説明

酢酸メチル副生成物ストリームを用いるカルボニル化により酢酸、無水酢酸を製造、またはこれらを同時に製造するための統合プロセス

【課題】ポリビニルアルコール又は酢酸ビニルのコポリマーを製造するためのプロセスと酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスとを統合化する方法の提供。
【解決手段】下記段階を含む統合化プロセス。a)酢酸ビニルベースのポリマー又はコポリマーを製造し、b)この酢酸ビニルベースのポリマー又はコポリマーを塩基及びメタノールと接触させて、ビニルアルコール又はコポリマーと酢酸メチル副生物ストリームを形成し、c)この酢酸メチル副生物ストリームを、抽出蒸留からなる精製プロセスにおいて、酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスに供給するのに好適であるように不純物を除去し、次いでd)この精製酢酸メチルストリームを酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスに供給。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ビニルアルコール、若しくは酢酸ビニルベースのポリマーまたはエチレンビニルアルコール/アセテートコポリマーの製造において、酢酸メチルは副生成物として形成する。この酢酸メチルは再利用するために回収するのが望ましい。通常、製造した酢酸メチルは、酢酸メチル、メタノール、酢酸、水、固体及び他の軽質不純物の混合物で汚染されている。本明細書では、使用前にこの酢酸メチルを精製するプロセスを開示する。
【0002】
酢酸メチルは、中でも酢酸、無水酢酸の製造、またはこれらの同時製造など種々の用途で使用することができる。以下の参考文献は、これらの物質の製造に関する予備知識を提供する。
【背景技術】
【0003】
特許文献1は、メタノール、セルロース及び一酸化炭素から酢酸セルロースを製造するための循環的統合プロセスを開示する。
特許文献2は、メタノール、セルロース及び一酸化炭素から酢酸セルロースを製造するための循環的統合プロセスを開示する。
【0004】
特許文献3は、酢酸メチルの酢酸への加水分解を開示する。
特許文献4は、無水酢酸の製造プロセスを開示する。
特許文献5は、Rh触媒を使用するメタノールカルボニル化プロセスを開示する。
【0005】
特許文献6は、Rh触媒を使用するメタノールカルボニル化プロセスを使用する。
特許文献7は、酢酸メチルの精製プロセスを開示する。
特許文献8は、酢酸メチルの加水分解によって酢酸とメタノールとを製造するための反応蒸留プロセス及び装置を開示する。
【0006】
特許文献9は、RhまたはIr触媒を使用したメタノールのカルボニル化による酢酸の製造に関し、前記メタノールの供給材料の少なくとも一部を、酢酸メチル、ジメチルエーテル、無水酢酸及びそれらの混合物からなる群から選択される成分で置き換えている。このプロセス及び他のプロセスから回収された廃水から、少なくとも一種のC1〜C3アルコールとの反応蒸留によりカルボン酸を除去することができる。
【0007】
特許文献10は、酢酸メチル及び/またはジメチルエーテルと、一酸化炭素または一酸化炭素と水素との混合物を使用して、エチリデンジアセテート及び/または無水酢酸を形成することを開示する。
【0008】
特許文献11は、一連のエステル化、カルボニル化及び分離段階において、酢酸の実質的な同時製造を任意に実施する、無水酢酸の製造プロセスを開示する。
特許文献12は、方法の出願であり、酸触媒の存在下においてカルボン酸エステルを加水分解することにより反応生成物の液体を得、次いでこの生成物の液体を分離することによる、カルボン酸とアルコールとの製造法を開示する。カルボン酸エステルは酢酸メチルである。
【0009】
特許文献13は、無水酢酸を形成するための酢酸メチル副生成物と一酸化炭素との鹸化を含むポリビニルアルコールの製造法について開示する(英語の要約のみ)。
特許文献14は、酢酸ビニルの製造であって、メタノール、アセトアルデヒド及び一酸化炭素を、酢酸メチルをプロセスの最初の段階でカルボニル化する循環式統合プロセスで反応させる前記製造法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4234718号明細書
【特許文献2】米国特許第4234719号明細書
【特許文献3】米国特許第4352940号明細書
【特許文献4】米国特許第4544511号明細書
【特許文献5】米国特許第5144068号明細書
【特許文献6】米国特許第5001259号明細書
【特許文献7】米国特許第5206434号明細書
【特許文献8】米国特許第5770770号明細書
【特許文献9】米国特許第5831120号明細書
【特許文献10】欧州特許第108437号明細書
【特許文献11】欧州特許第087870号明細書
【特許文献12】欧州特許第1061063号明細書
【特許文献13】特開昭60-60107号公報
【特許文献14】英国特許第2013184号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】「ポリビニルアルコール開発:Polyvinyl Alcohol Developments」、「ポリ酢酸ビニルのポリビニルアルコールへの加水分解:”Hydrolysis of Polyvinyl Acetate to Polyvinyl Alcohol”」、第3.3.6章、Methyl Acetate Recovery and Acetic Acid Production、Finch,CA 、John Wiley &Sons、71〜73頁(1992年)
【非特許文献2】「酢酸の製造法:Process for the Manufacture of Acetic Acid」、Jones、Jane H.、The Cativa、Platinum Metals Review、44巻、2000年7月、第3号、95〜105頁 ポリビニルアルコールは、酢酸ビニルと、ラジカル開始剤及びメタノールとの反応によりポリ酢酸ビニルを製造することにより商業的に製造する。次いでこのポリ酢酸ビニルを塩基の存在下でメタノールと反応させて、ポリビニルアルコールと酢酸メチルとを製造する。この反応の副生成物は酢酸メチルである。この生成した酢酸メチルは通常、酢酸メチル、メタノール(上記反応での過剰の反応体)、軽質有機不純物、並びにおそらくポリマー固体と水とを含む蒸気中に一緒に混ざっている。
【0012】
この酢酸メチルは通常、加水分解により酢酸に転換される。次いで、この酢酸は販売されるか、酢酸ビニル製造にリサイクルすることができる。
上記の如く蒸気に含まれた酢酸メチルを加水分解するためのプロセスは、腐食性の環境により高価な建設材料が必要で且つ複合的な蒸留/分離段階が必要であるため、設備及びエネルギー(操作コスト)条件により費用がかかる。
【0013】
酢酸の製造(若しくは無水酢酸の製造または酢酸及び無水酢酸を同時製造)のカルボニル化プロセスに酢酸メチルストリームを直接送ることができるプロセスは、加水分解のための装置及びエネルギー条件の必要性を省略できるだろう。しかしながら、この酢酸メチルストリームは、カルボニル化プロセスに直接供給するのに好適ではない。当技術分野ではおおむね、不純物を含んだ酢酸メチルの問題と、循環式統合プロセスにリサイクルする前に精製する必要性については取り上げられていない。この酢酸メチルはそれ自体、不純物の除去も処理もせずにカルボニル化装置への供給材料とするには不適当である。除去しない場合には、この酢酸メチル不純物は下流での使用の際に問題を引き起こす。ポリマー固体はカルボニル化プロセスを汚染するため、このコポリマー固体は除去しなければならない。含水量は製造される製品に好適なように調節しなければならない。たとえば、酢酸をカルボニル化により製造する場合には、酢酸メチル単位当たり水最大1分子単位(molecular unit)が反応器に入る。それ以外の場合には乾燥酢酸はできない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、ビニルアルコール若しくはエチレンビニルアルコールベースのまたは酢酸ビニルベースのポリマー若しくはコポリマーのプロセス、たとえばポリビニルアルコール製造とカルボニル化プロセスとを統合して、ポリビニルアルコール製造などの第一のプロセスで製造した酢酸メチルを、エネルギーコストを大幅に削減して販売し易い製品に転換させるか、あるいは酢酸、無水酢酸の製造またはそれらの同時製造で使用するために反応系に供給できることに関する。
【0015】
あるいは、本発明は、前記反応におけるポリビニルアルコールプロセスで副生成物として産生した酢酸メチルを使用して、酢酸、無水酢酸またはこれらを同時製造することに関する。例に挙げた統合プロセスは、酢酸の製造を含み、これを使用して酢酸ビニルを製造する。この製造した酢酸ビニルはポリビニルアルコールを製造するための反応で使用できる。この酢酸メチル副生成物を精製し、酢酸、無水酢酸の製造またはこれらの同時製造に直接供給できる。従って、本プロセスは、中間反応で形成した副生成物の使用を含む、酢酸製造からポリビニルアルコール製造までを統合する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本プロセスを統合するために、酢酸メチルには好適な精製段階が必要である。ポリビニルアルコールポリマープロセスからのストリームを回収し、メタノールのカルボニル化による酢酸製造プロセスへ供給するために精製するプロセスが示されてきた。たとえば、酢酸メチル、メタノール、水、軽質不純物及びポリマー固体を含むストリームは、分離/蒸留によって精製した。水性ストリーム中の有機物の損失を低レベルに保持しつつ、過剰の水とポリマー固体とを除去した。上記列記成分のサブセットを含む他の水性/有機ストリームも精製/処理することができた。この精製段階の生成物は、通常、メタノール、酢酸メチル、許容レベルの不純物と、本質的にポリマー固体のない、十分に低い量の水とを含むストリームである。この不純物またはその量、並びにその水分濃度は、所望の用途及び使用する装置により変動することができる。通常、酢酸の製造用のメタノールカルボニル化装置で使用すべき酢酸メチルに関しては、そのストリーム中に、酢酸メチル1分子単位当たり水最大約1分子単位含むことが推奨される。
【0017】
本発明は、ポリビニルアルコールから酢酸を製造することに関して特別に記載するが、当業者は無水酢酸の製造または酢酸と無水酢酸の同時製造は、形成した酢酸メチルから生産し得ることも理解できよう。酢酸、無水酢酸またはこれらの同時製造は、当業界で公知の種々の方法により製造することができる。本発明は、酢酸の製造または酢酸と無水酢酸の同時製造法に関するものではなく、精製または処理済み酢酸メチルを利用できる統合プロセスに関する。
【0018】
酸、酸無水物またはこれらの同時製造を、ロジウムまたはイリジウムを触媒として使用する、メタノールのカルボニル化方法により行うとき、酢酸メチル中の水と不純物レベルが重要問題である。このカルボニル化反応器中のメタノール及び/または反応性誘導体のメタン化による水の生成速度が比較的早く、カルボニル化反応器中の水ガスシフト反応による水の消費速度よりも大きいことがあり得るからである。このメタノリシスは、以下のように示すことができる:
【0019】
【化1】

【0020】
水ガスシフト反応は、以下のように示すことができる:
【0021】
【化2】

【0022】
水は、反応系へ直接または間接的に進入することによって、酢酸若しくは無水酢酸の連続製造またはその同時製造で蓄積するのかもしれない。カルボニル化プロセスで過剰の水を除去することまたは水の平衡を制御することは、多くの文献における課題である。しかしながら、水除去での問題は、ヨウ化メチルなどの成分を同時に除去することである。このヨウ化メチルは反応にリサイクルまたは廃棄することができる。廃棄する場合には、環境問題のためきちんと廃棄しなければならない。本プロセスで使用した酢酸メチルが最小量の水を含むのが望ましい。カルボニル化装置で酢酸を製造するときに、酢酸メチル含有量に対して化学量論比未満の水が存在することが重要である。無水酢酸を製造する場合には、水もメタノールも存在しないのが望ましい。酢酸を製造する間のメタノールに関しては、メタノール濃度は水の濃度ほど大きな問題ではない。
【0023】
ビニル-若しくはエチレン-アルコールまたは酢酸ビニルベースのプロセス由来の酢酸メチルを使用することに関するさらなる問題は、そのストリーム中のカルボニル含有量である。カルボニル不純物としては、アセトアルデヒド、アセトン、メチルエチルケトン、ブチルアルデヒド、クロトンアルデヒド、2-エチルクロトンアルデヒド、及び2-エチルブチルアルデヒド等並びに不飽和アルデヒド類が挙げられる。酢酸メチルストリームで考慮すべき追加の不純物としては、トルエン、ベンゼン、アセトン、ジメチルアセタール、3-メチル-2-ペンタノン、プロピオン酸、酢酸エチル及びエタノールが挙げられる。
【0024】
本発明の態様は、メタノールカルボニル化プロセスで酢酸メチルストリームを使用するためのプロセスであって、
a)酢酸ビニルベースのポリマーまたはコポリマーを製造して、これを加水分解するか、あるいは;
b)ビニルアルコールのポリマーまたはコポリマーを製造してこれを続いてメタノリシスにかけ;
c)この酢酸メチル副生成物を形成し;
d)この酢酸メチルを精製プロセスへ方向付け;
e)この精製した酢酸メチルをメタノールカルボニル化プロセスへ方向付ける、各段階を含む前記プロセスを含む。
【0025】
上記態様は、アルケン、特にコモノマーとしてエチレンを使用して実施することもできる。
形成した酢酸メチル副生成物は、メタノール、酢酸、水、軽質有機不純物と数種のポリマー固体との混合物であってもよい。酢酸メチルを精製する方法としては、蒸留、抽出、濾過または結晶化による水、不純物と固体の分離が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
本発明のもう一つの態様は、酢酸メチルを使用するためのプロセスであって、
a)酢酸を製造し;
b)この酢酸と反応体とを、酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
c)この酢酸ビニルをポリ酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
d)このポリ酢酸ビニルと塩基及びメタノールとを、ポリビニルアルコールと副生成物として酢酸メチルとが形成するのに十分な条件下で接触させ;
e)不純物の少なくとも幾らかを除去するのに十分なようにこの酢酸メチルを処理し;
f)この酢酸メチルを酢酸製造プロセスへ方向付ける、各段階を含む前記プロセスを含む。
【0027】
本発明のさらにもう一つの態様は、酢酸メチルを使用するためのプロセスであって、
a)無水酢酸を製造し;
b)この無水酢酸と反応体とを、酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
c)この酢酸ビニルをポリ酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
d)このポリ酢酸ビニルと塩基及びメタノールとを、ポリビニルアルコールと副生成物として酢酸メチルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
e)不純物の少なくとも幾らかを除去するのに十分なようにこの酢酸メチルを処理し;
f)この酢酸メチルを無水酢酸製造プロセスへ方向付ける、各段階を含む前記プロセスを含む。
【0028】
本発明のもう一つの態様は、酢酸メチルを使用するためのプロセスであって、
a)酢酸と無水酢酸とを同時製造し;
b)この酢酸及び無水酢酸と反応体とを、酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
c)この酢酸ビニルをポリ酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
d)このポリ酢酸ビニルと塩基及びメタノールとを、ポリビニルアルコールと副生成物として酢酸メチルとが形成するのに十分な条件下で接触させ;
e)不純物の少なくとも幾らかを除去するのに十分なようにこの酢酸メチルを処理し;
f)この酢酸メチルを酢酸及び無水酢酸を製造するための同時製造プロセスへ方向付ける、各段階を含む前記プロセスを含む。
【0029】
ポリビニルアルコール(PVOH)の製造において、形成した酢酸メチルは、最終的には精製し且つ、酢酸の製造用にメタノールカルボニル化反応器に供給する母液とみなされる。この粗な酢酸メチル混合物は、軽質有機成分、ポリマー固体及び水などの不純物を除去するための精製用の母液カラムへ方向付けられる。このカラムは高温で操作し、次いで加熱して、精製形で塔頂ストリーム中の酢酸メチルの本質的に全てと、不純物を含んだ酢酸メチル粗混合物由来の95%を超えるメタノールとを除去する。このカラムの還流を調節して、カラム頭頂部中の酢酸メチル1モルにつき水約1モルを維持する。通常、このポリマー固体は、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコールと酢酸ナトリウムとからなり、残渣としてカラム母液底部から出る。
【0030】
高圧でこの母液カラムを操作することによって、頭頂部成分または塔頂部は、ポリビニルアルコールプラントの他の回収カラム用の熱源として使用することができる。約55psigで操作すると、この塔で使用するエネルギーの50%以上を回収できる。他のストリームもさらに分離のために母液カラムに送ることができる。たとえば、PVOHプロセスでよく使用される、水と、酢酸ビニル及びメタノールの抽出蒸留由来のメタノールとを含むストリームも、分離用にこの母液カラムに送ることができる。
【0031】
提案したこの母液カラムを使用すると、メタノールと水とを分離するためのカラムをPVOHプロセスに保持することができよう。抽出蒸留からのストリームは、メタノール水カラム、または母液カラムへ向けることができる。この母液カラム、または抽出蒸留を、供給材料中のメタノールの一部または全てが水及び固体と一緒にカラム底部を出るような形態で操作する。カラム底部または残渣はメタノール水カラムに進める。この母液カラム塔頂ストリームを輸送するコストが大きい場合には、この操作形態によって全体のプラントコストを最適に利用する方法を見つけることができよう。
【実施例】
【0032】
実施例1
PVOHプロセス由来のストリームを使用して、蒸留を実施した。実験室では、40段のオールダーショーカラムを高圧及び高温で使用した。0.24重量%の固体を含む母液ストリームをカラムの中間点付近に供給し、0.13重量%の固体を含む水性メタノールストリームを基部から約三分の一の所でカラムに供給した。常圧蒸留で、頭頂部及び基部の温度はそれぞれ68℃と100℃であった。母液供給材料速度は13.7g/分であり、水性メタノール供給材料速度は11.5g/分であった。還流比は約0.23に保持した。蒸留の間、リボイラでの発泡も汚染化問題も見られなかった。15段付近〜基部で濃茶色/黒色の着色または汚染が見られた。しかしながら、この軽微な汚染はオールダーショーカラムの小さな段の穴も降水管も閉塞させなかった。母液供給材料より上の段は汚れていなかった。
【0033】
供給材料、頭頂部メタノール/酢酸メチル生成物及び廃棄水残渣の分析を以下の表1に示す。
精製した酢酸メチルは、メタノールのカルボニル化による酢酸の製造で使用した。酢酸は、異常な不純物も不純物プロフィールも示さなかった。
【0034】
【表1】

【0035】
この実施例は、メタノール/酢酸メチルストリームを、廃棄水中に1000ppm未満のメタノールと2600ppm未満のアルカン類で、低還流比で精製できたことを示している。
実施例2
実施例1のメタノール/酢酸メチル生成物を以下の様にして実験用カルボニル化装置に供給した。実施例1からの材料をメタノールカルボニル化実験装置に供給する前に、この実験装置を195℃で、1100ppmのRh、2.2重量%のMeOAc、2.2重重量%のH2O、6.5重量%のMeIで純粋なメタノール供給材料を使用して定常状態にした。得られた空間時間収率(space time yield)は20モル/L/時間であった。反応条件は一定に保持し、実施例1由来の流出物をMeOHの代わりに実験装置への供給材料とした。この供給材料中の水の総量が供給材料中の酢酸メチルの総量と等モルであるように、水を実験装置に添加した。これらの条件を3日間保持した。反応速度は20モル/L/時間のまま変わらなかった。この実験装置からの酢酸生成物の組成は、以下の表に列記した。この生成物中のプロピオン酸(HOPr)の濃度は、実施例1からの材料を供給した後に増加した。
【0036】
【表2】

【0037】
本発明の主たる特徴及び態様は以下の通りである。
1. メタノールカルボニル化プロセスで酢酸メチルストリームを使用するためのプロセスであって、
a)酢酸ビニルベースのポリマーまたはコポリマーを製造して、これを加水分解し;
b)酢酸メチル副生成物を形成し;
c)この酢酸メチルを精製プロセスへ方向付け;次いで
d)精製した酢酸メチルをメタノールカルボニル化プロセスへ方向付ける、各段階を含む
前記プロセス。
2. メタノールカルボニル化プロセスで酢酸メチルストリームを使用するためのプロセスであって、
a)ビニルアルコールのポリマーまたはコポリマーを製造し、続いてこれをメタノリシス反応にかけ;
b)酢酸メチル副生成物を形成し;
c)この酢酸メチルを精製プロセスへ方向付け;
この精製した酢酸メチルをメタノールカルボニル化プロセスへ方向付ける、各段階を含む前記プロセス。
3. 酢酸メチルを使用するためのプロセスであって、
a)酢酸を製造し;
b)前記酢酸と反応体とを、酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
c)この酢酸ビニルをポリ酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
d)このポリ酢酸ビニルと、塩基及びメタノールとを、ポリビニルアルコールと副生成物として酢酸メチルとが形成するのに十分な条件下で接触させ;
e)不純物を少なくとも幾らか除去するのに十分なようにこの酢酸メチルを処理し;
f)この酢酸メチルを酢酸製造プロセスへ方向付ける、各段階を含む前記プロセス。
4. 酢酸メチルを使用するためのプロセスであって、
a)無水酢酸を製造し;
b)この無水酢酸と反応体とを酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
c)この酢酸ビニルをポリ酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
d)このポリ酢酸ビニルと、塩基及びメタノールとを、ポリビニルアルコールと副生成物として酢酸メチルとが形成するのに十分な条件下で接触させ;
e)不純物を少なくとも幾らか除去するのに十分なようにこの酢酸メチルを処理し;
f)この酢酸メチルを無水酢酸精製プロセスへ方向付ける、各段階を含む前記プロセス。
5. 酢酸メチルを使用するためのプロセスであって、
a)酢酸と無水酢酸とを同時に製造し;
b)この酢酸及び無水酢酸と反応体とを酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
c)この酢酸ビニルをポリ酢酸ビニルが形成するのに十分な条件下で接触させ;
d)このポリ酢酸ビニルと、塩基及びメタノールとを、ポリビニルアルコールと副生成物として酢酸メチルとが形成するのに十分な条件下で接触させ;
e)不純物を少なくとも幾らか除去するのに十分なようにこの酢酸メチルを処理し;
f)この酢酸メチルを、酢酸及び無水酢酸を製造するための同時製造プロセスへ方向付ける、各段階を含む前記プロセス。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコールまたは酢酸ビニルのコポリマーを製造するためのプロセスと酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスとを統合する方法であって、
a)酢酸ビニルベースのポリマーまたはコポリマーを製造し;
b)この酢酸ビニルベースのポリマーまたはコポリマーを塩基及びメタノールと接触させて、ビニルアルコールのポリマーまたはコポリマーと酢酸メチル副生成物ストリームとを形成し;
c)この酢酸メチル副生成物ストリームを、抽出蒸留からなる精製プロセスへ方向付けて、精製酢酸メチルストリームを形成し、ここで、前記精製段階では、その精製酢酸メチルストリームを、酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスに供給するのに好適であるように、前記酢酸メチル副生成物ストリームから不純物を除去し;次いで
d)この精製酢酸メチルストリームを、酢酸を製造するためのメタノールカルボニル化プロセスへ方向付ける、
各段階を含む前記方法。
【請求項2】
前記酢酸メチル副生成物ストリームが、酢酸メチル、メタノール、軽質有機物、ポリマー固体及び水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記精製酢酸メチルストリームが酢酸メチル、メタノール及び水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記精製酢酸メチルストリームが酢酸メチルと水とを含み、前記精製酢酸メチルストリーム中の水の濃度は、酢酸メチルと等モル比以下に制限されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記抽出蒸留は、精製酢酸メチルストリーム中の酢酸メチル1モル当たり水1モルを維持するように操作する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
ポリビニルアルコールまたは酢酸ビニルコポリマーを製造するためのプロセスと酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスとを統合する方法であって、
a)ビニルアルコールポリマーまたはビニルアルコールコポリマーを提供し;
b)このビニルアルコールポリマーまたはビニルアルコールコポリマーでメタノリシス反応を実施して、酢酸メチル副生成物ストリームを形成し;
c)この酢酸メチル副生成物ストリームを、抽出蒸留からなる精製プロセスへ方向付けて、精製酢酸メチルストリームを形成し、ここで、前記精製段階では、その精製酢酸メチルストリームを、酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスに供給するのに好適であるように、前記酢酸メチル副生成物ストリームから不純物を除去し;次いで;
d)この精製酢酸メチルストリームを、酢酸を製造するためのメタノールカルボニル化プロセスに方向付ける、
各段階を含む前記方法。
【請求項7】
前記酢酸メチル副生成物ストリームが酢酸メチル、メタノール、軽質有機物、ポリマー固体及び水を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記精製酢酸メチルストリームが酢酸メチル、メタノール及び水を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記精製酢酸メチルストリームが酢酸メチル及び水を含み、前記精製酢酸メチルストリーム中の水の濃度は、酢酸メチルと等モル比以下に制限されている、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記抽出蒸留は、精製酢酸メチルストリーム中の酢酸メチル1モル当たり水1モルを維持するように操作する、請求項6に記載の方法。
【請求項11】
ポリビニルアルコールまたはアルケンビニルコポリマーを製造するためのプロセスと酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスとを統合する方法であって、
a)酢酸を製造し;
b)この酢酸と反応体とを接触させて、酢酸ビニルを形成し;
c)この酢酸ビニルと反応体とを接触させて、ポリ酢酸ビニルまたは酢酸アルケンビニルコポリマーを形成し;
d)前記ポリ酢酸ビニルまたは酢酸アルケンビニルコポリマーと、塩基及びメタノールとを接触させて、ポリビニルアルコールまたはアルケンビニルアルコールコポリマーと酢酸メチル副生成物ストリームとを形成し;
e)この酢酸メチル副生成物ストリームを抽出蒸留からなるプロセスによって精製して酢酸メチルストリームを形成し、ここで前記精製段階では、その酢酸メチルストリームを、酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスに供給するのに好適であるように得られた酢酸メチルストリームから不純物を除去し;次いで
f)この酢酸メチルストリームを、酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスへ方向付ける、
各段階を含む前記方法。
【請求項12】
前記酢酸メチル副生成物ストリームが、酢酸メチル、メタノール、軽質有機物、ポリマー固体及び水を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記酢酸メチルストリームが酢酸メチル、メタノール及び水を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記酢酸メチルストリームが酢酸メチル及び水を含み、酢酸メチルストリーム中の水の濃度は、酢酸メチルと等モル比以下に制限されている、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記抽出蒸留は、酢酸メチルストリーム中の酢酸メチル1モル当たり水1モルを維持するように操作する、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールベースのポリマー若しくはコポリマーまたは酢酸ビニルベースのポリマー若しくはコポリマーを製造するためのプロセスと無水酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスとを統合する方法であって、
a)無水酢酸を製造し;
b)この無水酢酸と反応体とを接触させて、酢酸ビニルを形成し;
c)この酢酸ビニルと反応体とを接触させて、ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコールベースのポリマー若しくはコポリマーまたは酢酸ビニルベースのポリマー若しくはコポリマーを形成し;
d)前記ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコールベースのポリマー若しくはコポリマーまたは酢酸ビニルベースのポリマー若しくはコポリマーと塩基及びメタノールとを接触させて、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールベースのポリマー若しくはコポリマーまたは酢酸ビニルベースのポリマー若しくはコポリマーと酢酸メチル副生成物ストリームとを形成し;
e)この酢酸メチル副生成物ストリームを抽出蒸留からなるプロセスによって精製して酢酸メチルストリームを形成し、ここで前記精製段階では、その酢酸メチルストリームを、無水酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスに供給するのに好適であるように、得られた酢酸メチルストリームから不純物を除去し;次いで
f)この酢酸メチルストリームを無水酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスへ方向付ける、
各段階を含む前記方法。
【請求項17】
前記酢酸メチル副生成物ストリームが、酢酸メチル、メタノール、軽質有機物、ポリマー固体及び水を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記酢酸メチルストリームが、酢酸メチルを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールベースのポリマー若しくはコポリマーまたは酢酸ビニルベースのポリマー若しくはコポリマーを製造するためのプロセスと酢酸及び無水酢酸を製造するためのカルボニル化プロセスとを統合する方法であって、
a)酢酸と無水酢酸とを同時製造し;
b)この酢酸と無水酢酸の一方または両方と反応体とを接触させて、酢酸ビニルを形成し;
c)この酢酸ビニルと反応体とを接触させて、ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコールベースのポリマー若しくはコポリマーまたは酢酸ビニルベースのポリマー若しくはコポリマーを形成し;
d)前記ポリ酢酸ビニル、エチレンビニルアルコールベースのポリマー若しくはコポリマーまたは酢酸ビニルベースのポリマー若しくはコポリマーと塩基及びメタノールとを接触させて、ポリビニルアルコール、エチレンビニルアルコールベースのポリマー若しくはコポリマーまたは酢酸ビニルベースのポリマー若しくはコポリマーと酢酸メチル副生成物ストリームとを形成し;
e)この酢酸メチル副生成物ストリームを抽出蒸留からなるプロセスによって精製して酢酸メチルストリームを形成し、ここで前記精製段階では、その酢酸メチルストリームを酢酸及び無水酢酸の同時製造プロセスに供給するのに好適であるように得られた酢酸メチルストリームから不純物を除去し;次いで
f)この酢酸メチルストリームを酢酸及び無水酢酸を製造するためのカルボニル化同時製造プロセスへ方向付ける、
各段階を含む前記方法。
【請求項20】
前記酢酸メチル副生成物ストリームが、酢酸メチル、メタノール、軽質有機物、ポリマー固体及び水を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記酢酸メチルストリームが、酢酸メチル、メタノール及び水を含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記酢酸メチルストリームが、酢酸メチルからなる、請求項19に記載の方法。

【公開番号】特開2010−132667(P2010−132667A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−256(P2010−256)
【出願日】平成22年1月4日(2010.1.4)
【分割の表示】特願2003−559967(P2003−559967)の分割
【原出願日】平成15年1月7日(2003.1.7)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】