説明

酸化亜鉛及びその製造方法並びにそれを用いた化粧料

【課題】形状、大きさの整った、二つの略半球体の底面の少なくとも一部が互いに接合した構造を有する酸化亜鉛、特に、ハンバーガーに類似した構造を有する酸化亜鉛を製造する。
【解決手段】亜鉛化合物とアミン化合物とを混合し水溶液のpHを7以上として沈殿物を析出させ、次いで、該水溶液を40℃以上に加熱する方法において、亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、0.1以上の範囲の量のカルボン酸及び/又はその塩を亜鉛化合物に混合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛及びその製造方法並びにそれを用いた化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛は、白色顔料、紫外線遮蔽材、充填剤、吸着剤、光触媒、触媒、セラミックス原料、導電材、圧電材料、ガスセンサー、電子写真感光材料、バリスタ、蛍光体、エミッタ、電子デバイス等種々の用途に用いられており、また、化粧料、外用剤、塗料、樹脂組成物等に配合して用いられている。
酸化亜鉛を製造するには、例えば、亜鉛塩を含む溶液をアルカリ中和剤で中和することにより、液中で直接酸化亜鉛を製造する方法が知られている(特許文献1参照)。また、特許文献2には、前記の酸化亜鉛を直接製造するに際し、レイノルズ数30以上の撹拌を行いながら、1秒〜15分間で亜鉛の塩を含む水溶液と沈殿剤とを混合し、pH11以上の母液から沈殿を生成させて、平均粒子径0.1〜0.88μm、平均粒子厚さ0.01〜0.2μm、平均板状比3以上の薄片状酸化亜鉛粉末を製造する方法が提案されており、沈殿生成に際し、クエン酸、エタノールアミン等の水溶性有機物を共存させることも開示している。更に、特許文献3には、亜鉛塩水溶液にアルカリを加え水酸化亜鉛[Zn(OH)]の沈殿を得た後、水酸化亜鉛の沈殿が全部溶解するまでアルカリを更に加えて、透明で均一なテトラヒドロキシ亜鉛酸イオン[Zn(OH)2−]を生成し、次いで、30℃以上100℃未満で加熱することによって0.01μmから10μmの大きさを有する酸化亜鉛粒子や膜を製造する方法を開示している。
【0003】
【特許文献1】特開昭53−116296号公報
【特許文献2】特許第2683389号公報
【特許文献3】特開2004−149367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来技術は、亜鉛塩を含む溶液を水酸化ナトリウム、アンモニア等のアルカリ中和剤で中和して酸化亜鉛を直接析出させることにより、薄片状、針状の粒子形状を有する酸化亜鉛を製造することができるが、特許文献1の酸化亜鉛は、粒子径、形状のばらつきが大きく結晶性が低いなどの問題がある。特許文献2の薄片状酸化亜鉛は、かさ密度が高く充填性が低いなどの問題がある。また、特許文献3の針状酸化亜鉛は、凝集粒子になりやすく、また、かさ密度が高く充填性が低いなどの問題がある。
そのため、酸化亜鉛はそれぞれの用途に応じて、形状、大きさ、結晶性等の制御が求められている。例えば、充填剤、セラミックス原料等に用いる場合は、薄片状や針状の粒子ではかさ密度が高いことから、かさ密度が低く、充填性の良い酸化亜鉛が求められている。また、光触媒、触媒、セラミックス原料、導電材、圧電材料等に用いる場合は、充填性に加えて結晶性、配向性の良い酸化亜鉛が求められている。また、化粧料、外用剤、塗料、樹脂組成物等に配合して用いる場合は、分散性の良い酸化亜鉛が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、酸化亜鉛の粒子形状、粒子径等を制御する方法を探索した結果、亜鉛化合物と特定量のカルボン酸及び/又はその塩とを混合した水溶液にアミン化合物を添加し水溶液のpHを7以上として沈殿物を析出させ、次いで、該水溶液を40℃以上に加熱すると、二つの略半球体の底面の少なくとも一部が互いに接合した構造を有する酸化亜鉛、特に、ハンバーガーに類似した構造に制御できることなどを見出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は、
(1)二つの略半球体の底面の少なくとも一部が互いに接合した構造を有する酸化亜鉛、特に、ハンバーガーに類似した構造を有する酸化亜鉛、
(2)亜鉛化合物と、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、0.1以上の範囲の量のカルボン酸及び/又はその塩とを混合した水溶液にアミン化合物を添加し水溶液のpHを7以上として沈殿物を析出させ、次いで、該水溶液を40℃以上に加熱することを特徴とする酸化亜鉛の製造方法、
(3)前記の酸化亜鉛を含有する化粧料、などである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の酸化亜鉛は、二つの略半球体の底面部の少なくとも一部が互いに接合した構造を有する酸化亜鉛、特に、ハンバーガーに類似した構造を有する酸化亜鉛であり、薄片状、針状の形状に比べて充填性が良く、化粧料、外用剤、塗料、樹脂組成物等に充填剤、白色顔料等として配合する際に、あるいはセラミックス原料、導電材等に使用する際に、高い充填性、配向性を確保することができるため、酸化亜鉛の特性を充分活用することができる。また、特定の大きさを有することから化粧料に配合すると、分散性が良く肌へのすべり感が良くなる。
また、本発明の酸化亜鉛の製造方法は、水溶液から酸化亜鉛を析出させることができることから、生産性良く製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の酸化亜鉛は、六方晶、立方晶、立方晶面心構造いずれかのX線回折パターンを示すZnOを少なくとも50重量%含むものであり、水酸化亜鉛や製造の際に使用する硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等の亜鉛化合物が含まれていても良い。また、製造の際に使用する亜鉛化合物を構成していた硫酸根、硝酸根、塩素、酢酸等が含まれていても良く、また、カルボン酸、その塩、アミン化合物等の材料が含まれていても良い。更に、酸化亜鉛の粒子表面にはシリカ、アルミナ等の無機化合物やシロキサン等の有機化合物の表面処理剤を被覆していても良い。
【0009】
酸化亜鉛は、二つの略半球体の底面の少なくとも一部が互いに接合した構造を有し、外見上一個の粒子とみなされる集合体である。特に、ハンバーガーに類似した構造を有する。略半球体は、半球体のほかに、半球体の半径に対する高さの比が0.1〜1.0程度のものを含み、高さの比は0.2〜0.9程度が好ましく、0.2〜0.8程度がより好ましい。略半球体は略半球面と底面から構成され、略半球面は曲面であっても良く、凹凸であっても良い。また、略半球面は微細な薄片状酸化亜鉛が配向性良く縦方向に並んで、略半球面を形成しても良い。略半球体の底面は、円形、略円形の形状を有し、平面であっても良く、凹凸であっても良い。略半球体の二つの底面が接合部分を介して、それぞれの底面の少なくとも一部が互いに接合しても良い。接合部分はどのような形であっても良く、例えば六角板状等の多角板状、円形板状等であっても良い。接合部分を介して二つの略半球の底面の中心部が接合すると、底面の端部が接合せずに隙間空間を有する構造となる。略半球面の底面端部は凹凸や波形があっても良く、丸みを帯びていても、隙間空間を有していても良い。
【0010】
略半球体の底面の平均直径(略半球の底面における最も長い長さをいう)は0.5〜5.0μmが好ましく、1.0〜4.0μmがより好ましい。また、平均高さ(二つの略半球面の頂点間の長さをいう)は0.5〜5.0μmが好ましく、より好ましくは1.0〜4.0μmである。
酸化亜鉛の構造形状やそれを構成する酸化亜鉛の粒子形状は電子顕微鏡で観察することができる。酸化亜鉛の平均直径、平均高さは、少なくとも20個の粒子の直径、厚みを電子顕微鏡写真から計測して、下記式によって算出した長さ平均径を基準とする。
平均直径=ΣnLn/ΣnLn
平均厚み=ΣnDn/ΣnDn
上記式中、nは計測した個々の粒子の番号を表し、Lnは第n番目の粒子の略半球の底面の直径、Dnは第n番目の粒子の厚みをそれぞれ表す。
【0011】
二つの略半球体の底面の中心部が接合し、底面の端部が接合せずに隙間空間を有する構造を特にハンバーガーに類似した構造(ハンバーガー状)といい、好ましい構造体である。このような構造体は、酸化亜鉛の二次元球晶における分岐成長が起こったような構造を有し、酸化亜鉛核晶の端から「はたき状」あるいは「ふさ状」に分岐成長して球晶を形成したような構造である。このため、二つの略半球体は中心部分やその周辺では接合されているが、二つの略半球体の底面端部には酸化亜鉛核晶の成長阻害から、隙間空間を有する。隙間空間の深さは、成長を適宜調整することにより、略半球体の底面の半径に対して、例えば0.001〜0.8程度に調整することができ、好ましくは0.01〜0.5程度に調整することができる。
また、成長が充分でない場合は、略半球体上部の成長が停止し、くぼみを有する場合がある。このくぼみの直径は分岐成長を適宜調整することにより、略半球体の底面の直径に対して、例えば0.001〜0.5程度に調整することができ、好ましくは0.01〜0.3程度に調整することができる。
【0012】
本発明の酸化亜鉛は、微細な薄片状酸化亜鉛結晶が多数配向して集合した構造を有する場合があり、好ましい構造である。特にハンバーガー状はこの構造をとり易い。この場合は、全体的には球状集合粒子であるにも係わらず、それぞれの酸化亜鉛結晶の(100)面への配向度合いが強く、下記式により算出する配向性指数が30以上であり、好ましくは35以上である。一方、酸化亜鉛結晶がランダムに集合した場合では、配向性指数が25程度である。
配向性指数=31.88°/(31.88°+34.56°+36.36°)×100
(式中の各数値は、X線回折における2θ角の強度を表わす。)
【0013】
本発明の酸化亜鉛の製造方法は、亜鉛化合物と、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、0.1以上の範囲の量のカルボン酸及び/又はその塩とを混合した水溶液にアミン化合物を添加し水溶液のpHを7以上として沈殿物を析出させ、次いで、該水溶液を40℃以上に加熱することを特徴とする。亜鉛化合物は、水溶性のものであればどのようなものでも用いることができ、例えば硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、酢酸亜鉛等を用いることができる。二つの略半球体の底面部の少なくとも一部が互いに接合した構造を有する酸化亜鉛、特に、ハンバーガーに類似した構造を有する酸化亜鉛が得られ易いことから硫酸亜鉛が好ましい。また、金属亜鉛、酸化亜鉛、水酸化亜鉛等、中性の水に溶解しないものでも、酸、アルカリに溶解する化合物であれば、上記の亜鉛化合物と同様に用いることができる。
【0014】
前記のカルボン酸はカルボキシル基を有する化合物であり、制限なく用いることができるが、例えば、次のようなものを用いることができ、特にクエン酸及び/又はその塩を用いるとハンバーガー状形状の酸化亜鉛を製造することができるため好ましい。
(1)ポリカルボン酸、特にジカルボン酸、トリカルボン酸、例えば、シュウ酸、フマル酸。
(2)ヒドロキシポリカルボン酸、特にヒドロキシジ−又はヒドロキシトリ−カルボン酸、例えばリンゴ酸、クエン酸又はタルトロン酸。
(3)(ポリヒドロキシ)モノカルボン酸、例えばグルコヘプトン酸又はグルコン酸。
(4)ポリ(ヒドロキシカルボン酸)、例えば酒石酸。
(5)ジカルボキシルアミノ酸及びその対応するアミド、例えばアスパラギン酸、アスパラギン又はグルタミン酸。
(6)ヒドロキシル化され又はヒドロキシル化されていないモノカルボキシルアミノ酸、例えばリジン、セリン又はトレオニン。
カルボン酸塩としては、どのような塩でも制限なく用いることができるが、例えばナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩等を用いることができる。カルボン酸及びその塩の量は、亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、0.1以上の範囲の量が好ましく、0.1〜10の範囲がより好ましく、0.1〜1.0の範囲が更に好ましい。カルボン酸の量を0.1より少なくすると、二つの略半球体の底面部の少なくとも一部が互いに接合した構造を有する酸化亜鉛、特に、ハンバーガーに類似した構造を有する酸化亜鉛が得られにくいため好ましくない。
【0015】
前記のアミン化合物はアンモニア中の水素原子を炭化水素基で置換した化合物であって、その炭化水素基を水酸基、カルボキシル基、フェニル基、チオール基等で置換した誘導体を含む。具体的には第1アミン、第2アミン、第3アミンやそれらの誘導体であって、水溶性でありアルカリ性を呈するものが好ましく、第1アミン、第2アミン、それらの誘導体がより好ましい。例えば、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、エチレンジアミン等のアルキルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等のアルカノールアミンが好ましく、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンがより好ましい。アミン化合物の添加量は、後述の亜鉛化合物水溶液のpHの設定に応じて適宜調整することができるが、亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、2以上の範囲が好ましく、2.01〜7程度の範囲の量がより好ましい。アミン化合物の量を7より多くすると、沈殿物がアミン化合物により錯体となって再溶解し易くなり、収量が少なくなり易いため好ましくない。
【0016】
前記の亜鉛化合物とカルボン酸及び/又はその塩を溶解した水溶液を40℃以下に保持した後、撹拌下アミン化合物を添加して水溶液のpHは7以上となるようにして、沈殿物を析出させる。生成する沈殿物は亜鉛の水酸化物を主成分としたものである。亜鉛化合物溶液の温度が40℃よりも高いと、アミン化合物添加により部分的に酸化亜鉛が析出し不均一な状態となり易いため好ましくなく、好ましい温度は10〜40℃、より好ましい温度は10〜30℃である。撹拌は通常の混合撹拌の手段を用いることができ、例えば撹拌羽根を付けた撹拌機等で行うことができる。その撹拌機の運転条件は適宜設定することができる。例えば、回転数は20〜2000rpm程度で行うことができ、また、下記のレイノルズ係数で表して10以上程度が好ましく、10〜50000程度がより好ましい。
レイノルズ係数=(翼径)×撹拌速度×溶液密度/溶液粘度
アミン化合物の添加時間は適宜設定できるが、例えば1秒〜1時間程度が好ましく、1秒〜30分程度がより好ましい。アミン化合物の添加によりpHを7以上に調整するが、7よりも低いと所望の酸化亜鉛が得られない。好ましいpHは8〜13程度、より好ましくは9〜12程度、更に好ましくは9〜11程度である。所定のpHに調整して沈殿物を析出させた後、必要に応じて10分〜5時間程度そのpHを保持しても良い。その後、撹拌しながら、前記の水溶液を40℃以上、好ましくは60〜250℃程度、より好ましくは80〜110℃程度に加温して、沈殿物を酸化亜鉛に変化させる。所定の温度に加温した後、必要に応じて10分〜5時間程度その温度を保持しても良い。
【0017】
亜鉛化合物とカルボン酸及び/又はその塩とアミン化合物との混合水溶液には更に、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、塩化カリウム、硫酸カリウム、硝酸カリウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウム等の塩類を混合しても良く、アルカリ化合物と混合する前の亜鉛化合物水溶液に塩類を添加するのが好ましい。塩類の添加量は、亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、0.0001以上の範囲が好ましく、0.001〜10程度がより好ましい。
【0018】
このようにして得られた酸化亜鉛は、必要に応じて濾過・洗浄して固液分離し、乾燥、乾式粉砕を行うと、酸化亜鉛粉末が得られる。固液分離には、フィルタープレス、ロールプレス等の通常工業的に用いられる濾過器を用いることができる。乾燥にはバンド式ヒーター、バッチ式ヒーター、噴霧乾燥機等が、乾式粉砕にはハンマーミル、ピンミル等の衝撃粉砕機、ローラーミル、パルペライザー、解砕機等の摩砕粉砕機、ロールクラッシャー、ジョークラッシャー等の圧縮粉砕機、ジェットミル等の気流粉砕機等を用いることができる。乾燥温度は適宜設定することができるが、80〜200℃程度が適当である。また、必要に応じて前記の酸化亜鉛粉末を200〜800℃程度の温度で焼成しても良く、結晶性を更に高めることができるため好ましい。焼成は通常、空気、酸素、窒素等の雰囲気下で行うことができ、焼成時間は10分〜10時間程度が適当である。
【0019】
本発明の酸化亜鉛は、その粒子表面に必要に応じてケイ素、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、スズ等の酸化物あるいはそれらのリン酸塩等の無機化合物の被覆層を設けることもできる。また、溶媒、塗料やプラスチックス等への分散性を付与するなどの目的で、有機化合物を被覆しても良く、前記の無機化合物と有機化合物の両者を被覆しても良い。有機化合物としては、例えば、(1)有機ケイ素化合物((a)オルガノポリシロキサン類(ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン等又はそれらの共重合体)、(b)オルガノシラン類(アミノシラン、エポキシシラン、メタクリルシラン、ビニルシラン、メルカプトシラン、クロロアルキルシラン、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン等又はそれらの加水分解生成物)、(c)オルガノシラザン類(ヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等)、(2)有機金属化合物((a)有機チタニウム化合物(アミノアルコキシチタニウム、リン酸エステルチタニウム、カルボン酸エステルチタニウム、スルホン酸エステルチタニウム、チタニウムキレート、亜リン酸エステルチタニウム錯体等)、(b)有機アルミニウム化合物(アルミニウムキレート等)、(c)有機ジルコニウム化合物(カルボン酸エステルジルコニウム、ジルコニウムキレート等)等)、(3)ポリオール類(トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ペンタエリスリトール等)、(4)アルカノールアミン類(モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジプロパノールアミン、トリプロパノールアミン等)又はその誘導体(酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等)、(5)高級脂肪酸類(ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等)又はその金属塩(アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等)、(6)高級炭化水素類(パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等)又はその誘導体(パーフルオロ化物等)が挙げられる。これらの有機化合物は1種を用いても、2種以上を積層又は混合して用いても良い。化粧料に用いる場合は、オルガノポリシロキサン類、高級脂肪酸類を用いるのが好ましい。無機化合物、有機化合物の被覆量は、酸化亜鉛に対し、0.1〜50重量%の範囲が好ましく、0.1〜30重量%の範囲が更に好ましい。酸化亜鉛の粒子表面に前記の無機化合物や有機化合物を被覆させるには、酸化亜鉛の水性スラリー中で、無機化合物あるいは有機化合物を添加し中和するなどして被覆することができる。また、有機化合物を被覆するには別の方法として、前述の乾式粉砕の際に有機化合物を添加し混合することもできる。
【0020】
本発明の酸化亜鉛は、日焼け止め化粧料、基礎化粧料等の化粧料に適量配合して用いられる。例えば、前記の酸化亜鉛以外に、通常化粧料の用いられる公知の成分、例えば、(1)溶媒(水、低級アルコール類等)、(2)油剤(高級脂肪酸類、高級アルコール類、オルガノポリシロキサン類(シリコーンオイル)、炭化水素類、油脂類等)、(3)界面活性剤(アニオン性、カチオン性、両性、非イオン性等)、(4)保湿剤(グリセリン類、グリコール等のポリオール系、ピロリドンカルボン酸類等の非ポリオール系等)(5)有機紫外線吸収剤(ベンゾフェノン誘導体、パラアミノ安息香酸誘導体、サリチル酸誘導体等)、(6)酸化防止剤(フェノール系、有機酸又はその塩、酸アミド系、リン酸系等)、(7)増粘剤、(8)香料、(9)着色剤(顔料、色素、染料等)、(10)生理活性成分(ビタミン類、ホルモン類、アミノ酸類等)、(11)抗菌剤等が配合されていても良い。化粧料の様態は、固形状、液状、ジェル状等特に制限なく、液状やジェル状の場合、その分散形態も油中水型エマルジョン、水中油型エマルジョン、油型等のいずれでも良い。化粧料中の酸化亜鉛の配合量は、0.1〜50重量%の範囲が好ましい。
【実施例】
【0021】
以下に本発明の実施例を示すが、本発明はこれらに制限されるものではない。
【0022】
実施例1
硫酸亜鉛0.3モルとクエン酸0.1モルを150ccの純水に溶解した。次に2Lの四つ口フラスコに純水500ccを入れ、その中に前記の硫酸亜鉛水溶液を添加し、翼径12cmの2枚羽根の撹拌機を用いて回転数200rpmで撹拌下、室温で1.2モルのモノエタノールアミンを含む350ccの水溶液を添加し、水溶液のpHを9.7に調整し、30分間保持して沈殿物を析出させた。その後、100℃に昇温し1時間熟成した後、冷却し、濾過・水洗・乾燥して、本発明の酸化亜鉛粉末(試料A)を得た。
この試料Aは、X線回折の結果、結晶性の良い酸化亜鉛であることを確認した。また、電子顕微鏡写真(図1〜図3)から、ハンバーガー形状を有し、その柱の平均直径が2.2μmであり、平均厚みが2.1μmであった。また、配向性指数は39であった。
【0023】
実施例2
実施例1において使用したクエン酸に代えて、クエン酸ナトリウムを使用し、モノエタノールアミンの添加量を0.9モルにしてpHを10.0に調整したこと以外は、実施例1と同様にして、本発明の酸化亜鉛粉末(試料B)を得た。
この試料Bは、X線回折の結果、結晶性の良い酸化亜鉛であることを確認した。また、電子顕微鏡写真(図4)から、ハンバーガー形状を有し、その柱の平均直径が2.6μmであり、平均厚みが1.9μmであった。また、配向性指数は35であった。
【0024】
比較例1
実施例1においてクエン酸を用いず、かつモノエタノールアミンに代えて水酸化ナトリウム0.7モルを用いてpHを13.0に調整すること以外は実施例1と同様にして、酸化亜鉛粉末(試料C)を得た。
この試料Cは、電子顕微鏡写真(図5、図6)から形状及び粒径のばらつきが大きい薄片状の酸化亜鉛であった。また、配向性指数は26であった。
【0025】
実施例1の試料A、実施例2の試料B、比較例1の試料CのX線回折強度(図7〜9)を比較すると、実施例1、2の試料は比較例1の試料と同程度であり、本発明の酸化亜鉛は結晶性の良い酸化亜鉛であった。
実施例2の試料Bと比較例1の試料Cをそれぞれハンマーミルで粉砕し、かさ密度を測定したところ、試料Bのかさ密度は1ml/gであったが、試料Cは7ml/gであり、本発明の酸化亜鉛粉末はかさ密度が低く、充填性が良いことがわかった。
また、実施例1の試料A、比較例1の試料Cをそれぞれ直接肌にのせてこすった際の感触を評価したところ、実施例1の試料Aののびは比較例1の試料Cに比べ良好であり、化粧料に配合すると分散性が良く肌へのすべり感が良くなることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明の酸化亜鉛は、二つの略半球体の底面の少なくとも一部が互いに接合した構造を有する酸化亜鉛、特に、ハンバーガーに類似した構造を有する酸化亜鉛であり、高い充填性、結晶性を有するため、種々の用途に利用することができる。また、二つの略半球が重なった端部に空間を有するため、このような構造を用いたマイクロマシンへの適用可能性があり、更なる用途展開が期待される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】実施例1で得られた酸化亜鉛(試料A)の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例1で得られた酸化亜鉛(試料A)の電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例1で得られた酸化亜鉛(試料A)の電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例2で得られた酸化亜鉛(試料B)の電子顕微鏡写真である。
【図5】比較例1で得られた酸化亜鉛(試料C)の電子顕微鏡写真である。
【図6】比較例1で得られた酸化亜鉛(試料C)の電子顕微鏡写真である。
【図7】実施例1で得られた酸化亜鉛(試料A)のX線回折チャートである。
【図8】実施例2で得られた酸化亜鉛(試料B)のX線回折チャートである。
【図9】比較例1で得られた酸化亜鉛(試料C)のX線回折チャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの略半球体の底面の少なくとも一部が互いに接合した構造を有する酸化亜鉛。
【請求項2】
二つの略半球体の底面の中心部が接合し、底面の端部が接合せずに空間を有する請求項1に記載の酸化亜鉛。
【請求項3】
略半球の上部にくぼみを有する請求項1に記載の酸化亜鉛。
【請求項4】
ハンバーガーに類似した構造を有する請求項1に記載の酸化亜鉛。
【請求項5】
平均直径が0.5〜5.0μmである請求項1に記載の酸化亜鉛。
【請求項6】
下記式により求められる配向性指数が30以上である請求項1又は4に記載の酸化亜鉛。
配向性指数=31.88°/(31.88°+34.56°+36.36°)×100
(式中の各数値は、X線回折における2θ角の強度を表わす。)
【請求項7】
亜鉛化合物と、その亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、0.1以上の範囲の量のカルボン酸及び/又はその塩とを混合した水溶液にアミン化合物を添加し水溶液のpHを7以上として沈殿物を析出させ、次いで、該水溶液を40℃以上に加熱することを特徴とする酸化亜鉛の製造方法。
【請求項8】
アミン化合物の量が、亜鉛化合物の亜鉛原子に対するモル比で表して、2.01〜7の範囲であることを特徴とする請求項7に記載の酸化亜鉛の製造方法。
【請求項9】
前記のカルボン酸及び/又はその塩がクエン酸及び/又はその塩であることを特徴とする請求項7に記載の酸化亜鉛の製造方法。
【請求項10】
前記の亜鉛化合物が硫酸亜鉛であることを特徴とする請求項7に記載の酸化亜鉛の製造方法。
【請求項11】
請求項7に記載の製造方法で得られた酸化亜鉛を200〜800℃の温度で焼成することを特徴とする酸化亜鉛の製造方法。
【請求項12】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の酸化亜鉛を含有する化粧料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−254994(P2008−254994A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102228(P2007−102228)
【出願日】平成19年4月9日(2007.4.9)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】