説明

酸化アルミニウム含有分散液

酸化アルミニウムが、BET表面積20〜200m2/gを有し、かつ平均の、体積に基づく分散液中での凝集物直径100nm未満を有する、凝集させた一次粒子の形状で存在し、有機ホスホン酸及び/又はその塩で表面改質され、その際、表面が、完全に又は部分的に改質されてよく、及び有機ホスホン酸は、少なくとも1つのアミノ及び/又はヒドロキシ基を有し、並びに分散液の合計質量に対して、含有率20〜70質量%で存在する、酸化アルミニウムと水とを含有する分散液。この分散液及びメラミン樹脂を含有する配合物。該配合物から得られうる硬化生成物。該配合物、又は積層品の配合物のための硬化生成物の分散液の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化アルミニウム含有分散液、及びその製造方法に関する。
【0002】
本発明は、さらに、この分散液を含有するメラミン樹脂含有配合物、及びその製造方法に関する。
【0003】
本発明は、さらに、配合によって硬化された生成物に関する。
【0004】
家具又は床の表面への装飾的外観の付与、及び積層品の適用による、機械的応力、熱的応力及び化学的応力に対するそれらの感受性の低減は、公知である。本明細書では、例えば、掻き傷及びシミに対する感度の低減が、挙げられてよい。積層品は、さらに、できるだけ透明であるべきである。
【0005】
積層品は、しばしば、1つ又はいくつかの熱硬化性合成樹脂を含浸させた紙の層からなる。また、硬質物質は、しばしば、積層品の耐引掻性及び耐摩耗性をさらに増加しようとする紙の上層に取り入れられる。このために、酸化アルミニウムは、特に好適な硬質物質であることを証明している。
【0006】
WO01/53387号においては、放射線硬化樹脂、開始剤及びレオロジー調節剤、例えばナノスケールの酸化アルミニウム粒子を含有する塗料混合液から開始する、巨視的な構造を有する硬化可能な被覆の生成物が、開示されている。このために、該酸化アルミニウム粒子は、塗料混合液中に、粉末の形で、1〜40質量%の濃度で取り入れられる。さらに、カップリング剤は、該塗料混合液中で酸化アルミニウム粒子の分布を改良し、かつ硬化させた被覆中で良好な結合を保証する目的のために、該塗料混合液に添加されうる。該塗料混合液中の粒子の均質分布は、該塗料混合液が高濃度の粒子を含有する場合に問題がある。しかしながら、硬化させた被覆の高い機械的安定度のために、できるだけ高い酸化アルミニウム粒子の濃度が望ましい。さらに、その粘度は、該塗料混合液中の酸化アルミニウム粒子の濃度で上昇する。WO01/53387号においては、該塗料混合液中の40質量%までの酸化アルミニウム濃度は、明らかに開示されているが、しかし、かかる高い濃度で、該塗料混合液は、今日ほとんど加工することが不可能である。
【0007】
EP−A−1252239号は、積層品の製造のための酸化アルミニウムの粉末及び分散液の使用を開示している。開示された酸化アルミニウム生成物における欠点は、メラミン含有配合物中、ひいては積層品中の酸化アルミニウム生成物の低い含有率、例えば実施例2において15質量%であり、結果として積層品の機械的特性は、不十分な程度にだけ改良されうる。他の欠点は、高い透過性の要求に関して、水性分散液が、有機溶剤を基材とする分散液よりも、よい結果をもたらさないことである。しかしながら、高い溶剤の濃度は、環境適合性及びプラントの安全性の理由のために望ましくない。
【0008】
本発明の目的は、技術水準に関連するメラミンを基材とする積層品の機械的特性を改良することを可能にする、酸化アルミニウム含有配合物の供給にある。特に、高い固体濃度での配合物の処理の特性は、良好であるべきである。
【0009】
本発明の他の目的は、安定で、高い含量を有する簡単に処理できる形での酸化アルミニウムの供給である。
【0010】
本発明の目的は、酸化アルミニウムと水とを含有する分散液であり、その際、該酸化アルミニウムは、
−BET表面積20〜200m2/g、有利には50〜150m2/gを有し、かつ平均の、体積に基づく分散液中での凝集物直径100nm未満、有利には40〜90nmを有する、凝集させた一次粒子の形状で存在し、
−有機ホスホン酸及び/又はその塩で表面改質され、その際
−表面は、完全に又は部分的に改質されてよく、及び
−有機ホスホン酸は、少なくとも1つのアミノ及び/又はヒドロキシ基を有し、並びに
−分散液の合計質量に対して、含有率20〜70質量%、有利には30〜60質量%で存在する。
【0011】
有利には、本発明による分散液は、熱分解法に由来する酸化アルミニウムを含有しうる。本明細書で、熱分解法とは、前記酸化アルミニウム粉末が、火炎中で好適な開始材料の転化によって得られることを意味することを理解すべきである。
【0012】
熱分解法は、炎内酸化及び炎内加水分解を含む。酸化アルミニウムの大規模工業生産のために、水素/酸素火炎中での塩化アルミニウムの炎内加水分解が、主に使用される。
【0013】
通常、この方法で製造された酸化アルミニウム粒子は、凝集させた一次粒子の形で存在し、その際、該一次粒子は、孔がなく、かつ一次粒子の表面上にヒドロキシ基を有する。さらに、こうして製造された酸化アルミニウムは、その主成分として、ガンマ、デルタもしくはシータ変態、又は前記の混合液を有する。アルファ変態は、熱分解方法では観測されない。
【0014】
塩化アルミニウムの酸化アルミニウムへの転化中に、塩酸が、副産物として形成され、かつ酸化アルミニウム粒子に付着する。通常、塩酸の大部分は、蒸気での処理によって該粒子から取り除かれる。水中で4%の分散液中で、酸化アルミニウム粉末は、通常、pH値3〜5を示す。
【0015】
予想される好適な酸化アルミニウム粉末は、全てDegussa AG製の、AEROXIDE(登録商標)Alu C、AEROXIDE(登録商標)Alu 65、及びAEROXIDE(登録商標)Alu 130、並びに全てCabot Corp.製の、SpectrAl(登録商標)100のヒュームドアルミナ、SpectrAl(登録商標)51のヒュームドアルミナ、及びSpectrAl(登録商標)81のヒュームドアルミナである。
【0016】
好適な有機ホスホン酸は、モノヒドロキシホスホン酸、ジヒドロキシホスホン酸、ポリヒドロキシホスホン酸、モノアミノホスホン酸、ジアミノホスホン酸、ポリアミノホスホン酸、ヒドロキシアミノホスホン酸及び/又はそれらの塩であってよい。
【0017】
特に、本発明による分散液は、一般式
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6は、それぞれ互いに独立して、H又はCH2−PO(OH)2であり、
Xは、C1〜C10のアルキル残基(直鎖又は分枝鎖状)であり、かつ
a及びbは、それぞれ互いに独立して、0〜2500である]で示される化合物による有機ホスホン酸を含有しうる。
【0018】
この構造を有する好ましい有機ホスホン酸の例は、エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリメチレンホスホン酸、ペンタエチレンヘキサアミンオクタメチレンホスホン酸、ヘキサメチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸、ジエチレントリアミンモノカルボキシメチルテトラメチレンホスホン酸及び/又はその塩である。
【0019】
さらに、本発明による分散液中に存在する有機ホスホン酸は、一般式
【化2】

[式中、R1は、1〜4個のC原子を有するアルキル基、6〜10個のC原子を有するアリール基、もしくは−PO(OH)2であり、
2は、1〜4個のC原子を有するアルキル基、もしくは6〜10個のC原子を有するアリール基であり、
3は、1〜6個のC原子を有するアルキレン基であり、又は
1及びR3は、芳香環の形で結合させたC原子を共に有し、この場合R2は、不在である]で示される化合物による構造を有しうる。
【0020】
この構造を有する好ましい有機ホスホン酸の例は、2−アミノ−1−フェネチルホスホン酸、1−アミノエタンジスホスホン酸、1−アミノプロパンジスホスホン酸、及びアミノフェニルメチレンジホスホン酸である。
【0021】
さらに、本発明による分散液は、HOCH2−CH(OH)PO(OH)2、(HO)2OP−CH(OH)−PO(OH)2、(HO)2OP−CH2−CH2−CH(OH)PO(OH)2、及び/又はRがMe、Et、Pr、もしくはBuであるHO2C−CR(OH)PO(OH)2を有する群からの有機ホスホン酸を含有しうる。
【0022】
さらに、ヒドロキシエチルアミノジ(メチレンホスホン酸)、HOCH2N[(CH2PO(OH)2)]2は、本発明による分散液の成分でありうる。
【0023】
本発明による分散液中の有機ホスホン酸の含量は、制限されない。通常、有機ホスホン酸の含量は、酸化アルミニウムの含量及び酸化アルミニウムのBET表面積に適合されうる。従って、好ましい一実施態様において、本発明による分散液は、酸化アルミニウム表面積0.2〜7.5μmol/m2、及び特に有利には酸化アルミニウム表面積0.5〜2.5μmol/m2の有機ホスホン酸又はその塩の含量を有する。
【0024】
本発明による分散液は、さらに、シラノール基を有する1つもしくはいくつかの化合物を含有することができるか、又は水性分散液中での加水分解によって、シラノール基を有する1つもしくはいくつかの化合物を形成させることができる。
【0025】
前記化合物は、特に、
− (RO)3Si(CH2m−R’[式中、Rは、C1〜C4−のアルキルであり、mは、1〜20であり、かつR’は、−NH2又はNH(CH2mNH2である]で示される形のオルガノシラン、例えば、H2N(CH23Si(OMe)4、H2N(CH23Si(OEt)4又はH2N(CH22HN(CH23Si(OMe)4
− (RO)3Si(CH2m−NH2[式中、Rは、アルキル、例えばメチル、エチル又はプロピルであり、mは、1〜20である]で示される形のオルガノシラン、
− Rx(RO)ySi(CH2m−NH2[式中、Rはアルキルであり、x+yは2であり、xは1,2であり、yは1,2である]で示される形のオルガノシラン、
−式、
【化3】

[式中、Rは、アルキル、アリール又は(CH2n−NH2、Hであり、
R’は、アルキル、アリール又は(CH2n−NH2、Hであり、
R"は、アルキル、アリール又は(CH2n−NH2、Hであり、
R’’’は、アルキル、アリール又は(CH2n−NH2、Hであり、
Yは、CH3、H、1〜20のzを有するCz2z+1、Si(CH33、Si(CH32H、Si(CH32OH、Si(CH32(OCH3)、又はSi(CH32(Cz2z+1)であり、
R’又はR"又はR’’’は、(CH2z−NH2であり、
Zは、1〜20であり、
mは、0、1、2、3、・・・∞であり、
nは、0、1、2、3、・・・∞であり、
uは、0、1、2、3、・・・∞である]で示される形のポリシロキサン又はシリコーン油を含む。
【0026】
さらに、加水分解産物、例えばDynasylan(登録商標)HYDROSIL1151、水性の3−アミノプロピルシラン加水分解産物又はDynasylan(登録商標)Hydrosil2627、水性のアミノ/アルキル−シラン加水分解産物(アミノ−官能化オリゴマーシロキサン)も、使用されうる。
【0027】
有利には、シラノール基を有する化合物の含量は、酸化アルミニウム表面積0.2〜5μmol/m2である。
【0028】
他の成分として、本発明による分散液は、少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸及び/又はそれらの塩を含有してよく、クエン酸及び酒石酸が特に好ましい。
【0029】
有利には、ヒドロキシカルボン酸及び/又はそれらの塩の含量は、酸化アルミニウム表面積0.1〜5.5μmol/m2である。
【0030】
有利には、本発明による分散液のpH値が、7〜10の範囲であるかどうかが、さらに見出されている。この範囲において、本発明による分散液は、特に低い粘度及び非常に高い安定性を示す。同様のpH値は、通常、メラミン樹脂溶液の貯蔵のために確立されているので、例えば沈殿物のような不利な効果は、この溶液と本発明による分散液との組み合わせた時には観察されない。酸又は塩基は、pH値の調節のために使用されうる。本発明による分散液では、前記のpHの範囲に対する調整は、通常、苛性ソーダ溶液、苛性カリ溶液、アンモニア水又はテトラアルキル水酸化アンモニウムで実施される。
【0031】
特に好ましいのは、
−酸化アルミニウム及び水と同様に、
−少なくとも1つの遊離アミノ基を有する少なくとも1つの有機ホスホン酸、及び
−少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸、特にクエン酸
を含有する、本発明による分散液である。
【0032】
また、特に好ましいのは、
−BET表面積50〜150m2/g、及び分散液中の酸化アルミニウム粒子の質量に基づく凝集物直径40〜90nmを有する、熱分解法で製造された酸化アルミニウム30〜60質量%、
−酸化アルミニウム表面積0.2〜7.5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つの遊離アミノ基を有する少なくとも1つの有機ホスホン酸、及び
−酸化アルミニウム表面積0.1〜5.5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸、特にクエン酸、並びに
−残りの水
を含有する、本発明による分散液である。
【0033】
また、特に好ましいのは、
−BET表面積50〜150m2/g、及び分散液中の酸化アルミニウム粒子の質量に基づく凝集物直径40〜90nmを有する、熱分解法で製造された酸化アルミニウム30〜60質量%、
−酸化アルミニウム表面積0.2〜7.5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つの遊離アミノ基を有する少なくとも1つの有機ホスホン酸、及び
−酸化アルミニウム表面積0.1〜5.5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸、特にクエン酸、並びに
−残りの水
を含有する、pH値7〜10を有する本発明による分散液である。
【0034】
また、特に好ましいのは、
−酸化アルミニウム及び水と同様に、
−少なくとも1つの遊離アミノ基を有する少なくとも1つの有機ホスホン酸、
−少なくとも1つのアミノシラン、及び
−少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸、特にクエン酸
を含有する、本発明による分散液である。
【0035】
また、特に好ましいのは、
−BET表面積50〜150m2/g、及び分散液中の酸化アルミニウム粒子の質量に基づく凝集物直径40〜90nmを有する、熱分解法で製造された酸化アルミニウム30〜60質量%、
−酸化アルミニウム表面積0.2〜7.5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つの遊離アミノ基を有する少なくとも1つの有機ホスホン酸、
−酸化アルミニウム表面積0.2〜5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つのアミノシラン、及び
−酸化アルミニウム表面積0.1〜5.5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸、特にクエン酸、並びに
−残りの水
を含有する、本発明による分散液である。
【0036】
また、特に好ましいのは、
−BET表面積50〜150m2/g、及び分散液中の酸化アルミニウム粒子の質量に基づく凝集物直径40〜90nmを有する、熱分解法で製造された酸化アルミニウム30〜60質量%、
−酸化アルミニウム表面積0.2〜7.5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つの遊離アミノ基を有する少なくとも1つの有機ホスホン酸、
−酸化アルミニウム表面積0.2〜5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つのアミノシラン、及び
−酸化アルミニウム表面積0.1〜5.5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸、特にクエン酸、並びに
−残りの水
を含有する、pH値7〜10を有する本発明による分散液である。
【0037】
本発明による分散液は、さらに、硬質物質を含みうる。硬質物質は、少なくとも6のモース硬度を有し、かつ分散液中の酸化アルミニウム粒子の平均粒径よりも大きい平均粒径を有する物質を意味することを解するべきである。該硬質物質の平均粒径は、通常、1〜100μmである。硬質物質として、例えば、コランダム、融解コランダム、エメリー、スピネル及びカーバイドを挙げることができる。
【0038】
該硬質物質の含有率は、分散液の合計質量に対して、5〜50質量%でありうる。
【0039】
また、特に好ましいのは、
−BET表面積50〜150m2/g、及び分散液中の酸化アルミニウム粒子の質量に基づく凝集物直径40〜90nmを有する、熱分解法で製造された酸化アルミニウム30〜60質量%、
−硬質物質10〜40質量%、
−酸化アルミニウム表面積0.2〜7.5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つの遊離アミノ基を有する少なくとも1つの有機ホスホン酸、
−酸化アルミニウム表面積0.2〜5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つのアミノシラン、及び
−酸化アルミニウム表面積0.1〜5.5μmol/m2の含量を有する少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸、特にクエン酸、並びに
−残りの水
を含有する、pH値7〜10を有する本発明による分散液である。
【0040】
硬質物質を含有する本発明による分散液は、沈積に抗する優れた安定性、加えて良好な加工性によって、区別される。これは、硬質物質なしの本発明による分散液の流動学的特性に帰因するものと思われる。図1は、剪断率に対する、実施例1からの硬質物質を含まない分散液の粘度の依存性を示す。低い剪断率でのより高い粘度は、明らかに認められている。このより高い粘度は、重い硬質物質粒子の沈積傾向を減少する。より高い剪断率での硬質物質含有分散液の後の加工の際、この分散液は、加工性に対して有利な効果を有する、著しく低い粘度を示す。
【0041】
本発明の範囲内で、有機ホスホン酸、シラノール基を有する化合物、及びヒドロキシカルボン酸は、液体の分散相において、可溶性であり、又はシランの場合において加水分解後に一時的に可溶性である化合物を意味することを理解すべきである。
【0042】
本発明の他の目的は、本発明による分散液の製造方法であり、その際、
−1つ又はいくつかの有機ホスホン酸及び/又はそれらの塩、
−場合により、1つもしくはいくつかのシラノール基を有する化合物、又は水性分散液中での加水分解によって1つもしくはいくつかのシラノール基を有する化合物を形成する化合物、
−場合により、1つ又はいくつかのヒドロキシカルボン酸及び/又はそれらの塩
が最初に水中で置かれ、
−酸化アルミニウムを、全て同時に、部分的に又は連続的に添加し、
−1000KJ/m3より大きいエネルギー入力によって分散させ、そして
−場合により、1つ又はいくつかの塩基として作用する物質を、pH値7〜10が確立されるまで添加し、かつ
−場合により、硬質物質を、撹拌しながら添加する。
【0043】
好適で可能な分散装置は、遊星歯車混練機、回転子−固定子装置、撹拌ボール−ミル、シリンダーミル又は高エネルギーミルであり、その際、部分流は、高エネルギーミル中で少なくとも500barの圧力下に置かれ、ノズルを通して放出され、かつ気体又は液体が充填された反応空間内で互いに衝突させ、及び該高エネルギーミルによる粉砕は、場合により、一回又は数回繰り返される。
【0044】
本発明の他の目的は、本発明による分散液及び1つ又はいくつかのメラミン樹脂を含有する配合物である。本明細書では、メラミン樹脂は、当業者に公知の、改質されていない及び改質されたメラミン樹脂を含む。それらの例は、Ullmann’s Enyclopaedia of Industrial Chemistry、Vol.A2、第5版の"アミノ樹脂"の章で、115〜141頁中で記載されている。
【0045】
本発明による配合物は、有利に、配合物の合計質量に対して、メラミン樹脂25〜75質量%を含有する。
【0046】
さらに、(酸化アルミニウム+尿素)/メラミン樹脂の質量比が、1:10〜3:1である場合に、有利である。
【0047】
本発明の他の目的は、本発明による配合物の製造方法であり、その際、本発明による分散液は、撹拌しながら、メラミン樹脂の水溶液に添加される。添加の順序が、逆転されてもよく、すなわち、メラミン樹脂の水溶液も、分散液に添加されてもよい。
【0048】
本発明の他の目的は、基体上への熱処理、水の除去、及び続く熱処理による硬化に対する、本発明による配合物、及び場合により酸又は酸を形成する化合物の混合液の適用によって得られる、硬化生成物である。
【0049】
好適な酸又は酸形成化合物は、脂肪族スルホン酸、脂肪族スルホネート、脂肪族カルボン酸、脂肪族カルボキシレート、芳香族カルボン酸、芳香族カルボキシレート、アルキルベンゼンスルホン酸及び/又はアルキルベンゼンスルホネートであってよい。酸又は酸形成化合物の質量は、有利には、酸化アルミニウムとメラミン樹脂と酸又は酸形成化合物の質量に対して、0.1〜10質量%である。
【0050】
水の除去は、有利には、20〜100℃で、かつ熱処理は、10秒〜24時間にわたって120〜200℃で実施する。
【0051】
本発明の他の目的は、本発明による分散液もしくは本発明による配合物、又は積層品の製造のための本発明による硬化生成物の使用である。
【0052】
実施例
分析法
粘度を、Parr−Physica Co.製のCC27測定システムを有するMCR300装置で測定し、その際、その測定は、0.01〜1000sec-1の剪断率及び23℃で行う。10sec-1及び100sec-1での粘度値が挙げられる。
【0053】
ゼータ電位及び等電点を、Dispersion Technology Inc.製のDT−1200型の装置で、CVI法によって測定する。滴定を、KOH/HNO3で実施する。測定のために、試料を、5質量%のAl23に希釈する。
【0054】
分散液中の酸化アルミニウム粒子の平均粒子サイズd50を、光子相関分光法によって決定する。Zetasizer2000HS装置(英国のMalvern Ltd.)を使用する。ピークの分析から容積重量の中央値が挙げられる。
【0055】
BET表面積は、DIN66131にならって決定される。
【0056】
実施例1(本発明による)
脱イオン水36.6kg、2.25kgのCublen R 60(酸化アルミニウム表面積1.2μmol/m2に相当)、クエン酸一水和物0.875kg(酸化アルミニウム表面積に対応する0.9μmol/m2に相当)及び25%苛性ソーダ溶液2.25kgを、100Lのステンレス鋼のバッチ容器中で最初に設置する。次に、Ystral Conti−TDS3(固定子の溝:4mm環及び1mm環、回転子/固定子の差:約1mm)の吸込管によって、AEROXIDE(登録商標)Alu C 45kg(発熱的に製造された酸化アルミニウム、BET100m2/g、主成分シータ及びデルタの酸化アルミニウム;Degussa AG)を、剪断条件下で導入する。Al23の添加の完了後に、導入ノズルを閉じ、そしてその混合液を、さらに15分間3000rpmで剪断する。最終的に、予備分散液を、Al23含有率50質量%、かつpH値8.0に、25%苛性ソーダ溶液0.38kg及び脱イオン水2.64kgで調節し、そして再び、より均質化するために約5分間剪断する。この分散液を、2500barの圧力及び直径0.3mmのダイヤモンドノズルを有するSugino社製のアルティマイザー(Ultimaizer)HJP−25050高エネルギーミルを介して、2つの経路に通過し、そしてさらに激しく粉砕する。
【0057】
平均凝集物直径は、52nmである(Malvern社製のZetasizer 2000 HSで決定した)。分散液のゼータ電位は、0.18S/mの伝導率で−34mVである。その粘度は、82mPasである(100 1/sec、23℃で、Physica MCR 300を使用)。6ヶ月後でさえ、その分散液は、ゲル化又は沈積の徴候を示さない。
【0058】
実施例2
磁気攪拌機によって、INEOS Melamines GmbH製のメラミン樹脂Madurit(登録商標)MW550の粉末600gを、脱イオン水266.7g中に、50℃で取り入れる。溶解機(1200rpm)によって、室温まで冷却したメラミン樹脂溶液780gを、15分以内に実施例1からの分散液720g中に取り入れる。その配合物は、固体濃度約60質量%を有する。105℃での乾燥後、該配合物は、酸化アルミニウム含有率40質量%、及びメラミン樹脂含有率60質量%を有する。
【0059】
未乾燥の配合物は、低い粘度(24時間後に、100sec-1及び23℃で145mPas)を有する。少なくとも1週間、それは、加工のために好適である。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】剪断率に対する、実施例1からの硬質物質のない分散液の粘度の依存性を示す略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化アルミニウム及び水を含有する分散液であって、その際、酸化アルミニウムが、
−BET表面積20〜200m2/gを有し、かつ平均の、体積に基づく分散液中での凝集物直径100nm未満を有する凝集させた一次粒子の形で存在し、
−有機ホスホン酸及び/又はその塩で表面改質され、その際
−その表面は、完全に又は部分的に改質され、
−有機ホスホン酸は、少なくとも1つのアミノ及び/又はヒドロキシ基を有し
−かつ、分散液の合計質量に対して、含有率20〜70質量%で存在することを特徴とする、酸化アルミニウム及び水を含有する分散液。
【請求項2】
酸化アルミニウム粒子のBET表面積が、50〜150m2/gであることを特徴とする、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
分散液中の酸化アルミニウム粒子の体積に基づく凝集物直径が、40〜90nmであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の分散液。
【請求項4】
酸化アルミニウム粉末が、熱分解法に由来することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の酸化アルミニウム分散液。
【請求項5】
有機ホスホン酸が、一般式
【化1】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6が、それぞれ互いに独立して、H又はCH2−PO(OH)2であり、
Xは、C1〜C10のアルキル残基(直鎖又は分枝鎖状)であり、
a及びbは、それぞれ互いに独立して、0〜2500である]で示される構造を有することを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項6】
該有機ホスホン酸が、一般式
【化2】

[式中、R1は、1〜4個のC原子を有するアルキル基、6〜10個のC原子を有するアリール基、もしくは−PO(OH)2であり、
2は、1〜4個のC原子を有するアルキル基、もしくは6〜10個のC原子を有するアリール基であり、
3は、1〜6個のC原子を有するアルキレン基であり、又は
1及びR3は、芳香環の形で結合させたC原子を共に有し、この場合R2は、不在である]で示される構造を有することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項7】
該有機ホスホン酸が、HOCH2−CH(OH)PO(OH)2、(HO)2OP−CH(OH)−PO(OH)2、(HO)2OP−CH2−CH2−CH(OH)PO(OH)2、及び/又はRがMe、Et、Pr、もしくはBuであるHO2C−CR(OH)PO(OH)2を含有する群から選択されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項8】
有機ホスホン酸又はその塩の含量が、酸化アルミニウム表面積0.2〜7.5μmol/m2であることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項9】
シラノール基を有する1つもしくはいくつかの化合物を含有するか、又は水性分散液中での加水分解によってシラノール基を有する1つもしくはいくつかの化合物を形成させたものであることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項10】
シラノール基を有する化合物の含量が、酸化アルミニウム表面積0.2〜5μmol/m2であることを特徴とする、請求項9に記載の分散液。
【請求項11】
少なくとも1つのヒドロキシカルボン酸及び/又はそれらの塩を含有することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項12】
ヒドロキシカルボン酸及び/又はその塩の含量が、酸化アルミニウム表面積0.1〜5.5μmol/m2であることを特徴とする、請求項11に記載の分散液。
【請求項13】
pH値が、7〜10であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項14】
硬質物質も含有することを特徴とする、請求項1から13までのいずれか1項に記載の分散液。
【請求項15】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の分散液の製造方法であって、
−1つ又はいくつかの有機ホスホン酸及び/又はそれらの塩、
−場合により、1つもしくはいくつかのシラノール基を有する化合物、又は水性分散液中での加水分解によって1つもしくはいくつかのシラノール基を有する化合物を形成された化合物、並びに
−場合により、1つもしくはいくつかのヒドロキシカルボン酸及び/又はそれらの塩
が最初に水中で置かれ、
−酸化アルミニウムを、全て同時に、部分的に又は連続的に添加し、
−1000KJ/m3より大きいエネルギー入力によって分散し、及び
−場合により、1つ又はいくつかの塩基性作用を有する物質を、pH値7〜10が確立されるまで添加し、かつ
−場合により、硬質物質を、撹拌しながら添加することを特徴とする製造方法。
【請求項16】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の分散液、及び1つ又はいくつかのメラミン樹脂を含有する配合物。
【請求項17】
該配合物中のメラミン樹脂の含有率が、該配合物の合計質量に対して、25〜75質量%であることを特徴とする、請求項16に記載の配合物。
【請求項18】
(酸化アルミニウム+硬質物質)/メラミン樹脂の質量比が、1:10〜3:1であることを特徴とする、請求項16又は17に記載の配合物。
【請求項19】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の分散液が、撹拌しながら、メラミン樹脂の水溶液中に添加されることを特徴とする、請求項16から18までのいずれか1項に記載の配合物の製造方法。
【請求項20】
請求項16から18までのいずれか1項に記載の配合物の混合液、及び場合により、酸又は、基体上への熱処理、水の除去、及び続く熱処理による硬化の際に酸を形成する化合物の適用によって得られうる硬化生成物。
【請求項21】
請求項1から14までのいずれか1項に記載の分散液、又は請求項16から18までのいずれか1項に記載の配合物、又は積層品の配合物のための請求項20に記載の硬化生成物の使用。

【図1】
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【公表番号】特表2009−527444(P2009−527444A)
【公表日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555727(P2008−555727)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【国際出願番号】PCT/EP2007/050779
【国際公開番号】WO2007/096226
【国際公開日】平成19年8月30日(2007.8.30)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】