説明

酸化バナジウムリチウム粉末の製造方法および粉末の使用

方法は酸化バナジウムリチウム粉末の製造に関する。酸化バナジウムリチウム粉末に関する用途はリチウムイオン電池用の負極またはアノード物質としての使用を包含する。前駆体物質の液相反応およびバナジウム酸化状態における還元は酸化バナジウムリチウム粉末の製造を促進する。導電性を与えるために、酸化バナジウムリチウム粉末製造粒子は炭素をさらに含有しうる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対するクロス−リファレンス
なし
【0002】
連邦支援研究または開発に関する言及
なし
【0003】
発明の分野
本発明の態様は酸化バナジウムリチウム物質に関する。
【背景技術】
【0004】
発明の背景
電池に関する条件は電池の意図する用途に依存する。例えば、電気自動車で使用される電池は消費者の要望に合わせるのに充分な長い寿命サイクル、低価格、高い重量密度および高い容量密度を必要とする。そのような電池の製造用に使用される物質が所望する条件に適合する能力を決める。
【0005】
これまでのアノード物質は例えばグラファイト粉末の如き炭素質粒子を包含する。しかしながら、グラファイト粉末の密度はグラファイト粉末を用いて生ずる電極の容量を制限する。さらに、放電中の有機電解質との望ましくない反応は火災または爆発を生じうる。
【0006】
他の提案された物質が代替しようとする炭素質物質より良好なエネルギーおよび動力密度並びに安全性を達成可能にする性質を示すこともある。しかしながら、これらの提案された物質を合成するための種々の方法は例えば固態反応または水素還元方法の如き技術に依存しており、それらが問題を生ずる。そのような方法では、前駆体を組み合わせそして最終生成物に関して所望する粒子寸法を得るための混合および粉砕段階がこれらの方法に伴う製造費用の一因となり、そして不完全な反応および不整合な粒子寸法を依然としてもたらしうる。さらに、最終生成物内の元素の特定の酸化状態に関する要望がこれらの方法において価格に基づき前駆体物質を選択する可能性を制限しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、例えば電池用のアノード物質としての使用に適する酸化バナジウムリチウム粉末の如き粒子の改良された製造方法に関する要望が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の要旨
1つの態様では、リチウムアノード電池粉末の製造方法は還元剤、五酸化バナジウム(V)、およびリチウム塩からのリチウムイオンを含む液体混合物の製造を包含する。この方法は混合物を酸化バナジウムリチウム粒子の沈殿のための還元剤による五酸化バナジウムの還元を可能にする条件にかけることによる酸化バナジウムリチウムの製造もさらに包含する。粒子はLi1+xVOとして定義される式を有し、xは0〜0.5の数である。
【0009】
1つの態様によると、リチウムアノード電池粉末の製造方法は還元剤、五酸化バナジウム、およびリチウム塩からのリチウムイオンを含む液体混合物の製造を包含する。さらに、この方法は混合物を酸化バナジウムリチウム粒子の沈殿のための還元剤が五酸化バナジ
ウムを還元させるのを可能にする条件に、アニオン性化合物を置換する酸素の不存在下で、かけることによる酸化バナジウムリチウムの製造も包含する。混合物の液体からの粒子の分離がリチウムアノード電池粉末を与える。
【0010】
1つの態様に関すると、リチウムアノード電池粉末の製造方法はn−メチル−ピロリジノン、五酸化バナジウム、並びに炭酸リチウムおよび水酸化リチウムの少なくとも1種からのリチウムイオンを含む液体混合物の製造を包含する。さらに、この方法はn−メチル−ピロリジノンがLi1+xVOの式を有する酸化バナジウムリチウム粒子の沈殿のためにバナジウム酸化状態を5+からより低い酸化状態に還元するように混合物を加熱することによる酸化バナジウムリチウムの製造も包含し、xは0〜0.5の数でありそして製造中に混合物内のリチウム対バナジウムのモル比は1.5〜1である。粒子は電池のアノード中に入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な記述
本発明は、それらのさらなる利点と一緒になって、以下の記述を添付図面と共に参照することにより最良に理解されうる。
【図1】図1は、1つの態様に従う、リチウムアノード電池粉末の製造方法を示す。
【図2】図2は、1つの態様に従う、炭素と粉末の粒子との混合を包含するリチウムアノード電池粉末の製造方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な記述
本発明の態様は酸化バナジウムリチウム粉末の製造方法に関する。酸化バナジウムリチウム粉末に関する用途はリチウムイオン電池用の負極またはアノード物質としての使用を包含する。前駆体物質の液相反応およびバナジウム酸化状態における還元が酸化バナジウムリチウム粉末の製造を促進する。導電性を与えるために、酸化バナジウムリチウム粉末製造粒子は炭素をさらに含有しうる。
【0013】
ここで使用される際には、以下の用語は当業界におけるそれらの一般的な意味を有しそして以下の定義を具体的に包含することが意図される。
【0014】
容量(mAh/g):ある種の規定された電極電位窓(potential window)内の単位重量当たりの指定された電極物質内に貯蔵されそしてそこから放出されうる電荷の量。
【0015】
クーロン効率(%):電極物質から放出された電荷の量対電極を放出前の状態に充電するために使用される電荷の量の比。
【0016】
「炭素−残渣−製造物質」(CRFM)は、不活性雰囲気中で600℃の炭化温度またはそれより高い温度に熱分解される時に、実質的に炭素である残渣を製造するいずれかの物質である。ここで使用される際には、「実質的に炭素」は物質が少なくとも95重量%の炭素であることを示す。
【0017】
「炭化」は炭素含有化合物を「実質的に炭素」であるとして同定される物質に転化させる工程である。
【0018】
リチウムアノード電池粉末の製造方法で使用される前駆体はバナジウム源およびリチウム源を包含する。生ずる酸化バナジウムリチウムの粒子により規定される生成物の合成は液相反応を介して起きる。さらにここで記述される還元剤は周囲条件下で液体状態である
ことができそしてリチウム源のための溶媒としても作用しうる。
【0019】
幾つかの態様では、前駆体はバナジウム源としての五酸化バナジウム(V)粉末およびリチウム源としてのリチウム塩、例えば炭酸リチウム(LiCO)または水酸化リチウム(LiOH)、を包含する。前駆体を組み合わせる前に、五酸化バナジウムをボールミル中で所望する粒子寸法、例えば30ミクロンより小さい、15ミクロンより小さい、8ミクロンより小さいまたは5ミクロンより小さい平均粒子寸法、に粉砕することができる。前駆体を還元剤が五酸化バナジウムをアニオン性化合物を置換する酸素の不存在下でそして混合物中に溶解したリチウム源からのリチウムイオンの存在下で還元させる条件にかけることが酸化バナジウムリチウムの沈殿を可能にする。
【0020】
これらの方法はある種のアニオンを組み込む生成物を作成するためのある種のアニオンを含有する異なる化合物の使用を必要としない。還元されている五酸化バナジウムはそのようにして、例えば燐酸塩イオンの如きアニオンとさらに反応せずに、リチウムイオンと組み合う。これらの方法はそれにより元素状バナジウムイオンを与える五酸化バナジウムの溶解なしにバナジウムの還元にだけよる。
【0021】
選択される溶媒は前駆体の少なくとも一部を溶解し、所望する反応温度において安定であり、そして生じた生成物を溶解しない。例示溶媒は水並びに極性有機化合物、例えばNMP(CNO、n−メチル−ピロリジノン、n−メチル−2−ピロリジノン、または1−メチル−2−ピロリドン)、炭酸エチレンおよび炭酸プロピレン、を包含する。適する溶媒の他の例はアルコール類、酸類、ニトリル類、アミン類、アミド類、キノリン、ピロリジノン類、およびそのような溶媒の組み合わせを包含する。溶媒が還元剤としても使用される場合には、溶媒はバナジウム源用の前駆体と反応性である。幾つかの態様に関しては、溶媒−還元剤はそれ故に液体有機化合物、例えばアルコール類、炭化水素類、および炭水化物類、を包含する。
【0022】
前駆体および還元剤を混合して液体混合物を生じた後に、混合物を撹拌しながら混合物を不活性雰囲気、例えば窒素、ヘリウム、アルゴン、一酸化炭素、および/または二酸化炭素気体、の中で加熱する。3500キロパスカルより低い圧力では、温度は50℃〜400℃の間または200℃〜300℃の間にあるように調節される。加熱は前駆体および還元剤を反応させそして所望する化学量論的組成を有しうる酸化バナジウムリチウムを製造させる。
【0023】
前駆体を混合しそして加熱するにつれて、還元剤はプラス5の酸化状態(V5+)からプラス3またはそれより低い酸化状態(V3+)への五酸化バナジウムの還元を引き起こす。五酸化バナジウムが溶けて溶解されたリチウム源との真の溶液を形成するものではないが、五酸化バナジウムが酸素原子を還元剤に放出しそして加熱中にリチウムイオンと一緒になる。酸化バナジウムリチウムの固体粒子は加熱およびその後の反応の結果として溶液から沈殿する。幾つかの態様では、生成した酸化バナジウムリチウムはLi1+xVOとして定義される式を有し、xは0〜0.5または約0.2の数である。酸化バナジウムリチウムの粒子の製造中に、混合物内のリチウム対バナジウムのモル比は1.5〜1であるように調節されうる。
【0024】
幾つかの態様では、前駆体はCRFMをさらに包含する。CRFMは固体粒子に導電性を与えそして固体粒子の製造中にまたは酸化バナジウムリチウムの製造に引き続き、例えば酸化バナジウムリチウムの沈殿後のいずれかの時機にコーティング工程に適用される時に、固体粒子との混合のために加えることもできる。炭素含有酸化バナジウムリチウムはCRFMに混ぜる酸化バナジウムリチウムに関してここで記述される粒子をさす。
【0025】
限定するものではないが、CRFMの例は石油ピッチおよび化学工程ピッチ、コールタールピッチ、パルプ工業からのリグニン、並びにフェノール系樹脂またはそれらの組み合わせを包含する。CRFMは有機化合物の組み合わせ、例えばアクリロニトリルおよびポリアクリロニトリル類、アクリル系化合物、ビニル化合物、セルロース化合物、並びに炭水化物物質、例えば糖類、を含んでなりうる。幾つかの態様に関しては、CRFMはNMPの反応生成物を包含する。混合物の加熱で、還元剤が酸化されそして加熱時に混合物中に比較的可溶性でなくなりそして非揮発性になる時にCRFMがこのようにしても製造され、その結果として固体粒子上および/または中に沈殿する。
【0026】
溶媒の存在は固体粒子が成長しそして塊状化するのを防止する。従って、混合物中の固体粒子の濃度調節が所望する粒子寸法を達成しそして固体粒子の塊状化を調節または制限する。幾つかの態様に関しては、混合物中の合計固体含有量は5〜70重量%の間でありうる。理論的な生産量が固体含有量における増加につれて上昇しうると仮定するなら、固体含有量は溶液−懸濁液の10〜70重量%の間、または20重量%より上でありうる。
【0027】
混合物の液体からの固体粒子の分離がばらばらの乾燥粉末を与える。固体−液体分離用のいずれかの従来方法、例えば遠心分離または濾過、を使用して酸化バナジウムリチウムを混合物の液体から分離することができる。前駆体品質および不純物の量によっては、液体を蒸発させることにより分離を行いうる。幾つかの態様では、溶媒を提供する液体を水および副生物を除く工程に従い新しい前駆体との組み合わせのために元に再循環させることができる。
【0028】
固体−液体分離は酸化バナジウムリチウムと共に存在する汚染物、不純物または所望しない物質を阻止するかまたはその量を少なくとも制限する。特に、望ましくない物質は酸化バナジウムリチウムの固体粒子から分離される液体の中に溶解して残存する。固態反応では、汚染物、不純物または前駆体の中に含有されているかもしくは反応の副生物として製造されるものを包含する望ましくない物質は多分さらに最終生成物の中に運ばれるようである。
【0029】
炭素含有酸化バナジウムリチウムは固体−液体分離後に所望する結晶化度を有していないことがある。熱処理は炭素−含有酸化バナジウムリチウム粉末の温度を不活性雰囲気中で300℃より上に高める。幾つかの態様に関すると、熱処理の温度は900℃より上、1000℃より上、または950℃〜1250℃の間、である。そのような加熱は所望する結晶構造を製造する条件を提供しそして存在するならCRFMを炭化する。さらに、式Li1+xVOにおいてxが0〜0.5に達することは加熱後に起きることがあり、それは炭素の存在と一緒になって酸化バナジウムリチウムの還元を可能にしうる。xが0または0.5より少ないかもしくは多い時には、酸化バナジウムリチウムの加熱で結晶構造が製造しないことがある。
【0030】
粒子中へのグラファイトまたはカーボンブラックの導入は粉末を電池中で作動可能にするのに充分な導電性を生ずるための1つの方式を与える。幾つかの態様に関しては、米国特許第7,323,120号明細書に記述されている炭素コーティングを粉末に適用して導電性を与えうる。本質的には、この追加のコーティング工程は選択的沈殿方法を用いて粉末をCRFMの溶液中に懸濁させながら粉末状にコーティングを適用することを含んでなる。CRFMコーティングを有する酸化バナジウムリチウムを次に(例えば、500℃〜1000℃の間、600℃〜900℃の間、700℃〜900℃の間に)加熱してCRFMを炭素に転化させそして炭素コーティングを酸化バナジウムリチウムの粒子にしっかり結合させる。コーティングは炭素含有酸化バナジウムリチウム上および/または中の炭素の量を0.5重量%より上で且つ約10重量%まで、0.5重量%〜約5重量%の間、または1重量%〜3重量%の間、にする。コーティングなしでも、ここに記述されている
技術は0.5重量%〜10重量%の間、0.5重量%〜5重量%の間、および1重量%〜3重量%の間、の炭素含有量を達成しうる。
【0031】
図1は、1つの態様に関する、リチウムアノード電池粉末のここに記述されている製造方法を示す工程順序図を示す。混合段階100で製造される液体混合物は還元剤、例えばNMP、リチウム塩からのリチウムイオン、および五酸化バナジウム、を含む。五酸化バナジウム還元用の条件に混合物をかけることが、バナジウム還元段階102において混合物内で還元剤がバナジウム酸化状態を5+から3+またはそれより下に還元させる。還元されている五酸化バナジウムをリチウムイオンの組み合わせることから製造される酸化バナジウムリチウム粒子の沈殿を可能にする条件に混合物をかけることにより、沈殿段階104が酸化バナジウムリチウムを製造する。収集段階106において、混合物内の液体からの固体の分離が粒子を単離させる。処理段階108において、粒子の加熱が粒子の結晶化を行う。さらに、電池組み立て段階110は電池のアノード中への粒子の導入を包含する。
【0032】
図2は粉末の粒子と混ぜた炭素を含むリチウムアノード電池粉末の製造方法を表わす工程順序図を示す。混合段階200で製造される液体混合物は還元剤、リチウムイオン、および五酸化バナジウムを含む。バナジウム還元段階202において、混合物にかけられる条件が、混合物内で還元剤がバナジウム酸化状態を5+から3+またはそれより下に還元させる。混合物を酸化バナジウムリチウム粒子の沈殿を可能にする条件にかけられる間に、沈殿段階204がそれにより酸化バナジウムリチウムを製造する。
【0033】
炭素組み合わせ段階206では、種々の方式が炭素と粒子の混合を可能にする。幾つかの態様では、炭素組み合わせ段階206は、例えば粉末がバナジウム用の前駆体として使用されるVで製造される時のように、他の方法により製造される酸化バナジウムリチウム粉末のための炭素コーティング適用を包含しうる。さらに、電池組み立て段階208は電池のアノード中への粒子の混合を包含する。炭素組み合わせ段階206の時機は炭素と粒子を混合するために使用される方式に依存しておりそしてそれにより電池組み立て段階208より前のいずれかの時機に行うことができる。
【0034】
例えば、CRFMが混合段階200において混合物に加えられる場合には炭素組み合わせ段階206を沈殿段階204と共に行うことができる。さらに、CRFMを沈殿段階204後に以下のように加えることもできる。即ち、ピッチの溶液を、例えば混合物に加えて、ピッチが沈殿しピッチが形成後の粒子をコーティングするのを可能にする条件下に混合物を置くことによる。幾つかの態様では、粒子を混合物から分離した後であるが粒子を結晶化させおよび/またはCRFMを炭化するための粒子の加熱前に粒子で製造される懸濁液を使用することによりCRFMのそのような沈殿が起きる。幾つかの態様に関すると、粒子はCRFMの沈殿に関してここに記述される技術によりコーティングされる前に結晶化のためにすでに熱処理されている。
【0035】
さらに、CRFMはここに記述されているような5価バナジウムとのNMP酸化−還元反応により炭素組み合わせ段階206において貢献しうる。NMPの酸化は水および沈殿段階204後に溶液中に残存する炭素生成物質を製造しそして酸化バナジウムリチウム粒子が混合物中の液体から蒸発により分離される場合には蒸発しない。炭素生成化合物の残存層を酸化バナジウムリチウム粒子と共に保持するように分離が蒸発により行われるため、これらの炭素生成物質はこのようにして酸化バナジウムリチウムをコーティングする。幾つかの態様では、蒸発前の濾過により混合物から分離される液体の量の調整が粒子上のコーティングのレベルを調節する。
【0036】
実施例
【実施例1】
【0037】
31.3グラムのV粉末(99.2%、アルファ・ケミカル(Alfa Chemical))、18.1グラムの水和された水酸化リチウム(LiOH.HO、98%)および90グラムのn−メチル−ピロリジノン(NMP)で混合物を製造した。混合物をプラスチック瓶の中で約10分間にわたり振った。引き続き、混合物をステンレス鋼圧力容器の中に移しそして混合物を連続的に撹拌しながら250℃に3時間にわたり加熱した。次に、混合物中の液体が完全に蒸発するまで容器に窒素気体を連続的に流した。熱を除きそして容器を室温に冷却した。生じた乾燥粉末は34.6グラムの重量であった。
【0038】
粉末を炉の中に移し、そして引き続き1150℃に3時間にわたり窒素気体雰囲気下で加熱した。炉を次に室温に冷却した。粉末を炉から回収した。粉末の合計重量は30.6グラムであった。粉末を次に電気化学的性質に関してリチウムイオン電池中の活性アノード物質として、ここでさらに記述されているようにして、評価した。
【実施例2】
【0039】
炭素コーティングに関する能力を評価するために、実施例1で製造された14.7グラムの粉末を約5%のピッチでコーティングした。詳細には、粉末を最初に100mlのキシレンの中に分散させて140℃に加熱された分散液を製造した。並行して、8グラムの石油ピッチを等量のキシレンの中に溶解させて90℃に加熱されたピッチ溶液を製造した。ピッチ溶液を分散液の中に注ぎそして140℃に10分間にわたり連続的に加熱した。熱を除いた。溶液を室温に冷却した。生じた固体粒子を濾過により分離した。分離で、粒子は15.52グラムの重量の粉末を与え、5.3%のピッチコーティングレベルを生じた。
【0040】
粉末を炉の中に移しそして窒素気体の中で以下の順序で加熱した:1℃/分で250℃へ、4時間保持、1℃/分で300℃へ、8時間保持、5℃/分で1100℃へ、1時間保持、そして次に5℃/分で室温へ。生じた粉末は15.2グラムの重量であった。粉末を次に炭素含有量に関して分析した。2グラムの粉末を50mlの15重量%酸性水溶液(7重量%のHCl、5重量%のHNO、および3%のHSO)の中に60℃において溶解させることにより混合物を製造した。酸不溶性残存固体を濾過により分離し、脱イオン水で充分洗浄し、そして100℃において真空下で2時間以上にわたり乾燥した。この固体は主として元素状炭素を含有していたため、空気中で850℃において燃焼することにより固体の灰内容物が得られた。実施例2で製造された粉末はそれにより5.0%の炭素を含有していると測定された。
【0041】
電気化学的評価−実施例1および2で製造された粉末をリチウムイオン電池用のアノード物質として評価した。粉末を電極に加工しそして次にコイン電池の中で試験した。
【0042】
電極製造−粉末(実施例1または実施例2で製造された)をグラファイト粉末、アセチレンカーボンブラック粉末、およびポリ弗化ビニリデン(PVDF)溶液(溶媒としてN−メチルピロリジノン)と混合してスラリーを製造した。スラリーを10ミクロン厚さの銅箔の上に流した。生じたスラリーコーティングフィルムをホットプレート上で乾燥した。製造されたフィルムは2%のカーボンブラック、46.5%のグラファイト、5%のPVDF、および46.5%の酸化バナジウムリチウムの個別粉末を含有していた。フィルムの厚さまたは質量負荷を約6mg/cmに調節した。
【0043】
電気化学的試験−直径が1.41cmのディスクを記述された通りにして製造されたフィルムからくり抜きそして負極としてリチウム金属を有する標準的コイン電池(サイズCR2025)の中で正極として使用した。コイン電池中で使用されるセパレーターはガラ
スマット(Watman(登録商標)ガラスマイクロファイバー、GF/B)であり、そして電解質は溶媒の混合物(40%の炭酸エチレン、30%の炭酸メチル、および30%の炭酸ジエチル)中の1M LiPFであった。試験工程は以下の通りであった。電池を0.5mA(〜50mA/g)の一定電流下で電池電圧が0.0ボルトに達するまで充電し、そして0.0ボルトにおいて1時間にわたりまたは電流が0.03mAより下がるまでさらに充電した。電池を次に0.5mAの一定電流において電池電圧が2.0ボルトに達するまで放電した。充電/放電サイクルを繰り返してサイクリング中の物質安定性を測定した。粉末の容量は放電中に通過した電荷に基づく計算により示されるが、クーロン効率は放電能力対充電時能力の比に基づき計算された。全ての試験は電気化学的試験台(Arbin Model BT−2043)を用いて行われた。全ての実験は室温(〜22℃)において行われた。
【0044】
充電中の電圧増加をもたらすカソード物質とは対照的に、実施例1の粉末を有する電池に関する電池電圧は充電で減少した。充電/放電サイクルはそれによりアノード物質としての粉末に関する適合性を示した。さらに、酸化バナジウムリチウムの粉末はこのように燐酸バナジウムリチウムのようなカソード物質とは異なる電気化学的性質を与えた。
【0045】
実施例1の粉末で製造された電極の比容量は第一サイクルで約250mAh/gであったが、第十サイクルにより約300mAh/gに増加した。比容量は酸化バナジウムリチウムおよびグラファイト粉末の両者の合計重量に基づき計算された。グラファイト粉末の比容量が305mAh/gであるなら、実施例1の酸化バナジウムリチウムに起因する比容量の一部は合計重量の46%を占めるグラファイト粉末に基づき測定された。実施例1の酸化バナジウムリチウムの比容量は従って第一サイクルでは204mAh/gでありそして第十サイクルでは296mAh/gであると計算された。実施例1の粉末に関する比容量はあたかもグラファイト粉末単独使用とほぼ同じであり、実施例1の粉末で製造された電極の密度は2.2g/ccであると測定され、酸化バナジウムリチウムなしのグラファイト電極に関する約1.4g/ccと比較される。それ故、実施例1の粉末で製造された電極の容量的な比容量はグラファイト電極のものより57%ほど高い。
【0046】
実施例2の粉末で製造された電極の全体的な比容量は10回のサイクル後に340mAh/gであった。実施例2の粉末の計算比容量は370mAh/gであった。それ故、炭素コーティングを有する実施例2の粉末は炭素コーティングなしの実施例1の粉末と比べてより良好な比容量性能を与えた。
【0047】
前記に鑑み、ここに記述されているようにして合成された酸化バナジウムリチウム粉末はLi−イオン電池用のアノード物質として使用される時に望ましい電気化学的性質をもたらす。酸化バナジウムリチウム粉末の製造の簡単さが粉末の経済的な製造を可能にする。さらに、安価なバナジウム前駆体の使用が粉末の製造をさらに経済的にする。
【0048】
本発明の好ましい態様が開示されそして説明されてきた。しかしながら、本発明は以下の特許請求の範囲で規定されている広さであることが意図される。当業者は好ましい態様を研究しそしてここに厳密に記述されていない発明を実施するための他の方法を同定しうる。発明の変更および同等物が以下の特許請求の範囲内にあることは発明者の意図でありそして記述、要旨および図面は発明の範囲を限定するために使用されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
還元剤、五酸化バナジウム(V)、およびリチウム塩からのリチウムイオンを含んでなる液体混合物を製造し、そして
混合物を酸化バナジウムリチウム粒子の沈殿のための還元剤による五酸化バナジウムの還元を可能にする条件にかけることにより酸化バナジウムリチウムを製造する
段階を含んでなる方法であって、粒子がLi1+xVOとして定義される式を有し、xが0〜0.5の数である方法。
【請求項2】
粒子の製造が粒子の製造中に混合物内のリチウム対バナジウムのモル比1.5〜1を有する混合物を加熱することを包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
リチウム塩が炭酸リチウム(LiCO)および水酸化リチウム(LiOH)の少なくとも1種を含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
還元剤がn−メチル−ピロリジノンである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
リチウム塩が炭酸リチウム(LiCO)および水酸化リチウム(LiOH)の少なくとも1種を含んでなりそして還元剤がn−メチル−ピロリジノンである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
粒子を1000℃より上の温度に加熱することによる粒子の結晶化をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
xが0.2である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
還元剤が有機化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
混合物が炭素残渣製造物質をさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
粒子を炭素残渣製造物質でコーティングし、そして
コーティングされた粒子を不活性環境中で加熱する
ことをさらに含んでなり、加熱が炭素残渣製造物質を炭化するのに充分な温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
n−メチル−ピロリジノンでありそして混合物からの液体の蒸発後に粒子上に残存する還元剤を酸化して粒子の1〜10重量パーセントであるコーティングを製造し、そして
コーティングを不活性環境中で粒子上のコーティングを炭化するのに充分な温度に加熱する
ことをさらに含んでなる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
還元剤、五酸化バナジウム(V)、およびリチウム塩からのリチウムイオンを含んでなる液体混合物を製造し、
混合物を酸化バナジウムリチウム粒子の沈殿のための還元剤が五酸化バナジウムを還元させるのを可能にする条件に、アニオン性化合物を置換する酸素の不存在下で、かけることにより酸化バナジウムリチウムを製造し、そして
粒子を混合物の液体から分離する
段階を含んでなる方法。
【請求項13】
粒子がLi1+xVOとして定義される式を有し、xが0〜0.5の数である、請求
項12に記載の方法。
【請求項14】
製造中の混合物内のリチウム対バナジウムのモル比が1.5〜1である、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
酸化バナジウムリチウムの製造が混合物を不活性雰囲気中で加熱することにより行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
液体からの粒子の分離が液体を粒子から蒸発させることにより行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
液体からの粒子の分離が機械的な液体抽出によりそして次に蒸発により行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
n−メチル−ピロリジノン、五酸化バナジウム(V)、並びに炭酸リチウム(LiCO)および水酸化リチウム(LiOH)の少なくとも1種からのリチウムイオンを含んでなる液体混合物を製造し、
n−メチル−ピロリジノンが酸化バナジウムリチウム粒子の沈殿のためにバナジウム酸化状態を5+からより低い酸化状態に還元するように混合物を加熱することにより酸化バナジウムリチウムを製造し、ここで加熱中の混合物内のリチウム対バナジウムのモル比が1.5〜1でありそして粒子がLi1+xVOとして定義される式を有し、xが0〜0.5の数であり、そして
粒子を電池のアノード中に入れる
段階を含んでなる方法。
【請求項19】
混合物が石油ピッチおよび化学工程ピッチ、コールタールピッチ、パルプ工業からのリグニン、並びにフェノール系樹脂の少なくとも1種をさらに含んでなる、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
混合物から除去された粒子を加熱して粒子の一部でありそして石油ピッチおよび化学工程ピッチ、コールタールピッチ、パルプ工業からのリグニン、並びにフェノール系樹脂の少なくとも1種を含んでなる物質を炭化することをさらに含んでなる、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−528069(P2012−528069A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513159(P2012−513159)
【出願日】平成22年5月24日(2010.5.24)
【国際出願番号】PCT/US2010/035969
【国際公開番号】WO2010/138458
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(502259425)コノコフイリツプス・カンパニー (11)
【氏名又は名称原語表記】ConocoPhillips Company
【Fターム(参考)】