説明

酸化チタン前駆体の製造方法

【課題】室内に配置されている蛍光灯下のように、可視光および紫外線照射下でも高い光触媒活性を示す酸化チタンを製造するための酸化チタン前駆体の製造方法およびこれを用いた酸化チタンの製造方法を提供する。
【解決手段】水溶性チタン化合物と塩基とを混合・反応させて加水分解し、酸化チタン前駆体スラリーとする混合反応工程と、この混合反応工程により得られた反応生成物をろ過する工程と、ろ過工程により得られたろ過残渣を乾燥する工程とを有する。混合反応工程での酸化チタン前駆体スラリーの最終pHを、7以下とする酸化チタン前駆体の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸化チタン前駆体の製造方法と酸化チタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からの紫外線照射による光触媒に代えて、可視光線の照射によっても、触媒作用を示す光触媒が発見され、この光触媒の製造方法として各種提案がなされている。例えば、塩化チタン、オキシ塩化チタン、硫酸チタン、オキシ硫酸チタンのようなチタン化合物と特定量のアンモニアを混合し、得られた加水分解物を焼成する方法(特許文献1)である。
【0003】
特許文献1に記載されている方法によれば、可視光線の照射に対して高い光触媒作用を示す酸化チタンが得られることが記載されている。
【特許文献1】特開2002−47012号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
酸化チタンとしては、悪臭除去や自己自浄作用を発揮させるべく室内壁面などに使用した場合、室内の蛍光灯からの光によって、より高い光触媒活性を示すものが求められている。
【0005】
そこで、本発明の目的は、室内に配置されている蛍光灯下に、高い光触媒活性を示す酸化チタンを製造するための酸化チタン前駆体の製造方法およびこの酸化チタン前駆体を用いた酸化チタンの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、各請求項記載の発明により達成される。すなわち、本発明に係る酸化チタン前駆体の製造方法の特徴構成は、水溶性チタン化合物と塩基とを混合・反応させて加水分解し、酸化チタン前駆体スラリーとする混合反応工程と、この混合反応工程により得られた反応生成物をろ過する工程と、ろ過工程により得られたろ過残渣を乾燥する工程とを有する酸化チタン前駆体の製造方法において、前記混合反応工程での酸化チタン前駆体スラリーの最終pHを、7以下とすることにある。
【0007】
この構成によれば、室内の蛍光灯のような可視光と共に紫外線を照射する光源の下での光触媒活性が高く、しかも微粒子状のアナターゼ型酸化チタン前駆体を製造することができる。これは、光触媒活性を阻害する不純物である窒素を、酸化チタン前駆体スラリーの最終pHを7以下にすることにより少なくでき、紫外線照射下でも光触媒活性を高く維持できると考えられる。より好ましくは、酸化チタン前駆体スラリーの最終pHを7以下、4以上とすることである。酸化チタン前駆体スラリーがpH4未満であると、可視光線の照射下での光触媒活性が幾分低下傾向となり易いためである。ここに酸化チタン前駆体とは、アナターゼ型酸化チタン以外の酸素含有チタン化合物であって、310〜500℃の空気中で焼成したときに、組成式TiO2 で示される酸化チタン光触媒体となり得る化合物をいう。
【0008】
その結果、室内に配置されている蛍光灯下のように、可視光および紫外線照射下でも高い光触媒活性を示す酸化チタンを製造するための酸化チタン前駆体の製造方法を提供することができた。
【0009】
前記加水分解を、水溶性チタン化合物と過酸化水素とを混合すると共に、これに前記塩基を80℃以下で添加することが好ましい。
【0010】
この構成によれば、乾燥後の酸化チタン前駆体を310〜500℃の空気中で焼成したとき、確実に組成式TiO2で示される酸化チタン光触媒体となり易く、しかも、塩基を80℃以下で添加することから、チタン化合物に対する過酸化水素による加水分解が効率よく進行し、酸化チタン前駆体を構成するチタン過酸化物を得ることができる。反応温度としては、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下である。
【0011】
前記チタン化合物が、三塩化チタン、四塩化チタン、オキシ硫酸チタン、硫酸チタンから選ばれたものであることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、これらチタン化合物により形成された酸化チタン前駆体を310〜500℃に焼成すると、確実にアナターゼ型酸化チタンを生成することができる。
【0013】
また、本発明に係る酸化チタンの製造方法の特徴構成は、請求項1〜3のいずれか1項記載の酸化チタン前駆体を310〜500℃で焼成することにある。
【0014】
この構成によれば、室内に配置されている蛍光灯下のように、可視光および紫外線照射下でも高い光触媒活性を示す酸化チタンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。本実施形態に係る酸化チタン前駆体の製造方法は、チタン化合物の酸性水溶液から原料錯体を生成し、これとアンモニア水などの塩基とを混合・反応させて加水分解して、水酸化チタンを主成分とした酸化チタン前駆体スラリーを析出させる。この場合、そのまま熟成させた後、更に塩基を加えて、酸化チタン前駆体スラリーを析出させる水溶液の最終的なpHを、7以下にすることを特徴とする。このようにすることにより、焼成後の酸化チタン結晶中に存在する不純物である窒素を低減でき、可視光のみならず紫外光照射に対しても、光触媒活性を示すようになる。つまり、窒素量が多いと紫外光照射によって発熱するだけで、光触媒を失活させてしまう。より好ましくは、酸化チタン前駆体スラリーをpH7以下、4以上とする。酸化チタン前駆体スラリーがpH4未満であると、可視光線の照射下での光触媒活性が幾分低下するためである。
【0016】
次いで、生成した酸化チタン前駆体スラリーをろ過し、このろ過工程により得られたろ過残渣である酸化チタン前駆体を必要に応じて洗浄し、その後乾燥工程を経ると共に、必要に応じて解砕する工程、及び焼成工程を経て、酸化チタンを得る。
【0017】
チタン化合物水溶液に、過酸化水素などの発泡成分を混合して加水分解することが好ましい。その場合、水溶性チタン化合物と過酸化水素とを混合したものに、アンモニア水などの塩基を80℃以下で添加する。このようにすると、乾燥後の酸化チタン前駆体を310〜500℃の空気中で焼成したとき、確実に組成式TiO2で示される酸化チタン光触媒体となり易く、しかも、塩基を80℃以下で添加することから、チタン化合物に対する過酸化水素による加水分解が効率よく進行し、酸化チタン前駆体を構成するチタン過酸化物を得ることができる。反応温度としては、好ましくは60℃以下、より好ましくは55℃以下である。
【0018】
チタン化合物としては、三塩化チタン、四塩化チタン、オキシ硫酸チタン、硫酸チタンなどを挙げることができる。これらチタン化合物から形成された酸化チタン前駆体を310〜500℃に焼成すると、確実にアナターゼ型酸化チタンを生成することができる。しかも、比表面積の大きいアナターゼ型酸化チタンを生成し易い。
【0019】
乾燥工程として、炉内最大水蒸気分圧が45kPa以下の雰囲気で乾燥することが好ましい。炉内最大水蒸気分圧が45kPa以下の雰囲気に維持しつつ、200℃以上かつ300℃以下で乾燥することにより、高活性な酸化チタンを製造可能な酸化チタン前駆体を得ることができる。かかる乾燥工程を採用することにより、酸化チタン前駆体中の窒素原子を逃散させることなく、焼成によって、微粒子化が容易で可視光線および紫外線の照射による光触媒活性が高いアナターゼ型酸化チタン光触媒体を生成することができる。
【0020】
また、乾燥工程を、予備乾燥およびこれに続く本乾燥を行う2段階の工程を採用してもよい。すなわち、200℃以下の温度で予備乾燥し、その後200℃を超え300℃以下で本乾燥することにより、高活性な酸化チタンを製造可能な酸化チタン前駆体を得るようにしてもよい。かかる乾燥工程を採用することにより、酸化チタン前駆体中の窒素原子を逃散させることなく、焼成によって、微粒子化が容易で可視光線および紫外線の照射による光触媒活性が高いアナターゼ型酸化チタン光触媒体を生成することができる。
【0021】
酸化チタン前駆体は、アナターゼ型酸化チタン以外の酸素含有チタン化合物(非晶質を含む)であって、310〜500℃の空気中で焼成したときに、組成式TiO2で示される酸化チタン光触媒体となり得る化合物、具体的には、例えば、チタン水酸化物、チタン過酸化物のような酸素含有無機チタン化合物である。
【0022】
チタン水酸化物の具体例としては、Ti(OH)2、Ti(OH)3、Ti(OH)4、TiO(OH)2で示されるものが挙げられる。また、チタン過酸化物としては、水酸化チタンのTi−O−H結合の一部がTi−O−O結合に代わっているもの、酸化チタンのTi−O結合の一部がTi−O−O結合に代わっているもの、またはこれらの混合物、例えば、式(1)で示されるものが挙げられる。
【0023】
Ti(O2xy(OH)z (1)
〔式(1)中、0<x<4、0≦y<2、0≦z<4。〕
酸化チタン前駆体は、これらのうち1種であってもよいし、これらの混合物であってもよい。
【0024】
さらに、本製造法で得られる酸化チタンは、BET比表面積が70m2/g以上であることが好ましい。BET比表面積が小さいことは、一次粒子径が大きいことを示す。逆に、BET比表面積が大きいことは、一次粒子径が小さいことを示し、高活性な酸化チタン光触媒体であると同時に、微細で分散性に優れる粒子状の酸化チタン光触媒体となり得る。
【0025】
乾燥設備は、雰囲気を炉内最大水蒸気分圧が45kPa以下にできるものが好ましく、例えば、管状型電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉のような乾燥機を用いて、機内からガスを排出したり、またはガスを導入したりして行うことができる。
【0026】
焼成して得られるアナターゼ型酸化チタンには、必要に応じて、酸性金属酸化物または塩基性金属化合物を表面被覆してもよい。表面被覆する酸性金属酸化物は、ブレンステッド酸点、ルイス酸点またはそれらの両方を有するもののいずれであってもよく、例えば、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、ガリウム、インジウム、スズのような金属の1元系酸化物、珪素−亜鉛、珪素−ジルコニウム、珪素−マグネシウム、珪素−カルシウム、珪素−ガリウム、珪素−アルミニウム、珪素−ランタン、珪素−チタン、チタン−亜鉛、チタン−銅、チタン−亜鉛、チタン−アルミニウム、チタン−ジルコニウム、チタン−鉛、チタン−ビスマス、チタン−鉄、亜鉛−マグネシウム、亜鉛−アルミニウム、亜鉛−ジルコニウム、亜鉛−鉛、亜鉛−アンチモンのような2種金属の複合酸化物である。また、酸点をもつ金属酸化物であれば3種以上の金属の複合酸化物で表面被覆してもよい。これらの金属酸化物の中でも、特に、ジルコニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、アルミニウム、スズのような金属の1元系酸化物が好ましい。
【0027】
表面被覆する塩基性金属化合物は、ブレンステッド塩基点、ルイス塩基点またはそれらの両方を有するもののいずれであってもよく、例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化ランタン、酸化セリウム、酸化亜鉛、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化ランタン、水酸化セリウム、水酸化亜鉛、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸ランタン、炭酸セリウム、炭酸亜鉛である。
【0028】
また、酸化チタンには、上述した酸性金属酸化物と塩基性金属化合物の両方を表面被覆してもよい。さらに、酸性金属酸化物で表面被覆したものと塩基性金属化合物で表面被覆したものを混合して用いてもよい。表面被覆する酸性金属酸化物または塩基性金属化合物の量は、基材である酸化チタンのチタンに対して金属元素換算で30モル%以下、好ましくは10モル%以下、より好ましくは5モル%以下である。
【0029】
この酸化チタンは、高分子樹脂、結合剤、成形助剤、帯電防止剤、吸着剤等と混合し、成形してペレット、繊維またはシートとすることもできるが、液体中での分散性に優れることから、溶媒と混合して得られるコーティング剤として用いることが推奨される。
【0030】
本実施形態の方法により得られる微細粒子状酸化チタン又はこの酸化チタンを用いて調製したコーティング液から形成される膜は、可視光線(概ね波長430〜600nmの光)の照射に対してのみならず、紫外線(概ね波長300〜390nmの光)照射下でも高い光触媒活性を発現する。これらの照射は蛍光灯だけでなく、ハロゲンランプ、ブラックライト、キセノンランプ、ネオンサイン、LED、水銀灯またはナトリウムランプ等で行うことができ、また太陽光線を用いることもできる。このようにして得られた微細粒子状酸化チタン又はこの酸化チタンを用いて調製したコーティング液から形成される膜は、室外で使用される物のみならず、室内で使用される内装壁面その他室内配置物にも広く応用できる。
【実施例】
【0031】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0032】
<実施例1>
〔前駆体合成〕
オキシ硫酸チタン4920gをイオン交換水3280gに溶解させ、8200gのオキシ硫酸チタン水溶液を調製した。冷却下、このオキシ硫酸チタン水溶液に31%過酸化水素水2236g(チタンに対して、1モル倍相当)を添加した。pH電極と、このpH電極に接続され、25重量%アンモニア水を供給してpHを一定に調整する機構を有するpHコントローラーとを備えた反応容器にイオン交換水3000gを入れた。pHコントローラーのpH設定を4とした。この反応容器では、容器内の液のpHが設定値より低くなると、アンモニア水が供給されはじめ、pHが設定値になるまで前記速度にて連続供給される。この反応容器に、159rpmで攪拌しながら、上で得られた混合溶液を50ml/分で添加し、pHコントローラーにより反応容器に供給されるアンモニア水と反応させて、生成物を得た。このときの反応温度は、30℃〜35℃の範囲であった。得られた生成物を攪拌しながら1時間保持し、さらに1日、静置保管した。1日静置保管後、スラリーのpHは5であった。このスラリーの一部を濾過後、純水で洗浄し、固形物(ケーキ)を得た。
【0033】
〔乾燥〕
上記で得られたケーキ100gをステンレス鋼製薄型バットに入れた。これを室温下で15時間予備乾燥し、その後、300mlのビーカーに入れ箱型乾燥機(内容積:216リットル。商品名“エスペック社製、高温恒温機 STPH−201M”)に入れて、230℃で2時間本乾燥した。乾燥後の固形分(前駆体)はアモルファスであり、そのBET比表面積は222.8m2 /g、全窒素含有量は0.72重量%であった。
【0034】
〔焼成〕
上記で得られた乾燥粉末を、370℃の空気雰囲気下で1時間焼成を行った後、室温まで冷却して、粒子状酸化チタン光触媒体を得た。
【0035】
〔光触媒体の活性評価〕
直径8cm、高さ10cm、容量約0.5リットルの密閉式ガラス製容器内に、直径5cmのガラス製シャーレを設置し、そのシャーレ上に、上記で得られた光触媒体0.3gを置いた。容器内を酸素20容量%と窒素80容量%とからなる混合ガスで満たし、さらに相対湿度が50%となるよう調整した。ここにアセトアルデヒドを13.4μモル封入し、容器の外から光触媒体直上の照度が7200ルクスになるように、27ワット蛍光燈(昼光色、三波長、商品名“BBパラレル”、三菱電機社製)を照射した。蛍光燈の照射によりアセトアルデヒドが分解すると、二酸化炭素が発生するので二酸化炭素の濃度を光音響マルチガスモニタ(型番“1312型”、INNOVA社製)で経時的に測定し、濃度変化より算出した二酸化炭素の生成速度により、光触媒体をアセトアルデヒドに対する光分解作用を評価した。この例における二酸化炭素の生成速度は、2.0ppm/分であった。
【0036】
<実施例2>
〔前駆体合成〕
実施例1で得られたスラリーの一部を取り出し、ここに25重量%アンモニア水を添加してpH6とし、スラリーを濾過後、純粋で洗浄し、固形物(ケーキ)を得た。
【0037】
〔乾燥〕
実施例1と同一方法で乾燥した。乾燥後の固形物(前駆体)はアモルファスであり、そのBET比表面積は75.1m2 /g、全窒素含有量は1.66重量%であった。
【0038】
〔焼成〕
実施例1と同一方法で焼成し、粒子状酸化チタン光触媒体を得た。
【0039】
〔光触媒体の活性評価〕
上記で得られた光触媒体について、実施例1と同一条件で活性評価を行った。この例における二酸化炭素の生成速度は、2.1ppm/分であった。
【0040】
<実施例3>
〔前駆体合成〕
実施例1で得られたスラリーの一部を取り出し、これに希硫酸を添加してpHを4とし、このスラリーを濾過後、純粋で洗浄し、固形物(ケーキ)を得た。
【0041】
〔乾燥〕
実施例1と同一方法で乾燥した。乾燥後の固形物(前駆体)はアモルファスであり、そのBET比表面積は274.0m2 /g、全窒素含有量は0.72重量%であった。
【0042】
〔焼成〕
実施例1と同一方法で焼成し、粒子状酸化チタン光触媒体を得た。
【0043】
〔光触媒体の活性評価〕
上記で得られた光触媒体について、実施例1と同一条件で活性評価を行った。この例における二酸化炭素の生成速度は、1.8ppm/分であった。
【0044】
<比較例1>
〔前駆体合成〕
実施例1で得られたスラリーの一部を取り出し、ここに25重量%アンモニア水を添加し、スラリーのpHを9とした。このスラリーを濾過後、純水で洗浄し、固形物(ケーキ)を得た。
【0045】
〔乾燥〕
実施例1と同一方法で乾燥した。乾燥後の固形物(前駆体)はアモルファスであり、そのBET比表面積は3.9m2 /g、全窒素含有量は2.06重量%であった。
【0046】
〔焼成〕
実施例1と同一方法で焼成し、粒子状酸化チタン光触媒体を得た。
【0047】
〔光触媒体の活性評価〕
上記で得られた光触媒体について、実施例1と同一条件で活性評価を行った。この例における二酸化炭素の生成速度は、1.5ppm/分であった。
【0048】
<比較例2>
〔前駆体合成〕
実施例1で得られたスラリーの一部を取り出し、ここに25重量%アンモニア水を添加し、スラリーのpHを10とした。このスラリーを濾過後、純水で洗浄し、固形物(ケーキ)を得た。
【0049】
〔乾燥〕
実施例1と同一方法で乾燥した。乾燥後の固形物(前駆体)はアモルファスであり、そのBET比表面積は4.7m2 /g、全窒素含有量は2.03重量%であった。
【0050】
〔焼成〕
実施例1と同一方法で焼成し、粒子状酸化チタン光触媒体を得た。
【0051】
〔光触媒体の活性評価〕
上記で得られた光触媒体について、実施例1と同一条件で活性評価を行った。この例における二酸化炭素の生成速度は、1.4ppm/分であった。
【0052】
以上のように、実施例1、2、3の場合、アセトアルデヒドを光分解して生成する二酸化炭素の生成速度は、比較例1に比べてそれぞれ約33%、40%、20%早くなっており、比較例2に比べてそれぞれ約43%、50%、29%早くなっており光分解作用に優れていることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性チタン化合物と塩基とを混合・反応させて加水分解し、酸化チタン前駆体スラリーとする混合反応工程と、この混合反応工程により得られた反応生成物をろ過する工程と、ろ過工程により得られたろ過残渣を乾燥する工程とを有する酸化チタン前駆体の製造方法において、前記混合反応工程での酸化チタン前駆体スラリーの最終pHを、7以下とすることを特徴とする酸化チタン前駆体の製造方法。
【請求項2】
前記加水分解を、水溶性チタン化合物と過酸化水素とを混合すると共に、これに前記塩基を80℃以下で添加する請求項1記載の酸化チタン前駆体の製造方法。
【請求項3】
前記水溶性チタン化合物の原料が、三塩化チタン、四塩化チタン、オキシ硫酸チタン、硫酸チタンから選ばれたものである請求項1又は2記載の酸化チタン前駆体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の製造方法で得られた酸化チタン前駆体を310〜500℃で焼成する酸化チタンの製造方法。

【公開番号】特開2008−169058(P2008−169058A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1596(P2007−1596)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】