説明

酸化ケイ素ゲル体膜、透明導電性膜および透明導電性膜積層基板並びにそれらの製造方法

【課題】高透過率かつ高導電性を有し、表面が平坦であり耐熱性に優れた金属微粒子で構成される網目状構造物を含有する透明導電性膜および前記透明導電性膜積層基板とその製造方法を提供する。
【解決手段】金属微粒子において、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Fe、Co、Ni、Al、In、Snの金属あるいは前記金属を2種類以上含む合金を加熱焼成して得られる酸化ケイ素ゲル体膜を主成分とし、金属微粒子で構成される網目状構造物が内包されたことを特徴とする透明導電性膜及び透明導電性膜積層基板である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属微粒子で構成される網目状構造物を内包する酸化ケイ素を主成分とした酸化物膜が積層した透明導電性膜および透明導電性膜積層基板と製造方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイや有機ELなどの表示デバイス、タッチパネルなどの入力センサー、薄膜型アモルファスSi太陽電池や色素増感太陽電池などの太陽光を利用した太陽電池などの電極には透明性を有した導電性膜が使用されている。
【0003】
中でも透明酸化物であるITO(InとSnの酸化物)やZnOを主成分とした薄膜が主に用いられており、微粒子分散溶液の塗布法により作製される場合もあるが、高い透明性と高い導電性を得るために一般的にはスパッタ装置や蒸着装置により気相法により作製されている。
【0004】
一方、前記のような気相法による連続膜の透明導電性膜のかわりに、金属膜を格子状や網目状に形成し、金属膜部が導電性を担い、空孔部が光透過性を担う形の透明導電性膜が開示されている。例えば、Cu膜の連続膜を製膜した後に格子状にCu膜をエッチングしたプラズマディスプレイ用のEMIシールド膜は実際に採用されており、また、同目的のために金属微粒子分散溶液を塗布あるいは印刷することで網目状構造を持つ導電性部を形成させ、さらにめっきを施す方法が検討されている。いずれの手法も気相法に必要な真空装置が不要であり、透明酸化物に比べ透明性を維持したまま導電性を向上させることが可能な方法である。
【0005】
従来より、金属微粒子ペーストを基板上に網目状にスクリーン印刷し、加熱焼成することで網目状構造物を有する透明導電性膜積層基板とその製造法が知られている(特許文献1)。また金属微粒子分散溶液よりW/O型エマルジョンを調製し、基板上に塗布・乾燥させることで金属微粒子が網目状構造を形成し、透明導電性膜を基板上に形成する方法が知られている(特許文献2及び3)。
【0006】
【特許文献1】特開2007−227906号公報
【特許文献2】特表2005−530005号公報
【特許文献3】特開2007−234299号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
高透過率、高導電性であり、しかも平坦性を有し、且つ、耐熱性と耐候性に優れた材料で構成された透明導電性膜および透明導電性膜積層基板は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0008】
即ち、上述したいずれの方法も透明導電性膜として重要な高透過率と高導電性を有した透明導電性膜積層基板を得ることができるが、これらの透明導電性膜積層基板では、その製法から必然的に透明導電性膜の上面は導電性部が凸状になってしまい、平坦性が十分ではない。そのため上部に別の機能性薄膜を積層させる場合、例えば有機EL用の電極や薄膜型太陽電池の電極に用いた場合には発光効率や発電効率の低下が懸念される。
【0009】
また、機能性薄膜を積層する場合には、現在のところ気相法プロセスに頼らざるを得ないところが多く、製膜時あるいは製膜前後に基板あるいは機能性薄膜積層基板を加熱する必要があるなど透明導電性膜積層基板に十分な耐熱性が要求される。
【0010】
さらに、室外での長期間の使用に対して十分な耐候性と性能維持が要求される太陽電池に用いられる透明導電性膜積層基板では、時間の経過とともに内部に含まれる有機物などが分解析出すると発電効率の低下を招く恐れがあるため、長期間安定した材料で構成された透明導電性膜が望まれる。
【0011】
そこで、本発明では、高透過率、高導電性であり、平坦性が改善され、耐熱性と耐候性に優れた材料で構成された透明導電性膜および透明導電性膜積層基板を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記技術課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0013】
即ち、本発明は、金属微粒子で構成される網目状構造物を内包し、ポリシラザンを主成分とする酸化ケイ素ゲル体膜である(本発明1)。
【0014】
また、本発明は、前記酸化ケイ素ゲル体膜の金属微粒子において、Au、Ag、Cu、Pt、Pd、Fe、Co、Ni、Al、In、Snから選ばれた金属あるいは前記金属の2種類以上を含む合金である酸化ケイ素ゲル体膜である(本発明2)。
【0015】
また、本発明は、前記酸化ケイ素ゲル体膜において、主成分のポリシラザンにペルヒドロポリシラザンを用いて生成した酸化ケイ素ゲル体膜である(本発明3)。
【0016】
また、本発明は、前記いずれかに記載の酸化ケイ素ゲル体膜を加熱及び/又は加湿処理して得られる透明導電性膜であって、該透明導電性膜は酸化ケイ素を主成分とする酸化物中に金属微粒子で構成される網目状構造物が内包されていることを特徴とする透明導電性膜である(本発明4)。
【0017】
また、本発明は、前記透明導電性膜をガラス基板に積層した透明導電性膜積層基板である(本発明5)。
【0018】
また、本発明は、前記いずれかに記載の金属微粒子で構成される網目状構造物を基板上に形成させた後、該網目状構造物にポリシラザンを主成分とする溶液を塗布し、次いで、乾燥して酸化ケイ素ゲル体膜を調製することを特徴とする酸化ケイ素ゲル体膜の製造方法である(本発明6)。
【0019】
また、本発明は、前記いずれかに記載の金属微粒子で構成される網目状構造物を基板上に形成させた後、該網目状構造物にポリシラザンを主成分とする溶液を塗布し、次いで、乾燥して酸化ケイ素ゲル体膜を加熱及び/又は加湿処理することを特徴とする透明導電性膜の製造方法である(本発明7)。
【0020】
また、本発明は、前記いずれかに記載の金属微粒子で構成される網目状構造物を基板上に形成させた後、該網目状構造物にポリシラザンを主成分とする溶液を塗布し、次いで、乾燥して酸化ケイ素ゲル体膜を調製した後、当該酸化ケイ素ゲル体膜を接着層としてガラス基板に接着した後、前記基板を取り除き、続いて加熱及び/又は加湿処理することを特徴とする透明導電性膜の製造方法である(本発明8)。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る金属微粒子で構成される網目状構造物を内包する酸化ケイ素を主成分とした酸化物膜が積層した透明導電性基板は、高透過率、高導電性であり、表面の平坦性が改善され、耐熱性と耐候性に優れるため、有機ELや薄膜型太陽電池などの透明導電性膜積層基板として用いることが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の構成を図1に示す製造工程に従って、より詳しく説明すれば次の通りである。
【0023】
最初に基板(10)上に金属微粒子分散溶液あるいは金属微粒子を含有するインキを塗布あるいは印刷し、その後に加熱及び/又は化学処理により網目状構造を有する導電性部を形成させる(図1の(A))。
【0024】
次に、ポリシラザンを主成分とする溶液(2)を、最終的に生成する酸化ケイ素を主成分とする酸化物が前記網目状構造を有する導電性部を覆う膜厚になるように調整するよう塗布する(図1の(B))。その後、乾燥させ金属微粒子で構成された網目状構造を有する導電性部を含む酸化ケイ素ゲル体膜(3)を基板上に作製する(図1の(C))。
【0025】
次に、ガラス基板(11)上面あるいは前記酸化ケイ素ゲル体膜の上面に上述したポリシラザンを主成分とする溶液(2)を塗布した後、ガラス基板上面と前記酸化ケイ素ゲル体上面を向かい合わせるように貼り合わせ、加圧しながら乾燥させ、ガラス基板と酸化ケイ素ゲル体膜を接着する(図1の(D))。
【0026】
金属微粒子で構成される網目状構造を有する導電性部を含む酸化ケイ素ゲル体膜(3)とガラス基板を接着させる(図1の(E))。その後に、基板を取り除く(図1の(F))。さらに、加熱及び/又は加湿処理を行い、酸化ケイ素ゲル体膜をガラス化へと転換することで、本発明の金属微粒子で構成された網目状構造を有する透明導電性膜積層基板(5)を得ることができる(図1の(G))。
【0027】
金属微粒子で構成される網目状構造を有する導電性部を含有する酸化ケイ素ゲル体膜とガラス基板とを接着する方法は、上述した方法以外でも良い。例えば、金属微粒子で構成された網目状構造を有する導電性部を含有する酸化ケイ素ゲル体膜の生成とガラス基板への接着を同時に進行させる場合には、基板上に金属微粒子で構成された網目状構造を有する導電性部を形成させた後、ガラス基板と対面させ、基板とガラス基板の間にポリシラザンを主成分とする溶液を挿入した後、乾燥させ酸化ケイ素ゲル体膜を生成させた後に基板を取り除いても良い。
【0028】
上述した手法により得られる透明導電性基板は、金属微粒子で構成される網目状構造を有する導電性部により高導電性を有し、さらに酸化ケイ素を主成分とする酸化物が導電性部の網目部分を充填した構造であるので、上面の平坦性が改善されるとともに高透過率であり、さらに耐熱性・耐候性に優れる透明導電性膜積層基板である。
【0029】
金属微粒子で構成される網目状構造を有する導電性部の金属微粒子は、従来開示されているガス中蒸発法などの気相法あるいは金属塩を溶液中で還元する液相還元法、または金属錯体の加熱分解による金属微粒子の調製法などを用いて調製することができる。
【0030】
金属微粒子の金属原料としてはAu、Ag、Cu、Pt、Pd、Fe、Co、Ni、Al、In、Snなどを用いることが出来る。あるいは前記金属を2種類以上含む合金であっても良い。近年、電子回路の微細配線形成用に用いられているAu、Ag、Cu、Pt、PdあるいはAu、Ag、Cu、Pt、Pdを2種類以上含む合金を用いるのがより好ましい。
【0031】
金属微粒子は分散溶液あるいは印刷用インキなどに調製し、基板上に塗布あるいは印刷される。そのため、金属微粒子の表面は適当な表面処理剤あるいは分散剤などで処理されていることが好ましい。表面処理剤あるいは分散剤は各分散溶液や各印刷用インキに最適に分散する表面処理剤あるいは分散剤を用いるのが好ましい。
【0032】
金属微粒子分散溶液あるいは金属微粒子を含む印刷インキを塗布または印刷する基板(10)は、ポリシラザンを主成分とする溶液に対する耐薬品性が有り、金属微粒子分散溶液あるいは金属微粒子を含む印刷インキによる網目状構造を有する導電性部を形成させるのに耐えうる、耐薬品性および耐熱性を有する必要がある。上記条件に合う基板としてはポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂や、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂などが好ましい。
また、ポリシラザンから酸化ケイ素ゲル体膜を形成した後、基板を剥離しやすいように、予め基板表面に酸化ケイ素との親和性を弱めるコーティングを施したものでも良い。
【0033】
次に、金属微粒子で構成される網目状構造を有する導電性部を形成する場合には、特許文献2記載の金属微粒子分散溶液の塗布する方法や特許文献1記載の金属微粒子分散インクをスクリーン印刷する方法を用いても良い。
【0034】
金属微粒子で構成される網目状構造を有する導電性部を形成した後、導電性の向上を目的に基板が耐えうる範囲で加熱及び/又は化学処理を行うことが好ましい。
【0035】
金属微粒子で構成される網目状構造を有する導電性部の厚みは0.4μm以上が好ましい。0.4μmより薄い場合には、十分な導電性が得られない。その上限の膜厚は10μmが好ましい。10μmを超える場合には同時に網部分の線幅が広がり易く、結果的に透過率の低下をもたらすためである。
【0036】
次に金属微粒子で構成される網目状構造を有する導電性部を内包するようにポリシラザンを主成分とする溶液を塗布する(図1の(B))。
【0037】
ポリシラザンは、−SiR−NR−SiR−(RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子または炭化水素基を示す)で示されるシラザン結合を有する線状または環状の化合物の総称であり、加熱あるいは水分との反応によってSi−NR−Si結合が分解してSi−O−Siネットワークを形成する材料である。
本発明においては、上記一般式のR、Rが水素であるペルヒドロポリシラザン、又はRがメチル基である、部分的に有機化されたポリシラザンが好ましく用いられる。
【0038】
ポリシラザンを主成分として調製する溶液中には、ポリシラザンのシラザン結合の反応性を向上させるために、金属微粒子触媒(Pdなど)あるいはアミン触媒などが含まれていても良い。
あるいは、ガラス化させる場合に酸化ケイ素中のクラックを防止する目的のために、有機チタン化合物が含まれていても良い。例えば特開2006−265344号公報に記載されている有機チタン化合物としてはテトラアルコキシチタン化合物、チタンキレート化合物、チタンアシレート化合物、チタネート系カップリング剤などがある。
【0039】
【特許文献4】特開2006−265344
【0040】
ポリシラザンを主成分とする溶液中におけるポリシラザンの含有量は40wt%以下が好ましい。より好ましくは20wt%以下である。40wt%より濃い場合は、塗布する場合に粘度が上昇する場合や、保存安定性に問題があり好ましくない。濃度の下限値は特に制限はないが1wt%以下であると、所望の厚みを得るために何度も重ね塗りする必要があるため生産性が悪く好ましくない。
【0041】
ポリシラザンを主成分とする溶液に用いる溶媒としては、ポリシラザンを溶解して急激にポリシラザンと反応しない溶媒であれば特に限定されない。具体的には脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン類、エステル類、エーテル類、ハロゲン化炭化水素類、などが挙げられる。これらの溶媒を単独に用いても混合して用いても良い。
ポリシラザンの溶解性とポリシラザンとの低反応性から、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカンなどの脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素が好ましい。
【0042】
ポリシラザンを主成分とする溶液を塗布する方法は、特に限定されず、例えば、ディップコート法、スピンコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、グラビア印刷、ロールコート法、メニスカスコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0043】
上述したポリシラザンを主成分とする溶液を塗布する場合には、酸化ケイ素ゲル体膜が前記金属微粒子で構成される網目状構造物を十分覆うだけの膜厚になる様に調製することが好ましい。金属微粒子で構成される網目状構造物の膜厚によって厚みは異なるが、0.5μm〜10μmになるよう調製することが好ましい。0.5μm以下であると十分に導電性部を覆うことが出来ず、10μm以上であると、酸化ケイ素ゲル体膜をさらに加熱及び/又は加湿処理してガラス化していく過程でクラックやボイドが発生しやすく好ましくない。クラックやボイドは透過率低下の原因となるため好ましくない。
【0044】
酸化ケイ素ゲル体膜の所望の厚みを得るために、塗布する回数を数回に分けて行っても良い。また、塗布する毎に塗布厚みを変えて行なっても良い。
【0045】
ポリシラザンを主成分とする溶液を塗布した後、200℃以下で塗膜を乾燥させる。乾燥時間は30秒〜2時間程度が好ましい。この乾燥工程によって、ポリシラザンのシラザン結合の一部が反応し、金属微粒子で構成される網目状構造物を内包する酸化ケイ素ゲル体膜が生成する(図1の(C))。
乾燥温度および乾燥時間は、ポリシラザンを主成分とする溶液の濃度や触媒の種類などによって最適な条件を選ぶことが好ましい。
【0046】
次に、ガラス基板上面あるいは上述した酸化ケイ素ゲル体膜の表面に、ポリシラザンを主成分とする溶液を塗布した後、乾燥させることで酸化ケイ素ゲルを形成させ、ガラス基板と酸化ケイ素ゲル体膜を接着させる(図1の(D))。
接着層である酸化ケイ素ゲルの膜厚は特に限定されないが、金属微粒子で構成される網目状構造物を内包する酸化ケイ素ゲル体膜とガラス基板との接着力が十分得られるように適宜選択すれば良い。
好ましくは10μm以下である。より好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは1μm以下である。10μmより厚い場合は、ガラス化したときにクラックやボイドが入る可能性が高く好ましくない。
【0047】
十分に接着されていることを確認した後に基板(10)を取り除くことで、金属微粒子で構成される網目状構造物を内包する酸化ケイ素ゲル体膜がガラス基板に積層された透明導電性膜基板を得ることができる。
【0048】
次に、大気中、100〜500℃で前記酸化ケイ素ゲル体膜が積層したガラス基板を、10分〜24時間加熱させることでガラス化し、金属微粒子で構成された網目状構造物を内包する酸化ケイ素ゲルがガラス基板上に積層した透明導電性膜積層基板(5)を得ることができる(図1の(G))。
【0049】
あるいは、大気中、室温下で前記酸化ケイ素ゲル体膜が積層したガラス基板を1週間〜4週間静置させることでガラス化し、金属微粒子で構成される網目状構造物を内包する酸化ケイ素がガラス基板上に積層した透明導電性膜積層基板を得ることができる。
【0050】
大気中において100℃以下で加熱する場合には、加湿することが好ましい。加湿することによりシラザン結合の反応が促進され、ガラス化のための静置時間を短縮させることが出来る。
【0051】
本発明に係る透明導電性積層基板における表面抵抗値は、100Ω/□以下が好ましく、より好ましくは50Ω/□以下であり、更により好ましくは、20Ω/□以下である。100Ω/□以上の場合は、高導電性膜とは言い難く好ましくない。
【0052】
本発明に係る透明導電性積層基板における中心線表面粗さ(Ra)は、1.0μm以下が好ましく、より好ましくは0.2μm以下であり、更により好ましくは0.1μm以下である。1.0μm以上の場合は、機能性薄膜を積層した場合に機能を低下させるため好ましくない。
【0053】
本発明に係る透明導電性積層基板における全光線透過率は、60%以上が好ましく、より好ましくは70%以上であり、更により好ましくは80%以上である。60%以下の場合は、高透明性とは言い難く好ましくない。
【実施例】
【0054】
本発明の代表的な実施例は、次のとおりである。
【0055】
透明導電性膜の酸化ケイ素ゲル体膜の厚みは、基板上にマスキングを施し(ポリイミド製のマスキング用テープを使用)、酸化ケイ素ゲル体膜を作製した後、マスキング用テープを除去して出来る段差を触針式表面粗さ計(DEKTAK製)で測定し酸化ケイ素ゲル体膜の膜厚として測定した。
【0056】
透明導電性膜積層基板の表面粗さは、触針式表面粗さ計(DEKTAK製)を用いて、中心線表面粗さ(Ra)を測定した。
【0057】
表面抵抗は、MCP−T600(三菱化学株式会社製)を用いて、試料の3点を測定し、その平均値を表面抵抗値とした。
【0058】
全光線透過率は、ヘイズメーターNDH2000(日本電色工業株式会社製)を用いて、試料の全光線透過率を3点測定し、その平均値を透過率とした。
【0059】
<銀微粒子1の調製法>
硝酸銀40g、ブチルアミン37.9g、メタノール200mLを加え、1時間攪拌し、A液を調製した。別にイソアスコルビン酸62.2gを取り、水400mLを加え攪拌して溶解し、続いてメタノール200mLを加えB液を調製した。B液をよく攪拌しA液をB液に1時間20分かけて滴下した。滴下終了後、3時間30分攪拌を継続した。攪拌終了後、30分間静置し固形物を沈降させた。上澄みをデカンテーションにより取り除いた後、新たに水500mLを加え、攪拌、静置、デカンテーションにより上澄み液を取り除いた。この精製操作を3回繰り返した。沈降した固形物を40℃の乾燥機中で乾燥し、水分を除去した。さらに、得られた銀微粒子20gとDisperbyk−106(ビッグケミージャパン社製)0.2gをメタノール100mLと純水5mLの混合溶液中に混合し、1時間混合した後に、純水100mLを加えて、スラリーをろ過した後、40℃の乾燥機中で乾燥させて、銀微粒子1を得た。銀微粒子1は電子顕微鏡による観察から一次粒子の平均粒子径が60nmであった。
【0060】
<銀微粒子分散溶液2の調製法>(特表2005−530005を参考に調製)
銀微粒子1を4g、トルエン30g、BYK−410(ビッグケミージャパン社製)0.2gを混合し、出力180Wの超音波分散機で1.5分間分散化処理を行い、純水15gを添加し、得られた乳濁液を出力180Wの超音波分散機で30秒間分散処理を行い、金属微粒子分散溶液2を調製した。
【0061】
<銀微粒子を含む網目状構造物の作製法>
ポリエチレンテレフタレート樹脂基板(以下PET基板)上に、銀微粒子分散溶液2をバーコーターにより塗布した後、乾燥させることでPET基板上に金属微粒子が網目状に繋がった透明導電性膜を作製した。さらに、導電性部位の導電性を向上させるため、大気中70℃で30秒の間熱処理を施し、さらにギ酸蒸気を含む雰囲気中で、70℃で30分熱処理し、銀微粒子で構成される網目状構造物を有した透明導電性膜積層基板を作製した。
【0062】
実施例1
上述した方法により作製した銀微粒子を含む網目状構造物が積層したPET基板上に、ペルヒドロポリシラザン溶液(AZ−エレクトロニックマテリアルズ社製、商品名:アクアミカNP−110)を乾燥後の酸化ケイ素ゲル体膜の厚みが2.0μmになるように塗布した。次に、30℃で1時静置し、酸化ケイ素ゲル体膜を得た。
次に前記ペルヒドロポリシラザン溶液を酸化ケイ素ゲル体膜の厚みが0.5μmになるように、ガラス基板上に塗布した後、前述の酸化ケイ素ゲル体膜側と向かい合う位置で貼り合わせ、30℃で1時間乾燥させることによりガラス基板と酸化ケイ素ゲル体膜を接着させた。
次にPET基板を取り除き、250℃で3時間焼成することで、銀微粒子を含む網目状構造物を有した透明導電性膜積層基板を得た。中心線平均粗さ(Ra)は0.08μmであり、従来の透明導電性膜に比較して表面平坦性に優れていた。表面抵抗値は10Ω/□であり、全光線透過率は81%であった。耐熱性試験として耐熱性テストとして250℃で1時間加熱したが、加熱前と同様の表面抵抗と全光線透過率であった。
【0063】
実施例2
上述した方法により作製した銀微粒子を含む網目状構造物が積層したPET基板上に、ペルヒドロポリシラザン溶液(AZ−エレクトロニックマテリアルズ社製、商品名:アクアミカNP−110)を乾燥後の酸化ケイ素ゲル体膜の厚みが1.5μmになるように塗布した。次に、30℃で1時静置し、酸化ケイ素ゲル体膜を得た。
次に前記ペルヒドロポリシラザン溶液を酸化ケイ素ゲル体膜の厚みが1.0μmになるように、ガラス基板上に塗布した後、前述の酸化ケイ素ゲル体膜側と向かい合う位置で貼り合わせ、30℃で1時間乾燥させることによりガラス基板と酸化ケイ素ゲル体膜を接着させた。
中心線平均粗さ(Ra)は0.09μmであり、表面平坦性が改善されていた。表面抵抗値は15Ω/□であり、全光線透過率は80%であった。
【0064】
比較例1
上述した方法により銀微粒子分散溶液をPET基板上に塗布・乾燥させ、熱処理及び化学処理を施し、銀微粒子を含む網目状構造物を積層した。表面抵抗値は6Ω/□、全光線透過率は86%であった。
表面粗さ計で測定した中心線平均粗さ(Ra)は1.2μmであり、平坦性の乏しい表面であった。耐熱性テストとして250℃で1時間加熱したところ、PETフィルムが収縮してしまうと同時に黄色に変色し透明導電性膜としての機能を失ってしまった。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明に係る透明導電性膜および透明導電性膜積基板は、高導電性(低抵抗)で高透過率であり、耐熱性および平坦性に優れ、本発明に係る透明導電性膜及び透明導電性膜積層基板の製造方法は、特別な装置を用いることなく容易に作製することが可能であるので、薄膜型太陽電池あるいは有機EL用の透明電極に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る透明導電性膜積層基板の製造方法を示したフローチャートである。
【符号の説明】
【0067】
1 金属微粒子で構成させる網目状構造物
2 ポリシラザン溶液
3 酸化ケイ素ゲル(ポリシラザンとシリカの中間状態)
4 透明導電性膜
5 透明導電性膜積層基板
10 基板
11 ガラス基板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属微粒子で構成される網目状構造物を内包し、ポリシラザンを主成分とすることを特徴とする酸化ケイ素ゲル体膜。
【請求項2】
請求項1記載の金属微粒子がAu、Ag、Cu、Pt、Pd、Fe、Co、Ni、Al、In、Snから選ばれた金属あるいは前記金属の2種類以上を含む合金である酸化ケイ素ゲル体膜。
【請求項3】
請求項1及び2記載の酸化ケイ素ゲル体膜において、主成分のポリシラザンにペルヒドロポリシラザンを用いて生成した酸化ケイ素ゲル体膜。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の酸化ケイ素ゲル体膜を加熱及び/又は加湿処理して得られる透明導電性膜であって、該透明導電性膜は酸化ケイ素を主成分とする酸化物中に金属微粒子で構成される網目状構造物が内包されていることを特徴とする透明導電性膜。
【請求項5】
請求項4記載の透明導電性膜をガラス基板に積層した透明導電性膜積層基板。
【請求項6】
金属微粒子で構成される網目状構造物を基板上に形成させた後、該網目状構造物にポリシラザンを主成分とする溶液を塗布し、次いで、乾燥して酸化ケイ素ゲル体膜を調製することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の酸化ケイ素ゲル体膜の製造方法。
【請求項7】
金属微粒子で構成される網目状構造物を基板上に形成させた後、該網目状構造物にポリシラザンを主成分とする溶液を塗布し、次いで、乾燥して酸化ケイ素ゲル体膜を調製した後、当該酸化ケイ素ゲル体膜を加熱及び/又は加湿処理することを特徴とする請求項4記載の透明導電性膜の製造方法。
【請求項8】
金属微粒子で構成される網目状構造物を基板上に形成させた後、該網目状構造物にポリシラザンを主成分とする溶液を塗布し、次いで、乾燥して酸化ケイ素ゲル体膜を調製した後、当該酸化ケイ素ゲル体膜を接着層としてガラス基板に接着した後、前記基板を取り除き、続いて加熱及び/又は加湿処理することを特徴とする請求項5記載の透明導電性膜の製造方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−143802(P2010−143802A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−324354(P2008−324354)
【出願日】平成20年12月19日(2008.12.19)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】