説明

酢酸の製造方法

【課題】活性損失の期間に際し反応器内の酢酸メチルの蓄積を減少させる。
【解決手段】メタノールおよび/またはその反応性誘導体と一酸化炭素とをカルボニル化反応器へ供給することによる酢酸の連続製造方法は、酢酸メチルと水と第VIII族貴金属カルボニル化触媒とハロゲン化ヒドロカルビル助触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤と酢酸とからなる液体反応組成物を維持し、酢酸まで変換されるメタノールおよび/またはその反応性誘導体と一酸化炭素との比を監視すると共に、それに呼応して酢酸メチル濃度が所定値に維持されるようメタノールおよび/またはその反応性誘導体を調整することにより液体反応組成物における酢酸メチル濃度を所定値に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般に酢酸の製造方法、特に第VIII族貴金属触媒およびハロゲン化ヒドロカルビル助触媒の存在下におけるメタノールおよび/またはその反応性誘導体のカルボニル化による酢酸の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
第VIII族貴金属触媒およびハロゲン化ヒドロカルビル助触媒の存在下に、必要に応じ1種もしくはそれ以上の促進剤の存在下にてメタノールおよび/またはその反応性誘導体をカルボニル化することによる酢酸の製造は周知されている。たとえば第VIII族貴金属触媒としてロジウムを用いる方法は、たとえばGB−A−1,233,121号;EP−A−0384652号;およびEP−A−0391680号から公知である。第VIII族貴金属触媒としてイリジウムを用いる方法はたとえばGB−A−1234121号;US−A−3772380号;DE−A−1767150号;EP−A−0616997号;EP−A−0618184号;EP−A−0618183号;およびEP−A−0657386号から公知である。第VIII族貴金属としてロジウムもしくはイリジウムのいずれかを用いる方法は世界中で工業規模にて操作されている。
【0003】
ハワード等、キャタリシス・ツデー、第18巻(1993)、第325〜354頁は、メタノールから酢酸へのロジウムおよびイリジウム触媒によるカルボニル化を記載している。ロジウム触媒による連続均質メタノールカルボニル化法は、3つの基本的セクションで構成されると言われる;すなわち反応、精製およびオフガス処理。反応セクションは、高められた温度および圧力にて操作される反応器とフラッシュ容器とを備える。メタノールと気体一酸化炭素とを反応器へ供給し、ここで酢酸メチルと水とロジウムもしくはイリジウム触媒と沃化メチル助触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤とを含むと共に組成物の残部を酢酸とする液体反応組成物を維持する。液体反応組成物を反応器から抜き取ってフラッシュ弁を介しフラッシュタンクまで移送し、ここで液体反応組成物の軽質成分(沃化メチル、酢酸メチルおよび水)の大部分を生成物酢酸と一緒に気化させる。次いで蒸気フラクションを精製セクションに移送し、この液体フラクション(酢酸中にロジウム触媒を含む)を反応器へ循環させる(ハワード等の図2参照)。精製セクションは第1蒸留カラム(ライトエンドカラム)と第2蒸留カラム(乾燥カラム)と第3蒸留カラム(ヘビーエンドカラム)とで構成されると言われる(ハワード等の図3参照)。ライトエンドカラムにて、沃化メチルと酢酸メチルとを若干の水および酢酸と一緒に頭上から除去する。この蒸気を凝縮させてデカンタ中で2つの相に分離させ、両相を反応器へ戻す。湿潤酢酸をライトエンドカラムから側流として除去すると共に乾燥カラムに供給し、ここで水を頭上から除去すると共に実質的に乾燥した酢酸流を蒸留帯域の底部から除去する。ハワード等の図3から見られるように、乾燥カラムからの頭上水流は反応セクションに循環される。ヘビーエンド副生物をヘビーエンドカラムの底部から除去すると共に、生成物酢酸を側流として採取する。
【0004】
反応器へ供給される一酸化炭素は必ずしも全部がカルボニル化されず、過剰量は反応器から高圧ベントとして排気されると共に精製セクションから低圧ベントとして排気される。これらベントをたとえば酢酸メチルおよび沃化メチルを除去すべく洗浄した後に合して反応器へ戻し、総合排気ガスの一酸化炭素含有量を測定する。次いで装置からの一酸化炭素質量流量を計算する。供給された全一酸化炭素供給量からのこの数値の簡単な引算は、どの程度多量の一酸化炭素がカルボニル化に使用されつつあるかの良好な表示を与える。
【0005】
反応器における活性が急速に或いは長時間にわたり低下したプラント混乱時にて、生ずるモル供給比の不調和は増加量の酢酸メチルが発生することに基づき操作上の問題をもたらすことが判明した。これは、活性が低下するとメタノール供給は同一速度に留まるが、酢酸との接触に際し生成する酢酸メチルが活性低下に基づき一酸化炭素により急速に充分消費されないために生ずる。かくして、酢酸メチルが反応器内に蓄積し、その結果としてデカンタにも蓄積することにより反応器における制御を回復するには大きい供給比カットを必要とすると言う操作上の問題をもたらす。この種の製造混乱は生産損失の点で高価となりうる。操作上の問題をもたらしうる他の環境は、供給問題に基づく一酸化炭素供給カットもしくはロスが存在する点である。この場合、同速度におけるメタノールの連続供給に基づき酢酸メチル蓄積が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】GB−A−1,233,121号
【特許文献2】EP−A−0384652号
【特許文献3】EP−A−0391680号
【特許文献4】GB−A−1234121号
【特許文献5】US−A−3772380号
【特許文献6】DE−A−1767150号
【特許文献7】EP−A−0616997号
【特許文献8】EP−A−0618184号
【特許文献9】EP−A−0618183号
【特許文献10】EP−A−0657386号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】ハワード等、キャタリシス・ツデー、第18巻(1993)、第325〜354頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、反応器内の液体反応組成物における酢酸メチル濃度を制御することにより上記のような反応器内におけるその蓄積から生じうる操作問題を回避することにある。この課題は、酢酸まで変換されるメタノールおよび/またはその反応性誘導体と一酸化炭素との比を監視すると共に、これに呼応してメタノールおよび/またはその反応性誘導体の供給速度を制御することにより解決しうることが突き止められた。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って本発明は、メタノールおよび/またはその反応性誘導体と一酸化炭素とをカルボニル化反応器に供給し、ここで酢酸メチルと水と第VIII族貴金属カルボニル化触媒とハロゲン化ヒドロカルビル助触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤と酢酸とからなる液体反応組成物を維持し、酢酸まで変換されるメタノールおよび/またはその反応性誘導体と一酸化炭素との比を監視すると共に、それに呼応してメタノールおよび/またはその反応性誘導体の供給速度を酢酸メチル濃度が所定値に維持されるよう調整することにより、液体反応組成物における酢酸メチル濃度を所定値に維持することを特徴とする酢酸の連続製造方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】液相カルボニル化反応器へのメタノールおよび一酸化炭素の供給流モニターおよびコントローラの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
酢酸まで変換されつつあるメタノールおよび/またはその反応性誘導体と一酸化炭素との比(以下、レイショ・コントローラ・プロセス値(R)と称する)は次の関係式により規定される:
R=M/(C−O) (I)
[式中、M=メタノールおよび/または反応性誘導体供給流量(モル)、
C=一酸化炭素供給流量(モル)、
O=混合オフガス流における一酸化炭素(モル)]。
【0012】
通常の定常状態操作条件下に、Rの数値は実質的に一単位(unity)に等しくすべきである。たとえば温度の僅かな低下または水含有量の変化により反応器内に活性損失が存在する条件下において、Rの数値は一単位より高く増大するであろう。この増大の程度は、採用すべきメタノール供給速度の調整により応答作用の性質を決定する。
【0013】
便宜上、以下の説明は供給源料としてのメタノールに限るが、これはメタノール誘導体についても同等に適用される。
【0014】
メタノール供給流量は、メタノール・レイショ・コントローラ(好適にはメタノール・フロー・コントローラ)により計算されるRの数値に呼応して制御され、コントローラは(i)Rが所定値(X)より低い場合にはメタノール・レーショ・コントローラがメタノール・フロー・コントローラ値に非制限設定点限界を監視および設定以外には何もせず、(ii)Rが所定値(X)に等しく或いはそれより大である場合にはRの数値を一単位まで回復させるのにMが必要とする数値を決定するようコンピュータ計算を行い、その数値をメタノール・フロー・コントローラにおける設定点上限値までレーショ・コントローラにより書き込み、次いでRの数値が一単位に等しくなるまでメタノール供給流量を減少させることにより呼応するようにし、および(iii)Rが一単位に等しい場合は次の時点のRが所定値を越えて上記サイクルが反復されるまでその監視を再開するよう機能する。
【0015】
レイショ・コントローラ・プロセス値(R)の所定値(X)は任意の所望値、好適には1.05〜1.35、好ましくは1.10〜1.25、より好ましくは1.10〜1.20の範囲、たとえば1.15の数値とすることができる。
【0016】
注目しうるように、メタノーメ・レーショ・コントローラはメタノール供給流量を増大させるよう決して機能せず、反応器内に活性損失が生じた場合のみ流量をカットする。メタノールを反応器へ急速供給することが必要とされる初期プラント始動時に際し、コントローラは作動しないようにすべきである。コントローラが作動しない場合、最大設定点上限値は望ましくはメタノール供給比を抑制しないようメタノール・フロー・コントローラに自動的に書き込まれる。
【0017】
関係式(I)をモル量にて規定したが、必ずしもそうする必要はない。各種のパラメータを所望に応じモル量以外として、たとえば容積もしくは質量として現すこともできる。Xの閾値は比Rの規定の基礎に依存することが当業者には明らかであろう。
【0018】
一酸化炭素供給流量とオフガスにおける一酸化炭素流量とメタノール供給流量とを測定すると共に比Rを決定する際に用いる。好ましくは一酸化炭素供給量を10分間経過平均として測定かつ使用する。
【0019】
カルボニル化反応器にはメタノールおよび/またはその反応性誘導体が供給される。メタノールの適する反応性誘導体は酢酸メチル、ジメチルエーテルおよびハロゲン化メチルを包含し、そのうち沃化メチルが好適である。
【0020】
さらにカルボニル化反応器には一酸化炭素も供給される。一酸化炭素反応体は実質的に純粋とすることができ或いはたとえば二酸化炭素、メタン、窒素、貴ガス、水およびC〜Cからパラフィン系炭化水素のような不活性不純物を含有することもできる。水素を存在させ或いは存在させないことができ、好ましくは存在させない。一酸化炭素の分圧は好適には1〜70barg、好ましくは1〜35barg、より好ましくは1〜15bargの範囲とすることができる。
【0021】
カルボニル化反応器には、酢酸メチルと水と第VIII族貴金属カルボニル化触媒とハロゲン化ヒドロカルビル助触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤と酢酸とからなる液体反応組成物が維持される。
【0022】
必要に応じカルボニル化反応器へ供給される他に、酢酸メチルはエステル化によっても生成される。これは好適には1〜70重量%、好ましくは1〜35重量%、より好ましくは1〜20重量%の量にて液体反応組成物中に存在させることができる。
【0023】
水は、たとえばアルコール反応体と酢酸生成物との間のエステル化反応により、カルボニル化反応器内にてその場で生成しうる。水は、たとえばエステル(たとえば酢酸メチル)のような他の液体反応体と一緒に或いは別途にカルボニル化反応器に導入することができる。水は反応器より抜き取られた反応組成物から分離すると共に、カルボニル化反応組成物における所要濃度を維持すべく調節量にて循環させることができる。液体カルボニル化反応組成物における水の濃度は少なくとも0.1重量%とすることができる。典型的には液体反応組成物の他の成分に応じ、液体カルボニル化反応組成物における水濃度は少なくとも0.1重量%とすることができる。典型的には液体反応組成物における他の成分に応じ、液体カルボニル化反応組成物における水濃度は少なくとも0.1重量%〜30重量%まで、好ましくは15重量%までとすることができ、特に好ましくは水濃度は約2〜8重量%である。
【0024】
カルボニル化触媒に関し第VIII族貴金属のうち、ロジウムおよびイリジウムが好適である。本発明の方法はイリジウム触媒の使用に特に適用しうる。何故なら、より迅速なカルボニル化速度が一般に達成され、それに応じて活性低下を伴う酢酸メチル蓄積の増大が生ずるからである。
【0025】
触媒がロジウムカルボニル化触媒である場合、反応組成物は液体反応組成物に対し可溶性である任意のロジウム含有化合物を含有することができる。これは、カルボニル化反応のための液体反応組成物に溶解し或いは可溶性型まで変換しうる任意適する形態にて液体カルボニル化反応組成物に添加することができる。液体反応組成物に添加しうる適するロジウム含有化合物の例は[Rh(CO)Cl]、[Rh(CO)I]、[Rh(Cod)Cl]、塩化ロジウム(III)、塩化ロジウム(III)三水塩、臭化ロジウム(III)、沃化ロジウム(III)、酢酸ロジウム(III)、ロジウムジカルボニルアセチルアセトン、RhCl(PPhおよびRhCl(CO)(PPhを包含する。
【0026】
触媒組成物がイリジウムカルボニル化触媒である場合にもイリジウム化合物は、液体反応組成物に溶解し或いは可溶性型まで変換しうる任意適する形態にて、カルボニル化反応のための液体カルボニル化反応組成物に添加することができる。
【0027】
好ましくはイリジウムは、液体反応組成物の1種もしくはそれ以上(たとえば水および/または酢酸)に対し可溶性である塩素フリー化合物(たとえば酢酸塩)として使用することができ、従って溶液として反応に添加することができる。液体反応組成物に添加しうるこの種のイリジウム含有化合物の例はIrCl、IrI、IrBr、[Ir(CO)I]、[Ir(CO)Cl]、[Ir(CO)Br]、[Ir(CO)、[Ir(CO)Br、[Ir(CO)、[Ir(CH)I(CO)、Ir(CO)12、IrCl・4HO、IrBr・4HO、Ir(CO)12、イリジウム金属、Ir、IrO、Ir(acac)(CO)、Ir(acac)、酢酸イリジウム、[IrO(OAc)(HO)][OAc]およびヘキサクロルイリジウム酸、H[IrCl]、好ましくはたとえば酢酸塩、蓚酸塩およびアセト酢酸塩のようなイリジウムの塩素フリー錯体を包含する。
【0028】
好ましくは液体反応組成物における触媒の濃度は金属の50〜5000重量ppm、好ましくは100〜2500重量ppmの範囲である。
【0029】
触媒組成物がイリジウムからなる場合、組成物は必要に応じ金属促進剤を含むことができる。金属促進剤は好適にはオスミウム、レニウム、ルテニウム、カドミウム、水銀、亜鉛、ガリウム、インジウムおよびタングステンの1種もしくはそれ以上とすることができる。好ましくは促進剤はルテニウムおよびオスミウムから選択され、特に好ましくはルテニウムである。促進剤は、液体反応組成物に対し可溶性である任意の促進剤金属含有化合物を含むことができる。この促進剤は、液体反応組成物に溶解し或いは可溶性型まで変換しうる任意適する形態にて、液体反応組成物に添加することができる。好ましくは促進剤は、液体反応組成物成分(たとえば水および/または酢酸)の1種もしくはそれ以上に対し可溶性である塩素フリー化合物(たとえば酢酸塩)として使用することができ、従って溶液として反応に添加することができる。
【0030】
促進剤として使用しうる適するルテニウム含有化合物の例は塩化ルテニウム(III)、塩化ルテニウム(III)三水塩、塩化ルテニウム(IV)、臭化ルテニウム(III)、沃化ルテニウム(III)、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、蟻酸ルテニウム(III)、[Ru(CO)、テトラ(アセト)クロルルテニウム(II、III)、酢酸ルテニウム(III)、プロピオン酸ルテニウム(III)、酪酸ルテニウム(III)、ルテニウムペンタカルボニル、トリルテニウムドデカカルボニルおよび混合ルテニウムハロカルボニル、たとえばジクロルトリカルボニルルテニウム(II)ダイマー、ジブロモトリカルボニルルテニウム(II)ダイマー、並びに他の有機ルテニウム錯体、たとえばテトラクロルビス(4−シメン)ジルテニウム(II)、テトラクロルビス(ベンゼン)ジルテニウム(II)、ジクロル(シクロオクタ−1,5−ジエン)ルテニウム(II)ポリマーおよびトリス(アセチルアセトネート)ルテニウム(III)を包含する。
【0031】
共促進剤の供給源として使用しうる適するオスミウム含有化合物の例は塩化オスミウム(III)水和物および無水物、オスミウム金属、四酸化オスミウム、トリオスミウムドデカカルボニル、ペンタクロル−μ−ニトロドジオスミウムおよび混合オスミウムハロカルボニル、たとえばトリカルボニルジクロルオスミウム(II)ダイマーおよび他の有機オスミウム錯体を包含する。
【0032】
共促進剤の供給源として使用しうる適するレニウム含有化合物の例はRe(CO)10、Re(CO)Cl、Re(CO)Br、Re(CO)I、ReCl・xHO、ReCl・yHOおよび[{Re(CO)I}]を包含する。
【0033】
共促進剤の供給源として使用しうる適するカドミウム含有化合物の例はCd(OAc)、CdI、CdBr、CdCl、Cd(OH)およびアセチルアセトン酸カドミウムを包含する。
【0034】
共促進剤の供給源として使用しうる適する水銀含有化合物の例はHg(OAc)、HgI、HgBr、HgCl、HgおよびHgClを包含する。
【0035】
共促進剤の供給源として使用しうる適する亜鉛含有化合物の例はZn(OAc)、Zn(OH)、ZnI、ZnBr、ZnClおよびアセチルアセトン酸亜鉛を包含する。
【0036】
共促進剤の供給源として使用しうる適するガリウム含有化合物の例はアセチルアセトン酸ガリウム、酢酸ガリウム、GaCl、GaBr、GaI、GaClおよびGa(OH)を包含する。
【0037】
共促進剤の供給源として使用しうる適するインジウム含有化合物の例はアセチルアセトン酸インジウム、酢酸インジウム、InCl、InBr、InI、InIおよびIn(OH)を包含する。
【0038】
共促進剤の供給源として使用しうる適するタングステン含有化合物の例はW(CO)、WCl、WCl、WBr、WIもしくはCHIW(CO)および任意のタングステンクロル−、ブロモ−もしくはイオドカルボニル化合物を包含する。
【0039】
好ましくは促進剤含有化合物は、反応を抑制しうるイオン性沃化物をその場で供給または発生する不純物、たとえばアルカリもしくはアルカリ土類金属または他の金属塩などの不純物を含有しない。
【0040】
好ましくは促進剤は、液体反応組成物および/または酢酸回収段階からカルボニル化反応帯域まで循環される任意の液体プロセス流に対する溶解度限界までの有効量にて存在させる。促進剤は好適には液体反応組成物中に0.1:1〜100:1の範囲、好ましくは1:1〜10:1の範囲の各促進剤(存在させる場合):インジウムのモル比にて存在させる。たとえばルテニウムのような促進剤の有利な作用は、規定された任意の酢酸メチル濃度および沃化メチル濃度にて最大カルボニル化速度を与える水濃度で最大となることが判明した。適する促進剤濃度は400〜7000ppmである。
【0041】
カルボニル化触媒としてロジウムを使用する場合、沃化物促進剤の使用が好適である。無機および有機の両沃化物を用いることができる。適する無機沃化物はアルカリ金属およびアルカリ土類金属の沃化物を包含する。好適な金属沃化物は沃化リチウムである。沃化物はそのままで或いは塩として、たとえばカルボン酸塩(たとえば酢酸塩)として添加することができ、これらはカルボニル化条件下で沃化物まで変換しうる。代案として好適には第四アンモニウム、ピリジニウムおよびピコリニウム沃化物から選択される有機沃化物も用いることもできる。
【0042】
液体反応組成物における助触媒としてはハロゲン化ヒドロカルビルが用いられる。ハロゲン化ヒドロカルビルは沃化物もしくは臭化物とすることができ、好ましくは沃化物である。好ましくは助触媒は沃化アルキル、より好ましくは沃化メチルである。液体反応組成物における適する助触媒濃度は1〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%の範囲である。
【0043】
カルボニル化プロセスの全圧力は好適には10〜100bargの範囲である。カルボニル化プロセスを操作する温度は好適には100〜300℃の範囲、好ましくは150〜220℃の範囲である。
【0044】
本発明による方法の利点は、プラントにおける僅かな混乱(たとえば小さい温度変動)が大きい組成問題をもたらさない点である。
【0045】
以下、単に例として図面を参照して本発明を説明する。
【0046】
便宜上、以下の説明は供給源料としてメタノールに限るが、これはメタノール誘導体にも同等に適用される。
【0047】
図面を参照して、カルボニル化反応器(1)にはメタノール反応体(2)のための入口と、一酸化炭素反応体(3)のための入口とを設ける。一酸化炭素入口には、流量表示コントローラ(7)に信号ライン(6)を介して接続された流量モニター(5)を設ける。メタノール入口(2)には流量調節弁(8)を介しメタノールの供給部を設け、流量表示コントローラ(11)を介し信号ライン(10)に接続された流量モニター(9)を有する。
【0048】
有機成分を除去すべく吸収器(図示せず)を通過した後にカルボニル化反応器からのオフガスの流量を測定すべく流量モニター(12)を設ける。オフガス流量モニター(12)を信号ライン(13)を介し流量計算機(14)に接続する。この計算機に信号ライン(15)をも設けて、一酸化炭素供給速度コントローラ(7)からの信号を受信すると共に、メタノール供給速度モニター(9)からの信号を受信する信号ライン(16)を設ける。
【0049】
ロジック・コントローラ(17)には計算機(14)からの信号ライン(18)、(19)および(20)を設ける。
【0050】
使用に際しメタノール供給流量を計算機(14)まで信号ライン(16)を介しモニター(9)により測定してモル流量を計算する。一酸化炭素供給流量およびオフガス流量はそれぞれモニター(5)および(12)並びにそれぞれ信号ライン(15)および(13)を介し計算機(14)まで移送された流量により測定してモル一酸化炭素消費を計算する。次いで計算機(14)は消費された一酸化炭素により割算したメタノール供給流量の比Rを計算すると共に、その結果を信号ライン(20)に沿ってロジック・コントローラ(17)まで移送する。計算機(14)はさらに1および1.15の比Rを与えるのに要する所要のメタノール供給流量をも計算し、これら信号をそれぞれ信号ライン(19)および(18)を介しロジック・コントローラ(17)まで移送する。
【0051】
比Rが所定値X(たとえば1.15)より大であれば、ロジック・コントローラ(17)は信号を信号ライン(21)に沿ってメタノール流量表示コントローラ(11)まで移送して、計算機(14)からライン(19)に沿って受信された比Rを1まで減少させるのに要する数値に設定点上限値を設定する。これら信号は、ロジック・コントローラが信号をメタノール流量表示コントローラまで移送して計算機(14)から信号ライン(20)に沿って受信された1.15のRを与える数値に設定点上限値を設定する際にRの計算値が1もしくはそれ以下に低下するまで維持される。このようにして、カルボニル化反応器へのメタノールの流量は、システムの反応性が減少する際の条件に制限される。
【0052】
さらにロジック・コントローラには、所要に応じシステムを手動で切り離す手段(22)をも設ける。
【符号の説明】
【0053】
1 カルボニル化反応器
2 メタノール反応体
3 一酸化炭素反応体
5 流量モニター
6 信号ライン
7 流量表示コントローラ
8 流量調節弁
9 流量モニター
10 信号ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタノールおよび/またはその反応性誘導体と一酸化炭素とをカルボニル化反応器に供給し、ここで酢酸メチルと水と第VIII族貴金属カルボニル化触媒とハロゲン化ヒドロカルビル助触媒と必要に応じ少なくとも1種の促進剤と酢酸とからなる液体反応組成物を維持し、酢酸まで変換されるメタノールおよび/またはその反応性誘導体と一酸化炭素との比を監視すると共に、それに呼応してメタノールおよび/またはその反応性誘導体の供給速度を酢酸メチル濃度が所定値に維持されるよう調整することにより、液体反応組成物における酢酸メチル濃度を所定値に維持することを特徴とする酢酸の連続製造方法。
【請求項2】
メタノール供給流量を、メタノール・レイショ・コントローラにより次式
R=M/(C−O) (I)
[式中、M=メタノールおよび/または反応性誘導体の供給流量(モル)、
C=一酸化炭素供給流(モル)、
O=総合オフガス流における一酸化炭素(モル)]
により計算されるRの数値に呼応して制御する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
Rが所定値(X)に等しいまたはそれ以上である際に一単位までRの数値を回復すべくMが必要とする数値を決定するようコンピュータ計算を行い、この数値をメタノール・フロー・コントローラにおける設定点上限値までレイショ・コントローラにより書き込み、これがメタノール供給流量をRの数値が一単位に等しくなるまで減少させることにより呼応するようメタノール・フロー・コントローラが機能する請求項2に記載の方法。
【請求項4】
Rが所定値(X)未満となった際、メタノール・レイショ・コントローラがメタノール・フロー・コントローラ値に非制限設定点限界を設定する請求項3に記載の方法。
【請求項5】
Xが1.05〜1.35の範囲である請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
Xが1.10〜1.25の範囲、好ましくは1.10〜1.20の範囲である請求項5に記載の方法。
【請求項7】
メタノールが反応器まで急速供給されることを必要とする始動時に際し、コントローラを作動しないようにすると共に、メタノール供給速度を抑制しないよう最高設定点上限値をメタノール・フロー・コントローラに自動的に書き込む請求項3〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第VIII族貴金属カルボニル化触媒がロジウムもしくはイリジウムである請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
第VIII族貴金属触媒がイリジウムであり、適宜の促進剤をルテニウム、オスミウム、レニウム、カドミウム、水銀、亜鉛、ガリウム、インジウム、タングステンおよびその混合物よりなる群から選択する請求項8に記載の方法。
【請求項10】
酢酸メチルを液体反応組成物中に1〜70重量%の量にて存在させる請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公開番号】特開2010−248272(P2010−248272A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−178899(P2010−178899)
【出願日】平成22年8月9日(2010.8.9)
【分割の表示】特願平11−328732の分割
【原出願日】平成11年11月18日(1999.11.18)
【出願人】(591001798)ビーピー ケミカルズ リミテッド  (66)
【氏名又は名称原語表記】BP CHEMICALS LIMITED
【Fターム(参考)】