説明

酵素機能電極、バイオセンサ、及び燃料電池

【課題】安定して高電位を維持することができる酵素機能電極、その酵素電極を利用したバイオセンサ及び燃料電池を提供すること。
【解決手段】酵素機能電極1は、電極11と、特定の基質9を酸化する酵素3と、を備え、前記基質9から前記酵素3を介して前記電極11に電子が伝達されるものであって、前記酵素3は、PQQを補酵素とする膜結合型アルコール脱水素酵素typeIIIであり、且つ、チトクロームCを含むサブユニットIIを含まず、サブユニットI(5)およびサブユニットIII(7)から構成されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアルコール等の特定の基質から電子を引き抜く脱水素酵素の特性を利用する酵素機能電極、該酵素機能電極を利用して上記基質濃度を測定するバイオセンサ、及び上記基質を燃料として発電する燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
酵素機能電極は、例えばアルコール、グルコース等の特定の基質(標的物質)を検知するセンサとして利用されており、特に、それら標的物質以外の成分の影響を受け難い利点を有するバイオセンサが各分野で広く利用されている。こうしたバイオセンサとしては、例えば、インシュリン療法で血中のグルコース濃度を制御している糖尿病患者に必要とされる血糖値センサ、疲労度の測定に必要とされる乳酸センサ、ワインなどのアルコール飲料や食料品の品質をモニタリングするために用いられるアルコールセンサなどが知られている。
【0003】
また、やはり酵素機能電極を利用して、例えばグルコースやエタノールなどの基質を燃料として発電するバイオ電池(例えば体内埋め込み型の電池や、環境負荷の少ない電池等)が近年着目されている。こうしたバイオ電池は、化学エネルギーを直接電気エネルギーに変換する燃料電池の一種であり、
・白金等の貴金属を触媒に用いる必要がない。
・燃料のクロスオーバーによるエネルギー損失が発生しない。
・一酸化炭素等による触媒被毒が発生しない。
・室温稼動など動作条件が穏やかである。
といった多くの利点を有している。
【0004】
このようなバイオセンサやバイオ電池(燃料電池)で使用される酵素機能電極に利用される酵素としては、酸素との反応性がないとの理由から脱水素酵素(デヒドロゲナーゼ)が望ましいことが知られている。そして、生物が有する脱水素酵素には、例えば、NAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)やNADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)を補因子とするもの、FAD(フラビンアデニンヌクレオチド)を補因子とするもの、FMN(フラビンモノヌクレオチド)を補因子とするもの、PQQ(ピロロキノリンキノン)を補因子とするもの等がある。
【0005】
このうち、NAD(P)を補因子とする酵素を用いる場合、電極からNAD(P)が漏れる問題があり、それを防止する目的で、NAD(P)をPEG(ポリエチレングリコール)等の高分子に固定する試みや、電極上に化学結合で固定する試みが行われてはいるが、いずれの試みでも、得られる電流は極めて小さい。また、NAD(P)は電極上で電子を伝達する際に、不可逆性のダイマーになる傾向があり、それが原因で出力が低下するといった不具合も有している。このように、NAD(P)を補因子とする酵素は、バイオセンサやバイオ電池に応用するとき、信頼性の低下や劣化を招く要因を有している。
【0006】
そこで近年は、PQQを補因子とする酵素をバイオセンサやバイオ電池の酵素として用いる検討がなされ始めている。このような酵素としては、例えば、膜結合型のグルコース脱水素酵素(Acinetobacter calcoaceticus、Gluconobacter suboxydans由来)、可溶性のグルコース脱水素酵素(Acinetobacter calcoaceticus、Erwinia sp.34−1由来)、膜結合型のアルコール脱水素酵素(Gluconobacter sp.33由来)、可溶性のアルコール脱水素酵素(Comamonas testosteroni由来)等がある。
【0007】
その中でも、バイオマスから生産可能なエタノールを酸化できる酵素は、環境に優しいバイオ電池用の触媒として注目されている。アルコールを燃料とする酵素機能電極に用いる酵素としては、特に、グルコノバクター由来の膜結合型アルコール脱水素酵素(ADHtypeIII)が注目されている。例えば、非特許文献1に見られるように、グルコノバクター由来のADHtypeIIIをグラファイト電極やカーボン電極、カーボンスクリーンプリント電極に固定して、電子メディエータを用いないで、アルコールの酸化電流を得る手段が開発されている。また、非特許文献2では、導電性高分子のポリピロール内にADHtypeIIIを固定することで、アルコールの酸化電流を得ることに成功している。さらに、非特許文献3では、テトラブチルアンモニウムブロマイド(TBAB)により形成される、多孔質なナフィオン膜にADHtypeIIIを固定した、酵素機能電極が、バイオ電池として働くことを示している。
【非特許文献1】Electroanalysis(エレクトロアナリシス) 14(2002) 43−49
【非特許文献2】Analytical Chemistry(アナリティカル・ケミストリー) 71(1999) 3581−3586
【非特許文献3】PMSE 92(2005) 192−193
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した、PQQを補酵素としたADHtypeIIIは、アルコールから奪った電子を先ずサブユニットI内のPQQに渡す。電子は、引き続き、同じサブユニットI内に存在するヘムCI、サブユニットII内のヘムCII1と順次移動し、最終的にはヘムCII2またはヘムCII3にまで渡される。
【0009】
pH7.0溶液におけるADHtypeIIIのヘムCIの電位は−130mV vs Ag/AgClであるが、CII1の電位は49mV vs Ag/AgClであり、CII2およびCII3の電位はいずれも188mV vs Ag/AgClであるから、酵素内における電子の移動先であるヘムCIIの酸化還元電位は、ヘムCIの電位よりも高い。そのため、ヘムCIからヘムCIIを経て電極に電子が移動するときの電位差は、ヘムCIから直接電極に電子移動する際の電位差よりも小さくなり、結果として、電極の性能が悪くなってしまう。
本発明は、以上の点に鑑みなされたものであり、安定して高電位を維持することができる酵素機能電極、その酵素電極を利用したバイオセンサ及び燃料電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)請求項1記載の酵素機能電極は、電極上に特定の基質を酸化する酵素を備え、基質から酵素を介して電極に電子が伝達される酵素機能電極であって、その酵素は、PQQを補酵素とする膜結合型アルコール脱水素酵素typeIIIであり、且つ、チトクロームCを含むサブユニットIIを含まず、サブユニットIおよびサブユニットIIIから構成されるもの(以下、「ADHtypeIII(I/III)」とする)である。
【0011】
このような構造を有する酵素機能電極では、サブユニットIのヘムCIからサブユニットIIのヘムCIIに電子が伝達することはなく、それが原因で起きる電圧降下も生じない。その結果、本発明の酵素機能電極を、例えば、バイオ電池のアノードに用いた場合、カソード極との間の酸化還元電位差で決まる電位は、従来のように、ADHtypeIIIをそのまま活用する場合よりも、200〜300mV大きくなる。
【0012】
また、サブユニットIIは疎水性表面を持ち、膜内に入り込む領域であるが、そのサブユニットIIを除くことで、本発明が備える酵素(アルコール脱水素酵素)は、界面活性剤を使用せずとも可溶化することが可能となり、酵素を固定化する手段やハンドリングなどの面で、膜蛋白質のような制限を受けなくて済む。
(2)請求項2の酵素機能電極では、酵素のうち、ヘムの存在する面が前記電極と接触する。このことにより、ADHtypeIII(I/III)から電極に直接電子を伝達させることができる。この場合、酵素機能電極は、電子メディエータを備えなくても良いので、電子メディエータが酵素機能電極から外れて対極と反応し、クロスオーバー現象を引き起こしてしまうようなことがない。その結果、カソード極とアノード極との間のセパレータを無くすことが可能となる。
【0013】
ADHtypeIII(I/III)と電極間の直接電子伝達を実現するためには、ADHtypeIII(I/III)のヘムCI部周辺の露出部におけるアミノ酸において、疎水性、または極性非電荷の割合を高めることが好ましい。この場合、天然に存在するADHtypeIII(I/III)を用いても良いし、ヘムCI部周辺の露出部におけるアミノ酸の組成を疎水性または極性非電荷の特性に改変したものを用いても良い。
【0014】
また、酸化還元電位がヘムCIよりも高い電子メディエータを用いることも可能である。この場合、ADHtypeIII(I/III)が基質の酸化で得た電子を効率的に電極に渡すことが可能となり、電流量の向上が期待できる。特に、ヘムCI部周辺の表面特性が電極面と反対の場合など、ヘムCI部と電極面の距離が離れている場合でも、効率的に、電極に電子を伝達することができる。
(3)請求項3記載の酵素機能電極では、酵素が、グルコノバクター・サブオキシダンス(Gluconobacter suboxydans)が有するキノヘムプロテインであるアルコール脱水素酵素typeIII由来である。この酵素のサブユニットIのヘムCI周辺の露出面におけるアミノ酸組成は、その殆どが疎水性アミノ酸であり、アルギニンのみが電荷を帯びているアミノ酸である。その結果、請求項3記載の酵素機能電極では、電子メディエータを用いなくても、電極への効率的な電子伝達が可能となる。
(4)請求項4記載の酵素機能電極では、電極が、導電性金属、半導体材料、及び金属酸化物から成る群から選択された1以上の材料から成る。この材料を用いることにより、電極表面の形状や構造に制限されることなく、酵素から電極への電子伝達が容易に実現されるようになる。
(5)請求項5記載の酵素機能電極は、酸化還元電位がヘムCIよりも高い電子メディエータを備える。このことにより、ADHtypeIII(I/III)が基質の酸化で得た電子を効率的に電極に渡すことが可能となり、電流量の向上が可能となる。特に、ヘムCI部周辺の表面特性が電極面と反対の場合など、ヘムCI部と電極面の距離が離れている場合でも、効率的に、電極に電子を伝達することができる。
(6)請求項6記載のバイオセンサは、請求項1〜5のいずれかに記載の酵素機能電極を備える。
【0015】
本発明のバイオセンサは、備えている酵素機能電極の酵素により酸化される基質の濃度を的確に測定することができる。すなわち、酵素機能電極に電子メディエータを用いない場合は、ADHtypeIIIのサブユニットIに存在するヘムCIの酸化還元電位よりも正側の電位を電極に与えることにより、基質から酵素を介して電極に電子が伝達されることで得られる電流値として、基質の濃度が検知されるようになる。また、酵素機能電極に電子メディエータを用いる場合は、その電子メディエータよりも正側の電位を電極に与えることにより、基質から酵素を介して電極に電子が伝達されることで得られる電流値として、基質の濃度が検知されるようになる。本発明のバイオセンサとしては、例えば、アルコールの濃度を測定するバイオセンサが挙げられる。
(7)請求項7記載の燃料電池は、請求項1〜5のいずれかに記載の酵素機能電極を備える。
【0016】
本発明の燃料電池は、例えば、請求項1〜5のいずれかに記載の酵素機能電極からなるアノード極と、酸素に電子を伝達することのできる触媒又は酵素のいずれかを保持するカソード極とを備え、アノード極とカソード極とが電気的に結合されるとともに、それら各電極間がイオン導電性を有する物質で隔てられる構造を有する。本発明の燃料電池は、上記構造を有することにより、アルコール燃料で発電できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明にかかる酵素機能電極、及びそれを用いたバイオセンサ及び燃料電池(バイオ電池)の実施の形態について、図1〜図6を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態である酵素機能電極1の構造を模式的に示すものである。この酵素機能電極1は、特定の基質(標的物質)9を酸化する脱水素酵素3を触媒として、上記基質9から電極11へと電子を伝達するものである。すなわち、酵素機能電極1は、特定の基質9を酸化する酵素3が電極11の表面に固定されており、この酵素3が基質9を酸化することにより基質9から電子(e-)が引き抜かれて酸化物13が得られるとともに、酵素3が還元されることにより酵素3から電極11に電子が伝達される。
【0018】
酵素機能電極1で用いる酵素3は、サブユニットI(符合5)およびサブユニットIII(符合7)で構成される。この酵素3は、Gluconobacter suboxydans(グルコノバクター・サブオキシダンス)由来のキノヘムプロテインであるアルコール脱水素酵素typeIII(ADHtypeIII)のサブユニットIおよびサブユニットIIIで構成される蛋白質からなる。酵素3から電極11への電子の伝達は、このチトクロームCI部位5aを介して行われる。
【0019】
また、チトクロームCI部位5aは、電子を放出する能力を有するヘム鉄が隣接するアミノ酸とともに外部に向けて露出する構造を有している。そして、これらヘム鉄に隣接するアミノ酸は、アルギニン以外は、疎水性アミノ酸が多く、電荷を有していないアミノ酸の割合が高くなっており、チトクロームCI部位5aの表面には、いわゆる疎水面が形成されている。この疎水面は、電極11の表面に近接している。これにより、ヘム鉄と電極11の表面との親和性が高められるとともに、ヘム鉄を電極11の表面に近づけることができるようになるため、チトクロームCI部位5aから電極11に直接電子を効率的に伝達することが可能になる。
【0020】
図2は、本発明の他の実施形態である酵素機能電極の構造を模式的に示すものである。図2に示すように、酵素機能電極1では、特定の基質9を酸化する酵素3が電子メディエータ15に化学結合しており、電子メデイエータ15は電極11の表面に固定されている。酵素3が基質9を酸化することにより、基質9から電子(e-)が引き抜かれて酸化物13が得られるとともに、酵素3が還元されることにより、酵素3から電子メディエータ15に電子が伝達され、引き続き、電子メディエータ15から電極11に電子が伝達される。酵素3は、Gluconobacter suboxydans(グルコノバクター・サブオキシダンス)由来のキノヘムプロテインであるアルコール脱水素酵素typeIII(ADHtypeIII)のサブユニットIおよびサブユニットIIIで構成される蛋白質からなる。
【0021】
酵素機能電極1で検知することのできる基質9としては、例えば、エタノール、メタノール、ブタノール、1、2−プロパンジオール等のアルコールが挙げられる。
電極11としては、電極表面の形状や構造に制限されることなく、導電性のある物質なら全てのものを用いることができ、例えば、カーボン材、導電性金属、半導体材料および金属酸化物などを用いることができる。このうち、特に好ましいものはカーボン材である。このようなカーボン材としては、例えばカーボン紙、(カーボンスクリーンプリント電極)、カーボンフェルト、カーボンブラック、カーボンパウダー、カーボンペースト、カーボン繊維、単層カーボンナノチューブ、2層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、カーボンナノチューブアレイ、グラッシーカーボン、ダイヤモンドコート、メソポーラスカーボングラファイト、多結晶グラファイトおよび熱分解黒鉛等が挙げられる。またこれらうち、特にメソポーラスカーボングラファイト等の多孔質な構造を有する電極11を用いれば、その多孔質内部にPQQを補酵素とするADHtypeIII(I/III)を物理的に固定することができるため、電極11の耐熱性や寿命の向上を図ることができる。また、カーボンナノチューブを含む電極11を用いれば、カーボンナノチューブにPQQを補酵素とするADHtypeIII(I/III)を直接固定することができるため、カーボンナノチューブの有する高い比表面積により高い電流密度を確保することが可能となる。
【0022】
電極11の表面は疎水性であるか、疎水性の官能基で修飾されていることが好ましい。こうすることにより、PQQを補酵素とするADHtypeIII(I/III)のC1露出面に形成される疎水面と、疎水性の電極11の表面とが近づきやすくなるため、チトクロームC1から外部に向けて露出するヘム鉄と電極11の表面とが近づきやすくなる。
【0023】
酵素機能電極1において、酵素3、すなわち、PQQを補酵素とするADHtypeIII(I/III)を電極11に固定する方法としては、例えば、図3(a)〜(c)に示す方法がある。なお、図3(a)〜(c)は、それぞれ、電極11の表面に酵素3が固定される構造を模式的に示す断面図である。
【0024】
すなわち、図3(a)に示すように、酵素3は、電極11の表面に形成された電極孔17内に固定することができる。この場合、酵素3は、電極11の表面に物理的に吸着されても良いし、電極11の表面上にゲル状物質で固定されても良いし、電極11の表面を被膜する高分子の中に物理的に固定されても良いし、電極11の表面上のポテンシャル場にしたがって物理的に吸着されても良い。
【0025】
また、図3(b)に示すように、酵素3は、パウダー状に加工された電極材(例えばカーボンペースト)11aの中に混合されていても良い。ここで、パウダー状に加工された電極材11aにおけるパウダー粒子の大きさは特に制限されない。また、パウダー間をバインダーで固めても良いし、パウダー間にリン脂質等を含ませて酵素3の流動性を持たせても良いし、パウダー間に各種物質を入れても良い。
【0026】
また、図3(c)に示すように、酵素3を、電極11の表面の官能基19と架橋剤21による化学結合を通じて固定しても良い。電極11の表面の官能基19としては、例えば、アミノ基、チオール基、カルボニル基および水酸基等が挙げられ、官能基19の鎖長は短いほど好ましい。また、架橋剤21としては、例えば、水溶性カルボニルイミド、グルタルアルデヒド、ポリエチレングリコール・ジグリシジル・エステル、ジメチルピメミリデイトおよびジメチルスベリミデイト等が挙げられる。
【0027】
なお、これら図3(a)〜(c)に示す電極構造は、PQQを補酵素とするADHtypeIII(I/III)に電子メデイエータ(図示略)が接する構造であっても良い。電子メディエータと、PQQを補酵素とするADHtypeIII(I/III)との間は、化学的な結合を介して固定しても良い。
更に、これら図3(a)〜(c)に示す電極構造においては、電極11の表面がさらにイオン導電性を有するゲル状物質を主成分とする保護材23で保護されていても良い。この保護材23は、ゲル状物質以外に適宜の膜材等も使用することができる。こうした膜材やゲル状物質としては、例えば、陽イオンを含むナフィオン樹脂(商品名、Du Pont社製)、光架橋性のスチルバゾリウム化ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、アガロースゲル、アルギン酸ゲルおよびアクリルアミドゲル等が挙げられる。こうした膜材やゲル状物質にイオン化物を適当な割合で混合することにより、酵素3から電極11に電子を伝達する反応と、電極11がプロトンを放出する反応とを両立させることが可能となるため、酵素3から電極11への電子伝達能力をさらに高めることができる。
【0028】
図4は、酵素機能電極1を用いた3電極式の電気化学測定用セル25の構造を模式的に示すものである。図4に示すように、電気化学測定用セル25は、作用電極W、参照電極Rおよび対極Aから構成されており、このうち作用電極Wとして、上述したグラッシーカーボン電極にADHtypeIII(I/III)が固定された酵素機能電極1を用いる。また、参照電極Rとして、Ag/AgCl(銀/塩化銀)電極を用い、対極Aとして白金電極を用いる。
【0029】
このような電気化学測定用セル25において、作用電極Wに電圧が加えられると、作用電極Wの表面にて酸化還元反応が起こり、その印加電圧が参照電極Rの電位の基準とされ、電位制御回路によりその電位が制御される。ここで、電気化学測定用セル25中に基質として、例えば、一定濃度のエタノールを加えると、作用電極Wおよび対極A間にエタノールの酸化電流が流れ、電流測定回路にてその電流値が測定される。
【0030】
図5は、こうした原理に基づき、酵素機能電極1を利用してセルCe中の基質濃度を検知するバイオセンサの一例を模式的に示すものである。図5に示すように、このバイオセンサ27も、図4に例示した電気化学測定用セル25と同様に、作用電極W、参照電極Rおよび対極Aを備えている。また、作用電極Wとしても、図4におけるセル25と同様に、グラッシーカーボン電極にADHtypeIII(I/III)が固定された酵素機能電極1を用いる。ここで、セルCe中に基質として、例えばエタノールを添加し、その添加量を段階的に増やしていくと、エタノール濃度の増加に伴って電流値の上昇が観察される。このように、作用電極Wとして、ADHtypeIII(I/III)が固定された酵素機能電極1を用いることにより、基質濃度を測定可能なバイオセンサ27を得ることができる。
【0031】
また、図6は、酵素機能電極1を利用して検知される基質を燃料として発電する燃料電池の一例を模式的に示すものである。燃料電池29は、燃料供給タンク31から燃料が供給される燃料拡散電極(アノード極)33と、空気供給タンク35から空気が供給される空気拡散電極(カソード極)37とを有する。また、これらアノード極33とカソード極37との間には電解質膜39が充填されている。そして、アノード極33の電解質膜39側には酵素担持面41が形成されており、カソード極37の電解質膜39側には触媒担持面43が形成されている。ここで、上記アノード極33は、グラッシーカーボン電極の酵素担持面41に、ADHtypeIII(I/III)を固定したものであり、上述した酵素機能電極1と同様のものである。また、カソード極37は白金電極であり、その触媒担持面43には白金が固定されている。
【0032】
このような燃料電池29において、燃料として基質であるエタノールが供給されると、アノード極33ではエタノールがADHtypeIII(I/III)により酸化されることで水素が発生するとともに酸化還元反応電流が得られ、カソード極37では供給される空気(酸素)と電解質膜41を通じて得られる水素との反応により水が生成される。すなわち、基質を燃料とした発電が行われるようになる。なお、カソード極37の触媒担持面43に固定される触媒としては、白金以外にも、例えば、ジアホラーゼ酵素、プルオキシターゼ酵素、およびその他酸素の還元を実現する錯体触媒等を用いることができる。
【0033】
以上に説明した、この実施の形態にかかる酵素機能電極1、該酵素機能電極1を利用した電気化学測定用セル25、バイオセンサ27、又は燃料電池29によれば、以下に列記するような効果が得られる。
【0034】
(1)酵素機能電極1が備える酵素3は、グルコノバクター・サブオキシダンスが有するキノヘムプロテインであるアルコール脱水素酵素typeIII由来であり、サブユニットIIを持たない、ADHtypeIII(I/III)からなる。サブユニットIのヘムCIの酸化還元電位は、サブユニットIIの酸化還元電位よりも低いので、サブユニットIIを含まない酵素3の酸化還元電位は、従来のアルコール脱水素酵素よりも低くなる。
【0035】
そのため、酵素機能電極1を備えたセンサを用いて、基質(例えばエタノール等のアルコール)の酸化により発生する酸化電流を検知する場合、酵素機能電極1について設定する酸化還元電位値を、従来のアルコール脱水素酵素電極を用いた時よりも、広い範囲内(特に低い酸化還元電位で)で設定することが可能となる。その結果、測定サンプル内に存在するビタミン類などの夾雑物由来の酸化還元ピークと重ならない酸化還元電位値を、酵素機能電極1について設定することが可能となり、より信頼性の高いセンサを実現することができる。また、酵素機能電極としての出力向上も可能である。
【0036】
(2)電極11の材料は、電極11の表面の形状や構造によって制限されることがなく、例えば、導電性金属、半導体材料、及び金属酸化物から成る群から選択された1以上の材料とすることができる。このため、電極11の材料として、例えば、電極11への溶液の浸透が発生しにくく、出力低下の発生が抑制される材料を選択することができる。また、特にカーボン材を電極11として用いれば、上記ADHtypeIII(I/III)におけるチトクロームC1部とカーボン材との間の電子伝達能力に優れているため、酵素3から電極11への電子伝達がより円滑に実現されるようになる。
【0037】
(3)電極11の表面は、疎水性であるか、あるいは疎水性の官能基で修飾されているものとすることができる。この場合、ADHtypeIII(I/III)のチトクロームC1において外部に露出されるヘム鉄の露出部位の周辺が、疎水性アミノ酸や非電荷アミノ酸に覆われるようになる。すなわち、疎水性の電極11の表面に対してヘム鉄がより近づきやすくなり、酵素3から電極11への電子伝達能力がより高められる。また、チトクロームC1の表面に形成される疎水面と、疎水性の電極11の表面とが近接することにより、酵素3の、電極11の表面上でのより高い配向制御が可能となるため、酵素機能電極1のさらなる出力向上が可能となる。
【0038】
(4)酵素3である、PQQを補酵素とするADHtypeIII(I/III)は、イオン導電性を有する膜、あるいはゲル状物質からなる保護材23により保護することができる。これにより、酵素3から電極11に電子を伝達する反応と、酵素3からプロトンが放出される反応とが両立されるようになり、ひいては、電子伝達能力がさらに高まる。
【0039】
(5)酵素機能電極1を通じて基質9の濃度を測定する電気化学測定用セル25、バイオセンサ27を構成すれば、酵素機能電極1に用いられる酵素3により酸化される基質9の濃度を的確に測定することができる。すなわち、ADHtypeIII(I/III)のチトクロームC1の酸化還元電位よりも正側の電位を電極11に与えることにより、酵素3により基質9から電子が伝達されるときに、基質9の濃度に対応する電流値が検知される。
【0040】
(6)酵素機能電極1からなるアノード極33と、酵素3に電子を伝達することのできる触媒および酵素のいずれかを保持するカソード極37とを備え、アノード極33とカソード極37とを電気的に結合するとともに、それら各電極間をイオン導電性を有する物質で隔てる燃料電池29を構成することもできる。これにより、酵素機能電極1に用いられる酵素3により酸化される基質9を燃料として発電する燃料電池29であって、より発電能力の高い電池29を安定して実現することができる。特に、ADHtypeIIIに存在するサブユニットIIを除くことで、酵素3内で生じる電位降下を防ぐことが可能となり、より高い電位を確保できるバイオ電池29を実現することができる。
【0041】
次に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0042】
a)ADHtypeIII(Complex)の調製
糖分を多めにした培地で増殖させた、Gluconobacter suboxydansを遠心処理(9、000G×10min)で回収し、50mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で2回洗浄した。洗浄菌体の湿重1gを5mLの50mMリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で懸濁させ、フレンチプレス(American Instrument Co.)を用い、16、000psiの条件下で菌を破壊した。引き続き、遠心処理(9、000G×10min)により、菌破砕残渣を取り除いた。
【0043】
上清を回収し、超遠心分離処理(8、600G×90min)により膜画分を沈殿させた。膜画分を、蛋白質濃度が20mg/mLになるように、10mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で懸濁させ、終濃度が1.0%(w/v)になるように、TritonX−100を加えた。4℃で60min間インキュベートした後、超遠心処理(8、600G×90min)で可溶化したADHを上清にて回収し、0.1%のTritonX−100を含む、5mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)を外液として透析処理をおこなった。
【0044】
0.1%のTritonX−100を含む、5mMのリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化したDEAE−Toyopearlカラムに透析済みの蛋白液をアプライし、カラムに対して各々5倍容量である、0.1%のTritonX−100を含むリン酸カリウム緩衝液(pH6.0)の濃度勾配(5−50mM)により、ADHを溶出させた。20−30mMのフラクション領域にADH活性のある画分は溶出され、その画分を回収した後、0.1%のTritonX−100を含む5mMの酢酸緩衝液(pH5.0)で透析し、ADHtypeIIIを含む蛋白溶液を得た。このADHtypeIIIは、サブユニットI、サブユニットII、及びサブユニットIIIを全て備えたもの(以下、「ADHtypeIII(Complex)」とする)である。
【0045】
b)ADHtypeIII(I/III)の調製
前記a)で得られた透析後の蛋白溶液を、同じ緩衝液で平衡化した、CM−Toyopearlカラムにアプライした。0.1%のTritonX−100を含む5mMの酢酸緩衝液で洗浄した後、更にカラムに対して5倍容量の0.1%TritonX−100を含む40mM酢酸緩衝液(pH5.0)で洗浄した。その際、ADHのサブユニットIIが溶出した。カラムに吸着したADHは、カラムに対して各々5倍容量である、0.1%TritonX−100を含む酢酸緩衝液(pH5.0)の濃度勾配(40−100mM)により溶出させた。
【0046】
その結果、70mM付近に、ADHtypeIII(Complex)が溶出された。引き続き、カラムに対して各々5倍容量である、0.1%TritonX−100を含む酢酸緩衝液(pH5.0)の濃度勾配(100−200mM)により溶出させた。さらに、カラムに対して5倍容量である、0.1%TritonX−100を含む200mMの酢酸緩衝液(pH5.0)により、ADHtypeIII(I/III)画分を溶出させた。
【0047】
このようにして得られた3.35mg/mL濃度のADHtypeIII(I/III)液400μLを、透析遠心チューブ(MWCO:50、000)で50μLに濃縮し、400μLの5mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)を加えて攪拌後、再度、透析遠心チューブで50μLに濃縮した。この透析遠心処理を合計3回行った。
【0048】
このようにして得られたADHtypeIII(I/III)を含む溶液を、5mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)で平衡化したToyopearlカラム(1mL容積)にアプライした。25mLの5mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)でカラムを洗浄した後、50mMのリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.0)でADHtypeIII(I/III)を溶出させた。ADHtypeIII(I/III)液は、遠心透析チューブで150μLに濃縮した後に回収した。この操作により、ADHtypeIII(I/III)に吸着していた界面活性剤TritonX−100を取り除くことができた。
【0049】
c)酵素機能電極1の製造
酵素機能電極1は、図7(a)、(b)に示すように、φ3mmである棒状のGC電極11と、その先端付近において、GC電極11の外周を覆うように取り付けられた筒状のゴムパッキン45と、GC電極11及びゴムパッキン45の間を満たす樹脂47とを備えている。ゴムパッキン45の端部45aは、GC電極11の上面11aよりも上方(図7における上方向)に張り出しており、GC電極11の上方には、周囲をゴムパッキン45で囲まれた液保持部49が形成されている。
【0050】
この液保持部49に、前記b)で得られたADHtypeIII(I/III)液4μLを滴下し、さらに、10mM CaCl2を含む0.1M 酢酸緩衝液(pH5.0)を15μL加え、その後、市販の透析膜(MWCO:25、000)51で液保持部49の上方を覆い、酵素機能電極1を完成した。
【0051】
d)CV測定
前記c)で製造した酵素機能電極1を、15mLの10mM CaCl2を含む、0.1M 酢酸緩衝液(pH5.0)中に浸し、対極に白金を用い、参照極に銀・塩化銀電極を用いて、−0.2Vから+0.2V(vs Ag/AgCl)の範囲で、20mV/sの掃引速度でCV測定を実施した。その結果を図8に示す。図8から明らかなとおり、0V vs Ag/AgCl前後に、ADHtypeIII(I/III)の酸化還元ピークが観察された。
【実施例2】
【0052】
a)電子メディエータを備えた酵素機能電極1の製造
0.1M LiClと1mM エチレンジアミンを含むエタノール溶液中に、φ3mmのGC電極を浸し、0〜1400mV(vs Ag/AgCl)の間で、10mV/sの掃引速度でサイクリック・ボルタメトリー(CV)した。この処理により、電極表面にNH2基が付加された。
【0053】
このエチレンジアミン処理したGC電極を用いて、基本的には前記実施例1のc)と同様の構造を有する酵素機能電極1を製造した。ただし、液保持部49に入れる液は、15mg/mL濃度のPVI-Os錯体(酸化還元電位:+100mV vs Ag/AgCl)1μL、前記実施例1のb)にて調製したADHtypeIII(I/III)4μL、及び0.125%のグルタルアルデヒド溶液1μLとした。そして、この液を加えた後、30℃で2hr固定するようにした。なお、PVI-Os錯体は電子メディエータとして機能し、グルタルアルデヒドは架橋剤として機能する。
【0054】
b)CV測定
前記a)で製造した酵素機能電極1を、15mLの10mM CaCl2を含む0.1M 酢酸緩衝液(pH5.0)中に浸し、対極に白金を用い、参照極に銀・塩化銀電極を用いて、−0.2Vから+0.3V(vs Ag/AgCl)の範囲で、20mV/sの掃引速度でCV測定を実施した。その結果を図9に示す。Os錯体由来の酸化還元ピークが50mV、及び150mV付近に観察された。
【0055】
引き続き、終濃度0.1%になるようにエタノールを加え、上記と同様の条件でCV測定を実施した。その結果も図9に示す。エタノールを加える前のCV波形と異なり、エタノールの酸化電流が観測された。
【0056】
c)定電位測定
前記a)で製造した酵素機能電極1を、15mLの10mM CaCl2を含む0.1M 酢酸緩衝液(pH5.0)中に浸し、対極に白金を用い、参照極に銀・塩化銀電極を用いて、400mV(vs Ag/AgCl)の定電位測定を実施した。エタノールを添加しない緩衝液中で電流値が安定した後、終濃度0.1%になるようにエタノールを加えた。その結果、図10に示すように、電流が観測された。
【実施例3】
【0057】
a)酵素機能電極の製造
0.1M LiClと、1mM エチレンジアミンとを含むエタノール溶液中にφ3mmのGC電極を浸し、0〜1400mV(vs Ag/AgCl)の間で10mV/sの掃引速度でサイクリック・ボルタメトリー(CV)した。この処理により、電極表面にNH2基が付加された。
【0058】
このエチレンジアミン処理したGC電極を用いて、基本的には前記実施例1のc)と同様の構造を有する酵素機能電極1を製造した。ただし、液保持部49に入れる液は、15mg/mL濃度のPVI-Os錯体(酸化還元電位:−100mV vs Ag/AgCl)1μL、前記実施例1のb)にて調製したADHtypeIII(I/III)4μL、及び0.125%のグルタルアルデヒド用溶液1μLとした。そして、この液を加えた後、30℃で2hr固定するようにした。
【0059】
b)CV測定
前記a)で製造した酵素機能電極1を、15mLの10mM CaCl2を含む0.1M 酢酸緩衝液(pH5.0)中に浸し、対極に白金を用い、参照極に銀・塩化銀電極を用いて、−0.2Vから+0.3V(vs Ag/AgCl)の範囲で、20mV/sの掃引速度でCV測定を実施した。引き続き、終濃度0.1%になるようにエタノールを加え、上記と同様の条件でCV測定を実施した。それらの結果を合わせて図11に示す。エタノールの添加によりCV波形は変化し、酸化電流が観測された。
(比較例1)
a)酵素機能電極の製造
基本的には、前記実施例1のc)と同様であるが、液保持部49に滴下する溶液として、ADHtypeIII(I/III)液4μLの代わりに、同量のADHtypeIII(Complex)液を用いて、酵素機能電極を製造した。ここで用いたADHtypeIII(Complex)液は、前記実施例1のa)で回収したADHtypeIII(complex)を濃縮し、0.1%のTritonX−100を含む、100mMの酢酸緩衝液(pH5.0)に溶解したものである。
b)測定
前記a)で製造した酵素機能電極を用い、前記実施例1のc)と同様の方法でCV測定を実施した。その結果を図12に示す。図12から明らかなとおり、酸化還元ピークは全く見られなかった。
(比較例2)
a)電極の製造
基本的には、前記実施例2のa)と同様であるが、液保持部49に滴下する溶液として、ADHtypeIII(I/III)液4μLの代わりに、同量のADHtypeIII(Complex)液を用いて電極を製造した。ここで用いたADHtypeIII(Complex)液は、前記実施例1のa)で回収したADHtypeIII(Complex)を濃縮し、0.1%のTritonX−100を含む、100mMの酢酸緩衝液(pH5.0)に溶解したものである。
b)CV測定
前記a)で製造した酵素機能電極を用い、前記実施例2のb)と同様の方法でCV測定を実施した。その結果を図13に示す。図13から明らかなとおり、エタノールを添加する前と後とで、CV波形は変化しなかった。
【0060】
なお、本発明は、上記実施の形態として示した構成に限らず、これらを適宜変更した、以下の態様にて実施することもできる。
例えば、上記各実施例では、酵素3を、グルコノバクター・サブオキシダンス由来のアルコール脱水素酵素typeIII(I/III)とした。しかしながら、サブユニットI、II、及びIIIからなるヘテロ3量体の膜蛋白質である、ADHtypeIIIを持つ菌株は他にも存在しており、それらの菌由来のADHtypeIIIでも、サブユニットIIを除いた構造のものであれば、問題なく使うことができる。
【0061】
また、グルコンアセトバクター・ユーロパエオス(Gluconacetobacter europaeus)やグルコンアセトバクター・キシリナンス(Gluconacetobacter xylinus)など、サブユニットIIIが存在しないADHtypeIIIもある。このような種類のADHについては、サブユニットIのみからなる、ADHtypeIII(I)を用いることができる。いずれの場合においても、サブユニットIに存在する低電位のヘムCから電極に電子を伝達できる構造であれば、特に制限するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】酵素機能電極(電子メディエータなし)の構造を模式的に表す説明図である。
【図2】酵素機能電極(電子メディエータあり)の構造を模式的に表す説明図である。
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ、酵素の電極への固定態様を模式的に表す断面略図である。
【図4】酵素機能電極が適用される3極式電気化学セルの構造を模式的に表す説明図である。
【図5】酵素機能電極が適用されるバイオセンサの構造を模式的に表す平面図である。
【図6】酵素機能電極が適用される燃料電池の構造を模式的に表す説明図である。
【図7】電極の構成を表す説明図であって、(a)は側断面図であり、(b)は上面図である。
【図8】界面活性剤を取り除いたADHtypeIII(I/III)のCV測定の結果を表すグラフである。
【図9】電極に固定したPVI−Os錯体およびADHtypeIII(I/III)のCV測定の結果を表すグラフである。
【図10】電極に固定したPVI−Os錯体およびADHtypeIII(I/III)において、終濃度0.1%のエタノールを添加した後の定電位(400mV vs Ag/AgCl)測定した際の電流値を表すグラフである。
【図11】電極に固定したPVI−Os錯体および酵素において、終濃度0.1%のエタノールを添加する前と後のCV測定の結果を表すグラフである。
【図12】ADHtypeIII(Complex)のCV測定の結果を示すグラフである。
【図13】電極に固定したPVI−Os錯体1およびADHtypeIII(Complex)のCV測定の結果を表すグラフである。
【符号の説明】
【0063】
1・・・酵素機能電極 3・・・酵素 5・・・サブユニットI
7・・・サブユニットIII 9・・・基質 11・・・電極
13・・・酸化物 15・・・電子メディエータ 17・・・電極孔
19・・・官能基 21・・・架橋剤 23・・・保護材
25・・・電気化学測定用セル 27・・・バイオセンサ 29・・・燃料電池
31・・・燃料供給タンク 33・・・アノード極 35・・・空気供給タンク
37・・・カソード極 39・・・電解質膜 41・・・酵素担持面
43・・・触媒担持面 45・・・ゴムパッキン 47・・・樹脂
49・・・液保持部 51・・・透析膜 R・・・参照電極
W・・・作用電極 A・・・対極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極と、
特定の基質を酸化する酵素と、を備え、
前記基質から前記酵素を介して前記電極に電子が伝達される酵素機能電極において、
前記酵素は、PQQを補酵素とする膜結合型アルコール脱水素酵素typeIIIであり、且つ、チトクロームCを含むサブユニットIIを含まず、サブユニットIおよびサブユニットIIIから構成されることを特徴とする酵素機能電極。
【請求項2】
前記酵素のうち、ヘムの存在する面が前記電極と接触することを特徴とする請求項1記載の酵素機能電極。
【請求項3】
前記酵素が、グルコノバクター・サブオキシダンスが有するキノヘムプロテインであるアルコール脱水素酵素typeIII由来であることを特徴とする請求項1又は2記載の酵素機能電極。
【請求項4】
前記電極は、導電性金属、半導体材料、及び金属酸化物から成る群から選択された1以上の材料から成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の酵素機能電極。
【請求項5】
酸化還元電位がヘムCIよりも高い電子メディエータを備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の酵素機能電極。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の酵素機能電極を備えたバイオセンサ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の酵素機能電極を備えた燃料電池。

【図1】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−237099(P2008−237099A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−81714(P2007−81714)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(304020177)国立大学法人山口大学 (579)
【Fターム(参考)】