説明

酸化還元電位水溶液を用いた副鼻腔炎の予防または治療方法

治療有効量の少なくとも約24時間安定な酸化還元電位(ORP)水溶液を投与することによって副鼻腔炎を予防または治療するための方法を提供する。本発明に従って投与されるORP水溶液は、1種以上の好適な担体と組み合わせることができる。ORP水溶液は、単独でまたは例えば1種以上の更なる治療剤と組み合わせて投与することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、2006年1月20日に出願された米国仮特許出願第60/760,635号;2006年1月20日に出願された同第60/760,567号;2006年1月20日に出願された同第60/760,645号;および2006年1月20日に出願された同第60/760,557号の利益を主張しており;これら全ては参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
副鼻腔(cranial sinuses)は、頬、眉および顎の骨内にある空気室である。これらの空気室には、眉領域の前頭洞、各頬骨の内側の上顎洞、鼻柱のちょうど後ろおよび目の間の篩骨洞、および鼻の上側領域中の篩骨の後ろおよび目の後ろに位置する蝶形骨洞が含まれる。副鼻腔は、呼吸器型上皮によって裏打ちされており、呼吸器型上皮は、粘液腺および微小血管に富んだ、下部を裏打ちする上皮下層を有している。
【0003】
副鼻腔炎は、副鼻腔の上皮が炎症を起こす状態である。副鼻腔炎は、急性または慢性であり得る。ウイルスは、よく急性副鼻腔炎の原因となり、深刻な炎症を引き起こす。この炎症は、粘液産生を増大させ、鼻道を詰まらせる。副鼻腔の粘膜が膨潤するとき、空気および粘液は狭まった副鼻腔口の奥に閉じ込められる。この詰まりは、その人を細菌性副鼻腔炎にかかりやすくさせる。アレルギー性鼻炎(花粉症)などの鼻道の慢性的な炎症もまた、その人に急性副鼻腔炎の症状を発症しやすくさせる。例えば、湿気、冷気、アルコール、香水および他の環境条件によって引き起こされ得る血管運動神経性鼻炎もまた、その人を副鼻腔感染症にかかりやすくさせ得る。
【0004】
たいていの健康な人々は、ストレプトコッカス・ニューモニエ(Streptococcus pneumoniae)およびヘモフィルス・インフルエンザ(Haemophilus influenzae)などの細菌を上気道組織に寄生させている。狭まった副鼻腔口の奥に閉じ込められた粘液により、常在細菌が増殖および副鼻腔の上皮に侵入できるようになり、急性細菌感染症を引き起こす。同様に、真菌性感染症も急性副鼻腔炎を引き起こし得る。真菌は環境中に大量にいるが、それらは普通、健康な人々には無害である。しかしながら、アスペルギルス(Aspergillus)などの真菌は、免疫系がアスペルギルスに過敏な人々においては深刻な病気を引き起こし得る。
【0005】
慢性副鼻腔炎の病因はしばしば不明である。慢性副鼻腔炎は、しばしば喘息患者において生じる炎症性疾患である。埃、カビおよび花粉などの、アレルギー性鼻炎を引き起こす空中を浮遊するアレルゲンが慢性副鼻腔炎を助長または引き起こすこともあるが、慢性副鼻腔炎は感染性の病原によって引き起こされ得る。真菌中の抗原に対する免疫応答もまた、慢性副鼻腔炎の少なくとも一部の症例の原因となり得る。
【0006】
副鼻腔炎は、通常、充血除去剤、抗ヒスタミン剤、非ステロイド系抗炎症剤、ステロイド類、抗生物質、および抗ウイルス剤などの薬剤で治療される。これらの薬剤は各々、副作用および他の欠点を持つ。例えば、非ステロイド系抗炎症剤は、胃腸(gastronintestinal)および心臓血管の(cardiovasular)有害な副作用を生じ得る。加えて、抗生物質などの抗感染症剤の使用は、アレルギー反応を引き起こすことがあり、また、抗生物質耐性細菌を発生させ得る環境も引き起こし得る。ステロイド類は全身性の副作用を有し、使用を中止しないよう徐々に減らしていかなければならず、また、その免疫抑制効果のために、免疫抑制の結果として感染症が生じてしまうのを避けるよう注意深く使用しなければならない。薬物治療がうまくいかないとき、外科手術が副鼻腔炎を治療するための唯一の代替手段であるが、外科手術は、深刻な病的状態、苦痛をもたらすことがあり、また、回復を長引かせることがある。従って、副鼻腔炎の治療または予防のための、新規で安全かつ有効な方法が必要である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、そのような方法を提供する。本発明のこれらおよび他の長所は、発明の更なる特徴とともに、本明細書に与える本発明の説明から明らかとなるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、患者における副鼻腔炎を治療または予防する方法を提供し、この方法は、該患者に治療有効量の酸化還元電位(ORP)水溶液を投与することを含み、ここで該溶液は少なくとも約24時間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、少なくとも約24時間安定であり、好ましくは少なくとも約2ヶ月間安定であり、より好ましくは少なくとも約6ヶ月間安定であり、最も好ましくは少なくとも約1年間(例えば、1年またはそれより長く)安定である。
【0009】
本発明によれば、ORP水溶液は、例えば、上部呼吸気道および/または副鼻腔の1つ以上の組織をORP水溶液と接触させるようにして、上部呼吸気道(例えば、上気道)および/または患者の1つ以上の副鼻腔に投与され得る。副鼻腔としては、例えば、前頭洞、上顎洞、篩骨洞および蝶形骨洞を挙げることができる。一つの実施形態において、ORP水溶液は、例えば、篩骨洞の1つ以上の組織をORP水溶液と接触させるようにして、患者の1つ以上の篩骨洞に投与される。
【0010】
本発明によれば、ORP水溶液は、例えば鼻腔内、経口またはその両方を含む、任意の好適な経路で投与され得る。更に、ORP水溶液は、例えば、液体、スプレー、ミストまたはエアロゾルなどの好適な形態で投与され得、また、例えば、エアロゾル化、ネブライゼーションおよびアトマイゼーションといった、任意の好適な方法で送達され得る。一つの実施形態において、ORP水溶液は、約0.1ミクロンから約100ミクロン、好ましくは1ミクロンから約10ミクロンの範囲内の直径を有する液滴の形態で投与される。
【0011】
本発明の方法は、急性副鼻腔炎および慢性副鼻腔炎の治療または予防に有効であり得、例えば、1つ以上の副鼻腔または上部呼吸気道中の1つ以上の組織を侵すアレルギー反応、喘息、または炎症に起因する副鼻腔炎の治療または予防に有効であり得る。本発明の方法は、例えば1種以上の微生物による感染に起因する副鼻腔炎の治療または予防にも有効であり得、ここで前記1種以上の微生物には、ウイルス、細菌および真菌が含まれ得るが、それらは、好ましくはORP水溶液に感受性である。感受性ウイルスとしては、例えば、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、ライノウイルスおよびインフルエンザウイルスを挙げることができる。感受性細菌としては、例えば、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ヘモフィルス・インフルエンザ、スタフィロコッカス(staphylococci)、非肺炎球菌性ストレプトコッカス、コリネバクテリアおよび嫌気性菌を挙げることができる。感受性真菌としては、例えば、接合菌、アスペルギルスおよびカンジダを挙げることができる。
【0012】
本発明によれば、ORP水溶液は、単独で、または(例えば、希釈された)1種以上の好適な担体との組み合わせで、投与され得る。例えば、ORP水溶液は、最大約25%(重量/重量または体積/体積)の1種以上の好適な担体、最大約50%(重量/重量または体積/体積)の1種以上の好適な担体、最大約75%(重量/重量または体積/体積)の1種以上の好適な担体、最大約90%(重量/重量または体積/体積)の1種以上の好適な担体、最大約95%(重量/重量または体積/体積)またはそれを上回る1種以上の好適な担体と組み合わせることができる。好適な担体としては、例えば、水(例えば、蒸留水、無菌水(例、注射用の無菌水、無菌食塩水など))を挙げることができる。好適な担体としては、米国特許出願第10/916,278号(参照により本明細書中に組み込まれる)に記載された1種以上の担体も挙げることができる。
【0013】
本発明によれば、ORP水溶液は、単独で、または少なくとも1つの更なる治療剤(即ち、本発明に従って投与されるORP水溶液以外の1種以上の治療剤)と組み合わせて(または併用して)投与され得る。例えば、ORP水溶液は、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、抗感染症剤(例えば、抗生物質、抗ウイルス剤または抗菌剤)、抗炎症剤およびそれらの組み合わせからなる群より選択された1種以上の治療剤との組み合わせまたは併用で投与され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
発明の詳細な説明
本発明は、患者における副鼻腔炎(例えば、鼻副鼻腔炎、急性副鼻腔炎および慢性副鼻腔炎など)を予防または治療する方法を提供し、この方法は、該患者に治療有効量の酸化還元電位(ORP)水溶液(超酸化水(SOW)としても知られる)を投与することを含み、ここで該溶液は少なくとも約24時間安定である。本発明によれば、ORP水溶液は、例えば、上部呼吸気道または副鼻腔の1つ以上の組織をORP水溶液と接触させるようにして、上部呼吸気道(例えば、上気道)および/または患者の1つ以上の副鼻腔に投与され得る。副鼻腔には、例えば、前頭洞、上顎洞、篩骨洞および蝶形骨洞が含まれ得る。一つの実施形態において、ORP水溶液は、例えば、篩骨洞に存在する1つ以上の組織をORP水溶液と接触させるようにして、患者の1つ以上の篩骨洞に投与される。
【0015】
本発明によれば、ORP水溶液は、急性副鼻腔炎および慢性副鼻腔炎を含む副鼻腔炎を治療または予防(例えば、発症の阻害、進行の阻害、可能性の減少)するために有効な量で投与され得る。本発明に従って治療または予防可能な副鼻腔炎としては、例えば、有害刺激との接触、損傷、感染、炎症、自己免疫反応、過敏症、喘息およびアレルギー反応(細胞のヒスタミン放出と関連するアレルギー反応を含む)に起因する副鼻腔炎を挙げることができる。
【0016】
慢性副鼻腔炎とは、通常、少なくとも3週間継続する副鼻腔の炎症を意味するが、炎症は数ヶ月間または数年間までも継続することがある(しばしばそうなる)。アレルギーは、高い頻度で慢性副鼻腔炎に関係する。加えて、喘息患者は特に高い頻度で慢性副鼻腔炎を有する。埃、カビおよび花粉などの空中を浮遊するアレルゲン(アレルギー反応を誘発する物質)の吸入により、アレルギー反応(例えば、アレルギー性鼻炎)がしばしば引き起こされ、続いてアレルギー反応が副鼻腔炎(特に鼻副鼻腔炎または鼻炎)を助長する可能性がある。真菌類にアレルギーのある人々は、「アレルギー性真菌性副鼻腔炎」と呼ばれる状態を発現し得る。湿っぽい天候または空気中および建物内の汚染物質もまた、慢性副鼻腔炎に罹患しやすい人々に影響を及ぼし得る。
【0017】
急性副鼻腔炎同様、慢性副鼻腔炎は、免疫不全または粘液の分泌もしくは移動の異常(例えば、免疫不全症、HIV感染症、嚢胞性繊維症、カルタゲナー症候群)を伴う患者においてより一般的である。加えて、一部の患者は、重篤な喘息、鼻ポリープ、ならびにアスピリンおよびアスピリン様医薬(いわゆる非ステロイド系抗炎症薬、即ちNSAID)に対する重篤な喘息反応を有する。これら後者の患者は、高い頻度で慢性副鼻腔炎を有する。
【0018】
医者は、病歴、身体検査、X線および必要によりMRIまたはCTスキャン(磁気共鳴映像法およびコンピュータ断層撮影法)により副鼻腔炎を診断することができる。副鼻腔炎の診断および考えられる原因の同定後、医者は、炎症を低減しかつ症状を緩和するであろう治療コースを処方できる。急性副鼻腔炎の治療は、通常、鼻道の排液路の再構築、炎症原因の制御または排除、および痛みの緩和を必要とする。一般的に、医者は、うっ血を低減するための充血除去剤、細菌感染を制御するための抗生物質、およびもし痛みがあれば痛みを低減するための痛み止めを推奨する。薬剤での治療がうまくいかない場合、外科手術(例えば、アデノイドの除去、鼻ポリープの除去、鼻中隔彎曲の矯正、および副鼻腔の内視鏡手術など)が、慢性副鼻腔炎を治療するための唯一の代替手段である可能性がある。本発明に従って投与されるORP水溶液は、抗生物質および外科手術などのより侵襲的な療法を回避できる可能性のある代替手段として慢性副鼻腔炎の治療に用いることができると考えられる。
【0019】
驚くべきことに、本発明に従って投与されるORP水溶液は、炎症を引き起こす主要な生物学的カスケードの一つである、肥満細胞の脱顆粒に対する非常に有効な阻害剤であることが分かっている。本発明に従って投与されるORP水溶液は、抗原で活性化されていようが、カルシウムイオノフォアで活性化されていようが関係なく、肥満細胞の脱顆粒を阻害する。これもまた驚くべきことに、本発明に従って投与されるORP水溶液は、肥満細胞における炎症促進性サイトカインの分泌を非選択的に阻害する。例えば、本発明のORP水溶液は、肥満細胞における例えばTNF−αおよびMIP 1−αの分泌を阻害できる。本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、他のサイトカイン分泌細胞における炎症促進性サイトカインの分泌も阻害できると考えられる。これらの知見は、本発明に従って投与されるORP水溶液は、広範な抗炎症効果を示すはずであることを示している。
【0020】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、最大約30分間、より好ましくは最大約15分間、なおより好ましくは最大約5分間、ORP水溶液と接触させたとき、好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約50%を上回って、より好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約80%を上回って、なおより好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約90%を上回って、更により好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約95%を上回って、肥満細胞の脱顆粒を阻害する。本発明の方法によれば、ORP水溶液を単独でまたは希釈剤(例えば、水または食塩溶液)と組み合わせて投与することによって、ヒスタミン分泌(例えば、脱顆粒由来)を治療的に阻害することができる。例としては、例えば、最大約50%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、最大約25%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、最大約10%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、最大約5%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、または更には最大約1%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、ORP水溶液が希釈されている組成物を投与することにより、ヒスタミン分泌を治療的に阻害することができる。
【0021】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、好ましくは約50%を上回って、より好ましくは約60%を上回って、なおより好ましくは約70%を上回って、更により好ましくは約85%を上回って、TNF−αの分泌を阻害する。加えて、本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、好ましくは25%を上回って、より好ましくは約50%を上回って、なおより好ましくは約60%を上回って、MIP1−αの分泌を阻害する。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、好ましくは25%を上回って、より好ましくは約50%を上回って、なおより好ましくは約60%を上回って、IL−6および/またはIL−13の分泌を阻害する。本発明の方法によれば、ORP水溶液を単独でまたは希釈剤(例えば、水または食塩溶液)と組み合わせて投与することによって、サイトカイン分泌を治療的に阻害することができる。例としては、例えば、最大約50%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤で、最大約25%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤で、最大約10%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤で、最大約5%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤で、または更には最大約1%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤で、ORP水溶液が希釈されている組成物を投与することにより、サイトカイン分泌を治療的に阻害することができる。
【0022】
本発明に従って治療または予防可能な副鼻腔炎としては、感染に起因する副鼻腔炎も挙げることができる。一つの実施形態において、本発明は、副鼻腔炎の治療または予防方法を提供し、ここで前記副鼻腔炎は、例えば、ウイルス、細菌および真菌からなる群から選択される1以上の微生物によって引き起こされる感染に起因する。従って、本発明は、ウイルス性副鼻腔炎の治療または予防方法を提供し、ここで前記副鼻腔炎は1種以上のウイルスによる感染と関連し、前記ウイルスは、好ましくは、患者に投与されるORP水溶液に感受性である。感受性ウイルスとしては、例えば、HIV、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、ライノウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルスおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上のウイルスを挙げることができる。
【0023】
本発明はまた、細菌性副鼻腔炎の治療または予防方法を提供し、ここで前記副鼻腔炎は1種以上の細菌による感染と関連し、前記細菌は、好ましくは、患者に投与されるORP水溶液に感受性である。感受性細菌としては、例えば、スタフィロコッカス、ストレプトコッカス、コリネバクテリア、嫌気性菌、および特にストレプトコッカス・ニューモニエおよびヘモフィルス・インフルエンザからなる群から選択される1種以上の細菌を挙げることができる。本発明は更に、真菌性副鼻腔炎の治療または予防方法を提供し、ここで前記副鼻腔炎は1種以上の真菌による感染と関連し、前記真菌は、好ましくは、患者に投与されるORP水溶液に感受性である。感受性真菌としては、例えば、接合菌、アスペルギルス症(aspergillosis)およびカンジダからなる群から選択される1種以上の真菌を挙げることができる。
【0024】
本発明はまた、バイオフィルム中の細菌(例えば、バイオフィルム中のシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa))を殺菌するための方法も提供する。本発明は更に、モラクセラ・カタラーリス(Moraexlla catarrhalis)および抗生物質(antibotic)耐性細菌(例えば、ペニシリン耐性ストレプトコッカス)を殺菌するための方法を提供する。本明細書中に開示する方法は、ORP水溶液を用いて細菌を殺すために本発明に従って用いることができ、バシトラシンを用いるよりも早い。
【0025】
本発明は更に、治療有効量の少なくとも1つの更なる治療剤(即ち、本発明に従って投与されるORP水溶液以外の1つ以上の治療剤)とともに(例えば、ORP水溶液と共投与することによって、ORP水溶液と併用投与することによって、またはORP水溶液と組み合わせることによって)、ORP水溶液を投与することを含み得る。更なる治療剤としては、例えば、抗ヒスタミン剤、充血除去剤、抗感染症剤(例えば、抗菌剤(例、抗生物質)、抗ウイルス剤および抗真菌剤)、抗炎症剤およびそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の薬剤を挙げることができる。
【0026】
好適な抗ヒスタミン剤としては、例えば、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニラミン、ロラタジン、クレマスチン、フェキソフェナジン、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。好適な充血除去剤としては、例えば、フェニレフリン、偽エフェドリン、他のα−およびβ−アドレナリン作動性アゴニスト、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。好適な抗菌剤としては、例えば、ペニシリン類、セファロスポリン類または他のβ−ラクタム類、マクロライド類(例えば、エリスロマイシン、6−0−メチルエリスロマイシンおよびアジスロマイシン)、フルオロキノロン類、スルホンアミド類、テトラサイクリン類、アミノグリコシド類、クリンダマイシン、キノロン類、メトロニダゾール、バンコマイシン、クロラムフェニコール、それらの抗菌的に有効な誘導体、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。好適な抗真菌剤としては、例えば、アンホテリシンB、フルコナゾール、フルシトシン、ケトコナゾール、ミコナゾール、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。好適な抗ウイルス剤としては、例えば、アシクロビル、アマンタジン、ジダノシン、ファムシクロビル、フォートベイス、ガンシコルビル、バラシクロビル、ザナミビル、インターフェロン類、それらの誘導体、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。好適な抗炎症剤としては、例えば、1種以上の抗炎症薬(例えば、1種以上の抗炎症性ステロイド類または1種以上の非ステロイド系抗炎症薬(NSAID))を挙げることができる。例示的な抗炎症薬としては、ロイコトリエン受容体アンタゴニスト、シクロフィリン類、FK結合タンパク質、ステロイド類およびNSAIDを挙げることができる。
【0027】
本発明によれば、ORP水溶液は、例えば、スプレー、エアロゾル化、ネブライゼーションおよびアトマイゼーションなどの任意の好適な方法によって、例えば、液体、スプレー、ミスト、エアロゾルまたはスチームとして、局所的に投与され得る。一つの実施形態において、ORP水溶液は、スプレー、ミストまたはエアロゾルとして、上部呼吸気道および/または1つ以上の副鼻腔に投与される。ORP水溶液がエアロゾル化、ネブライゼーションまたはアトマイゼーションによって投与される場合。一つの実施形態において、本発明の方法は、上部呼吸気道中の1つ以上の粘膜組織または1つ以上の副鼻腔をORO水溶液と接触させるようにして、約1ミクロンから約10ミクロンの範囲内の直径を有する液滴の形態でORP水溶液を投与することを含む。
【0028】
本発明によれば、ORP水溶液は、ORP水溶液を単独で送達することによって、またはORP水溶液を1種以上の好適な担体(例えば、希釈剤)と組み合わせる(例えば、混合する)ことによって投与され得る。例えば、ORP水溶液は、器具(例えば、ネブライザーまたは混合物をスプレーとして投与可能な器具)のチャンバー中で1種以上の好適な担体と混合することができ、その結果生じる混合物は、例えば上部呼吸気道および/または1つ以上の副鼻腔に直接(例えば、鼻腔内(intranasallay)、経口またはその両方)、器具のチャンバーから送達することができる。あるいは、ORP水溶液は、マルチチャンバー器具(例えば、デュアルチャンバー器具)を用いて、1種以上の好適な担体(例えば、希釈剤)と混合することができ、前記マルチチャンバー中でORP水溶液および担体は、別々のチャンバー内に存在し、患者への送達時(例えば、その直前または同時)にORP水溶液および担体は組み合わされるよう、チャンバーから出るときにそれらは組み合わされかつ/または混合される。
【0029】
エアロゾル化、ネブライゼーションおよびアトマイゼーションに有用な方法ならびに器具は当分野で周知である。例えば、医療用ネブライザーが、定投与量の生理学的に活性な液体を、レシピエントによる吸入のために吸気気流へ送達するために使用されてきた。例えば、米国特許第6,598,602号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。医療用ネブライザーは、吸気気体と共にエアロゾルを形成する液滴を生み出すように機能し得る。他の状況において、医療用ネブライザーは、水滴を吸気気流に注入するために使用されて、好適な水分含有量の気体をレシピエントに提供し得るが、これは、吸気気流がレスピレータ、ベンチレータまたは麻酔送達システムなどの機械的呼吸補助器によって提供される場合に特に有用である。
【0030】
例示的なネブライザーは、例えば、WO95/01137に記載されており、これは、医療用液体の液滴を、マウスピースを通じたレシピエントの吸入によって生み出される通過気流(吸気気流)中に排出するように機能する携帯用器具を記載している。別の例は、米国特許第5,388,571号(参照により本明細書に組み込まれる)に見ることができ、これは、呼吸不全の患者に呼吸の制御および増強を提供し、液剤粒子を患者の気道および肺胞に送達するための、ネブライザーを含む陽圧ベンチレータシステムを記載している。米国特許第5,312,281号(参照により本明細書に組み込まれる)は、超音波ネブライザーを記載しており、これは、水または液体を低温で霧化し、ミストのサイズを調整することができると報告されている。更に、米国特許第5,287,847号(参照により本明細書に組み込まれる)は、医薬のエアロゾルを新生児、小児および成人に送達するための、測量可能な流速および排出体積を有する気体ネブライジング装置を記載している。更には、米国特許第5,063,922号(参照により本明細書に組み込まれる)は超音波アトマイザーを記載している。ORP水溶液はまた、肺および/または気道内の感染症の治療のためあるいは体のそのような部分における創傷の治癒のために、吸気システムの一部としてエアロゾル形態で投与されてもよい。
【0031】
より大規模な用途のために、これらに限定されないが、加湿器、噴霧器(mister)、噴霧器(fogger)、バポライザー、アトマイザー、ウォータースプレーおよび他のスプレー器具を含む好適な器具を使用してORP水溶液を空気中に分散してもよい。そのような器具は、継続的なORP水溶液の投与を可能にする。ノズル中で空気と水とを直接混合する排出装置を採用してもよい。ORP水溶液は、低圧蒸気などの蒸気に転換されて気流中に放出され得る。超音波加湿器、蒸気加湿器(stream humidifier)またはバポライザー、および気化式加湿器などの様々な種類の加湿器を用いてもよい。ORP水溶液を分散させるために使用される特定の器具は、換気システムに組み込まれて、家または保健医療施設(例えば、病院、養護施設など)の全体にわたるORP水溶液の広範な適用を提供し得る。ORP水溶液はまた、チャンバーまたはテント中で患者に投与することもでき、あるいはマスクを通してまたは内視鏡的に投与することもできる。
【0032】
本明細書において示すように、本発明によれば、ORP水溶液は、単独でまたは1種以上の医薬上許容される担体と組み合わせて投与することができ、前記医薬上許容される担体としては、例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、希釈剤およびそれらの組み合わせなどを挙げることができる。そのような担体は、ORP水溶液中に存在する1種以上の化学種(chemical species)と相溶性があることが好ましい。当業者は、本発明に従って投与されるORP水溶液を投与するための適切な調剤および方法を容易に決定できる。投与量における任意の必要な調整が、例えば副作用および患者の全身状態の変化などの1つ以上の臨床上関係する要素の観点から技術を持つ施術者によって容易になされて、治療されている状態の性質および/または重篤度に対処することができる。
【0033】
例えば、ORP水溶液は、最大約25%(重量/重量または体積/体積)の好適な担体と、最大約50%(重量/重量または体積/体積)の好適な担体と、最大約75%(重量/重量または体積/体積)の好適な担体と、最大約90%(重量/重量または体積/体積)の好適な担体と、最大約95%(重量/重量または体積/体積)の好適な担体と、または更には最大約99%(重量/重量または体積/体積)もしくはそれを上回る好適な担体と、ORP水溶液を組み合わせることまたは希釈することによって調合され得る。好適な担体としては、例えば、水(例えば、蒸留水、無菌水(例えば注射用の無菌水、無菌食塩水など))を挙げることができる。好適な担体としてはまた、米国特許出願第10/916,278号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載された1種以上の担体も挙げることができる。例示的な調剤としては、ORP水溶液が無菌水、無菌食塩水またはそれらの組み合わせで希釈されている溶液を挙げることができる。例えば、ORP水溶液は、最大約25%(体積/体積)の、最大約50%(体積/体積)の、最大約75%(体積/体積)の、最大約90%(体積/体積)の、最大約95%(体積/体積)の、または最大99%(体積/体積)もしくはそれを上回る、無菌水、無菌食塩水またはそれらの組み合わせによって希釈され得る。
【0034】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、実質的に、正常な組織および正常な哺乳動物細胞への毒性を持たないことが見出されている。本発明に従って投与されるORP水溶液は、真核細胞の生存率の有意な減少、哺乳動物細胞におけるアポトーシスの有意な増加、細胞老化の有意な加速、および/または有意な酸化的DNA損傷を引き起こさない。無毒性は特に有利であって、また、本発明に従って投与されるORP水溶液の殺菌力は過酸化水素のそれとおおよそ同等であるが、過酸化水素と異なり、正常な組織および正常な哺乳動物細胞への毒性が実質的にないことを考えると、恐らくそれは驚くべきことですらある。これらの知見は、本発明に従って投与されるORP水溶液が、例えばヒトを含む哺乳動物における使用にとって安全であることを示している。
【0035】
本発明に従って投与されるORP水溶液において、細胞の生存率は、約5分から約30分間のORP水溶液への曝露後に、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約75%である。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、最大で約30分またはそれより短いORP水溶液との接触で(例えば、ORP水溶液との、約30分または約5分の接触後)、好ましくは最大約10%の細胞のみで、より好ましくは最大約5%の細胞のみで、なおより好ましくは最大約3%の細胞のみで、アネキシンVを細胞表面に顕在化させる。
【0036】
更には、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液への慢性的な曝露後に、好ましくは約15%未満の細胞で、より好ましくは約10%未満の細胞で、なおより好ましくは約5%未満の細胞で、SA−β−ガラクトシダーゼ酵素を発現させる。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、同等の条件下で処理された細胞において過酸化水素によって引き起こされる酸化的DNA付加物形成のごく一部(例えば、同等の条件下で処理された細胞において過酸化水素によって通常引き起こされる酸化的DNA付加物形成の約20%未満、前記酸化的DNA付加物形成の約10%未満、または前記酸化的DNA付加物形成の約5%以下)を引き起こす。
【0037】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、有意なRNA分解を生じない。従って、ORP水溶液への曝露から約30分後または曝露から約3時間後にヒトの細胞培養物から抽出されて変性ゲル電気泳動によって分析されるRNAは、有意なRNA分解を通常示さず、また真核生物のリボソームRNA(即ち、28Sおよび18S)に対応する2本の別個の(discreet)バンドを通常示し、これは、本発明に従って投与されるORP水溶液がRNAを実質的に無傷のままにすることを示している。同様に、ORP水溶液への曝露から約30分後または曝露から約3時間後にヒトの細胞培養物から抽出されたRNAは、構成的なヒトGAPDH(グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)遺伝子の逆転写および増幅(RT−PCR)に供されて、RT−PCR産物のゲル電気泳動で強いGAPDHバンドを生じ得る。対照的に、同様の時間の間HPで処理された細胞は、有意なRNA分解を示し、GAPDHのRT−PCR産物はあったとしてもごくわずかである。
【0038】
一般的に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、様々な異なる経路(例えば、非経口的、内視鏡的、または生物組織表面(例、皮膚および/または1つ以上の粘膜表面)に直接)で投与され得る。非経口投与としては、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、膀胱内または滑膜腔内へのORP水溶液の投与を使用することを挙げることができる。ORP水溶液の内視鏡的な投与としては、例えば、鼻腔鏡検査法、気管支鏡検査法、結腸鏡検査法、S状結腸鏡検査法、子宮鏡検査法(hysterscopy)、腹腔鏡検査法(laproscopy)、関節鏡検査法(athroscopy)、胃鏡検査法または経尿道の方法の使用を挙げることができる。ORP水溶液の粘膜表面への投与としては、例えば、副鼻腔の、鼻の、口の、気管の、気管支の、食道の、胃の、小腸の、腹腔の、尿道の、肺胞の、尿道の、膣の、子宮の、卵管の、および滑膜の粘膜表面への投与を挙げることができる。非経口投与としてはまた、ORP水溶液を静脈内、皮下、筋肉内または腹腔内に投与することも挙げることができる。例えば、ORP水溶液は、例えば米国特許第5,334,383号および同第5,622,848号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたようにして静脈内投与され得るが、それらは、ORP水溶液の静脈内投与によるウイルス性心筋炎、多発性硬化症およびAIDSの治療方法を記載している。
【0039】
本発明の文脈において、患者(例えば、哺乳動物、特にヒト)に投与される治療有効量は、適当な時間枠にわたって患者において治療的または予防的な反応をもたらすのに十分でなければならない。投与量は、当分野において周知の方法を用いて容易に決定され得る。当業者は、任意の特定の患者に対する具体的な投薬量レベルは、様々な治療上関係し得る要因に依存することを認識するであろう。例えば、投与量は、用いられる特定のORP水溶液の強度、状態の重篤度、患者の体重、患者の年齢、患者の肉体的および精神的状態、全般的な健康、性別、食事などに基づいて決定され得る。投与量の規模はまた、特定のORP水溶液の投与に付随する可能性のあるあらゆる副作用の存在、性質および程度に基づいて決定され得る。可能であれば常に、副作用を最小限に保つことが望ましい。
【0040】
具体的な投薬量のために考慮され得る因子としては、例えば、生物学的利用能、代謝プロファイル、投与時間、投与経路、排出速度、および特定の患者における特定のORP水溶液に関連した薬力学などを挙げることができる。他の因子としては、例えば、治療される特定の状態に関するORP水溶液の効力または有効性、治療過程前または治療経過中に現れる症状の重篤度などを挙げることができる。場合によっては、治療有効量を構成するものは、特定の状態の治療または予防のための特定のORP水溶液の有効性を、合理的に、臨床的に予測する1つ以上のアッセイ(例えば、バイオアッセイ)を用いることによっても部分的に決定され得る。
【0041】
本発明によれば、ORP水溶液は、患者(例えば、ヒト)に対して、副鼻腔炎を含む現存の状態を治療するために、単独で、または1種以上の更なる治療剤と組み合わせて投与され得る。ORP水溶液はまた、状態に関連した1種以上の原因物質に曝露されてきた患者(例えばヒト)に対して、単独で、または1種以上の更なる治療剤と組み合わせて、予防的に投与され得る。例えば、本発明に従って投与されるORP水溶液は、1種以上の感染性微生物(例えば、ウイルス、細菌、および/または真菌)に曝露されてきた患者に対して予防的に好ましく投与して、患者における微生物に関連する副鼻腔炎(および/または感染症)を阻害又は可能性を減少させるか、あるいはそのような曝露の結果として発現し得る副鼻腔炎(および/または感染症)の重篤度を低減することができる。
【0042】
ORP水溶液を投与する好適な方法が利用可能であり、また、複数の投与経路を用いることができるとはいえ、一つの特定の経路が別の経路よりも迅速かつ有効な反応をもたらし得ることがあり得ることを当業者は理解するであろう。治療有効量は、個々の患者においてORP水溶液の「有効レベル」を達成するのに必要な投与量であり得る。治療有効量は、例えば、患者における状態を予防または治療するための、ORP水溶液(またはそこに含まれる1種以上の活性種)の血中レベル、組織内レベル(例えば、上部呼吸気道および/または副鼻腔の1つ以上の組織内のレベル)および/または細胞内レベルを達成するために個々の患者に投与される必要がある量として定義され得る。
【0043】
投薬の好ましいエンドポイントとして有効レベルを用いる場合、実際の投与量および投与計画は、例えば、薬物動態、分布、代謝などにおける個体差によって変化し得る。有効レベルはまた、ORP水溶液が、1種以上の更なる治療剤(例えば、1種以上の抗感染症剤、1種以上の「緩和剤」、「調節剤」または「中和剤」(例、米国特許第5,334,383号および同第5,622,848号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたようなもの)、および1種以上の抗炎症剤など)と組み合わせて用いられる場合、変化し得る。
【0044】
有効レベルの決定および/またはモニタリングのために、適切な指標が用いられ得る。例えば、有効レベルは、適切な患者サンプル(例えば、血液および/または組織)の直接的な分析(例えば、分析化学)または間接的な分析(例えば、臨床化学的指標を用いる)によって決定され得る。有効レベルはまた、例えば、尿代謝産物の濃度、状態と関連するマーカー(例えば、ウイルス感染の場合のウイルス数)の変化、組織病理および免疫化学的分析、ならびに状態と関連する症状の低減などの直接的または間接的な観察によっても決定し得る。
【0045】
従来のORP水溶液は、極度に限られた品質保持期限を持っており、通常わずか数時間である。この短い寿命の結果、従来のORP水溶液の使用は、その製造が使用する場所の近くで行われることを必要とする。現実的な観点からは、このことは、施設(例えば、病院などの保健医療施設)が、そのような従来のORP水溶液を製造するために必要な設備を購入し、保管し、維持しなければならないことを意味している。更に、従来の製造技術では、充分な商業規模の量を製造して、広範な使用(例えば、保健医療施設用の一般的な殺菌剤として)を可能にすることはできなかった。
【0046】
従来のORP水溶液とは異なり、本発明に従って投与されるORP水溶液は、その調製後少なくとも約20時間安定である。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、通常環境的に安全であり、従って、コストのかかる廃棄手順の必要性を回避する。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは少なくとも約1週間(例えば、1週間、2週間、3週間、4週間など)安定であり、より好ましくは少なくとも約2ヶ月間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、なおより好ましくは少なくとも約6ヶ月間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、更により好ましくは少なくとも約1年間安定であり、最も好ましくは約1年間を超えて(例えば、少なくとも約2年または少なくとも約3年)安定である。
【0047】
安定性は、その調製後に所定の時間の間、通常の保存条件下(例えば、室温)でORP水溶液が1つ以上の用途(例えば、肥満細胞の脱顆粒の阻害、サイトカイン分泌の阻害、汚染除去、殺菌、滅菌、抗菌クレンジングおよび創傷のクレンジング)のために好適なままである能力に基づいて測ることができる。本発明に従って投与されるORP水溶液の安定性はまた、ORP水溶液が、好ましくは最大約90日間安定、より好ましくは最大約180日間安定である、加速条件下(例えば、約30℃から約60℃)での保存によっても測ることができる。
【0048】
安定性はまた、ORP水溶液の品質保持期限の間の、溶液中に存在する1種以上の種(またはその前駆体)の経時的な濃度に基づいて測ることもできる。好ましくは、1種以上の種(例えば、遊離塩素および)の濃度は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ヶ月間、その初期濃度の約70%以上に維持される。より好ましくは、1種以上のそれらの種の濃度は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ヶ月間、その初期濃度の約80%以上に維持される。なおより好ましくは、1種以上のそのような種の濃度は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ヶ月間、その初期濃度の約90%以上に維持され、最も好ましくは約95%以上に維持される。
【0049】
安定性はまた、ORP水溶液への曝露後にサンプル中に存在する生物の量の減少に基づいて決定することもできる。生物濃度の減少の測定は、例えば、細菌、真菌、酵母またはウイルスを含む任意の好適な生物に基づいてなされ得る。安定性の決定に用いられ得る例示的な生物としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)およびバチルス・アトロフェーアス(Bacillus athrophaeus)(かつてのB.スブチリス(B. subtilis))を挙げることができる。
【0050】
安定性はまた、ORP水溶液への曝露後にサンプル中に存在するエンドトキシン(例えば、リポ多糖類(lipopolysacharides))、成長因子、サイトカインおよび他のタンパク質および脂質の量の減少に基づいて決定することもできる。
【0051】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、生存する微生物の濃度を4log(10)減少させることができる低レベルの殺菌剤として機能することができ、また、生存する微生物の濃度を6log(10)減少させることができる高レベルの殺菌剤としても機能することができる。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、溶液の調製から少なくとも約2ヶ月後の測定で、1分間の曝露後の総生物濃度において、少なくとも4log(10)の減少をもたらすことが可能である。ORP水溶液は、より好ましくは、溶液の調製から少なくとも約6ヶ月後の測定で、生物濃度の10〜10の減少が可能である。ORP水溶液は、なおより好ましくは、溶液の調製から少なくとも約1年後の測定で、そして最も好ましくはORP水溶液の調製から約1年より後(例えば、少なくとも約2年後または少なくとも約3年後)の測定で、生物濃度の10〜10の減少が可能である。
【0052】
例えば、ORP水溶液は、ORP水溶液の調製から少なくとも2ヶ月後の測定で、シュードモナス・エルギノーザ、エシェリヒア・コリ、エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アシネトバクタースピーシズ、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(VRE、MDR)、ヘモフィルス・インフルエンザ、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ヘモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、カンジダ・アルビカンスおよびカンジダ・トロピカリス(Candida tropicalis)からなる群から選択される生存する微生物サンプルの濃度を、30秒以内の曝露で、少なくとも約5log(10)減少させることが可能である。
【0053】
一つの実施形態において、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、エシェリヒア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウスおよびカンジダ・アルビカンスを含むがこれらに限定されない生存する微生物サンプルを、約1分間以内の曝露で、約1×10から約1×10生物数/mlの初期濃度から、約0生物数/mlの最終濃度へ減少させ得る。これは、約6log(10)から約8log(10)の生物濃度の減少に相当する。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、エシェリヒア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウスまたはカンジダ・アルビカンス生物の10〜10の減少を達成することが可能である。
【0054】
あるいは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約5分間以内の曝露で、バチルス・アトロフェーアス胞子の胞子懸濁液の濃度において約6log(10)の減少を生じさせ得る。好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、バチルス・アトロフェーアス胞子の濃度において約10の減少を達成し得る。
【0055】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約30秒間以内の曝露で、バチルス・アトロフェーアス胞子の胞子懸濁液の濃度において約4log(10)の減少を生じさせ得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、バチルス・アトロフェーアス胞子の濃度において、この減少を達成し得る。
【0056】
本発明に従って投与されるORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約5分から約10分以内の曝露で、アスペルギリス・ニガー(Aspergillis niger)胞子などの真菌胞子の濃度において約6log(10)の減少を生じさせ得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、真菌胞子の濃度において10の減少を達成し得る。
【0057】
本発明に従って投与されるORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約5分から約10分以内の曝露で、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)およびアデノウイルスなどのウイルスの濃度において3log(10)を上回る減少を生じさせ得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、ウイルスの濃度において>10の減少を達成し得る。
【0058】
本発明に従って投与されるORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約5分以内の曝露で、マイコバクテリウム・ボビス(Mycobacterium bovis)の増殖を完全に阻害できる。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、マイコバクテリウムの濃度において完全な阻害を達成し得る。
【0059】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、酸性であっても、中性であっても、塩基性であってもよく、通常約1から約14のpHを有し得る。このpH域内で、ORP水溶液は、例えば表面に対して、該表面を損傷したりORP水溶液と接触することになる対象物(ヒトの皮膚など)を害したりすることなく、適当な量で安全に適用され得る。好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液のpHは、約3から約8である。より好ましくは、ORP水溶液のpHは約6.4から約7.8であり、なおより好ましくは、pHは約7.4から約7.6である。
【0060】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、約−1000ミリボルト(mV)から約+1150ミリボルト(mV)の酸化還元電位を持ち得る。この電位は、溶液が金属電極によって感知される電子を受容するか受け渡す傾向(即ち、潜在性)の尺度であり、同溶液中の参照電極と比較される。この電位は、例えば、例えば銀/塩化銀電極などの標準参照に対するORP水溶液のミリボルト単位での電気ポテンシャルを測定することを含む、標準的な技術によって測定され得る。
【0061】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、約−400mVから約+1300mVの電位を有する。より好ましくは、ORP水溶液は、約0mVから約+1250mVの電位を有し、なおより好ましくは約+500mVから約+1250mVの電位を有する。更により好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、約+800mVから約+1100mVの電位を有し、最も好ましくは約+800mVから約+1000mVの電位を有する。
【0062】
本発明に従って投与されるORP水溶液中には、様々なイオン種および他の種が存在してもよい。例えば、ORP水溶液は、塩素(例えば、遊離塩素)を含んでもよい。1種以上のこれらの種の存在は、少なくとも、細菌および真菌ならびにウイルスなどの様々な微生物を殺すORP水溶液の殺菌能に寄与すると思われる。いずれの特定の理論にも縛られることを望まないが、またはそれより多い(or more of)そのような種もまた、副鼻腔炎の治療または予防のためのORP水溶液の有効性に寄与し得ると思われる。
【0063】
遊離塩素としては、典型的には、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO)、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、塩素イオン(Cl)、溶解塩素ガス(Cl)およびそれらの前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。次亜塩素酸の次亜塩素酸イオンに対する比は、pHに依存する。pH7.4では、次亜塩素酸レベルは、通常約25ppmから約75ppmである。温度もまた、遊離塩素成分の割合に影響し得る。
【0064】
塩素は、本発明に従って投与されるORP水溶液中に、任意の好適な量で存在し得る。これらの成分のレベルは、当該分野で公知の方法を含む任意の好適な方法によって測定され得る。
【0065】
遊離塩素と結合塩素の両方を含む塩素総含有量は、好ましくは、約50パーツ・パー・ミリオン(ppm)から約400ppmである。より好ましくは、塩素総含有量は、約80ppmから約150ppmである。
【0066】
塩素含有量は、DPD比色法(Lamotte社、チェスタータウン、メリーランド州)、または、例えば米国環境保護局によって確立された方法などの他の公知の方法のような、当該分野で公知の方法によって測定され得る。DPD比色法では、遊離塩素とN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)との反応によって黄色が形成され、パーツ・パー・ミリオンでの出力を与える目盛り付きの熱量計でその強度が測定される。ヨウ化カリウムを更に添加することによって、溶液がピンク色に転じ、総塩素値が得られる。次いで、総塩素から遊離塩素を差し引くことによって、存在する結合塩素の量が決定される。
【0067】
ORP水溶液中に存在する酸化化学種の総量は、好ましくは、約2ミリモル濃度(mM)の範囲内であり、これには、上記の塩素種、超酸化水種および更なる種(例えばCl、ClO、Cl、ClOなどの測定するのが困難であり得る種を含む)が含まれる。
【0068】
一つの実施形態において、本発明に従って投与されるORP水溶液は、1種以上の塩素種および/または1種以上の更なる超酸化水種を含む。好ましくは、存在する塩素種は遊離塩素種である。遊離塩素種としては、次亜塩素酸(HOCl)、次亜塩素酸イオン(OCl)、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、塩化物イオン(Cl)、溶解塩素ガス(Cl)、それらの前駆体、およびそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の種を挙げることができる。
【0069】
遊離塩素種の総量は、好ましくは約10ppmから約400ppm、より好ましくは約50ppmから約200ppm、最も好ましくは約50ppmから約80ppmである。次亜塩素酸の量は、好ましくは、約15ppmから約35ppmである。次亜塩素酸ナトリウムの量は、好ましくは、約25ppmから約50ppmの範囲内である。
【0070】
一つの実施形態において、ORP水溶液は、1種以上の塩素種、または1種および任意でそれより多い種のそれらの前駆体を含み、また、その調製から少なくとも約24時間、好ましくは少なくとも約1週間、より好ましくは少なくとも約(at about least)2ケ月間、なおより好ましくは少なくとも約6ケ月間、安定である。そのようなORP水溶液は、更により好ましくは少なくとも約1年間、最も好ましくは約1年を越えて(例えば、少なくとも約2年または少なくとも約3年)、安定である。
【0071】
1種以上の塩素種、1種以上の更なる超酸化水種(例えば、1種以上の酸素種、溶解酸素)または1種以上のそれらの前駆体を含み、約6から約8のpHを有するORP水溶液もまた、好ましい。そのようなORP水溶液のpHは、より好ましくは約6.2から約7.8、最も好ましくは約7.4から約7.6である。本発明に従って投与される例示的なORP水溶液は、例えば、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含み得、これらの成分と共にpHが約6.2から約7.8であり、かつ少なくとも約1週間(例えば、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、または約1年を超えて(例えば、少なくとも約2年または少なくとも約3年))安定であり得る。
【0072】
決して本発明を限定するわけではないが、pHおよび他の変数(例えば、塩分)の制御により、例えば次亜塩素酸および次亜塩素酸イオンなどの1種以上の塩素種、および任意で過酸化水素またはそれらの前駆体を含む安定なORP水溶液を与えることができると思われる。
【0073】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、鉄への曝露でフリーラジカル(例えば、ヒドロキシルラジカル類など)をもたらし得る1種以上の酸化水種を含む。水酸化ナトリウム、二酸化塩素、過酸化水素およびオゾンは、次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応して他の化学種の消費および生成をもたらす可能性があることが報告されてきたとはいえ、ORP水溶液は、任意で、その製造中に生成される、例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、二酸化塩素(ClO)、過酸化物(例えば、過酸化水素(H))およびオゾン(O)などの1種以上の化合物を含み得る。
【0074】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば電解プロセスまたは酸化還元反応による酸化還元法によって製造され得、そこでは、電気エネルギーが水溶液中で1つ以上の化学的な変化を引き起こすために使用される。好適なORP水溶液を調製するための例示的な方法は、例えば、米国特許出願公開US2005/0139808号および同US2005/0142157号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0075】
電解プロセスにおいて、電気エネルギーは、電流形態での一つの点から別の点への電荷の伝導によって、水中に導入され、水中を運ばれる。電流が生じ、存続するためには、水中に電荷担体が存在しなければならず、また、その担体を動かす力がなければならない。電荷担体は、金属および半導体の場合のように電子であり得、または溶液の場合は陽イオンおよび陰イオンであり得る。還元反応はカソードで起こり、酸化反応はアノードで起こる。起こると思われる還元および酸化反応の少なくとも一部は、国際出願WO03/048421 A1号に記載されている。
【0076】
本明細書で使用される場合、アノードで生成される水をアノード水といい、カソードで生成される水をカソード水という。アノード水は、通常、電解反応で生成される酸化種を含有し、カソード水は、通常、該反応からの還元種を含有する。アノード水は、一般に、通常約1から約6.8の低いpHを有する。アノード水は、好ましくは、例えば塩素気体、塩化物イオン、塩酸および/または次亜塩素酸、あるいは1種以上のそれらの前駆体を含む様々な形態の塩素を含有する。例えば酸素気体、および任意で過酸化物および/またはオゾンあるいは1種以上のそれらの前駆体を含む様々な形態の酸素もまた、好ましくは存在する。カソード水は、一般に、通常約7.2から約11の高いpHを有する。カソード水は、水素気体、ヒドロキシルラジカルおよび/またはナトリウムイオンを含有し得る。
【0077】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、アノード水(例えば、電解セルのアノードチャンバーで生成される水)とカソード水(例えば、電解セルのカソードチャンバーで生成される水)との混合物を含み得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、例えば該溶液の約10体積%から約90体積%の量でカソード水を含有する。より好ましくは、カソード水は、溶液の約10体積%から約50体積%の量、なおより好ましくは溶液の約20体積%から約40体積%(例えば、溶液の約20体積%から約30体積%)の量でORP水溶液中に存在する。更に、アノード水は、例えば、溶液の約50体積%から約90体積%の量でORP水溶液中に存在し得る。例示的なORP水溶液は、約10体積%から約50体積%のカソード水および約50体積%から約90体積%のアノード水を含有し得る。アノード水およびカソード水は、図1に示した3チャンバーの電解セルを使用して製造され得る。
【0078】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、アノードチャンバー、カソードチャンバー、およびアノードチャンバーとカソードチャンバーとの間に位置する塩溶液チャンバーを含む少なくとも1つの電解セルを用いて製造され、ここで少なくとも一部のアノード水およびカソード水は、ORP水溶液がアノード水およびカソード水を含むよう混ぜ合わせられる。例示的なORP水溶液の調製に用いられ得る例示的な3チャンバーの電解セルの図解を図2に示す。
【0079】
電解セル100は、アノードチャンバー102、カソードチャンバー104および塩溶液チャンバー106を有する。塩溶液チャンバーは、アノードチャンバー102とカソードチャンバー104との間に位置する。アノードチャンバー102は、インレット108およびアウトレット110を有して、アノードチャンバー100を通る水の流れを可能にしている。同様に、カソードチャンバー104は、インレット112およびアウトレット114を有して、カソードチャンバー104を通る水の流れを可能にしている。塩溶液チャンバー106は、インレット116およびアウトレット118を有する。電解セル100は、好ましくは、全てのコンポーネントをひとまとめに保つためのハウジングを含む。
【0080】
アノードチャンバー102は、アノード電極120およびアニオンイオン交換膜122によって塩溶液チャンバーから分離されている。アノード電極120と塩溶液チャンバー106との間に位置する膜122と共に、アノード電極120がアノードチャンバー102に隣接して配置されてもよい。あるいは、膜122と塩溶液チャンバー106との間に位置するアノード電極120と共に、膜122がアノードチャンバー102に隣接して配置されてもよい。
【0081】
カソードチャンバー104は、カソード電極124およびカソードイオン交換膜126によって塩溶液チャンバーから分離されている。カソード電極124と塩溶液チャンバー106との間に位置する膜126と共に、カソード電極124がカソードチャンバー104に隣接して配置されてもよい。あるいは、膜126と塩溶液チャンバー106との間に位置するカソード電極124と共に、膜126がカソードチャンバー104に隣接して配置されてもよい。
【0082】
電極は、好ましくは、金属から構成され、電位がアノードチャンバーとカソードチャンバーとの間に印加されるのを可能にする。金属電極は、一般に平面的であり、イオン交換膜と同様の寸法および断面積を有する。電極は、イオン交換膜の表面のかなりの部分がそれぞれのアノードチャンバーおよびカソードチャンバー中で水に露出されるように構成されている。これにより、塩溶液チャンバーとアノードチャンバーとカソードチャンバーとの間でのイオン種の移動が可能となる。好ましくは、電極は、電極表面にわたって均等に配置された複数の通路または開口部を有する。
【0083】
電位源は、アノード電極120およびカソード電極124に接続され、アノードチャンバー102で酸化反応を、カソードチャンバー104で還元反応を引き起こす。
【0084】
電解セル100で使用されるイオン交換膜122および126は、塩溶液チャンバー106とアノードチャンバー102との間での例えば塩化物イオン(Cl)などのイオンの交換、および塩溶液塩溶液チャンバー106とカソードチャンバー104との間での例えばナトリウムイオン(Na)などのイオンの交換を可能にする、任意の好適な素材から構成され得る。アノードイオン交換膜122およびカソードイオン交換膜126は、同一または異なる構成素材から作られていてもよい。好ましくは、アノードイオン交換膜は、フッ素化ポリマーを含む。好適なフッ素化ポリマーとしては、例えば、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、ならびにペルフルオロスルホン酸/PTFEコポリマーおよびペルフルオロスルホン酸/TFEコポリマーなどのコポリマーが挙げられる。イオン交換膜は、素材の単層または複数層から構成され得る。好適なイオン交換膜ポリマーとしては、Nafion(登録商標)という商標のもとで販売されている1以上のイオン交換膜ポリマーが挙げられる。
【0085】
電解セル100のアノードチャンバー102およびカソードチャンバー104のための水の源は、任意の好適な給水であり得る。水は、市の上水道からでもよく、あるいは電解セルでの使用前に前処理されてもよい。好ましくは、水は前処理され、軟水、精製水、蒸留水および脱イオン化水からなる群から選択される。より好ましくは、前処理された水の源は、逆浸透精製装置を用いて得られる超純水である。
【0086】
塩水(salt water)チャンバー106で使用するための塩水溶液としては、ORP水溶液を製造するために好適なイオン種を含有する任意の塩水溶液を挙げることができる。好ましくは、塩水溶液は、食塩溶液とも通常言われる、塩化ナトリウム(NaCl)塩水溶液である。他の好適な塩溶液としては、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウムなどの他の塩化物塩、ならびにカリウム塩および臭素塩などの他のハロゲン塩を挙げることができる。塩溶液は、塩の混合物を含有してもよい。
【0087】
塩溶液は、任意の好適な濃度を有し得る。例えば、塩溶液は、飽和であっても濃縮されていてもよい。好ましくは、塩溶液は、飽和塩化ナトリウム溶液である。
【0088】
図2は、本発明と関連して有用な3チャンバーの電解セルで生成される種々のイオン種であると思われるものを示している。3チャンバーの電解セル200は、アノードチャンバー202、カソードチャンバー204および塩溶液チャンバー206を含む。アノード208およびカソード210への適切な電流の印加時に、塩溶液チャンバー206を通って流れる塩溶液中に存在するイオンは、アノードイオン交換膜212およびカソードイオン交換膜214を通じて、それぞれ、アノードチャンバー202およびカソードチャンバー204を通って流れる水中に移動する。
【0089】
陽イオンは、塩溶液チャンバー206を通って流れる塩溶液216から、カソードチャンバー204を通って流れるカソード水218に移動する。陰イオンは、塩溶液チャンバー206を通って流れる塩溶液216から、アノードチャンバー202を通って流れるアノード水220に移動する。
【0090】
好ましくは、塩溶液216は、ナトリウムイオン(Na)と塩化物イオン(Cl)イオンとの両方を含有する塩化ナトリウム(NaCl)水溶液である。陽イオンNaは、塩溶液216からカソード水218に移動する。陰イオンClは、塩溶液216からアノード水220に移動する。
【0091】
ナトリウムイオンおよび塩化物イオンは、アノードチャンバー202およびカソードチャンバー204において、更なる反応を受け得る。例えば、塩化物イオンは、アノード水220中に存在する種々の酸素イオンおよび他の種(例えば、酸素含有フリーラジカル、O、O)と反応して、ClO−およびClOを生成し得る。酸素フリーラジカル、水素イオン(H)、酸素(例えばOとして)、および任意でオゾン(O)および過酸化物の形成を含む他の反応も、アノードチャンバー202で起こり得る。カソードチャンバー204において、水素気体(H)、水酸化物イオン(OH)、および他のラジカル、および任意で水酸化ナトリウム(NaOH)が形成され得る。
【0092】
ORP水溶液を製造するための装置はまた、少なくとも2つの3チャンバーの電解セルを含むように構成され得る。各電解セルは、アノードチャンバー、カソードチャンバー、及びアノードチャンバーとカソードチャンバーとを分離する塩溶液チャンバーを含む。装置は、電解セルによって生成されたアノード水および1つ以上の電解セルによって生成されたカソード水の一部を集めるための混合タンクを含む。好ましくは、装置は、電解セルの塩溶液チャンバーに供給される塩溶液の再利用を可能にするために塩再循環システムを更に含む。2つの電解セルを用いてORP水溶液を製造するための例示的なプロセスの図解を図3に示す。
【0093】
プロセス300は、2つの3チャンバーの電解セル、具体的には第1電解セル302および第2電解セル304を含む。水は、水源305から第1電解セル302のアノードチャンバー306およびカソードチャンバー308へ、ならびに第2電解セル304のアノードチャンバー310およびカソードチャンバー312へ、移送されるか、ポンプされるか、または他の方法で分配される。好都合なことに、このプロセスは、約1リットル/分から約50リットル/分のORP水溶液を製造できる。製造容量は、更なる電解セルを用いることによって増加され得る。本発明に従って投与されるORP水溶液の生産量を増加させるために、例えば3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個またはそれより多い3チャンバーの電解セルを用いてもよい。
【0094】
アノードチャンバー306およびアノードチャンバー310で生成されるアノード水は、混合タンク314に集められる。カソードチャンバー308およびカソードチャンバー312で生成されるカソード水の一部は、混合タンク314に集められてアノード水と合わさる。本プロセスで生成されるカソード水の残りの部分は廃棄される。カソード水は、任意で、混合タンク314への添加前に、ガス分離器316および/またはガス分離器318に供されてもよい。ガス分離器は、製造プロセス中にカソード水中で形成される水素気体などの気体を除去する。
【0095】
混合タンク314は、再循環ポンプ315に任意で連結されて、電解セル302および304からのアノード水とカソード水の一部との均一な混合を可能とする。更に、混合タンク314は、ORP水溶液のレベルおよびpHをモニターするのに好適な器具を任意で含み得る。ORP水溶液は、混合タンクの場所またはその近くでの殺菌もしくは消毒に適用するために、ポンプ317を通じて混合タンク314から移送され得る。あるいは、ORP水溶液は、離れた場所(例えば、倉庫、病院など)への出荷のために1つ以上の好適な容器に分配され得る。
【0096】
プロセス300は、塩溶液再循環システムを更に含んで、第1電解セル302の塩溶液チャンバー322へ、および第2電解セル304の塩溶液チャンバー324へ、塩溶液を与える。塩溶液は、塩タンク320において調製される。塩は、ポンプ321を通じて塩溶液チャンバー322および324へ移送される。好ましくは、塩溶液は、まず塩溶液チャンバー322、次いで塩溶液チャンバー324を通って順次流れる。あるいは、塩溶液は、両方の塩溶液チャンバーへ同時にポンプされ得る。
【0097】
塩タンク320へ戻る前に、塩溶液は、混合タンク314中の熱交換器326を通って流れて、必要に応じてORP水溶液の温度を制御し得る。
【0098】
塩溶液中に存在するイオンは、第1電解セル302および第2電解セル304において、時間と共に枯渇する。アノード水およびカソード水へ移送されるイオンを補給するために更なるイオン源が混合タンク320に定期的に加えられ得る。更なるイオン源は、例えば、時間と共に下がる(即ち、酸性化する)ことがある塩溶液のpHを一定に保つために使用され得る。更なるイオン源は、例えば、例えば塩化ナトリウムなどの塩を含む任意の好適な化合物であり得る。好ましくは、アノード水およびカソード水へ移送されるナトリウムイオン(Na)を補給するために水酸化ナトリウムが混合タンク320へ添加される。
【0099】
調製後、ORP水溶液は、例えば保健医療施設(例えば、病院、養護施設、医院、外来手術センター、歯科医院などを含む)などのエンドユーザーへの配給および販売のために、1種以上の好適な容器(例えば、密封容器)に移され得る。好適な容器としては、例えば、容器に入れられたORP水溶液の無菌性および安定性を維持する密封容器を挙げることができる。容器は、ORP水溶液と適合する任意の素材から構成され得る。好ましくは、容器は、一般に、ORP水溶液中に存在する1種以上のイオンまたは他の種と非反応性である。
【0100】
好ましくは、容器は、プラスチックまたはガラスから構成される。容器が棚に保存されることが可能であるよう、プラスチックは硬質であり得る。あるいは、容器は、柔軟であり得る(例えば、例えば柔軟な袋などの軟質プラスチック製の容器)。
【0101】
好適なプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、シクロオレフィン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルおよびそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、容器は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)および直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群から選択される1種以上のポリエチレンを含む。最も好ましくは、容器は高密度ポリエチレンで構成される。
【0102】
容器は、好ましくは、ORP水溶液の分配を可能とする開口部を有する。容器の開口部は、任意の好適な方法で密封され得る。例えば、容器は、ネジ切りキャップまたは栓で密封され得る。任意で、開口部はホイルの層で更に密封され得る。
【0103】
密封容器の上部の気体は、空気、またはORP水溶液中の1種以上の種と好ましくは反応しない任意の他の好適な気体であり得る。好適な上部の気体としては、例えば、窒素、酸素およびそれらの混合物が挙げられる。
【0104】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、細胞介在性の炎症、ならびにSLE、自己免疫性甲状腺炎、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、関節リウマチおよびリウマチ熱を含むがこれらに限定されない自己免疫反応に起因する炎症を治療または予防するためにも用いられ得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、感染(例えば、ウイルス、細菌および真菌からなる群から選択される1種以上の微生物による感染)に起因する炎症を治療または予防するために用いられ得、ここで前記炎症には、過敏症、および感染に起因する自己免疫介在性の炎症が含まれる。
【0105】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、上部呼吸器の状態に関連する炎症を治療または予防するためにも用いられ得る。炎症が上部呼吸器の状態と関連する場合、ORP水溶液は、好ましくは、例えばスプレー、ミスト、エアロゾルまたはスチームとして、該状態に侵された1つ以上の上気道組織と接触するようにして上気道に投与される。本明細書に記載した1つ以上の投与経路を含む任意の好適な方法が、上気道へORP水溶液を送達して、上部呼吸器の1つ以上の状態を本発明に従って治療または予防するために用いることが出来る。
【0106】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、1つ以上の上部気道組織(例えば、本明細書に記載したような鼻孔組織)または肺組織を侵している炎症を予防または治療するためにも用いられ得る。そのような状態としては、例えば、本発明に従って投与されるORP水溶液で予防または治療可能である咽頭炎および喘息などが挙げられる。
【0107】
咽頭炎に関して、世界中で、医局、診療所および救急治療室への全ての来診の1%から2%が咽頭炎を理由とすると見積もられている。合衆国およびメキシコにおいて、咽頭炎および扁桃炎は、1年につきそれぞれ約1500万および1200万件の診察を占めていると考えられる。これらの症例は、通常、様々な細菌およびウイルスによって引き起こされる。また、A群β溶血性ストレプトコッカスによって引き起こされた咽頭炎および扁桃炎は、貧困層におけるリウマチ熱の危険性を著しく上昇させ得る。しかしながら、咽頭炎の症例のわずか5%から15%がこの細菌によって引き起こされたものであり、急性の症例の残りは、疫学的な関連性のほとんどない細菌およびウイルスによるものであると考えられている。後者の症例は、数日のうちに自己限定的となる傾向があり、続発症を残さない。
【0108】
世界中で多数の医者が、急性咽頭炎に対して見境なく抗生物質を処方していることが確認されている。患者はしばしば強い抗生物質を要求する傾向があるため、これは日常の診療で起きる。不幸なことに、連鎖球菌(streptococcal)咽頭炎/扁桃炎の臨床的に正確な診断を確立することは難しく、抗生物質での急性咽頭炎/扁桃炎の治療のコスト/便益比は疑わしい。メキシコなどの一部の国では、抗生物質のコストを賄うためおよび病気の結果失われた労働日数と関連する損失を賄うための政府財源の消費が著しく、これらは全て国家予算に対する深刻な損失を示している。
【0109】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、急性咽頭炎および/または扁桃炎の治療または予防のための安全、有効かつコスト効率のよい補助療法を提供できると考えられる。急性咽頭炎/扁桃炎の経験的治療は、本発明に従ったORP水溶液の投与から始まり得、また、ストレプトコッカスの迅速試験の展開または結果に依存して、必要な場合にのみ抗生物質がそれから48〜72時間後に開始され得る。従って、本発明に従って投与されるORP水溶液は、抗生物質の使用を延期させることが可能であり得、それと同時に、咽頭炎/扁桃炎がA群ストレプトコッカス由来でなければ、患者の症状(symptomatology)を低減して患者の回復を加速し得る。連鎖球菌咽頭炎/扁桃炎の治療のための本発明に従って投与されるORP水溶液の抗生物質との補助的使用はまた、臨床応答の期間を短縮させ得、再発率を減少させ得る。
【0110】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、過敏症に関連する炎症の治療または予防のためにも用いられ得る。歴史的には、過敏性反応は、深刻な疾患が起因し得る4つのタイプのうちの1つとして分類されてきた。本発明に従って投与されるORP水溶液は、1つ以上のそのような反応を治療および/または予防(例えば、発症の阻害、進行の阻害、または可能性の減少)するために用いられ得る。I型過敏症は、通常、肥満細胞または好塩基球に結合した抗体との抗原の結合に起因する(参照により本明細書に組み込まれる、Kumar et al., Robbins & Cotran Pathologic Basis of Disease, 2004, pp. 193-268を参照されたい)。I型反応は、以前に抗原に感作されていた個体において、数分以内の抗原への曝露で起こる。ヒトでは、I型反応は、肥満細胞および好塩基球上のFc受容体に高い親和性を持つIgEによって介在される。
【0111】
I型過敏症における肥満細胞の役割は、それらが血管および神経付近の上皮表面下の組織に存在するため、特に重要である。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎およびアトピー性喘息において観察される複数の臨床症状は、異なる罹患組織中にある肥満細胞のIgE抗原刺激によって引き起こされる。現在受け入れられているアトピー性喘息の発症機序に対する見解は、アレルゲンが、IgE産生肺肥満細胞(MC)を誘発することによってプロセスを開始させて、いわゆる即時相反応においてヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、キニン(kininis)、血小板活性化因子(PAF)などのメディエーターを放出させるということである(Kumar et al., pp. 193-268)。続いて、これらのメディエーターは、気管支収縮を引き起こし、血管透過性および粘液産生を亢進する。このモデルによれば、肥満細胞活性化に続いて、それらの細胞は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、IL−4、IL−5およびIL−6を含む様々なサイトカインを分泌し、それらが好酸球、抗塩基球、Tリンパ球、血小板および単核食細胞などの他の炎症性細胞の局所的動員および活性化に関与する。次に、これらの動員された細胞が、その後自律性となる可能性があり、また、喘息の症状を悪化させる可能性がある炎症反応の進行に寄与する。この遅延相反応は、周囲組織における変化を誘導する長期の炎症プロセスを構成する(Kumar et al., pp. 193-268参照)。臨床的には、I型反応は、アレルギー性鼻炎などの局所性の効果、または掻痒、蕁麻疹、呼吸困難および循環虚脱を伴って現れるアナフィラキシーにおいてみられるような全身性の効果を有し得る。
【0112】
II型過敏症は、細胞表面上および細胞外空間内の抗原を対象とする抗体によって介在される。これらの抗体は、細胞溶解を導き得るか、または標的分子のオプソニン化(他の細胞による食作用のための前処理)をもたらし得る。あるいは、抗体は、細胞表面受容体に導かれてそれを活性化し得る。II型反応に起因する状態としては、輸血反応、グレーブス病(甲状腺機能亢進症)、薬剤反応、悪性貧血および急性リウマチ熱が挙げられる。リウマチ熱においては、抗体はストレプトコッカス抗原に対して形成されるが、心臓弁(heat valve)などのヒト組織と交差反応する。
【0113】
III型過敏症は、抗体と他の宿主免疫系タンパク質(最も典型的には補体タンパク質)との複合体である免疫複合体によって引き起こされる。補体と結合してそれを活性化する(active)のは、抗体の通常の機能である。しかしながら、その結果生じる高分子の免疫複合体が適切に処理されない場合、それらは持続的な組織損傷をもたらし得る。マクロファージおよびPMNLは、免疫複合体によって活性化されて、これらの細胞による毒性化学物質の放出につながり得る。免疫複合体反応は局所的であり得、また、例えばアルサス反応などの状態をもたらし得るか、または血清病もしくは全身性エリテマトーデス(lupus erythematous)(SLE)の一部の特徴などの全身性の疾患を引き起こし得る。
【0114】
IV型過敏症は細胞介在性であり、遅延型過敏症と呼ばれることもある。IV型過敏症は、Tリンパ球によって介在され、しばしば肉芽腫性反応の形成をもたらす。肉芽腫性反応においては、類上皮(epitheloid)細胞と呼ばれるマクロファージの一形態が、抗原を消化しようとするが失敗する。抗原の存続は、更なるリンパ球を誘引するサイトカインの放出につながり、慢性的な炎症の病巣をもたらす。病巣は、隣接する細胞にとって毒性であるグランザイムおよびパーフォリンを放出する、高濃度の細胞傷害性(cyotoxic)Tリンパ球を有する。IV型過敏症は、例えばシェーグレン症候群、サルコイドーシス、および接触皮膚炎などの自己免疫疾患の顕著な構成要素である。
【0115】
病理的状態は、異なるタイプの過敏症反応を兼ね備え得る。自己免疫疾患においては、宿主抗原が、宿主にとって深刻な結果を持つ過敏症を促進する。例えば、SLEにおいて、宿主抗原は血液細胞に対してII型反応を誘導し、一方、III型反応は血管および腎糸球体の損傷をもたらす。更に、過敏症反応は、薬剤反応および移植による拒絶反応などの医原性の(iatragenic)状態においてもみられる。移植による拒絶反応は、II型およびIV型過敏症の構成要素を含む。
【0116】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば1種以上の感染性病原体(例えば感染性微生物など)による感染の予防または治療のためにも用いられ得る。そのような微生物としては、例えば、ウイルス、細菌および真菌を挙げることができる。ウイルスとしては、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、コクサッキーウイルス(coxsackie_virus)、HIV、ライノウイルスおよびインフルエンザウイルスからなる群から選択される1種以上のウイルスを挙げることができる。細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウスおよびマイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobaterium tuberculosis)からなる群から選択される1種以上の細菌を挙げることができる。真菌としては、例えば、カンジダ・アルビカンス、バチルス・スブチリスおよびバチルス・アトロフェーアスからなる群から選択される1種以上の真菌を挙げることができる。
【0117】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、アデノウイルスに対して効果的であり得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液への約20分間の曝露の後、より好ましくは約15分間の曝露の後、なおより好ましくは約10分間の曝露の後、好ましくは約2を上回る、より好ましくは約2.5を上回る、なおより好ましくは約3を上回る、アデノウイルス負荷におけるログ10の減少を達成する。本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、ORP水溶液への約15分間の曝露の後、より好ましくは約10分間の曝露の後、なおより好ましくは約5分間の曝露の後、好ましくは約2を上回るログ減少係数で、より好ましくは約2.5を上回るログ減少係数で、なおより好ましくは約3を上回るログ減少係数で、HIV−1のウイルス負荷を減少させるために効果的であり得る。
【0118】
本発明の方法によれば、感染の予防または治療のためのORP水溶液の投与はまた、本明細書に記載するように、感染(または罹患組織)と関連する副鼻腔炎を予防または治療する役目を果たし得る。
【0119】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、例えば障害のあるまたは損傷した1つ以上の組織を治療有効量のORP水溶液に接触させることによって、障害のあるまたは損傷した組織を治療するためにも用いられ得る。障害のあるまたは損傷した組織を治療するために、任意の好適な方法が、障害のあるまたは損傷した組織を接触させるために用いることができる。例えば、障害のあるまたは損傷した組織は、障害のあるまたは損傷した組織を治療有効量のORP水溶液に接触させるようにして、該組織にORP水溶液を灌注することによって治療され得る。ORP水溶液は、障害のあるまたは損傷した組織を治療有効量のORP水溶液に接触させるようにして、本明細書に記載されたように、スチームまたはスプレーとして、あるいはエアロゾル化、ネブライゼーションまたはアトマイゼーションによって投与され得る。
【0120】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば外科手術によって障害を持ったまたは損傷した組織の治療のために用いられ得る。例えば、ORP水溶液は、切開によって障害を持ったまたは損傷した組織を治療するために用いられ得る。更に、ORP水溶液は、口腔外科手術、グラフト手術、インプラント手術、トランスプラント手術、焼灼、切断、放射線照射、化学療法、およびそれらの組み合わせによって障害を持ったまたは損傷した組織の治療のために用いられ得る。口腔外科手術としては、例えば、例として根管手術、抜歯、歯肉手術などの歯科外科手術を挙げることができる。
【0121】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、必ずしも外科手術によって引き起こされるものではない、1つ以上の、熱傷、切り傷、擦り傷、掻き傷、発疹、潰瘍、刺創、およびそれらの組み合わせなどによって障害を持ったまたは損傷した組織を治療するために用いられ得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、感染した、障害のあるまたは損傷した組織、あるいは感染によって障害を持ったまたは損傷した組織を治療するために用いられ得る。このような感染は、例えば、本明細書に記載したようなウイルス、細菌および真菌からなる群から選択される1種以上の微生物などの1種以上の感染性病原体によって引き起こされ得る。
【0122】
本発明によれば、障害のあるまたは損傷した組織を治療するためのORP水溶液の投与は、該障害または損傷(あるいは障害のあるまたは損傷した組織)と関連する副鼻腔炎を予防または治療する役目も果たし得る。
【0123】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、様々な環境において、細菌、ウイルスおよび胞子を含む微生物を根絶するための殺菌剤としても使用され得(例えば、保健医療および医療機器の分野において、表面および医療機器を殺菌するため)、また、創傷ケア、医療機器の滅菌、食物の滅菌、医療関係者における手の殺菌、病院、消費者家庭および対バイオテロリズムにおいても適用され得る。ORP水溶液は、例えば表面を抗感染量のORP水溶液と接触させることによって、表面を殺菌するために用いられ得る。表面は、任意の好適な方法を用いて接触され得る。例えば、表面は、該表面を殺菌するために、ORP水溶液を該表面に注ぐことによって接触され得る。更に、表面は、該表面を殺菌するために、本明細書に記載したようにして、スチームまたはスプレーとして、あるいはエアロゾル化、ネブライゼーションまたはアトマイゼーションによって、ORP水溶液を表面に塗布することによって接触され得る。更に、ORP水溶液は、本明細書に記載したようにして、クリーニングワイプを用いて表面に塗布され得る。表面を殺菌することによって、該表面は、感染性微生物から浄化され得る。あるいは(または更には)、本発明に従って投与されるORP水溶液は、表面に塗布されて感染に対するバリアを提供し、それにより該表面を殺菌することができる。
【0124】
表面としては、1種以上の生物表面、1種以上の無生物表面、およびそれらの組み合わせを挙げることができる。生物表面としては、例えば、例として、口腔、副鼻腔、頭蓋腔、腹腔および胸腔などの1種以上の体腔内の組織を挙げることができる。口腔内の組織としては、例えば、口組織、歯肉組織、舌組織および咽喉組織が挙げられる。生物学的な組織としてはまた、筋組織、骨組織、臓器組織、粘膜組織、血管組織、神経組織、およびそれらの組み合わせも挙げることができる。無生物表面としては、例えば、外科的にインプラント可能な器具、人工装具および医療器具が挙げられる。本発明の方法によれば、外科手術中に露出される可能性のある、内臓器官、内臓、筋肉などの表面が殺菌されて、例えば、外科的環境の無菌性を保つことができる。
【0125】
ORP水溶液はまた、以下の1つ以上と関連する、炎症を含む様々な状態を治療するために、ヒト及び/又は動物に適用しても良い;手術/開放創傷クレンジング剤;皮膚病原体の殺菌(例えば、細菌、マイコプラズマ、ウイルス、真菌、プリオンに対して);戦闘の創傷の殺菌;創傷治癒の促進;熱傷治癒の促進;胃潰瘍の治療;創傷の洗浄;皮膚真菌;乾癬;水虫;結膜炎および他の眼の感染症;耳の感染症(例えば、外耳炎);肺/鼻/副鼻腔の感染症;ならびにヒトまたは動物の身体上または身体内の他の医療用途。組織細胞成長促進物としてのORP水溶液の使用は、米国特許出願公開2002/0160053号(参照により本明細書に組み込まれる)に更に記載されている。
【0126】
本発明に従って用いられるORP水溶液での処理によって制御、減少、殺害または根絶され得る生物としては、例えば、シュードモナス・エルギノーザ、エシェリヒア・コリ、エンテロコッカス・ヒラエ、アシネトバクター・バウマニ、アシネトバクタースピーシズ、バクテロイデス・フラギリス、エンテロバクター・エロゲネス、エンテロコッカス・フェカリス、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(VRE、MDR)、バンコマイシン耐性エシェリヒア・コリ、ヘモフィルス・インフルエンザ、クレブシエラ・オキシトカ、クレブシエラ・ニューモニエ、ミクロコッカス・ルテウス、プロテウス・ミラビリス、セラチア・マルセッセンス、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス、スタフィロコッカス・ヘモリティカス、スタフィロコッカス・ホミニス、スタフィロコッカス・サプロフィティカス、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ストレプトコッカス・ピオゲネス、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、シゲラ・ディセンテリエ(Shigella dysenteriae)、および他の感受性細菌、ならびに例えばトリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)、カンジダ・アルビカンスおよびカンジダ・トロピカリスといった酵母が挙げられる。ORP水溶液は、本発明に従って、例えば、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ライノウイルス、インフルエンザ(例えば、A型インフルエンザ)、肝炎(例えば、A型肝炎)、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因)、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、風疹ウイルス、および他の感受性ウイルスを含むウイルスを制御、減少、殺害または根絶するためにも用いられ得る。
【0127】
本発明に従って用いられるORP水溶液はまた、環境中に存在するアレルゲンの活性の制御においても用いられ得る。この文脈において、アレルゲンとしては、通常、罹患性のヒトまたは動物における有害な免疫反応、即ちアレルギーを誘発し得る、細菌、真菌、酵母またはウイルス以外の任意の物質が挙げられる。喘息は、1種以上のそのようなアレルゲンへの曝露後の一般的な生理反応である。アレルゲンは、生存能力のあるもの(即ち、生きているまたは死んでいる生物由来)、または生存能力のないもの(例えば、繊維製品などの非生命)のいずれであっても良く、また、例えば家庭および/または職場といった環境中に存在し得る。
【0128】
ORP水溶液で処理され得る蛋白質ベースの家庭のアレルゲンとしては、例えば、動物の毛皮、皮膚および排泄物、家庭のほこり、雑草、草、木、ダニ、花粉を挙げることができる。動物アレルゲンとしては、例えば、猫の上皮、犬の上皮、馬のフケ、牛のフケ、犬のフケ、モルモットの上皮、ガチョウの羽毛、マウスの上皮、マウスの尿、ラットの上皮、およびラットの尿を挙げることができる。
【0129】
職業性アレルゲンとしては、例えば、植物もしくは動物蛋白質に通常由来する天然蛋白質などの高分子量の薬剤、およびジイソシアネートなどの低分子量の化学物質、および一部の繊維製品中に見られる他の物質を挙げることができる。職場に存在し得る他の化学アレルゲンとしては、例えば、無水物、抗生物質、木材粉塵および染料を挙げることができる。植物ゴム、酵素、動物蛋白質、昆虫、植物蛋白質、マメを含む多数の蛋白質が、職業性アレルゲンであり得る。
【0130】
ORP水溶液によって処理され得る更なるアレルゲンは、Korenblat and Wedner, Allergy Theory and Practice (1992)およびMiddleton, Jr., Allergy Principles and Practice (1993)に記載されている。
【0131】
ORP水溶液は、殺菌および消毒するために、任意の好適な方法で塗布され得る。例えば、医療用または歯科用機器を殺菌および消毒するために、その機器は、十分な時間の間ORP水溶液との接触を維持されて、機器上に存在する生物のレベルを所望のレベルまで減少させ得る。
【0132】
硬表面の殺菌および消毒のために、ORP水溶液は、ORP水溶液が保存されている容器から直接硬表面へ塗布され得る。例えば、ORP水溶液は、硬表面へ、注がれるか、スプレーされるか、または他の方法で直接塗布され得る。ORP水溶液はその後、例えば、布、織物またはペーパータオルなどの好適な素地を用いて硬表面上に広げられ得る。病院での適用においては、素地は好ましくは無菌である。あるいは、ORP水溶液は、最初に、布、織物またはペーパータオルなどの素地に塗布され得る。湿った素地はその後、硬表面と接触され得る。あるいは、ORP水溶液は、本明細書に記載したようにして、空気中に溶液を分散させることによって硬表面に塗布され得る。ORP水溶液は、同様の方法でヒトおよび動物へ塗布され得る。
【0133】
ORP水溶液はまた、水不溶性素地および本明細書に記載されたようなORP水溶液を含むクリーニングワイプを用いて塗布され得、ここでORP水溶液は該素地に分注されている。ORP水溶液は、素地に浸み込まされるか、コートされるか、覆われるか、または他の方法で塗布され得る。好ましくは、素地は、クリーニングワイプのエンドユーザーへの配給前にORP水溶液で前処理される。
【0134】
クリーニングワイプ用の素地は、任意の好適な水不溶性の吸収素材または吸着素材であり得る。多種の素材が素地として使用され得る。それは、十分な湿潤強度、磨耗性、厚み(loft)および多孔性を有しているべきである。更に、素地は、ORP水溶液の安定性に悪影響を与えてはならない。例としては、不織素地、織素地、ハイドロエンタングル素地およびスポンジが挙げられる。
【0135】
素地は1以上の層を有してもよい。各層は、同一または異なる構成および磨耗性を有してもよい。異なる構成は、異なる組み合わせの素材の使用、または異なる製造プロセスの使用、あるいはそれらの組み合わせから生じ得る。素地は、水中で分解または分裂してはならない。素地は、処理される表面にORP水溶液を送達するための媒体をそれにより提供し得る。
【0136】
素地は、単一の不織シートまたは複数の不織シートであり得る。不織シートは、木材パルプ、合成繊維、天然繊維およびそれらの混合物から製造され得る。素地に使用するために好適な合成繊維としては、限定されないが、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、他のセルロースポリマー、およびそのような繊維の混合物を挙げることができる。不織物としては、メルトブローン、コフォーム(coform)、エアレイド、スパンボンド、ウェットレイド、ボンデッド−カーデッド(bonded-carded)織物素材、ハイドロエンタングル(スパンレースとしても知られる)素材、およびそれらの組み合わせを含む、不織繊維シート素材を挙げることができる。これらの素材は、合成もしくは天然繊維またはそれらの組み合わせを含み得る。結合剤が素地中に任意で存在し得る。
【0137】
好適な不織の水不溶性素地の例としては、Little Rapids Corporationから入手できるセルロース100%のWadding Grade 1804、American Non−wovens Corporationから入手できるポリプロピレン100%のニードルパンチ素材NB701−2.8−W/R、Ahlstrom Fibre Compositesから入手できるセルロース繊維と合成繊維との混合のHydraspun 8579、PGI Nonwovens Polymer Corpから入手できる70%ビスコース/30%PESのCode 9881が挙げられる。クリーニングワイプに使用するのに好適な不織素地の更なる例は、米国特許第4,781,974号、同第4,615,937号、同第4,666,621号および同第5,908,707号、ならびに国際特許出願公開WO98/03713号、同WO97/40814号および同WO96/14835号(これらは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0138】
素地は、綿繊維、綿/ナイロンのブレンド、または他の繊維製品のような織素材から製造されてもよい。スポンジを製造するのに使用される再生セルロース、ポリウレタンフォームなどもまた使用に好適であり得る。
【0139】
素地の液体負荷容量は、その乾燥重量の少なくとも約50%〜1000%、最も好ましくは少なくとも約200%〜800%であるべきである。これは、素地の重量の1/2倍から10倍の負荷として表される。素地の重量は、非限定的に、1平方メートル当り約0.01から約1,000グラムまで、最も好ましくは25から120グラム/mまで変化し(「基本重量」という)、適当な形状および寸法に切られるか、打ち抜かれるか、または他の方法で寸法化されたシートまたは織物として通常製造される。クリーニングワイプは、非限定的に、好ましくは約25から約250ニュートン/m、より好ましくは約75〜170ニュートン/mである、特定の湿潤引っ張り強さを持つ。
【0140】
ORP水溶液は、任意の好適な方法によって、素地に分配されるか、浸み込まされるか、コートされるか、覆われるか、または他の方法で塗布され得る。例えば、素地の個々の部分は、個別の量のORP水溶液で処理され得る。好ましくは、ORP水溶液による素地素材の連続織物の一括処理が行われる。素地素材の織物全体がORP水溶液に浸されてもよい。あるいは、素地織物が巻かれるとき、または不織素地の作製中であっても、ORP水溶液は織物上にスプレーまたは定量され得る。多量の個別に切断および寸法化された素地の部分は、製造業者によって、容器内でORP水溶液を染み込まされるかまたはコートされ得る。
【0141】
クリーニングワイプは、ワイプの特性を向上させるために、任意で更なる成分を含んでもよい。例えば、クリーニングワイプは、ワイプの特性を向上させるために、ポリマー、界面活性剤、多糖類、ポリカルボキシレート、ポリビニルアルコール、溶媒、キレート剤、緩衝液、増粘剤、染料、着色剤、香料およびそれらの混合物を更に含んでもよい。これらの任意成分は、ORP水溶液の安定性に悪影響を与えてはならない。クリーニングワイプに任意で含まれ得る様々な成分の例は、米国特許第6,340,663号、同第6,649,584号および同第6,624,135号(これらは、参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0142】
クリーニングワイプは、ヒートシール可能または接着可能な熱可塑性オーバーラップ(ポリエチレン、マイラー(Mylar)など)で個別シールされ得る。ワイプは、より経済的な分配のために、多数の個別シートとしても包装され得る。クリーニングワイプは、まず素地の複数のシートをディスペンサー中に置き、それから素地シートを本発明に従って投与されるORP水溶液と接触させることによって調製され得る。あるいは、クリーニングワイプは、製造プロセス中にORP水溶液を素地に塗布し、それから湿った素地をディスペンサー中に装填することによって、連続織物として形成され得る。
【0143】
ディスペンサーとしては、これらに限定されないが、ふた付きのキャニスター、またはふた付きのタブが挙げられる。ディスペンサーのふたは、湿ったワイプを外部環境から密封し、かつ液体成分の早すぎる揮発を防止するために使用され得る。
【0144】
ディスペンサーは、素地とORP水溶液との両方に適合性のある任意の好適な素材から製造され得る。例えば、ディスペンサーは、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)または他の硬質プラスチックなどのプラスチックから製造され得る。
【0145】
ワイプの連続織物は、ディスペンサーの最上部の細い開口部、最も好ましくはふたを通り抜け得る。その結果、織物から所望の長さまたは寸法のワイプを寸法化する手段が望ましいものとなり得る。非限定的な例として、ナイフの刃、鋸歯状の縁、または所望の寸法に織物を切断する他の手段を、ディスペンサーの最上部に備えることが出来て、切断縁としての細い開口部の役目を現実的に倍加する。あるいは、ワイプの連続織物は、均一または不均一な寸法または長さに、切り込み線を入れられるか、折り畳まれるか、分割されるか、ミシン目を入れられるか、または部分的に切断されても良く、ひいては鋭い切断縁の必要性を取り除く。更に、1枚のワイプの取り出しが次のワイプを推進するよう、ワイプは交互配置されてもよい。
【0146】
あるいは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、空気などの気体状の媒体を通じて環境中に分散され得る。ORP水溶液は、任意の好適な手段で空気中に分散され得る。例えば、ORP水溶液は、任意の好適な寸法の液滴に形成され、室内に分散され得る。
【0147】
小規模用途のために、ORP水溶液は、スタンドパイプおよびポンプを含むスプレーボトルを通じて分配され得る。あるいは、ORP水溶液は、エアロゾル容器中に詰められ得る。エアロゾル容器は、分配される製品、推進剤、容器およびバルブを含み得る。バルブは、アクチュエータおよび浸漬チューブの両方を含み得る。容器の内容物は、アクチュエータを下に押すことによって分配され得る。エアロゾル容器の種々の成分は、ORP水溶液と適合性があるべきである。好適な推進剤としては、液化ハロカーボン、炭化水素、またはハロカーボン−炭化水素混合、あるいは二酸化炭素、窒素または亜酸化窒素などの圧縮気体を挙げることができる。エアロゾルシステムは、好ましくは、寸法が約0.15μmから約5μmに及ぶ液滴を与える。
【0148】
一部の用途のために、ORP水溶液は、漂白剤を任意で含有し得る。漂白剤としては、例えば、素地を明るくするかまたは白くする任意の好適な化合物を挙げることができる。漂白剤を含有するORP水溶液は、衣類を明るくすると共に、細菌および病原菌を殺菌および消毒するために家庭での洗濯に用いられ得る。好適な漂白剤としては、これらに限定されないが、塩素含有漂白剤、および場合により過酸化物含有漂白剤が挙げられる。漂白剤の混合物もまた、ORP水溶液に加えられ得る。好ましくは、漂白剤は、水溶液の形態でORP水溶液に加えられる。
【0149】
好適な塩素含有漂白剤としては、例えば、塩素、次亜塩素酸塩、N−クロロ化合物、および場合により二酸化塩素を挙げることができる。好ましくは、ORP水溶液に加えられる塩素含有漂白剤は、次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸である。他の好適な塩素含有漂白剤としては、例えば、塩素、次亜塩素酸カルシウム、漂白液(例えば、次亜塩素酸カルシウムおよび塩化カルシウムとの水溶液)、漂白粉(例えば、次亜塩素酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、およびそれらの水和物の混合物)、二塩基性次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸リチウム、塩素化リン酸三ナトリウム、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0150】
ORP水溶液への漂白剤の添加は、任意の好適な方法で行われ得る。好ましくは、漂白剤を含有する水溶液が最初に調製される。漂白剤を含有する水溶液は、家庭用漂白剤(例えば、Clorox(登録商標)漂白剤)、または塩素含有漂白剤もしくは他の漂白剤のその他の好適な供給源を用いて調製され得る。漂白剤の溶液は、その後、ORP水溶液と混合され得る。
【0151】
漂白剤は、任意の好適な量でORP水溶液に加えられ得る。好ましくは、漂白剤を含有するORP水溶液は、ヒトまたは動物の皮膚に対して非刺激性である。好ましくは、塩素含有漂白剤を含有するORP水溶液の塩化物イオン総含有量は、約1000ppmから約5000ppmであり、好ましくは約1000ppmから約3000ppmである。塩素含有漂白剤を含有するORP水溶液のpHは、好ましくは約8から約10であり、酸化還元電位は、好ましくは約+700mVから約+800mVである。
【0152】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、当然ながら、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0153】
実施例1〜3
これらの実施例は、本発明に従って用いられるORP水溶液の独自の特徴を示している。実施例1〜3のORP水溶液のサンプルを、本明細書に記載の方法に基づいて分析し、各サンプルに存在するイオン種および他の化学種の物理的特性およびレベルを決定した。二酸化塩素、オゾンおよび過酸化水素について得られた結果は、そのような種を測定するために用いられる標準試験に基づいているが、これらの結果は、肯定的な試験結果を生じることもあり得る様々な種を示すものであり得る。さらに、二酸化塩素、オゾンおよび過酸化水素が次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応し、これらの消費および他の化合物(例、HClおよびO)の生成をもたらすことが報告されている。ORP水溶液の各サンプルについて、pH、酸化還元電位(ORP)および存在するイオン種を表1に示す。
【0154】
【表1】

【0155】
ORP水溶液は、例えば、殺菌、滅菌、クリーニング、ならびに/あるいは炎症、副鼻腔炎、腹膜炎または感染症の予防および/または治療における使用に好適な物理的特徴を有する。
【0156】
実施例4〜10
これらの実施例は、本発明に従う、ORP水溶液への種々の量での漂白剤の添加について示している。特に、これらの実施例は、組成物の抗菌活性および織物を漂白する能力を示している。
【0157】
[0185] 蒸留水を用いて10%Clorox(登録商標)漂白溶液を調製した。次いで、10%漂白溶液を用いて以下の溶液を調製した:80%ORP水溶液/20%漂白剤(実施例4);60%ORP水溶液/40%漂白剤(実施例5);40%ORP水溶液/60%漂白剤(実施例6);20%ORP水溶液/80%漂白剤(実施例7);および0%ORP水溶液/100%漂白剤(実施例8)。100%ORP水溶液/0%漂白剤(実施例9)、および0.01%Tween20界面活性剤を含むORP水溶液(実施例10)を含む2つの対照溶液も比較のために使用した。これらのサンプルの物理的特徴、特にpH、酸化還元電位(ORP)、塩素(Cl−)総含有量、および次亜塩素酸(HClO)含有量を決定し、二酸化塩素含有量および過酸化物含有量を分析した。その結果を表2に示す。
【0158】
【表2】

【0159】
漂白剤の一部として加えた多量の塩素イオンは、n.d.記号で示したとおり、二酸化塩素および過酸化物のレベルの正確な測定を妨げた。また、二酸化塩素および過酸化物について得られた結果は、そのような種を測定するために用いられる標準試験に基づいているが、これらの結果は肯定的な試験結果を生じることもあり得る様々な種を示すものであり得る。さらに、二酸化塩素、オゾンおよび過酸化水素が次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応し、これらの消費および他の化合物(例、HClおよびO)の生成をもたらすことが報告されている。これらの実施例が示すように、漂白剤の添加の有り無しでORP水溶液の次亜塩素酸レベルは同様である。
【0160】
実施例4〜10のサンプルを、バチルス・スブチリス変種ニガー(Bacillus subtilis var. niger)胞子(SPS Medical of Rush,New Yorkから入手したATCC #9372)を用いる高胞子カウント試験に供した。胞子懸濁液を、(無菌フード中での蒸発によって)100マイクロリットルあたり4×10胞子まで濃縮した。胞子懸濁液のサンプル100マイクロリットルを、実施例4〜10における各サンプル900マイクロリットルと混合した。表3に示すように、サンプルを1から5分間室温で培養した。示した時間に、100マイクロリットルの培養サンプルを個々のTSAプレート上にプレートし、35℃±2℃で24時間培養後、各プレート上に生じたコロニーの数を測定した。対照プレートは、開始時の胞子濃度が>1×10胞子/100マイクロリットルであることを示していた。種々のサンプルについての種々の培養時間でのバチルス胞子の濃度(2回測定の平均として)を表3に示す。
【0161】
【表3】

【0162】
これらの結果が示すように、2〜3分間培養したサンプルについて、漂白剤(10%の漂白剤水溶液として)の濃度が上昇するにつれて、殺菌されたバチルス胞子の量は減少した。しかし、5分間培養したサンプルについては、漂白剤の濃度は、バチルス胞子の殺菌に影響しない。さらに、この結果は、ORP水溶液への0.01%界面活性剤の添加が胞子の殺菌を減少させないことを示している。
【0163】
実施例4〜10のサンプルを織物の漂白試験に供した。サンプルを試験した織物は、紺色の染みの斑点の付いた100%レーヨンの子供用Tシャツであった。染みの付いた織物の2インチ四方の切れ端を、50mLプラスチックチューブ中に入れた。織物の各切れ端を、実施例4〜10の溶液のサンプルで覆った。完全な漂白が得られるまでの経過時間(織物の白色化によって決定した)を表4に示す。
【0164】
【表4】

【0165】
これらの実施例が示すように、組成物中のORP水溶液の濃度が上昇するにつれて、完全な漂白が達成されるまでの時間が増加する。
【0166】
実施例11
本研究の目的は、ウサギの鼻腔に滴として投与した場合の、被験(test)である例示的なORP水溶液であるMicrocynの安全性を評価することであった。33匹のウサギを、群Iおよび群IIの2つの群に無作為に割り当てた。群I(18匹)を対照群とし、群II(15匹)には被験物質を投与した。−1日目または0日目に、体重を記録し、選択したパラメーターの分析のために血液サンプルを集めた。0日目に、群Iの動物に500μLの無菌食塩水を投与し、群nのアニュアル(annual)に500μLの被験物質(50%濃度)を投与した。対照および被験物質は共に、右鼻孔に滴として1日2回投与した。1日目〜6日目に同じ方法で動物に投与した。鼻に特に注意を払って、薬理的および/または毒性効果の兆候について、動物を毎日観察した。研究が終わるまで体重を毎週記録した。7日目に各群の3分の1の動物を、採血、屠殺および剖検のために選抜した。残りの動物には14日目まで投与を継続し、14日目に各群の半分の動物を、採血、屠殺および剖検のために選抜した。21日目(7日の回復期間後)に、残りの動物を採血し、屠殺し、剖検した。両鼻孔由来の鼻粘膜サンプルを、病理組織学的分析のために各動物から採取した。
【0167】
剖検は、気道の巨視的観察から構成されていた。鼻道全体および関連する骨を採取し、緩衝ホルマリン中に固定した。気道において何らかの異常が見られるサンプルもまた、組織病理診断(histopathology)のために採取した。3つの生検サンプル(前部、中部および後部鼻孔)を鼻孔ごとに(処理した右側および非処理の左側)検査した。鼻粘膜の顕微鏡的組織病理診断としては:上皮の完全性、上皮繊毛の有無、炎症性細胞浸潤、浮腫、杯細胞の存在、腺の肥大、血管の数または特徴の変化、および任意の他の変化または観察を含んでいた。
【0168】
試験群からの結果(鼻の観察を含む生存中の観察、体重、血液分析、巨視的剖検、および組織病理診断の結果)を対照群と比較した。低刺激性の刺激に関して、試験群は、食塩水で処理した動物と有意な差はなかった。
【0169】
実施例12
本実施例は、咽頭炎の治療に対する例示的なORP水溶液の有効性を決定するために使用できる臨床研究を示している。
【0170】
本研究で使用される一つのそのようなORP水溶液は、消毒剤として最近メキシコ市場に導入された「Microcyn 60」として知られている。Microcyn 60は、メキシコ保健事務局(the Secretariat of Health of Mexico)から得た認可に従う、殺菌、滅菌および創傷消毒活性を有する中性pHの超酸化溶液である。Microcyn 60は、純水および塩(NaCl)から調製され、低濃度のナトリウム(<55ppm)および塩素(<80ppm)、7.2から7.8の範囲内のpH、および840mVから960mVの範囲内の酸化還元電位を有する。Microcyn 60は、一つの濃度でのみ製造され、活性化または希釈される必要がない。
【0171】
この溶液は、逆浸透によって得られる水(これは、次いで、高電圧および塩化ナトリウムによって生み出される電気化学勾配に供せられる)から製造される。この方法において、電気化学勾配が生み出される複数のチャンバーで形成される反応種が制御された方法で選択され、Microcyn 60を作り出す。その結果は、高い酸化還元電位(+840mVから+960mV)およびその結果として高い抗菌活性を与える制御されたフリーラジカル含有量を有する溶液である。
【0172】
次亜塩素酸および次亜塩素酸ナトリウムは、Microcyn 60に含まれる最も豊富な成分であり、例えばとりわけ塩化物イオンなどの他のものは微量濃度であると考えられている。出願人は特定の理論に縛られることを望んでいないが、殺菌効果は必ずしも塩素の量のみに依存しているのではなく、酸素の活性種および/または酸素あるいは1種以上のそれらの前駆体にも依存し得ると考えられる。また、文献で報告されている他の超酸化溶液とは対照的に、Microcyn 60は、中性のpH(6.4〜7.8)を有し、腐食性ではなく、2年までの保存中安定である。これらの全ての特徴は、高水準の殺菌剤として有効であって、かつ無生物表面上および生物表面(例えば、組織)上の両方での使用に適合性のある超酸化溶液の製造を可能にした。
【0173】
Microcyn 60が、2年の間その殺菌活性を失うこと無く、4℃から65℃という広く変動する温度条件で保存できることを加速安定性試験は示した。Microcyn 60は、その抗菌活性を失うこと無く、比較的厳しい条件下でさえ保存および分配することができる。対照的に、従来の溶液は、安定性がないため、意図する目的のための溶液を使用するためには、使用される場所(例えば、病院)またはその付近で、特殊かつコストのかかる設備で製造される必要があった。
【0174】
Microcyn 60は、一つの濃度でのみ製造されるため、Microcyn 60の用量は、皮膚の単位面積あたりに塗布される容量の変化によってのみ変化し得る。毒物学的研究では、無傷の皮膚に局所的に塗布されるMicrocyn 60の用量は、約0.05から約0.07mL/cmまで変化し;急性皮膚毒性の研究および皮膚刺激の調査では、Microcyn 60は、最大8.0mL/cmの用量で塗布され得、そして深い創傷におけるその塗布を調査したものでは、Microcyn 60は、約0.09mL/cmの用量で塗布された。
【0175】
4から24時間の曝露での単回塗布を使用してMicrocyn 60を無傷の皮膚に局所的に塗布する毒物学的研究を行った。1日に1回または2回、7日間のMicrocyn 60の複数回塗布をラットの深い創傷について評価した。
【0176】
ウサギの無傷の皮膚で2つの研究を行い、急性刺激および皮膚毒性に関するMicrocyn 60の効果を評価した。Microcyn 60に曝露した動物のいずれにおいても、剖検時の皮膚における臨床的兆候、皮膚刺激または異常は見られなかった。
【0177】
深い創傷に局所的に塗布したMicrocyn60からの局所的および全身の毒性の特徴をラットで評価した。異常も、血液化学または血液細胞学のパラメーターにおける有意な差異も観察されず、剖検での異常性も観察されなかった。皮膚刺激のグレード付け、ならびに創傷および塗布した箇所の周辺組織の組織病理診断は、Microcyn60で処理した創傷と食塩水溶液で処理した対照群の創傷とでいかなる差異も示さなかった。
【0178】
Microcyn 60の全身毒性も、マウスにおける腹腔内注射により評価した。このために、単回用量(50mL/kg)のMicrocyn 60を腹腔内経路で5匹のマウスに注射した。同様にして、単回用量(50mL/kg)の食塩水溶液(0.9%塩化ナトリウム)を5匹の対照マウスに注射した。この調査では、単回腹腔内用量のMicrocyn 60を受けたいずれの動物においても、死亡も全身毒性のいかなる証拠も観察されず、LD50は50mL/kgを上回ることが示された。
【0179】
Microcyn60を経口経路でラットに投与して吸収させ、製品のあらゆる内在性の毒性効果を特徴付けた。本研究において、単回用量(4.98mL/kg)を食道管経路で3匹のSprague−Dawley系のアルビノラットに投与した。死亡も無く、単回経口用量のMicrocyn 60に曝露されたいずれの動物の剖検においても、臨床的症状も異常も無かった。
【0180】
局所的に塗布したMicrocyn 60の眼球刺激に対する可能性についても、ウサギで評価した。眼球経路での局所投与によりMicrocyn 60に曝露されたいずれの動物においても、眼球刺激も他のいかなる臨床的症状も観察されなかった。
【0181】
Microcyn 60を吸入経路でラットに適用し、吸入による潜在的な急性毒性を決定した。全ての動物が、曝露後の活動性および立毛において、非常にわずかまたはわずかな減少を示したが、それらは翌日には全て無症候性であった。吸入によりMicrocyn 60に曝露された動物の剖検では、死亡も異常も観察されなかった。
【0182】
Microcyn 60による皮膚の感作の可能性の評価を、改良した閉塞パッチ法(Buehler)を用いてモルモットで行った。簡易処理のチャレンジ後の対照群の動物においても、当該処理でのチャレンジ後の評価(誘導によって処理)した動物においても、刺激は観察されなかった。これらの研究はMicrocyn 60が感作反応を引き起こさないことを示している。
【0183】
このようにして、経口および吸入経路、または腹腔内注射によって、無傷の皮膚、深く開いた皮膚の創傷、結膜嚢内に適用されたとき、Microcyn 60は製品と関連する副作用を示していない。また、優れた消毒および美容の結果で、皮膚および粘膜における非常に多様な性質の創傷を有する500人を超える患者を治療した経験もある。従って、局所的に塗布されたMicrocyn 60は、この臨床試験において、有効かつ耐容性良好のはずである。
【0184】
Microcyn 60は、透明な240mLの密閉されたPETボトルに詰められる。この製品は環境温度で保存され、そのようなボトル中で2年間まで安定なままである。Microcyn 60は、その高い生物学的安全性の特性より、汚染または腐食の危険性無しで、例えば流しへ出して、安全に処分され得る。
【0185】
合衆国およびメキシコの両方において、Microcyn 60を用いた複数の微生物試験が行われてきた。曝露の最初の数秒で90%を上回る細菌の根絶が起こる。この基準に従ってMicrocyn 60が示す抗菌活性および抗真菌活性を表5に要約する。
【0186】
【表5】

【0187】
殺胞子活性試験をPAHO[汎米保健機構]/WHOプロトコルに従って行った。
【0188】
Microcyn60の殺ウイルス活性は、HIVおよびポリオウイルスに対して合衆国で行われた研究で最近確認され、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、MRSAおよびマイコバクテリウム・ツベルクロシスに対する活性もまた実証されている。このように、Microcyn 60は、推奨されるように投与されるとき、1分から15分の曝露で、細菌、真菌、ウイルスおよび胞子を根絶できることが示されている。
【0189】
この臨床試験においては、A群β溶血性ストレプトコッカスによって引き起こされた急性咽頭炎/扁桃炎を有し、かつ治療を受けていない患者40人を採用する。包含基準は以下の通りである:年齢12歳から40歳かつ2つ以上の下記症状:口腔咽頭の灼熱感;嚥下痛;咽頭紅斑または扁桃腺の紅斑(浸出液有りまたは無し);頸部リンパ節腫脹;およびA群ストレプトコッカス抗原(StrepA試験−Abbott Labs)について陽性の免疫アッセイ。除外基準は以下の通りである:>38℃の熱;気管支痙攣(クリニックにより除外);重度の咳;副鼻腔炎−鼻炎(クリニックにより除外);食道逆流(クリニックにより除外);本試験前の2週間内における抗生物質の使用;最近8週間で別の臨床試験に参加した患者;リウマチ熱;ストレプトコッカス感染後糸球体腎炎;重度の慢性心臓病;重度の腎、肝または肺不全;および妊娠または授乳。
【0190】
本試験の開始時点で、患者はパラセタモールおよびアセチルサリチル酸を含む解熱剤や鎮痛剤のような併用薬を使用し得るが、イブプロフェン、メスリド、COX−2阻害剤またはステロイドなどの抗炎症剤は使用し得ない。患者が任意の具体的な試験の手順を受ける前に、書面によるインフォームド・コンセントを得なければならない。
【0191】
患者は3回の来診で評価される。1回目の来診では、患者は臨床的に急性咽頭炎/扁桃炎を示し、病歴がとられ、医学検査、ストレプトコッカスについての簡易免疫アッセイ、および咽頭滲出物の採取が行われる。適格であるとの告知後、およびインフォームド・コンセントの書類にサインした後、患者は、それぞれ30秒で5mLのMicrocyn 60での2回の口腔咽頭の洗浄を処方される。それらのリンスは、3日間、3時間ごとに1日合計4回行われる。
【0192】
2回目は、Microcyn 60での処置の72時間後になされる。2回目の来診では、臨床的進展およびMicrocyn60の副作用が評価される。新たな咽頭滲出物が採取され、臨床的進展に従って、続く治療が抗生物質を用いるものであるのか、あるいは苦痛緩和剤を用いるものであるのかが決定される。3回目の来診が10日後にされて、患者は解放される。
【0193】
本試験において適格であり臨床的に評価されるためには、各患者は、培養によって確認されるA β溶血性連鎖球菌咽頭炎/扁桃炎を示していなければならない。全ての患者は、それぞれ30秒で5mLのMicrocyn 60での18回のすすぎ、または72時間の間に最大24回のすすぎを遵守しなければならない。
【0194】
有効性の第1パラメーターは、Microcyn 60投与後に採取された培養物と比較しての、初期培養物の細菌負荷における3桁の減少である。この細菌学的評価は、Microcyn 60での処置の72時間後に実現される。有効性の第2パラメーターは、咽頭痛および嚥下障害の減少に特に重きが置かれた、臨床的に報告される改善である。臨床症状は、来診1、2および3で報告される。
【0195】
耐容性は、有害事象の報告によって評価される。有害事象は、治療の過程で現れる、該消毒剤に関連するまたは関連しない、Microcyn 60での治療を受ける患者の任意の症候的な申告として定義される。
【0196】
細菌学的有効性の結果(有効性の主要基準)は、臨床症状とは関係なく細菌学者によって発表される。A群ストレプトコッカス抗原についての試験および咽頭滲出物の初期培養は、Microcyn 60の投与前に、「評価のスケジュール」に従って、1回目の来診(来診1)において行われる。咽頭滲出物の2回目の採取および培養は、Microcyn 60の投与から72時間後に行われる(来診2)。アンチバイオグラムが全ての培養物に対してなされ、標準拡散ディスク試験によって、ペニシリン、エリスロマイシン、クラリスロマイシンおよびリンコマイシンに対する細菌耐性を決定する。細菌学的有効性は、初期培養物と、Microcyn 60の投与から72時間後に採取した培養物との間の細菌数の3桁の減少として定義される。
【0197】
細菌学的失敗は、処置後72時間での培養物中の細菌数の3桁未満の減少によって示される。不確かな応答は、サンプルの搬送が48時間を超えて遅延されたケース、スワブが搬送培地中に含浸されなかったケース、またはサンプルが失われたケースで記録される。これらのケースは、本試験の分析外であり、40人の適格患者のケースが完了するまで、新たなケースによって置き換えられる。
【0198】
患者がMicrocyn 60の投与を終了するとき、そして2回目の来診から、追跡および報告段階が始まる。この評価では、臨床的進展およびあり得る副作用の存在に従って、患者は以下のように分類される:
【0199】
初期兆候および症状がなくならなかった場合、または全身症状を伴う全般的な状態の悪化がある場合、治療上の失敗。これらの場合、プロカインペニシリン、クラリスロマイシンまたはアジスロマイシンなどの経口抗生物質が、治療する医師が指示する用量および回数で処方され、1週間のうちに評価される。
【0200】
来診1で存在した症状および徴候がなくなった場合、臨床上治癒。急性プロセスが解消されるこれらの場合、患者は解放され、臨床的に治癒したと報告される。いずれの場合にも、患者は、3回目の検査来診のために、1週間のうちに戻るように求められる。
【0201】
不確かな進展。何らかのもっともな理由(例えば、重感染)のために臨床的に評価することができなかった任意の患者の進展、または評価が非常に遅く、72時間よりも後になされた場合。これらの場合、72時間での咽頭滲出物および培養物の結果を記録することが可能ならば、患者はまだ、本試験の分析に含めることができる。
【0202】
本臨床試験で使用する統計的分析は、72時間の期間中に、それぞれ30秒のMicrocyn 60での少なくとも18回のすすぎを受けた全ての患者を考慮に入れる。これと同じ基準が、耐容性の分析において任意の患者を含めるために考慮される。有効性の分析についての主要な基準は、Microcyn 60での治療後72時間で行われる、培養物におけるβ溶血性ストレプトコッカスの細菌数の3桁の減少である。統計的分析は、Wilcoxonペアサンプル試験によって実現される。定量的変数についてのANOVA試験を用いて、臨床的変数の統計的分析は実現される。評価可能な最小の患者数は30人である。
【0203】
有害事象は、医薬製品が投与される臨床研究の患者または対象における任意の不利な医学的出来事であり、必ずしもその医薬との因果関係を有するわけではない。従って、有害事象は、医薬製品の使用と一時的に関連した、任意の好ましくなくかつ意図しない兆候(異常な検査所見を含む)、症状または疾患であり得る(それが、この使用に関連していると考えられようが、そうでなかろうが)。試験の間に悪化する、以前から存在している状態は、有害事象として報告される。
【0204】
強度が中程度から重度である有害事象の場合、治療は、72時間の継続期間の任意の時点で中止される。その後の治療は、治療する医師によって決定される。このようにして、本実施例に基づいて、副鼻腔炎の治療に対する本発明のORP水溶液の有効性が示される。
【0205】
実施例13
本実施例は、アデノウイルス血清型5に対する例示的なORP水溶液の殺ウイルス活性を示している。本実施例では、E1a、部分的にE1−b、および部分的にE3欠損であるヒトアデノウイルス5型に基づいたアデノウイルス(Ad)ベクターを用いた。pCMVの転写調節下の緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーター遺伝子を含むシャトルプラスミドを調製した(pAd−Track)。このpShuttleプラスミドとAdEasy1プラスミドとの相同的組み換えをエレクトロコンピテント細菌内で行った。挿入を有するクローンを、制限エンドヌクレアーゼ消化により試験した。確認されたら、大規模な増幅のために、超らせんプラスミドDMAをDH10B細胞に形質転換した。続いて、293細胞(ATCC 1573)を無血清培地(OptiMEM(登録商標)−GIBCO)で培養し、Padで消化した組み換えプラスミドでトランスフェクトした。細胞変性効果について感染細胞をモニターし、それらを収集し、凍結解凍を3サイクルして溶解した。得られたウイルス(AdGFP)を製造者の使用説明書に従ってAdenoPureカラム(BD Clontech)で精製した。ウイルスをOD260/280で定量した。最終収量は1.52X1011pfu/mLであった。
【0206】
緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードしているアデノウイルス(AdGFP)の不活性化に対するORP水溶液の効果を、蛍光活性化フローサイトメトリーを用いて、対照AdGFPウイルスまたはORP水溶液処理したAdGFPのいずれかを感染させたHeLa細胞由来の蛍光発光の検出に基づく試験を用いて評価した。HeLa細胞の感染は常に7.5X10pfu/mL(即ち150m.o.i.)で行った。試験条件において、細胞は光学顕微鏡下では正常に見えた。対照HeLa細胞において測定されたバックグラウンド蛍光は0.06%であった。対照AdGFPによる感染後、HeLa細胞の88.51%がGFPを発現した。ORP水溶液に対する曝露後、アデノウイルスの感染性は曝露期間に反比例して減少した。従って、1、5および10分間ORP水溶液処理したウイルスは、HeLa細胞培養物のそれぞれ2.8%、0.13%、および0.09%においてのみGFPを発現し得た。全ての試験条件についての自己蛍光および初期ウイルス負荷(即ち7.5X10pfu)を考慮すると、対照AdGFP−HeLa群における感染力価は、6.6X10pfuであった。ウイルスがORP水溶液で処理されていた群において、ORP水溶液に対する1、5および10分間のウイルス曝露で、感染力価はそれぞれ2.0X10、5.2X10および2.2X10であった。従って、ORP水溶液に対する1、5および10分間のウイルス曝露で、ログ10減少係数は、1.5、3.1および3.5であった。総合すると、これらの結果は、ORP水溶液に対する5分間のウイルス曝露で、ウイルス負荷における>3のログ10減少を達成することを示している。
【0207】
実施例14
本実施例は、無生物の環境表面の殺菌に関する米国環境保護局のプロトコルを用いて、HIVに対する例示的なORP水溶液の殺ウイルスの有効性を示している。
【0208】
HIV−1のSF33株を本試験に用いた。健康なドナー由来の抹消血単核細胞をPHA(3μg/mL、Sigma)およびヒトIL−2(20U/mL、Roche)を用いてHUT培地中で3日間活性化した。細胞を洗浄し、SF33株を感染させた。4日目および6日目に上清を回収し、ELISA(Beckman Coulter)によってHIV−1 p24抗原に対して試験した。3000RPMで20分間室温にて上清を遠心して細胞およびデブリを除去した。上清を除去し、分注し、ウイルスを使用する日まで−80℃で保存した。
【0209】
凍結アリコートを、その使用直前に2分間37℃で解凍した。HUT培地中の段階的な対数希釈物(−1から−5)を用いた。ウイルスのフィルムを、0.2mlのウイルス接取材料を55cm無菌ポリスチレンペトリ皿の底面に均一に広げることで調製した。ウイルスフィルムを、視覚的に乾燥しているように見えるまで(20分間)、生物学的に安全なキャビネット内において室温(21℃)で風乾した。(ウイルス株(SF33)が複製および細胞変性効果を惹起し得ることを確実にするために、乾燥されることなくHUT培地中に残っていたウイルス懸濁液を用いて手順を繰り返した。)
【0210】
対照フィルムを2mlのHUT培地に5分間曝露した。次いで、このウイルスを擦り取り希釈した。別々の乾燥フィルムを各2mlのORP水溶液に5分間室温で曝露した。その曝露時間の後、プレートを擦り取り、これらの中身を再懸濁した。ウイルス−ORP水溶液混合液をすぐにHUT培地で希釈した(10:1)。この得られた懸濁液の段階的な対数希釈物を感染性についてアッセイした。(ORP水溶液のMT−2細胞への起こり得る直接的な細胞毒性効果を制御するために、ORP水溶液の2mlアリコートを培地内で段階的に希釈し(10:1から10:5)、MT−2細胞培養物に接種した。)
【0211】
MT−2細胞株を、感染性アッセイにおける指標の細胞株として用いた。この株はHIV−1に感染した場合に合胞体形成からなる細胞変性効果を示す。4つのマイクロウェルに、試験(ORP水中で再構成)群および対照(対照培地で再構成)群由来の再構成ウイルス懸濁液の各希釈液を0.2ml接種した。感染していない細胞対照を試験培地のみと接種した。培養物を37℃および5%COでインキュベートした。
【0212】
細胞変性効果の有無について、また、ELISAによってp24−HIV−1抗原の存在について、培養物を2日ごとに定期的に記録した。対照HIV−1による実験的感染は、感染MT−2培養物における細胞変性効果および上清中へのAg p24タンパク質の放出に作用した。対照的に、ORP水溶液による5分間のHIV−1の処理は、両方のアッセイによってMT−2培養物において測定されたようにウイルス負荷における>3のログ減少係数を実現した。従って、これらの結果は、無生物表面におけるHIV−1の殺ウイルス活性に関するEPAの要件と適合する効果水準を示している。
【0213】
実施例15
本実施例は、過酸化水素(HP)に対する例示的なORP水溶液の、ヒト2倍体線維芽細胞(HDF)の生存率に対する影響を示している。この潜在的な毒性を試験するために、HDFをインビトロでORP水溶液および過酸化水素(HP)に曝露した。HPは真核細胞に対して毒性があることが知られており、アポトーシスおよびネクローシスを増加させ、細胞の生存率を減少させる。本実施例において、細胞の生存率、アポトーシスおよびネクローシスを、純粋なORP水溶液および880mMのHP(HPの消毒用途で採用される濃度)に5分および30分間曝露したHDFにおいて測定した。
【0214】
HDFの培養物を3つの異なる包皮から得、それらをこの試験の目的でプールし、一緒に凍結保存した。全ての実験について、2倍体細胞のみを用いた。細胞周期の解析において、DNAの2倍性を、少なくとも20000の全事象から集めたCV</=7%の単一G0−G1ピークおよび対応するG2/Mピークの存在として定義した。図4A−4Cは、曝露時間5分および30分をそれぞれ白棒および黒棒で表した結果を開示している。これらのパラメーターの同時解析を、同じ細胞集団内で、A)7−アミノアクチノマイシンD(7AAD);B)アネキシンV−FITC;およびC)ヨウ化プロピジウムを用いるフローサイトメトリーによって行った。図4A−4Cは、平均±SD(n=3)として表したパーセント値を開示している。
【0215】
細胞の生存率は、5分間のORP水溶液およびHPへの曝露後、それぞれ75%および55%であった(図4A)。曝露を30分間に延長した場合、細胞の生存率は、それぞれ60%および5%にまで更に低下した。両時間でのフローサイトメトリー解析において15%の細胞がヨウ化プロピジウムを取り込んだため(図4C)、明らかにORP水溶液はネクローシスによる細胞死を引き起こした。ORP水溶液処理した細胞の3%しかアネキシンV(アポトーシスのマーカー)を細胞表面に顕在化させなかったため(図4B)、アポトーシスはORP水溶液が細胞死を引き起こすメカニズムではなさそうである。このパーセンテージは、対照群において測定されたものと実質的に同様であった。一方、HPは、5分および30分の曝露後、処理した細胞の20%および75%でネクローシスを、15%および20%でアポトーシスをそれぞれ引き起こした。要するにこれらの結果は、(未希釈の)ORP水溶液はHDFに対して、消毒的な濃度のHPよりもはるかに毒性が低いことを示している。
【0216】
実施例16
本実施例は、HDFにおける酸化的DNA損傷およびDNA付加体8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)の形成への、過酸化水素(HP)と比較した例示的なORP水溶液の影響を示している。細胞内での8−OHdG付加体の生成は、DNAの特定の残基における酸化的損傷のマーカーであることが知られている。さらに、この付加体の高い細胞内レベルは、突然変異生成、発癌および細胞の老化と相関がある。
【0217】
図5は、30分間の対照処理、ORP水溶液処理およびHP処理後の、HDF由来のDNAサンプル中に存在する8−OHdG付加体のレベルを示している。曝露直後(T0、白棒)またはチャレンジ期間から3時間後(T3、黒棒)に、DNAを抽出した。DNAを消化し、8−OHdG付加体を、ELISAキットで製造者の使用説明書の通りに測定した。値は平均±SD(n=3)で示している(ng/mL)。ORP水溶液への30分間の曝露は、30分間のインキュベーション後の対照細胞と比較して、処理した細胞における付加体の形成を増加させなかった。一方、500μMのHPでの30分間の処理は、対照処理またはORP水溶液処理した細胞と比較して8−OHdG付加体の数を約25倍増加させた。
【0218】
ORP水溶液処理した細胞は、ORP水溶液への曝露後3時間の間、添加DMEM中に放置された場合、8−OHdG付加体のレベルを減少することが可能であった。同じ3時間の回復期間を与えたにも関わらず、HP処理した細胞はそれでもまだ、対照処理またはORP水溶液処理した細胞よりも約5倍多い付加体を示した。要するに、これらの結果は、ORP水溶液への急性曝露は有意なDNA酸化的損傷を引き起こさないことを示している。これらの結果はまた、ORP水溶液はインビトロまたはインビボでの突然変異形成または発癌を引き起こさないらしいことを示している。
【0219】
実施例17
本実施例は、HPと対比した、低濃度の例示的なORP水溶液への慢性曝露の、HDFへの影響を示している。慢性の酸化ストレスは、細胞の早期老化を引き起こすことが知られている。長期の酸化ストレスを模倣するために、20集団の倍増の間、初代HDF培養物を低濃度のORP水溶液(10%)またはHP(5μM)に慢性的に曝露した。SA−β−ガラクトシダーゼ酵素の発現および活性は、以前からインビボおよびインビトロでの老化プロセスと関連付けられてきた。本実施例においては、SA−β−ガラクトシダーゼ酵素の発現を、ORP水溶液またはHPに対するHDFの1ヵ月の継続的な曝露後に解析した。結果を図6に示す。酵素SA−β−ガラクトシダーゼの発現を、20の顕微鏡視野における青色の細胞の数をカウントすることにより解析した。(染色パターンの例については、パネルAを参照されたい。)パネルBは、SA−β−ガラクトシダーゼを過剰発現している細胞の数により示されるように(n=3)、HP処理のみが細胞の老化を加速させたことを示している。低用量のHPでの慢性的な処理は、86%の細胞においてSA−β−Galの発現を増加させたが、ORP水溶液での処理はこのタンパク質の過剰発現を引き起こさなかった。ORP水溶液は細胞の早期老化を引き起こすものではないということが本実施例より結論付けられ得る。
【0220】
実施例18
本実施例は、例示的なORP水溶液(Mycrocyn)の、肥満細胞の脱顆粒の阻害における有効性を示している。肥満細胞は、I型過敏性疾患において役割を果たす主要なものとして認識されてきた。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、およびアトピー性喘息において観察される複数の臨床症状は、異なる罹患組織にある肥満細胞のIgE抗原刺激によって引き起こされる。アトピー性喘息の発症機序について現在認められている見解は、アレルゲンが、IgE産生肺肥満細胞(MC)を誘発することによってプロセスを開始させて、いわゆる即時相反応においてヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、キニン、血小板活性化因子(PAF)などのメディエーターを放出させるということである。続いて、これらのメディエーターは、気管支収縮を引き起こし、血管透過性および粘液産生を亢進する。このモデルによれば、肥満細胞活性化に続いて、それらの細胞は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、IL−4、IL−5およびIL−6を含む様々なサイトカインを分泌し、それらが好酸球、抗塩基球、Tリンパ球、血小板および単核食細胞などの他の炎症性細胞の局所的動員および活性化に関与する。次に、これらの動員された細胞が、その後自律性となる可能性があり、また、喘息の症状を悪化させる可能性がある炎症反応の進行に寄与する。この遅延相反応は、周囲組織における可塑的な変化を誘導し得る長期の炎症プロセスを構成する(Kumar et al., pp. 193-268参照)。
【0221】
肥満細胞の抗原刺激は、IgEに対する高親和性の受容体(FcεRI受容体)の活性化を通じて起こり、ここで前記受容体は、IgEに結合し、その後、受容体結合IgEの特異抗原との相互作用によって集合し得る多量体タンパク質である。その構造は4つのポリペプチド(IgE結合α鎖、そのシグナル伝達能力を増幅する役目を果たすβ鎖、およびコードする免疫受容体チロシン(ITAM)活性化モチーフを通じた主要なシグナルトランスデューサーである、ジスルフィド結合した2つのγ鎖)を含む。この受容体の架橋結合により活性化されるシグナル伝達経路は、骨髄由来肥満細胞(BMMC)、ラット白血病細胞株RBL 2H3、マウスおよびラットの腹膜肥満細胞、およびMC−9のようなその他の肥満細胞株を用いて特徴付けられてきた。これら全てにおいて、IgEに結合した抗原の存在が、肥満細胞の脱顆粒、カルシウム動員、細胞骨格再構成およびサイトカイン産生を最終的にもたらすサイトカイン遺伝子の転写を活性化する様々な転写因子(NFAT、NFκB、AP−1、PU.1、SP1、Etsなど)の活性化を引き起こす。
【0222】
成熟したマウスの骨髄由来肥満細胞(BMMC)にモノクローナル抗ジニトロフェノールIgE(300ng/100万細胞)を37℃で4時間ロードした。培養培地を除去し、細胞を生理的緩衝液(Tyrode‘s Buffer/BSA)中に再懸濁した。次いで、細胞を異なる濃度の(Microcynでの実施形態における)ORP水溶液で15分間37℃で処理した。緩衝液を除去し、細胞を新たなTyrode’s/BSA中に再懸濁し、37℃で30分間インキュベートする間、様々な濃度の抗原(ジニトロフェノールに結合するヒトアルブミン)で刺激した。脱顆粒を、刺激された細胞の上清およびペレット中でのβ−ヘキソサミニダーゼの活性測定によって測定したが、それにはこの酵素が異なる糖質を加水分解する(hydrolize)能力に基づく比色分析反応を用いた。(β−ヘキソサミニダーゼは、肥満細胞中のヒスタミンを含有するのと同じ顆粒中にあることが示されている。)結果(図7)は、脱顆粒はORP水溶液の濃度が上昇するにつれて有意に減少することを示している。
【0223】
驚くべきことに、肥満細胞の脱顆粒に対するORP水溶液(Microcyn)の阻害効果は、臨床的に有効な「肥満細胞安定剤」であり、確立されている抗アレルギー性化合物であるクロモグリク酸ナトリウム(Intel(商標))で観察されたものと類似している。脱顆粒を、刺激された細胞のペレットおよび上清におけるβ−ヘキソサミニダーゼの酵素活性によって再度測定したが、それにはこの酵素が異なった糖質を加水分解する(hydrolize)能力に基づく比色分析反応を用いた。抗DNPモノクローナル(monocional)IgEをロードした細胞を、15分間の前培養有りまたは無しで、クロモグリク酸ナトリウム(Intel(商標))を用いて刺激した。クロモグリク酸塩は、脱顆粒の減少においてORP水溶液と同じ程度しか有効でなかった(図7を図8と比較されたい;どちらも少なくとも約50%の脱顆粒の減少を達成している)。
【0224】
実施例19
本実施例は、例示的なORP水溶液の、カルシウムイオノフォアによる肥満細胞の活性化に対する阻害活性を示している。
【0225】
肥満細胞は、カルシウムイオノフォアによって引き起こされるカルシウム流の活性化を通じて刺激され得る。カルシウムイオノフォアによって活性化されるシグナル伝達経路は、骨髄由来肥満細胞(BMMC)、ラット白血病細胞株RBL 2H3、マウスおよびラットの腹膜肥満細胞、並びにMC−9のようなその他の肥満細胞株を用いて特徴付けられてきた。これらの系の全てにおいて、カルシウム動員は、肥満細胞の脱顆粒(例、ヒスタミン放出)、細胞骨格再構成、およびサイトカインの産生および分泌を最終的にもたらすサイトカイン遺伝子の転写を活性化する様々な転写因子(例、NFAT、NFκB、AP−1、PU.1、SP1、Ets.)の活性化を引き起こす。
【0226】
成熟したマウスのBMMCにモノクローナル抗ジニトロフェノールIgE(300ng/100万細胞)を37℃で4時間ロードした。培養培地を除去し、細胞を生理的緩衝液(Tyrode‘s Buffer/BSA)中に再懸濁した。次いで、細胞を異なる濃度のORP水溶液(Microcyn)で15分間37℃で処理した。緩衝液を除去し、細胞を新たなTyrode’s/BSA中に再懸濁し、37℃で30分間インキュベートする間、カルシウムイオノフォア(100mM A23187)で刺激した。脱顆粒を、刺激された細胞の上清およびペレット中でのβ−ヘキソサミニダーゼの活性測定によって測定したが、それにはこの酵素が異なる糖質を加水分解する能力に基づく比色分析反応を用いた。(β−ヘキソサミニダーゼは、肥満細胞中のヒスタミンを含有するのと同じ顆粒中にあることが示されている。)結果(図9)は、脱顆粒はORP水溶液の濃度が上昇するにつれて有意に減少することを示している。
【0227】
これらの結果は、ORP水溶液がヒスタミン放出の非特異的な阻害剤であることを示唆している。従って、ORP水溶液(様々な濃度であっても)は、刺激物(例、抗原またはイオノフォア)に関係なく、肥満細胞の脱顆粒を阻害するであろう。いずれの理論によっても縛られることを望まないが、ORP水溶液は恐らく、原形質膜および/または細胞骨格のレベルで分泌経路系を改変する。ORP水溶液の作用機序は非特異的であると考えられているため、ORP水溶液は広範な臨床応用の可能性を有し得ると考えられる。
【0228】
実施例20
本実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のサイトカイン遺伝子の転写の活性化に対する影響を示している。
【0229】
図10Aおよび10Bは、実施例20に記載したようにして15分間様々な濃度のORP水溶液で処理し、さらに抗原によって刺激した肥満細胞由来のRNAaseプロテクションアッセイである。刺激後、アフィニティークロマトグラフィーカラム(RNAeasy kit,Qiagene)を用いてmRNAを抽出し、標準的なキット条件(Clontech,Becton & Dickinson)を用いてRNAseプロテクションアッセイを行い、抗原チャレンジ後の異なるサイトカインのmRNA産生を検出した。サイトカインとしては、TNF−α、LIF、IL13、M−CSF、IL6、MIFおよびL32が含まれていた。
【0230】
図10Aおよび10Bは、ORP水溶液(Microcyn)は、実験のために用いたORP水溶液または抗原の濃度に関わりなく、肥満細胞における抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを改変しなかったことを示している。
【0231】
本試験において、炎症促進性遺伝子の転写物のレベル(即ち、刺激された肥満細胞のRNA含有量)は、ORP水溶液処理した肥満細胞において、様々な濃度の抗原での刺激後に変化しなかった。従って、ORP水溶液は、これらのサイトカインの分泌経路を、それらの転写に影響を与えることなく阻害した。
【0232】
実施例21
本実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のTNF−α分泌に対する阻害活性を示している。
【0233】
実施例20に記載したようにして肥満細胞を様々な濃度のORP水溶液で15分間処理し、さらに抗原で刺激した。その後、組織培養培地を交換し、TNF−αのレベルを測定するために新たな培地のサンプルを様々な期間(2〜8時間)で採集した。サンプルを凍結し、さらに市販のELISAキット(Biosource)を用いて、製造者の使用説明書に従って解析した。
【0234】
図11は、ORP水溶液で処理した細胞から抗原刺激後に培地に分泌されたTNF−αのレベルが、非処理の細胞と比較して有意に減少したことを示している。
【0235】
従って、ORP水溶液は、抗原刺激された肥満細胞のTNF−α分泌を阻害した。これらの結果は、ORP水溶液の使用が外科手術処置後の様々な創傷における炎症反応を減少し得るという臨床上の観察に合致している。
【0236】
実施例22
本実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のMIP 1−α分泌への阻害活性を示している。
【0237】
実施例20に記載したようにして肥満細胞を様々な濃度のORP水溶液(Microcyn)で15分間処理し、さらに抗原で刺激した。その後、組織培養培地を交換し、MIP 1−αのレベルを測定するために新たな培地のサンプルを様々な期間(2〜8時間)で採集した。サンプルを凍結し、さらに市販のELISAキット(Biosource)を用いて、製造者の使用説明書に従って解析した。
【0238】
図12は、ORP水溶液で処理した細胞から抗原刺激後に培地に分泌されたMIP 1−αのレベルが、非処理の細胞と比較して有意に減少したことを示している。
【0239】
従って、ORP水溶液は、抗原刺激された肥満細胞のMIP 1−α分泌を阻害した。これらの結果は、ORP水溶液の使用が外科手術処置後の様々な創傷における炎症反応を減少し得るという臨床上の観察に合致している。
【0240】
IL−6およびIL−13分泌を測定する類似の試験の結果を、図13および14に示す。
【0241】
実施例19−21および本実施例は、ORP水溶液がIgE受容体の架橋によって開始される即時相および遅延相のアレルギー反応を阻害し得ることをさらに示している。
【0242】
実施例22
本実施例は、ウサギの鼻腔にスプレーされた場合の例示的なORP水溶液(Microcyn)の安全性を示している。
【0243】
42匹のウサギを無作為に4つの群に割り当てた;群I、群II、群IIIおよび群IV(表6)。ウサギを以下のように処理した:0日目に、群Iのウサギに無菌食塩水を投与し、群IIのウサギに塩化ベンザルコニウムを投与した。0日目にはまた、Microcynを群IIIおよび群IVにそれぞれ40ppmおよび80ppmで投与した。すべての物を右の鼻孔への経鼻スプレーによって投与した。7日目に、第8回目の投与の後、各群からの3分の1のウサギを屠殺および剖検した。残りの動物に14日目まで毎日投与を行い、14日目に各群からの残りの動物の半分を屠殺および剖検した。投与しない7日間の後、21日目に、残りのウサギを屠殺および剖検した。
【0244】
【表6】

【0245】
両鼻孔由来の鼻粘膜のサンプルを各ウサギから採取し、組織病理学的分析のためにホルマリン中で保存した。ホルマリン保存した組織を切り取り、パラフィンに包埋し、切片にし、そしてヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。有資格の獣医病理学者が上に列挙したすべての組織を検査した。鼻腔を、鼻孔レベルI、IIおよびIIIと呼ばれる3レベルで切片にし、左側および右側を評価した。レベル1は最前部の切片であり、全てではないが一部の切片は、上皮を含有する毛嚢を含んでいた。この領域のほとんどは重層扁平上皮によって裏打ちされている。レベルIIは鼻孔から約1/3後方であって、かつ鋤鼻器、および鼻甲介の大部分を含む。レベルIIIは鼻孔から約2/3後方であって、かつ鼻甲介のより小さい部分を含むことが多い。各レベルで、上皮の完全性、上皮の繊毛、炎症性細胞、浮腫、杯細胞、腺肥大および血管について鼻腔を評価した。切片を以下のようにグレード付けした:「最小度」は最も少ない量の変化を表しており、同定するためには注意深い探索を普通は必要とし;「軽度」は少ないが、容易に同定できる損傷であり;「中度」は組織の大部分は占めないが広範または大きな損傷であり;「顕著」は大きく、組織の大部分を占めることが多い重度の損傷である。
【0246】
鼻孔組織における病理学的変化は一般的にレベルIIおよびIIIに限られ、グループIVの7日目の1匹のウサギを除いて、14日目まではみられなかった。14日目に、最小度乃至軽度の病巣上皮の壊死、肥大、および/または上皮(epithial)の繊毛の萎縮の発生率または重症度のいずれかにおける用量と無関係の増大が、群Iまたは群IIのウサギにおいて見られるそれらと比較した場合、群IIIおよび群IVの両方からの一部のウサギにおいて生じた。上皮の損傷にはリンパ球の炎症性細胞の病巣浸潤が伴い、その存在は21日目まで持続した。21日目には、壊死または繊毛萎縮といった上皮の損傷はもはや、処理したウサギで観察されなかった。その時点で2つの切片において見られた最小度の病巣上皮の肥大は、本調査の処理段階中であったため、再生/回復の変化であると考えられる。Microcyn処理した一部のウサギは、21日目の時点で杯細胞乏化または杯細胞肥大のいずれかとなったが、これらの変化は対照において見られたものと差異はなかった。リンパ球の炎症性浸潤が21日の試験期間の終了時における主要な結果だった。対照の1匹のウサギは、21日目に最小度の病巣上皮の壊死となっていたが、これは偶然の結果と考えられた。
【0247】
最小度乃至軽度の損傷の発生率または重症度に対する、用量と関係した明白な影響はなかった。軽度のリンパ球浸潤および病巣上皮の肥大は、正常であり、治癒/回復に関連する予期される変化であると考えられた。Microcynを全てのウサギの右の鼻孔に投与したが、両側間での損傷パターン/発生率に実質的な差異はなかった。
【0248】
本実施例は、40または80ppmのMicrocynのウサギへの毎日の鼻内投与が、(7日ではなく)14日の処理によって、病巣鼻腔上皮の壊死、肥大、および/または上皮繊毛の萎縮といった最小度乃至軽度の損傷を引き起こしたことを示している。
【0249】
実施例24
この調査は、例示的なORP水溶液Dermacynには毒性がないことを示している。
【0250】
この調査は、ISO 10993−5:1999の基準に従って行い、例示的なORP水溶液Dermacynが細胞毒性を引き起こす可能性を決定した。0.1mLのDermacynを含むフィルターディスクをアガロース表面に置き、マウス繊維芽細胞(L−929)の単層に直接重層した。調製したサンプルを、5% COの存在下、37℃での24時間のインキュベーション後、細胞毒性の損傷について観察した。観察結果を陽性および陰性対照のサンプルと比較した。Dermacynを含有するサンプルは、細胞溶解または毒性のいかなる証拠も示さず、一方陽性および陰性対照は予想された通りであった。
【0251】
この調査に基づいて、Dermacynはマウス繊維芽細胞に対して細胞毒性効果を生じないと結論付けた。
【0252】
実施例25
この調査は16匹のラットで行い、例示的なORP水溶液Dermacynの局所耐容性および全層皮膚創傷治癒のモデルにおける創傷床の組織病理への影響を評価した。創傷を対象ラットの両側に作った。治癒過程の間、皮膚切片を左側または右側のいずれかに置いた(例えば、それぞれDermacyn(登録商標)処理および食塩水処理)。
【0253】
Dermacynおよび食塩水処理した外科創傷部位のマッソントリクローム染色切片およびII型コラーゲン染色切片を有資格の獣医病理学者によって評価した。結合組織の増殖の現われとしての2型コラーゲンの発現量、繊維芽細胞の形態およびコラーゲンの形成、横断面における新表皮の存在、炎症および皮膚潰瘍化の程度について、切片を評価した。
【0254】
結果は、Dermacynはラットにおいて十分に耐容されたことを示している。いずれかの側の創傷(それぞれDermacyn処理および食塩水処理)からの皮膚切片において、処理に関連した組織病理学的な損傷はなかった。食塩水処理およびDermacyn(登録商標)処理した創傷部位の間に、関連性のある組織病理学的な差異は無く、これはDermacyn処理が十分に耐容されたことを示している。食塩水処理およびDermacyn処理した創傷部位の間に2型コラーゲン発現の有意な差異は無く、これはDermacynが創傷治癒の間、繊維芽細胞またはコラーゲンの合成に副作用を及ぼさないことを示している。
【0255】
実施例26
本実施例は、例示的な酸化還元電位水Microcynの有効な抗菌性溶液としての本発明に従った使用を示している。
【0256】
Microcyn酸化還元電位水を用いて、インビトロでの時間−殺菌評価を行った。Microcynを、Tentative Final Monograph, Federal Register, 17 June 1994, vol. 59: 116, pg. 31444に記載されているようにして、50の異なる微生物株(25のAmerican Type Culture Collection (ATCC)の株および25のそれらと同種の臨床分離株)のチャレンジ懸濁液に対して評価した。各チャレンジ株の初期集団からのパーセント減少率およびLog10減少率を、30秒間、1分間、3分間、5分間、7分間、9分間、11分間、13分間、15分間および20分間のMicrocynへの曝露後に決定した。全ての寒天プレーティングは重複して行い、Microcynを99%(v/v)濃度で評価した。全ての試験は、米国連邦規則第21条第58章に定められた通り、優良試験所基準(Good Laboratory Practices)に従って行った。
【0257】
以下の表は、5.0Log10を上回って減少した、試験した全ての集団についての30秒の曝露指標での上述したインビトロでの時間−殺菌評価の結果をまとめている。
【0258】
【表7−1】

【0259】
【表7−2】

【0260】
【表7−3】

【0261】
【表7−4】

【0262】
これらの微生物の減少を5.0log10未満で測定したが、Microcynはまた、表8に含まれない残りの3種に対する抗菌活性も示した。より具体的には、Microcynへの30秒の曝露により、ストレプトコッカス・ニューモニエ(臨床分離株; BSLI #072605Spn1)の集団は、この種の検出限界である4.5Log10を超えて減少した。さらに、カンジダ・トロピカリス(ATCC #750)でのチャレンジにおいて、Microcynは、30秒の曝露後、3.0Log10を超える微生物の減少を示した。それに加えて、カンジダ・トロピカリス(BSLI #042905Ct)でのチャレンジにおいて、Microcynは、20分の曝露後、3.0Log10を超える微生物の減少を示した。
【0263】
このインビトロの時間−殺菌評価の例示的な結果は、Microcyn酸化還元電位水が、広い範囲のチャレンジ微生物に対して急速な(即ち、ほとんどの場合30秒未満)抗菌活性を示すことを示している。評価した50のグラム陽性、グラム陰性および酵母種のうちの47の微生物集団は、製品への30秒以内の曝露で、5.0Log10を超えて減少した。
【0264】
実施例27
本実施例は、HIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液4.0%(w/v)および0.9%塩化ナトリウム洗浄液(USP)と対比した、本発明に従って用いた例示的な酸化還元電位水Microcynの抗菌活性の比較を示している。
【0265】
インビトロの時間−殺菌評価を、参考製品としてHIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液4.0%(w/v)および無菌性0.9%塩化ナトリウム洗浄溶液(USP)を用いて実施例26に記載したようにして行った。各参考製品を、Tentative Final Monographにおいて具体的に表示された、10のAmerican Type Culture Collection (ATCC)株の懸濁液に対して評価した。集めたデータを次に、実施例26において記録されたMicrocynの微生物減少活性に対して解析した。
【0266】
Microcyn酸化還元電位水は、チャレンジ株のうち5つの微生物集団を、HIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液で観察されるのと遜色無い水準まで減少させた。MicrocynとHIBICLENS(登録商標)との両方とも、以下の種:エシェリヒア・コリ(ATCC #11229及びATCC #25922)、シュードモナス・エルギノーザ(ATCC #15442及びATCC #27853)及びセラチア・マルセッセンス(ATCC #14756)への30秒の曝露後、5.0Log10を超える微生物の減少を与えた。更に、上記表7に示したように、Microcynは、ミクロコッカス・ルテウス(ATCC #7468)に対して、30秒の曝露後に5.8420Log10の減少を与えることによる優れた抗菌活性を示した。しかしながら、30秒の曝露後、HIBICLENS(登録商標)は試験の検出限度(この具体的ケースにおいては、4.8Log10を上回る)まで集団を減少させたため、ミクロコッカス・ルテウス(ATCC #7468)の活性のHIBICLENS(登録商標)との直接的な比較は不可能であった。なお、無菌性0.9%塩化ナトリウム洗浄溶液は、上述した6つのチャレンジ株のそれぞれの微生物集団を、全20分の曝露後に0.3Log10未満減少させた。
【0267】
Microcyn酸化還元電位水は、試験した4つのチャレンジ株:エンテロコッカス・フェカリス(ATCC #29212)、スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC #6538及びATCC #29213)及びスタフィロコッカス・エピデルミディス(ATCC #12228)について、HIBICLENS(登録商標)と塩化ナトリウム洗浄液の両方よりも強い抗菌活性を与えた。以下の表にこれら4種についてのインビトロの時間−殺菌評価の微生物減少結果をまとめた。
【0268】
【表8−1】

【0269】
【表8−2】

【0270】
この比較のインビトロの時間−殺菌評価の結果は、Microcyn酸化還元電位水が、エシェリヒア・コリ(ATCC #11229およびATCC #25922)、シュードモナス・エルギノーザ(ATCC #15442およびATCC #27853)、セラチア・マルセッセンス(ATCC #14756)およびミクロコッカス・ルテウス(ATCC #7468)に対してHIBICLENS(登録商標)と遜色ない抗菌活性を示すだけでなく、エンテロコッカス・フェカリス(ATCC #29212)、スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC #6538およびATCC #29213)およびスタフィロコッカス・エピデルミディス(ATCC #12228)に対してより効果的な治療を与えることを示している。表8に示すように、Microcynは、一部の種において、より急速な抗菌反応(即ち、30秒未満)を実証している。さらに、Microcynへの曝露は、表8に記載した全ての種において、全微生物のより大きな減少をもたらす。
【0271】
実施例28
本実施例は、ペニシリン耐性ストレプトコッカス・ニューモニエ(ATCC 51915)に対するORP水溶液の有効性を示している。
【0272】
凍結培養物を用いて、複数のBAPのプレートに接種し、2〜3日間35〜37℃でCO2と共にインキュベートすることによって、ストレプトコッカス・ニューモニエの培養物を調製した。インキュベーション後、3〜7mLの無菌希釈液/培地を各寒天プレートに移し、綿棒で採取して微生物を懸濁した。全てのプレートの懸濁液を集め、滅菌チューブに移し、4.0McFarland標準液と比較した。懸濁液を滅菌ガーゼに通して濾過し、試験手順に使用する前にボルテックス混合した。
【0273】
微生物懸濁液0.1mlの接種材料を49.9mlのMicrocynまたは対照物質に添加した。各曝露期間において、試験混合物をスワーリングして混合した。試験混合物を15秒、30秒、60秒、120秒、5分、および15分間25.0℃で曝露した。
【0274】
1.0mlのサンプルを試験混合物から取り出し、中和される接種試験混合物の100倍希釈に相当する9.0mlの中和剤に添加した。100倍中和した接種試験混合物の5mlアリコートを、10mlのButterfield‘s Bufferで予め湿らせた0.45マイクロリットルのフィルター装置に移した。フィルターを約50mlのButterfield’s Bufferですすぎ、無菌的に装置から取り出し、BAPのプレートに移した。さらに1:10の段階希釈液を調製し、中和した接種試験混合物の10−3〜10−4希釈液の1.0mlアリコートをBAPにデュプリケートでプレートした。
【0275】
細菌の継代培養のプレートを48±4時間35〜37℃、C02下でインキュベートした。継代培養のプレートを検査前に2日間2〜8℃で冷蔵した。インキュベーションおよび保存の後、寒天プレートを増殖の存在について視覚的に観察した。コロニー形成単位を数え、各曝露時間における生存数を決定した。増殖を示している代表的な継代培養物を、試験微生物の確認のために適切に検査した。
【0276】
例示的なORP水溶液Microcynは、25.0℃での15秒、30秒、60秒、120秒、5分および15分の接触時間後、ペニシリン耐性ストレプトコッカス・ニューモニエ(ATCC 51915)の>99.93197279%の減少を示した。
【0277】
実施例29
本実施例の目的は、細菌懸濁液アッセイを使用して、バシトラシンと対比した、例示的なORP水溶液(Dermacyn)の微生物活性を決定することである。
【0278】
Dermacynは使用準備済みの製品であり、従って試験の間の希釈の実行は必要とされなかった。バシトラシンは高濃度の補水液(re-hydrated solution)であり、33ユニット/mlに希釈する必要がある。
【0279】
購入した2.5x107/mlのB.アトロフェーアス(B. atropheus)胞子懸濁液を試験に用いた。さらにシュードモナス・エルギノーザおよびスタフィロコッカス・アウレウスの新たな懸濁液を調製し、分光光度計を用いて測定し、力価が許容範囲にあることを確実にした。
【0280】
9マイクロリットルの試験物質を100ulの微生物懸濁液に添加した。試験混合液を、20秒、5分および20分の接触時間の間20℃に維持した。1.0mlの試験混合液(混合液全体)を9,0mlの中和剤に20分間添加し(これが最初の中和チューブ(original neutralization tube)即ちONTである)1.0mlの中和された試験混合物を、5分および20分の接触時間の間、トリプトソイ寒天上にデュプリケートでプレートした。さらなる希釈液およびスプレッドプレートを20秒の時点に関して用い、カウント可能なプレートを得た。
【0281】
全てのプレートを30℃〜35℃で合計3日間インキュベートし、インキュベーションの各日後に評価した。懸濁液を試験している間にDermacynおよびバシトラシンに曝露された微生物数を決定するために4回の10倍希釈を行い、最後の2回の希釈液1.0mlを、適用可能な場合に、デュプリケートでプレートした。
【0282】
試験微生物にチャレンジされた場合、Dermacynは、全ての時点の増殖性細菌(vegetative bacteria)並びに5分および20分時点の胞子の完全な根絶(>4logの減少)を示した。バシトラシンは約1logの減少を引き起こすのみであった。20秒時点のMicrocynは、胞子における多少の減少を示した。バシトラシンは、試験期間中に細菌または胞子集団を低下させた証拠を示さなかった。
【0283】
実施例30
本実施例は、バイオフィルム中の細菌に対する2つの例示的なORP水溶液(M1およびM2)の有効性を示している。
【0284】
全ての試験に関する親株は、P.エルギノーザPAO1である。全てのプランクトン株は、220rpmの振盪フラスコ内の最少培地(1リットルあたり2.56gのNaHPO、2.08gのKHPO、1.0gのNHCl、0.04gのCaCl・2HO、0.5gのMgSO・7HO、0.1mgのCuSO・5HO、0.1mgのZnSO・HO、0.1mgのFeSO・7HO、および0.004mgのMnCl・4HO、pH 7.2)中で好気的に成育させた。バイオフィルムを下記のとおり、最少培地中22℃で成育させた。グルタミン酸塩(130mg/リットル)を単一炭素源として用いた。
【0285】
バイオフィルムを、以前に記載されているようにして(参照により本明細書に組み込まれる、Sauer et.al., J. Bacteriol. 184:1140-1154 (2002))成育させた。簡潔に述べれば、貫流型連続流動チューブリアクターシステム(once-through continuous flow tube reactor system)のシリコンチューブの内表面を用いて22℃でバイオフィルムを育てた。バイオフィルムを流動条件下での成育3日後(成熟段階1)、6日後(成熟段階2)および9日後(分散段階)に採取した。バイオフィルムの細胞を、チューブをその全長に沿ってつねることで管腔から細胞材料を押し出すことにより、内表面から採取した。得られた細胞ペーストを、氷上で回収した。サンプリング前に、大半の液体をチューブからパージして、分離した浮遊細胞からの干渉を防止した。
【0286】
浮遊およびバイオフィルム細胞の集団の大きさを、段階希釈のプレートカウントを用いることによりCFU数で決定した。そうするために、バイオフィルムを様々な時間でのSOSへの曝露後に内表面から採取した。貫流型流動セル中で成育したバイオフィルムの画像を、オリンパスBX60顕微鏡(Olympus,Melville,NY)および100倍の倍率のA100PL対物レンズを用いて透過光により観た。画像を、Magnafire冷却式3チップ電荷結合素子カメラ(Optronics Inc.,Galena,CA)および30分間の露光を用いて記録した。さらに、LSM 510 Meta倒立顕微鏡(Zeiss,Heidelberg,Germany)を用いて共焦点レーザー走査顕微鏡観察を行った。画像をLD−Apochrome 40_/0.6レンズおよびLSM 510 Metaソフトウェア(Zeiss)を用いて得た。
【0287】
60分以内の処理でM1処理したバイオフィルムについて、2logの減少が観察され。この結果は、M1での処理は、10.8分(+/−2.8分)ごとに、バイオフィルムの生存率において50%の減少をもたらすことを示している。
【0288】
【表9】

【0289】
しかしながら、M2での処理は、4.0分(+/−1.2分)ごとに、バイオフィルムの生存率において50%の減少をもたらすことを結果は示していたため、全体的には、M2は、バイオフィルムの殺菌においてM1よりも若干効果的であった。
【0290】
【表10】

【0291】
従って、ORP水はバイオフィルム中の細菌に対して効果的である。
【0292】
出版物、特許出願及び特許を含む本明細書で挙げた全ての文献は、各文献が個別且つ具体的に参照によって組み込まれると表示され、その全体が本明細書に示されたのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0293】
本発明を説明する文脈(特に添付の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がないか又は明らかに文脈に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、別段の記載が無ければ、オープンエンドの用語(即ち、「含むが、それに限定されない」ということを意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内に入る各個別の値を個別に言及する簡易な方法としての役目を持つことを単に意図しており、各個別の値は、それが個別に本明細書に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載した全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、または明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書で与えた、任意及び全ての例、又は例示的な言葉使い(例、「のような(such as)」の使用は、本発明をより良く明らかにすることを単に意図しており、別段の請求が無ければ、本発明の範囲を制限しない。本明細書中の言葉使いは、あらゆる非請求の要素が本発明の実施に不可欠であることを指示していると解釈されてはならない。
【0294】
本発明の好ましい実施形態を、発明者らが知っている本発明を実施するための最良の形態を含めて本明細書に記載している。これらの好ましい実施形態の変形は、上述の記載を読めば当業者には明らかとなり得る。発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを予期しており、また、発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載したのとは別の方法で実施されることを意図している。従って、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙した対象の、適用法によって認められるあらゆる修正及び同等物を含む。更に、上述の要素のあらゆる可能な変形でのあらゆる組み合わせが、本明細書に別段の指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0295】
【図1】図1は、例示的なORP水溶液を製造するための、チャンバーが3つの電解セルを示している。
【図2】図2は、チャンバーが3つの電解セルを示しており、製造プロセス中に生成されると思われるイオン種を示している。
【図3】図3は、例示的なORP水溶液を製造するプロセスの模式的フローダイアグラムである。
【図4A】図4Aは、過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシスおよびネクローシスの図式的な比較を示している。
【図4B】図4Bは、過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシスおよびネクローシスの図式的な比較を示している
【図4C】図4Cは、過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシスおよびネクローシスの図式的な比較を示している
【図5】図5は、500μM過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したHDFにおける8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)付加物量の図式的な比較である。
【図6】図6は、過酸化水素(HP)と対比した、低濃度の例示的なORP水溶液(MCN)への慢性曝露後のHDFにおけるβ−ガラクトシダーゼの発現によって明らかにされる細胞老化を示している。
【図7】図7は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を示している。
【図8】図8は、クロモグリク酸塩で処理した抗原活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を比較して示している。
【図9】図9は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化およびカルシウムイオノフォア(A23187)活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を示している。
【図10A】図10Aは、ORP水溶液処理肥満細胞に対する、コントロールにおける抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを示すRNAseプロテクションアッセイである。
【図10B】図10Bは、ORP水溶液処理肥満細胞に対する、コントロールにおける抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを示すRNAseプロテクションアッセイである。
【図11】図11は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるTNF−α分泌の図式的な比較である。
【図12】図12は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるMIP 1−α分泌の図式的な比較である。
【図13】図13は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるIL−6分泌の図式的な比較である。
【図14】図14は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるIL−13分泌の図式的な比較である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における副鼻腔炎を治療または予防する方法であって、当該方法は、該患者に治療有効量の酸化還元電位水溶液を投与することを含み、該溶液は少なくとも約24時間安定であり、かつ該溶液は約6.4から約7.8のpHを有する、方法。
【請求項2】
酸化還元電位水溶液を上部呼吸気道に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上部呼吸気道の1つ以上の組織を酸化還元電位水溶液と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
1つ以上の副鼻腔の組織を酸化還元電位水溶液と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
1つ以上の副鼻腔が、前頭洞、上顎洞、篩骨洞および蝶形骨洞ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項4に記載の方法
【請求項6】
酸化還元電位水溶液を1つ以上の篩骨洞に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
篩骨洞の1つ以上の組織を酸化還元電位水溶液と接触させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
酸化還元電位水溶液を鼻腔内に投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
酸化還元電位水溶液を口または鼻の1つ以上の開口部を通じて投与することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
酸化還元電位水溶液を、液体、スプレー、ミスト、エアロゾルまたはスチームの形態で送達することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
酸化還元電位水溶液が、エアロゾル化、ネブライゼーションまたはアトマイゼーションによって投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
酸化還元電位水溶液が、約0.1ミクロンから約100ミクロンの範囲内の直径を有する液滴の形態で投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
副鼻腔炎が急性副鼻腔炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
副鼻腔炎が慢性副鼻腔炎である、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
副鼻腔炎がアレルギー反応に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
副鼻腔炎が喘息に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
副鼻腔炎が感染に起因する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
感染が、ウイルス、細菌および真菌からなる群から選択される1種以上の微生物によるものである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
感染が、コクサッキーウイルス、アデノウイルス、ライノウイルスおよびインフルエンザウイルスからなる群から選択される1種以上のウイルスによるものである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
感染が、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ヘモフィルス・インフルエンザ、スタフィロコッカス、非肺炎球菌性ストレプトコッカス、コリネバクテリアおよび嫌気性菌の群から選択される1種以上の細菌によるものである、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
感染が、接合菌、アスペルギルスおよびカンジダの群から選択される1種以上の真菌によるものである、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
酸化還元電位水溶液が、最大約25%の1種以上の担体と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
酸化還元電位水溶液が、最大約50%の1種以上の担体と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項24】
酸化還元電位水溶液が、最大約75%の1種以上の担体と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
酸化還元電位水溶液が、最大約90%の1種以上の担体と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
酸化還元電位水溶液が、最大約95%の1種以上の担体と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
酸化還元電位水溶液が、最大約99%の1種以上の担体と組み合わせて投与される、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
1種以上の担体が、無菌水、食塩水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
1種以上の担体が、無菌水、食塩水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
1種以上の担体が、無菌水、食塩水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項31】
1種以上の担体が、無菌水、食塩水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
1種以上の担体が、無菌水、食塩水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項26に記載の方法。
【請求項33】
1種以上の担体が、無菌水、食塩水およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項27に記載の方法。
【請求項34】
酸化還元電位水溶液のpHが約7.4から約7.6である、請求項1に記載の方法。
【請求項35】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約2週間安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項36】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約2ヶ月間安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項37】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約6ヶ月間安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項38】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約1年間安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項39】
酸化還元電位水溶液が、該溶液の約10体積%から約50体積%の量でカソード水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項40】
酸化還元電位水溶液が、該溶液の約20体積%から約40体積%の量でカソード水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項41】
酸化還元電位水溶液が、該溶液の約50体積%から約90体積%の量でアノード水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項42】
酸化還元電位水溶液が、約10体積%から約50体積%のカソード水および約50体積%から約90体積%のアノード水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項43】
酸化還元電位水溶液が、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸イオンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1種の遊離塩素種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項44】
酸化還元電位水溶液が、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項45】
酸化還元電位水溶液が、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項46】
酸化還元電位水溶液が、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含み、約6.2から約7.8のpHであり、かつ該溶液が少なくとも約1週間安定である、請求項1に記載の方法。
【請求項47】
酸化還元電位水溶液が、約−400mVから約+1300mVの電位を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項48】
抗ヒスタミン剤、充血除去剤、抗感染症剤、抗炎症剤およびそれらの組み合わせからなる群からの少なくとも1種の更なる治療剤を投与することを更に含む、請求項1に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−523830(P2009−523830A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551571(P2008−551571)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/060856
【国際公開番号】WO2007/085019
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(505234465)オキュラス イノヴェイティヴ サイエンシズ、インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】