事の自由度が増し、現状にあった設計が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の電圧調整装置の一実施形態を説明する図である。
【図2】SVRの概略構成(単相分)であり、配電線の電圧調整の概要を説明するための図である。
【図3】従来のSVRの概略構成及び高圧配電線への設置状況を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。図1は、本発明の電圧調整装置としてSVRを例にとり、その概略構成を示している。この図に示すように、SVR10は、三相調整変圧器8、負荷時タップ切換器10、線間電圧計測手段25、監視電圧切換手段26及び制御装置15を備えている。また、図2は、この制御装置15には、通常、線路電圧降下補償器(LDC)や電力方向継電器(67リレー)などが含まれるが、図1では、説明を簡略化するために、電圧調整継電器16のみを図示している。
【0014】
三相調整変圧器8は、タップを備える単巻変圧器2基または3基をV結線又はスター結線して構成されており(不図示)、それぞれの単巻変圧器のタップには負荷時タップ切換器10が接続され、そのタップ切換動作により各単巻変圧器のタップが切り換わるようになっている。三相調整変圧器8および負荷時タップ切換器10は、通常、1つのケース(不図示)内に充填された絶縁油中に浸漬されている。三相調整変圧器8の1次側には、負荷時タップ切換器10を介してU相、V相およびW相からなる電源側の高圧配電線が接続され、2次側にはu相、v相、w相からなる負荷側の高圧配電線が接続されている。なお、図1では、説明の便宜上、負荷時タップ切換器10を三相調整変圧器8及び配電線から切り離して図示している。
【0015】
電圧計測手段25は、負荷側(三相調整変圧器8の2次側)の高圧配電線におけるu相、v相、w相の各相間の線間電圧をそれぞれ計測可能な三相計器用変圧器である。その2次出力は、電圧信号線u2、v2、w2によって監視電圧切換手段26に送られる。なお、三相計器用変圧器25に代え、前記三相調整変圧器8のそれぞれのタップを設けた単巻変圧器において分路巻線の上にさらに巻線を巻き付け、当該制御巻線の2次出力を用いることもできる。
【0016】
監視電圧切換手段26は、自動または手動にて三相計器用変圧器からのu−v、v−w、u−wの各相間の3通りの線間電圧を切り換えてそのうちから1の線間電圧を電圧信号線27を通じて出力する機能を備えている。このような切換手段26としては、2回路2接点スイッチ(ロータリースイッチが具体例として挙げられる。)などが好適に使用できる。
【0017】
図2は、図1に示した実施形態のSVRのより詳細な構成(単相分)を示しており、これにより当該実施形態による配電線の電圧調整についてその概要を説明する。但し、前記した電圧計測手段25および監視電圧切換手段26の図示を省略し、監視電圧切換手段26からの電圧信号線27の途中(入力端子131、132)から図示している。図2のSVR1における調整変圧器11は、タップを備える単巻変圧器である。調整巻線12の各タップは、負荷時タップ切換器10に接続されている。調整変圧器11の1次側には、負荷時タップ切換器10を通して配電線5の電圧V1が入力され、2次側は配電線6に接続されている。
【0018】
制御装置15には、図2に示すように、電圧調整継電器(90リレー)16および線路電圧降下補償装置(LDC)19が含まれる。電圧調整継電器16は、監視電圧を検出し、当該電圧が所定の不感帯の範囲から外れている場合には負荷時タップ切換器10に対してタップ切換指令を出力するものである。
【0019】
また、線路電圧降下補償器(LDC)19は、配電線6の線路インピーダンスの模擬抵抗とリアクタンス(いずれも不図示)とから構成され、電圧調整継電器25に対して直列に接続されている。このLDCは、これに配電線6を流れる電流I2を検出する変流器18の2次出力が入力されており、電流I2の大きさに応じて配電線路における電圧降下分を補償するように機能する。
【0020】
このSVR1では、電圧調整継電器16は、配電線5から配電線6に送電されている場合(電力順送時)に、入力端子131、132および電圧信号線27を介して監視電圧切換手段26の出力電圧V3からLDCの両端に生じる電圧V4を差し引いた電圧V5が目標電圧を中心とする不感帯の範囲に収まっているか否かを検出する。そして、電圧V5がこの範囲から外れている場合には、負荷時タップ切換器10に対してタップ切換指令を発する。負荷時タップ切換器10は、電圧調整継電器16から入力されるタップ切換指令に応じて調整変圧器11のタップを切り換えて、SVR1の二次側の電圧V2を前記目標電圧に保つように調整する。
【0021】
本発明の配電線の電圧調整装置は、以上の構成により、配電線のu−v、v−w、u−wの各相間の線間電圧を切り換えてそのうちの任意の線間電圧を監視対象とすることができるので、各相間の線間電圧を監視できるとともに、電圧不平衡の状態に基づいて監視対象を変更でき目標電圧の電圧管理が容易になる。また、電圧を下げる方向に機能する自動電圧調整装置の場合は、最も高い線間電圧を監視対象としてこれを目標電圧の上限として制御し、電圧を上昇させる方向に機能する自動電圧調整装置では、最も低い線間電圧を監視対象としてこれを目標電圧の下限として制御ことが可能となり、電圧調整動作回数の低減が図られる。また、配電線路に複数の自動電圧調整装置が設置されている場合、線間電圧の監視対象を切り換えて自動電圧調整装置側で簡易に調整できるため、縁線での接続変更工事の実施などの制約がなくなり、工事の自由度が増し、現状にあった設計が可能となる。
【0022】
なお、以上では、本発明の配電線の電圧調整装置の実施形態についてSVRを例にとり説明したが、本発明は、SVRのみに限らず、SSC、SVGなどの自動電圧調整装置にも適用できることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0023】
1 配電線の電圧調整装置
10 負荷時タップ切換器
11 調整変圧器
12 調整巻線
131、132 電圧信号入力端子
15 制御装置
16 電圧調整継電器(90)
17 制御信号線
18 変流器(CT)
19 線路電圧降下補償器
22 タップ切換
25 三相計器用変圧器(線間電圧計測手段)
26 監視電圧切換手段
27 電圧信号線
u1,v1,w1 1次入力線
u2,v2,w2 2次出力線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧配電線に設置された電圧計測手段からの電圧出力線の途中に監視電圧切換手段を介在させ、前記電圧計測手段からの各相間の線間電圧計測値が当該切換手段により切換可能され、前記いずれかの線間電圧計測値が監視対象として制御装置に入力されるようにしたことを特徴とする配電線の電圧調整装置。
【請求項2】
前記切換手段は、2回路2接点スイッチである請求項1に記載の自動電圧調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−80654(P2012−80654A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−222865(P2010−222865)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】