酸化チタン複合体粒子、その分散液、およびそれらの製造方法
【課題】酸化チタン粒子の超音波や紫外線により励起される触媒活性を十分に発揮しながら、その血中滞留性および癌細胞への集積性を向上できる、酸化チタン複合体粒子およびその分散体の提供。
【解決手段】この酸化チタン複合体粒子は、酸化チタン粒子の表面に、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介してノニオン性の水溶性高分子を結合したものである。この複合体粒子は、超音波や紫外線の照射により細胞毒となり、癌細胞等の殺対象となる細胞を効率良く殺傷することができる。
【解決手段】この酸化チタン複合体粒子は、酸化チタン粒子の表面に、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介してノニオン性の水溶性高分子を結合したものである。この複合体粒子は、超音波や紫外線の照射により細胞毒となり、癌細胞等の殺対象となる細胞を効率良く殺傷することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン粒子の表面を水溶性高分子で修飾した酸化チタン複合体粒子、その分散液、およびそれらの製造方法に関するものである。この酸化チタン複合体粒子は、超音波や紫外線等の照射を受けて細胞毒となることができるため、癌細胞等の細胞を殺傷する殺細胞剤、あるいは患部に超音波を照射することにより行われる超音波癌治療を促進するための超音波癌治療促進剤として利用可能である。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンはpH6前後に等電点を有すると言われている。このため、酸化チタン粒子は中性付近の水系溶媒中では凝集を生じてしまい、これを均一に分散させることは極めて難しい。そのため、酸化チタン粒子を水系の分散媒に均一に分散させるため、今まで種々の試みがなされてきた。
【0003】
PEG(ポリエチレングリコール)を分散剤として添加して、分散媒中における酸化チタン粒子の分散性を向上させることが知られている(特許文献1(特開平2−307524号公報)および特許文献2(特開2002−60651号公報)参照)。
【0004】
一方、近年、ドラッグデリバリーシステム(DDS)に用いる担体として、極めて高い分散性の金属微粒子や半導体微粒子が求められている。このような目的のために、微粒子にPEGを結合させる手法も知られている。例えば、金属微粒子あるいは半導体微粒子にチオール基を介してPEGを結合させることが知られている(特許文献3(特開2003−80903号公報)および特許文献4(特開2004−300253号公報)参照)。また、金属微粒子、金属酸化物微粒子、あるいは半導体微粒子にメルカプト基または3官能のシラノール基を介してPEGを結合させることも知られている(特許文献5(特開2001−200050号公報)。しかしながら、これらの技術は、酸化チタン粒子への応用には適さない。これは、チオール基やメルカプト基は酸化チタンに安定に結合することができず、また、3官能のシラノール基にあっては相互に三次元的に縮合重合して重合物で酸化チタン粒子の表面を覆い尽くしてしまい酸化チタンの触媒活性を低下させてしまうおそれがあるためである。
【0005】
また、酸化チタン微粒子に、ポリアクリル酸等の親水性高分子を、カルボキシル基を介してエステル結合させた、表面改質酸化チタン微粒子も知られている(特許文献6(WO2004/087577)参照)。この技術は、ポリアクリル酸等といったアニオン性ポリマーの使用を念頭としたものである。
【0006】
更に、2〜3mm粒度の酸化チタンに35ないし42kHzの超音波照射を行い、ヒドロキシラジカルを発生させることにより有機物を分解させる技術も提案されている(例えば、特許文献7(特開2003−26406号公報)参照)。
【0007】
ところで、TiO2等の金属酸化物の表面にエンジオールリガンドを結合させて、ナノ粒子の光学特性を変える技術が知られているが(例えば、非特許文献1(T.Rajh, et al., J. Phys. Chem. B 2002, 106, 10543-10552)参照)、この技術はポリマーを金属酸化物に結合させる技術ではない。
【0008】
【特許文献1】特開平2−307524号公報
【特許文献2】特開2002−60651号公報
【特許文献3】特開2003−80903号公報
【特許文献4】特開2004−300253号公報
【特許文献5】特開2001−200050号公報
【特許文献6】WO2004/087577
【特許文献7】特開2003−26406号公報
【非特許文献1】T.Rajh, et al., J. Phys. Chem. B 2002, 106, 10543-10552
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、今般、酸化チタン粒子の表面に、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介して、ノニオン性の水溶性高分子を結合させることにより、酸化チタン粒子の超音波や紫外線により励起される触媒活性を十分に発揮させながら、その血中滞留性および癌細胞への集積性を向上できるとの知見を得た。
【0010】
したがって、本発明は、酸化チタン粒子の超音波や紫外線により励起される触媒活性を十分に発揮させながら、その血中滞留性および癌細胞への集積性を向上できる、酸化チタン複合体粒子およびその分散体の提供をその目的としている。すなわち、本発明の酸化チタン複合体粒子によれば、殺対象が癌細胞の場合にあっては、超音波や紫外線による癌の治療効果を著しく向上することができる。そのため、本発明の酸化チタン複合体粒子は、患部に超音波を照射することにより行われる超音波癌治療を促進するための超音波癌治療促進剤としても利用可能である。
【0011】
そして、本発明による酸化チタン複合体粒子は、
酸化チタン粒子と、
該酸化チタン粒子の表面に、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介して結合されてなる、ノニオン性の水溶性高分子と
を含んでなるものである。
【0012】
また、本発明による分散液は、上記酸化チタン複合体粒子と、該粒子が分散される溶媒とを含んでなるものである。
【0013】
さらに、本発明の第一の態様による、酸化チタン複合体粒子の製造方法は、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる。
【0014】
本発明の第二の態様による、酸化チタン複合体粒子の製造方法は、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子と、ノニオン性の水溶性高分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる。
【0015】
本発明の第三の態様による、酸化チタン複合体粒子の製造方法は、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリカルボン酸とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリカルボン酸が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる。
【0016】
本発明の第四の態様による、酸化チタン複合体粒子の製造方法は、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリアミンとを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリアミンが結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる。
【0017】
本発明の第五の態様による、酸化チタン複合体粒子の製造方法は、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記リガンド分子が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液にノニオン性の水溶性高分子を添加して、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる。
【発明の具体的説明】
【0018】
酸化チタン複合体粒子およびその分散体
本発明による酸化チタン複合体粒子は、酸化チタン粒子と、ノニオン性の水溶性高分子とを含む。図1に、酸化チタン複合体粒子の一例を示す。図1に示されるように、酸化チタン複合体粒子は、酸化チタン粒子1の表面にノニオン性の水溶性高分子2が結合されたものである。酸化チタン粒子1と水溶性高分子2との結合は、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介して形成される。すなわち、これらの官能基は酸化チタンとの間で強固な結合を形成するため、酸化チタン粒子の高い触媒活性にかかわらず水溶性高分子の結合を保持することが可能である。なお、本発明における結合形態は、血中滞留性確保の観点から、体内への投与後24〜72時間後に分散性が確保されている程度の結合形態であればよい。もっとも、生理条件での分散安定性に優れ、かつ超音波や紫外線照射後もポリマーの遊離が無く正常細胞へのダメージが少ない点で、共有結合であるのが望ましい。
【0019】
カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基は、3官能シラノール基のような相互に三次元的に縮合重合して重合物で酸化チタン粒子の表面を覆い尽くしてしまう官能基とは異なり、官能基同士で重合することが無いため、図1に示されるように酸化チタン粒子の表面に剥き出しの部分を多く確保することができると考えられる。その結果、表面が重合体で覆われることによって起こりうる失活を抑制しつつ、酸化チタン粒子の触媒活性を十分に発揮させることができる。
【0020】
そして、酸化チタン粒子の表面に結合した水溶性高分子はノニオン性であるため、電荷を帯びることなく、酸化チタン粒子の分散が困難とされる中性付近の水系溶媒中であっても、水和により酸化チタン複合体粒子を高度に分散させることができる。また、水溶性高分子は無電荷であるため、血中タンパク質が静電気的に吸着しにくくなるので、細網内皮系への取り込み、腎排泄、肝臓取り込み等を回避しやすくなり、目的部位(腫瘍)に到達できるに足る血中滞留性を確保することができる。しかも、無電荷の水溶性高分子を用いることで、癌細胞表面に高密度に到達しやすく、癌細胞への集積性にも優れる。したがって、本発明の酸化チタン複合体粒子は、高い分散性および高い血中滞留性を維持しながら生体内を運搬させて、癌細胞に効率良く集積させることができる。このため、本発明の酸化チタン複合体粒子は、点滴等を介した全身投与に適しており、表層から深部に至るまでの広範囲の癌の治療に特に適する。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、上記官能基がジオール基であるのが好ましく、より好ましくはエンジオール基であり、さらに好ましくはα−ジオール基である。これらの官能基を用いることで、優れた酸化チタン粒子への水溶性高分子の結合を実現することができる。
【0022】
本発明のより好ましい態様によれば、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基は、これらの官能基を備えたリガンド分子により与えられ、該リガンド分子により、該酸化チタン粒子の表面に前記水溶性高分子が結合されてなるのが好ましい。好ましいリガンド分子は環状分子であり、これにより酸化チタン粒子への水溶性高分子の結合強度がさらに向上される。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、リガンド分子は、水溶性高分子に結合する、カルボキシル基およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基をさらに含んでなるのが好ましい。この態様によれば、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基が酸化チタン粒子への強固な結合を実現すると同時に、カルボキシル基および/またはアミノ基が水溶性高分子との強固な結合を実現することができる。その結果、特に優れた酸化チタン粒子への水溶性高分子の結合を実現することができる。
【0024】
ジオール基を含むリガンド分子の好ましい例としては、水溶性や二酸化チタンへの結合性の観点から、プロトカテク酸、没食子酸、メチルドーパ、キナ酸、およびそれらの組合せが挙げられる。リガンド分子の他の例としては、カフェ酸、3,4−ジヒドロベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロベンゾイックアッシドエチルエステル、3,4−ジヒドロキシベンジルアルコール、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオーネ、DL−3,4−ジヒドロキシマンデリックアッシド、3−メトキシカテコール、2,ジヒドロキシナフタレン、DL−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アラニン、2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチルアルコール、2,3−ジヒドロキシピリジン、2,3−ジヒドロキシキノザリン等が挙げられる。
【0025】
サリチル酸基を含むリガンド分子の好ましい例としては、水溶性や二酸化チタンへの結合性の観点から、4−アミノサリチル酸が挙げられる。
【0026】
リン酸基を含むリガンド分子の好ましい例としては、水溶性や二酸化チタンへの結合性の観点から、アミノメチルホスホン酸、ホスフォノカルボン酸、3−ホスフォノアラニンが挙げられる。リン酸基を含むリガンド分子の他の例としては、1−アミノプロピルホスホン酸、3−アミノプロピルホスホン酸、1−アミノエチルホスホン酸、2−アミノエチルホスホン酸、3−ホスフォノプロピオン酸、2−アミノエチルジハイドロゲンホスフェイト、2−ヒドロキシ−3−オキソプロピルジハイドロゲンホスフェイト、O−ホスフォノセリン、2−ホスフォグリセリン酸等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いる水溶性高分子は、ノニオン性を有する水溶性高分子であれば限定されないが、好ましくは水酸基および/またはポリオキシアルキレン基を有する高分子が挙げられる。そのような水溶性高分子の好ましい例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デキストランあるいはそれらのコポリマーが挙げられ、より好ましくはポリエチレングリコール(PEG)およびデキストランであり、さらに好ましくはポリエチレングリコールである。水溶性高分子の好ましい重合度は、34〜500であり、より好ましくは34〜50である。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、水溶性高分子としてポリエチレングリコールを、官能基としてカルボキシル基を用いるのが好ましい。この態様において、ポリエチレングリコールとカルボキシル基の分子量比が15000:20〜400000:20であるのが好ましく、より好ましくは15000:20〜40000:20であり、ポリエチレングリコールの分子量は1500〜40000であるのが好ましく、より好ましくは1500〜4000である。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、カルボキシル基および/またはアミノ基の官能基が、カルボン酸および/またはアミンにより与えられるのが好ましい。この場合、カルボン酸またはアミンが水溶性高分子の少なくとも末端に修飾されてなるのが好ましいが、より好ましくはカルボン酸またはアミンが水溶性高分子と共に共重合体を形成してなる。これにより、酸化チタン粒子と水溶性高分子とが強固に結合されることができる。すなわち、官能基で修飾されたノニオン性水溶性高分子として、カルボン酸またはアミンと水溶性高分子との共重合体を使用可能である。これらの共重合体は、酸化チタン粒子の表面においてリンカーとして強固に結合するとともに、カルボキシル基およびアミノ基の数を多くすることができるので、酸化チタンとの結合に関与していない官能基の残基に蛍光色素や生体由来高分子等の機能性物質を結合させることができる。このような共重合体の好ましい例としては、マレイン酸−ポリエチレングリコール系共重合体が挙げられる。
【0030】
本発明の別の好ましい態様によれば、カルボキシル基および/またはアミノ基の官能基が、リンカーとしてのポリカルボン酸またはポリアミンにより与えられるのが好ましい。これらの高分子化合物は、酸化チタン粒子の表面においてリンカーとして強固に結合するとともに、カルボキシル基およびアミノ基の数を多くすることができるので、酸化チタンとの結合に関与していない官能基の残基に蛍光色素や生体由来高分子等の機能性物質を結合させることができる。好ましいポリカルボン酸の例としては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−スルフォン酸共重合体が挙げられる。また、好ましいポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、およびポリアリルアミンが挙げられる。さらに、カルボキシル基およびアミノ基の両方を有しているものも用いることができ、好ましい例としては、ポリオルニチン、ポリリジン等のポリアミノ酸が挙げられる。
【0031】
本発明の好ましい態様によれば、ポリカルボン酸またはポリアミンで形成されたリンカーと水溶性高分子とを結合する第二のリンカーとして、カルボキシル基およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基と化学結合を形成する官能基を有する、ポリカルボン酸またはポリアミン以外の化合物をさらに含んでなるのが好ましい。すなわち、ポリカルボン酸またはポリアミンで形成されたリンカーに第二のリンカーを結合させ、この第二のリンカーに水溶性高分子を結合させることも可能である。この第二のリンカーは、例えば生体分子同士を異なる官能基同士で結合する際に用いられるヘテロバイファンクショナルなクロスリンカーなどが考えられる。第二のリンカーの具体例としては、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−[α−マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル、N−[β−マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル、N−β−マレイミドプロピオン酸、N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド、N−ε−マレイミドカプロン酸、N−[ε−マレイミドカプロン酸]ヒドラジド、N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル、N−κ−マレイミドウンデカン酸、N−[κ−マレイミドウンデカン酸]ヒドラジド、スクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシ−[6−アミドカプロエート]、スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−[4−N−マレイミドフェニル]酪酸ヒドラジド・HCl、3−[2−ピリジルジチオ]プロピオニルヒドラジド、N−[p−マレイミドフェニル]イソシアネート、N−スクシンイミジル[4−アジドフェニル]−1,3´−ジチオプロピオネート、N−スクシンイミジル S−アセチルチオアセテート、N−スクシンイミジルS−アセチルチオプロピオネート、スクシンイミジル 3−[ブロモアセトアミド]プロピオネート、N−スクシンイミジル ヨードアセテート、N−スクシンイミジル[4−イオドアセチル]アミノベンゾエート、スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート、スクシンイミジル6−[(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノネート]、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α[2−ピリジルジチオ]トルエン、N−スクシンイミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート、N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N−[κ−マレイミドウンデカノイルオキシ]−スルホスクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル−6−[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノネート、スルホスクシンイミジル6−[3´−(2−ピリジルチチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノネート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル[4−ヨードアセチル]アミノベンゾエート、スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スルホスクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート、N−[ε−トリフルオロアセチルカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル等が挙げられる。また、第二のリンカーはさらに他のリンカー同士が結合されるような複数種類のリンカーから構成されてもよい。
【0032】
本発明の好ましい態様によれば、水溶性高分子にリンカーまたは第二のリンカーと結合可能な官能基として、カルボキシル基およびアミノ基以外の官能基を結合させておき、リンカーとの強固な結合を確保することもできる。そのようなカルボキシル基およびアミノ基以外の官能基の例としては、カルボハイドレイト基、スルフィド基、スクシンイミド基、マレイミド基、カルボジイミド基、およびヒドラジド基が挙げられる。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタンとの結合に関与していないカルボキシル基および/またはアミノ基の残基に、生体由来高分子が結合されるのが好ましい。例えば、酸化チタン複合体粒子に抗体等の生体素子を付与すれば、癌細胞へのターゲッティング性能を更に高めることも可能である。
【0034】
本発明の好ましい態様によれば、リガンド分子と水溶性高分子とを結合する第二のリンカーとして、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基と化学結合を形成する官能基を有する、ポリオール、ポリリン酸、ポリカルボン酸、およびポリアミン以外の化合物をさらに含んでなるのが好ましい。すなわち、リガンド分子に含まれることができるジオール基、サリチル酸基、リン酸基、カルボキシル基、またはアミノ基(以下、第一のリンカーともいう)に第二のリンカーを結合させ、この第二のリンカーに水溶性高分子を結合させることも可能である。この第二のリンカーは、例えば生体分子同士を異なる官能基同士で結合する際に用いられるヘテロバイファンクショナルなクロスリンカーなどが考えられる。第二のリンカーの具体例としては、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−[α−マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル、N−[β−マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル、N−β−マレイミドプロピオン酸、N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド、N−ε−マレイミドカプロン酸、N−[ε−マレイミドカプロン酸]ヒドラジド、N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル、N−κ−マレイミドウンデカン酸、N−[κ−マレイミドウンデカン酸]ヒドラジド、スクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシ−[6−アミドカプロエート]、スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−[4−N−マレイミドフェニル]酪酸ヒドラジド・HCl、3−[2−ピリジルジチオ]プロピオニルヒドラジド、N−[p−マレイミドフェニル]イソシアネート、N−スクシンイミジル[4−アジドフェニル]−1,3´−ジチオプロピオネート、N−スクシンイミジル S−アセチルチオアセテート、N−スクシンイミジルS−アセチルチオプロピオネート、スクシンイミジル 3−[ブロモアセトアミド]プロピオネート、N−スクシンイミジル ヨードアセテート、N−スクシンイミジル[4−イオドアセチル]アミノベンゾエート、スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート、スクシンイミジル6−[(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノネート]、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α[2−ピリジルジチオ]トルエン、N−スクシンイミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート、N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N−[κ−マレイミドウンデカノイルオキシ]−スルホスクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル−6−[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノネート、スルホスクシンイミジル6−[3´−(2−ピリジルチチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノネート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル[4−ヨードアセチル]アミノベンゾエート、スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スルホスクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート、N−[ε−トリフルオロアセチルカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル等が挙げられる。また、第二のリンカーはさらに他のリンカー同士が結合されるような複数種類のリンカーから構成されてもよい。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、水溶性高分子に第一のリンカーまたは第二のリンカーと結合可能な官能基として、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基以外の官能基を結合させておき、リンカーとの強固な結合を確保することもできる。そのような他の官能基の例としては、カルボハイドレイト基、スルフィド基、スクシンイミド基、マレイミド基、カルボジイミド基、およびヒドラジド基が挙げられる。
【0036】
本発明の好ましい態様によれば、リガンド分子の酸化チタンとの結合に関与していない官能基の残基に水溶性高分子を結合することができる。その結合形態は特に限定されない。上記残基への結合の好ましい例としては、アゾ基を含むポリエチレングリコールとリガンド分子のカルボキシル基を用いたグラフト重合による結合が挙げられるが、それ以外にも、フェノール性水酸基、ビニル基、芳香族環等に対するグラフト重合による結合等も挙げられる。上記残基への結合の他の好ましい例としては、スクシンイミド基を含むポリエチレングリコールとリガンド分子のアミノ基を用いた結合が挙げられるが、それ以外にもカルボハイドレイト基、スルフィド基、スクシンイミド基、マレイミド基、カルボジイミド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基およびヒドラジド基等の反応性官能基を用いた結合も挙げられる。なお、リガンド分子と水溶性高分子とは、第二のリンカーによって間接的に結合されてもよい。
【0037】
本発明の好ましい態様によれば、水溶性高分子のリガンド分子との結合に関与していない残基に、蛍光色素や生体由来高分子が結合されるのが好ましい。例えば、酸化チタン複合体粒子に抗体等の生体素子を付与すれば、癌細胞へのターゲッティング性能を更に高めることも可能である。そのような生体由来高分子の結合形態は特に限定されない。上記残基への結合の好ましい例としては、アゾ基を含むポリエチレングリコールとリガンド分子のカルボキシル基を用いたグラフト重合による結合が挙げられるが、それ以外にも、フェノール性水酸基、ビニル基、芳香族環等に対するグラフト重合による結合等も挙げられる。上記残基への結合の他の好ましい例としては、スクシンイミド基を含むポリエチレングリコールとリガンド分子のアミノ基を用いた結合が挙げられるが、それ以外にもカルボハイドレイト基、スルフィド基、スクシンイミド基、マレイミド基、カルボジイミド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基およびヒドラジド基等の反応性官能基を用いた結合も挙げられる。なお、リガンド分子と水溶性高分子とは、第二のリンカーによって間接的に結合されてもよい。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン粒子が、アナターゼ型酸化チタンまたはルチル型酸化チタンであるのが好ましい。紫外線や超音波の照射による触媒活性を利用する場合にはアナターゼ型酸化チタンが好ましく、化粧料のように高い屈折率等の性質を利用する場合にはルチル型酸化チタンが好ましい。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、本発明に用いる酸化チタン複合体粒子は20〜200nmの粒子径を有し、より好ましくは50〜200nmであり、さらに好ましくは50〜150nmである。この粒径範囲であると、癌腫瘍への到達を目的として患者の体内に投与されると、ドラッグデリバリーシステムのように、EPR効果により癌組織に効率的に到達して蓄積される。そして、上述の通り、400kHz〜20MHzの超音波や紫外線の照射によりラジカル種の特異的生成が起こる。したがって、超音波や紫外線の照射により高い効率で癌組織を殺傷することができる。
【0040】
本発明の別の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体粒子が50nm未満(例えば数nm)の粒子径を有する場合、見かけ上のサイズを大きくしてEPR効果を得ることもできる。すなわち、50〜150nmの粒子径を有する二次粒子の形態を有するように半導体粒子同士を多官能リンカーで連結する等の方法にて結合されることで、EPR効果により高い癌治療効果を実現することができる。本発明のさらに別の好ましい態様によれば、EPR効果を利用するため、リポソームのような薬剤封入体の中に、酸化チタン複合体粒子を包摂させることもできる。
【0041】
本発明において半導体粒子の粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。具体的には、粒径分布測定装置(ゼータサイザーナノ、マルバーンインスツルメント社製)を用いて、キュミュラント解析で得られる Z-average sizeで示される値として得ることができる。
【0042】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体粒子が、−20〜+20mVのゼータ電位を有するのが好ましく、より好ましくは−10〜+10mVであり、さらに好ましくは−5〜+5mVであり、最も好ましくは−3〜+3mVである。この範囲内であると、酸化チタン複合体粒子が全体として電荷を殆ど帯びないことになるので、ノニオン性の水溶性高分子の使用による、血中滞留性および癌細胞への集積性の向上効果を最大限発揮させることができる。
【0043】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体単位重量あたりの、カルボキシル基あるいはアミノ基のモル数が、1×10−9〜1×10−4mol/gであるのが好ましく、より好ましくは1×10−9〜1×10−6mol/gである。この範囲内であると、酸化チタン複合体粒子の触媒活性を十分に発揮させながら、血中滞留性および癌細胞への集積性を向上できる。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体粒子単位重量あたりの、水溶性高分子の結合量が、0.3〜1.0g/gであるのが好ましく、分散性の観点からより好ましくは0.3〜0.5g/gである。この範囲内であると、酸化チタン複合体粒子の触媒活性を十分に発揮させながら、血中滞留性および癌細胞への集積性を向上できる。
【0045】
本発明に使用可能な酸化チタン複合体粒子は、単一種類の酸化チタン複合体粒子のみならず、複数種類の半導体粒子の混合物あるいは複合物も包含する。具体例としては、酸化チタン複合体粒子と酸化鉄ナノ粒子との複合物、酸化チタン複合体粒子と白金との複合物、およびシリカ被覆された酸化チタン等が挙げられる。
【0046】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体粒子が、溶媒に分散されて分散液の形態とされてなるのが好ましい。これにより、酸化チタン複合体粒子を、点滴、注射、塗布等の種々の方法により、患者の体内に効率的に投与することができる。分散液の液性は限定されず、pH3〜10の広範囲にわたって高い分散性を実現可能である。なお、体内投与における安全性の観点から、分散液は、pH5〜9であるのが好ましく、より好ましくは5〜8、特に中性の液性を有するのが好ましい。また、本発明の好ましい態様によれば、溶媒は水系溶媒であるのが好ましく、さらに好ましくはpH緩衝液または生理食塩水である。水系溶媒の好ましい塩濃度は2M以下であり、体内投与における安全性の観点から200mM以下がより好ましい。酸化チタン複合体粒子は分散体に対して、0.001〜1質量%以下含有されることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.1質量%である。この範囲内であれば、投与後、24〜72時間後に患部(腫瘍)に効果的に粒子を蓄積させることが可能となる。すなわち、患部(腫瘍)に粒子濃度が蓄積しやすくなるとともに、血中での粒子の分散性も確保されて凝集隗が形成しにくくなるため、投与後に血管の閉塞などの二次的弊害を招くおそれも無い。
【0047】
本発明の酸化チタン複合体粒子は、点滴、注射、塗布等の種々の方法により、患者の体内に投与することができる。特に静脈または皮下による投与経路で用いられることが、粒子の大きさによるEPR効果と、血中の滞留性を利用して、所謂DDS的な治療により、患者の負担を軽減する観点から好ましい。そして、体内に投与された酸化チタン複合体粒子は、ドラッグデリバリーシステムのように、癌組織に到達して蓄積される。
【0048】
本発明の酸化チタン複合体粒子は、超音波あるいは紫外線の照射を受け、該照射により細胞毒となることができる。この酸化チタン複合体粒子は、体内に投与され、超音波照射を受け、該照射により細胞毒となることで、細胞を殺傷することができるが、体内に限らず、試験管内においても殺対象である細胞を殺傷することができる。本発明において、殺対象は特に限定されないが、癌細胞であるのが好ましい。すなわち、本発明による酸化チタン複合体粒子によれば、超音波や紫外線の照射により活性化して癌細胞を殺傷することができる。また、酸化チタン複合体粒子は、フラーレンや色素等の光増感剤ではないため、患者に投与後の治療段階において光過敏症の問題を生じることがなく、安全性が極めて高い。
【0049】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体粒子が蓄積された癌組織に超音波処理が行われる。使用する超音波の周波数は、400kHz〜20MHzが好ましく、より好ましくは600kHz〜10MHz、さらに好ましくは1MHz〜10MHzである。超音波の照射時間は治療対象である癌組織の位置および大きさを考慮して適宜決定されるべきであり、特に限定されない。こうして、患者の癌組織を超音波により高い効率で殺傷して、高い癌治療効果を実現することができる。超音波は生体内の深部に外部より到達させることが可能で、本発明の酸化チタン複合体粒子と併せて用いることにより、非侵襲の状態で生体内深部に存在するような患部やターゲット部位の治療が実現できる。さらに、患部やターゲット部位に本発明の酸化チタン複合体粒子が集積することにより、周辺の正常細胞に悪影響を及ぼさない程度の微弱な超音波で本発明の酸化チタン複合体粒子を集積させた局所のみに作用させることができる。
【0050】
ところで、これらの半導体粒子が超音波の照射により活性化して細胞を殺傷する効果は、超音波照射によりラジカル種を生成させることにより得ることができる。すなわち、これらの半導体粒子が与える生物的殺傷効果はラジカル種の質的・量的な増加にあると考えられる。その理由は以下の通り推察されるが、以下の理由はあくまで仮説であって、本発明は何ら下記説明に限定されるものではない。すなわち、超音波照射のみでは系中には過酸化水素とヒドロキシルラジカルが発生するが、本発明者らの知見によれば、酸化チタンなどの半導体粒子の存在下では、過酸化水素及びヒドロキシルラジカルの生成が促進される。また、これら半導体粒子の存在下、特に酸化チタンの存在下では、スーパーオキサイドアニオンと一重項酸素の生成が促進されるように見受けられる。これらラジカル種の特異的生成は、ナノメートルオーダーの微粒子を用いた場合、超音波照射時の周波数が400kHz〜20MHzの範囲、好ましくは600kHz〜10MHzの範囲、より好ましくは1MHz〜10MHzの範囲で顕著に観察される現象であると考えられる。
【0051】
製造方法
本発明の第一の態様による製造方法によれば、本発明の酸化チタン複合体粒子は、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を酸化チタン粒子に結合させることにより、製造することができる。この方法による酸化チタン複合体粒子の製造は、例えば、非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基で修飾されたノニオン性水溶性高分子とを分散させ、得られた分散液を80〜220℃で、例えば1〜16時間、加熱することにより行うことができる。本発明のより好ましい態様によれば、官能基で修飾されたノニオン性水溶性高分子として、カルボン酸またはアミンと水溶性高分子との共重合体を用いるのが好ましく、より好ましくは、マレイン酸−ポリエチレングリコール系共重合体が挙げられる。
【0052】
本発明の第二の態様による製造方法によれば、本発明の酸化チタン複合体粒子は、酸化チタン粒子と、リガンド分子と、ノニオン性の水溶性高分子とを同時に分散させて互いに結合させることにより、製造することができる。この方法による酸化チタン複合体粒子の製造は、例えば、非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子と、ノニオン性の水溶性高分子とを分散させ、得られた分散液を80〜220℃で、例えば1〜16時間、加熱して、酸化チタン複合体粒子を得ることにより行うことができる。
【0053】
本発明の第三の態様による製造方法によれば、本発明の酸化チタン複合体粒子は、先ず酸化チタン粒子をカルボキシル基を有するリンカーで修飾しておき、酸化チタン粒子に結合されたリンカーの残基に水溶性高分子を結合させることにより、製造することができる。この方法による酸化チタン複合体粒子の製造は、例えば、非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリカルボン酸とを分散させ、得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリカルボン酸が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ることにより行うことができる。本発明のより好ましい態様によれば、ポリカルボン酸として、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−スルフォン酸共重合体を用いるのが好ましく、より好ましくはポリアクリル酸である。これにより、酸化チタン粒子の表面にリンカーを強固に形成することができる。また、上記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子の官能基がアミノ基であるのが好ましい。
【0054】
本発明の第四の態様による製造方法によれば、本発明の酸化チタン複合体粒子は、先ず酸化チタン粒子をアミノ基を有するリンカーで修飾しておき、酸化チタン粒子に結合されたリンカーの残基に水溶性高分子を結合させることにより、製造することができる。この方法による酸化チタン複合体粒子の製造は、例えば、非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリアミンとを分散させ、得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリアミンが結合された酸化チタン粒子の分散液を得、該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ることにより行うことができる。本発明のより好ましい態様によれば、ポリアミンとして、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、およびポリアリルアミンを用いるのが好ましく、より好ましくはポリエチレンイミンである。これにより、酸化チタン粒子の表面にリンカーを強固に形成することができる。また、上記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子の官能基がスクシンイミド基であるのが好ましい。
【0055】
本発明の第五の態様による製造方法によれば、本発明の酸化チタン複合体粒子は、先ず酸化チタン粒子をリガンド分子で修飾しておき、酸化チタン粒子に結合されたリガンド分子の残基に水溶性高分子を結合させることにより、製造することができる。この方法による酸化チタン複合体粒子の製造は、例えば、非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子とを分散させ、得られた分散液を80〜220℃で、例えば1〜16時間、加熱して、前記リガンド分子が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、該分散液にノニオン性の水溶性高分子を添加して、前記ポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子を得ることにより行うことができる。
【0056】
上述の各好適態様において、溶媒として、非プロトン系溶媒が用いられている。これは、プロトン系溶媒を使用した場合には、例えば脱水によるエステル結合の形成等の結合反応時に反応を阻害し、高い分散性の実現が困難になるおそれがあるためである。なお、好ましい非プロトン系溶媒の例としては、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、およびジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0057】
本発明の好ましい態様によれば、ポリカルボン酸またはポリアミンが結合された酸化チタン粒子の分散液を得た後、該分散液にノニオン性の水溶性高分子を添加する前に、リンカーと水溶性高分子とを結合するための第二のリンカーを添加して反応させ、第二のリンカーをポリアミンに結合させることも可能である。この第二のリンカーはカルボキシル基およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基と化学結合を形成する官能基を有する、ポリカルボン酸またはポリアミン以外の化合物であり、その具体例は前述した通りである。
【0058】
本発明の好ましい態様によれば、リガンド分子が結合された酸化チタン粒子の分散液を得た後、該分散液にノニオン性の水溶性高分子を添加する前に、リンカーと水溶性高分子とを結合するための第二のリンカーを添加して反応させ、第二のリンカーをリガンド分子に結合させることも可能である。この第二のリンカーはジオール基、サリチル酸基、リン酸基、カルボキシル基、およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基と化学結合を形成する官能基を有する、ポリオール、ポリリン酸、ポリカルボン酸、およびポリアミン以外の化合物であり、その具体例は前述した通りである。
【0059】
本発明の好ましい態様によれば、上記各好適態様において、ポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子と未結合親水性高分子とを分離し、光触媒性酸化チタン微粒子を精製するのが好ましい。
【実施例】
【0060】
例1:酸化チタン粒子へのマレイン酸型ポリエチレングリコールの導入
チタンテトライソプロポキシド3.6gとイソプロパノール3.6gを混合し、氷冷下で60mlの超純水に滴下して加水分解を行った。滴下後に室温で30分間攪拌した。攪拌後、12N硝酸1mlを滴下して80℃で8時間攪拌を行い、ペプチゼーションした。ペプチゼーション終了後0.45μmのフィルターで濾過し、さらに脱塩カラムPD−10(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いて溶液交換して固形成分1%の酸性酸化チタンゾルを調製した。この酸化チタンゾルを100ml容のバイアル瓶に入れ、超音波発生器MIDSONIC200(カイジョー社製)を用いて200kHzで30分間超音波処理を行った。超音波処理を行った後の平均分散粒経を動的光散乱法により測定した。この測定は、超音波処理を行った後の酸化チタンゾルを12Nの硝酸で1000倍に希釈した後、分散液0.1mlを石英測定セルに仕込み、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は20.2nmであった。蒸発皿を用いて、50℃下で酸化チタンゾル溶液の濃縮を行い、最終的に固形成分20%の酸性酸化チタンゾルを調製した。
【0061】
次に、ポリオキシエチレン−モノアリル−モノメチルエーテルと無水マレイン酸の共重合体(平均分子量;33659−日本油脂製)1gに水5mlを添加して、加水分解後、凍結乾燥を行った。反応終了後、凍結乾燥物をジメチルホルムアミド(DMF)溶液5mlに溶解させポリエチレングリコール溶液200mg/mlを調製した。得られたポリエチレングリコール溶液1.875mlを、27.725mlのDMFに溶液に加え、先に調製したアナタ−ゼ型酸化チタンゾル0.9mlを添加後、攪拌して混合した。水熱反応容器のHU−50(三愛科学社製)に溶液を移し変え、150℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、エバポレータでDMFを除去した後に、蒸留水10mlを添加してポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子(TiO2/PEG)の分散液とした。さらに、HPLC[AKTA purifier(アマシャム・バイオサイエンス社製)、カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(アマシャム・バイオサイエンス社製)、移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)、流速:0.3ml/min]に付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。この分散液を蒸留水で0.01%水溶液に希釈し、分散粒径およびゼータ電位を動的光散乱法により測定した。この測定は、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにTiO2/PEGの分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。キュミュラント解析の結果、分散粒径は45.4nm、ゼータ電位は1.1mVであった。
【0062】
例2:ポリアクリル酸結合酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
チタンテトライソプロポキシド3.6gとイソプロパノール3.6gを混合し、氷冷下で60mlの超純水に滴下して加水分解を行った。滴下後に室温で30分間攪拌した。攪拌後、12N硝酸1mlを滴下して80℃で8時間攪拌を行い、ペプチゼーションした。ペプチゼーション終了後0.45μmのフィルターで濾過し、さらに脱塩カラムPD−10(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いて溶液交換して固形成分1%の酸性酸化チタンゾルを調製した。この酸化チタンゾルを100ml容のバイアル瓶に入れ、200kHzで30分間超音波処理を行った。超音波処理を行った後の平均分散粒経を動的光散乱法により測定した。この測定は、超音波処理を行った後の酸化チタンゾルを12Nの硝酸で1000倍に希釈した後、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、石英測定セルに分散液0.1mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は20.2nmであった。蒸発皿を用いて、50℃下で酸化チタンゾル溶液の濃縮を行い、最終的に固形成分20%の酸性酸化チタンゾルを調製した。
【0063】
この酸性酸化チタンゾル0.6mlをジメチルホルムアミド(DMF)で20mlとなるよう調整して分散させ、平均分子量5000のポリアクリル酸(和光純薬社製)0.3gを溶解したDMF10mlを添加後、攪拌して混合した。水熱反応容器のHU−50(三愛科学社製)に溶液を移し変え、150℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで反応液を冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノールを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、1.5mlの水を加えてポリアクリル酸結合酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で100倍に希釈し、分散粒径およびゼータ電位を動的光散乱法により測定した。この測定は、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにポリアクリル酸結合酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は53.6nm、ゼータ電位は−45.08mVであった。
【0064】
次に、0.5(w/v)%になるように超純水で調製したこの分散液5mlに対して0.8M 1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリドを250μlおよびN−ヒドロキシスクシンイミドを250μl加えて、攪拌しながら室温で1時間反応させた。50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化した脱塩カラムPD−10(アマシャム・ファルマシア・バイオサイエンス社製)を用いてゲル濾過を行って溶液交換し、その後に50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)を用いて全量を9.5mlとした。この回収した溶液に対して、20mg/mlに調整したポリエチレングリコール誘導体(SUNBRIGHT MEPA30−T(日本油脂社製))の水溶液2.5mlを添加し、6時間、室温にて穏やかに攪拌した。この溶液をVIVAPORE7500(VIVASCIENCE社製)を用いて1ml容量になるまで濃縮を行い、さらにこの濃縮液をHPLC[AKTA purifier(アマシャム・バイオサイエンス社製)、カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(アマシャム・バイオサイエンス社製)、移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)、流速:0.3ml/min]に付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。回収した画分の分散粒径およびゼータ電位を動的光散乱法により測定した。この測定は、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに回収画分0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。キュミュラント解析の結果、分散粒径は80.7nm、ゼータ電位は−6.329mVであった。このことから、ポリアクリル酸結合酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入により作製されたTiO2/PEG表面電荷の減少が確認された。
【0065】
例3:ポリエチレンイミン結合酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
チタンテトライソプロポキシド3.6gとイソプロパノール3.6gを混合し、氷冷下で60mlの超純水に滴下して加水分解を行った。滴下後に室温で30分間攪拌した。攪拌後、12N硝酸1mlを滴下して80℃で8時間攪拌を行い、ペプチゼーションした。ペプチゼーション終了後0.45μmのフィルターで濾過し、さらに脱塩カラムPD−10(アマシャム・ファルマシア・バイオサイエンス社製)を用いて溶液交換して固形成分1%の酸性酸化チタンゾルを調製した。この酸化チタンゾルを100ml容のバイアル瓶に入れ、200kHzで30分間超音波処理を行った。超音波処理を行った後の平均分散粒経を動的光散乱法により測定した。この測定は、12Nの硝酸で1000倍に希釈した後、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、石英測定セルに分散液0.1mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は20.2nmであった。
【0066】
得られた酸化チタンゾル3mlを20mlのジメチルホルムアミド(DMF)に分散させ、平均分子量10000のポリエチレンイミン(和光純薬社製)450mgを溶解したDMF10mlを添加後、攪拌して混合した。水熱反応容器のHU−50(三愛科学社製)に溶液を移し変え、150℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで反応液を冷却し、反応液に対して2倍量のアセトンを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、1.5mlの水を加えてポリエチレンイミン結合酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で100倍に希釈し、分散粒径およびゼータ電位を動的光散乱法により測定した。この測定は、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにポリエチレンイミン結合酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は57.5nm、ゼータ電位は47.5mVであった。
【0067】
次に、この分散液5mlを50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化した脱塩カラムPD−10を用いてゲル濾過を行い、50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)に溶液交換した。この回収した溶液に対して、20mg/mlに調整したポリエチレングリコール誘導体(SUNBRIGHT ME−200CS(日本油脂社製))の水溶液2.5mlを添加し、6時間、室温にて穏やかに攪拌した。この溶液をVIVAPORE7500(VIVASCIENCE社製)を用いて1ml容量になるまで濃縮を行い、さらにこの濃縮液をHPLC[AKTA purifier(アマシャム・バイオサイエンス社製)、カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(アマシャム・バイオサイエンス社製)、移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)、流速:0.3ml/min]に付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。回収した画分の分散粒径およびゼータ電位を動的光散乱法により測定した。この測定は、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに回収画分0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。キュミュラント解析の結果、分散粒径は57.6nm、ゼータ電位は21.1mVであった。このことから、ポリエチレンイミン結合酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入により作製されたTiO2/PEG表面電荷の減少が確認された。
【0068】
例4:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子の光触媒活性の評価
例1〜3で得られた各TiO2/PEG分散液を、固形成分が0.01(w/v)%になるようにPBSで希釈した。メチレンブルー三水和物(和光純薬)を5μMになるように先に調製したTiO2/PEGを含むPBS溶液に添加した。攪拌しながら、これらの溶液に波長340nmの紫外光を5J/cm2になるように照射し、660nmにおける波長の吸収を紫外−可視光分光光度計により測定した。そして、紫外線を照射しない試料の吸光度を100%とした場合における、各試料におけるメチレンブルーの分解にともなう吸光度の相対量(%)をメチレンブルー分解率(%)として算出した。結果を図2に示す。図2に示される通り、紫外線を照射した全ての試料においてメチレンブルーの分解にともなう吸光度の減少が認められた。このことから、実施例1〜3で得られたTiO2/PEGが光触媒活性を保持していることは明らかである。
【0069】
例5:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子の塩強度安定性の評価
0.01〜2Mの異なる塩化ナトリウムを含む水溶液に例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液を終濃度0.025%になるように添加し、1時間室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図3に示す。図3に示される通り、系中の塩濃度が0.01から2Mの間はほとんど平均分散粒径の変化は認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
【0070】
例6:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子のpH安定性の評価
50mMの、異なるpHを有する以下の緩衝液を調製した。
pH3:グリシン塩酸緩衝液
pH4および5:酢酸緩衝液
pH6:2−モルフォリノエタンスルホン酸緩衝液
pH7および8:2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液
pH9:ホウ酸緩衝液
pH10:グリシン水酸化ナトリウム緩衝液
これらの緩衝液に、例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液を終濃度0.025(w/v)%になるように添加し、1時間室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図4に示す。pHが3から10の間で粒径の変化はほとんど認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
【0071】
例7:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子の血清入り培地中での分散安定性の評価
10%血清を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)に対して、例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液、およびシリカコート酸化チタン微粒子STS240(石原産業、分散粒径52nm)を終濃度0.025%になるようにそれぞれ添加し、1時間および24時間、室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図5に示す。24時間静置後、TiO2/PEGの平均分散粒径の変化はほとんどないが、酸化チタン粒子(A)は大きく変化した。さらに72時間静置後において、シリカコート酸化チタン微粒子STS240は沈殿を形成したが、TiO2/PEGの平均分散粒径は80nmであった。このことから、TiO2/PEGの血清入り培地中での分散安定性を確認した。
【0072】
例8:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子の均一性(透明度)の評価
0.1Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を用いて、例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液を終濃度0.1%になるように調整し、1時間室温にて静置した。また、酸化チタン微粒子としてP25(日本アエロジル)を0.1Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を用いて、同様に終濃度0.1%になるように調整し、1時間室温にて静置した。その後、シャーレに5ml移し上方から撮影し、確認した。その結果を図6に示す。図中右側に示されるP25水溶液に対して、図中左側に示されるTiO2/PEGを含む分散液は明らかに透明度が高く、均一に分散していることが確認された。また、分光光度計(UV−1600、島津製作所)を用いて波長660nmにおける吸光度の測定を行った結果、P25水溶液は吸光度が1を大きく上回り測定不能であったのに対して、TiO2/PEGを含む分散液は吸光度が0.042であり、また沈殿の形成は起きていなかった。更に、これらの溶液を室温暗所にて2週間静置した後に、同様に波長660nmにおける吸光度の測定を行った結果、P25水溶液は吸光度が1を大きく上回り測定不能であったのに対して、TiO2/PEGを含む分散液は吸光度が0.052であった。このことから、水溶液中においてTiO2/PEGの分散液が透明度の高い、均一な分散性を示し、かつ安定していることが明らかになった。
【0073】
例9:細胞毒性の評価
例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液を、固形分が1.0%になるように10%血清を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)で調製した。培養ガン細胞(Jurkat)を、10%血清を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)で37℃、5%二酸化炭素雰囲気下で培養し、5.0×104 細胞数/mlとなるように調製した。これを再度20時間同条件で培養した。この細胞培養液に、上記TiO2/PEGを含む分散液を終濃度で0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%になるように96穴プレート上で調整し、200μlの試験用細胞培養液とした。この試験用細胞培養液を37℃、5%二酸化炭素雰囲気下で20時間培養した後、それぞれ100μlを用いてCelltiter−Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega社製)により生細胞由来の発光反応を行い、イメージアナライザLAS−3000UVmini(富士フィルム社製)を用いてその発光量測定を行うことで細胞毒性の評価を行った。そして、何も添加していないコントロールの培養細胞における発光量を100%とした場合における、各試料における発光量の相対量(%)を生存率(%)として算出した。その結果を図7に示す。図7に示される通り、どの分散液濃度においても同等の発光量、すなわち同等の生存率を確認したことから、この濃度域のTiO2/PEGを含む分散液は細胞毒性が認められないことが明らかになった。
【0074】
例10:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子への蛍光色素標識
例1より得られたTiO2/PEGの分散液2mlに対して、0.8M 1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリドを250μlおよびN−ヒドロキシスクシンイミドを250μl加えて、攪拌しながら室温で1時間反応させた。10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)で平衡化した脱塩カラムPD−10(アマシャム・ファルマシア・バイオサイエンス社製)を用いてゲル濾過を行って溶液交換し、その後に10mM酢酸緩衝液(pH5.0)を用いて全量を9.5mlとした。そこへ、ジメチルスルホキシドに溶解させた100mM 5−アミノフルオレセイン(NCI社製)を5μl加え、遮光下で攪拌しながら室温で1時間反応させた。次に、0.1Mのエタノールアミン(和光純薬工業社製)水溶液を500μl加え、遮光下で攪拌しながら室温で30分間反応させた。この溶液を100mMリン酸緩衝食塩水(pH7.5)で平衡化した脱塩カラムPD−10を用いてゲル濾過を行って溶液交換し、未反応の5−アミノフルオレセインを分離することにより、蛍光色素標識TiO2/PEGを含む分散液得た。この分散液および5−amino fluoresceinの蛍光強度を蛍光強度測定計Fluoroskan Ascent CF(Thermo Lasystems社製)を用いて測定した結果、蛍光色素標識TiO2/PEGを含む分散液において5−アミノフルオレセインにして1.85μMに相当する蛍光強度が確認された。また、乾燥重量を測定し、この分散液における酸化チタン微粒子の固形分濃度は0.32(w/v)%であった。このことから、TiO2/PEGの単位重量あたりのカルボキシル基含量を求めた。その結果、前記分散液のカルボキシル基/酸化チタン微粒子量比は、5.8x10−7(mol/g)であった。
【0075】
例11:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子と超音波照射による細胞殺傷試験
例1より得られたTiO2/PEGを、終濃度0.05%となるようにPBS緩衝溶液(pH7.4)に分散させ、この溶液を、1x104cells/mlのJurkat細胞を含む、10%血清入りRPMI1640培地(Invitrogen社)に1/10量添加して、試験溶液を調製した。上記得られた試験溶液に、超音波照射装置(オージー技研(株)製、ULTRASONIC APPARATUS ES-2:1MHz)により、0.5W/cm2で50%duty cycle運転で1分間超音波を照射して、細胞の殺傷率(%)の測定を行なった。比較のため、同様の試験をTiO2/PEGを使用しない場合についても同様の測定を行った。その結果を図8に示す。図8に示される通り、TiO2/PEGを使用しない場合にはわずかにしか認められなかった細胞の殺傷率が、TiO2/PEGを使用することで極めて高くなった。したがって、TiO2/PEGの存在下での超音波照射により細胞を高い効率で殺傷できることが確認された。
【0076】
例12:二酸化チタンゾルの作製
チタンテトライソプロポキシド3.6gとイソプロパノール3.6gを混合し、氷冷下で60mlの超純水に滴下して加水分解を行った。滴下後に室温で30分間攪拌した。攪拌後、12N硝酸1mlを滴下して80℃で8時間攪拌を行い、ペプチゼーションした。ペプチゼーション終了後0.45μmのフィルターで濾過し、さらにバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて溶液交換して固形成分1%の酸性二酸化チタンゾルを調製した。この二酸化チタンゾルを100ml容のバイアル瓶に入れ、超音波発生器MIDSONIC200(カイジョー製)を用いて200Hzで30分間超音波処理を行った。超音波処理を行った後の平均分散粒経を動的光散乱法により測定した。この測定は、超音波処理を行った後の酸化チタンゾルを12Nの硝酸で1000倍に希釈した後、分散液0.1mlを石英測定セルに仕込み、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は20.2nmであった。蒸発皿を用いて、50℃下で酸化チタンゾル溶液の濃縮を行い、最終的に固形成分20%の酸性酸化チタンゾルを調製した。
【0077】
例13:二酸化チタン粒子へのポリエチレングリコールの導入
ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0201(高分子開始剤分子量Mn=約1.5万〜3万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。また、リガンド分子としてプロトカテク酸(分子量Mn=154.12:和光純薬工業製)0.15412gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業製)溶液10mlを添加して、プロトカテク酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを5.75mlのDMFに溶液に加え、得られたプロトカテク酸溶液1.5ml、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液3mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、80℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応後の溶液1mlに対してリン酸塩緩衝溶液(PBS:pH7.4)を9ml添加してPBS希釈溶液を調整した。その希釈溶液2.5mlを脱塩カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いてPBS溶液3.5mlで回収して有機溶媒を除去した酸化チタン複合体粒子の分散液を得た。
【0078】
作製した酸化チタン複合体粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて測定した。ゼータ電位測定セルにポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製したポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の平均粒径は27.3nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製したポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子のゼータ電位は−9.27mVであった。
【0079】
例14:プロトカテク酸結合二酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
リガンド分子としてプロトカテク酸(分子量Mn=154.12:和光純薬工業)0.15412gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業)溶液10mlを添加して、プロトカテク酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを9.25mlのDMFに溶液に加え、調製したプロトカテク酸溶液0.5mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学社製)に溶液を移し変え、150℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール20mlを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、10mlの50mMホウ酸緩衝溶液(pH9)を加えて0.5(wt/vol)%プロトカテク酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で10倍に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにプロトカテク酸結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。その結果、分散粒径は30.3nm、ゼータ電位は−22.6mVであった。
【0080】
次に、ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0201(高分子開始剤分子量Mn=約1.5万〜3万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。先に得られた0.5(wt/vol)%プロトカテク酸結合二酸化チタン溶液4mlに、調製したポリエチレンオキシド重合開始剤溶液3mlと50mMホウ酸緩衝液3mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、60℃で16時間合成反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応後の溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて水3.5mlで回収して溶液交換した酸化チタン複合体粒子の分散液を得た。作製した酸化チタン複合体粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて、測定した。ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子の平均粒径は42.2nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子のゼータ電位は−10.8mVであった。
【0081】
例15:没食子酸結合二酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
リガンド分子として没食子酸(分子量Mn=170.1:和光純薬工業製)0.1701gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業製)溶液10mlを添加して、没食子酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを9.25mlのDMFに溶液に加え、調製した没食子酸溶液0.5mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、150℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール20mlを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、10mlの水を加えて0.5(wt/vol)%没食子酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で10倍に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに没食子酸結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。その結果、分散粒径は32.6nm、ゼータ電位は−36.0mVであった。
【0082】
次に、ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0201(高分子開始剤分子量Mn=約1.5万〜3万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。先に得られた0.5(wt/vol)%没食子酸結合二酸化チタン溶液4mlに、調製したポリエチレンオキシド重合開始剤溶液3mlと塩酸で調製した水溶液(pH5.5)3mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、60℃で16時間合成反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応後の溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いて水3.5mlで回収して溶液交換した酸化チタン複合体粒子の分散液を得た。作製した酸化チタン複合体粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて、測定した。ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子の平均粒径は42.5nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子のゼータ電位は−20.0mVであった。
【0083】
例16:ポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子のポリマー結合量評価
蒸留水に以下の粒子を固形成分が0.2(w/v)%になる様に分散して、サンプルを得た。
・TiO2/PEG(A):例14により作製した酸化チタン複合体粒子
・TiO2/PEG(B):33mg/mlのポリエチレンオキシド重合開始剤溶液を用いたこと以外は例3と同様にして作製した酸化チタン複合体粒子
・TiO2/PEG(C):例15により作製した酸化チタン複合体粒子
・TiO2/PEG(D):33mg/mlのポリエチレンオキシド重合開始剤溶液を用いたこと以外は例4と同様にして作製した酸化チタン複合体粒子
【0084】
この水溶液5mlに対してアセトン(和光純薬工業製)20mlと5M塩化ナトリウム水溶液を0.5ml加えて十分に撹拌し、沈殿を形成させ、さらに、遠心分離後に上澄を除去した。この沈殿に蒸留水を5ml加えて混合し、アセトンおよび5M塩化ナトリウム水溶液を上記と同様に加えて遠心分離を行う作業を3回繰り返した。つぎに得られた沈殿に蒸留水を5ml加え、この溶液を蒸留水で平衡化した脱塩カラムNAP−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いてゲル濾過による脱塩を行った。セラミック製の蒸発皿に移し、電熱乾燥器を用いて100℃16時間乾燥を行い、乾燥粉末とした。得られた乾燥粉末を用いて示差熱熱重量同時測定装置(EXSTAR6300:SII製)により、空気中にて100℃で30分間加熱後、600℃で30分間加熱し、重量変化を測定した。その結果を表1に示す。100℃にて完全に水分を除去した後、600℃までの重量変化はポリエチレングリコールの燃焼によると考えられ、これらから、それぞれの酸化チタン複合体粒子の単位チタン量あたりのポリマー結合量が示された。
【表1】
【0085】
例17:二酸化チタン粒子へのメチルドーパ結合ポリエチレングリコールの導入
ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0401(高分子開始剤分子量Mn=約2.5万〜4万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。また、リガンド分子としてメチルドーパ(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−メチル−L−アラニン;分子量Mn=211.2;東京化成工業製)211mgに水10mlを添加して、メチルドーパ溶液100mMを調整した。メチルドーパ溶液とポリエチレンオキシド重合開始剤溶液を混合し、メチルドーパの終濃度が10mM、またポリエチレンオキシドの終濃度が50mg/mlとなるように混合水溶液を10ml作製した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、60℃で16時間加熱を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、溶液をすべてナスフラスコに移し替えて一晩凍結乾燥を行い、メチルドーパ結合ポリエチレンオキシドの粉末を510mg得た。この粉末にジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業)6mlを添加して混合し、さらにDMF中でこの混合溶液が終濃度40(v/v)%、例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾルが終濃度で固形成分0.2%となるよう調整し、反応溶液とした。この反応溶液を水熱反応容器のHU−50に溶液を移し変え、80℃で16時間加熱反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、エバポレータでDMFを除去した後に、蒸留水10mlを添加して酸化チタン複合体粒子の分散液とした。
【0086】
さらに、得られた分散液をHPLCに以下の条件で付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。
・装置:AKTA purifier(GEヘルスケアバイオサイエンス製)
・カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(GEヘルスケアバイオサイエンス製)
・移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)
・流速:0.3ml/min
この分散液を蒸留水で0.01%水溶液に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。キュミュラント解析の結果、分散粒径は37.4nm、ゼータ電位は−5.3mVであった。
【0087】
例18:キナ酸結合二酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
リガンド分子としてキナ酸(分子量Mn=192.2:MP Biomedicals,Inc.)0.1922gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業製)溶液10mlを添加して、キナ酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを9.25mlのDMFに溶液に加え、調製したキナ酸溶液0.5mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、150℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール20mlを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、10mlの水を加えて0.5(wt/vol)%キナ酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で10倍に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにキナ酸結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。その結果、分散粒径は29.3nmであった。
【0088】
次に、ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0401(高分子開始剤分子量Mn=約2.5万〜4万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。先に得られた0.5(wt/vol)%キナ酸結合二酸化チタン溶液4mlに、調製したポリエチレンオキシド重合開始剤溶液3mlと50mMホウ酸緩衝液(pH9)3mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、80℃で16時間合成反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応後の溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて水3.5mlで回収して溶液交換した酸化チタン複合体粒子の分散液を得た。作製したポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて、測定した。ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子の平均粒径は178nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子のゼータ電位は−20.0mVであった。
【0089】
例19:アミノメチルホスホン酸結合二酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
リガンド分子としてアミノメチルホスホン酸(分子量Mn=111.04:シグマ製)0.111gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業製)溶液10mlを添加して、アミノメチルホスホン酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを9.25mlのDMFに溶液に加え、調製したアミノメチルホスホン酸溶液0.5mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、150℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール20mlを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、10mlの水を加えて0.5(wt/vol)%アミノメチルホスホン酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で10倍に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに没食子酸結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。その結果、分散粒径は30.5nm、ゼータ電位は−30.0mVであった。
【0090】
次に、ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0201(高分子開始剤分子量Mn=約1.5万〜3万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。先に得られた0.5(wt/vol)%アミノメチルホスホン酸結合二酸化チタン溶液4mlに、調製したポリエチレンオキシド重合開始剤溶液3mlと塩酸で調製した水溶液(pH5.5)3mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学社製)に溶液を移し変え、60℃で16時間合成反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応後の溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて水3.5mlで回収して溶液交換した酸化チタン複合体粒子の分散液を得た。作製した酸化チタン複合体粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて、測定した。ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子の平均粒径は50.0nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子のゼータ電位は−20.0mVであった。
【0091】
例20:4−アミノサリチル酸結合二酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
リガンド分子として4−アミノサリチル酸(分子量Mn=153.14:MP Biomedicals,Inc.)0.15314gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業製)溶液10mlを添加して、4−アミノサリチル酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを9.25mlのDMFに溶液に加え、調製した4−アミノサリチル酸溶液0.5mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、150℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール20mlを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、10mlの水を加えて0.5(wt/vol)%4−アミノサリチル酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で10倍に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに4−アミノサリチル酸結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。その結果、分散粒径は32.7nmであった。
【0092】
次に、この分散液5mlを50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いてゲル濾過を行い、50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)に溶液交換した。この回収した溶液に対して、20mg/mlに調整したポリエチレングリコール誘導体(SUNBRIGHT ME−200CS(日本油脂製))の水溶液2.5mlを添加し、6時間、室温にて穏やかに攪拌した。この溶液をVIVAPORE7500(VIVASCIENCE社製)を用いて1ml容量になるまで濃縮を行った。
【0093】
さらに、この濃縮液をHPLCに以下の条件で付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。
・装置:AKTA purifier(GEヘルスケアバイオサイエンス製)
・カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(GEヘルスケアバイオサイエンス製)
・移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)
・流速:0.3ml/min
回収した画分の分散粒径およびゼータ電位をゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて、測定した。ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子の平均粒径は45.9nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子のゼータ電位は−2.0mVであった。
【0094】
例21:ポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の塩強度安定性の評価
0.01〜0.5Mの異なる塩化ナトリウムを含む水溶液に例13で得られた酸化チタン複合体粒子を含む分散液を終濃度0.025%になるように添加し、1時間室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて実施例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図9に示す。図9に示されるように、系中の塩濃度が0.01から0.25Mの間はほとんど平均分散粒径の変化は認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
【0095】
例22:酸化チタン複合体粒子のpH安定性の評価
下記の通り50mMの異なるpHを持つ緩衝液を作成し、終濃度0.025(w/v)%になるように、例15で得られた酸化チタン複合体粒子を含む分散液を添加し、1時間室温にて静置した。
・pH5:酢酸緩衝液
・pH6:2−モルフォリノエタンスルホン酸緩衝液
・pH7およびpH8:2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液
・pH9:ホウ酸緩衝液
その後、ゼータサイザーナノZSにて例12と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図10に示す。図10に示されるように、pHが5から9の間で粒径の変化はほとんど認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
【0096】
例23:酸化チタン複合体粒子のタンパク質溶液中での分散安定性の評価
10%血清を含むRPMI1640培地(GIBCO製)に対して、例15で得られた酸化チタン複合体粒子を含む分散液を終濃度0.025%になるように添加し、1時間、24時間および72時間、室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図11に示す。図11に示されるように、72時間静置後において、酸化チタン複合体粒子の粒径の変化はほとんど認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
【0097】
例24:酸化チタン複合体粒子の光触媒活性の評価
例13〜例15で得られた酸化チタン複合体粒子を固形成分が0.01(w/v)%になる様にPBSで希釈した。メチレンブルー三水和物(和光純薬製)を5μMになる様に先に調製した酸化チタン複合体粒子を含むPBS溶液に添加した。攪拌しながら、本溶液に波長340nmの紫外光を5J/cm2になるように照射し、660nmにおける波長の吸収を紫外−可視光分光光度計により測定した。結果を図12に示す。図12に示されるように、紫外線を照射しないサンプルが100%とした場合、照射したサンプルは、全ての試料でメチレンブルーの分解にともなう吸光度の減少が認められた。このことから、例13〜例15で得られた酸化チタン複合体粒子が光触媒活性を保持していることは明らかである。
【0098】
例25:二酸化チタン粒子への4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコールの導入
ポリオキシエチレン−モノアリル−モノメチルエーテルと無水マレイン酸の共重合体(平均分子量;33659−日本油脂製)1gに水5mlを添加して加水分解した。こうして得られた溶液と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(同仁化学製)を、超純水を用いてそれぞれ濃度が50mg/mlおよび50mMとなるように混合しながら調整した。調整した溶液に4−アミノサリチル酸(分子量Mn=153.14:MP Biomedicals,Inc.)を濃度100mMになるよう混合して4mlの溶液を得た。この溶液を室温にて72時間振とう撹拌して反応させた。反応後、得られた溶液を透析膜であるスペクトラ/ポア CE 透析用チューブ(分画分子量=3500、Spectrum Laboratories,Inc.)に移して超純水4lに対して室温にて24時間で透析を行った。透析後にすべてナスフラスコに移し替えて一晩凍結乾燥し、得られた粉末に4mlのジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業)を添加して混合し、4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコール溶液とした。
【0099】
次にDMFを用いて4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコール溶液が終濃度20(vol/vol)%、例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾルが終濃度で固形成分0.25%となるよう調整し、2.5mlの反応溶液とした。この反応溶液を水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、80℃で6時間加熱反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、エバポレータでDMFを除去した後に、蒸留水1mlを添加してポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散液とした。さらに、HPLC:AKTA purifier(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)、流速:0.3ml/min]に付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。この分散液を蒸留水で0.05(wt/vol)%水溶液に希釈して72時間静置後、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。キュミュラント解析の結果、分散粒径は49.5nm、ゼータ電位は0.196mVであった。
【0100】
例26:酸化チタン複合体粒子への14C標識カテコール結合
例25で得られた、酸化チタン複合体粒子を超純水に分散して固形成分1%とした。次に、14C標識カテコールを超純水で10mMのモル濃度に調整した。酸化チタン複合体粒子1%溶液に対して14C標識カテコール溶液を等量混合し、PBS緩衝溶液(リン酸緩衝生理食塩水、PBS;pH7.4)で最終的に酸化チタン複合体粒子と14C標識カテコール溶液がそれぞれ終濃度で10倍希釈になるように調整した。調整した溶液をそれぞれ恒温器に移して40℃に設定し、3時間結合反応を行った。反応後の溶液について可視光域における波長の吸収スペクトルを紫外−可視光分光光度計により確認したところ、それぞれの溶液について増大が認められたため、14C標識カテコールが結合したと考えられた。
【0101】
さらに、この溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて水3.5mlで回収して未反応のカテコールを除去した。回収した溶液を超純水で0.01重量%の固形分濃度に希釈した後、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、例12と同様に平均分散粒径の測定を行った。その結果、分散粒径は35.7nmであった。これらから、14C標識カテコール結合酸化チタン複合体粒子の作製を確認した。
【0102】
例27:血中滞留性および腫瘍集積性に関する動物試験
例26で得られた14C標識カテコール結合酸化チタン複合体粒子を固形分濃度が0.05重量%となるようPBS緩衝溶液(リン酸緩衝生理食塩水、PBS;pH7.4)で調整し、試験溶液を得た。ヌードマウス(BALB/c)の背中にヒト膀胱癌由来細胞T−24を接種(2.5x106cells、50μl)し、腫瘍形成を行った腫瘍マウス(9〜10週齢)を用意した。試験溶液100μlをシリンジにより尾静脈投与を行った。投与後、経時的に臓器採取および採血を行い、測定サンプルとした。測定サンプルは炭素化後に加速器質量分析法によって放射能測定を行った。その結果、投与8時間後と48時間後における濃度比は0.29で、血中滞留性が高いことが示された。また、表2に示されるように腫瘍における濃度と正常細胞(筋肉)における濃度の比(T/N比)は、24時間後において2.56となり、腫瘍蓄積性が高いことが確認された。
【表2】
【0103】
例28:酸化チタン複合体粒子へのカテコール結合
例25で得られた、酸化チタン複合体粒子を超純水で1重量%の固形分濃度に希釈した。次に、カテコールを超純水で10mMのモル濃度に調整した。酸化チタン複合体粒子1重量%溶液に対してそれぞれのカテコール溶液を等量ずつ混合し、PBS緩衝溶液リン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.4)で最終的に酸化チタン複合体粒子とカテコール溶液がそれぞれ終濃度で10倍希釈になるように調整した。調整した溶液をそれぞれ恒温器に移して40℃に設定し、3時間結合反応を行った。反応後の溶液について可視光域における波長の吸収スペクトルを紫外−可視光分光光度計により確認したところ、それぞれの溶液について増大が認められたため、カテコールが結合したと考えられた。
さらに、この溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて水3.5mlで回収して未反応のカテコールを除去した。これらからカテコール結合酸化チタン複合体粒子の作製を確認した。
【0104】
例29:二酸化チタン粒子への4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコールの導入
ポリエチレングリコールの片末端イソシアネート基修飾体(平均分子量;20000、SUNBIO製)および4−アミノサリチル酸(分子量Mn=153.14:MP Biomedicals,Inc.)がそれぞれ終濃度3mMとなるように、ジメチルホルムアミドを用いて調整し、2mlの反応溶液を得た。この反応溶液を70℃で24時間加熱反応を行った。得られた溶液をエバポレーターを用いてジメチルホルムアミドの除去を行った。除去を確認した後、超純水を20ml添加し、水溶液とした。得られた水溶液を透析膜であるスペクトラ/ポア CE 透析用チューブ(分画分子量=3500、Spectrum Laboratories,Inc.)に移して超純水4lに対して室温にて24時間で透析を行った。透析後にすべてナスフラスコに移し替えて一晩凍結乾燥し、得られた粉末に2.5mlのジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業)を添加して混合し、4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコール溶液を得た。
【0105】
4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコール溶液に対して、例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾルが固形成分2%となるようジメチルホルムアミドを用いて調整した溶液を等量混合し、2.5mlの反応溶液を得た。この反応溶液を水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、150℃で16時間加熱反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、エバポレータでDMFを除去した後に、蒸留水1mlを添加してポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散液とした。さらに、HPLC:AKTA purifier(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)、流速:0.3ml/min]に付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。この分散液を蒸留水で0.05(wt/vol)%水溶液に希釈して1時間静置後、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。キュミュラント解析の結果、分散粒径は152nmであった。
【0106】
例30:安全性に関わる単回投与試験
例25で得られた酸化チタン複合体粒子を、固形分濃度がそれぞれ、1重量%、0.5重量%および0.05重量%となるようPBS緩衝溶液(リン酸緩衝生理食塩水、PBS;pH7.4)で調整し、試験溶液を得た。それぞれの濃度の試験溶液に対して、ヌードマウス(BALB/c)を5匹ずつ用意した。ヌードマウス一匹につき試験溶液100μlをシリンジにより尾静脈投与を行った。投与後、24時間において観察を行った結果、死亡したマウスは0匹であった。これらから、単回投与試験による酸化チタン複合体粒子の安全性を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の酸化チタン複合体粒子の一例を示す図であり、1は酸化チタン粒子を、2はノニオン性の水溶性高分子を示す。
【図2】例4において測定された、例1〜3で得られた各TiO2/PEG分散液を用いた場合におけるメチレンブルーの分解率(%)を示す図である。
【図3】例5において測定された、例1で得られたTiO2/PEGの平均分散粒径と、分散液中の塩化ナトリウム濃度との関係を示す図である。
【図4】例6において測定された、例1で得られたTiO2/PEGの平均分散粒径と、分散液のpHとの関係を示す図である。
【図5】例7において測定された、TiO2/PEGと、酸化チタン粒子との、室温で1時間および24時間静置した後における、平均分散粒径を示す図である。
【図6】例8において撮影された、0.1Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液で処理され1時間室温にて静置された後の、酸化チタン微粒子分散液と、例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液との画像である。図中右側に酸化チタン微粒子分散液が入ったシャーレが示され、図中左側にTiO2/PEGを含む分散液が入ったシャーレが示される。
【図7】例9において測定された、例1で得られたTiO2/PEG分散液を用いた場合における、TiO2/PEG濃度と細胞の生存率(%)との関係を示す図である。
【図8】例10において測定された、例1より得られたTiO2/PEGを使用した場合と使用しなかった場合とにおける、細胞の殺傷率(%)を示す図である。
【図9】例21において測定された、例13で得られたポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の平均分散粒径と、分散液中の塩化ナトリウム濃度との関係を示す図である。
【図10】例22において測定された、例15で得られたポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の平均粒径と、分散液のpHとの関係を示す図である。
【図11】例24において測定された、例15で得られたポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子と、時間との関係を示す図である。
【図12】例25において測定された、例13〜例15で得られた各ポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子に本溶液に波長340nmの紫外光を5J/cm2になるように照射した場合の、メチレンブルーの分解にともなう吸光度の減少、すなわちメチレンブルーの分解率を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化チタン粒子の表面を水溶性高分子で修飾した酸化チタン複合体粒子、その分散液、およびそれらの製造方法に関するものである。この酸化チタン複合体粒子は、超音波や紫外線等の照射を受けて細胞毒となることができるため、癌細胞等の細胞を殺傷する殺細胞剤、あるいは患部に超音波を照射することにより行われる超音波癌治療を促進するための超音波癌治療促進剤として利用可能である。
【背景技術】
【0002】
酸化チタンはpH6前後に等電点を有すると言われている。このため、酸化チタン粒子は中性付近の水系溶媒中では凝集を生じてしまい、これを均一に分散させることは極めて難しい。そのため、酸化チタン粒子を水系の分散媒に均一に分散させるため、今まで種々の試みがなされてきた。
【0003】
PEG(ポリエチレングリコール)を分散剤として添加して、分散媒中における酸化チタン粒子の分散性を向上させることが知られている(特許文献1(特開平2−307524号公報)および特許文献2(特開2002−60651号公報)参照)。
【0004】
一方、近年、ドラッグデリバリーシステム(DDS)に用いる担体として、極めて高い分散性の金属微粒子や半導体微粒子が求められている。このような目的のために、微粒子にPEGを結合させる手法も知られている。例えば、金属微粒子あるいは半導体微粒子にチオール基を介してPEGを結合させることが知られている(特許文献3(特開2003−80903号公報)および特許文献4(特開2004−300253号公報)参照)。また、金属微粒子、金属酸化物微粒子、あるいは半導体微粒子にメルカプト基または3官能のシラノール基を介してPEGを結合させることも知られている(特許文献5(特開2001−200050号公報)。しかしながら、これらの技術は、酸化チタン粒子への応用には適さない。これは、チオール基やメルカプト基は酸化チタンに安定に結合することができず、また、3官能のシラノール基にあっては相互に三次元的に縮合重合して重合物で酸化チタン粒子の表面を覆い尽くしてしまい酸化チタンの触媒活性を低下させてしまうおそれがあるためである。
【0005】
また、酸化チタン微粒子に、ポリアクリル酸等の親水性高分子を、カルボキシル基を介してエステル結合させた、表面改質酸化チタン微粒子も知られている(特許文献6(WO2004/087577)参照)。この技術は、ポリアクリル酸等といったアニオン性ポリマーの使用を念頭としたものである。
【0006】
更に、2〜3mm粒度の酸化チタンに35ないし42kHzの超音波照射を行い、ヒドロキシラジカルを発生させることにより有機物を分解させる技術も提案されている(例えば、特許文献7(特開2003−26406号公報)参照)。
【0007】
ところで、TiO2等の金属酸化物の表面にエンジオールリガンドを結合させて、ナノ粒子の光学特性を変える技術が知られているが(例えば、非特許文献1(T.Rajh, et al., J. Phys. Chem. B 2002, 106, 10543-10552)参照)、この技術はポリマーを金属酸化物に結合させる技術ではない。
【0008】
【特許文献1】特開平2−307524号公報
【特許文献2】特開2002−60651号公報
【特許文献3】特開2003−80903号公報
【特許文献4】特開2004−300253号公報
【特許文献5】特開2001−200050号公報
【特許文献6】WO2004/087577
【特許文献7】特開2003−26406号公報
【非特許文献1】T.Rajh, et al., J. Phys. Chem. B 2002, 106, 10543-10552
【発明の概要】
【0009】
本発明者らは、今般、酸化チタン粒子の表面に、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介して、ノニオン性の水溶性高分子を結合させることにより、酸化チタン粒子の超音波や紫外線により励起される触媒活性を十分に発揮させながら、その血中滞留性および癌細胞への集積性を向上できるとの知見を得た。
【0010】
したがって、本発明は、酸化チタン粒子の超音波や紫外線により励起される触媒活性を十分に発揮させながら、その血中滞留性および癌細胞への集積性を向上できる、酸化チタン複合体粒子およびその分散体の提供をその目的としている。すなわち、本発明の酸化チタン複合体粒子によれば、殺対象が癌細胞の場合にあっては、超音波や紫外線による癌の治療効果を著しく向上することができる。そのため、本発明の酸化チタン複合体粒子は、患部に超音波を照射することにより行われる超音波癌治療を促進するための超音波癌治療促進剤としても利用可能である。
【0011】
そして、本発明による酸化チタン複合体粒子は、
酸化チタン粒子と、
該酸化チタン粒子の表面に、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介して結合されてなる、ノニオン性の水溶性高分子と
を含んでなるものである。
【0012】
また、本発明による分散液は、上記酸化チタン複合体粒子と、該粒子が分散される溶媒とを含んでなるものである。
【0013】
さらに、本発明の第一の態様による、酸化チタン複合体粒子の製造方法は、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる。
【0014】
本発明の第二の態様による、酸化チタン複合体粒子の製造方法は、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子と、ノニオン性の水溶性高分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる。
【0015】
本発明の第三の態様による、酸化チタン複合体粒子の製造方法は、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリカルボン酸とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリカルボン酸が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる。
【0016】
本発明の第四の態様による、酸化チタン複合体粒子の製造方法は、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリアミンとを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリアミンが結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる。
【0017】
本発明の第五の態様による、酸化チタン複合体粒子の製造方法は、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記リガンド分子が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液にノニオン性の水溶性高分子を添加して、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる。
【発明の具体的説明】
【0018】
酸化チタン複合体粒子およびその分散体
本発明による酸化チタン複合体粒子は、酸化チタン粒子と、ノニオン性の水溶性高分子とを含む。図1に、酸化チタン複合体粒子の一例を示す。図1に示されるように、酸化チタン複合体粒子は、酸化チタン粒子1の表面にノニオン性の水溶性高分子2が結合されたものである。酸化チタン粒子1と水溶性高分子2との結合は、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介して形成される。すなわち、これらの官能基は酸化チタンとの間で強固な結合を形成するため、酸化チタン粒子の高い触媒活性にかかわらず水溶性高分子の結合を保持することが可能である。なお、本発明における結合形態は、血中滞留性確保の観点から、体内への投与後24〜72時間後に分散性が確保されている程度の結合形態であればよい。もっとも、生理条件での分散安定性に優れ、かつ超音波や紫外線照射後もポリマーの遊離が無く正常細胞へのダメージが少ない点で、共有結合であるのが望ましい。
【0019】
カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基は、3官能シラノール基のような相互に三次元的に縮合重合して重合物で酸化チタン粒子の表面を覆い尽くしてしまう官能基とは異なり、官能基同士で重合することが無いため、図1に示されるように酸化チタン粒子の表面に剥き出しの部分を多く確保することができると考えられる。その結果、表面が重合体で覆われることによって起こりうる失活を抑制しつつ、酸化チタン粒子の触媒活性を十分に発揮させることができる。
【0020】
そして、酸化チタン粒子の表面に結合した水溶性高分子はノニオン性であるため、電荷を帯びることなく、酸化チタン粒子の分散が困難とされる中性付近の水系溶媒中であっても、水和により酸化チタン複合体粒子を高度に分散させることができる。また、水溶性高分子は無電荷であるため、血中タンパク質が静電気的に吸着しにくくなるので、細網内皮系への取り込み、腎排泄、肝臓取り込み等を回避しやすくなり、目的部位(腫瘍)に到達できるに足る血中滞留性を確保することができる。しかも、無電荷の水溶性高分子を用いることで、癌細胞表面に高密度に到達しやすく、癌細胞への集積性にも優れる。したがって、本発明の酸化チタン複合体粒子は、高い分散性および高い血中滞留性を維持しながら生体内を運搬させて、癌細胞に効率良く集積させることができる。このため、本発明の酸化チタン複合体粒子は、点滴等を介した全身投与に適しており、表層から深部に至るまでの広範囲の癌の治療に特に適する。
【0021】
本発明の好ましい態様によれば、上記官能基がジオール基であるのが好ましく、より好ましくはエンジオール基であり、さらに好ましくはα−ジオール基である。これらの官能基を用いることで、優れた酸化チタン粒子への水溶性高分子の結合を実現することができる。
【0022】
本発明のより好ましい態様によれば、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基は、これらの官能基を備えたリガンド分子により与えられ、該リガンド分子により、該酸化チタン粒子の表面に前記水溶性高分子が結合されてなるのが好ましい。好ましいリガンド分子は環状分子であり、これにより酸化チタン粒子への水溶性高分子の結合強度がさらに向上される。
【0023】
本発明の好ましい態様によれば、リガンド分子は、水溶性高分子に結合する、カルボキシル基およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基をさらに含んでなるのが好ましい。この態様によれば、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基が酸化チタン粒子への強固な結合を実現すると同時に、カルボキシル基および/またはアミノ基が水溶性高分子との強固な結合を実現することができる。その結果、特に優れた酸化チタン粒子への水溶性高分子の結合を実現することができる。
【0024】
ジオール基を含むリガンド分子の好ましい例としては、水溶性や二酸化チタンへの結合性の観点から、プロトカテク酸、没食子酸、メチルドーパ、キナ酸、およびそれらの組合せが挙げられる。リガンド分子の他の例としては、カフェ酸、3,4−ジヒドロベンズアルデヒド、3,4−ジヒドロベンゾイックアッシドエチルエステル、3,4−ジヒドロキシベンジルアルコール、3,4−ジヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオーネ、DL−3,4−ジヒドロキシマンデリックアッシド、3−メトキシカテコール、2,ジヒドロキシナフタレン、DL−3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)アラニン、2−(3,4−ジヒドロキシフェニル)エチルアルコール、2,3−ジヒドロキシピリジン、2,3−ジヒドロキシキノザリン等が挙げられる。
【0025】
サリチル酸基を含むリガンド分子の好ましい例としては、水溶性や二酸化チタンへの結合性の観点から、4−アミノサリチル酸が挙げられる。
【0026】
リン酸基を含むリガンド分子の好ましい例としては、水溶性や二酸化チタンへの結合性の観点から、アミノメチルホスホン酸、ホスフォノカルボン酸、3−ホスフォノアラニンが挙げられる。リン酸基を含むリガンド分子の他の例としては、1−アミノプロピルホスホン酸、3−アミノプロピルホスホン酸、1−アミノエチルホスホン酸、2−アミノエチルホスホン酸、3−ホスフォノプロピオン酸、2−アミノエチルジハイドロゲンホスフェイト、2−ヒドロキシ−3−オキソプロピルジハイドロゲンホスフェイト、O−ホスフォノセリン、2−ホスフォグリセリン酸等が挙げられる。
【0027】
本発明に用いる水溶性高分子は、ノニオン性を有する水溶性高分子であれば限定されないが、好ましくは水酸基および/またはポリオキシアルキレン基を有する高分子が挙げられる。そのような水溶性高分子の好ましい例としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、デキストランあるいはそれらのコポリマーが挙げられ、より好ましくはポリエチレングリコール(PEG)およびデキストランであり、さらに好ましくはポリエチレングリコールである。水溶性高分子の好ましい重合度は、34〜500であり、より好ましくは34〜50である。
【0028】
本発明の好ましい態様によれば、水溶性高分子としてポリエチレングリコールを、官能基としてカルボキシル基を用いるのが好ましい。この態様において、ポリエチレングリコールとカルボキシル基の分子量比が15000:20〜400000:20であるのが好ましく、より好ましくは15000:20〜40000:20であり、ポリエチレングリコールの分子量は1500〜40000であるのが好ましく、より好ましくは1500〜4000である。
【0029】
本発明の好ましい態様によれば、カルボキシル基および/またはアミノ基の官能基が、カルボン酸および/またはアミンにより与えられるのが好ましい。この場合、カルボン酸またはアミンが水溶性高分子の少なくとも末端に修飾されてなるのが好ましいが、より好ましくはカルボン酸またはアミンが水溶性高分子と共に共重合体を形成してなる。これにより、酸化チタン粒子と水溶性高分子とが強固に結合されることができる。すなわち、官能基で修飾されたノニオン性水溶性高分子として、カルボン酸またはアミンと水溶性高分子との共重合体を使用可能である。これらの共重合体は、酸化チタン粒子の表面においてリンカーとして強固に結合するとともに、カルボキシル基およびアミノ基の数を多くすることができるので、酸化チタンとの結合に関与していない官能基の残基に蛍光色素や生体由来高分子等の機能性物質を結合させることができる。このような共重合体の好ましい例としては、マレイン酸−ポリエチレングリコール系共重合体が挙げられる。
【0030】
本発明の別の好ましい態様によれば、カルボキシル基および/またはアミノ基の官能基が、リンカーとしてのポリカルボン酸またはポリアミンにより与えられるのが好ましい。これらの高分子化合物は、酸化チタン粒子の表面においてリンカーとして強固に結合するとともに、カルボキシル基およびアミノ基の数を多くすることができるので、酸化チタンとの結合に関与していない官能基の残基に蛍光色素や生体由来高分子等の機能性物質を結合させることができる。好ましいポリカルボン酸の例としては、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−スルフォン酸共重合体が挙げられる。また、好ましいポリアミンの例としては、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、およびポリアリルアミンが挙げられる。さらに、カルボキシル基およびアミノ基の両方を有しているものも用いることができ、好ましい例としては、ポリオルニチン、ポリリジン等のポリアミノ酸が挙げられる。
【0031】
本発明の好ましい態様によれば、ポリカルボン酸またはポリアミンで形成されたリンカーと水溶性高分子とを結合する第二のリンカーとして、カルボキシル基およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基と化学結合を形成する官能基を有する、ポリカルボン酸またはポリアミン以外の化合物をさらに含んでなるのが好ましい。すなわち、ポリカルボン酸またはポリアミンで形成されたリンカーに第二のリンカーを結合させ、この第二のリンカーに水溶性高分子を結合させることも可能である。この第二のリンカーは、例えば生体分子同士を異なる官能基同士で結合する際に用いられるヘテロバイファンクショナルなクロスリンカーなどが考えられる。第二のリンカーの具体例としては、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−[α−マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル、N−[β−マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル、N−β−マレイミドプロピオン酸、N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド、N−ε−マレイミドカプロン酸、N−[ε−マレイミドカプロン酸]ヒドラジド、N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル、N−κ−マレイミドウンデカン酸、N−[κ−マレイミドウンデカン酸]ヒドラジド、スクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシ−[6−アミドカプロエート]、スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−[4−N−マレイミドフェニル]酪酸ヒドラジド・HCl、3−[2−ピリジルジチオ]プロピオニルヒドラジド、N−[p−マレイミドフェニル]イソシアネート、N−スクシンイミジル[4−アジドフェニル]−1,3´−ジチオプロピオネート、N−スクシンイミジル S−アセチルチオアセテート、N−スクシンイミジルS−アセチルチオプロピオネート、スクシンイミジル 3−[ブロモアセトアミド]プロピオネート、N−スクシンイミジル ヨードアセテート、N−スクシンイミジル[4−イオドアセチル]アミノベンゾエート、スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート、スクシンイミジル6−[(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノネート]、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α[2−ピリジルジチオ]トルエン、N−スクシンイミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート、N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N−[κ−マレイミドウンデカノイルオキシ]−スルホスクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル−6−[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノネート、スルホスクシンイミジル6−[3´−(2−ピリジルチチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノネート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル[4−ヨードアセチル]アミノベンゾエート、スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スルホスクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート、N−[ε−トリフルオロアセチルカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル等が挙げられる。また、第二のリンカーはさらに他のリンカー同士が結合されるような複数種類のリンカーから構成されてもよい。
【0032】
本発明の好ましい態様によれば、水溶性高分子にリンカーまたは第二のリンカーと結合可能な官能基として、カルボキシル基およびアミノ基以外の官能基を結合させておき、リンカーとの強固な結合を確保することもできる。そのようなカルボキシル基およびアミノ基以外の官能基の例としては、カルボハイドレイト基、スルフィド基、スクシンイミド基、マレイミド基、カルボジイミド基、およびヒドラジド基が挙げられる。
【0033】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタンとの結合に関与していないカルボキシル基および/またはアミノ基の残基に、生体由来高分子が結合されるのが好ましい。例えば、酸化チタン複合体粒子に抗体等の生体素子を付与すれば、癌細胞へのターゲッティング性能を更に高めることも可能である。
【0034】
本発明の好ましい態様によれば、リガンド分子と水溶性高分子とを結合する第二のリンカーとして、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基と化学結合を形成する官能基を有する、ポリオール、ポリリン酸、ポリカルボン酸、およびポリアミン以外の化合物をさらに含んでなるのが好ましい。すなわち、リガンド分子に含まれることができるジオール基、サリチル酸基、リン酸基、カルボキシル基、またはアミノ基(以下、第一のリンカーともいう)に第二のリンカーを結合させ、この第二のリンカーに水溶性高分子を結合させることも可能である。この第二のリンカーは、例えば生体分子同士を異なる官能基同士で結合する際に用いられるヘテロバイファンクショナルなクロスリンカーなどが考えられる。第二のリンカーの具体例としては、N−ヒドロキシスクシンイミド、N−[α−マレイミドアセトキシ]スクシンイミドエステル、N−[β−マレイミドプロピルオキシ]スクシンイミドエステル、N−β−マレイミドプロピオン酸、N−[β−マレイミドプロピオン酸]ヒドラジド・TFA、1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリド、N−ε−マレイミドカプロン酸、N−[ε−マレイミドカプロン酸]ヒドラジド、N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スクシンイミドエステル、N−κ−マレイミドウンデカン酸、N−[κ−マレイミドウンデカン酸]ヒドラジド、スクシンイミジル−4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシ−[6−アミドカプロエート]、スクシンイミジル6−[3−(2−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノエート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル、4−[4−N−マレイミドフェニル]酪酸ヒドラジド・HCl、3−[2−ピリジルジチオ]プロピオニルヒドラジド、N−[p−マレイミドフェニル]イソシアネート、N−スクシンイミジル[4−アジドフェニル]−1,3´−ジチオプロピオネート、N−スクシンイミジル S−アセチルチオアセテート、N−スクシンイミジルS−アセチルチオプロピオネート、スクシンイミジル 3−[ブロモアセトアミド]プロピオネート、N−スクシンイミジル ヨードアセテート、N−スクシンイミジル[4−イオドアセチル]アミノベンゾエート、スクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート、スクシンイミジル6−[(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノネート]、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α[2−ピリジルジチオ]トルエン、N−スクシンイミジル3−[2−ピリジルジチオ]プロピオネート、N−[ε−マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N−[γ−マレイミドブチリルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、N−[κ−マレイミドウンデカノイルオキシ]−スルホスクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル−6−[α−メチル−α−(2−ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノネート、スルホスクシンイミジル6−[3´−(2−ピリジルチチオ)−プロピオンアミド]ヘキサノネート、m−マレイミドベンゾイル−N−ヒドロキシスルホ−スクシンイミドエステル、スルホスクシンイミジル[4−ヨードアセチル]アミノベンゾエート、スルホスクシンイミジル4−[N−マレイミドメチル]−シクロヘキサン−1−カルボキシレート、スルホスクシンイミジル4−[p−マレイミドフェニル]ブチレート、N−[ε−トリフルオロアセチルカプロイルオキシ]スクシンイミドエステル等が挙げられる。また、第二のリンカーはさらに他のリンカー同士が結合されるような複数種類のリンカーから構成されてもよい。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、水溶性高分子に第一のリンカーまたは第二のリンカーと結合可能な官能基として、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基以外の官能基を結合させておき、リンカーとの強固な結合を確保することもできる。そのような他の官能基の例としては、カルボハイドレイト基、スルフィド基、スクシンイミド基、マレイミド基、カルボジイミド基、およびヒドラジド基が挙げられる。
【0036】
本発明の好ましい態様によれば、リガンド分子の酸化チタンとの結合に関与していない官能基の残基に水溶性高分子を結合することができる。その結合形態は特に限定されない。上記残基への結合の好ましい例としては、アゾ基を含むポリエチレングリコールとリガンド分子のカルボキシル基を用いたグラフト重合による結合が挙げられるが、それ以外にも、フェノール性水酸基、ビニル基、芳香族環等に対するグラフト重合による結合等も挙げられる。上記残基への結合の他の好ましい例としては、スクシンイミド基を含むポリエチレングリコールとリガンド分子のアミノ基を用いた結合が挙げられるが、それ以外にもカルボハイドレイト基、スルフィド基、スクシンイミド基、マレイミド基、カルボジイミド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基およびヒドラジド基等の反応性官能基を用いた結合も挙げられる。なお、リガンド分子と水溶性高分子とは、第二のリンカーによって間接的に結合されてもよい。
【0037】
本発明の好ましい態様によれば、水溶性高分子のリガンド分子との結合に関与していない残基に、蛍光色素や生体由来高分子が結合されるのが好ましい。例えば、酸化チタン複合体粒子に抗体等の生体素子を付与すれば、癌細胞へのターゲッティング性能を更に高めることも可能である。そのような生体由来高分子の結合形態は特に限定されない。上記残基への結合の好ましい例としては、アゾ基を含むポリエチレングリコールとリガンド分子のカルボキシル基を用いたグラフト重合による結合が挙げられるが、それ以外にも、フェノール性水酸基、ビニル基、芳香族環等に対するグラフト重合による結合等も挙げられる。上記残基への結合の他の好ましい例としては、スクシンイミド基を含むポリエチレングリコールとリガンド分子のアミノ基を用いた結合が挙げられるが、それ以外にもカルボハイドレイト基、スルフィド基、スクシンイミド基、マレイミド基、カルボジイミド基、イソシアネート基、イソチオシアネート基およびヒドラジド基等の反応性官能基を用いた結合も挙げられる。なお、リガンド分子と水溶性高分子とは、第二のリンカーによって間接的に結合されてもよい。
【0038】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン粒子が、アナターゼ型酸化チタンまたはルチル型酸化チタンであるのが好ましい。紫外線や超音波の照射による触媒活性を利用する場合にはアナターゼ型酸化チタンが好ましく、化粧料のように高い屈折率等の性質を利用する場合にはルチル型酸化チタンが好ましい。
【0039】
本発明の好ましい態様によれば、本発明に用いる酸化チタン複合体粒子は20〜200nmの粒子径を有し、より好ましくは50〜200nmであり、さらに好ましくは50〜150nmである。この粒径範囲であると、癌腫瘍への到達を目的として患者の体内に投与されると、ドラッグデリバリーシステムのように、EPR効果により癌組織に効率的に到達して蓄積される。そして、上述の通り、400kHz〜20MHzの超音波や紫外線の照射によりラジカル種の特異的生成が起こる。したがって、超音波や紫外線の照射により高い効率で癌組織を殺傷することができる。
【0040】
本発明の別の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体粒子が50nm未満(例えば数nm)の粒子径を有する場合、見かけ上のサイズを大きくしてEPR効果を得ることもできる。すなわち、50〜150nmの粒子径を有する二次粒子の形態を有するように半導体粒子同士を多官能リンカーで連結する等の方法にて結合されることで、EPR効果により高い癌治療効果を実現することができる。本発明のさらに別の好ましい態様によれば、EPR効果を利用するため、リポソームのような薬剤封入体の中に、酸化チタン複合体粒子を包摂させることもできる。
【0041】
本発明において半導体粒子の粒子径は、動的光散乱法により測定することができる。具体的には、粒径分布測定装置(ゼータサイザーナノ、マルバーンインスツルメント社製)を用いて、キュミュラント解析で得られる Z-average sizeで示される値として得ることができる。
【0042】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体粒子が、−20〜+20mVのゼータ電位を有するのが好ましく、より好ましくは−10〜+10mVであり、さらに好ましくは−5〜+5mVであり、最も好ましくは−3〜+3mVである。この範囲内であると、酸化チタン複合体粒子が全体として電荷を殆ど帯びないことになるので、ノニオン性の水溶性高分子の使用による、血中滞留性および癌細胞への集積性の向上効果を最大限発揮させることができる。
【0043】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体単位重量あたりの、カルボキシル基あるいはアミノ基のモル数が、1×10−9〜1×10−4mol/gであるのが好ましく、より好ましくは1×10−9〜1×10−6mol/gである。この範囲内であると、酸化チタン複合体粒子の触媒活性を十分に発揮させながら、血中滞留性および癌細胞への集積性を向上できる。
【0044】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体粒子単位重量あたりの、水溶性高分子の結合量が、0.3〜1.0g/gであるのが好ましく、分散性の観点からより好ましくは0.3〜0.5g/gである。この範囲内であると、酸化チタン複合体粒子の触媒活性を十分に発揮させながら、血中滞留性および癌細胞への集積性を向上できる。
【0045】
本発明に使用可能な酸化チタン複合体粒子は、単一種類の酸化チタン複合体粒子のみならず、複数種類の半導体粒子の混合物あるいは複合物も包含する。具体例としては、酸化チタン複合体粒子と酸化鉄ナノ粒子との複合物、酸化チタン複合体粒子と白金との複合物、およびシリカ被覆された酸化チタン等が挙げられる。
【0046】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体粒子が、溶媒に分散されて分散液の形態とされてなるのが好ましい。これにより、酸化チタン複合体粒子を、点滴、注射、塗布等の種々の方法により、患者の体内に効率的に投与することができる。分散液の液性は限定されず、pH3〜10の広範囲にわたって高い分散性を実現可能である。なお、体内投与における安全性の観点から、分散液は、pH5〜9であるのが好ましく、より好ましくは5〜8、特に中性の液性を有するのが好ましい。また、本発明の好ましい態様によれば、溶媒は水系溶媒であるのが好ましく、さらに好ましくはpH緩衝液または生理食塩水である。水系溶媒の好ましい塩濃度は2M以下であり、体内投与における安全性の観点から200mM以下がより好ましい。酸化チタン複合体粒子は分散体に対して、0.001〜1質量%以下含有されることが好ましく、より好ましくは0.001〜0.1質量%である。この範囲内であれば、投与後、24〜72時間後に患部(腫瘍)に効果的に粒子を蓄積させることが可能となる。すなわち、患部(腫瘍)に粒子濃度が蓄積しやすくなるとともに、血中での粒子の分散性も確保されて凝集隗が形成しにくくなるため、投与後に血管の閉塞などの二次的弊害を招くおそれも無い。
【0047】
本発明の酸化チタン複合体粒子は、点滴、注射、塗布等の種々の方法により、患者の体内に投与することができる。特に静脈または皮下による投与経路で用いられることが、粒子の大きさによるEPR効果と、血中の滞留性を利用して、所謂DDS的な治療により、患者の負担を軽減する観点から好ましい。そして、体内に投与された酸化チタン複合体粒子は、ドラッグデリバリーシステムのように、癌組織に到達して蓄積される。
【0048】
本発明の酸化チタン複合体粒子は、超音波あるいは紫外線の照射を受け、該照射により細胞毒となることができる。この酸化チタン複合体粒子は、体内に投与され、超音波照射を受け、該照射により細胞毒となることで、細胞を殺傷することができるが、体内に限らず、試験管内においても殺対象である細胞を殺傷することができる。本発明において、殺対象は特に限定されないが、癌細胞であるのが好ましい。すなわち、本発明による酸化チタン複合体粒子によれば、超音波や紫外線の照射により活性化して癌細胞を殺傷することができる。また、酸化チタン複合体粒子は、フラーレンや色素等の光増感剤ではないため、患者に投与後の治療段階において光過敏症の問題を生じることがなく、安全性が極めて高い。
【0049】
本発明の好ましい態様によれば、酸化チタン複合体粒子が蓄積された癌組織に超音波処理が行われる。使用する超音波の周波数は、400kHz〜20MHzが好ましく、より好ましくは600kHz〜10MHz、さらに好ましくは1MHz〜10MHzである。超音波の照射時間は治療対象である癌組織の位置および大きさを考慮して適宜決定されるべきであり、特に限定されない。こうして、患者の癌組織を超音波により高い効率で殺傷して、高い癌治療効果を実現することができる。超音波は生体内の深部に外部より到達させることが可能で、本発明の酸化チタン複合体粒子と併せて用いることにより、非侵襲の状態で生体内深部に存在するような患部やターゲット部位の治療が実現できる。さらに、患部やターゲット部位に本発明の酸化チタン複合体粒子が集積することにより、周辺の正常細胞に悪影響を及ぼさない程度の微弱な超音波で本発明の酸化チタン複合体粒子を集積させた局所のみに作用させることができる。
【0050】
ところで、これらの半導体粒子が超音波の照射により活性化して細胞を殺傷する効果は、超音波照射によりラジカル種を生成させることにより得ることができる。すなわち、これらの半導体粒子が与える生物的殺傷効果はラジカル種の質的・量的な増加にあると考えられる。その理由は以下の通り推察されるが、以下の理由はあくまで仮説であって、本発明は何ら下記説明に限定されるものではない。すなわち、超音波照射のみでは系中には過酸化水素とヒドロキシルラジカルが発生するが、本発明者らの知見によれば、酸化チタンなどの半導体粒子の存在下では、過酸化水素及びヒドロキシルラジカルの生成が促進される。また、これら半導体粒子の存在下、特に酸化チタンの存在下では、スーパーオキサイドアニオンと一重項酸素の生成が促進されるように見受けられる。これらラジカル種の特異的生成は、ナノメートルオーダーの微粒子を用いた場合、超音波照射時の周波数が400kHz〜20MHzの範囲、好ましくは600kHz〜10MHzの範囲、より好ましくは1MHz〜10MHzの範囲で顕著に観察される現象であると考えられる。
【0051】
製造方法
本発明の第一の態様による製造方法によれば、本発明の酸化チタン複合体粒子は、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を酸化チタン粒子に結合させることにより、製造することができる。この方法による酸化チタン複合体粒子の製造は、例えば、非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基で修飾されたノニオン性水溶性高分子とを分散させ、得られた分散液を80〜220℃で、例えば1〜16時間、加熱することにより行うことができる。本発明のより好ましい態様によれば、官能基で修飾されたノニオン性水溶性高分子として、カルボン酸またはアミンと水溶性高分子との共重合体を用いるのが好ましく、より好ましくは、マレイン酸−ポリエチレングリコール系共重合体が挙げられる。
【0052】
本発明の第二の態様による製造方法によれば、本発明の酸化チタン複合体粒子は、酸化チタン粒子と、リガンド分子と、ノニオン性の水溶性高分子とを同時に分散させて互いに結合させることにより、製造することができる。この方法による酸化チタン複合体粒子の製造は、例えば、非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子と、ノニオン性の水溶性高分子とを分散させ、得られた分散液を80〜220℃で、例えば1〜16時間、加熱して、酸化チタン複合体粒子を得ることにより行うことができる。
【0053】
本発明の第三の態様による製造方法によれば、本発明の酸化チタン複合体粒子は、先ず酸化チタン粒子をカルボキシル基を有するリンカーで修飾しておき、酸化チタン粒子に結合されたリンカーの残基に水溶性高分子を結合させることにより、製造することができる。この方法による酸化チタン複合体粒子の製造は、例えば、非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリカルボン酸とを分散させ、得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリカルボン酸が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ることにより行うことができる。本発明のより好ましい態様によれば、ポリカルボン酸として、ポリアクリル酸、ポリマレイン酸、アクリル酸−マレイン酸共重合体、アクリル酸−スルフォン酸共重合体を用いるのが好ましく、より好ましくはポリアクリル酸である。これにより、酸化チタン粒子の表面にリンカーを強固に形成することができる。また、上記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子の官能基がアミノ基であるのが好ましい。
【0054】
本発明の第四の態様による製造方法によれば、本発明の酸化チタン複合体粒子は、先ず酸化チタン粒子をアミノ基を有するリンカーで修飾しておき、酸化チタン粒子に結合されたリンカーの残基に水溶性高分子を結合させることにより、製造することができる。この方法による酸化チタン複合体粒子の製造は、例えば、非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリアミンとを分散させ、得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリアミンが結合された酸化チタン粒子の分散液を得、該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ることにより行うことができる。本発明のより好ましい態様によれば、ポリアミンとして、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、およびポリアリルアミンを用いるのが好ましく、より好ましくはポリエチレンイミンである。これにより、酸化チタン粒子の表面にリンカーを強固に形成することができる。また、上記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子の官能基がスクシンイミド基であるのが好ましい。
【0055】
本発明の第五の態様による製造方法によれば、本発明の酸化チタン複合体粒子は、先ず酸化チタン粒子をリガンド分子で修飾しておき、酸化チタン粒子に結合されたリガンド分子の残基に水溶性高分子を結合させることにより、製造することができる。この方法による酸化チタン複合体粒子の製造は、例えば、非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子とを分散させ、得られた分散液を80〜220℃で、例えば1〜16時間、加熱して、前記リガンド分子が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、該分散液にノニオン性の水溶性高分子を添加して、前記ポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子を得ることにより行うことができる。
【0056】
上述の各好適態様において、溶媒として、非プロトン系溶媒が用いられている。これは、プロトン系溶媒を使用した場合には、例えば脱水によるエステル結合の形成等の結合反応時に反応を阻害し、高い分散性の実現が困難になるおそれがあるためである。なお、好ましい非プロトン系溶媒の例としては、ジメチルホルムアミド、ジオキサン、およびジメチルスルホキシドが挙げられる。
【0057】
本発明の好ましい態様によれば、ポリカルボン酸またはポリアミンが結合された酸化チタン粒子の分散液を得た後、該分散液にノニオン性の水溶性高分子を添加する前に、リンカーと水溶性高分子とを結合するための第二のリンカーを添加して反応させ、第二のリンカーをポリアミンに結合させることも可能である。この第二のリンカーはカルボキシル基およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基と化学結合を形成する官能基を有する、ポリカルボン酸またはポリアミン以外の化合物であり、その具体例は前述した通りである。
【0058】
本発明の好ましい態様によれば、リガンド分子が結合された酸化チタン粒子の分散液を得た後、該分散液にノニオン性の水溶性高分子を添加する前に、リンカーと水溶性高分子とを結合するための第二のリンカーを添加して反応させ、第二のリンカーをリガンド分子に結合させることも可能である。この第二のリンカーはジオール基、サリチル酸基、リン酸基、カルボキシル基、およびアミノ基から選択される少なくとも1種の官能基と化学結合を形成する官能基を有する、ポリオール、ポリリン酸、ポリカルボン酸、およびポリアミン以外の化合物であり、その具体例は前述した通りである。
【0059】
本発明の好ましい態様によれば、上記各好適態様において、ポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子と未結合親水性高分子とを分離し、光触媒性酸化チタン微粒子を精製するのが好ましい。
【実施例】
【0060】
例1:酸化チタン粒子へのマレイン酸型ポリエチレングリコールの導入
チタンテトライソプロポキシド3.6gとイソプロパノール3.6gを混合し、氷冷下で60mlの超純水に滴下して加水分解を行った。滴下後に室温で30分間攪拌した。攪拌後、12N硝酸1mlを滴下して80℃で8時間攪拌を行い、ペプチゼーションした。ペプチゼーション終了後0.45μmのフィルターで濾過し、さらに脱塩カラムPD−10(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いて溶液交換して固形成分1%の酸性酸化チタンゾルを調製した。この酸化チタンゾルを100ml容のバイアル瓶に入れ、超音波発生器MIDSONIC200(カイジョー社製)を用いて200kHzで30分間超音波処理を行った。超音波処理を行った後の平均分散粒経を動的光散乱法により測定した。この測定は、超音波処理を行った後の酸化チタンゾルを12Nの硝酸で1000倍に希釈した後、分散液0.1mlを石英測定セルに仕込み、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は20.2nmであった。蒸発皿を用いて、50℃下で酸化チタンゾル溶液の濃縮を行い、最終的に固形成分20%の酸性酸化チタンゾルを調製した。
【0061】
次に、ポリオキシエチレン−モノアリル−モノメチルエーテルと無水マレイン酸の共重合体(平均分子量;33659−日本油脂製)1gに水5mlを添加して、加水分解後、凍結乾燥を行った。反応終了後、凍結乾燥物をジメチルホルムアミド(DMF)溶液5mlに溶解させポリエチレングリコール溶液200mg/mlを調製した。得られたポリエチレングリコール溶液1.875mlを、27.725mlのDMFに溶液に加え、先に調製したアナタ−ゼ型酸化チタンゾル0.9mlを添加後、攪拌して混合した。水熱反応容器のHU−50(三愛科学社製)に溶液を移し変え、150℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、エバポレータでDMFを除去した後に、蒸留水10mlを添加してポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子(TiO2/PEG)の分散液とした。さらに、HPLC[AKTA purifier(アマシャム・バイオサイエンス社製)、カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(アマシャム・バイオサイエンス社製)、移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)、流速:0.3ml/min]に付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。この分散液を蒸留水で0.01%水溶液に希釈し、分散粒径およびゼータ電位を動的光散乱法により測定した。この測定は、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにTiO2/PEGの分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。キュミュラント解析の結果、分散粒径は45.4nm、ゼータ電位は1.1mVであった。
【0062】
例2:ポリアクリル酸結合酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
チタンテトライソプロポキシド3.6gとイソプロパノール3.6gを混合し、氷冷下で60mlの超純水に滴下して加水分解を行った。滴下後に室温で30分間攪拌した。攪拌後、12N硝酸1mlを滴下して80℃で8時間攪拌を行い、ペプチゼーションした。ペプチゼーション終了後0.45μmのフィルターで濾過し、さらに脱塩カラムPD−10(アマシャム・バイオサイエンス社製)を用いて溶液交換して固形成分1%の酸性酸化チタンゾルを調製した。この酸化チタンゾルを100ml容のバイアル瓶に入れ、200kHzで30分間超音波処理を行った。超音波処理を行った後の平均分散粒経を動的光散乱法により測定した。この測定は、超音波処理を行った後の酸化チタンゾルを12Nの硝酸で1000倍に希釈した後、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、石英測定セルに分散液0.1mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は20.2nmであった。蒸発皿を用いて、50℃下で酸化チタンゾル溶液の濃縮を行い、最終的に固形成分20%の酸性酸化チタンゾルを調製した。
【0063】
この酸性酸化チタンゾル0.6mlをジメチルホルムアミド(DMF)で20mlとなるよう調整して分散させ、平均分子量5000のポリアクリル酸(和光純薬社製)0.3gを溶解したDMF10mlを添加後、攪拌して混合した。水熱反応容器のHU−50(三愛科学社製)に溶液を移し変え、150℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで反応液を冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノールを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、1.5mlの水を加えてポリアクリル酸結合酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で100倍に希釈し、分散粒径およびゼータ電位を動的光散乱法により測定した。この測定は、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにポリアクリル酸結合酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は53.6nm、ゼータ電位は−45.08mVであった。
【0064】
次に、0.5(w/v)%になるように超純水で調製したこの分散液5mlに対して0.8M 1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリドを250μlおよびN−ヒドロキシスクシンイミドを250μl加えて、攪拌しながら室温で1時間反応させた。50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化した脱塩カラムPD−10(アマシャム・ファルマシア・バイオサイエンス社製)を用いてゲル濾過を行って溶液交換し、その後に50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)を用いて全量を9.5mlとした。この回収した溶液に対して、20mg/mlに調整したポリエチレングリコール誘導体(SUNBRIGHT MEPA30−T(日本油脂社製))の水溶液2.5mlを添加し、6時間、室温にて穏やかに攪拌した。この溶液をVIVAPORE7500(VIVASCIENCE社製)を用いて1ml容量になるまで濃縮を行い、さらにこの濃縮液をHPLC[AKTA purifier(アマシャム・バイオサイエンス社製)、カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(アマシャム・バイオサイエンス社製)、移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)、流速:0.3ml/min]に付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。回収した画分の分散粒径およびゼータ電位を動的光散乱法により測定した。この測定は、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに回収画分0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。キュミュラント解析の結果、分散粒径は80.7nm、ゼータ電位は−6.329mVであった。このことから、ポリアクリル酸結合酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入により作製されたTiO2/PEG表面電荷の減少が確認された。
【0065】
例3:ポリエチレンイミン結合酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
チタンテトライソプロポキシド3.6gとイソプロパノール3.6gを混合し、氷冷下で60mlの超純水に滴下して加水分解を行った。滴下後に室温で30分間攪拌した。攪拌後、12N硝酸1mlを滴下して80℃で8時間攪拌を行い、ペプチゼーションした。ペプチゼーション終了後0.45μmのフィルターで濾過し、さらに脱塩カラムPD−10(アマシャム・ファルマシア・バイオサイエンス社製)を用いて溶液交換して固形成分1%の酸性酸化チタンゾルを調製した。この酸化チタンゾルを100ml容のバイアル瓶に入れ、200kHzで30分間超音波処理を行った。超音波処理を行った後の平均分散粒経を動的光散乱法により測定した。この測定は、12Nの硝酸で1000倍に希釈した後、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、石英測定セルに分散液0.1mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は20.2nmであった。
【0066】
得られた酸化チタンゾル3mlを20mlのジメチルホルムアミド(DMF)に分散させ、平均分子量10000のポリエチレンイミン(和光純薬社製)450mgを溶解したDMF10mlを添加後、攪拌して混合した。水熱反応容器のHU−50(三愛科学社製)に溶液を移し変え、150℃で5時間反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで反応液を冷却し、反応液に対して2倍量のアセトンを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、1.5mlの水を加えてポリエチレンイミン結合酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で100倍に希釈し、分散粒径およびゼータ電位を動的光散乱法により測定した。この測定は、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにポリエチレンイミン結合酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は57.5nm、ゼータ電位は47.5mVであった。
【0067】
次に、この分散液5mlを50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化した脱塩カラムPD−10を用いてゲル濾過を行い、50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)に溶液交換した。この回収した溶液に対して、20mg/mlに調整したポリエチレングリコール誘導体(SUNBRIGHT ME−200CS(日本油脂社製))の水溶液2.5mlを添加し、6時間、室温にて穏やかに攪拌した。この溶液をVIVAPORE7500(VIVASCIENCE社製)を用いて1ml容量になるまで濃縮を行い、さらにこの濃縮液をHPLC[AKTA purifier(アマシャム・バイオサイエンス社製)、カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(アマシャム・バイオサイエンス社製)、移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)、流速:0.3ml/min]に付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。回収した画分の分散粒径およびゼータ電位を動的光散乱法により測定した。この測定は、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに回収画分0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。キュミュラント解析の結果、分散粒径は57.6nm、ゼータ電位は21.1mVであった。このことから、ポリエチレンイミン結合酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入により作製されたTiO2/PEG表面電荷の減少が確認された。
【0068】
例4:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子の光触媒活性の評価
例1〜3で得られた各TiO2/PEG分散液を、固形成分が0.01(w/v)%になるようにPBSで希釈した。メチレンブルー三水和物(和光純薬)を5μMになるように先に調製したTiO2/PEGを含むPBS溶液に添加した。攪拌しながら、これらの溶液に波長340nmの紫外光を5J/cm2になるように照射し、660nmにおける波長の吸収を紫外−可視光分光光度計により測定した。そして、紫外線を照射しない試料の吸光度を100%とした場合における、各試料におけるメチレンブルーの分解にともなう吸光度の相対量(%)をメチレンブルー分解率(%)として算出した。結果を図2に示す。図2に示される通り、紫外線を照射した全ての試料においてメチレンブルーの分解にともなう吸光度の減少が認められた。このことから、実施例1〜3で得られたTiO2/PEGが光触媒活性を保持していることは明らかである。
【0069】
例5:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子の塩強度安定性の評価
0.01〜2Mの異なる塩化ナトリウムを含む水溶液に例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液を終濃度0.025%になるように添加し、1時間室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図3に示す。図3に示される通り、系中の塩濃度が0.01から2Mの間はほとんど平均分散粒径の変化は認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
【0070】
例6:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子のpH安定性の評価
50mMの、異なるpHを有する以下の緩衝液を調製した。
pH3:グリシン塩酸緩衝液
pH4および5:酢酸緩衝液
pH6:2−モルフォリノエタンスルホン酸緩衝液
pH7および8:2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液
pH9:ホウ酸緩衝液
pH10:グリシン水酸化ナトリウム緩衝液
これらの緩衝液に、例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液を終濃度0.025(w/v)%になるように添加し、1時間室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図4に示す。pHが3から10の間で粒径の変化はほとんど認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
【0071】
例7:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子の血清入り培地中での分散安定性の評価
10%血清を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)に対して、例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液、およびシリカコート酸化チタン微粒子STS240(石原産業、分散粒径52nm)を終濃度0.025%になるようにそれぞれ添加し、1時間および24時間、室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図5に示す。24時間静置後、TiO2/PEGの平均分散粒径の変化はほとんどないが、酸化チタン粒子(A)は大きく変化した。さらに72時間静置後において、シリカコート酸化チタン微粒子STS240は沈殿を形成したが、TiO2/PEGの平均分散粒径は80nmであった。このことから、TiO2/PEGの血清入り培地中での分散安定性を確認した。
【0072】
例8:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子の均一性(透明度)の評価
0.1Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を用いて、例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液を終濃度0.1%になるように調整し、1時間室温にて静置した。また、酸化チタン微粒子としてP25(日本アエロジル)を0.1Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液を用いて、同様に終濃度0.1%になるように調整し、1時間室温にて静置した。その後、シャーレに5ml移し上方から撮影し、確認した。その結果を図6に示す。図中右側に示されるP25水溶液に対して、図中左側に示されるTiO2/PEGを含む分散液は明らかに透明度が高く、均一に分散していることが確認された。また、分光光度計(UV−1600、島津製作所)を用いて波長660nmにおける吸光度の測定を行った結果、P25水溶液は吸光度が1を大きく上回り測定不能であったのに対して、TiO2/PEGを含む分散液は吸光度が0.042であり、また沈殿の形成は起きていなかった。更に、これらの溶液を室温暗所にて2週間静置した後に、同様に波長660nmにおける吸光度の測定を行った結果、P25水溶液は吸光度が1を大きく上回り測定不能であったのに対して、TiO2/PEGを含む分散液は吸光度が0.052であった。このことから、水溶液中においてTiO2/PEGの分散液が透明度の高い、均一な分散性を示し、かつ安定していることが明らかになった。
【0073】
例9:細胞毒性の評価
例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液を、固形分が1.0%になるように10%血清を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)で調製した。培養ガン細胞(Jurkat)を、10%血清を含むRPMI1640培地(GIBCO社製)で37℃、5%二酸化炭素雰囲気下で培養し、5.0×104 細胞数/mlとなるように調製した。これを再度20時間同条件で培養した。この細胞培養液に、上記TiO2/PEGを含む分散液を終濃度で0.1%、0.01%、0.001%、0.0001%になるように96穴プレート上で調整し、200μlの試験用細胞培養液とした。この試験用細胞培養液を37℃、5%二酸化炭素雰囲気下で20時間培養した後、それぞれ100μlを用いてCelltiter−Glo Luminescent Cell Viability Assay(Promega社製)により生細胞由来の発光反応を行い、イメージアナライザLAS−3000UVmini(富士フィルム社製)を用いてその発光量測定を行うことで細胞毒性の評価を行った。そして、何も添加していないコントロールの培養細胞における発光量を100%とした場合における、各試料における発光量の相対量(%)を生存率(%)として算出した。その結果を図7に示す。図7に示される通り、どの分散液濃度においても同等の発光量、すなわち同等の生存率を確認したことから、この濃度域のTiO2/PEGを含む分散液は細胞毒性が認められないことが明らかになった。
【0074】
例10:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子への蛍光色素標識
例1より得られたTiO2/PEGの分散液2mlに対して、0.8M 1−エチル−3−[3−ジメチルアミノプロピル]カルボジイミドヒドロクロリドを250μlおよびN−ヒドロキシスクシンイミドを250μl加えて、攪拌しながら室温で1時間反応させた。10mM 酢酸緩衝液(pH5.0)で平衡化した脱塩カラムPD−10(アマシャム・ファルマシア・バイオサイエンス社製)を用いてゲル濾過を行って溶液交換し、その後に10mM酢酸緩衝液(pH5.0)を用いて全量を9.5mlとした。そこへ、ジメチルスルホキシドに溶解させた100mM 5−アミノフルオレセイン(NCI社製)を5μl加え、遮光下で攪拌しながら室温で1時間反応させた。次に、0.1Mのエタノールアミン(和光純薬工業社製)水溶液を500μl加え、遮光下で攪拌しながら室温で30分間反応させた。この溶液を100mMリン酸緩衝食塩水(pH7.5)で平衡化した脱塩カラムPD−10を用いてゲル濾過を行って溶液交換し、未反応の5−アミノフルオレセインを分離することにより、蛍光色素標識TiO2/PEGを含む分散液得た。この分散液および5−amino fluoresceinの蛍光強度を蛍光強度測定計Fluoroskan Ascent CF(Thermo Lasystems社製)を用いて測定した結果、蛍光色素標識TiO2/PEGを含む分散液において5−アミノフルオレセインにして1.85μMに相当する蛍光強度が確認された。また、乾燥重量を測定し、この分散液における酸化チタン微粒子の固形分濃度は0.32(w/v)%であった。このことから、TiO2/PEGの単位重量あたりのカルボキシル基含量を求めた。その結果、前記分散液のカルボキシル基/酸化チタン微粒子量比は、5.8x10−7(mol/g)であった。
【0075】
例11:ポリエチレングリコール結合酸化チタン微粒子と超音波照射による細胞殺傷試験
例1より得られたTiO2/PEGを、終濃度0.05%となるようにPBS緩衝溶液(pH7.4)に分散させ、この溶液を、1x104cells/mlのJurkat細胞を含む、10%血清入りRPMI1640培地(Invitrogen社)に1/10量添加して、試験溶液を調製した。上記得られた試験溶液に、超音波照射装置(オージー技研(株)製、ULTRASONIC APPARATUS ES-2:1MHz)により、0.5W/cm2で50%duty cycle運転で1分間超音波を照射して、細胞の殺傷率(%)の測定を行なった。比較のため、同様の試験をTiO2/PEGを使用しない場合についても同様の測定を行った。その結果を図8に示す。図8に示される通り、TiO2/PEGを使用しない場合にはわずかにしか認められなかった細胞の殺傷率が、TiO2/PEGを使用することで極めて高くなった。したがって、TiO2/PEGの存在下での超音波照射により細胞を高い効率で殺傷できることが確認された。
【0076】
例12:二酸化チタンゾルの作製
チタンテトライソプロポキシド3.6gとイソプロパノール3.6gを混合し、氷冷下で60mlの超純水に滴下して加水分解を行った。滴下後に室温で30分間攪拌した。攪拌後、12N硝酸1mlを滴下して80℃で8時間攪拌を行い、ペプチゼーションした。ペプチゼーション終了後0.45μmのフィルターで濾過し、さらにバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて溶液交換して固形成分1%の酸性二酸化チタンゾルを調製した。この二酸化チタンゾルを100ml容のバイアル瓶に入れ、超音波発生器MIDSONIC200(カイジョー製)を用いて200Hzで30分間超音波処理を行った。超音波処理を行った後の平均分散粒経を動的光散乱法により測定した。この測定は、超音波処理を行った後の酸化チタンゾルを12Nの硝酸で1000倍に希釈した後、分散液0.1mlを石英測定セルに仕込み、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて行った。その結果、分散粒径は20.2nmであった。蒸発皿を用いて、50℃下で酸化チタンゾル溶液の濃縮を行い、最終的に固形成分20%の酸性酸化チタンゾルを調製した。
【0077】
例13:二酸化チタン粒子へのポリエチレングリコールの導入
ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0201(高分子開始剤分子量Mn=約1.5万〜3万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。また、リガンド分子としてプロトカテク酸(分子量Mn=154.12:和光純薬工業製)0.15412gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業製)溶液10mlを添加して、プロトカテク酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを5.75mlのDMFに溶液に加え、得られたプロトカテク酸溶液1.5ml、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液3mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、80℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応後の溶液1mlに対してリン酸塩緩衝溶液(PBS:pH7.4)を9ml添加してPBS希釈溶液を調整した。その希釈溶液2.5mlを脱塩カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いてPBS溶液3.5mlで回収して有機溶媒を除去した酸化チタン複合体粒子の分散液を得た。
【0078】
作製した酸化チタン複合体粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて測定した。ゼータ電位測定セルにポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製したポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の平均粒径は27.3nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製したポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子のゼータ電位は−9.27mVであった。
【0079】
例14:プロトカテク酸結合二酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
リガンド分子としてプロトカテク酸(分子量Mn=154.12:和光純薬工業)0.15412gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業)溶液10mlを添加して、プロトカテク酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを9.25mlのDMFに溶液に加え、調製したプロトカテク酸溶液0.5mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学社製)に溶液を移し変え、150℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール20mlを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、10mlの50mMホウ酸緩衝溶液(pH9)を加えて0.5(wt/vol)%プロトカテク酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で10倍に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにプロトカテク酸結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。その結果、分散粒径は30.3nm、ゼータ電位は−22.6mVであった。
【0080】
次に、ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0201(高分子開始剤分子量Mn=約1.5万〜3万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。先に得られた0.5(wt/vol)%プロトカテク酸結合二酸化チタン溶液4mlに、調製したポリエチレンオキシド重合開始剤溶液3mlと50mMホウ酸緩衝液3mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、60℃で16時間合成反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応後の溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて水3.5mlで回収して溶液交換した酸化チタン複合体粒子の分散液を得た。作製した酸化チタン複合体粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて、測定した。ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子の平均粒径は42.2nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子のゼータ電位は−10.8mVであった。
【0081】
例15:没食子酸結合二酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
リガンド分子として没食子酸(分子量Mn=170.1:和光純薬工業製)0.1701gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業製)溶液10mlを添加して、没食子酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを9.25mlのDMFに溶液に加え、調製した没食子酸溶液0.5mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、150℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール20mlを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、10mlの水を加えて0.5(wt/vol)%没食子酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で10倍に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに没食子酸結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。その結果、分散粒径は32.6nm、ゼータ電位は−36.0mVであった。
【0082】
次に、ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0201(高分子開始剤分子量Mn=約1.5万〜3万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。先に得られた0.5(wt/vol)%没食子酸結合二酸化チタン溶液4mlに、調製したポリエチレンオキシド重合開始剤溶液3mlと塩酸で調製した水溶液(pH5.5)3mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、60℃で16時間合成反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応後の溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス株式会社製)を用いて水3.5mlで回収して溶液交換した酸化チタン複合体粒子の分散液を得た。作製した酸化チタン複合体粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて、測定した。ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子の平均粒径は42.5nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子のゼータ電位は−20.0mVであった。
【0083】
例16:ポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子のポリマー結合量評価
蒸留水に以下の粒子を固形成分が0.2(w/v)%になる様に分散して、サンプルを得た。
・TiO2/PEG(A):例14により作製した酸化チタン複合体粒子
・TiO2/PEG(B):33mg/mlのポリエチレンオキシド重合開始剤溶液を用いたこと以外は例3と同様にして作製した酸化チタン複合体粒子
・TiO2/PEG(C):例15により作製した酸化チタン複合体粒子
・TiO2/PEG(D):33mg/mlのポリエチレンオキシド重合開始剤溶液を用いたこと以外は例4と同様にして作製した酸化チタン複合体粒子
【0084】
この水溶液5mlに対してアセトン(和光純薬工業製)20mlと5M塩化ナトリウム水溶液を0.5ml加えて十分に撹拌し、沈殿を形成させ、さらに、遠心分離後に上澄を除去した。この沈殿に蒸留水を5ml加えて混合し、アセトンおよび5M塩化ナトリウム水溶液を上記と同様に加えて遠心分離を行う作業を3回繰り返した。つぎに得られた沈殿に蒸留水を5ml加え、この溶液を蒸留水で平衡化した脱塩カラムNAP−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いてゲル濾過による脱塩を行った。セラミック製の蒸発皿に移し、電熱乾燥器を用いて100℃16時間乾燥を行い、乾燥粉末とした。得られた乾燥粉末を用いて示差熱熱重量同時測定装置(EXSTAR6300:SII製)により、空気中にて100℃で30分間加熱後、600℃で30分間加熱し、重量変化を測定した。その結果を表1に示す。100℃にて完全に水分を除去した後、600℃までの重量変化はポリエチレングリコールの燃焼によると考えられ、これらから、それぞれの酸化チタン複合体粒子の単位チタン量あたりのポリマー結合量が示された。
【表1】
【0085】
例17:二酸化チタン粒子へのメチルドーパ結合ポリエチレングリコールの導入
ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0401(高分子開始剤分子量Mn=約2.5万〜4万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。また、リガンド分子としてメチルドーパ(3−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−2−メチル−L−アラニン;分子量Mn=211.2;東京化成工業製)211mgに水10mlを添加して、メチルドーパ溶液100mMを調整した。メチルドーパ溶液とポリエチレンオキシド重合開始剤溶液を混合し、メチルドーパの終濃度が10mM、またポリエチレンオキシドの終濃度が50mg/mlとなるように混合水溶液を10ml作製した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、60℃で16時間加熱を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、溶液をすべてナスフラスコに移し替えて一晩凍結乾燥を行い、メチルドーパ結合ポリエチレンオキシドの粉末を510mg得た。この粉末にジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業)6mlを添加して混合し、さらにDMF中でこの混合溶液が終濃度40(v/v)%、例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾルが終濃度で固形成分0.2%となるよう調整し、反応溶液とした。この反応溶液を水熱反応容器のHU−50に溶液を移し変え、80℃で16時間加熱反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、エバポレータでDMFを除去した後に、蒸留水10mlを添加して酸化チタン複合体粒子の分散液とした。
【0086】
さらに、得られた分散液をHPLCに以下の条件で付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。
・装置:AKTA purifier(GEヘルスケアバイオサイエンス製)
・カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(GEヘルスケアバイオサイエンス製)
・移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)
・流速:0.3ml/min
この分散液を蒸留水で0.01%水溶液に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。キュミュラント解析の結果、分散粒径は37.4nm、ゼータ電位は−5.3mVであった。
【0087】
例18:キナ酸結合二酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
リガンド分子としてキナ酸(分子量Mn=192.2:MP Biomedicals,Inc.)0.1922gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業製)溶液10mlを添加して、キナ酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを9.25mlのDMFに溶液に加え、調製したキナ酸溶液0.5mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、150℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール20mlを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、10mlの水を加えて0.5(wt/vol)%キナ酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で10倍に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにキナ酸結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。その結果、分散粒径は29.3nmであった。
【0088】
次に、ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0401(高分子開始剤分子量Mn=約2.5万〜4万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。先に得られた0.5(wt/vol)%キナ酸結合二酸化チタン溶液4mlに、調製したポリエチレンオキシド重合開始剤溶液3mlと50mMホウ酸緩衝液(pH9)3mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、80℃で16時間合成反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応後の溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて水3.5mlで回収して溶液交換した酸化チタン複合体粒子の分散液を得た。作製したポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて、測定した。ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子の平均粒径は178nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子のゼータ電位は−20.0mVであった。
【0089】
例19:アミノメチルホスホン酸結合二酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
リガンド分子としてアミノメチルホスホン酸(分子量Mn=111.04:シグマ製)0.111gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業製)溶液10mlを添加して、アミノメチルホスホン酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを9.25mlのDMFに溶液に加え、調製したアミノメチルホスホン酸溶液0.5mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、150℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール20mlを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、10mlの水を加えて0.5(wt/vol)%アミノメチルホスホン酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で10倍に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに没食子酸結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。その結果、分散粒径は30.5nm、ゼータ電位は−30.0mVであった。
【0090】
次に、ポリエチレンオキシドがアゾ基を介して複数結合した重合開始剤VPE−0201(高分子開始剤分子量Mn=約1.5万〜3万:和光純薬工業製)1gに水10mlを添加して、ポリエチレンオキシド重合開始剤溶液100mg/mlを調整した。先に得られた0.5(wt/vol)%アミノメチルホスホン酸結合二酸化チタン溶液4mlに、調製したポリエチレンオキシド重合開始剤溶液3mlと塩酸で調製した水溶液(pH5.5)3mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学社製)に溶液を移し変え、60℃で16時間合成反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応後の溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて水3.5mlで回収して溶液交換した酸化チタン複合体粒子の分散液を得た。作製した酸化チタン複合体粒子の分散粒径を、ゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて、測定した。ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子の平均粒径は50.0nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子のゼータ電位は−20.0mVであった。
【0091】
例20:4−アミノサリチル酸結合二酸化チタン微粒子へのポリエチレングリコールの導入
リガンド分子として4−アミノサリチル酸(分子量Mn=153.14:MP Biomedicals,Inc.)0.15314gにジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業製)溶液10mlを添加して、4−アミノサリチル酸溶液100mMを調整した。例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾル0.25mlを9.25mlのDMFに溶液に加え、調製した4−アミノサリチル酸溶液0.5mlを添加後、攪拌して混合した。その後、水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、150℃で16時間水熱合成を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、反応液に対して2倍量のイソプロパノール20mlを添加した。室温で30分間静置後、2000gにて15min遠心分離により沈殿を回収した。回収した沈殿表面をエタノールで洗浄後、10mlの水を加えて0.5(wt/vol)%4−アミノサリチル酸結合二酸化チタン微粒子の分散液を得た。この分散液を蒸留水で10倍に希釈し、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに4−アミノサリチル酸結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。その結果、分散粒径は32.7nmであった。
【0092】
次に、この分散液5mlを50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)で平衡化したバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いてゲル濾過を行い、50mMホウ酸緩衝液(pH9.0)に溶液交換した。この回収した溶液に対して、20mg/mlに調整したポリエチレングリコール誘導体(SUNBRIGHT ME−200CS(日本油脂製))の水溶液2.5mlを添加し、6時間、室温にて穏やかに攪拌した。この溶液をVIVAPORE7500(VIVASCIENCE社製)を用いて1ml容量になるまで濃縮を行った。
【0093】
さらに、この濃縮液をHPLCに以下の条件で付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。
・装置:AKTA purifier(GEヘルスケアバイオサイエンス製)
・カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(GEヘルスケアバイオサイエンス製)
・移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)
・流速:0.3ml/min
回収した画分の分散粒径およびゼータ電位をゼータサイザーナノZS(シスメックス製)を用いて、測定した。ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて動的光散乱法により測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子の平均粒径は45.9nmであった。また、同様の条件でゼータサイザーナノZSを用いてゼータ電位を測定したところ、作製した酸化チタン複合体粒子のゼータ電位は−2.0mVであった。
【0094】
例21:ポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の塩強度安定性の評価
0.01〜0.5Mの異なる塩化ナトリウムを含む水溶液に例13で得られた酸化チタン複合体粒子を含む分散液を終濃度0.025%になるように添加し、1時間室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて実施例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図9に示す。図9に示されるように、系中の塩濃度が0.01から0.25Mの間はほとんど平均分散粒径の変化は認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
【0095】
例22:酸化チタン複合体粒子のpH安定性の評価
下記の通り50mMの異なるpHを持つ緩衝液を作成し、終濃度0.025(w/v)%になるように、例15で得られた酸化チタン複合体粒子を含む分散液を添加し、1時間室温にて静置した。
・pH5:酢酸緩衝液
・pH6:2−モルフォリノエタンスルホン酸緩衝液
・pH7およびpH8:2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸緩衝液
・pH9:ホウ酸緩衝液
その後、ゼータサイザーナノZSにて例12と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図10に示す。図10に示されるように、pHが5から9の間で粒径の変化はほとんど認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
【0096】
例23:酸化チタン複合体粒子のタンパク質溶液中での分散安定性の評価
10%血清を含むRPMI1640培地(GIBCO製)に対して、例15で得られた酸化チタン複合体粒子を含む分散液を終濃度0.025%になるように添加し、1時間、24時間および72時間、室温にて静置した。その後、ゼータサイザーナノZSにて例1と同様に平均分散粒径の測定を行った。結果を図11に示す。図11に示されるように、72時間静置後において、酸化チタン複合体粒子の粒径の変化はほとんど認められず、安定した分散性を示すことが明らかになった。
【0097】
例24:酸化チタン複合体粒子の光触媒活性の評価
例13〜例15で得られた酸化チタン複合体粒子を固形成分が0.01(w/v)%になる様にPBSで希釈した。メチレンブルー三水和物(和光純薬製)を5μMになる様に先に調製した酸化チタン複合体粒子を含むPBS溶液に添加した。攪拌しながら、本溶液に波長340nmの紫外光を5J/cm2になるように照射し、660nmにおける波長の吸収を紫外−可視光分光光度計により測定した。結果を図12に示す。図12に示されるように、紫外線を照射しないサンプルが100%とした場合、照射したサンプルは、全ての試料でメチレンブルーの分解にともなう吸光度の減少が認められた。このことから、例13〜例15で得られた酸化チタン複合体粒子が光触媒活性を保持していることは明らかである。
【0098】
例25:二酸化チタン粒子への4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコールの導入
ポリオキシエチレン−モノアリル−モノメチルエーテルと無水マレイン酸の共重合体(平均分子量;33659−日本油脂製)1gに水5mlを添加して加水分解した。こうして得られた溶液と1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(同仁化学製)を、超純水を用いてそれぞれ濃度が50mg/mlおよび50mMとなるように混合しながら調整した。調整した溶液に4−アミノサリチル酸(分子量Mn=153.14:MP Biomedicals,Inc.)を濃度100mMになるよう混合して4mlの溶液を得た。この溶液を室温にて72時間振とう撹拌して反応させた。反応後、得られた溶液を透析膜であるスペクトラ/ポア CE 透析用チューブ(分画分子量=3500、Spectrum Laboratories,Inc.)に移して超純水4lに対して室温にて24時間で透析を行った。透析後にすべてナスフラスコに移し替えて一晩凍結乾燥し、得られた粉末に4mlのジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業)を添加して混合し、4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコール溶液とした。
【0099】
次にDMFを用いて4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコール溶液が終濃度20(vol/vol)%、例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾルが終濃度で固形成分0.25%となるよう調整し、2.5mlの反応溶液とした。この反応溶液を水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、80℃で6時間加熱反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、エバポレータでDMFを除去した後に、蒸留水1mlを添加してポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散液とした。さらに、HPLC:AKTA purifier(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)、流速:0.3ml/min]に付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。この分散液を蒸留水で0.05(wt/vol)%水溶液に希釈して72時間静置後、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルに酸化チタン複合体粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。キュミュラント解析の結果、分散粒径は49.5nm、ゼータ電位は0.196mVであった。
【0100】
例26:酸化チタン複合体粒子への14C標識カテコール結合
例25で得られた、酸化チタン複合体粒子を超純水に分散して固形成分1%とした。次に、14C標識カテコールを超純水で10mMのモル濃度に調整した。酸化チタン複合体粒子1%溶液に対して14C標識カテコール溶液を等量混合し、PBS緩衝溶液(リン酸緩衝生理食塩水、PBS;pH7.4)で最終的に酸化チタン複合体粒子と14C標識カテコール溶液がそれぞれ終濃度で10倍希釈になるように調整した。調整した溶液をそれぞれ恒温器に移して40℃に設定し、3時間結合反応を行った。反応後の溶液について可視光域における波長の吸収スペクトルを紫外−可視光分光光度計により確認したところ、それぞれの溶液について増大が認められたため、14C標識カテコールが結合したと考えられた。
【0101】
さらに、この溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて水3.5mlで回収して未反応のカテコールを除去した。回収した溶液を超純水で0.01重量%の固形分濃度に希釈した後、ゼータサイザーナノZS(シスメックス社製)を用いて、例12と同様に平均分散粒径の測定を行った。その結果、分散粒径は35.7nmであった。これらから、14C標識カテコール結合酸化チタン複合体粒子の作製を確認した。
【0102】
例27:血中滞留性および腫瘍集積性に関する動物試験
例26で得られた14C標識カテコール結合酸化チタン複合体粒子を固形分濃度が0.05重量%となるようPBS緩衝溶液(リン酸緩衝生理食塩水、PBS;pH7.4)で調整し、試験溶液を得た。ヌードマウス(BALB/c)の背中にヒト膀胱癌由来細胞T−24を接種(2.5x106cells、50μl)し、腫瘍形成を行った腫瘍マウス(9〜10週齢)を用意した。試験溶液100μlをシリンジにより尾静脈投与を行った。投与後、経時的に臓器採取および採血を行い、測定サンプルとした。測定サンプルは炭素化後に加速器質量分析法によって放射能測定を行った。その結果、投与8時間後と48時間後における濃度比は0.29で、血中滞留性が高いことが示された。また、表2に示されるように腫瘍における濃度と正常細胞(筋肉)における濃度の比(T/N比)は、24時間後において2.56となり、腫瘍蓄積性が高いことが確認された。
【表2】
【0103】
例28:酸化チタン複合体粒子へのカテコール結合
例25で得られた、酸化チタン複合体粒子を超純水で1重量%の固形分濃度に希釈した。次に、カテコールを超純水で10mMのモル濃度に調整した。酸化チタン複合体粒子1重量%溶液に対してそれぞれのカテコール溶液を等量ずつ混合し、PBS緩衝溶液リン酸緩衝生理食塩水(PBS;pH7.4)で最終的に酸化チタン複合体粒子とカテコール溶液がそれぞれ終濃度で10倍希釈になるように調整した。調整した溶液をそれぞれ恒温器に移して40℃に設定し、3時間結合反応を行った。反応後の溶液について可視光域における波長の吸収スペクトルを紫外−可視光分光光度計により確認したところ、それぞれの溶液について増大が認められたため、カテコールが結合したと考えられた。
さらに、この溶液2.5mlに対してバッファー交換用自然落下型カラムPD−10(GEヘルスケアバイオサイエンス製)を用いて水3.5mlで回収して未反応のカテコールを除去した。これらからカテコール結合酸化チタン複合体粒子の作製を確認した。
【0104】
例29:二酸化チタン粒子への4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコールの導入
ポリエチレングリコールの片末端イソシアネート基修飾体(平均分子量;20000、SUNBIO製)および4−アミノサリチル酸(分子量Mn=153.14:MP Biomedicals,Inc.)がそれぞれ終濃度3mMとなるように、ジメチルホルムアミドを用いて調整し、2mlの反応溶液を得た。この反応溶液を70℃で24時間加熱反応を行った。得られた溶液をエバポレーターを用いてジメチルホルムアミドの除去を行った。除去を確認した後、超純水を20ml添加し、水溶液とした。得られた水溶液を透析膜であるスペクトラ/ポア CE 透析用チューブ(分画分子量=3500、Spectrum Laboratories,Inc.)に移して超純水4lに対して室温にて24時間で透析を行った。透析後にすべてナスフラスコに移し替えて一晩凍結乾燥し、得られた粉末に2.5mlのジメチルホルムアミド(DMF:和光純薬工業)を添加して混合し、4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコール溶液を得た。
【0105】
4−アミノサリチル酸結合ポリエチレングリコール溶液に対して、例12で得られたアナタ−ゼ型二酸化チタンゾルが固形成分2%となるようジメチルホルムアミドを用いて調整した溶液を等量混合し、2.5mlの反応溶液を得た。この反応溶液を水熱反応容器のHU−50(三愛科学製)に溶液を移し変え、150℃で16時間加熱反応を行った。反応終了後、反応容器温度が50℃以下になるまで冷却し、エバポレータでDMFを除去した後に、蒸留水1mlを添加してポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散液とした。さらに、HPLC:AKTA purifier(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、カラム:HiPrep 16/60 Sephacryl S−300HR(GEヘルスケアバイオサイエンス製)、移動相:リン酸塩緩衝溶液(pH7.4)、流速:0.3ml/min]に付したところ、素通り画分にUV吸収のピークが確認され、この画分を回収した。この分散液を蒸留水で0.05(wt/vol)%水溶液に希釈して1時間静置後、動的光散乱法による分散粒径およびゼータ電位の確認を、ゼータサイザーナノZSを用いて、ゼータ電位測定セルにポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の分散液0.75mlを仕込み、溶媒の各種パラメーターを水と同値に設定し、25℃にて測定した。キュミュラント解析の結果、分散粒径は152nmであった。
【0106】
例30:安全性に関わる単回投与試験
例25で得られた酸化チタン複合体粒子を、固形分濃度がそれぞれ、1重量%、0.5重量%および0.05重量%となるようPBS緩衝溶液(リン酸緩衝生理食塩水、PBS;pH7.4)で調整し、試験溶液を得た。それぞれの濃度の試験溶液に対して、ヌードマウス(BALB/c)を5匹ずつ用意した。ヌードマウス一匹につき試験溶液100μlをシリンジにより尾静脈投与を行った。投与後、24時間において観察を行った結果、死亡したマウスは0匹であった。これらから、単回投与試験による酸化チタン複合体粒子の安全性を確認した。
【図面の簡単な説明】
【0107】
【図1】本発明の酸化チタン複合体粒子の一例を示す図であり、1は酸化チタン粒子を、2はノニオン性の水溶性高分子を示す。
【図2】例4において測定された、例1〜3で得られた各TiO2/PEG分散液を用いた場合におけるメチレンブルーの分解率(%)を示す図である。
【図3】例5において測定された、例1で得られたTiO2/PEGの平均分散粒径と、分散液中の塩化ナトリウム濃度との関係を示す図である。
【図4】例6において測定された、例1で得られたTiO2/PEGの平均分散粒径と、分散液のpHとの関係を示す図である。
【図5】例7において測定された、TiO2/PEGと、酸化チタン粒子との、室温で1時間および24時間静置した後における、平均分散粒径を示す図である。
【図6】例8において撮影された、0.1Mの塩化ナトリウムを含む10mMリン酸緩衝液で処理され1時間室温にて静置された後の、酸化チタン微粒子分散液と、例1で得られたTiO2/PEGを含む分散液との画像である。図中右側に酸化チタン微粒子分散液が入ったシャーレが示され、図中左側にTiO2/PEGを含む分散液が入ったシャーレが示される。
【図7】例9において測定された、例1で得られたTiO2/PEG分散液を用いた場合における、TiO2/PEG濃度と細胞の生存率(%)との関係を示す図である。
【図8】例10において測定された、例1より得られたTiO2/PEGを使用した場合と使用しなかった場合とにおける、細胞の殺傷率(%)を示す図である。
【図9】例21において測定された、例13で得られたポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の平均分散粒径と、分散液中の塩化ナトリウム濃度との関係を示す図である。
【図10】例22において測定された、例15で得られたポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子の平均粒径と、分散液のpHとの関係を示す図である。
【図11】例24において測定された、例15で得られたポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子と、時間との関係を示す図である。
【図12】例25において測定された、例13〜例15で得られた各ポリエチレングリコール結合二酸化チタン微粒子に本溶液に波長340nmの紫外光を5J/cm2になるように照射した場合の、メチレンブルーの分解にともなう吸光度の減少、すなわちメチレンブルーの分解率を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン粒子と、
該酸化チタン粒子の表面に、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介して結合されてなる、ノニオン性の水溶性高分子と
を含んでなる、酸化チタン複合体粒子。
【請求項2】
前記水溶性高分子が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、およびデキストランからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項3】
前記官能基が、カルボン酸またはアミンにより与えられ、該カルボン酸またはアミンが、前記水溶性高分子の少なくとも末端に修飾されてなる、請求項1または2に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項4】
前記官能基が、カルボン酸またはアミンにより与えられ、該カルボン酸またはアミンが、前記水溶性高分子と共に共重合体を形成してなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項5】
前記官能基が、リンカーとしてのポリカルボン酸により与えられる、請求項1または2に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項6】
前記官能基が、リンカーとしてのポリアミンにより与えられる、請求項1または2に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項7】
前記官能基を備えたリガンド分子をさらに含んでなり、該リガンド分子により、該酸化チタン粒子の表面に前記水溶性高分子が結合されてなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項8】
前記リガンド分子が、プロトカテク酸、没食子酸、メチルドーパ、4−アミノサリチル酸、およびキナ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項7に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項9】
−20〜+20mVのゼータ電位を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項10】
20〜200nmの粒子径を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項11】
超音波の照射を受け、該照射により細胞毒となる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子と、該粒子が分散される溶媒とを含んでなる、分散液。
【請求項13】
前記溶媒が、水系溶媒である、請求項12に記載の分散液。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子の製造方法であって、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる、方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子の製造方法であって、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子と、ノニオン性の水溶性高分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる、方法。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子の製造方法であって、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリカルボン酸とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリカルボン酸が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる、方法
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子の製造方法であって、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリアミンとを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリアミンが結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる、方法。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子の製造方法であって、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記リガンド分子が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液にノニオン性の水溶性高分子を添加して、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる、方法。
【請求項19】
前記非プロトン系溶媒が、ジメチルホルムアミド,ジオキサン、およびジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項14〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
酸化チタン粒子と、
該酸化チタン粒子の表面に、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を介して結合されてなる、ノニオン性の水溶性高分子と
を含んでなる、酸化チタン複合体粒子。
【請求項2】
前記水溶性高分子が、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、およびデキストランからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項3】
前記官能基が、カルボン酸またはアミンにより与えられ、該カルボン酸またはアミンが、前記水溶性高分子の少なくとも末端に修飾されてなる、請求項1または2に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項4】
前記官能基が、カルボン酸またはアミンにより与えられ、該カルボン酸またはアミンが、前記水溶性高分子と共に共重合体を形成してなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項5】
前記官能基が、リンカーとしてのポリカルボン酸により与えられる、請求項1または2に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項6】
前記官能基が、リンカーとしてのポリアミンにより与えられる、請求項1または2に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項7】
前記官能基を備えたリガンド分子をさらに含んでなり、該リガンド分子により、該酸化チタン粒子の表面に前記水溶性高分子が結合されてなる、請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項8】
前記リガンド分子が、プロトカテク酸、没食子酸、メチルドーパ、4−アミノサリチル酸、およびキナ酸からなる群から選択される少なくとも一種である、請求項7に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項9】
−20〜+20mVのゼータ電位を有する、請求項1〜8のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項10】
20〜200nmの粒子径を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項11】
超音波の照射を受け、該照射により細胞毒となる、請求項1〜10のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子と、該粒子が分散される溶媒とを含んでなる、分散液。
【請求項13】
前記溶媒が、水系溶媒である、請求項12に記載の分散液。
【請求項14】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子の製造方法であって、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、カルボキシル基、アミノ基、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる、方法。
【請求項15】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子の製造方法であって、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子と、ノニオン性の水溶性高分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる、方法。
【請求項16】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子の製造方法であって、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリカルボン酸とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリカルボン酸が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる、方法
【請求項17】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子の製造方法であって、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ポリアミンとを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記ポリアミンが結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液に前記官能基で修飾されたノニオン性の水溶性高分子を添加して、pH8〜10の水溶液中で反応させて、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる、方法。
【請求項18】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の酸化チタン複合体粒子の製造方法であって、
非プロトン系溶媒中に、酸化チタン粒子と、ジオール基、サリチル酸基、およびリン酸基から選択される少なくとも1種の官能基を備えたリガンド分子とを分散させ、
得られた分散液を80〜220℃で加熱して、前記リガンド分子が結合された酸化チタン粒子の分散液を得、
該分散液にノニオン性の水溶性高分子を添加して、前記酸化チタン複合体粒子を得ること
を含んでなる、方法。
【請求項19】
前記非プロトン系溶媒が、ジメチルホルムアミド,ジオキサン、およびジメチルスルホキシドからなる群から選択される少なくとも1種である、請求項14〜18のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図6】
【公開番号】特開2008−162995(P2008−162995A)
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−75285(P2007−75285)
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】
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