説明

配電装置

【課題】 電気機器の種別に応じてその電気機器への給電状態を任意に制御し得る配電装置を提供する。
【解決手段】 複数個のコンセントA1〜A4を有し、そのコンセントA1〜A4に接続される電気機器に対して給電遮断機能を具備した配電装置であって、コンセントA1〜A4ごとに設定された閾値に基づいて電気機器への給電を遮断する遮断部22をコンセントA1〜A4ごとに設け、遮断部22をコンセントA1〜A4ごとに制御する処理部25は、給電遮断に関するコンセントA1〜A4の優先順位を複数個のコンセントA1〜A4に対して個別に設定変更可能とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のコンセントを有し、各コンセントに接続される電気機器に対して給電遮断機能を具備した配電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般家庭には、配電線が引き込まれた分電盤が設置されている。この種の分電盤は、一般家庭内で各種電気機器が接続される回路ごとにブレーカを内蔵している。この分電盤では、各種電気機器が接続される回路に過電流が流れると、その過電流を検知してブレーカをOFFすることにより回路を開放してその回路に接続された電気機器を保護するようにしている。
【0003】
しかしながら、ブレーカは各種電気機器が接続される回路ごとに設けられているため、一つのブレーカがOFFされると、その回路に接続された全ての電気機器について一斉に給電が遮断されることになる。これら電気機器の中には、電熱器のように給電が一旦遮断されても復電すれば機能上の問題がなく動作することができるものや、炊飯器などの家電機器やパソコンなどの情報機器のように給電が一旦遮断されると復電しても動作することができず機能上の問題が発生するものがある。
【0004】
そのため、複数個のコンセントを有し、各コンセントに接続される電気機器に対して給電遮断機能を具備した配電装置が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種の配電装置では、複数個のコンセントに接続された電気機器のうちから、給電を遮断する電気機器と給電を遮断しない電気機器を選択できるようにしている。
【0005】
この特許文献1に開示された配電装置は、複数の電源供給用ポート(コンセント)のうち所定の電源供給用ポートにおける使用電流値を検出する電流検出手段と、この電流検出手段により検出された使用電流値が閾値を超えた時に他の電源供給用ポートの電源供給を遮断する電流制限手段とを具備したものである。この配電装置では、所定の電源供給用ポートに接続された電気機器の使用電流が電流検出手段により検出され、その使用電流値が閾値を超えた時に、電流制限手段により他の電源供給用ポートの電源供給が遮断されるようになっている。
【0006】
この場合、電流制限手段により電源供給が遮断される電源供給用ポートを選択指定するための選択指定手段を設けることにより、使用者は、選択指定手段により、電源供給が一時的に遮断されても差支えがない電気機器に対しては遮断を許容し、電源供給が遮断されることを望まない電気機器に対しては遮断させずに済ませるようにしている。また、使用電流の閾値を任意に設定するための閾値設定手段を設けることにより、使用者が、使用する電気機器の定格電流等に応じて自在に閾値を設定できるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−303706号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前述した特許文献1に開示された配電装置では、選択指定手段により、電源供給が一時的に遮断されても差支えがない電気機器に対しては遮断を許容し、電源供給が遮断されることを望まない電気機器に対しては遮断させずに済ませるようにしている。
【0009】
しかしながら、近年では、一般家庭などで使用される電気機器が多種に亘ることから、特許文献1における配電装置のように給電の遮断の有無を選択するだけでなく、分電盤のブレーカにより全ての電気機器が一斉に給電遮断される前に、電気機器の種別に応じてその電気機器への給電状態を任意に制御できるようにすることが要望されている。
【0010】
そこで、本発明は前述の要望に鑑みて提案されたもので、その目的とするところは、電気機器の種別に応じてその電気機器への給電状態を任意に制御し得る配電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述の目的を達成するための技術的手段として、本発明は、複数個のコンセントを有し、そのコンセントに接続される電気機器に対して給電遮断機能を具備した配電装置であって、コンセントごとに設定された閾値に基づいて電気機器への給電を遮断する遮断部をコンセントごとに設け、遮断部をコンセントごとに制御する処理部は、給電遮断に関するコンセントの優先順位を複数個のコンセントに対して個別に設定変更可能としたことを特徴とする。
【0012】
本発明では、コンセントごとに設定された閾値に基づいて電気機器への給電を遮断する遮断部をコンセントごとに設け、遮断部をコンセントごとに制御する処理部は、給電遮断に関するコンセントの優先順位を複数個のコンセントに対して個別に設定変更可能としたことにより、多種に亘る電気機器の種別に応じてその電気機器への給電状態を任意に制御することができ、それぞれのコンセントに接続された各電気機器の種別に合致した最適な給電制御を実現することができる。
【0013】
本発明における処理部は、コンセントの閾値を複数個のコンセントに対して個別に設定変更可能とした構成が望ましい。このようにすれば、コンセントの閾値についても、それぞれのコンセントに接続された各電気機器の種別に合致した最適制御を実現することができる。
【0014】
本発明における処理部は、コンセントの閾値に基づいて給電遮断を完了するまでの遮断時間を複数個のコンセントに対して個別に設定変更可能とした構成が望ましい。このようにすれば、コンセントの閾値に基づいて給電遮断を完了するまでの遮断時間についても、それぞれのコンセントに接続された各電気機器の種別に合致した最適制御を実現することができる。
【0015】
本発明における処理部は、給電遮断に関するコンセントの優先順位、および給電遮断を完了するまでの遮断時間を含む情報を外部機器との間で送受信可能とした構成が望ましい。このようにすれば、給電遮断に関するコンセントの優先順位、および給電遮断を完了するまでの遮断時間を含む各種情報に基づいて、他の配電装置を含む外部機器との相互間で、給電遮断の発生状況を把握することが可能となる。
【0016】
本発明における処理部は、コンセント単体の閾値に基づいてコンセントの給電遮断を実行した上で、コンセント全体の閾値に基づいてコンセントの給電遮断をコンセントの優先順位に従って実行するように遮断部を制御する構成が望ましい。このようにすれば、それぞれのコンセントに接続された各電気機器の種別に合致した最適な給電制御を実現することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、コンセントごとに設定された閾値に基づいて電気機器への給電を遮断する遮断部をコンセントごとに設け、遮断部をコンセントごとに制御する処理部は、給電遮断に関するコンセントの優先順位を複数個のコンセントに対して個別に設定変更可能としたことにより、多種に亘る電気機器の種別に応じてその電気機器への給電状態を任意に制御することができ、それぞれのコンセントに接続された各電気機器の種別に合致した最適な給電制御を実現することができる。その結果、使用者は、多種に亘る電気機器をその種別に応じて有効に活用することができてその実用的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る配電装置の実施形態で、配電装置の内部構成の一例を示すブロック図である。
【図2】本発明に係る配電装置の実施形態で、配電装置の外観の一例を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る配電装置の実施形態で、配電装置による給電制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係る配電装置の実施形態について、図1〜図3を参照しながら以下に詳述する。なお、以下の実施形態における配電装置は、一般的にテーブルタップと通称されるものである。
【0020】
図2は、この実施形態における配電装置の外観の一例を示す。この実施形態における配電装置は、樹脂製の筐体11を備え、その筐体11の先端側に位置する円形部12に複数個のコンセントA1〜A4を設けると共に筐体11の基端側に位置する矩形部13から電源コード14を導出した外観を有する。複数個のコンセントA1〜A4は、筐体11の円形部12の天面円周方向に沿って配設されている。各コンセントA1〜A4の内周側には、後述の表示部を構成する発光ダイオード(LED)等のランプB1〜B4が各コンセントA1〜A4に対応させて配設されている。また、電源コード14はその先端にプラグ15が設けられ、一般家庭内の壁面などに設置されたコンセントに接続可能となっている。なお、この電源コード14の長さは必要に応じて選定することができて任意である。
【0021】
図1は、この実施形態における配電装置の内部構成の一例を示す。この実施形態における配電装置は、計測部21、遮断部22および表示部23をコンセントA1〜A4ごとに設け、これら計測部21、遮断部22および表示部23を処理部25で制御する。この処理部25は、前述の計測部21、遮断部22および表示部23の他、タイマー部26および通信部27も制御する。前述の計測部21、遮断部22、表示部23、処理部25、タイマー部26および通信部27は、円形部12および矩形部13からなる筐体11に内蔵されている(図2参照)。
【0022】
この配電装置は、コンセントA1〜A4に接続される電気機器に対して給電遮断機能を具備し、計測部21、遮断部22、表示部23、処理部25、タイマー部26および通信部27は以下の機能を呈する。
【0023】
計測部21は、コンセントA1〜A4に印加される電流および電圧や、コンセントA1〜A4に接続される電気機器の積算電力および瞬時電力を測定する。遮断部22は、計測部21から出力される測定データが、コンセントA1〜A4ごとに設定された閾値以上となった時点で電気機器への給電を遮断する。表示部23は、前述したように筐体11のコンセントA1〜A4の内周側に配されたランプB1〜B4を有し(図2参照)、計測部21から出力される測定データがコンセントA1〜A4の閾値以上となったことをランプB1〜B4の点灯あるいは点滅により警告する。タイマー部26は、時刻を計測する。通信部27は、外部機器との間でデータを送受信する。処理部25は、計測部21、遮断部22、表示部23、タイマー部26および通信部27を所定のアルゴリズムに従って制御する。
【0024】
以上の構成を具備した配電装置では、処理部25により、コンセント単体の閾値に基づいてコンセントA1〜A4の給電遮断を実行した上で、コンセント全体の閾値に基づいてコンセントA1〜A4の給電遮断をコンセントA1〜A4の優先順位に従って実行するように遮断部22を制御する。これにより、それぞれのコンセントA1〜A4に接続された各電気機器の種別に合致した最適な給電制御を実現することができる。
【0025】
図3は、コンセント単体の閾値に基づいてコンセントA1〜A4の給電遮断を実行した上で、コンセント全体の閾値に基づいてコンセントA1〜A4の給電遮断をコンセントA1〜A4の優先順位に従って実行するアルゴリズムを示す。ここで、コンセント単体とは一つのコンセントを意味し、コンセント全体とは全てのコンセントの合計を意味する。
【0026】
まず、コンセント単体の閾値、コンセント全体の閾値、コンセントA1〜A4の優先順位およびコンセントA1〜A4の遮断時間を設定する(STEP1)。各コンセント単体について、電流、電圧、積算電力および瞬時電力を計測部で測定し(STEP2)、コンセント単体の閾値を超過するコンセントA1〜A4があるか否かを処理部25で判断する(STEP3)。コンセント単体の閾値を超過するコンセントA1〜A4がある場合、そのコンセントA1〜A4の表示部23のランプB1〜B4を点灯あるいは点滅させることにより警告する(STEP4)。そのコンセント単体の閾値を超過する時間を計測部21で測定し(STEP5)、その超過時間が予め設定された遮断時間を超えているか否かを処理部25で判定し(STEP6)、遮断時間を超えた場合にそのコンセントA1〜A4を遮断部22により遮断する(STEP7)。
【0027】
ここまでは、配電装置におけるコンセント単体で閾値を超過する場合である。さらに、各コンセント単体の閾値を超過することはないが、配電装置におけるコンセント全体の閾値を超過する場合について以下のアルゴリズムに従って制御する。
【0028】
前述のようにしてコンセント単体の閾値に基づいてコンセントA1〜A4の給電遮断を実行した上で、コンセント全体の電流、電圧、積算電力および瞬時電力を計測部21で測定し(STEP8)、コンセント全体の閾値を超過しているか否かを処理部25で判断する(STEP9)。コンセント全体の閾値が超過している場合、予め設定されたコンセントA1〜A4の優先順位に従ってコンセントA1〜A4を抽出し(STEP10)、コンセントA1〜A4の優先順位に従ってそのコンセントA1〜A4の表示部23のランプB1〜B4を点灯あるいは点滅させることにより警告する(STEP11)。コンセント全体の閾値を超過する時間を計測部21で測定し(STEP12)、その超過時間が予め設定された遮断時間を超えているか否かを処理部25で判定し(STEP13)、遮断時間を超えた場合にコンセントA1〜A4の優先順位に従ってそのコンセントA1〜A4を遮断部22により遮断する(STEP14)。
【0029】
ここで、優先順位の高いコンセントA1〜A4には、電源供給が遮断されることを望まない電気機器が接続されており、優先順位の低いコンセントA1〜A4には、電源供給が一時的に遮断されても差支えがない電気機器が接続されているとした場合、前述のようにコンセント全体の閾値が超過していると、その優先順位の低いコンセントA1〜A4から順に遮断していくことになる。
【0030】
遮断部22をコンセントA1〜A4ごとに制御する処理部25は、給電遮断に関するコンセントA1〜A4の優先順位を複数個のコンセントA1〜A4に対して個別に設定変更可能としている。このように、遮断部22をコンセントA1〜A4ごとに制御する処理部25では、給電遮断に関するコンセントA1〜A4の優先順位を複数個のコンセントA1〜A4に対して個別に設定変更可能としたことにより、多種に亘る電気機器の種別に応じてその電気機器への給電状態を任意に制御することができ、それぞれのコンセントA1〜A4に接続された各電気機器の種別に合致した最適な給電制御を実現することができる。
【0031】
この処理部25は、コンセントA1〜A4の閾値を複数個のコンセントA1〜A4に対して個別に設定変更可能とし、また、そのコンセントA1〜A4の閾値に基づいて給電遮断を完了するまでの遮断時間を複数個のコンセントA1〜A4に対して個別に設定変更可能としている。これにより、コンセントA1〜A4の閾値や、そのコンセントA1〜A4の閾値に基づいて給電遮断を完了するまでの遮断時間についても、それぞれのコンセントA1〜A4に接続された各電気機器の種別に合致した最適制御を実現することができる。
【0032】
この処理部25は、給電遮断に関するコンセントA1〜A4の優先順位、および給電遮断を完了するまでの遮断時間を含む情報を外部機器との間で送受信可能としている。これにより、給電遮断に関するコンセントA1〜A4の優先順位、および給電遮断を完了するまでの遮断時間を含む各種情報に基づいて、他の配電装置を含む外部機器との相互間で、給電遮断の発生状況を把握して保存データを必要に応じて更新することが可能となる。
【0033】
本発明は前述した実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0034】
22 遮断部
25 処理部
1〜A4 コンセント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のコンセントを有し、前記コンセントに接続される電気機器に対して給電遮断機能を具備した配電装置であって、前記コンセントごとに設定された閾値に基づいて前記電気機器への給電を遮断する遮断部を前記コンセントごとに設け、前記遮断部をコンセントごとに制御する処理部は、前記給電遮断に関するコンセントの優先順位を複数個のコンセントに対して個別に設定変更可能としたことを特徴とする配電装置。
【請求項2】
前記処理部は、コンセントの閾値を複数個のコンセントに対して個別に設定変更可能とした請求項1に記載の配電装置。
【請求項3】
前記処理部は、コンセントの閾値に基づいて給電遮断を完了するまでの遮断時間を複数個のコンセントに対して個別に設定変更可能とした請求項1又は2に記載の配電装置。
【請求項4】
前記処理部は、給電遮断に関するコンセントの優先順位、および給電遮断を完了するまでの遮断時間を含む情報を外部機器との間で送受信可能とした請求項1〜3のいずれか一項に記載の配電装置。
【請求項5】
前記処理部は、コンセント単体の閾値に基づいてコンセントの給電遮断を実行した上で、コンセント全体の閾値に基づいてコンセントの給電遮断を前記コンセントの優先順位に従って実行するように前記遮断部を制御する請求項1〜4のいずれか一項に記載の配電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−203991(P2012−203991A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64417(P2011−64417)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成22年度 独立行政法人情報通信研究機構 高度通信・放送研究開発委託研究/情報通信・エネルギー統合技術の研究開発 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000220882)株式会社エネゲート (42)
【Fターム(参考)】