酸化還元電位水溶液を用いた炎症及び過敏症の治療又は予防方法
治療有効量の少なくとも約24時間安定な酸化還元電位(ORP)水溶液を投与することによって炎症及び関連する状態(例、感染症、過敏症、痛み)を予防又は治療するための方法を提供する。本発明に従って投与されるORP水溶液は、1種以上の好適な担体と組み合わせることが出来、また、1種以上の更なる治療剤と併用して投与することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、2006年1月20日に出願された米国仮特許出願第60/760,635号;2006年1月20日に出願された同第60/760,567号;2006年1月20日に出願された同第60/760,645号;及び2006年1月20日に出願された同第60/760,557号の利益を主張しており;これら全ては参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
炎症は、有害刺激に起因し得る生物学的反応であって、普通はその刺激を除去すること又はその影響を改善することをその目的とする生物学的反応である。生存を促進することを普通は目的としているにも関わらず、炎症は、特に哺乳動物において、宿主に対する損傷を引き起こし得る。炎症を惹起する刺激又は傷害は、内因性の要因(例、自己抗原若しくは刺激性の体液)又は外因性の要因(例、異物若しくは病原菌)により引き起こされ得る。
【0003】
炎症は、「急性」及び「慢性」に分類されている。急性炎症は、通常は比較的短期間であり、数分から数時間、場合によっては数日間持続する。急性炎症は、傷害の部位における体液及び血漿タンパク質の浸出並びに多核白血球(PMNL)の蓄積により特徴付けることが出来る。急性炎症は、傷害に対する応答で放出される細胞分子が介在する、傷害の領域への血流の増加を通常含む。血管透過性の増加もまた細胞性のメディエーターに起因し、高タンパク質の体液の蓄積を引き起こす。この血流及び血管透過性の増加の重要なメディエーターとしては、肥満細胞由来のヒスタミン、セロトニン及びブラジキニンが挙げられる。
【0004】
急性炎症において、PMNLもまた傷害の領域へ誘引され、血流から出て該傷害へ移動する。PMNLは、組織損傷を引き起こし得る有毒代謝物及びプロテイナーゼを放出する。これらのプロテイナーゼとしては、細胞膜を損傷し得る補体系におけるタンパク質、及びブラジキニンを生成するカリクレインが挙げられる。急性炎症は、完全に解消されるか、膿瘍の形成を引き起こすか、瘢痕性の線維症をもたらすか、又は慢性炎症に進行し得る。
【0005】
慢性炎症はより長期であり、数週間から数ヶ月間、場合によっては数年間継続し、慢性炎症においては、組織の破壊と該損傷の修復を目的とする生物学的プロセスとが同時に進行する。慢性炎症は、より典型的にはリンパ球及びマクロファージを伴い、また、血管の増殖、線維症及び/又は壊死も含み得る。慢性炎症は、持続感染、毒物に対する長期の曝露、及び自己免疫反応を含む数多くの条件に起因し得る。慢性炎症は、しばしば、持続性の傷害部位におけるリンパ球及びマクロファージによるサイトカインの産生によって維持される。慢性炎症は、永続的な組織損傷又は完全な治癒という結果になり得る。
【0006】
過敏症は、一般に、損傷が宿主に対する利益を上回っている、宿主に対する損傷を引き起こす炎症を言う。過敏症は、例えば、アナフィラキシー、移植片拒絶反応及び自己免疫疾患を含む深刻な病状をもたらし得る。最も一般的なタイプの過敏症はアレルギーである。
【0007】
誘発因子(及び曝露の長さ)とは関係なく、炎症反応には、様々な数及びタイプの細胞及び分子が介在し、後者としては特にサイトカイン、成長因子、凝固因子、酵素、神経伝達物質及び補体タンパク質が挙げられる。これらの分子は主に、線維芽細胞、内皮細胞及び浸潤細胞(例、マクロファージ、リンパ球、肥満細胞、多核白血球など)、並びに局所神経によって傷害物質に応答して分泌される。放出される混合物及びその中のサイトカイン量は、誘発物質のタイプ、濃度及び曝露時間に依存するであろう。それ故、これらのタンパク質は、急性の局所炎症反応から全身性の生命にかかわる反応(例、急性全身性炎症反応症候群、SIRS;敗血性ショックのような多臓器不全;アナフィラキシーなど)にまで介在し得る。慢性炎症のプロセスにおいて、サイトカインは、例えば肉芽腫、組織の硬化、及び被包化膿瘍を引き起こすますます多くの浸潤細胞を絶え間なく動員する。いかなる場合であれ、炎症プロセスにおいて分泌されるタンパク質が、最終反応のグレード及び持続性における中心的な役割を果たすものである。
【0008】
誘発物質による前記細胞の刺激は、炎症促進性反応を構成するサイトカイン及び他の炎症性メディエーターの生成及び分泌を最終的にもたらす細胞内シグナル伝達事象のカスケードを引き起こす。炎症促進性反応は病原体又はアレルゲンの効果的な排除のために重要であるが、生成した炎症性メディエーターは組織損傷及び炎症を引き起こす。従って、重度の組織損傷を避けるために、この反応の活性化とダウンレギュレーションとの間のバランスが維持される必要がある(Cohen, J.: The immunopathogenesis of sepsis. Nature 2002 420, 885-891)。この反応の調節異常は、局部的な損傷(例、肺線維症)を誘発し得うるか、又は、前述したような敗血性ショック及び全身性炎症反応症候群(SIRS)のような致死的となり得る状態を引き起こし得る。このように、微生物アレルゲン、エンドトキシン及びその他多くの分子は、人体内の様々な細胞による炎症促進性メディエータータンパク質の生成を誘導する。生体組織におけるこれらすべての分子の複合効果が、その他多くの反応の中でも特に、凝固系、創傷治癒過程、抗菌活性、抗体産生及び疼痛の知覚における変化を介在し得る。
【0009】
全身性炎症反応症候群(SIRS)は、末端器官の損傷も特定可能な菌血症も伴わない、全身性炎症の特徴を含む症候群である。SIRSは、敗血症、重症敗血症又は敗血性ショックからは分けられ異なっている。SIRSから敗血症への変わり目の要所は、血中の特定された病原体の存在である。SIRSの病態生理としては、補体活性化、サイトカイン及びアラキドン酸代謝物分泌、刺激された細胞性免疫、凝固カスケードの活性化、並びに液性免疫機構が挙げられるが、これらに限定されるものではない。臨床的にはSIRSは、頻脈、頻呼吸、低血圧、かん流低下、乏尿、白血球増加又は白血球減少、発熱又は低体温、代謝性アシドーシス、及び換気量補助(volume support)の必要性により特徴付けられる。SIRSは全ての臓器システムに影響する可能性があり、多臓器不全症候群(MODS)を引き起こす可能性がある。このように、初期のステージ(即ち、SIRS)でさえ、炎症の原発部位及び血中において、多臓器不全の確立及び死亡の原因となり得る炎症促進性サイトカインの蓄積がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常、炎症はステロイド系又は非ステロイド系抗炎症薬で治療される。しかし、従来の抗炎症療法は様々な欠点(例、全身毒性、アレルギー反応、インスリン抵抗性、高血圧、心毒性、腎臓毒性、様々な血液凝固障害及び胃粘膜糜爛)を抱えている。従って、低刺激性であり、その上安全且つ効果的である炎症の治療又は予防方法が必要とされている。
【0011】
本発明はそのような方法を提供する。本発明のこれら及び他の利点、並びに発明上のさらなる特徴は、本明細書に与えた本発明の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明は、治療有効量の酸化還元電位(ORP)水溶液を患者に投与することによる、患者の炎症の予防又は治療の方法を提供し、ここで該溶液は少なくとも24時間安定である。本発明の方法は、様々な原因因子(例、アレルギー反応、自己免疫反応、感染、1種以上の炎症誘発物質との接触、及びそのような原因因子の組み合わせ)に起因する炎症の治療において使用され得る。
【0013】
本発明の方法は、1種以上の治療剤(例、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の化合物)と併用してORP水溶液を投与することをさらに含み得る。ORP水溶液と併用してそのような治療剤を投与することとしては、例えばORP水溶液の投与前、投与中(例、共投与によって又は組み合わせて、同時に)、又は投与後に、1種以上のそのような剤を投与することが挙げられる。
【0014】
ORP水溶液は、治療有効量のORP水溶液を、体内又は体外に存在し得る1つ以上の罹患組織と接触させるようにして、本発明に従う任意の好適な経路により(例、局所的に又は非経口的にORP水溶液を送達することによる)投与することが出来る。即ち、本発明は、ORP水溶液が1つ以上の組織(例、鼻、洞、咽頭、気管、肺、食道、胃、腸、中皮、腹膜、滑膜、膀胱、尿道(urtheral)、膣、子宮、卵管、膵臓、神経、口腔、皮膚及び皮下)に投与される方法を提供する。ORP水溶液は、例えば、液体、スプレー、ミスト、エアロゾル又はスチームとして、本発明に従う任意の好適な形態で投与することが出来、そして所望の場合、例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、希釈剤などの1種以上の好適な担体と組み合わせることが出来る。
【0015】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、密封容器内に収容することが出来、且つ少なくとも24時間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、電気分解によって製造することが出来、且つ、好ましくは、例えば、反応種、イオン種、ラジカル種、それらの前駆体及びそれらの組み合わせを含む1種以上の種を含有するアノード水とカソード水との混合液を含む。本発明に従って投与されるORP水溶液は、強い抗炎症活性を示すが、それにもかかわらず正常な組織及び正常な真核細胞に対して実質的に無毒性である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、患者における炎症を予防又は治療する方法を提供し、当該方法は該患者に治療有効量の酸化還元電位(ORP)水溶液(超酸化水(SOW)としても知られる)を投与することを含み、該溶液は少なくとも約24時間安定である。本発明の方法は、過敏症(例えばアレルギーにおける過敏症など)を含む急性炎症及び慢性炎症の治療又は予防(例、発症の阻害、進行の阻害、可能性の減少)のために使用することが出来る。本発明の方法に従って治療可能又は予防可能な炎症及び過敏症としては、例えば有害刺激との接触、負傷、感染、自己免疫反応、過敏症及びアレルギー反応(細胞性ヒスタミン及び炎症促進性サイトカインの放出に関連するアレルギー反応を含む)に起因する炎症を挙げることが出来る。
【0017】
驚くべきことに、本発明に従って投与されるORP水溶液は、一次炎症及びアレルギーを引き起こす生物学的カスケードの一つである、肥満細胞の脱顆粒に対する非常に有効な阻害剤であることが分かっている。本発明に従って投与されるORP水溶液は、抗原で活性化されていようが、カルシウムイオノフォアで活性化されていようが関係なく、肥満細胞の脱顆粒を阻害することが分かっている。これもまた驚くべきことに、本発明に従って投与されるORP水溶液は、肥満細胞における炎症促進性サイトカインの分泌を非選択的に阻害する。例えば、本発明のORP水溶液は、肥満細胞における例えば、TNF−α、MIP1−α、IL−6及びIL−13の分泌を阻害できる。本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、マクロファージ、単球、リンパ球、マクロファージ、PMN、繊維芽細胞及び内皮細胞を含むがこれらに限定されない他のサイトカイン分泌細胞における炎症促進性サイトカインの分泌も阻害できると考えられる。これらの知見は、本発明に従って投与されるORP水溶液は、広範な抗炎症効果を示すはずであることを示している。
【0018】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、最大約30分間、より好ましくは最大約15分間、なおより好ましくは最大約5分間、ORP水溶液と接触させたとき、好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約50%を上回って、より好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約80%を上回って、なおより好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約90%を上回って、更により好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約90%を上回って、肥満細胞の脱顆粒を阻害する。
【0019】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、好ましくは約50%を上回って、より好ましくは約60%を上回って、なおより好ましくは約70%を上回って、更により好ましくは約85%を上回って、TNF−αの分泌を阻害する。加えて、本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、好ましくは25%を上回って、より好ましくは約50%を上回って、なおより好ましくは約60%を上回って、MIP1−αの分泌を阻害する。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、好ましくは25%を上回って、より好ましくは約50%を上回って、なおより好ましくは約60%を上回って、IL−6及び/又はIL−13の分泌を阻害する。本発明の方法によれば、ORP水溶液を単独で又は希釈剤(例、水)と組み合わせて投与することによって、ORP水溶液の成分の濃度を増加することによって、特別な送達系を利用することによって、及び/或いは曝露時間を増やすことによって、これらのサイトカインの分泌及び他のサイトカインの分泌を特定の%にまで治療的に阻害することができる。例としては、例えば、最大約50%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、最大約25%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、最大約10%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、最大約5%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、又は更には最大約1%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、ORP水溶液が希釈されている組成物を投与することにより、サイトカイン分泌を治療的に阻害することができる。
【0020】
本発明の方法は、SLE、自己免疫性甲状腺炎、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、関節リウマチ、リウマチ熱、乾癬、天疱瘡、多形性紅斑、他の水疱性皮膚疾患、及びアトピーを含むが、これらに限定されない自己免疫反応に起因する、細胞介在性の炎症を治療又は予防するために使用することが出来る。本発明の方法は、感染、アレルゲン、異物及び自己免疫プロセスに起因する炎症を治療又は予防するために使用することが出来る。本発明の方法はまた、感染(例、ウイルス、細菌及び真菌からなる群から選択される1種以上の微生物による感染)に起因する炎症を治療又は予防するために使用することが出来、ここで前記炎症には、過敏症、及び感染に起因する自己免疫介在性の炎症が含まれる。
【0021】
本発明の方法は、上部呼吸器の状態に関連する炎症を治療又は予防するために使用することが出来る。炎症が上部呼吸器の状態と関連する場合、ORP水溶液は、好ましくは、例えばスプレー、ミスト、エアロゾル又はスチームとして、該状態に侵された1つ以上の上気道組織と接触するようにして上気道に投与される。本明細書に記載する1つ以上の投与経路を含む任意の好適な方法を、上気道へORP水溶液を送達して上部呼吸器の1つ以上の状態を本発明に従って治療又は予防するために用いることが出来る。
【0022】
本発明の方法は、1つ以上の上部気道組織(例、鼻孔組織、副鼻腔組織)又は肺組織を侵している炎症を予防又は治療するためにも使用することが出来る。そのような状態としては、例えば、本発明に従って投与されるORP水溶液で予防可能又は治療可能な副鼻腔炎(例、鼻副鼻腔炎、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎など)、咽頭炎及び喘息などを挙げることが出来る。
【0023】
慢性副鼻腔炎とは、通常、少なくとも3週間継続する副鼻腔の炎症を意味するが、炎症は数ヶ月間又は数年間までも継続することがある(しばしばそうなる)。アレルギーは、高い頻度で慢性副鼻腔炎に関係する。加えて、喘息患者は特に高い頻度で慢性副鼻腔炎を有する。埃、カビ及び花粉などの空中を浮遊するアレルゲン(アレルギー反応を誘発する物質)の吸入により、アレルギー反応(例えば、アレルギー性鼻炎)がしばしば引き起こされ、続いてアレルギー反応が副鼻腔炎(特に鼻副鼻腔炎又は鼻炎)を助長する可能性がある。真菌類にアレルギーのある人々は、「アレルギー性真菌性副鼻腔炎」と呼ばれる状態を発現し得る。湿っぽい天候又は空気中及び建物内の汚染物質もまた、慢性副鼻腔炎に罹患しやすい人々に影響を及ぼし得る。
【0024】
急性副鼻腔炎同様、慢性副鼻腔炎は、免疫不全又は粘液の分泌若しくは移動の異常(例えば、免疫不全症、HIV感染症、嚢胞性繊維症、カルタゲナー症候群)を伴う患者においてより一般的である。加えて、一部の患者は、重篤な喘息、鼻ポリープ、並びにアスピリン及びアスピリン様医薬(いわゆる非ステロイド系抗炎症薬、即ちNSAID)に対する重篤な喘息反応を有する。これら後者の患者は、高い頻度で慢性副鼻腔炎を有する。
【0025】
医者は、病歴、身体検査、X線及び必要によりMRI又はCTスキャン(磁気共鳴映像法及びコンピュータ断層撮影法)により副鼻腔炎を診断することができる。副鼻腔炎の診断及び考えられる原因の同定後、医者は、炎症を低減し且つ症状を緩和するであろう治療コースを処方できる。急性副鼻腔炎の治療は、通常、鼻道の排液の再構築、炎症原因の制御又は排除、及び痛みの緩和を必要とする。一般的に、医者は、うっ血を低減するための充血除去剤、細菌感染を制御するための抗生物質、及びもし痛みがあれば痛みを低減するための痛み止めを推奨する。
【0026】
薬剤での治療がうまくいかない場合、外科手術(例えば、アデノイドの除去、鼻ポリープの除去、鼻中隔彎曲の矯正、及び副鼻腔の内視鏡手術など)が、慢性副鼻腔炎を治療するための唯一の代替手段である可能性がある。本発明の方法に従うORP水溶液の投与は、抗生物質及び外科手術などのより侵襲的な療法を回避できる可能性のある代替手段として慢性副鼻腔炎及びそれと関連する炎症を治療するために使用することが出来ると考えられる。
【0027】
咽頭炎に関して、世界中で、医局、診療所及び救急治療室への全ての来診の1%から2%が咽頭炎を理由とすると見積もられている。合衆国及びメキシコにおいて、咽頭炎及び扁桃炎は、1年につきそれぞれ約1500万件及び1200万件の診察を占めていると考えられる。これらの症例は、通常、様々な細菌及びウイルスによって引き起こされる。また、A群β溶血性ストレプトコッカス(Streptococcus)によって引き起こされた咽頭炎及び扁桃炎は、小さな集団におけるリウマチ熱の危険性を著しく上昇させ得る。しかしながら、咽頭炎の症例のわずか5%から15%がこの細菌によって引き起こされたものであり、急性の症例の残りは、疫学的な関連性のほとんどない細菌及びウイルスによるものであると考えられている。後者の症例は、数日のうちに自己限定的となる傾向があり、続発症を残さない。
【0028】
世界中で多数の医者が、急性咽頭炎に対して見境いなく抗生物質を処方していることが確認されている。患者はしばしば強い抗生物質を要求する傾向があるため、これは日常の診療で起きる。不幸なことに、連鎖球菌(streptococcal)咽頭炎/扁桃炎の臨床的に正確な診断を確立することは難しく、抗生物質での急性咽頭炎/扁桃炎の治療のコスト/便益比は疑わしい。
【0029】
本発明の方法は、細菌及び/又はウイルスによる急性咽頭炎及び/又は扁桃炎の治療又は予防のための安全、有効且つコスト効率のよい補助療法を提供する。急性咽頭炎/扁桃炎の経験的治療は、本発明に従ったORP水溶液の投与から始まり得、また、ストレプトコッカスの迅速試験の展開又は結果に依存して、必要な場合にのみ抗生物質がそれから48−72時間後に開始され得る。従って、本発明の方法は、抗生物質の使用を延期させることが可能であり得、それと同時に、咽頭炎/扁桃炎がA群ストレプトコッカス由来でなければ、患者の症状(symptomatology)を低減して患者の回復を加速し得る。連鎖球菌咽頭炎/扁桃炎の治療のための本発明のORP水溶液の抗生物質との補助的使用はまた、臨床応答の期間を短縮させ得、再発率を減少させ得る。
【0030】
本発明の方法はまた、過敏症に関連する炎症の治療又は予防のためにも用いられ得る。歴史的には、過敏性反応は、深刻な疾患が起因し得る4つのタイプのうちの1つとして分類されてきた。本発明に従って投与されるORP水溶液は、1つ以上のそのような反応を治療及び/又は予防(例えば、発症の阻害、進行の阻害、又は可能性の減少)するために用いられ得る。I型過敏症は、通常、肥満細胞又は好塩基球に結合した抗体との抗原の結合に起因する。I型反応は、以前に抗原に感作されていた個体において、数分以内の抗原への曝露で起こる。ヒトでは、I型反応は、肥満細胞及び好塩基球上のFc受容体に高い親和性を持つIgEによって介在される。
【0031】
I型過敏症における肥満細胞の役割は、肥満細胞は血管及び神経付近の上皮表面下の組織に存在するため、特に重要である。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎及びアトピー性喘息において観察される複数の臨床症状は、異なる罹患組織中にある肥満細胞のIgE抗原刺激によって引き起こされる。現在受け入れられているアトピー性喘息の発症機序に対する見解は、アレルゲンが、IgE産生肺肥満細胞(MC)を誘発することによってプロセスを開始させて、いわゆる即時相反応においてヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、キニン(kininis)、血小板活性化因子(PAF)などのメディエーターを放出させるということである(参照により本明細書に組み込まれる、Kumar et al., Robbins & Cotran Pathologic Basis of Disease, 2004, pp. 193-268を参照されたい)。続いて、これらのメディエーターは、気管支収縮を引き起こし、血管透過性及び粘液産生を亢進する。このモデルによれば、遅延相における肥満細胞活性化に続いて、それらの細胞は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、IL−4、IL−5及びIL−6を含む様々なサイトカインを分泌し、それらが好酸球、抗塩基球、Tリンパ球、血小板及び単核食細胞などの他の炎症性細胞の局所的動員及び活性化に関与する。次に、これらの動員された細胞が、その後自律性となる可能性があり、また、喘息の症状を悪化させる可能性がある炎症反応の進行に寄与する。この遅延相反応は、周囲組織における変化を誘導する長期の炎症プロセスを構成する(Kumar et al., pp. 193-268)。臨床的には、I型反応は、アレルギー性鼻炎などの局所性の効果、又は掻痒、蕁麻疹、呼吸困難、及び循環虚脱を伴って現れるアナフィラキシーにおいてみられるような全身性の効果を有し得る。
【0032】
II型過敏症は、細胞表面上及び細胞外空間内の抗原を対象とする抗体によって介在される。これらの抗体は、細胞溶解を導き得るか、又は標的分子のオプソニン化(他の細胞による食作用のための前処理)をもたらし得る。或いは、抗体は、細胞表面受容体に導かれてそれを活性化し得る。II型反応に起因する状態としては、輸血反応、グレーブス病(甲状腺機能亢進症)、薬剤反応、悪性貧血及び急性リウマチ熱が挙げられる。リウマチ熱においては、抗体はストレプトコッカス抗原に対して形成されるが、心臓弁などのヒト組織と交差反応する。
【0033】
III型過敏症は、抗体と他の宿主免疫系タンパク質(最も典型的には補体タンパク質)との複合体である免疫複合体によって引き起こされる。補体と結合してそれを活性化する(active)のは、抗体の通常の機能である。しかしながら、その結果生じる高分子の免疫複合体が適切に処理されない場合、それらは持続的な組織損傷をもたらし得る。マクロファージ及びPMNLは、免疫複合体によって活性化されて、これらの細胞による毒性化学物質の放出につながり得る。免疫複合体反応は局所的であり得、また、例えばアルサス反応などの状態をもたらし得るか、又は血清病若しくは全身性エリテマトーデス(lupus erythematous)(SLE)の一部の特徴などの全身性の疾患を引き起こし得る。
【0034】
IV型過敏症は細胞介在性であり、遅延型過敏症と呼ばれることもある。IV型過敏症は、Tリンパ球によって介在され、しばしば肉芽腫性反応の形成をもたらす。肉芽腫性反応においては、類上皮(epitheloid)細胞と呼ばれるマクロファージの一形態が、抗原を消化しようとするが失敗する。抗原の存続は、更なるリンパ球を誘引するサイトカインの放出につながり、慢性的な炎症の病巣をもたらす。病巣は、隣接する細胞にとって毒性であるグランザイム及びパーフォリンを放出する高濃度の細胞傷害性(cyotoxic)Tリンパ球を有する。IV型過敏症は、例えばシェーグレン症候群、サルコイドーシス及び接触皮膚炎などの自己免疫疾患の顕著な構成要素である。
【0035】
病的状態は、異なるタイプの過敏性反応を兼ね備え得る。自己免疫疾患においては、宿主抗原が、宿主にとって深刻な結果を持つ過敏症を促進する。例えば、SLEにおいて、宿主抗原は血液細胞に対してII型反応を誘導し、一方、III型反応は血管及び腎糸球体の損傷をもたらす。更に、過敏性反応は、薬剤反応及び移植による拒絶反応などの医原性の(iatragenic)状態においてもみられる。移植による拒絶反応は、II型及びIV型過敏症の構成要素を含む。従って、移植可能な臓器又は細胞において、本発明に従って使用されるORP水溶液は、宿主によって拒絶される可能性を大きく低減することが出来た。
【0036】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、実質的に、正常な組織及び正常な哺乳動物細胞への毒性を持たないことが見出されている。本発明に従って投与されるORP水溶液は、真核細胞の生存率の有意な減少、哺乳動物細胞におけるアポトーシスの有意な増加、細胞加齢の有意な加速、及び/又は有意な酸化的DNA損傷を引き起こさない。無毒性は特に有利であって、また、本発明に従って投与されるORP水溶液の殺菌力は過酸化水素のそれとおおよそ同等であるが、それにもかかわらず正常な組織及び正常な哺乳動物細胞に対して毒性が過酸化水素よりも有意に低いことを考えると、恐らくそれは驚くべきことですらある。これらの知見は、本発明に従って投与されるORP水溶液が、例えばヒトを含む哺乳動物における使用にとって安全であることを示している。
【0037】
本発明に従って投与されるORP水溶液において、細胞の生存率は、約30分間のORP水溶液への曝露後に、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約75%である。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、最大約30分又はそれより短いORP水溶液との接触で(例えば、ORP水溶液との約30分又は約5分の接触後)、好ましくは最大約10%の細胞のみで、より好ましくは最大約5%の細胞のみで、なおより好ましくは最大約3%の細胞のみで、アネキシンVを細胞表面に顕在化させる。
【0038】
更には、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液への慢性的な曝露後に、好ましくは約15%未満の細胞で、より好ましくは約10%未満の細胞で、なおより好ましくは約5%未満の細胞で、SA−β−ガラクトシダーゼ酵素を発現させる。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、食塩水によって引き起こされるのと同等の割合の酸化的DNA付加物形成(例えば、同等の条件下で処理された細胞において過酸化水素によって通常引き起こされる酸化的DNA付加物形成の約20%未満、前記酸化的DNA付加物形成の約10%未満、又は前記酸化的DNA付加物形成の約5%以下)を引き起こす。
【0039】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、有意なRNA分解を生じない。従って、ORP水溶液への約30分間の曝露後又は約30分間の曝露から約3時間後にヒトの細胞培養物から抽出されて変性ゲル電気泳動によって分析されるRNAは、有意なRNA分解を通常示さず、また真核生物のリボソームRNA(即ち、28S及び18S)に対応する2本の別個の(discreet)バンドを通常示し、これは、本発明に従って投与されるORP水溶液がRNAを実質的に無傷のままにすることを示している。同様に、ORP水溶液への約30分間の曝露又は曝露から約3時間後にヒトの細胞培養物から抽出されたRNAは、構成的なヒトGAPDH(グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)遺伝子の逆転写及び増幅(RT−PCR)に供されて、RT−PCR産物のゲル電気泳動で強いGAPDHバンドを生じ得る。対照的に、同様の時間の間HPで処理された細胞は、有意なRNA分解を示し、GAPDHのRT−PCR産物はあったとしてもごくわずかである。
【0040】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、当技術分野で既知の任意の好適な投与方法を使用して投与することが出来る。例えば、ORP水溶液は、非経口的に、内視鏡的に、又は任意の罹患した生物組織表面(例、皮膚及び/又は1つ以上の粘膜表面)に直接投与することが出来る。非経口投与としては、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、膀胱内又は滑膜腔内へのORP水溶液の投与を使用することを挙げることができる。ORP水溶液の内視鏡的な投与としては、例えば、気管支鏡検査法、結腸鏡検査法、S状結腸鏡検査法、子宮鏡検査法(hysterscopy)、腹腔鏡検査法(laproscopy)、関節鏡検査法(athroscopy)、胃鏡検査法又は経尿道の方法の使用を挙げることができる。ORP水溶液の粘膜表面への投与としては、例えば、鼻の、口の、気管の、気管支の、食道の、胃の、小腸の、腹腔の、尿道の、肺胞の、尿道の、膣の、子宮の、卵管の、及び滑膜の粘膜表面への投与を挙げることができる。
【0041】
非経口投与としてはまた、本発明に従って使用されるORP水溶液を静脈内、皮下、筋肉内又は腹腔内に投与することも挙げることができる。本発明のORP水溶液は、例えば、ORP水溶液の静脈内投与によるウイルス性心筋炎、多発性硬化症及びAIDSの治療方法を記載している米国特許第5,334,383号及び同第5,622,848号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようにして静脈内投与され得る。その他の適用としては、上述したような任意の過敏症及び感染プロセスの治療が挙げられる。
【0042】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、例えば、液体、スプレー、ミスト、エアロゾル又はスチームとして、任意の好適なプロセス(例、エアロゾル化、ネブライゼーション又はアトマイゼーション)により局所的に投与することが出来る。本発明のORP水溶液は、スチーム又はスプレーとして上気道に投与することが出来る。ORP水溶液がエアロゾル化、ネブライゼーション又はアトマイゼーションにより投与される場合、約0.1ミクロンから約100ミクロン、好ましくは約1ミクロンから約10ミクロンの範囲の直径を有する液滴の形態で投与されるのが好ましい。一つの実施形態において、本発明の方法は、約1ミクロンから約10ミクロンの範囲の直径を有する液滴の形態で、1つ以上の粘膜組織(例、1つ以上の上気道組織及び/又は肺組織)にORP水溶液を投与することを含む。
【0043】
エアロゾル化、ネブライゼーション及びアトマイゼーションに有用な方法並びに器具は当分野で周知である。例えば、医療用ネブライザーが、定投与量の生理学的に活性な液体を、レシピエントによる吸入のために吸気気流へ送達するために使用されてきた。例えば、特許第6,598,602号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。医療用ネブライザーは、吸気気体と共にエアロゾルを形成する液滴を生み出すように機能し得る。他の状況において、医療用ネブライザーは、水滴を吸気気流に注入するために使用されて、好適な水分含有量の気体をレシピエントに提供し得るが、これは、吸気気流がレスピレータ、ベンチレータ又は麻酔送達システムなどの機械的呼吸補助器によって提供される場合に特に有用である。
【0044】
例示的なネブライザーは、例えば、WO95/01137に記載されており、これは、医療用液体の液滴を、マウスピースを通じたレシピエントの吸入によって生み出される通過気流(吸気気流)中に排出するように機能する携帯用器具を記載している。別の例は、米国特許第5,388,571号(参照により本明細書に組み込まれる)に見ることができ、これは、呼吸不全の患者に呼吸の制御及び増強を提供し、液剤粒子を患者の気道及び肺胞に送達するネブライザーを含む陽圧ベンチレータシステムを記載している。米国特許第5,312,281号(参照により本明細書に組み込まれる)は、超音波ネブライザーを記載しており、これは、水又は液体を低温で霧化し、ミストのサイズを調整することができると報告されている。更に、米国特許第5,287,847号(参照により本明細書に組み込まれる)は、医薬のエアロゾルを新生児、小児及び成人に送達するための、測量可能な流速及び排出体積を有する気体ネブライジング装置を記載している。更には、米国特許第5,063,922号(参照により本明細書に組み込まれる)は超音波アトマイザーを記載している。ORP水溶液はまた、肺及び/又は気道内の感染症の治療のため或いは体のそのような部分における創傷の治癒のために、吸気システムの一部としてエアロゾル形態で投与されてもよい。
【0045】
より大規模な用途のために、これらに限定されないが、加湿器、噴霧器(mister)、噴霧器(fogger)、バポライザー、アトマイザー、ウォータースプレー及び他のスプレー器具を含む好適な器具を使用してORP水溶液を空気中に分散してもよい。そのような器具は、継続的なORP水溶液の投与を可能にする。ノズル中で空気と水とを直接混合する排出装置を採用してもよい。ORP水溶液は、低圧蒸気などの蒸気に転換されて気流中に放出され得る。超音波加湿器、蒸気加湿器(stream humidifier)又はバポライザー、及び気化式加湿器などの様々な種類の加湿器を用いてもよい。ORP水溶液を分散させるために使用される特定の器具は、換気システムに組み込まれて、家又は保健医療施設(例、病院、養護施設など)の全体にわたるORP水溶液の広範な適用を提供し得る。
【0046】
本発明によれば、ORP水溶液は、単独で又は1種以上の医薬上許容される担体(例、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、希釈剤、及びそれらの組み合わせなど)と組み合わせて投与することができ、前記医薬上許容される担体は、ORP水溶液中に存在する1種以上の種(species)と相溶性があることが好ましい。当業者は、本発明に従って使用されるORP水溶液を投与するための適切な調剤及び方法を容易に決定できる。投与量における任意の必要な調整が、例えば副作用及び患者の全身状態の変化などの1つ以上の臨床上関係する要素の観点から技術を持つ施術者によって容易になされて、治療されている状態の性質及び/又は重篤度に対処することができる。
【0047】
例えば、ORP水溶液は、最大約25%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体と、最大約50%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体と、最大約75%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体と、最大約90%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体と、最大約95%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体と、又は更には最大約99%(重量/重量又は体積/体積)若しくはそれを上回る好適な担体と、ORP水溶液を組み合わせること又は希釈することによって調合され得る。好適な担体としては、例えば、水(例、蒸留水、無菌水(例、注射用の無菌水、無菌食塩水など))を挙げることができる。好適な担体としてはまた、米国特許出願第10/916,278号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載された1種以上の担体も挙げることができる。例示的な調剤としては、例えば、ORP水溶液が無菌水又は無菌食塩水で希釈されており、ORP水溶液が、最大約25%(体積/体積)の、最大約50%(体積/体積)の、最大約75%(体積/体積)の、最大約90%(体積/体積)の、最大約95%(体積/体積)の、又は最大99%(体積/体積)若しくはそれを上回る、好適な担体で希釈されている溶液を挙げることが出来る。
【0048】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、1種以上のさらなる治療剤(例、抗菌剤(例、抗生物質)、抗ウイルス剤、抗炎症剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の活性化合物)とさらに組み合わせる(又は併用して投与する)ことが出来る。
【0049】
本発明の文脈において、患者(例、哺乳動物、特にヒト)に投与される治療有効量は、適当な時間枠にわたって患者において治療的又は予防的な反応をもたらすのに十分でなければならない。投与量は、当分野において周知の方法を用いて容易に決定され得る。当業者は、任意の特定の患者に対する具体的な投薬量レベルは、様々な治療上関係し得る要因に依存することを認識するであろう。例えば、投与量は、用いられる特定のORP水溶液の強度、状態の重篤度、患者の体重、患者の年齢、患者の肉体的及び精神的状態、全般的な健康、性別、食事、適用の頻度などに基づいて決定され得る。投与量の規模はまた、特定のORP水溶液の投与に付随する可能性のあるあらゆる副作用の存在、性質及び程度に基づいて決定され得る。可能であれば常に、副作用を最小限に保つことが望ましい。
【0050】
具体的な投薬量のために考慮され得る因子としては、例えば、生物学的利用能、代謝プロファイル、投与時間、投与経路、排出速度、及び特定の患者における特定のORP水溶液に関連した薬力学などを挙げることができる。他の因子としては、例えば、治療される特定の状態に関するORP水溶液の効力又は有効性、治療過程前又は治療経過中に現れる症状の重篤度などを挙げることができる。場合によっては、治療有効量を構成するものは、特定の状態の治療又は予防のための特定のORP水溶液の有効性を、合理的に、臨床的に予測する1つ以上のアッセイ(例えば、バイオアッセイ)を用いることによっても部分的に決定され得る。
【0051】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、患者(例、ヒト)に対して、例えば現存の状態を治療するために、単独で又は1種以上の更なる治療剤と組み合わせて投与され得る。本発明のORP水溶液はまた、状態に関連した1種以上の原因物質に曝露されてきた患者(例、ヒト)に対して、単独で又は1種以上の更なる治療剤と組み合わせて、予防的に投与され得る。例えば、ORP水溶液は、1種以上の炎症誘発微生物(例、感染症、ウイルス、細菌及び/又は真菌)(又は過敏性エピトープ若しくはアレルゲン)に曝露されてきた患者に対して、該患者における微生物又はエピトープに関連する炎症(及び感染症さえも)を阻害又は可能性を減少させるために、或いはそのような曝露の結果として発現する炎症(及び感染症又はアレルギーさえも)の重篤度を低減するために、予防的に好適に投与することができる。
【0052】
本発明に従って使用されるORP水溶液を投与する好適な方法が利用可能であり、また、複数の投与経路を用いることができるとはいえ、特定の経路が別の経路よりも迅速かつ有効な反応をもたらし得ることを当業者は理解するであろう。治療有効量は、1日あたりの適用の回数に関係なく、個々の患者においてORP水溶液の「有効レベル」を達成するのに必要な投与量であり得る。治療有効量は、例えば、患者における状態を予防又は治療するための、ORP水溶液(又はそこに含まれる1種以上の活性種)の血中レベル、組織内レベル及び/又は細胞内レベルを達成するために個々の患者に投与される必要がある量として定義され得る。
【0053】
投薬の好ましいエンドポイントとして有効レベルを用いる場合、実際の投与量及び投与計画は、例えば、薬物動態、分布、代謝などにおける個体差によって変化し得る。有効レベルはまた、ORP水溶液が、1種以上の更なる治療剤(例、1種以上の抗感染症剤、1種以上の「緩和剤」、「調節剤」又は「中和剤」(例、米国特許第5,334,383号及び同第5,622,848号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたようなもの)、及び1種以上の抗炎症剤など)と組み合わせて用いられる場合、変化し得る。
【0054】
有効レベルの決定及び/又はモニタリングのために、適切な指標が用いられ得る。例えば、有効レベルは、適切な患者サンプル(例、血液及び/又は組織)の直接的な分析(例、分析化学)又は間接的な分析(例えば、臨床化学的指標を用いる)によって決定され得る。有効レベルはまた、例えば、尿代謝産物の濃度、状態と関連するマーカー(例、ウイルス感染の場合のウイルス数)の変化、組織病理及び免疫化学的分析、画像解析(例、X線、CTスキャン、NMR、PETなど)における肯定的な変化、核医学検査、並びに状態と関連する症状の低減などの直接的又は間接的な観察によっても決定することが出来る。
【0055】
従来のORP水溶液は、極度に限られた品質保持期限を持っており、通常わずか数時間である。この短い寿命の結果、従来のORP水溶液の使用は、その製造が使用する場所の近くで行われることを必要とする。現実的な観点からは、このことは、施設(例、病院などの保健医療施設)が、従来のORP水溶液を製造するために必要な設備を購入し、保管し、維持しなければならないことを意味している。更に、従来の製造技術では、充分な商業規模の量を製造して、広範な使用(例、保健医療施設用の一般的な殺菌剤として)を可能にすることはできなかった。
【0056】
従来のORP水溶液とは異なり、本発明に従って投与されるORP水溶液は、その調製後少なくとも約20時間安定である。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、通常環境的に安全であり、従って、コストのかかる廃棄手順の必要性を回避する。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは少なくとも約1週間(例、1週間、2週間、3週間、4週間又はそれを上回って)、より好ましくは少なくとも約2ヶ月間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、なおより好ましくは少なくとも約6ヶ月間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、更により好ましくは少なくとも約1年間安定であり、最も好ましくは約1年間を超えて(例、少なくとも約2年間又は少なくとも約3年間)安定である。
【0057】
安定性は、その調製後に所定の時間の間、通常の保存条件下(例、室温)でORP水溶液が1つ以上の用途(例、肥満細胞の脱顆粒の阻害、サイトカイン分泌の阻害、汚染除去、殺菌、滅菌、抗菌クレンジング、及び創傷のクレンジング)のために好適なままである能力に基づいて測ることができる。本発明に従って投与されるORP水溶液の安定性はまた、ORP水溶液が、好ましくは最大約90日間安定、より好ましくは最大約180日間安定である、加速条件下(例、約30℃から約60℃)での保存によっても測ることができる。
【0058】
安定性はまた、ORP水溶液の品質保持期限の間の、溶液中に存在する1種以上の種(又はその前駆体)の経時的な濃度に基づいて測ることもできる。好ましくは、1種以上の種(例えば、遊離塩素、次亜塩素酸(hypocholorous acid)、及び1種以上の更なる超酸化水種及び)の濃度は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ヶ月間、その初期濃度の約70%以上に維持される。より好ましくは、1種以上のそれらの種の濃度は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ヶ月間、その初期濃度の約80%以上に維持される。なおより好ましくは、1種以上のそのような種の濃度は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ヶ月間、その初期濃度の約90%以上に維持され、最も好ましくは約95%以上に維持される。
【0059】
安定性はまた、ORP水溶液への曝露後にサンプル中に存在する生物の量の減少に基づいて決定することもできる。生物濃度の減少の測定は、例えば、細菌、真菌、酵母又はウイルスを含む任意の好適な生物に基づいてなされ得る。好適な生物としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及びバチルス・アトロフェーアス(Bacillus athrophaeus)(かつてのB.スブチリス(B. subtilis))を挙げることができる。
【0060】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、生存する微生物の濃度を4log(104)減少させることができる低レベルの殺菌剤として機能することができ、また、生存する微生物の濃度を6log(106)減少させることができる高レベルの殺菌剤としても機能することができる。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、溶液の調製から少なくとも約2ヶ月後の測定で、1分間の曝露後の総生物濃度において、少なくとも4log(104)の減少をもたらすことが可能である。ORP水溶液は、より好ましくは、溶液の調製から少なくとも約6ヶ月後の測定で、生物濃度の104−106の減少が可能である。ORP水溶液は、なおより好ましくは、溶液の調製から少なくとも約1年後の測定で、そして最も好ましくはORP水溶液の調製から約1年より後(例、少なくとも約2年後又は少なくとも約3年後)の測定で、生物濃度の104−106の減少が可能である。
【0061】
例えば、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製(BioSciences Labs, Montana, US)から少なくとも2ヶ月後の測定で、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、エシェリヒア・コリ、エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アシネトバクタースピーシズ、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(VRE、MDR)、ヘモフィルス・インフルエンザ、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ヘモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、カンジダ・アルビカンスからなる群からの生存する微生物サンプルの濃度を、30秒以内の曝露で、少なくとも約5log(105)減少させることが可能であり得る。ORP水溶液は、好ましくは調製から少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、これら全ての生物の105の減少を達成する能力がある。
【0062】
本発明はまた、バイオフィルム内の細菌(例、バイオフィルム内のシュードモナス・エルギノーザ)を殺菌するための方法も提供する。本発明は更に、モラクセラ・カタラーリス(Moraexlla catarrhalis)及び抗生物質(antibotic)耐性細菌(例、ペニシリン耐性ストレプトコッカス)を殺菌するための方法を提供する。本明細書中に開示する方法は、ORP水溶液を使用して細菌を殺菌するために本発明に従って使用することが出来、バシトラシンを使用するよりも早い。
【0063】
一つの実施形態において、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、エシェリヒア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウス及びカンジダ・アルビカンスを含むがこれらに限定されない生存する微生物サンプルを、約1分間以内の曝露で、約1×106生物数/mlと約1×108生物数/mlとの間の初期濃度から、約0生物数/mlの最終濃度へ減少させ得る。これは、約6log(106)から約8log(108)の生物濃度の減少に相当する。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、エシェリヒア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウス又はカンジダ・アルビカンス生物の106−108の減少を達成することが可能である。
【0064】
或いは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約5分間以内の曝露で、バチルス・アトロフェーアス胞子の胞子懸濁液の濃度において約6log(106)の減少を生じさせ得る。好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、バチルス・アトロフェーアス胞子の濃度において約106の減少を達成し得る。
【0065】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約30秒間以内の曝露で、バチルス・アトロフェーアス胞子の胞子懸濁液の濃度において約4log(104)の減少を生じさせ得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、バチルス・アトロフェーアス胞子の濃度において、この減少を達成し得る。
【0066】
本発明に従って投与されるORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約5分から約10分以内の曝露で、アスペルギリス・ニガー(Aspergillis niger)胞子などの真菌胞子の濃度において約6log(106)の減少を生じさせ得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、真菌胞子の濃度において106の減少を達成し得る。
【0067】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、酸性であっても、中性であっても、塩基性であってもよく、通常約1から約14のpHを有し得る。このpH域内で、ORP水溶液は、例えば表面に対して、該表面を損傷したりORP水溶液と接触することになる対象物(ヒトの皮膚など)を害したりすることなく、適当な量で安全に適用され得る。好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液のpHは、約3から約8である。より好ましくは、ORP水溶液のpHは約6.4から約7.8であり、なおより好ましくは、pHは約7.4から約7.6である。
【0068】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、約−1000ミリボルト(mV)から約+1150ミリボルト(mV)の酸化還元電位を持ち得る。この電位は、溶液が金属電極によって感知される電子を受容するか受け渡す傾向(即ち、潜在性)の尺度であり、同溶液中の参照電極と比較される。この電位は、例えば、例えば銀/塩化銀電極などの標準参照に対するORP水溶液のミリボルト単位での電気ポテンシャルを測定することを含む、標準的な技術によって測定され得る。
【0069】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、約−400mVから約+1300mVの電位を有する。より好ましくは、ORP水溶液は、約0mVから約+1250mVの電位を有し、なおより好ましくは約+500mVから約+1250mVの電位を有する。更により好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、約+800mVから約+1100mVの電位を有し、最も好ましくは約+800mVから約+1000mVの電位を有する。
【0070】
本発明に従って投与されるORP水溶液中には、様々なイオン種及び他の種が存在してもよい。例えば、ORP水溶液は、塩素(例、遊離塩素及び結合塩素)及び溶解酸素、並びに任意でオゾン及び過酸化物(例、過酸化水素)を含有してもよい。1種以上のこれらの種の存在は、少なくとも、細菌及び真菌並びにウイルスなどの様々な微生物を殺すORP水溶液の殺菌能に寄与すると思われる。いずれの特定の理論にも縛られることを望まないが、又はそれより多い(or more of)そのような種もまた、ORP水溶液の抗炎症効果に寄与し得ると思われる。
【0071】
遊離塩素としては、典型的には、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO−)、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)及びそれらの前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。次亜塩素酸の次亜塩素酸イオンに対する比は、pHに依存する。pH7.4では、次亜塩素酸レベルは、通常約25ppmから約75ppmである。温度もまた、遊離塩素成分の割合に影響する。
【0072】
結合塩素としては、典型的に、例えばアンモニア又は有機アミンと化学結合している塩素(例、クロラミン)が挙げられる。結合塩素は、最大約20ppmの量で存在することが好ましい。
【0073】
1種以上の塩素種、1種以上のさらなる超酸化水種(例、例えば、酸素などの1種以上のさらなる酸化種)は、任意の適切な量で、本発明に従って投与されるORP水溶液中に存在し得る。これらの成分のレベルは、当技術分野において既知の方法を含む、任意の好適な方法により測定され得る。
【0074】
遊離塩素種の総量は、好ましくは約10ppmから約400ppm、より好ましくは約50ppmから約200ppm、最も好ましくは約50ppmから約80ppmである。次亜塩素酸の量は、好ましくは、約15ppmから約35ppmである。次亜塩素酸ナトリウムの量は、好ましくは、約25ppmから約50ppmの範囲内である。任意として、二酸化塩素レベルは約5ppmより低いことが好ましい。
【0075】
塩素含有量は、DPD比色法(Lamotte社、チェスタータウン、メリーランド州)、又は、例えば米国環境保護局によって確立された方法などの他の公知の方法のような、当該分野で公知の方法によって測定され得る。DPD比色法では、遊離塩素とN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)との反応によって黄色が形成され、パーツ・パー・ミリオンでの出力を与える目盛り付きの熱量計でその強度が測定される。ヨウ化カリウムを更に添加することによって、溶液がピンク色に転じ、総塩素値が得られる。次いで、総塩素から遊離塩素を差し引くことによって、存在する結合塩素の量が決定される。
【0076】
ORP水溶液中に存在する酸化化学種の総量は、好ましくは、約2ミリモル濃度(mM)の範囲内であり、これには、上記の塩素種、酸素種、及び更なる種(例えばCl−、ClO3、Cl2−、ClOxなどの測定するのが困難であり得る種を含む)が含まれる。
【0077】
一つの実施形態において、本発明に従って投与されるORP水溶液は、1種以上の塩素種及び1種以上の更なる超酸化水種(例、例えば酸素などの1種以上の更なる酸化種)を含む。好ましくは、存在する塩素種は、遊離塩素種である。遊離塩素種としては、次亜塩素酸(HOCl)、次亜塩素酸イオン(OCl−)、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、塩化物イオン(Cl−)、及び任意で、二酸化塩素(ClO2)、溶解塩素ガス(Cl2)、それらの前駆体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の種を挙げることができる。
【0078】
一つの実施形態において、ORP水溶液は、1種以上の塩素種又は1種以上のそれらの前駆体、及び1種以上の更なる酸化水種又は1種以上のそれらの前駆体、及び任意で過酸化水素を含み、且つ、その調製から少なくとも約24時間、好ましくは少なくとも約1週間、より好ましくは少なくとも約(at about least)2ケ月間、なおより好ましくは少なくとも約6ケ月間、安定である。そのようなORP水溶液は、更により好ましくは少なくとも約1年間、最も好ましくは約1年を越えて(例えば、少なくとも約2年、又は少なくとも約3年)、安定である。
【0079】
ORP水溶液が、1種以上の塩素種(例、次亜塩素酸及び次亜塩素酸ナトリウム)又は1種以上のそれらの前駆体、及び1種以上の更なる超酸化水種(例、1種以上の酸素種、溶解酸素)又は1種以上のそれらの前駆体を含み、且つ、約6から約8のpHを有することもまた、好ましい。より好ましくは約6.2から約7.8、最も好ましくは約7.4から約7.6である。本発明に従って投与される例示的なORP水溶液は、例えば、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウム、約1ppmから約4ppmの1種以上の更なる超酸化水種を含んで約6.2から約7.8のpHであり得、且つ、少なくとも約1週間(例、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、又は約1年を超えて(例、少なくとも約2年又は少なくとも約3年))安定であり得る。
【0080】
決して本発明を限定するわけではないが、pH及び他の変数(例、塩分)の制御により、例えば次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンなどの1種以上の塩素種又はそれらの前駆体、及び1種以上の更なる超酸化水種(例、酸素)又は1種以上のそれらの前駆体を含有する安定なORP水溶液を与えることができると思われる。
【0081】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、鉄への曝露でフリーラジカル(例えば、ヒドロキシルラジカル類など)をもたらし得る1種以上の酸化水種を含む。水酸化ナトリウム、二酸化塩素、過酸化水素及びオゾンは、次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応して他の化学種の消費及び生成をもたらす可能性があることが報告されてきたとはいえ、ORP水溶液は、任意で、その製造中に生成される例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、二酸化塩素(ClO2)、過酸化物(例えば、過酸化水素(H2O2))及びオゾン(O3)などの1種以上の化合物を含み得る。
【0082】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば電解プロセス又は酸化還元反応による酸化還元法によって製造することが出来、そこでは、電気エネルギーが水溶液中で1つ以上の化学的な変化を引き起こすために使用される。好適なORP水溶液を調製するための例示的な方法は、例えば、米国特許出願公開US2005/0139808号及び同US2005/0142157号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0083】
電解プロセスにおいて、電気エネルギーは、電流形態での一つの点から別の点への電荷の伝導によって水中に導入され、水中を運ばれる。電流が生じ、存続するためには、水中に電荷担体が存在しなければならず、また、その担体を動かす力がなければならない。電荷担体は、金属及び半導体の場合のように電子であり得るか、又は溶液の場合は陽イオン及び陰イオンであり得る。還元反応はカソードで起こり、酸化反応はアノードで起こる。起こると思われる還元及び酸化反応の少なくとも一部は、国際出願WO03/048421 A1号に記載されている。
【0084】
本明細書で使用される場合、アノードで生成される水をアノード水といい、カソードで生成される水をカソード水という。アノード水は、通常、電解反応で生成される酸化種を含有し、カソード水は、通常、該反応からの還元種を含有する。アノード水は、一般に、通常約1から約6.8の低いpHを有する。アノード水は、好ましくは、例えば塩素気体、塩化物イオン、塩酸及び/又は次亜塩素酸、或いは1種以上のそれらの前駆体を含む様々な形態の塩素を含有する。例えば酸素気体、及び場合により、製造中に形成される1種以上の種(例、過酸化物及び/又はオゾン)、又は1種以上のそれらの前駆体を含む、様々な形態の酸素もまた、好ましくは存在する。カソード水は、一般に、通常約7.2から約11の高いpHを有する。カソード水は、水素気体、ヒドロキシルラジカル及び/又はナトリウムイオンを含有し得る。
【0085】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、アノード水(例えば、電解セルのアノードチャンバーで生成される水)とカソード水(例えば、電解セルのカソードチャンバーで生成される水)との混合物を含み得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、例えば該溶液の約10体積%から約90体積%の量でカソード水を含有する。より好ましくは、カソード水は、溶液の約10体積%から約50体積%、なおより好ましくは溶液の約20体積%から約40体積%(例えば、溶液の約20体積%から約30体積%)の量でORP水溶液中に存在する。更に、アノード水は、例えば、溶液の約50体積%から約90体積%の量でORP水溶液中に存在し得る。例示的なORP水溶液は、約10体積%から約50体積%のカソード水及び約50体積%から約90体積%のアノード水を含有し得る。アノード水及びカソード水は、図1に示した3チャンバーの電解セルを使用して製造され得る。
【0086】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、アノードチャンバー、カソードチャンバー、及びアノードチャンバーとカソードチャンバーとの間に位置する塩溶液チャンバーを含む少なくとも1つの電解セルを用いて製造され、ここで少なくとも一部のアノード水及びカソード水は、ORP水溶液がアノード水及びカソード水を含むよう混ぜ合わせられる。例示的なORP水溶液の調製に用いられ得る例示的な3チャンバーの電解セルの図解を図2に示す。
【0087】
電解セル100は、アノードチャンバー102、カソードチャンバー104及び塩溶液チャンバー106を有する。塩溶液チャンバーは、アノードチャンバー102とカソードチャンバー104との間に位置する。アノードチャンバー102は、インレット108及びアウトレット110を有して、アノードチャンバー100を通る水の流れを可能にしている。同様に、カソードチャンバー104は、インレット112及びアウトレット114を有して、カソードチャンバー104を通る水の流れを可能にしている。塩溶液チャンバー106は、インレット116及びアウトレット118を有する。電解セル100は、好ましくは、全てのコンポーネントをひとまとめに保つためのハウジングを含む。
【0088】
アノードチャンバー102は、アノード電極120及びアニオンイオン交換膜122によって塩溶液チャンバーから分離されている。アノード電極120は、アノード電極120と塩溶液チャンバー106との間に位置する膜122と共に、アノード電極120がアノードチャンバー102に隣接して配置されてもよい。或いは、膜122は、膜122と塩溶液チャンバー106との間に位置するアノード電極120と共に、膜122がアノードチャンバー102に隣接して配置されてもよい。
【0089】
カソードチャンバー104は、カソード電極124及びカソードイオン交換膜126によって塩溶液チャンバーから分離されている。カソード電極124と塩溶液チャンバー106との間に位置する膜126と共に、カソード電極124がカソードチャンバー104に隣接して配置されてもよい。或いは、膜126と塩溶液チャンバー106との間に位置するカソード電極124と共に、膜126がカソードチャンバー104に隣接して配置されてもよい。
【0090】
電極は、好ましくは、金属から構成され、電位がアノードチャンバーとカソードチャンバーとの間に印加されるのを可能にする。金属電極は、一般に平面的であり、イオン交換膜と同様の寸法及び断面積を有する。電極は、イオン交換膜の表面のかなりの部分がそれぞれのアノードチャンバー及びカソードチャンバー中で水に露出されるように構成されている。これにより、塩溶液チャンバーとアノードチャンバーとカソードチャンバーとの間でのイオン種の移動が可能となる。好ましくは、電極は、電極表面にわたって均等に配置された複数の通路又は開口部を有する。
【0091】
電位源は、アノード電極120及びカソード電極124に接続され、アノードチャンバー102で酸化反応を、カソードチャンバー104で還元反応を引き起こす。
【0092】
電解セル100で使用されるイオン交換膜122及び126は、塩溶液チャンバー106とアノードチャンバー102との間での例えば塩化物イオン(Cl−)などのイオンの交換、及び塩溶液塩溶液チャンバー106とカソードチャンバー104との間での例えばナトリウムイオン(Na+)などのイオンの交換を可能にする、任意の好適な素材から構成され得る。アノードイオン交換膜122及びカソードイオン交換膜126は、同一又は異なる構成素材から作られていてもよい。好ましくは、アノードイオン交換膜は、フッ素化ポリマーを含む。好適なフッ素化ポリマーとしては、例えば、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、並びにペルフルオロスルホン酸/PTFEコポリマー及びペルフルオロスルホン酸/TFEコポリマーなどのコポリマーが挙げられる。イオン交換膜は、素材の単層又は複数層から構成され得る。好適なイオン交換膜ポリマーとしては、Nafion(登録商標)という商標のもとで販売されている1以上のイオン交換膜ポリマーが挙げられる。
【0093】
電解セル100のアノードチャンバー102及びカソードチャンバー104のための水の源は、任意の好適な給水であり得る。水は、市の上水道からでもよく、或いは電解セルでの使用前に前処理されてもよい。好ましくは、水は前処理され、軟水、精製水、蒸留水及び脱イオン化水からなる群から選択される。より好ましくは、前処理された水の源は、逆浸透精製装置を用いて得られる超純水である。
【0094】
塩水(salt water)チャンバー106で使用するための塩水溶液としては、ORP水溶液を製造するために好適なイオン種を含有する任意の塩水溶液を挙げることができる。好ましくは、塩水溶液は、食塩溶液とも通常言われる、塩化ナトリウム(NaCl)塩水溶液である。他の好適な塩溶液としては、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウムなどの他の塩化物塩、並びにカリウム塩及び臭素塩などの他のハロゲン塩を挙げることができる。塩溶液は、塩の混合物を含有してもよい。
【0095】
塩溶液は、任意の好適な濃度を有し得る。例えば、塩溶液は、飽和であっても濃縮されていてもよい。好ましくは、塩溶液は、飽和塩化ナトリウム溶液である。
【0096】
図2は、本発明と関連して有用な3チャンバーの電解セルで生成される種々のイオン種であると思われるものを示している。3チャンバーの電解セル200は、アノードチャンバー202、カソードチャンバー204及び塩溶液チャンバー206を含む。アノード208及びカソード210への適切な電流の印加時に、塩溶液チャンバー206を通って流れる塩溶液中に存在するイオンは、アノードイオン交換膜212及びカソードイオン交換膜214を通じて、それぞれ、アノードチャンバー202及びカソードチャンバー204を通って流れる水中に移動する。
【0097】
陽イオンは、塩溶液チャンバー206を通って流れる塩溶液216から、カソードチャンバー204を通って流れるカソード水218に移動する。陰イオンは、塩溶液チャンバー206を通って流れる塩溶液216から、アノードチャンバー202を通って流れるアノード水220に移動する。
【0098】
好ましくは、塩溶液216は、ナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl−)イオンとの両方を含有する塩化ナトリウム(NaCl)水溶液である。陽イオンNa+は、塩溶液216からカソード水218に移動する。陰イオンCl−は、塩溶液216からアノード水220に移動する。
【0099】
ナトリウムイオン及び塩化物イオンは、アノードチャンバー202及びカソードチャンバー204において、更なる反応を受け得る。例えば、塩化物イオンは、アノード水220中に存在する種々の酸素イオン及び他の種(例、酸素含有フリーラジカル、O2、O3)と反応して、ClOn−及びClO−を生成し得る。酸素フリーラジカル、水素イオン(H+)、酸素(例えばO2として)、オゾン(O3)及び過酸化物の形成を含む他の反応も、アノードチャンバー202で起こり得る。カソードチャンバー204において、水素気体(H2)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化物イオン(OH−)及び他のラジカルが形成され得る。
【0100】
ORP水溶液を製造するための装置はまた、少なくとも2つの3チャンバーの電解セルを含むように構成され得る。各電解セルは、アノードチャンバー、カソードチャンバー、及びアノードチャンバーとカソードチャンバーとを分離する塩溶液チャンバーを含む。装置は、電解セルによって生成されたアノード水及び1つ以上の電解セルによって生成されたカソード水の一部を集めるための混合タンクを含む。好ましくは、装置は、電解セルの塩溶液チャンバーに供給される塩溶液の再利用を可能にするために塩再循環システムを更に含む。2つの電解セルを用いてORP水溶液を製造するための例示的なプロセスの図解を図3に示す。
【0101】
プロセス300は、2つの3チャンバーの電解セル、具体的には第1電解セル302及び第2電解セル304を含む。水は、水源305から第1電解セル302のアノードチャンバー306及びカソードチャンバー308へ、並びに第2電解セル304のアノードチャンバー310及びカソードチャンバー312へ、移送されるか、ポンプされるか、又は他の方法で分配される。好都合なことに、このプロセスは、約1リットル/分から約50リットル/分のORP水溶液を製造できる。製造容量は、更なる電解セルを用いることによって増加され得る。例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれより多い3チャンバーの電解セルを用いて、本発明に従って投与されるORP水溶液の生産量を増加させてもよい。
【0102】
アノードチャンバー306及びアノードチャンバー310で生成されるアノード水は、混合タンク314に集められる。カソードチャンバー308及びカソードチャンバー312で生成されるカソード水の一部は、混合タンク314に集められてアノード水と合わさる。本プロセスで生成されるカソード水の残りの部分は廃棄される。カソード水は、任意で、混合タンク314への添加前に、ガス分離器316及び/又はガス分離器318に供されてもよい。ガス分離器は、製造プロセス中にカソード水中で形成される水素気体などの気体を除去する。
【0103】
混合タンク314は、再循環ポンプ315に任意で連結されて、電解セル302及び304からのアノード水とカソード水の一部との均一な混合を可能とする。更に、混合タンク314は、ORP水溶液のレベル及びpHをモニターするのに好適な器具を任意で含み得る。ORP水溶液は、混合タンクの場所又はその近くでの殺菌若しくは消毒に適用するために、ポンプ317を通じて混合タンク314から移送され得る。或いは、ORP水溶液は、離れた場所(例、倉庫、病院など)への出荷のために1つ以上の好適な容器に分配され得る。
【0104】
プロセス300は、塩溶液再循環システムを更に含んで、第1電解セル302の塩溶液チャンバー322へ、及び第2電解セル304の塩溶液チャンバー324へ、塩溶液を与える。塩溶液は、塩タンク320において調製される。塩は、ポンプ321を通じて塩溶液チャンバー322及び324へ移送される。好ましくは、塩溶液は、まず塩溶液チャンバー322、次いで塩溶液チャンバー324を通って順次流れる。或いは、塩溶液は、両方の塩溶液チャンバーへ同時にポンプされ得る。
【0105】
塩タンク320へ戻る前に、塩溶液は、混合タンク314中の熱交換器326を通って流れて、必要に応じてORP水溶液の温度を制御し得る。
【0106】
塩溶液中に存在するイオンは、第1電解セル302及び第2電解セル304において、時間と共に枯渇する。更なるイオン源が混合タンク320に定期的に加えられて、アノード水及びカソード水へ移送されるイオンを補給し得る。更なるイオン源は、例えば、時間と共に下がる(即ち、酸性化する)ことがある塩溶液のpHを一定に保つために使用され得る。更なるイオン源は、例えば、例えば塩化ナトリウムなどの塩を含む任意の好適な化合物であり得る。好ましくは、アノード水及びカソード水へ移送されるナトリウムイオン(Na+)を補給するために、水酸化ナトリウムが混合タンク320へ添加される。
【0107】
調製後、ORP水溶液は、例えば保健医療施設(例、病院、養護施設、医院、外来手術センター、歯科医院などを含む)などのエンドユーザーへの配給及び販売のために、1種以上の好適な容器(例、密封容器)に移され得る。好適な容器としては、例えば、容器に入れられたORP水溶液の無菌性及び安定性を維持する密封容器を挙げることができる。容器は、ORP水溶液と適合する任意の素材から構成され得る。好ましくは、容器は、一般に、ORP水溶液中に存在する1種以上のイオン又は他の種と非反応性である。
【0108】
好ましくは、容器は、プラスチック又はガラスから構成される。容器が棚に保存されることが可能であるよう、プラスチックは硬質であり得る。或いは、容器は、柔軟であり得る(例、例えば柔軟な袋などの軟質プラスチック製の容器)。
【0109】
好適なプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、シクロオレフィン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、容器は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群から選択される1種以上のポリエチレンを含む。最も好ましくは、容器は高密度ポリエチレンで構成される。
【0110】
容器は、好ましくは、ORP水溶液の分配を可能とする開口部を有する。容器の開口部は、任意の好適な方法で密封され得る。例えば、容器は、ネジ切りキャップ又は栓で密封され得る。任意で、開口部はホイルの層で更に密封され得る。
【0111】
密封容器の上部の気体は、空気、又はORP水溶液中の1種以上の種と好ましくは反応しない任意の他の好適な気体であり得る。好適な上部の気体としては、例えば、窒素、酸素及びそれらの混合物が挙げられる。
【0112】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば1種以上の感染性病原体(例えば感染性微生物など)による感染症の予防又は治療のためにも用いられ得る。そのような微生物としては、例えば、ウイルス、細菌及び真菌を挙げることができる。ウイルスとしては、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、コクサッキーウイルス、HIV、ライノウイルス(rhinovirus)及びインフルエンザウイルスからなる群から選択される1種以上のウイルスを挙げることができる。細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウス及びマイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobaterium tuberculosis)からなる群から選択される1種以上の細菌を挙げることができる。真菌としては、例えば、カンジダ・アルビカンス、バチルス・スブチリス及びバチルス・アトロフェーアスからなる群から選択される1種以上の真菌を挙げることができる。
【0113】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、アデノウイルスに対して効果的であり得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液への約20分間の曝露の後、より好ましくは約15分間の曝露の後、なおより好ましくは約10分間の曝露の後、好ましくは約2を上回る、より好ましくは約2.5を上回る、なおより好ましくは約3を上回る、アデノウイルス負荷におけるログ10の減少を達成する。本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、ORP水溶液への約5分間の曝露の後、好ましくは約2を上回るログ減少係数で、より好ましくは約2.5を上回るログ減少係数で、なおより好ましくは約3を上回るログ減少係数で、HIV−1のウイルス負荷を減少させるために効果的であり得る。
【0114】
本発明の方法によれば、感染症の予防又は治療のためのORP水溶液の投与は、本明細書に記載するような感染(又は罹患組織)に関連する炎症を予防又は治療するためにも役立ち得る。
【0115】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、例えば1つ以上の障害のある又は損傷した組織を治療有効量のORP水溶液に接触させることによって、障害のある又は損傷した組織を治療するためにも用いられ得る。障害のある又は損傷した組織を治療するために、任意の好適な方法が、障害のある又は損傷した組織を接触させるために用いることができる。例えば、障害のある又は損傷した組織は、障害のある又は損傷した組織を治療有効量のORP水溶液に接触させるようにして、該組織にORP水溶液を注ぐすることによって治療され得る。ORP水溶液は、障害のある又は損傷した組織を治療有効量のORP水溶液に接触させるようにして、本明細書に記載されたように、スチーム又はスプレーとして、或いはエアロゾル化、ネブライゼーション又はアトマイゼーションによって投与され得る。
【0116】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば外科手術によって障害を持った又は損傷した組織の治療のために用いられ得る。例えば、ORP水溶液は、切開によって障害を持った又は損傷した組織を治療するために用いられ得る。更に、ORP水溶液は、口腔外科手術、グラフト手術、インプラント手術、トランスプラント手術、焼灼、切断、放射線照射、化学療法及びそれらの組み合わせによって障害を持った又は損傷した組織の治療のために用いられ得る。口腔外科手術としては、例えば、例として根管手術、抜歯、歯肉手術などの歯科外科手術を挙げることができる。
【0117】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、必ずしも外科手術によって引き起こされるものではない、1つ以上の、熱傷、切り傷、擦り傷、掻き傷、発疹、潰瘍、刺創及びそれらの組み合わせなどによって障害を持った又は損傷した組織を治療するために用いられ得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、感染した、障害のある又は損傷した組織、或いは感染症によって障害を持った又は損傷した組織を治療するために用いられ得る。このような感染症は、例えば、本明細書に記載したようなウイルス、細菌及び真菌からなる群から選択される1種以上の微生物などの1種以上の感染性病原体によって引き起こされ得る。
【0118】
本発明によれば、障害のある又は損傷した組織を治療するためのORP水溶液の投与は、該障害又は損傷(或いは障害のある又は損傷した組織)と関連する炎症を予防又は治療する役目も果たし得る。
【0119】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、様々な環境において、細菌、ウイルス及び胞子を含む微生物を根絶するための殺菌剤としても使用することが出来(例えば、保健医療及び医療機器の分野において、表面及び医療機器を殺菌するため)、また、創傷ケア、医療機器の滅菌、食物の滅菌、病院、消費者家庭、及び対バイオテロリズムにおいても適用することが出来る。ORP水溶液は、例えば表面を抗感染量のORP水溶液と接触させることによって、表面を殺菌するために用いることが出来る。表面は、任意の好適な方法を用いて接触され得る。例えば、表面は、該表面を殺菌するために、ORP水溶液を該表面に注ぐことによって接触され得る。更に、表面は、該表面を殺菌するために、本明細書に記載したようにして、スチーム又はスプレーとして、或いはエアロゾル化、ネブライゼーション又はアトマイゼーションによって、ORP水溶液を表面に塗布することによって接触され得る。更に、ORP水溶液は、本明細書に記載したようにして、クリーニングワイプを用いて表面に塗布され得る。表面を殺菌することによって、該表面は、感染性微生物から浄化され得る。或いは(又は更には)、本発明に従って投与されるORP水溶液は、表面に塗布されて感染に対するバリアを提供し、それにより該表面を殺菌することができる。
【0120】
表面としては、1種以上の生物表面、1種以上の無生物表面、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。生物表面としては、例えば、例として、口腔、副鼻腔、頭蓋腔、腹腔及び胸腔などの1種以上の体腔内の組織を挙げることができる。口腔内の組織としては、例えば、口組織、歯肉組織、舌組織及び咽喉組織が挙げられる。生物学的な組織としてはまた、筋組織、骨組織、臓器組織、粘膜組織、血管組織、神経組織及びそれらの組み合わせも挙げることができる。生物表面としてはまた、初期及び樹立細胞株、あらゆる種類の幹細胞、異種移植片、組織代替物(例、細胞成分に加えて又は細胞成分無しで、コラーゲン又は任意の他の有機物質から作られたもの)、組織工学によって作製されたその他のあらゆる代替物、並びにそれらの組み合わせなど、あらゆるその他のインビトロでの培養組織が挙げられる。
【0121】
無生物表面としては、例えば、外科的にインプラント可能な器具、人工装具、及び医療器具が挙げられる。本発明の方法によって、外科手術中に露出される可能性のある、臓器、内臓、筋肉などの表面が、例えば外科的環境の無菌性を保つために、殺菌され得る。本発明によれば、表面を殺菌するためのORP水溶液の投与は、そのような表面に関連する1つ以上の生物組織を侵している炎症を治療又は予防するためにも役立ち得る。
【0122】
ORP水溶液はまた、以下の1つ以上と関連する、炎症、過敏症、及び関連する全身性の作用を含む様々な状態を治療するために、ヒト及び/又は動物に適用しても良い:手術/開放創傷クレンジング剤;皮膚病原体の殺菌(例、細菌、マイコプラズマ、ウイルス、真菌、プリオンに対して);戦闘の創傷の殺菌;創傷治癒の促進;熱傷治癒の促進;胃潰瘍の治療;創傷の洗浄;皮膚真菌;乾癬;水虫;結膜炎及び他の眼の感染症;耳の感染症(例、外耳炎);肺/鼻/副鼻腔の感染症;及びヒト又は動物の身体上又は身体内におけるその他の医療用途;及び環境の浄化。組織細胞成長促進物としてのORP水溶液の使用は、米国特許出願公開2002/0160053号(参照により本明細書に組み込まれる)に更に記載されている。
【0123】
ORP水溶液は、殺菌剤、滅菌剤、除染剤、消毒剤及び/又はクレンジング剤として使用され得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、以下の代表的用途における使用に好適である:医療用、歯科用及び/又は獣医用の装置及び器具;食品産業(例、硬表面、果物、野菜、食肉);病院/保健医療施設(例、硬表面);化粧品産業(例、皮膚クレンジング剤);家庭用(例、床、流し台、硬表面);電子産業(例、回路の洗浄、ハードドライブ);並びにバイオテロリズム(例、炭疽菌、感染性微生物)。
【0124】
ORP水溶液での処理により制御、減少、殺菌又は根絶され得る生物としては、以下に限定されないが、細菌、真菌、酵母及びウイルスが挙げられる。感受性細菌としては、以下に限定されないが、エシェリヒア・コリ、スタフィロコッカス・アウレウス、バチルス・アトロフェーアス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、シュードモナス・エルギノーザ、シゲラ・ディセンテリエ(Shingella dysenteriae)及びその他の感受性細菌が挙げられる。ORP水溶液で処理され得る真菌及び酵母としては、例えば、カンジダ・アルビカンス及びトリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)が挙げられる。ORP水溶液は、例えば、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ライノウイルス、インフルエンザ(例、A型インフルエンザ)、肝炎(例、A型肝炎)、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因である)、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、風疹ウイルス及びその他の感受性ウイルスを含むウイルスに対しても適用され得る。
【0125】
ORP水溶液は、殺菌及び消毒するために、任意の好適な方法で塗布され得る。例えば、医療用又は歯科用機器を殺菌及び消毒するために、その機器は、十分な時間の間ORP水溶液との接触を維持されて、機器上に存在する生物のレベルを所望のレベルまで減少させ得る。或いは、ORP水溶液は、物理的手順を促進する用途(例、超音波、振盪器、加熱器など)を持つ又は持たない容器内に装置を浸すことによって、医療用又は歯科用装置に適用することが出来る。
【0126】
硬表面の殺菌及び消毒のために、ORP水溶液は、ORP水溶液が保存されている容器から直接硬表面へ塗布され得る。例えば、ORP水溶液は、硬表面へ、注がれるか、スプレーされるか、又は他の方法で直接塗布され得る。ORP水溶液はその後、例えば、布、織物又はペーパータオルなどの好適な素地を用いて硬表面上に広げられ得る。病院の適用においては、素地は好ましくは無菌である。或いは、ORP水溶液は最初に布、織物又はペーパータオルなどの素地に塗布され得る。湿った素地はその後、硬表面と接触され得る。或いは、ORP水溶液は、本明細書に記載したようにして、空気中に溶液を分散させることによって硬表面に塗布され得る。ORP水溶液は、同様の方法でヒト及び動物へ塗布され得る。
【0127】
ORP水溶液はまた、水不溶性素地及び本明細書に記載されたようなORP水溶液を含むクリーニングワイプを用いて塗布することが出来、ここでORP水溶液は該素地に分注されている。ORP水溶液は、素地に浸み込まされるか、コートされるか、覆われるか、又は他の方法で塗布され得る。好ましくは、素地は、クリーニングワイプのエンドユーザーへの配給前にORP水溶液で前処理される。
【0128】
クリーニングワイプ用の素地は、任意の好適な水不溶性の吸収素材又は吸着素材であり得る。多種の素材が素地として使用され得る。それは、十分な湿潤強度、磨耗性、厚み(loft)及び多孔性を有しているべきである。更に、素地は、ORP水溶液の安定性に悪影響を与えてはならない。例としては、不織素地、織素地、ハイドロエンタングル素地及びスポンジが挙げられる。
【0129】
素地は1以上の層を有してもよい。各層は、同一又は異なる構成及び磨耗性を有してもよい。異なる構成は、異なる組み合わせの素材の使用、又は異なる製造プロセスの使用、或いはそれらの組み合わせから生じ得る。素地は、水中で分解又は分裂してはならない。素地は、処理される表面にORP水溶液を送達するための媒体をそれにより提供し得る。
【0130】
素地は、単一の不織シート又は複数の不織シートであり得る。不織シートは、木材パルプ、合成繊維、天然繊維及びそれらの混合物から製造され得る。素地に使用するために好適な合成繊維としては、限定されないが、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、他のセルロースポリマー、及びそのような繊維の混合物を挙げることができる。不織物としては、メルトブローン、コフォーム(coform)、エアレイド、スパンボンド、ウェットレイド、ボンデッド−カーデッド(bonded-carded)織物素材、ハイドロエンタングル(スパンレースとしても知られる)素材及びそれらの組み合わせを含む、不織繊維シート素材を挙げることができる。これらの素材は、合成若しくは天然繊維又はそれらの組み合わせを含み得る。結合剤が素地中に任意で存在し得る。
【0131】
好適な不織の水不溶性素地の例としては、Little Rapids Corporationが提供しているセルロース100%のWadding Grade 1804、American Non−wovens Corporationが提供しているポリプロピレン100%のニードルパンチ素材NB701−2.8−W/R、Ahlstrom Fibre Compositesが提供しているセルロース繊維と合成繊維との混合のHydraspun 8579、PGI Nonwovens Polymer Corpが提供している70%ビスコース/30%PESのCode 9881が挙げられる。クリーニングワイプに使用するのに好適な不織素地の更なる例は、米国特許第4,781,974号、同第4,615,937号、同第4,666,621号及び同第5,908,707号、並びに国際特許出願公開WO98/03713号、同WO97/40814号及び同WO96/14835号(全て、参照により本明細書に(herby)組み込まれる)に記載されている。
【0132】
素地は、綿繊維、綿/ナイロンのブレンド、又は他の繊維製品のような織素材から製造されてもよい。スポンジを製造するのに使用される再生セルロース、ポリウレタンフォームなどもまた使用に好適であり得る。
【0133】
素地の液体負荷容量は、その乾燥重量の少なくとも約50%−1000%、最も好ましくは少なくとも約200%−800%であるべきである。これは、素地の重量の1/2倍から10倍の負荷として表される。素地の重量は、非限定的に、1平方メートル当り約0.01から約1,000グラムまで、最も好ましくは25から120グラム/m2まで変化し(「基本重量」という)、適当な形状及び寸法に切られるか、打ち抜かれるか、又は他の方法で寸法化されたシート又は織物として通常製造される。クリーニングワイプは、非限定的に、好ましくは約25から約250ニュートン/m、より好ましくは約75−170ニュートン/mである、特定の湿潤引っ張り強さを持つ。
【0134】
ORP水溶液は、任意の好適な方法によって、素地に分配されるか、浸み込まされるか、コートされるか、覆われるか、又は他の方法で塗布され得る。例えば、素地の個々の部分は、個別の量のORP水溶液で処理され得る。好ましくは、ORP水溶液による素地素材の連続織物の一括処理が行われる。素地素材の織物全体がORP水溶液に浸されてもよい。或いは、素地織物が巻かれるとき、又は不織素地の作製中であっても、ORP水溶液は織物上にスプレー又は定量され得る。多量の個別に切断及び寸法化された素地の部分は、製造業者によって、容器内でORP水溶液を染み込まされるか又はコートされ得る。
【0135】
クリーニングワイプは、ワイプの特性を向上させるために、任意で更なる成分を含んでもよい。例えば、クリーニングワイプは、ワイプの特性を向上させるために、ポリマー、界面活性剤、多糖類、ポリカルボキシレート、ポリビニルアルコール、溶媒、キレート剤、緩衝液、増粘剤、染料、着色剤、香料及びそれらの混合物を更に含んでもよい。これらの任意成分は、ORP水溶液の安定性に悪影響を与えてはならない。クリーニングワイプに任意で含まれ得る様々な成分の例は、米国特許第6,340,663号、同第6,649,584号、及び同第6,624,135号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0136】
クリーニングワイプは、ヒートシール可能又は接着可能な熱可塑性オーバーラップ(ポリエチレン、マイラー(Mylar)など)で個別シールされ得る。ワイプは、より経済的な分配のために、多数の個別シートとしても包装され得る。クリーニングワイプは、まず素地の複数のシートをディスペンサー中に置き、それから素地シートを本発明に従って投与されるORP水溶液と接触させることによって調製され得る。或いは、クリーニングワイプは、製造プロセス中にORP水溶液を素地に塗布し、それから湿った素地をディスペンサー中に装填することによって、連続織物として形成され得る。
【0137】
ディスペンサーとしては、これらに限定されないが、ふた付きのキャニスター、又はふた付きのタブが挙げられる。ディスペンサーのふたは、湿ったワイプを外部環境から密封し、且つ液体成分の早すぎる揮発を防止するためである。
【0138】
ディスペンサーは、素地とORP水溶液との両方に適合性のある任意の好適な素材から製造され得る。例えば、ディスペンサーは、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、又は他の硬質プラスチックなどのプラスチックから製造され得る。
【0139】
ワイプの連続織物は、ディスペンサーの最上部の細い開口部、最も好ましくはふたを通り抜け得る。その結果、織物から所望の長さ又は寸法のワイプを寸法化する手段が望ましいものとなり得る。非限定的な例として、ナイフの刃、鋸歯状の縁、又は所望の寸法に織物を切断する他の手段を、ディスペンサーの最上部に備えることが出来、切断縁としての細い開口部の役目を現実的に倍加する。或いは、ワイプの連続織物は、均一又は不均一な寸法又は長さに、切り込み線を入れられ、折り畳まれ、分割され、ミシン目を入れられ、又は部分的に切断され得、ひいては鋭い切断縁の必要性を取り除く。更に、1枚のワイプの取り出しが次のワイプを推進するよう、ワイプは交互配置されてもよい。
【0140】
或いは、ORP水溶液は、空気などの気体状の媒体を通じて環境中に分散され得る。ORP水溶液は、任意の好適な手段で空気中に分散され得る。例えば、ORP水溶液は、任意の好適な寸法の液滴に形成されて室内に分散され得る。
小規模用途のために、ORP水溶液は、スタンドパイプ及びポンプを含むスプレーボトルを通じて分配され得る。或いは、ORP水溶液は、エアロゾル容器中に詰められ得る。エアロゾル容器は、分配される製品、推進剤、容器及びバルブを含み得る。バルブは、アクチュエータ及び浸漬チューブの両方を含み得る。容器の内容物は、アクチュエータを下に押すことによって分配され得る。エアロゾル容器の種々の成分は、ORP水溶液と適合性があるべきである。好適な推進剤としては、液化ハロカーボン、炭化水素、又はハロカーボン−炭化水素混合、或いは二酸化炭素、窒素又は亜酸化窒素などの圧縮気体を挙げることができる。エアロゾルシステムは、好ましくは、寸法が約0.15μmから約5μmに及ぶ液滴を与える。
【0141】
また、創傷清拭及び洗浄のための様々な水中手術(hydrosurgery)装置(例、Smith and Nephewにより合衆国で販売されているVersaJet器具、Medaxisによりヨーロッパで販売されているDebritom、DeRoyalにより合衆国及びヨーロッパで販売されているJetOx、又はイタリアで販売されているPulsaVac)、及び陰圧による洗浄システム(例、VAC Instill)などを使用することによって適用することも出来る。
【0142】
生体工学皮膚(Apligraf,Organogenesis社,カントン)、無細胞の皮膚代替物(Oasis Wound Matrix,Healthpoint)、ORP水溶液の超音波適用、及び局所酸素補充又は高圧酸素治療(例えば、高圧ブーツ(hyperbaric boots)、Vent−Ox Systemなど)を含むいくつかの補助療法も、本発明に従って任意で利用され得る。
【0143】
一部の用途のために、ORP水溶液は、漂白剤を任意で含有し得る。漂白剤としては、例えば、素地を明るくするか又は白くする任意の好適な化合物を挙げることができる。漂白剤を含有するORP水溶液は、衣類を明るくすると共に、細菌及び病原菌を殺菌及び消毒するために家庭での洗濯に用いることが出来る。好適な漂白剤としては、これらに限定されないが、塩素含有漂白剤及び過酸化物含有漂白剤が挙げられる。漂白剤の混合物もまた、ORP水溶液に加えることが出来る。好ましくは、漂白剤は、水溶液の形態でORP水溶液に加えられる。
【0144】
好適な塩素含有漂白剤としては、例えば、塩素、次亜塩素酸塩、N−クロロ化合物及び二酸化塩素を挙げることができる。好ましくは、ORP水溶液に加えられる塩素含有漂白剤は、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸である。他の好適な塩素含有漂白剤としては、例えば、塩素、次亜塩素酸カルシウム、漂白液(例、次亜塩素酸カルシウム及び塩化カルシウムとの水溶液)、漂白粉(例、次亜塩素酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、及びそれらの水和物の混合物)、二塩基性次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸リチウム、塩素化リン酸三ナトリウム及びそれらの混合物が挙げられる。
【0145】
ORP水溶液への漂白剤の添加は、任意の好適な方法で行われ得る。好ましくは、漂白剤を含有する水溶液が最初に調製される。漂白剤を含有する水溶液は、家庭用漂白剤(例、Clorox(登録商標)漂白剤)、又は塩素含有漂白剤若しくは他の漂白剤のその他の好適な供給源を用いて調製することが出来る。漂白剤の溶液は、その後、ORP水溶液と混合され得る。
【0146】
漂白剤は、任意の好適な量でORP水溶液に加えることが出来る。好ましくは、漂白剤を含有するORP水溶液は、ヒト又は動物の皮膚に対して非刺激性である。好ましくは、塩素含有漂白剤を含有するORP水溶液の塩化物イオン総含有量は、約1000ppmから約5000ppmであり、好ましくは約1000ppmから約3000ppmである。塩素含有漂白剤を含有するORP水溶液のpHは、好ましくは約8から約10であり、酸化還元電位は約+700mVから約+800mVである。
【0147】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、当然ながら、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0148】
実施例1−3
これらの実施例は、本発明に従って用いられるORP水溶液の独自の特徴を示している。実施例1−3のORP水溶液のサンプルを、本明細書に記載の方法に基づいて分析し、各サンプルに存在するイオン種及び他の化学種の物理的特性及びレベルを決定した。二酸化塩素、オゾン及び過酸化水素について得られた結果は、そのような種を測定するために用いられる標準試験に基づいているが、これらの結果は、肯定的な試験結果を生じることもあり得る様々な種を示すものであり得る。さらに、二酸化塩素、オゾン及び過酸化水素が次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応し、これらの消費及び他の化合物(例、HCl及びO2)の生成をもたらすことが報告されている。ORP水溶液の各サンプルについて、pH、酸化還元電位(ORP)及び存在するイオン種を表1に示す。
【0149】
【表1】
【0150】
ORP水溶液は、例えば、殺菌、滅菌、クリーニング、並びに/或いは炎症、副鼻腔炎、腹膜炎又は感染症の予防及び/又は治療における使用に好適な物理的特徴を有する。
【0151】
実施例4−10
これらの実施例は、本発明に従う、ORP水溶液への種々の量での漂白剤の添加について示している。特に、これらの実施例は、組成物の抗菌活性及び織物を漂白する能力を示している。
【0152】
蒸留水を用いて10%Clorox(登録商標)漂白溶液を調製した。次いで、10%漂白溶液を用いて以下の溶液を調製した:80%ORP水溶液/20%漂白剤(実施例4);60%ORP水溶液/40%漂白剤(実施例5);40%ORP水溶液/60%漂白剤(実施例6);20%ORP水溶液/80%漂白剤(実施例7);及び0%ORP水溶液/100%漂白剤(実施例8)。100%ORP水溶液/0%漂白剤(実施例9)、及び0.01%Tween20界面活性剤を含むORP水溶液(実施例10)を含む2つの対照溶液も比較のために使用した。これらのサンプルの物理的特徴、特にpH、酸化還元電位(ORP)、塩素(Cl−)総含有量、及び次亜塩素酸(HClO)含有量を決定し、二酸化塩素含有量及び過酸化物含有量を分析した。その結果を表2に示す。
【0153】
【表2】
【0154】
漂白剤の一部として加えた多量の塩素イオンは、n.d.記号で示したとおり、二酸化塩素及び過酸化物のレベルの正確な測定を妨げた。また、二酸化塩素及び過酸化物について得られた結果は、そのような種を測定するために用いられる標準試験に基づいているが、これらの結果は肯定的な試験結果を生じることもあり得る様々な種を示すものであり得る。さらに、二酸化塩素、オゾン及び過酸化水素が次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応し、これらの消費及び他の化合物(例、HCl及びO2)の生成をもたらすことが報告されている。これらの実施例が示すように、漂白剤の添加の有り無しでORP水溶液の次亜塩素酸レベルは同様である。
【0155】
実施例4−10のサンプルを、バチルス・スブチリス変種ニガー(Bacillus subtilis var. niger)胞子(SPS Medical of Rush,New Yorkから入手したATCC #9372)を用いる高胞子カウント試験に供した。胞子懸濁液を、(無菌フード中での蒸発によって)100マイクロリットルあたり4×106胞子まで濃縮した。胞子懸濁液のサンプル100マイクロリットルを、実施例4〜10における各サンプル900マイクロリットルと混合した。表3に示すように、サンプルを1から5分間室温で培養した。示した時間に、100マイクロリットルの培養サンプルを個々のTSAプレート上にプレートし、35℃±2℃で24時間培養後、各プレート上に生じたコロニーの数を測定した。対照プレートは、開始時の胞子濃度が>1×106胞子/100マイクロリットルであることを示していた。種々のサンプルについての種々の培養時間でのバチルス胞子の濃度(2回測定の平均として)を表3に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
これらの結果が示すように、2−3分間培養したサンプルについて、漂白剤(10%の漂白剤水溶液として)の濃度が上昇するにつれて、殺菌されたバチルス胞子の量は減少した。しかし、5分間培養したサンプルについては、漂白剤の濃度は、バチルス胞子の殺菌に影響しない。さらに、この結果は、ORP水溶液への0.01%界面活性剤の添加が胞子の殺菌を減少させないことを示している。
【0158】
実施例4−10のサンプルを織物の漂白試験に供した。サンプルを試験した織物は、紺色の染みの斑点の付いた100%レーヨンの子供用Tシャツであった。染みの付いた織物の2インチ四方の切れ端を、50mLプラスチックチューブ中に入れた。織物の各切れ端を、実施例4−10の溶液のサンプルで覆った。完全な漂白が得られるまでの経過時間(織物の白色化によって決定した)を表4に示す。
【0159】
【表4】
【0160】
これらの実施例が示すように、組成物中のORP水溶液の濃度が上昇するにつれて、完全な漂白が達成されるまでの時間が増加する。
【0161】
実施例11
本研究の目的は、ウサギの鼻腔に滴として投与した場合の、被験(test)である例示的なORP水溶液であるMicrocynの安全性を評価することであった。33匹のウサギを、群I及び群IIの2つの群に無作為に割り当てた。群I(18匹)を対照群とし、群II(15匹)には被験物質を投与した。−1日目又は0日目に、体重を記録し、選択したパラメーターの分析のために血液サンプルを集めた。0日目に、群Iの動物に500μLの無菌食塩水を投与し、群nのアニュアル(annual)に500μLの被験物質(50%濃度)を投与した。対照及び被験物質は共に、右鼻孔に滴として1日2回投与した。1日目−6日目に同じ方法で動物に投与した。鼻に特に注意を払って、薬理的及び/又は毒性効果の兆候について、動物を毎日観察した。研究が終わるまで体重を毎週記録した。7日目に各群の3分の1の動物を、採血、屠殺及び剖検のために選抜した。残りの動物には14日目まで投与を継続し、14日目に各群の半分の動物を、採血、屠殺及び剖検のために選抜した。21日目(7日の回復期間後)に、残りの動物を採血し、屠殺し、剖検した。両鼻孔由来の鼻粘膜サンプルを、病理組織学的分析のために各動物から採取した。
【0162】
剖検は、気道の巨視的観察から構成されていた。鼻道全体及び関連する骨を採取し、緩衝ホルマリン中に固定した。気道において何らかの異常が見られるサンプルもまた、組織病理診断(histopathology)のために採取した。3つの生検サンプル(前部、中部及び後部鼻孔)を鼻孔ごとに(処理した右側及び非処理の左側)検査した。鼻粘膜の顕微鏡的組織病理診断としては:上皮の完全性、上皮繊毛の有無、炎症性細胞浸潤、浮腫、杯細胞の存在、腺の肥大、血管の数又は特徴の変化、及び任意の他の変化又は観察を含んでいた。
【0163】
試験群からの結果(鼻の観察を含む生存中の観察、体重、血液分析、巨視的剖検及び組織病理診断の結果)を対照群と比較した。低刺激性の刺激に関して、試験群は、食塩水で処理した動物と有意な差はなかった。
【0164】
実施例12
本実施例は、例示的なORP水溶液の使用では、毒性がないことを示している。
【0165】
深い創傷に局所的に塗布したMicrocyn 60からの局所的及び全身の毒性の特徴をラットで評価した。異常も、血液化学又は血液細胞学のパラメーターにおける有意な差異も観察されず、剖検での異常性も観察されなかった。皮膚刺激のグレード付け、並びに創傷及び塗布した箇所の周辺組織の組織病理診断は、Microcyn 60で処理した創傷と食塩水溶液で処理した対照群の創傷とでいかなる差異も示さなかった。
【0166】
Microcyn 60の全身毒性も、マウスにおける腹腔内注射により評価した。このために、単回用量(50mL/kg)のMicrocyn 60を腹腔内経路で5匹のマウスに注射した。同様にして、単回用量(50mL/kg)の食塩水溶液(0.9%塩化ナトリウム)を5匹の対照マウスに注射した。この調査では、単回腹腔内用量のMicrocyn 60を受けたいずれの動物においても、死亡も全身毒性のいかなる証拠も観察されず、LD50は50mL/kgを上回ることが示された。
【0167】
Microcyn 60を経口経路でラットに投与して吸収させ、製品のあらゆる内在性の毒性効果を特徴付けた。本研究において、単回用量(4.98mL/kg)を食道管経路で3匹のSprague−Dawley系のアルビノラットに投与した。死亡も無く、単回経口用量のMicrocyn 60に曝露されたいずれの動物の剖検においても、臨床的症状も異常も無かった。
【0168】
局所的に塗布したMicrocyn 60の眼球刺激に対する可能性についても、ウサギで評価した。眼球経路での局所投与によりMicrocyn 60に曝露されたいずれの動物においても、眼球刺激も他のいかなる臨床的症状も観察されなかった。
【0169】
Microcyn 60を吸入経路でラットに適用し、吸入による潜在的な急性毒性を決定した。全ての動物が、曝露後の活動性及び立毛において、非常にわずか又はわずかな減少を示したが、それらは翌日には全て無症候性であった。吸入によりMicrocyn 60に曝露された動物の剖検では、死亡も異常も観察されなかった。
【0170】
Microcyn 60による皮膚の感作の可能性の評価を、改良した閉塞パッチ法(Buehler)を用いてモルモットで行った。簡易処理のチャレンジ後の対照群の動物においても、当該処理でのチャレンジ後の評価(誘導によって処理)した動物においても、刺激は観察されなかった。これらの研究はMicrocyn 60が感作反応を引き起こさないことを示している。
【0171】
このようにして、経口及び吸入経路、又は腹腔内注射によって、無傷の皮膚、深く開いた皮膚の創傷、結膜嚢内に適用されたとき、Microcyn 60は製品と関連する副作用を示していない。また、優れた消毒及び美容の結果で、皮膚及び粘膜における非常に多様な性質の創傷を有する数千人を超える患者を治療した経験もある。従って、局所的に塗布されたMicrocyn 60は、この臨床試験において、有効かつ耐容性良好のはずである。
【0172】
Microcyn 60は、透明な240mLの密閉されたPETボトルに詰められる。この製品は環境温度で保存され、そのようなボトル中で2年間まで安定なままである。Microcyn 60は、その高い生物学的安全性の特性より、汚染又は腐食の危険性無しで、例えば流しへ出して、安全に処分され得る。
【0173】
実施例13
本実施例は、咽頭炎の治療に対する例示的なORP水溶液の有効性を決定するために使用できる臨床研究を示している。
【0174】
合衆国及びメキシコの両方において、Microcyn 60を用いた複数の微生物試験が行われてきた。曝露の最初の数秒で90%を上回る細菌の根絶が起こる。この基準に従ってMicrocyn 60が示す抗菌活性及び抗真菌活性を表5に要約する。
【0175】
【表5】
【0176】
殺胞子活性試験をPAHO[汎米保健機構]/WHOプロトコルに従って行った。
【0177】
Microcyn 60の殺ウイルス活性は、HIVに対して合衆国で行われた研究で最近確認され、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、MRSA及びマイコバクテリウム・ツベルクロシスに対する活性もまた実証されている。このように、Microcyn 60は、推奨されるように投与されるとき、1分から15分の曝露で、細菌、真菌、ウイルス及び胞子を根絶できることが示されている。
【0178】
更に、以下は、咽頭炎/扁桃炎の治療に対するMicrocyn 60の効果を評価するために使用され得る臨床研究である。この臨床試験においては、A群β溶血性ストレプトコッカスによって引き起こされた急性咽頭炎/扁桃炎を有し、かつ治療を受けていない患者40人を採用する。包含基準は以下の通りである:年齢12歳から40歳かつ2つ以上の下記症状:口腔咽頭の灼熱感;嚥下痛;咽頭紅斑又は扁桃腺の紅斑(浸出液有り又は無し);頸部リンパ節腫脹;及びA群ストレプトコッカス抗原(StrepA試験−Abbott Labs)について陽性の免疫アッセイ。除外基準は以下の通りである:>38℃の熱;気管支痙攣(クリニックにより除外);重度の咳;副鼻腔炎−鼻炎(クリニックにより除外);食道逆流(クリニックにより除外);本試験前の2週間内における抗生物質の使用;最近8週間で別の臨床試験に参加した患者;リウマチ熱;ストレプトコッカス感染後糸球体腎炎;重度の慢性心臓病;重度の腎、肝又は肺不全;及び妊娠又は授乳。
【0179】
本試験の開始時点で、患者はパラセタモール及びアセチルサリチル酸を含む解熱剤や鎮痛剤のような併用薬を使用し得るが、イブプロフェン、メスリド、COX−2阻害剤又はステロイドなどの抗炎症剤は使用し得ない。患者が任意の具体的な試験の手順を受ける前に、書面によるインフォームド・コンセントを得なければならない。
【0180】
患者は3回の来診で評価される。1回目の来診では、患者は臨床的に急性咽頭炎/扁桃炎を示し、病歴がとられ、医学検査、ストレプトコッカスについての簡易免疫アッセイ、及び咽頭滲出物の採取が行われる。適格であるとの告知後、及びインフォームド・コンセントの書類にサインした後、患者は、それぞれ30秒で5mLのMicrocyn 60での2回の口腔咽頭の洗浄を処方される。それらのリンスは、3日間、3時間ごとに1日合計4回行われる。
【0181】
2回目は、Microcyn 60での処置の72時間後になされる。2回目の来診では、臨床的進展及びMicrocyn 60の副作用が評価される。新たな咽頭滲出物が採取され、臨床的進展に従って、続く治療が抗生物質を用いるものであるのか、或いは苦痛緩和剤を用いるものであるのかが決定される。3回目の来診が10日後にされて、患者は解放される。
【0182】
本試験において適格であり臨床的に評価されるためには、各患者は、培養によって確認されるA β溶血性連鎖球菌咽頭炎/扁桃炎を示していなければならない。全ての患者は、それぞれ30秒で5mLのMicrocyn 60での18回のリンス、又は72時間の間に最大24回のリンスを遵守しなければならない。
【0183】
有効性の第1パラメーターは、Microcyn 60投与後に採取された培養物と比較しての、初期培養物の細菌負荷における3桁の減少である。この細菌学的評価は、Microcyn 60での処置の72時間後に実現される。有効性の第2パラメーターは、咽頭痛及び嚥下障害の減少に特に重きが置かれた、臨床的に報告される改善である。臨床症状は、来診1、2及び3で報告される。
【0184】
耐容性は、有害事象の報告によって評価される。有害事象は、治療の過程で現れる、該消毒剤に関連する又は関連しない、Microcyn 60での治療を受ける患者の任意の症候的な申告として定義される。
【0185】
細菌学的有効性の結果(有効性の主要基準)は、臨床症状とは関係なく細菌学者によって発表される。A群ストレプトコッカス抗原についての試験及び咽頭滲出物の初期培養は、Microcyn 60の投与前に、「評価のスケジュール」に従って、1回目の来診(来診1)において行われる。咽頭滲出物の2回目の採取及び培養は、Microcyn 60の投与から72時間後に行われる(来診2)。アンチバイオグラムが全ての培養物に対してなされ、標準拡散ディスク試験によって、ペニシリン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン及びリンコマイシンに対する細菌耐性を決定する。細菌学的有効性は、初期培養物と、Microcyn 60の投与から72時間後に採取した培養物との間の細菌数の3桁の減少として定義される。
【0186】
細菌学的失敗は、処置後72時間での培養物中の細菌数の3桁未満の減少によって示される。不確かな応答は、サンプルの搬送が48時間を超えて遅延されたケース、スワブが搬送培地中に含浸されなかったケース、又はサンプルが失われたケースで記録される。これらのケースは、本試験の分析外であり、40人の適格患者のケースが完了するまで、新たなケースによって置き換えられる。
【0187】
患者がMicrocyn 60の投与を終了するとき、そして2回目の来診から、追跡及び報告段階が始まる。この評価では、臨床的進展及びあり得る副作用の存在に従って、患者は以下のように分類される:
【0188】
初期兆候及び症状がなくならなかった場合、又は全身症状を伴う全般的な状態の悪化がある場合、治療上の失敗。これらの場合、プロカインペニシリン、クラリスロマイシン又はアジスロマイシンなどの経口抗生物質が、治療する医師が指示する用量及び回数で処方され、1週間のうちに評価される。
【0189】
来診1で存在した症状及び徴候がなくなった場合、臨床上治癒。急性プロセスが解消されるこれらの場合、患者は解放され、臨床的に治癒したと報告される。いずれの場合にも、患者は、3回目の検査来診のために、1週間のうちに戻るように求められる。
【0190】
不確かな進展。何らかのもっともな理由(例えば、重感染)のために臨床的に評価することができなかった任意の患者の進展、又は評価が非常に遅く、72時間よりも後になされた場合。これらの場合、72時間での咽頭滲出物及び培養物の結果を記録することが可能ならば、患者はまだ、本試験の分析に含めることができる。
【0191】
本臨床試験で使用する統計的分析は、72時間の期間中に、それぞれ30秒のMicrocyn 60での少なくとも18回のリンスを受けた全ての患者を考慮に入れる。これと同じ基準が、耐容性の分析において任意の患者を含めるために考慮される。有効性の分析についての主要な基準は、Microcyn 60での治療後72時間で行われる、培養物におけるβ溶血性ストレプトコッカスの細菌数の3桁の減少である。統計的分析は、Wilcoxonペアサンプル試験によって実現される。定量的変数についてのANOVA試験を用いて、臨床的変数の統計的分析は実現される。評価可能な最小の患者数は30人である。
【0192】
有害事象は、医薬製品が投与される臨床研究の患者又は対象における任意の不利な医学的出来事であり、必ずしもその医薬との因果関係を有するわけではない。従って、有害事象は、医薬製品の使用と一時的に関連した、任意の好ましくなく且つ意図しない兆候(異常な検査所見を含む)、症状又は疾患であり得る(それが、この使用に関連していると考えられようが、そうでなかろうが)。試験の間に悪化する、以前から存在している状態は、有害事象として報告される。
【0193】
強度が中程度から重度である有害事象の場合、治療は、72時間の継続期間の任意の時点で中止される。その後の治療は、治療する医師によって決定される。このようにして、本実施例に基づいて、副鼻腔炎の治療に対する本発明のORP水溶液の有効性が示される。
【0194】
実施例14
本実施例は、アデノウイルス血清型5に対する例示的なORP水溶液の殺ウイルス(viricidal)活性を示している。本実施例では、E1a、部分的にE1−b、及び部分的にE3欠損であるヒトアデノウイルス5型に基づいたアデノウイルス(Ad)ベクターを用いた。pCMVの転写調節下の緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーター遺伝子を含むシャトルプラスミドを調製した(pAd−Track)。このpShuttleプラスミドとAdEasy1プラスミドとの相同的組み換えをエレクトロコンピテント細菌内で行った。挿入を有するクローンを、制限エンドヌクレアーゼ消化により試験した。確認されたら、大規模な増幅のために、超らせんプラスミドDMAをDH10B細胞に形質転換した。続いて、293細胞(ATCC 1573)を無血清培地(OptiMEM−GIBCO)で培養し、Padで消化した組み換えプラスミドでトランスフェクトした。細胞変性効果について感染細胞をモニターし、それらを収集し、凍結解凍を3サイクルして溶解した。得られたウイルス(AdGFP)を製造者の使用説明書に従ってAdenoPureカラム(BD Clontech)で精製した。ウイルスをOD260/280で定量した。最終収量は1.52X1011pfu/mLであった。
【0195】
緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードしているアデノウイルス(AdGFP)の不活性化に対するORP水溶液の効果を、蛍光活性化フローサイトメトリーを用いて、対照AdGFPウイルス又はORP水溶液処理したAdGFPのいずれかを感染させたHeLa細胞由来の蛍光発光の検出に基づく試験を用いて評価した。HeLa細胞の感染は常に7.5X107pfu/mL(即ち150m.o.i.)で行った。全ての試験条件において、細胞は光学顕微鏡下では正常に見えた。対照HeLa細胞において測定されたバックグラウンド蛍光は0.06%であった。対照AdGFPによる感染後、HeLa細胞の88.51%がGFPを発現した。ORP水溶液に対する曝露後、アデノウイルスの感染性は曝露期間に反比例して減少した。従って、1、5及び10分間ORP水溶液処理したウイルスは、HeLa細胞培養物のそれぞれ2.8%、0.13%、及び0.09%においてのみGFPを発現し得た。全ての試験条件についての自己蛍光及び初期ウイルス負荷(即ち7.5X107pfu)を考慮すると、対照AdGFP−HeLa群における感染力価は、6.6X107pfuであった。ウイルスがORP水溶液で処理されていた群において、ORP水溶液に対する1、5及び10分間のウイルス曝露で、感染力価はそれぞれ2.0X106、5.2X104及び2.2X104であった。従って、ORP水溶液に対する1、5及び10分間のウイルス曝露で、ログ10減少係数は、1.5、3.1及び3.5であった。総合すると、これらの結果は、ORP水溶液に対する5分間のウイルス曝露で、ウイルス負荷における>3のログ10減少を達成することを示している。
【0196】
実施例15
本実施例は、無生物の環境表面の殺菌に関する米国環境保護局のプロトコルを用いて、HIVに対する例示的なORP水溶液の殺ウイルスの有効性を示している。
【0197】
HIV−1のSF33株を本試験に用いた。健康なドナー由来の抹消血単核細胞をPHA(3μg/mL、Sigma)及びヒトIL−2(20U/mL、Roche)を用いてHUT培地中で3日間活性化した。細胞を洗浄し、SF33株を感染させた。4日目及び6日目に上清を回収し、ELISA(Beckman Coulter)によってHIV−1 p24抗原に対して試験した。3000RPMで20分間室温にて上清(superantant)を遠心して細胞及びデブリを除去した。上清を除去し、分注し、ウイルスを使用する日まで−80℃で保存した。
【0198】
凍結アリコートを、その使用直前に2分間37℃で解凍した。HUT培地中の段階的な対数希釈物(−1から−5)を用いた。ウイルスのフィルムを、0.2mlのウイルス接取材料を55cm2無菌ポリスチレンペトリ皿の底面に均一に広げることで調製した。ウイルスフィルムを、視覚的に乾燥しているように見えるまで(20分間)、生物学的に安全なキャビネット内において室温(21℃)で風乾した。(ウイルス株(SF33)が複製及び細胞変性効果の惹起をし得ることを確実にするために、乾燥されることなくHUT培地中に残っていたウイルス懸濁液を用いて手順を繰り返した。)
【0199】
対照フィルムを2mlのHUT培地に5分間曝露した。次いで、このウイルスを擦り取り希釈した。別々の乾燥フィルムを各2mlのORP水溶液に5分間室温で曝露した。その曝露時間の後、プレートを擦り取り、これらの中身を再懸濁した。ウイルス−ORP水溶液混合液をすぐにHUT培地で希釈した(10:1)。この得られた懸濁液の段階的な対数希釈物を感染性についてアッセイした。(ORP水溶液のMT−2細胞への起こり得る直接的な細胞毒性効果を制御するために、ORP水溶液の2mlアリコートを培地内で段階的に希釈し(10:1から10:5)、MT−2細胞培養物に接種した。)
【0200】
MT−2細胞株を、感染性アッセイにおける指標の細胞株として用いた。この株はHIV−1に感染した場合に合胞体形成からなる細胞変性効果を示す。4つのマイクロウェルに、試験(ORP水中で再構成)群及び対照(対照培地で再構成)群由来の再構成ウイルス懸濁液の各希釈液を0.2ml接種した。感染していない細胞対照を試験培地のみと接種した。培養物を37℃及び5%CO2でインキュベートした。
【0201】
細胞変性効果の有無について、また、ELISAによってp24−HIV−1抗原の存在について、培養物を2日ごとに定期的に記録した。対照HIV−1による実験的感染は、感染MT−2培養物における細胞変性効果及び上清中へのAg p24タンパク質の放出に作用した。対照的に、ORP水溶液による5分間のHIV−1の処理は、両方のアッセイによってMT−2培養物において測定されたようにウイルス負荷における>3のログ減少係数を実現した。従って、これらの結果は、無生物表面におけるHIV−1の殺ウイルス活性に関するEPAの要件と適合する効果水準を示している。
【0202】
実施例16
本実施例は、過酸化水素(HP)に対する例示的なORP水溶液の、ヒト2倍体線維芽細胞(HDF)の生存能力に対する影響を示している。この潜在的な毒性を試験するために、HDFをインビトロでORP水溶液及び過酸化水素(HP)に曝露した。HPは真核細胞に対して毒性であることが知られており、アポトーシス及びネクローシスを増加させ、細胞の生存能力を減少させる。本実施例において、細胞の生存能力、アポトーシス及びネクローシスを、純粋なORP水溶液及び880mMのHP(HPの消毒用途で採用される濃度)に5分及び30分間曝露したHDFにおいて測定した。
【0203】
HDFの培養物を3つの異なる包皮から得、それらをこの試験の目的でプールし、一緒に凍結保存した。全ての実験について、2倍体細胞のみを用いた。細胞周期の解析において、DNAの2倍性を、少なくとも20000の全事象から集めたCV</=7%の単一G0−G1ピーク及び対応するG2/Mピークの存在として定義した。図4A−4Cは、曝露時間5分及び30分をそれぞれ白棒及び黒棒で表した結果を開示している。これらのパラメーターの同時解析を、同じ細胞集団内で、A)7−アミノアクチノマイシンD(7AAD);B)アネキシンV−FITC;及びC)ヨウ化プロピジウムを用いるフローサイトメトリーによって行った。図4A−4Cは、平均±SD(n=3)として表したパーセント値を開示している。
【0204】
消毒濃度の非希釈ORP水溶液及び880mM HPへの5分間の曝露後、細胞の生存率は、それぞれ75%及び55%であった(図4A)。非希釈ORP水溶液の細胞の生存率に対する効果は、亜致死的であるが殺菌効果はないと考えられている非常に希釈されたHP溶液(即ち、500μM)に匹敵していた。曝露を30分間に延長した場合、細胞の生存率は、それぞれ70%及び5%にまで更に低下した。両時間でのフローサイトメトリー解析において15%の細胞がヨウ化プロピジウムを取り込んだため(図4C)、明らかにORP水溶液はネクローシスによる細胞死を引き起こした。ORP水溶液処理した細胞の3%しかアネキシンV(アポトーシスのマーカー)を細胞表面に顕在化させなかったため(図4B)、アポトーシスはORP水溶液が細胞死を引き起こすメカニズムではなさそうである。このパーセンテージは、対照群において測定されたものと実質的に同様であった。一方、HPは、5分及び30分の曝露後、処理した細胞の20%及び75%でネクローシスを、15%及び20%でアポトーシスをそれぞれ引き起こした。要するにこれらの結果は、(未希釈の)ORP水溶液はHDFに対して、消毒的な濃度のHPよりもはるかに毒性が低いことを示している。
【0205】
実施例17
本実施例は、HDFにおける酸化的DNA損傷及びDNA付加体8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)の形成への、過酸化水素(HP)と比較した例示的なORP水溶液の影響を示している。細胞内での8−OHdG付加体の生成は、DNAの特定の残基における酸化的損傷のマーカーであることが知られている。さらに、この付加体の高い細胞内レベルは、突然変異生成、発癌及び細胞の老化と相関がある。
【0206】
図5は、30分間の対照処理、ORP水溶液処理及びHP処理後の、HDF由来のDNAサンプル中に存在する8−OHdG付加体のレベルを示している。曝露直後(T0、白棒)又はチャレンジ期間から3時間後(T3、黒棒)に、DNAを抽出した。DNAを消化し、8−OHdG付加体を、ELISAキットで製造者の使用説明書の通りに測定した。値は平均±SD(n=3)で示している(ng/mL)。ORP水溶液への30分間の曝露は、30分間のインキュベーション後の対照細胞と比較して、処理した細胞における付加体の形成を増加させなかった。一方、500μMのHPでの30分間の処理は、対照処理又はORP水溶液処理した細胞と比較して8−OHdG付加体の数を約25倍増加させた。
【0207】
ORP水溶液処理した細胞は、ORP水溶液への曝露後3時間の間、添加DMEM中に放置された場合、8−OHdG付加体のレベルを減少することが可能であった。同じ3時間の回復期間を与えたにも関わらず、HP処理した細胞はそれでもまだ、対照処理又はORP水溶液処理した細胞よりも約5倍多い付加体を示した。要するに、これらの結果は、ORP水溶液への急性曝露は有意なDNA酸化的損傷を引き起こさないことを示している。これらの結果はまた、ORP水溶液はインビトロ又はインビボでの突然変異形成又は発癌を引き起こさないらしいことを示している。
【0208】
実施例18
本実施例は、HPと対比した、低濃度の例示的なORP水溶液への慢性曝露の、HDFへの影響を示している。慢性の酸化ストレスは、細胞の早期老化を引き起こすことが知られている。長期の酸化ストレスを模倣するために、20集団の倍増の間、初代HDF培養物を低濃度のORP水溶液(10%)又はHP(5μM)に慢性的に曝露した。SA−β−ガラクトシダーゼ酵素の発現及び活性は、以前からインビボ及びインビトロでの老化プロセスと関連付けられてきた。本実施例においては、SA−β−ガラクトシダーゼ酵素の発現を、ORP水溶液又はHPに対するHDFの1ヵ月の継続的な曝露後に解析した。結果を図6に示す。酵素SA−β−ガラクトシダーゼの発現を、20の顕微鏡視野における青色の細胞の数をカウントすることにより解析した。図6は、SA−β−ガラクトシダーゼを過剰発現している細胞の数により示されるように(n=3)、HP処理のみが細胞の老化を加速させたことを示している。低用量のHPでの慢性的な処理は、86%の細胞においてSA−β−Galの発現を増加させたが、ORP水溶液での処理はこのタンパク質の過剰発現を引き起こさなかった。ORP水溶液は細胞の早期老化を引き起こすものではないということが本実施例より結論付けられ得る。
【0209】
実施例19
本実施例は、腹膜炎患者における、腹膜の細菌負荷の減少及び入院の長さの減少に対する例示的なORP水溶液の効果を示している。2004年6月から2005年1月までにメキシコシティーのRuben Lenero病院に入院し、且つ、急性の汎発性の続発性腹膜炎と診断された全ての患者をORP水溶液治療群に含んだ。続発性腹膜炎は、腹膜腔の汚染に繋がる胃腸又は尿生殖路の完全性の喪失の結果と定義した。同施設において2003年から2004年までの間に同様の腹膜感染症を示した対照症例(paired -case)の遡及的解析を対照群について行った。20人の継続患者を、予めORP水溶液治療群(即ち試験群)に含めた。
【0210】
入院時、全ての患者が、腹部四半部全ての開腹手術及び術中腹腔洗浄(「IOPL」)を受けた。両群で、手術中の腹膜培養サンプルを採取した。10Lの食塩溶液を用いて両群でIOPLを行い、続いて試験群のみ5LのORP水溶液でIOPLを行った。過剰のORP水溶液を除去し、さらなるリンスは行わなかった。両群で、腹腔をプラスチックのメッシュで覆った。しかしながら、試験群では、ORP水溶液に浸した包帯をメッシュの上に置いたままにした。包帯を1日3回取り替えた。全ての患者においてクリンダマイシン及びセフォタキシム又はアミカシンを含む2種の抗生物質を用いた経験的(emperic)抗菌療法を開始した。試験群での術後管理には、さらなるリンス又は洗浄をせずに、100mLのORP水溶液を用いて毎日、1日3回メッシュを洗浄することを含めた。重症の腹膜炎の症例は、72時間ごとの再開腹術及びIOPLを必要とした。好気性細菌及び真菌についての腹水の培養物を両群において最大1週間、72時間ごとに採取した。入院の長さの継続期間を記録した。
【0211】
20の対照(control)症例を当該施設の医療記録から選び、年齢、性別及び腹膜炎の病因により試験群に対してペアにした。対照集団と試験集団とは、年齢、性別及びエントリー時の予後因子について同等であった。解剖学的起源及び腹膜炎の病因もまた、両群について同様であった(表6)。
【0212】
【表6】
【0213】
対照群及び試験群のそれぞれ19及び17人の患者が術後腹膜炎を示した。全ての患者は外科治療、それに引き続いてIOPLを受けた。対照群/試験群で行われた手術のタイプは:虫垂切除(3/6)、胃切除(4/0)、胆嚢摘出(1/2)、膵臓の壊死組織切除(6/3)、吻合を伴う小腸縫合/切除(4/3)、ハートマン手術(1/1)、結腸切除(0/1)及び混合型(1/4)であった。抗生物質の使用は両群で非常に似ていた。対照群及び試験群について、3種の抗生物質を16人及び15人の患者に、並びに3種より多くの抗生物質を4人及び5人の患者にそれぞれ投与した。患者をICUに留め、術後に機械的人工呼吸をした。術中の腹腔内サンプルを40人の患者全てについて採取した(表7)。
【0214】
【表7】
【0215】
周術期並びに食塩溶液のみ(対照群)又は食塩溶液及びORP水溶液(試験群)での手術中の洗浄の翌週にサンプルを採取した。そして、平均的な入院期間を、エントリー時に単離された各微生物について、全ての群に対して分析した。
【0216】
40人の患者全てで、術中サンプルを採取した(表7)。これらのサンプルから増殖した微生物数の平均は、対照群で29、試験群で30であった。単離された微生物を表8に示す。エシェリヒア・コリ、エンテロコッカス、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーザ及び真菌が、これらの群よりそれぞれ3/6、4/2、10/8、2/3及び10/7の場合で単離された。A.キシロースオキシダンス(1)、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(2)及びA.バウマニ(1)について陽性の培養物は、試験群においてのみ見られた。
【0217】
第2の腹腔内培養物を手術後第一週の間に採取した(表7)。この時、対照群における単離された生物数の平均(24)は、術中サンプルにおいて(29)とほぼ同様であった。重要なことに、試験群において陽性のサンプル数の大幅な減少があった。術中サンプルにおける30の陽性の培養物のうち、1つのみがS.アウレウスについて陽性のままであり、また、別の1つがE.コリについて陽性のままであった。入院日数の分析では、対照群(31.9日間)は試験群(22.4日間)と比較してより長い入院であった。従って、ORP水溶液は、腹膜炎患者において腹膜の細菌負荷及び入院の長さを効果的に減少させた。
【0218】
死亡率も分析した。対照群では6人が死亡し、試験群では3人が死亡した。死亡は全て、最初の手術から最初の30日のうちに起こり、算出された相対リスクは対照群でより高かった(即ち、3.3対0)。しかしながら、統計的有意性を達するにはサンプルサイズが小さ過ぎた。IOPLにおけるORP水の使用に伴う局所的な副作用は記録されなかった。試験群における生存患者を6から12ヶ月間追跡した。追跡期間中、ORP水治療群の20人の患者の一人も腸閉塞、又は硬化性腹膜炎を示唆するデータを示さなかった。
【0219】
実施例20
本実施例は、例示的なORP水溶液(Mycrocyn)の、肥満細胞の脱顆粒の阻害における有効性を示している。肥満細胞は、I型過敏性疾患において役割を果たす主要なものとして認識されてきた。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎及びアトピー性喘息において観察される複数の臨床症状は、異なる罹患組織にある肥満細胞のIgE抗原刺激によって引き起こされる。アトピー性喘息の発症機序について現在認められている見解は、アレルゲンが、IgE産生肺肥満細胞(MC)を誘発することによってプロセスを開始させて、いわゆる即時相反応においてヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、キニン、血小板活性化因子(PAF)などのメディエーターを放出させるということである。続いて、これらのメディエーターは、気管支収縮を引き起こし、血管透過性及び粘液産生を亢進する。このモデルによれば、肥満細胞活性化に続いて、それらの細胞は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、IL−4、IL−5及びIL−6を含む様々な炎症促進性サイトカインを遅延相において分泌し、それらが好酸球、抗塩基球、Tリンパ球、血小板及び単核食細胞などの他の炎症性細胞の局所的動員及び活性化に関与する。次に、これらの動員された細胞が、その後自律性となる可能性があり、また、喘息の症状を悪化させる可能性がある炎症反応の進行に寄与する。この遅延相反応は、周囲組織における可塑的な変化を誘導し得る長期の炎症プロセスを構成する(Kumar et al., pp. 193-268参照)。
【0220】
肥満細胞の抗原刺激は、IgEに対する高親和性の受容体(FcεRI受容体)の活性化を通じて起こり、ここで前記受容体は、IgEに結合し、その後、受容体結合IgEの特異抗原との相互作用によって集合し得る多量体タンパク質である。その構造は4つのポリペプチドを含み、IgE結合α鎖、そのシグナル伝達能力を増幅する役目を果たすβ鎖、及びコードする免疫受容体チロシン(ITAM)活性化モチーフを通じた主要なシグナルトランスデューサーであるジスルフィド結合した2つのγ鎖を含む、この受容体の架橋結合により活性化される。シグナル伝達経路は、骨髄由来肥満細胞(BMMC)、ラット白血病細胞株RBL 2H3、マウス及びラットの腹膜肥満細胞、及びMC−9のようなその他の肥満細胞株を用いて特徴付けられてきた。これら全てにおいて、IgEに結合した抗原の存在が、肥満細胞の脱顆粒、カルシウム動員、細胞骨格再構成及びサイトカイン産生を最終的にもたらすサイトカイン遺伝子の転写を活性化する様々な転写因子(NFAT、NFκB、AP−1、PU.1、SP1、Etsなど)の活性化を引き起こす。
【0221】
成熟したマウスの骨由来(bone-derived)肥満細胞(BMMC)にモノクローナル抗ジニトロフェノールIgE(300ng/100万細胞)を37℃で4時間ロードした。培養培地を除去し、細胞を生理的緩衝液(Tyrode‘s Buffer/BSA)中に再懸濁した。次いで、細胞を異なる濃度の(Microcynでの実施形態における)ORP水溶液で15分間37℃で処理した。緩衝液を除去し、細胞を新たなTyrode’s/BSA中に再懸濁し、37℃で30分間インキュベートする間、様々な濃度の抗原(ジニトロフェノールに結合するヒトアルブミン)で刺激した。脱顆粒を、刺激された細胞の上清及びペレット中でのβ−ヘキソサミニダーゼの活性測定によって測定したが、それにはこの酵素が異なる糖質を加水分解する(hydrolize)能力に基づく比色分析反応を用いた。(β−ヘキソサミニダーゼは、肥満細胞中のヒスタミンを含有するのと同じ顆粒中にあることが示されている。)結果(図7)は、脱顆粒はORP水溶液の濃度が上昇するにつれて有意に減少することを示している。
【0222】
驚くべきことに、肥満細胞の脱顆粒に対するORP水溶液(Microcyn)の阻害効果は、臨床的に有効な「肥満細胞安定剤」であり、確立されている抗アレルギー性化合物であるクロモグリク酸ナトリウム(Intel(商標))で観察されたものと少なくとも類似している。脱顆粒を、刺激された細胞のペレット及び上清におけるβ−ヘキソサミニダーゼの酵素活性によって再度測定したが、それにはこの酵素が異なった糖質を加水分解する(hydrolize)能力に基づく比色分析反応を用いた。抗DNPモノクローナルIgEをロードした細胞を、15分間の前培養有り又は無しで、クロモグリク酸ナトリウム(Intel(商標))を用いて刺激した。クロモグリク酸塩は、脱顆粒の減少においてORP水溶液と同じ程度しか有効でなかった(図7を図8と比較されたい;どちらも少なくとも約50%の脱顆粒の減少を達成している)。
【0223】
実施例21
本実施例は、例示的なORP水溶液の、カルシウムイオノフォアによる肥満細胞の活性化に対する阻害活性を示している。
【0224】
肥満細胞は、カルシウムイオノフォアによって引き起こされるカルシウム流の活性化を通じて刺激され得る。カルシウムイオノフォアによって活性化されるシグナル伝達経路は、骨髄由来肥満細胞(BMMC)、ラット白血病細胞株RBL 2H3、マウス及びラットの腹膜肥満細胞、並びにMC−9のようなその他の肥満細胞株を用いて特徴付けられてきた。これらの系の全てにおいて、カルシウム動員は、肥満細胞の脱顆粒(例、ヒスタミン放出)、細胞骨格再構成、及びサイトカインの産生及び分泌を最終的にもたらすサイトカイン遺伝子の転写を活性化する様々な転写因子(例、NFAT、NFκB、AP−1、PU.1、SP1、Ets.)の活性化を引き起こす。
【0225】
成熟したマウスのBMMCにモノクローナル抗ジニトロフェノールIgE(300ng/100万細胞)を37℃で4時間ロードした。培養培地を除去し、細胞を生理的緩衝液(Tyrode‘s Buffer/BSA)中に再懸濁した。次いで、細胞を異なる濃度のORP水溶液(Microcyn)で15分間37℃で処理した。緩衝液を除去し、細胞を新たなTyrode’s/BSA中に再懸濁し、37℃で30分間インキュベートする間、カルシウムイオノフォア(100mM A23187)で刺激した。脱顆粒を、刺激された細胞の上清及びペレット中でのβ−ヘキソサミニダーゼの活性測定によって測定したが、それにはこの酵素が異なる糖質を加水分解する能力に基づく比色分析反応を用いた。(β−ヘキソサミニダーゼは、肥満細胞中のヒスタミンを含有するのと同じ顆粒中にあることが示されている。)結果(図8)は、脱顆粒はORP水溶液の濃度が上昇するにつれて有意に減少することを示している。
【0226】
これらの結果は、ORP水溶液がヒスタミン放出の非特異的な阻害剤であることを示唆している。従って、ORP水溶液(様々な濃度であっても)は、刺激物(例、抗原又はイオノフォア)に関係なく、肥満細胞の脱顆粒を阻害するであろう。いずれの理論によっても縛られることを望まないが、ORP水溶液は恐らく、原形質膜及び/又は細胞骨格のレベルで分泌経路系を改変する。ORP水溶液の作用機序は非特異的であると考えられているため、ORP水溶液は広範な臨床応用の可能性を有し得ると考えられる。
【0227】
実施例22
本実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のサイトカイン遺伝子の転写の活性化に対する影響を示している。
【0228】
図10A及び10Bは、実施例20に記載したようにして15分間様々な濃度のORP水溶液で処理し、さらに抗原によって刺激した肥満細胞由来のRNAaseプロテクションアッセイである。刺激後、アフィニティークロマトグラフィーカラム(RNAeasy kit,Qiagene)を用いてmRNAを抽出し、標準的なキット条件(Clontech,Becton & Dickinson)を用いてRNAseプロテクションアッセイを行い、抗原チャレンジ後の異なるサイトカインのmRNA産生を検出した。サイトカインとしては、TNF−α、LIF、IL13、M−CSF、IL6、MIF及びL32が含まれていた。
【0229】
図10A及び10Bは、ORP水溶液(Microcyn)は、実験のために用いたORP水溶液又は抗原の濃度に関わりなく、肥満細胞における抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを改変しなかったことを示している。
【0230】
本試験において、炎症促進性遺伝子の転写物のレベル(即ち、刺激された肥満細胞のRNA含有量)は、ORP水溶液処理した肥満細胞において、様々な濃度の抗原での刺激後に変化しなかった。従って、ORP水溶液は、これらのサイトカインの分泌経路を、それらの転写に影響を与えることなく阻害した。
【0231】
実施例23
本実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のTNF−α分泌に対する阻害活性を示している。
【0232】
実施例20に記載したようにして肥満細胞を様々な濃度のORP水溶液で15分間処理し、さらに抗原で刺激した。その後、組織培養培地を交換し、TNF−αのレベルを測定するために新たな培地のサンプルを様々な期間(2−8時間)で採集した。サンプルを凍結し、さらに市販のELISAキット(Biosource)を用いて、製造者の使用説明書に従って解析した。
【0233】
図11は、ORP水溶液で処理した細胞から抗原刺激後に培地に分泌されたTNF−αのレベルが、非処理の細胞と比較して有意に減少したことを示している。
【0234】
TNF−αの放出及び様々な他の炎症促進性分子の放出は、ヒスタミンの分泌経路とは別の分泌経路に依るため、ORP溶液は、炎症遅延相に導くそれら他のサイトカインの分泌を止めることが出来る可能性がある。
【0235】
従って、ORP水溶液は、抗原刺激された肥満細胞のTNF−α分泌を阻害した。これらの結果は、ORP水溶液の使用が外科手術処置後の様々な創傷における炎症反応を減少し得るという臨床上の観察に合致している。
【0236】
実施例24
本実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のMIP 1−α分泌への阻害活性を示している。
【0237】
実施例20に記載したようにして肥満細胞を様々な濃度のORP水溶液(Microcyn)で15分間処理し、さらに抗原で刺激した。その後、組織培養培地を交換し、MIP 1−αのレベルを測定するために新たな培地のサンプルを様々な期間(2−8時間)で採集した。サンプルを凍結し、さらに市販のELISAキット(Biosource)を用いて、製造者の使用説明書に従って解析した。
【0238】
図12は、ORP水溶液で処理した細胞から抗原刺激後に培地に分泌されたMIP 1−αのレベルが、非処理の細胞と比較して有意に減少したことを示している。
【0239】
従って、ORP水溶液は、抗原刺激された肥満細胞のMIP 1−α分泌を阻害した。これらの結果は、ORP水溶液の使用が外科手術処置後の様々な創傷における炎症反応を減少し得るという臨床上の観察に合致している。
【0240】
MIP 1−αの放出及び様々な他の炎症促進性分子の放出は、ヒスタミンの分泌経路とは別の分泌経路に依るため、ORP溶液は、炎症遅延相に導くそれら他のサイトカインの分泌を止めることが出来る可能性がある。
【0241】
IL−6及びIL−13分泌を測定する類似の試験の結果を、図13及び14に示す。
【0242】
実施例20−23及び本実施例は、ORP水溶液がIgE受容体の架橋によって開始される即時相及び遅延相のアレルギー反応を阻害し得ることをさらに示している。
【0243】
実施例25
この実施例は、例示的なORP水溶液を使用した毒性調査の結果を示している。
【0244】
急性の全身毒性調査をマウスで行い、例示的なORP水溶液であるMicrocyn 60の潜在的な全身毒性を決定した。単回用量(50mL/kg)のMicrocyn 60を5匹のマウスに腹腔内注射した。5匹のコントロールのマウスに単回用量(50mL/kg)の食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を注射した。全ての動物を、注射後すぐ、注射から4時間後、及び以後7日間毎日1回、死亡及び有害反応について観察した。全ての動物の体重も、注射前及び7日目に再度計量した。調査の間には、死亡はなかった。全ての動物は、調査を通じて臨床的に正常であるように見えた。全ての動物は体重が増加した。この調査から見積もられたMicrocyn 60の急性腹腔内LD50は、50mL/kgより大きい。この実施例は、Microcyn 60は有意な毒性を持たず、本発明に従った治療的な使用について安全であるはずであることを示している。
【0245】
実施例26
この実施例は、例示的なORP水溶液の潜在的な細胞遺伝毒性を決定するために行った調査を表している。
【0246】
例示的なORP水溶液(10% Microcyn(商標))を使用して微小核試験を行い、マウスへのORP水溶液の腹腔内注射の変異誘発の可能性を評価した。哺乳動物でのインビボの微小核試験は、マウスの多染性赤血球の染色体又は分裂装置への損傷を引き起こす物質の同定のために使用されている。この損傷は、ラギング染色体の断片又は分離した染色体全体を含有する細胞内構造である「微小核」の形成をもたらす。ORP水溶液の調査は、各10匹(オス5匹/メス5匹)のマウスの3つの群を含んだ:試験群、ORP水溶液を投与する;ネガティブコントロール群、0.9% NaCl溶液を投与する;及びポジティブコントロール群、変異原性のシクロホスファミド溶液を投与する。試験群及びネガティブコントロール群に、それぞれORP水溶液又は0.9% NaCl溶液の腹腔内注射(12.5ml/kg)を連続2日間(1日目及び2日目)与えた。ポジティブコントロールのマウスに、シクロホスファミド(8mg/mL,12.5ml/kg)の単回の腹腔内注射を2日目に与えた。何らかの有害反応について、全てのマウスを注射後すぐに観察した。全ての動物は、調査を通じて臨床的に正常であるように見え、いずれの群においても毒性の兆候は見られなかった。3日目に全てのマウスの体重を量り殺した。
【0247】
殺したマウスから大腿を摘出し、骨髄を抽出し、各マウスについて二重で塗抹標本を行った。各動物の骨髄のスライドを倍率40倍で読み取った。骨髄毒性の指標である、多染性赤血球(PCE)の正染性赤血球(NCE)に対する割合を、各マウスについて少なくとも合計200の赤血球をカウントすることにより決定した。それから、マウス1匹あたり最低2000の記録可能な(scoreble)PCEを微小核化多染性赤血球の発生について評価した。データの統計解析は、統計ソフトウェアパッケージ(Statview 5.0(登録商標),SAS Institute Inc.,USA)のマン・ホイットニー検定(5%のリスク閾値)を使用して行った。
【0248】
ポジティブコントロールのマウスは、それらの各ネガティブコントロールと比較して、統計的に有意に低いPCE/NCE比を有したが(雄:0.77対0.90、及び雌:0.73対1.02)、これは処理した骨髄へのシクロホスファミドの毒性を示している。しかしながら、ORP水溶液で処理したマウスとネガティブコントロールとの間には、PCE/NCE比に統計的に有意な差異は無かった。同様に、ポジティブコントロールのマウスは、ORP水溶液で処理したマウス(雄:11.0対1.4/雌:12.6対0.8)及びネガティブコントロール(雄:11.0対0.6/雌:12.6対1.0)の両方と比較して、微小核を有する多染性赤血球を統計的に有意に多く持っていた。ORP水溶液で処理したマウスとネガティブコントロールのマウスとの間には、微小核を有する多染性赤血球の数に統計的に有意な差異は無かった。
【0249】
この実施例は、10%のMicrocyn(商標)は、マウスへの腹腔内注射後に毒性効果も変異原性効果も引き起こさなかったことを示している。
【0250】
実施例27
この調査は、例示的なORP水溶液Dermacynには毒性がないことを示している。
【0251】
この調査は、ISO 10993−5:1999の基準に従って行い、例示的なORP水溶液Dermacynが細胞毒性を引き起こす可能性を決定した。0.1mLのDermacynを含むフィルターディスクをアガロース表面に置き、マウス繊維芽細胞(L−929)の単層に直接重層した。調製したサンプルを、5% CO2の存在下、37℃での24時間のインキュベーション後、細胞毒性の損傷について観察した。観察結果を陽性及び陰性対照のサンプルと比較した。Dermacynを含有するサンプルは、細胞溶解又は毒性のいかなる証拠も示さず、一方陽性及び陰性対照は予想された通りであった。
【0252】
この調査に基づいて、Dermacynはマウス繊維芽細胞に対して細胞毒性効果を生じないと結論付けた。
【0253】
実施例28
この調査は16匹のラットで行い、例示的なORP水溶液Dermacynの局所耐容性、及び全層皮膚創傷治癒のモデルにおける創傷床の組織病理への影響を評価した。創傷を対象ラットの両側に作った。治癒過程の間、皮膚切片を左側又は右側のいずれかに置いた(例えば、それぞれDermacyn処理及び食塩水処理)。
【0254】
Dermacyn及び食塩水処理した外科創傷部位のマッソントリクローム染色切片及びII型コラーゲン染色切片を有資格の獣医病理学者によって評価した。結合組織の増殖の現われとしての2型コラーゲンの発現量、繊維芽細胞の形態及びコラーゲンの形成、横断面における新表皮の存在、炎症及び皮膚潰瘍化の程度について、切片を評価した。
【0255】
結果は、Dermacynはラットにおいて十分に耐容されたことを示している。いずれかの側の創傷(それぞれDermacyn処理及び食塩水処理)からの皮膚切片において、処理に関連した組織病理学的な損傷はなかった。食塩水処理及びDermacyn処理した創傷部位の間に、関連性のある組織病理学的な差異は無く、これはDermacyn処理は十分に耐容されたことを示している。食塩水処理及びDermacyn(商標)処理した創傷部位の間に2型コラーゲン発現の有意な差異は無く、これはDermacynは創傷治癒の間、繊維芽細胞又はコラーゲンの同化に副作用を及ぼさないことを示している。
【0256】
実施例29
本実施例は、例示的な酸化還元電位水Microcynの有効な抗菌性溶液としての本発明に従った使用を示している。
【0257】
Microcyn酸化還元電位水を用いて、インビトロでの時間−殺菌評価を行った。Microcynを、Tentative Final Monograph, Federal Register, 17 June 1994, vol. 59: 116, pg. 31444に記載されているようにして、50の異なる微生物株(25のAmerican Type Culture Collection (ATCC)の株及び25のそれらと同種の臨床分離株)のチャレンジ懸濁液に対して評価した。各チャレンジ株の初期集団からのパーセント減少率及びLog10減少率を、30秒間、1分間、3分間、5分間、7分間、9分間、11分間、13分間、15分間及び20分間のMicrocynへの曝露後に決定した。全ての寒天プレーティングは重複して行い、Microcynを99%(v/v)濃度で評価した。全ての試験は、米国連邦規則第21条第58章に定められた通り、優良試験所基準(Good Laboratory Practices)に従って行った。
【0258】
以下の表は、5.0Log10を上回って減少した、試験した全ての集団についての30秒の曝露指標での上述したインビトロでの時間−殺菌評価の結果をまとめている。
【0259】
【表8−1】
【0260】
【表8−2】
【0261】
【表8−3】
【0262】
【表8−4】
【0263】
これらの微生物の減少を5.0log10未満で測定したが、Microcynはまた、表8に含まれない残りの3種に対する抗菌活性も示した。より具体的には、Microcynへの30秒の曝露により、ストレプトコッカス・ニューモニエ(臨床分離株; BSLI #072605Spn1)の集団は、この種の検出限界である4.5Log10を超えて減少した。さらに、カンジダ・トロピカリス(ATCC #750)でのチャレンジにおいて、Microcynは、30秒の曝露後、3.0Log10を超える微生物の減少を示した。それに加えて、カンジダ・トロピカリス(BSLI #042905Ct)でのチャレンジにおいて、Microcynは、20分の曝露後、3.0Log10を超える微生物の減少を示した。
【0264】
このインビトロの時間−殺菌評価の例示的な結果は、Microcyn酸化還元電位水が、広い範囲のチャレンジ微生物に対して急速な(即ち、ほとんどの場合30秒未満)抗菌活性を示すことを示している。評価した50のグラム陽性、グラム陰性及び酵母種のうちの47の微生物集団は、製品への30秒以内の曝露で、5.0Log10を超えて減少した。
【0265】
実施例30
本実施例は、HIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液4.0%(w/v)及び0.9%塩化ナトリウム洗浄液(USP)と対比した、本発明に従って用いた例示的な酸化還元電位水Microcynの抗菌活性の比較を示している。
【0266】
インビトロの時間−殺菌評価を、参考製品としてHIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液4.0%(w/v)及び無菌性0.9%塩化ナトリウム洗浄溶液(USP)を用いて実施例29に記載したようにして行った。各参考製品を、Tentative Final Monographにおいて具体的に表示された、10のAmerican Type Culture Collection (ATCC)株の懸濁液に対して評価した。集めたデータを次に、実施例29において記録されたMicrocynの微生物減少活性に対して解析した。
【0267】
Microcyn酸化還元電位水は、チャレンジ株のうち5つの微生物集団を、HIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液で観察されるのと遜色無い水準まで減少させた。MicrocynとHIBICLENS(登録商標)との両方とも、以下の種:エシェリヒア・コリ(ATCC #11229及びATCC #25922)、シュードモナス・エルギノーザ(ATCC #15442及びATCC #27853)及びセラチア・マルセッセンス(ATCC #14756)への30秒の曝露後、5.0Log10を超える微生物の減少を与えた。更に、上記表9に示したように、Microcynは、ミクロコッカス・ルテウス(ATCC #7468)に対して、30秒の曝露後に5.8420Log10の減少を与えることによる優れた抗菌活性を示した。しかしながら、30秒の曝露後、HIBICLENS(登録商標)は試験の検出限度(この具体的ケースにおいては、4.8Log10を上回る)まで集団を減少させたため、ミクロコッカス・ルテウス(ATCC #7468)の活性のHIBICLENS(登録商標)との直接的な比較は不可能であった。なお、無菌性0.9%塩化ナトリウム洗浄溶液は、上述した6つのチャレンジ株のそれぞれの微生物集団を、全20分の曝露後に0.3Log10未満減少させた。
【0268】
Microcyn酸化還元電位水は、試験した4つのチャレンジ株:エンテロコッカス・フェカリス(ATCC #29212)、スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC #6538及びATCC #29213)及びスタフィロコッカス・エピデルミディス(ATCC #12228)について、HIBICLENS(登録商標)と塩化ナトリウム洗浄液の両方よりも強い抗菌活性を与えた。以下の表にこれら4種についてのインビトロの時間−殺菌評価の微生物減少結果をまとめた。
【0269】
【表9−1】
【0270】
【表9−2】
【0271】
この比較のインビトロの時間−殺菌評価の結果は、Microcyn酸化還元電位水が、エシェリヒア・コリ(ATCC #11229及びATCC #25922)、シュードモナス・エルギノーザ(ATCC #15442及びATCC #27853)、セラチア・マルセッセンス(ATCC #14756)及びミクロコッカス・ルテウス(ATCC #7468)に対してHIBICLENS(登録商標)と遜色ない抗菌活性を示すだけでなく、エンテロコッカス・フェカリス(ATCC #29212)、スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC #6538及びATCC #29213)及びスタフィロコッカス・エピデルミディス(ATCC #12228)に対してより効果的な治療を与えることを示している。表9に示すように、Microcynは、一部の種において、より急速な抗菌反応(即ち、30秒未満)を実証している。さらに、Microcynへの曝露は、表9に記載した全ての種において、全微生物のより大きな減少をもたらす。
【0272】
実施例31
本実施例は、ペニシリン耐性ストレプトコッカス・ニューモニエ(ATCC 51915)に対するORP水溶液の有効性を示している。
【0273】
凍結培養物を用いて、複数のBAPのプレートに接種し、2−3日間35−37℃でCO2と共にインキュベートすることによって、ストレプトコッカス・ニューモニエの培養物を調製した。インキュベーション後、3−7mLの無菌希釈液/培地を各寒天プレートに移し、綿棒で採取して微生物を懸濁した。全てのプレートの懸濁液を集め、滅菌チューブに移し、4.0McFarland標準液と比較した。懸濁液を滅菌ガーゼに通して濾過し、試験手順に使用する前にボルテックス混合した。
【0274】
微生物懸濁液0.1mlの接種材料を49.9mlのMicrocyn又は対照物質に添加した。各曝露期間において、試験混合物をスワーリングして混合した。試験混合物を15秒、30秒、60秒、120秒、5分及び15分間25.0℃で曝露した。
【0275】
1.0mlのサンプルを試験混合物から取り出し、中和される接種試験混合物の100倍希釈に相当する9.0mlの中和剤に添加した。100倍中和した接種試験混合物の5mlアリコートを、10mlのButterfield’s Bufferで予め湿らせた0.45マイクロリットルのフィルター装置に移した。フィルターを約50mlのButterfield’s Bufferでリンスし、無菌的に装置から取り出し、BAPのプレートに移した。さらに1:10の段階希釈液を調製し、中和した接種試験混合物の10−3−10−4希釈液の1.0mlアリコートをBAPにデュプリケートでプレートした。
【0276】
細菌の継代培養のプレートを48±4時間35−37℃、C02下でインキュベートした。継代培養のプレートを検査前に2日間2−8℃で冷蔵した。インキュベーション及び保存の後、寒天プレートを増殖の存在について視覚的に観察した。コロニー形成単位を数え、各曝露時間における生存数を決定した。増殖を示している代表的な継代培養物を、試験微生物の確認のために適切に検査した。
【0277】
例示的なORP水溶液Microcynは、25.0℃での15秒、30秒、60秒、120秒、5分及び15分の接触時間後、ペニシリン耐性ストレプトコッカス・ニューモニエ(ATCC 51915)の>99.93197279%の減少を示した。
【0278】
実施例32
本実施例の目的は、細菌懸濁液アッセイを使用して、バシトラシンと対比した、例示的なORP水溶液(Dermacyn)の微生物活性を決定することである。
【0279】
Dermacynは使用準備済みの製品であり、従って試験の間の希釈の実行は必要とされなかった。バシトラシンは高濃度の補水液(re-hydrated solution)であり、33ユニット/mlに希釈する必要がある。
【0280】
購入した2.5x107/mlのB.アトロフェーアス(B. atropheus)胞子懸濁液を試験に用いた。さらにシュードモナス・エルギノーザ及びスタフィロコッカス・アウレウスの新たな懸濁液を調製し、分光光度計を用いて測定し、力価が許容範囲にあることを確実にした。
【0281】
9マイクロリットルの試験物質を100ulの微生物懸濁液に添加した。試験混合液を、20秒、5分及び20分の接触時間の間20℃に維持した。1.0mlの試験混合液(混合液全体)を9,0mlの中和剤に20分間添加し(これが最初の中和チューブ(original neutralization tube)即ちONTである)1.0mlの中和された試験混合物を、5分及び20分の接触時間の間、トリプトソイ寒天上にデュプリケートでプレートした。さらなる希釈液及びスプレッドプレートを20秒の時点に関して用い、カウント可能なプレートを得た。
【0282】
全てのプレートを30℃−35℃で合計3日間インキュベートし、インキュベーションの各日後に評価した。懸濁液を試験している間にDermacyn及びバシトラシンに曝露された微生物数を決定するために4回の10倍希釈を行い、最後の2回の希釈液1.0mlを、適用可能な場合に、デュプリケートでプレートした。
【0283】
試験微生物にチャレンジされた場合、Dermacynは、全ての時点の増殖性細菌(vegetative bacteria)並びに5分及び20分時点の胞子の完全な根絶(>4logの減少)を示した。バシトラシンは約1logの減少を引き起こすのみであった。20秒時点のMicrocynは、胞子における多少の減少を示した。バシトラシンは、試験期間中に細菌又は胞子集団を低下させた証拠を示さなかった。
【0284】
実施例33
本実施例は、バイオフィルム中の細菌に対する2つの例示的なORP水溶液(M1及びM2)の有効性を示している。
【0285】
全ての試験に関する親株は、P.エルギノーザPAO1である。全てのプランクトン株は、220rpmの振盪フラスコ内の最少培地(1リットルあたり2.56gのNa2HPO4、2.08gのKH2PO4、1.0gのNH4Cl、0.04gのCaCl2・2H2O、0.5gのMgSO4・7H2O、0.1mgのCuSO4・5H2O、0.1mgのZnSO4・H2O、0.1mgのFeSO4・7H2O、及び0.004mgのMnCl2・4H2O、pH 7.2)中22℃で好気的に成育させた。バイオフィルムを下記のとおり、最少培地中22℃で成育させた。グルタミン酸塩(130mg/リットル)を単一炭素源として用いた。
【0286】
バイオフィルムを、以前に記載されているようにして(参照により本明細書に組み込まれる、Sauer et.al., J. Bacteriol. 184:1140-1154 (2002))成育させた。簡潔に述べれば、貫流型連続流動チューブリアクターシステム(once-through continuous flow tube reactor system)のシリコンチューブの内表面を用いて22℃でバイオフィルムを育てた。バイオフィルムを流動条件下での成育3日後(成熟段階1)、6日後(成熟段階2)及び9日後(分散段階)に採取した。バイオフィルムの細胞を、チューブをその全長に沿ってつねることで管腔から細胞材料を押し出すことにより、内表面から採取した。得られた細胞ペーストを、氷上で回収した。サンプリング前に、大半の液体をチューブからパージして、分離した浮遊細胞からの干渉を防止した。
【0287】
浮遊及びバイオフィルム細胞の集団の大きさを、段階希釈のプレートカウントを用いることによりCFU数で決定した。そうするために、バイオフィルムを様々な時間でのSOSへの曝露後に内表面から採取した。貫流型流動セル中で成育したバイオフィルムの画像を、オリンパスBX60顕微鏡(Olympus,Melville,NY)及び100倍の倍率のA100PL対物レンズを用いて透過光により観た。画像を、Magnafire冷却式3チップ電荷結合素子カメラ(Optronics Inc.,Galena,CA)及び30分間の露光を用いて記録した。さらに、LSM 510 Meta倒立顕微鏡(Zeiss,Heidelberg,Germany)を用いて共焦点レーザー走査顕微鏡観察を行った。画像をLD−Apochrome 40_/0.6レンズ及びLSM 510 Metaソフトウェア(Zeiss)を用いて得た。
【0288】
60分以内の処理でM1処理したバイオフィルムについて、2logの減少が観察され。この結果は、M1での処理は、10.8分(+/−2.8分)ごとに、バイオフィルムの生存率において50%の減少をもたらすことを示している。
【0289】
【表10】
【0290】
しかしながら、M2での処理は、4.0分(+/−1.2分)ごとに、バイオフィルムの生存率において50%の減少をもたらすことを結果は示していたため、全体的には、M2は、バイオフィルムの殺菌においてM1よりも若干効果的であった。
【0291】
【表11】
【0292】
従って、ORP水はバイオフィルム中の細菌に対して効果的である。
【0293】
出版物、特許出願及び特許を含む本明細書で挙げた全ての文献は、各文献が個別且つ具体的に参照によって組み込まれると表示され、その全体が本明細書に示されたのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0294】
本発明を説明する文脈(特に添付の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がないか又は明らかに文脈に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、別段の記載が無ければ、オープンエンドの用語(即ち、「含むが、それに限定されない」ということを意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内に入る各個別の値を個別に言及する簡易な方法としての役目を持つことを単に意図しており、各個別の値は、それが個別に本明細書に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載した全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書で与えた、任意及び全ての例、又は例示的な言葉使い(例、「のような(such as)」の使用は、本発明をより良く明らかにすることを単に意図しており、別段の請求が無ければ、本発明の範囲を制限しない。本明細書中の言葉使いは、あらゆる非請求の要素が本発明の実施に不可欠であることを指示していると解釈されてはならない。
【0295】
本発明の好ましい実施形態を、発明者らが知っている本発明を実施するための最良の形態を含めて本明細書に記載している。これらの好ましい実施形態の変形は、上述の記載を読めば当業者には明らかとなり得る。発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを予期しており、また、発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載したのとは別の方法で実施されることを意図している。従って、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙した対象の、適用法によって認められるあらゆる修正及び同等物を含む。更に、上述の要素のあらゆる可能な変形でのあらゆる組み合わせが、本明細書に別段の指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0296】
【図1】図1は、例示的なORP水溶液を製造するための、チャンバーが3つの電解セルを示している。
【図2】図2は、チャンバーが3つの電解セルを示しており、製造プロセス中に生成されると思われるイオン種を示している。
【図3】図3は、例示的なORP水溶液を製造するプロセスの模式的フローダイアグラムである。
【図4A】図4Aは、過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス及びネクローシスの図式的な比較を示している。
【図4B】図4Bは、過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス及びネクローシスの図式的な比較を示している。
【図4C】図4Cは、過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス及びネクローシスの図式的な比較を示している。
【図5】図5は、500μM過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したHDFにおける8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)付加物量の図式的な比較である。
【図6】図6は、過酸化水素(HP)と対比した、低濃度の例示的なORP水溶液(MCN)への慢性曝露後のHDFにおけるβ−ガラクトシダーゼの発現によって明らかにされる細胞老化を示している。
【図7】図7は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を示している。
【図8】図8は、クロモグリク酸塩で処理した抗原活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を比較して示している。
【図9】図9は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化及びカルシウムイオノフォア(A23187)活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を示している。
【図10A】図10Aは、ORP水溶液処理肥満細胞に対する、コントロールにおける抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを示すRNAseプロテクションアッセイである。
【図10B】図10Bは、ORP水溶液処理肥満細胞に対する、コントロールにおける抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを示すRNAseプロテクションアッセイである。
【図11】図11は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるTNF−α分泌の図式的な比較である。
【図12】図12は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるMIP1−α分泌の図式的な比較である。
【図13】図13は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるIL−6分泌の図式的な比較である。
【図14】図14は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるIL−13分泌の図式的な比較である。
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本特許出願は、2006年1月20日に出願された米国仮特許出願第60/760,635号;2006年1月20日に出願された同第60/760,567号;2006年1月20日に出願された同第60/760,645号;及び2006年1月20日に出願された同第60/760,557号の利益を主張しており;これら全ては参照によって全体として本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
炎症は、有害刺激に起因し得る生物学的反応であって、普通はその刺激を除去すること又はその影響を改善することをその目的とする生物学的反応である。生存を促進することを普通は目的としているにも関わらず、炎症は、特に哺乳動物において、宿主に対する損傷を引き起こし得る。炎症を惹起する刺激又は傷害は、内因性の要因(例、自己抗原若しくは刺激性の体液)又は外因性の要因(例、異物若しくは病原菌)により引き起こされ得る。
【0003】
炎症は、「急性」及び「慢性」に分類されている。急性炎症は、通常は比較的短期間であり、数分から数時間、場合によっては数日間持続する。急性炎症は、傷害の部位における体液及び血漿タンパク質の浸出並びに多核白血球(PMNL)の蓄積により特徴付けることが出来る。急性炎症は、傷害に対する応答で放出される細胞分子が介在する、傷害の領域への血流の増加を通常含む。血管透過性の増加もまた細胞性のメディエーターに起因し、高タンパク質の体液の蓄積を引き起こす。この血流及び血管透過性の増加の重要なメディエーターとしては、肥満細胞由来のヒスタミン、セロトニン及びブラジキニンが挙げられる。
【0004】
急性炎症において、PMNLもまた傷害の領域へ誘引され、血流から出て該傷害へ移動する。PMNLは、組織損傷を引き起こし得る有毒代謝物及びプロテイナーゼを放出する。これらのプロテイナーゼとしては、細胞膜を損傷し得る補体系におけるタンパク質、及びブラジキニンを生成するカリクレインが挙げられる。急性炎症は、完全に解消されるか、膿瘍の形成を引き起こすか、瘢痕性の線維症をもたらすか、又は慢性炎症に進行し得る。
【0005】
慢性炎症はより長期であり、数週間から数ヶ月間、場合によっては数年間継続し、慢性炎症においては、組織の破壊と該損傷の修復を目的とする生物学的プロセスとが同時に進行する。慢性炎症は、より典型的にはリンパ球及びマクロファージを伴い、また、血管の増殖、線維症及び/又は壊死も含み得る。慢性炎症は、持続感染、毒物に対する長期の曝露、及び自己免疫反応を含む数多くの条件に起因し得る。慢性炎症は、しばしば、持続性の傷害部位におけるリンパ球及びマクロファージによるサイトカインの産生によって維持される。慢性炎症は、永続的な組織損傷又は完全な治癒という結果になり得る。
【0006】
過敏症は、一般に、損傷が宿主に対する利益を上回っている、宿主に対する損傷を引き起こす炎症を言う。過敏症は、例えば、アナフィラキシー、移植片拒絶反応及び自己免疫疾患を含む深刻な病状をもたらし得る。最も一般的なタイプの過敏症はアレルギーである。
【0007】
誘発因子(及び曝露の長さ)とは関係なく、炎症反応には、様々な数及びタイプの細胞及び分子が介在し、後者としては特にサイトカイン、成長因子、凝固因子、酵素、神経伝達物質及び補体タンパク質が挙げられる。これらの分子は主に、線維芽細胞、内皮細胞及び浸潤細胞(例、マクロファージ、リンパ球、肥満細胞、多核白血球など)、並びに局所神経によって傷害物質に応答して分泌される。放出される混合物及びその中のサイトカイン量は、誘発物質のタイプ、濃度及び曝露時間に依存するであろう。それ故、これらのタンパク質は、急性の局所炎症反応から全身性の生命にかかわる反応(例、急性全身性炎症反応症候群、SIRS;敗血性ショックのような多臓器不全;アナフィラキシーなど)にまで介在し得る。慢性炎症のプロセスにおいて、サイトカインは、例えば肉芽腫、組織の硬化、及び被包化膿瘍を引き起こすますます多くの浸潤細胞を絶え間なく動員する。いかなる場合であれ、炎症プロセスにおいて分泌されるタンパク質が、最終反応のグレード及び持続性における中心的な役割を果たすものである。
【0008】
誘発物質による前記細胞の刺激は、炎症促進性反応を構成するサイトカイン及び他の炎症性メディエーターの生成及び分泌を最終的にもたらす細胞内シグナル伝達事象のカスケードを引き起こす。炎症促進性反応は病原体又はアレルゲンの効果的な排除のために重要であるが、生成した炎症性メディエーターは組織損傷及び炎症を引き起こす。従って、重度の組織損傷を避けるために、この反応の活性化とダウンレギュレーションとの間のバランスが維持される必要がある(Cohen, J.: The immunopathogenesis of sepsis. Nature 2002 420, 885-891)。この反応の調節異常は、局部的な損傷(例、肺線維症)を誘発し得うるか、又は、前述したような敗血性ショック及び全身性炎症反応症候群(SIRS)のような致死的となり得る状態を引き起こし得る。このように、微生物アレルゲン、エンドトキシン及びその他多くの分子は、人体内の様々な細胞による炎症促進性メディエータータンパク質の生成を誘導する。生体組織におけるこれらすべての分子の複合効果が、その他多くの反応の中でも特に、凝固系、創傷治癒過程、抗菌活性、抗体産生及び疼痛の知覚における変化を介在し得る。
【0009】
全身性炎症反応症候群(SIRS)は、末端器官の損傷も特定可能な菌血症も伴わない、全身性炎症の特徴を含む症候群である。SIRSは、敗血症、重症敗血症又は敗血性ショックからは分けられ異なっている。SIRSから敗血症への変わり目の要所は、血中の特定された病原体の存在である。SIRSの病態生理としては、補体活性化、サイトカイン及びアラキドン酸代謝物分泌、刺激された細胞性免疫、凝固カスケードの活性化、並びに液性免疫機構が挙げられるが、これらに限定されるものではない。臨床的にはSIRSは、頻脈、頻呼吸、低血圧、かん流低下、乏尿、白血球増加又は白血球減少、発熱又は低体温、代謝性アシドーシス、及び換気量補助(volume support)の必要性により特徴付けられる。SIRSは全ての臓器システムに影響する可能性があり、多臓器不全症候群(MODS)を引き起こす可能性がある。このように、初期のステージ(即ち、SIRS)でさえ、炎症の原発部位及び血中において、多臓器不全の確立及び死亡の原因となり得る炎症促進性サイトカインの蓄積がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
通常、炎症はステロイド系又は非ステロイド系抗炎症薬で治療される。しかし、従来の抗炎症療法は様々な欠点(例、全身毒性、アレルギー反応、インスリン抵抗性、高血圧、心毒性、腎臓毒性、様々な血液凝固障害及び胃粘膜糜爛)を抱えている。従って、低刺激性であり、その上安全且つ効果的である炎症の治療又は予防方法が必要とされている。
【0011】
本発明はそのような方法を提供する。本発明のこれら及び他の利点、並びに発明上のさらなる特徴は、本明細書に与えた本発明の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
発明の要旨
本発明は、治療有効量の酸化還元電位(ORP)水溶液を患者に投与することによる、患者の炎症の予防又は治療の方法を提供し、ここで該溶液は少なくとも24時間安定である。本発明の方法は、様々な原因因子(例、アレルギー反応、自己免疫反応、感染、1種以上の炎症誘発物質との接触、及びそのような原因因子の組み合わせ)に起因する炎症の治療において使用され得る。
【0013】
本発明の方法は、1種以上の治療剤(例、抗生物質、抗ウイルス剤、抗炎症剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の化合物)と併用してORP水溶液を投与することをさらに含み得る。ORP水溶液と併用してそのような治療剤を投与することとしては、例えばORP水溶液の投与前、投与中(例、共投与によって又は組み合わせて、同時に)、又は投与後に、1種以上のそのような剤を投与することが挙げられる。
【0014】
ORP水溶液は、治療有効量のORP水溶液を、体内又は体外に存在し得る1つ以上の罹患組織と接触させるようにして、本発明に従う任意の好適な経路により(例、局所的に又は非経口的にORP水溶液を送達することによる)投与することが出来る。即ち、本発明は、ORP水溶液が1つ以上の組織(例、鼻、洞、咽頭、気管、肺、食道、胃、腸、中皮、腹膜、滑膜、膀胱、尿道(urtheral)、膣、子宮、卵管、膵臓、神経、口腔、皮膚及び皮下)に投与される方法を提供する。ORP水溶液は、例えば、液体、スプレー、ミスト、エアロゾル又はスチームとして、本発明に従う任意の好適な形態で投与することが出来、そして所望の場合、例えば、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、希釈剤などの1種以上の好適な担体と組み合わせることが出来る。
【0015】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、密封容器内に収容することが出来、且つ少なくとも24時間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、電気分解によって製造することが出来、且つ、好ましくは、例えば、反応種、イオン種、ラジカル種、それらの前駆体及びそれらの組み合わせを含む1種以上の種を含有するアノード水とカソード水との混合液を含む。本発明に従って投与されるORP水溶液は、強い抗炎症活性を示すが、それにもかかわらず正常な組織及び正常な真核細胞に対して実質的に無毒性である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
発明の詳細な説明
本発明は、患者における炎症を予防又は治療する方法を提供し、当該方法は該患者に治療有効量の酸化還元電位(ORP)水溶液(超酸化水(SOW)としても知られる)を投与することを含み、該溶液は少なくとも約24時間安定である。本発明の方法は、過敏症(例えばアレルギーにおける過敏症など)を含む急性炎症及び慢性炎症の治療又は予防(例、発症の阻害、進行の阻害、可能性の減少)のために使用することが出来る。本発明の方法に従って治療可能又は予防可能な炎症及び過敏症としては、例えば有害刺激との接触、負傷、感染、自己免疫反応、過敏症及びアレルギー反応(細胞性ヒスタミン及び炎症促進性サイトカインの放出に関連するアレルギー反応を含む)に起因する炎症を挙げることが出来る。
【0017】
驚くべきことに、本発明に従って投与されるORP水溶液は、一次炎症及びアレルギーを引き起こす生物学的カスケードの一つである、肥満細胞の脱顆粒に対する非常に有効な阻害剤であることが分かっている。本発明に従って投与されるORP水溶液は、抗原で活性化されていようが、カルシウムイオノフォアで活性化されていようが関係なく、肥満細胞の脱顆粒を阻害することが分かっている。これもまた驚くべきことに、本発明に従って投与されるORP水溶液は、肥満細胞における炎症促進性サイトカインの分泌を非選択的に阻害する。例えば、本発明のORP水溶液は、肥満細胞における例えば、TNF−α、MIP1−α、IL−6及びIL−13の分泌を阻害できる。本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、マクロファージ、単球、リンパ球、マクロファージ、PMN、繊維芽細胞及び内皮細胞を含むがこれらに限定されない他のサイトカイン分泌細胞における炎症促進性サイトカインの分泌も阻害できると考えられる。これらの知見は、本発明に従って投与されるORP水溶液は、広範な抗炎症効果を示すはずであることを示している。
【0018】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、最大約30分間、より好ましくは最大約15分間、なおより好ましくは最大約5分間、ORP水溶液と接触させたとき、好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約50%を上回って、より好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約80%を上回って、なおより好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約90%を上回って、更により好ましくは未処理の肥満細胞と比べて約90%を上回って、肥満細胞の脱顆粒を阻害する。
【0019】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、好ましくは約50%を上回って、より好ましくは約60%を上回って、なおより好ましくは約70%を上回って、更により好ましくは約85%を上回って、TNF−αの分泌を阻害する。加えて、本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、好ましくは25%を上回って、より好ましくは約50%を上回って、なおより好ましくは約60%を上回って、MIP1−αの分泌を阻害する。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、好ましくは25%を上回って、より好ましくは約50%を上回って、なおより好ましくは約60%を上回って、IL−6及び/又はIL−13の分泌を阻害する。本発明の方法によれば、ORP水溶液を単独で又は希釈剤(例、水)と組み合わせて投与することによって、ORP水溶液の成分の濃度を増加することによって、特別な送達系を利用することによって、及び/或いは曝露時間を増やすことによって、これらのサイトカインの分泌及び他のサイトカインの分泌を特定の%にまで治療的に阻害することができる。例としては、例えば、最大約50%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、最大約25%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、最大約10%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、最大約5%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、又は更には最大約1%(体積/体積)のORP水溶液/希釈剤の比率で、ORP水溶液が希釈されている組成物を投与することにより、サイトカイン分泌を治療的に阻害することができる。
【0020】
本発明の方法は、SLE、自己免疫性甲状腺炎、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、関節リウマチ、リウマチ熱、乾癬、天疱瘡、多形性紅斑、他の水疱性皮膚疾患、及びアトピーを含むが、これらに限定されない自己免疫反応に起因する、細胞介在性の炎症を治療又は予防するために使用することが出来る。本発明の方法は、感染、アレルゲン、異物及び自己免疫プロセスに起因する炎症を治療又は予防するために使用することが出来る。本発明の方法はまた、感染(例、ウイルス、細菌及び真菌からなる群から選択される1種以上の微生物による感染)に起因する炎症を治療又は予防するために使用することが出来、ここで前記炎症には、過敏症、及び感染に起因する自己免疫介在性の炎症が含まれる。
【0021】
本発明の方法は、上部呼吸器の状態に関連する炎症を治療又は予防するために使用することが出来る。炎症が上部呼吸器の状態と関連する場合、ORP水溶液は、好ましくは、例えばスプレー、ミスト、エアロゾル又はスチームとして、該状態に侵された1つ以上の上気道組織と接触するようにして上気道に投与される。本明細書に記載する1つ以上の投与経路を含む任意の好適な方法を、上気道へORP水溶液を送達して上部呼吸器の1つ以上の状態を本発明に従って治療又は予防するために用いることが出来る。
【0022】
本発明の方法は、1つ以上の上部気道組織(例、鼻孔組織、副鼻腔組織)又は肺組織を侵している炎症を予防又は治療するためにも使用することが出来る。そのような状態としては、例えば、本発明に従って投与されるORP水溶液で予防可能又は治療可能な副鼻腔炎(例、鼻副鼻腔炎、急性副鼻腔炎、慢性副鼻腔炎など)、咽頭炎及び喘息などを挙げることが出来る。
【0023】
慢性副鼻腔炎とは、通常、少なくとも3週間継続する副鼻腔の炎症を意味するが、炎症は数ヶ月間又は数年間までも継続することがある(しばしばそうなる)。アレルギーは、高い頻度で慢性副鼻腔炎に関係する。加えて、喘息患者は特に高い頻度で慢性副鼻腔炎を有する。埃、カビ及び花粉などの空中を浮遊するアレルゲン(アレルギー反応を誘発する物質)の吸入により、アレルギー反応(例えば、アレルギー性鼻炎)がしばしば引き起こされ、続いてアレルギー反応が副鼻腔炎(特に鼻副鼻腔炎又は鼻炎)を助長する可能性がある。真菌類にアレルギーのある人々は、「アレルギー性真菌性副鼻腔炎」と呼ばれる状態を発現し得る。湿っぽい天候又は空気中及び建物内の汚染物質もまた、慢性副鼻腔炎に罹患しやすい人々に影響を及ぼし得る。
【0024】
急性副鼻腔炎同様、慢性副鼻腔炎は、免疫不全又は粘液の分泌若しくは移動の異常(例えば、免疫不全症、HIV感染症、嚢胞性繊維症、カルタゲナー症候群)を伴う患者においてより一般的である。加えて、一部の患者は、重篤な喘息、鼻ポリープ、並びにアスピリン及びアスピリン様医薬(いわゆる非ステロイド系抗炎症薬、即ちNSAID)に対する重篤な喘息反応を有する。これら後者の患者は、高い頻度で慢性副鼻腔炎を有する。
【0025】
医者は、病歴、身体検査、X線及び必要によりMRI又はCTスキャン(磁気共鳴映像法及びコンピュータ断層撮影法)により副鼻腔炎を診断することができる。副鼻腔炎の診断及び考えられる原因の同定後、医者は、炎症を低減し且つ症状を緩和するであろう治療コースを処方できる。急性副鼻腔炎の治療は、通常、鼻道の排液の再構築、炎症原因の制御又は排除、及び痛みの緩和を必要とする。一般的に、医者は、うっ血を低減するための充血除去剤、細菌感染を制御するための抗生物質、及びもし痛みがあれば痛みを低減するための痛み止めを推奨する。
【0026】
薬剤での治療がうまくいかない場合、外科手術(例えば、アデノイドの除去、鼻ポリープの除去、鼻中隔彎曲の矯正、及び副鼻腔の内視鏡手術など)が、慢性副鼻腔炎を治療するための唯一の代替手段である可能性がある。本発明の方法に従うORP水溶液の投与は、抗生物質及び外科手術などのより侵襲的な療法を回避できる可能性のある代替手段として慢性副鼻腔炎及びそれと関連する炎症を治療するために使用することが出来ると考えられる。
【0027】
咽頭炎に関して、世界中で、医局、診療所及び救急治療室への全ての来診の1%から2%が咽頭炎を理由とすると見積もられている。合衆国及びメキシコにおいて、咽頭炎及び扁桃炎は、1年につきそれぞれ約1500万件及び1200万件の診察を占めていると考えられる。これらの症例は、通常、様々な細菌及びウイルスによって引き起こされる。また、A群β溶血性ストレプトコッカス(Streptococcus)によって引き起こされた咽頭炎及び扁桃炎は、小さな集団におけるリウマチ熱の危険性を著しく上昇させ得る。しかしながら、咽頭炎の症例のわずか5%から15%がこの細菌によって引き起こされたものであり、急性の症例の残りは、疫学的な関連性のほとんどない細菌及びウイルスによるものであると考えられている。後者の症例は、数日のうちに自己限定的となる傾向があり、続発症を残さない。
【0028】
世界中で多数の医者が、急性咽頭炎に対して見境いなく抗生物質を処方していることが確認されている。患者はしばしば強い抗生物質を要求する傾向があるため、これは日常の診療で起きる。不幸なことに、連鎖球菌(streptococcal)咽頭炎/扁桃炎の臨床的に正確な診断を確立することは難しく、抗生物質での急性咽頭炎/扁桃炎の治療のコスト/便益比は疑わしい。
【0029】
本発明の方法は、細菌及び/又はウイルスによる急性咽頭炎及び/又は扁桃炎の治療又は予防のための安全、有効且つコスト効率のよい補助療法を提供する。急性咽頭炎/扁桃炎の経験的治療は、本発明に従ったORP水溶液の投与から始まり得、また、ストレプトコッカスの迅速試験の展開又は結果に依存して、必要な場合にのみ抗生物質がそれから48−72時間後に開始され得る。従って、本発明の方法は、抗生物質の使用を延期させることが可能であり得、それと同時に、咽頭炎/扁桃炎がA群ストレプトコッカス由来でなければ、患者の症状(symptomatology)を低減して患者の回復を加速し得る。連鎖球菌咽頭炎/扁桃炎の治療のための本発明のORP水溶液の抗生物質との補助的使用はまた、臨床応答の期間を短縮させ得、再発率を減少させ得る。
【0030】
本発明の方法はまた、過敏症に関連する炎症の治療又は予防のためにも用いられ得る。歴史的には、過敏性反応は、深刻な疾患が起因し得る4つのタイプのうちの1つとして分類されてきた。本発明に従って投与されるORP水溶液は、1つ以上のそのような反応を治療及び/又は予防(例えば、発症の阻害、進行の阻害、又は可能性の減少)するために用いられ得る。I型過敏症は、通常、肥満細胞又は好塩基球に結合した抗体との抗原の結合に起因する。I型反応は、以前に抗原に感作されていた個体において、数分以内の抗原への曝露で起こる。ヒトでは、I型反応は、肥満細胞及び好塩基球上のFc受容体に高い親和性を持つIgEによって介在される。
【0031】
I型過敏症における肥満細胞の役割は、肥満細胞は血管及び神経付近の上皮表面下の組織に存在するため、特に重要である。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎及びアトピー性喘息において観察される複数の臨床症状は、異なる罹患組織中にある肥満細胞のIgE抗原刺激によって引き起こされる。現在受け入れられているアトピー性喘息の発症機序に対する見解は、アレルゲンが、IgE産生肺肥満細胞(MC)を誘発することによってプロセスを開始させて、いわゆる即時相反応においてヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、キニン(kininis)、血小板活性化因子(PAF)などのメディエーターを放出させるということである(参照により本明細書に組み込まれる、Kumar et al., Robbins & Cotran Pathologic Basis of Disease, 2004, pp. 193-268を参照されたい)。続いて、これらのメディエーターは、気管支収縮を引き起こし、血管透過性及び粘液産生を亢進する。このモデルによれば、遅延相における肥満細胞活性化に続いて、それらの細胞は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、IL−4、IL−5及びIL−6を含む様々なサイトカインを分泌し、それらが好酸球、抗塩基球、Tリンパ球、血小板及び単核食細胞などの他の炎症性細胞の局所的動員及び活性化に関与する。次に、これらの動員された細胞が、その後自律性となる可能性があり、また、喘息の症状を悪化させる可能性がある炎症反応の進行に寄与する。この遅延相反応は、周囲組織における変化を誘導する長期の炎症プロセスを構成する(Kumar et al., pp. 193-268)。臨床的には、I型反応は、アレルギー性鼻炎などの局所性の効果、又は掻痒、蕁麻疹、呼吸困難、及び循環虚脱を伴って現れるアナフィラキシーにおいてみられるような全身性の効果を有し得る。
【0032】
II型過敏症は、細胞表面上及び細胞外空間内の抗原を対象とする抗体によって介在される。これらの抗体は、細胞溶解を導き得るか、又は標的分子のオプソニン化(他の細胞による食作用のための前処理)をもたらし得る。或いは、抗体は、細胞表面受容体に導かれてそれを活性化し得る。II型反応に起因する状態としては、輸血反応、グレーブス病(甲状腺機能亢進症)、薬剤反応、悪性貧血及び急性リウマチ熱が挙げられる。リウマチ熱においては、抗体はストレプトコッカス抗原に対して形成されるが、心臓弁などのヒト組織と交差反応する。
【0033】
III型過敏症は、抗体と他の宿主免疫系タンパク質(最も典型的には補体タンパク質)との複合体である免疫複合体によって引き起こされる。補体と結合してそれを活性化する(active)のは、抗体の通常の機能である。しかしながら、その結果生じる高分子の免疫複合体が適切に処理されない場合、それらは持続的な組織損傷をもたらし得る。マクロファージ及びPMNLは、免疫複合体によって活性化されて、これらの細胞による毒性化学物質の放出につながり得る。免疫複合体反応は局所的であり得、また、例えばアルサス反応などの状態をもたらし得るか、又は血清病若しくは全身性エリテマトーデス(lupus erythematous)(SLE)の一部の特徴などの全身性の疾患を引き起こし得る。
【0034】
IV型過敏症は細胞介在性であり、遅延型過敏症と呼ばれることもある。IV型過敏症は、Tリンパ球によって介在され、しばしば肉芽腫性反応の形成をもたらす。肉芽腫性反応においては、類上皮(epitheloid)細胞と呼ばれるマクロファージの一形態が、抗原を消化しようとするが失敗する。抗原の存続は、更なるリンパ球を誘引するサイトカインの放出につながり、慢性的な炎症の病巣をもたらす。病巣は、隣接する細胞にとって毒性であるグランザイム及びパーフォリンを放出する高濃度の細胞傷害性(cyotoxic)Tリンパ球を有する。IV型過敏症は、例えばシェーグレン症候群、サルコイドーシス及び接触皮膚炎などの自己免疫疾患の顕著な構成要素である。
【0035】
病的状態は、異なるタイプの過敏性反応を兼ね備え得る。自己免疫疾患においては、宿主抗原が、宿主にとって深刻な結果を持つ過敏症を促進する。例えば、SLEにおいて、宿主抗原は血液細胞に対してII型反応を誘導し、一方、III型反応は血管及び腎糸球体の損傷をもたらす。更に、過敏性反応は、薬剤反応及び移植による拒絶反応などの医原性の(iatragenic)状態においてもみられる。移植による拒絶反応は、II型及びIV型過敏症の構成要素を含む。従って、移植可能な臓器又は細胞において、本発明に従って使用されるORP水溶液は、宿主によって拒絶される可能性を大きく低減することが出来た。
【0036】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、実質的に、正常な組織及び正常な哺乳動物細胞への毒性を持たないことが見出されている。本発明に従って投与されるORP水溶液は、真核細胞の生存率の有意な減少、哺乳動物細胞におけるアポトーシスの有意な増加、細胞加齢の有意な加速、及び/又は有意な酸化的DNA損傷を引き起こさない。無毒性は特に有利であって、また、本発明に従って投与されるORP水溶液の殺菌力は過酸化水素のそれとおおよそ同等であるが、それにもかかわらず正常な組織及び正常な哺乳動物細胞に対して毒性が過酸化水素よりも有意に低いことを考えると、恐らくそれは驚くべきことですらある。これらの知見は、本発明に従って投与されるORP水溶液が、例えばヒトを含む哺乳動物における使用にとって安全であることを示している。
【0037】
本発明に従って投与されるORP水溶液において、細胞の生存率は、約30分間のORP水溶液への曝露後に、好ましくは少なくとも約65%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約75%である。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、最大約30分又はそれより短いORP水溶液との接触で(例えば、ORP水溶液との約30分又は約5分の接触後)、好ましくは最大約10%の細胞のみで、より好ましくは最大約5%の細胞のみで、なおより好ましくは最大約3%の細胞のみで、アネキシンVを細胞表面に顕在化させる。
【0038】
更には、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液への慢性的な曝露後に、好ましくは約15%未満の細胞で、より好ましくは約10%未満の細胞で、なおより好ましくは約5%未満の細胞で、SA−β−ガラクトシダーゼ酵素を発現させる。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、食塩水によって引き起こされるのと同等の割合の酸化的DNA付加物形成(例えば、同等の条件下で処理された細胞において過酸化水素によって通常引き起こされる酸化的DNA付加物形成の約20%未満、前記酸化的DNA付加物形成の約10%未満、又は前記酸化的DNA付加物形成の約5%以下)を引き起こす。
【0039】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、有意なRNA分解を生じない。従って、ORP水溶液への約30分間の曝露後又は約30分間の曝露から約3時間後にヒトの細胞培養物から抽出されて変性ゲル電気泳動によって分析されるRNAは、有意なRNA分解を通常示さず、また真核生物のリボソームRNA(即ち、28S及び18S)に対応する2本の別個の(discreet)バンドを通常示し、これは、本発明に従って投与されるORP水溶液がRNAを実質的に無傷のままにすることを示している。同様に、ORP水溶液への約30分間の曝露又は曝露から約3時間後にヒトの細胞培養物から抽出されたRNAは、構成的なヒトGAPDH(グリセルアルデヒド−3−ホスフェートデヒドロゲナーゼ)遺伝子の逆転写及び増幅(RT−PCR)に供されて、RT−PCR産物のゲル電気泳動で強いGAPDHバンドを生じ得る。対照的に、同様の時間の間HPで処理された細胞は、有意なRNA分解を示し、GAPDHのRT−PCR産物はあったとしてもごくわずかである。
【0040】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、当技術分野で既知の任意の好適な投与方法を使用して投与することが出来る。例えば、ORP水溶液は、非経口的に、内視鏡的に、又は任意の罹患した生物組織表面(例、皮膚及び/又は1つ以上の粘膜表面)に直接投与することが出来る。非経口投与としては、例えば、筋肉内、皮下、静脈内、動脈内、くも膜下腔内、膀胱内又は滑膜腔内へのORP水溶液の投与を使用することを挙げることができる。ORP水溶液の内視鏡的な投与としては、例えば、気管支鏡検査法、結腸鏡検査法、S状結腸鏡検査法、子宮鏡検査法(hysterscopy)、腹腔鏡検査法(laproscopy)、関節鏡検査法(athroscopy)、胃鏡検査法又は経尿道の方法の使用を挙げることができる。ORP水溶液の粘膜表面への投与としては、例えば、鼻の、口の、気管の、気管支の、食道の、胃の、小腸の、腹腔の、尿道の、肺胞の、尿道の、膣の、子宮の、卵管の、及び滑膜の粘膜表面への投与を挙げることができる。
【0041】
非経口投与としてはまた、本発明に従って使用されるORP水溶液を静脈内、皮下、筋肉内又は腹腔内に投与することも挙げることができる。本発明のORP水溶液は、例えば、ORP水溶液の静脈内投与によるウイルス性心筋炎、多発性硬化症及びAIDSの治療方法を記載している米国特許第5,334,383号及び同第5,622,848号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されているようにして静脈内投与され得る。その他の適用としては、上述したような任意の過敏症及び感染プロセスの治療が挙げられる。
【0042】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、例えば、液体、スプレー、ミスト、エアロゾル又はスチームとして、任意の好適なプロセス(例、エアロゾル化、ネブライゼーション又はアトマイゼーション)により局所的に投与することが出来る。本発明のORP水溶液は、スチーム又はスプレーとして上気道に投与することが出来る。ORP水溶液がエアロゾル化、ネブライゼーション又はアトマイゼーションにより投与される場合、約0.1ミクロンから約100ミクロン、好ましくは約1ミクロンから約10ミクロンの範囲の直径を有する液滴の形態で投与されるのが好ましい。一つの実施形態において、本発明の方法は、約1ミクロンから約10ミクロンの範囲の直径を有する液滴の形態で、1つ以上の粘膜組織(例、1つ以上の上気道組織及び/又は肺組織)にORP水溶液を投与することを含む。
【0043】
エアロゾル化、ネブライゼーション及びアトマイゼーションに有用な方法並びに器具は当分野で周知である。例えば、医療用ネブライザーが、定投与量の生理学的に活性な液体を、レシピエントによる吸入のために吸気気流へ送達するために使用されてきた。例えば、特許第6,598,602号(参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。医療用ネブライザーは、吸気気体と共にエアロゾルを形成する液滴を生み出すように機能し得る。他の状況において、医療用ネブライザーは、水滴を吸気気流に注入するために使用されて、好適な水分含有量の気体をレシピエントに提供し得るが、これは、吸気気流がレスピレータ、ベンチレータ又は麻酔送達システムなどの機械的呼吸補助器によって提供される場合に特に有用である。
【0044】
例示的なネブライザーは、例えば、WO95/01137に記載されており、これは、医療用液体の液滴を、マウスピースを通じたレシピエントの吸入によって生み出される通過気流(吸気気流)中に排出するように機能する携帯用器具を記載している。別の例は、米国特許第5,388,571号(参照により本明細書に組み込まれる)に見ることができ、これは、呼吸不全の患者に呼吸の制御及び増強を提供し、液剤粒子を患者の気道及び肺胞に送達するネブライザーを含む陽圧ベンチレータシステムを記載している。米国特許第5,312,281号(参照により本明細書に組み込まれる)は、超音波ネブライザーを記載しており、これは、水又は液体を低温で霧化し、ミストのサイズを調整することができると報告されている。更に、米国特許第5,287,847号(参照により本明細書に組み込まれる)は、医薬のエアロゾルを新生児、小児及び成人に送達するための、測量可能な流速及び排出体積を有する気体ネブライジング装置を記載している。更には、米国特許第5,063,922号(参照により本明細書に組み込まれる)は超音波アトマイザーを記載している。ORP水溶液はまた、肺及び/又は気道内の感染症の治療のため或いは体のそのような部分における創傷の治癒のために、吸気システムの一部としてエアロゾル形態で投与されてもよい。
【0045】
より大規模な用途のために、これらに限定されないが、加湿器、噴霧器(mister)、噴霧器(fogger)、バポライザー、アトマイザー、ウォータースプレー及び他のスプレー器具を含む好適な器具を使用してORP水溶液を空気中に分散してもよい。そのような器具は、継続的なORP水溶液の投与を可能にする。ノズル中で空気と水とを直接混合する排出装置を採用してもよい。ORP水溶液は、低圧蒸気などの蒸気に転換されて気流中に放出され得る。超音波加湿器、蒸気加湿器(stream humidifier)又はバポライザー、及び気化式加湿器などの様々な種類の加湿器を用いてもよい。ORP水溶液を分散させるために使用される特定の器具は、換気システムに組み込まれて、家又は保健医療施設(例、病院、養護施設など)の全体にわたるORP水溶液の広範な適用を提供し得る。
【0046】
本発明によれば、ORP水溶液は、単独で又は1種以上の医薬上許容される担体(例、ビヒクル、アジュバント、賦形剤、希釈剤、及びそれらの組み合わせなど)と組み合わせて投与することができ、前記医薬上許容される担体は、ORP水溶液中に存在する1種以上の種(species)と相溶性があることが好ましい。当業者は、本発明に従って使用されるORP水溶液を投与するための適切な調剤及び方法を容易に決定できる。投与量における任意の必要な調整が、例えば副作用及び患者の全身状態の変化などの1つ以上の臨床上関係する要素の観点から技術を持つ施術者によって容易になされて、治療されている状態の性質及び/又は重篤度に対処することができる。
【0047】
例えば、ORP水溶液は、最大約25%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体と、最大約50%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体と、最大約75%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体と、最大約90%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体と、最大約95%(重量/重量又は体積/体積)の好適な担体と、又は更には最大約99%(重量/重量又は体積/体積)若しくはそれを上回る好適な担体と、ORP水溶液を組み合わせること又は希釈することによって調合され得る。好適な担体としては、例えば、水(例、蒸留水、無菌水(例、注射用の無菌水、無菌食塩水など))を挙げることができる。好適な担体としてはまた、米国特許出願第10/916,278号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載された1種以上の担体も挙げることができる。例示的な調剤としては、例えば、ORP水溶液が無菌水又は無菌食塩水で希釈されており、ORP水溶液が、最大約25%(体積/体積)の、最大約50%(体積/体積)の、最大約75%(体積/体積)の、最大約90%(体積/体積)の、最大約95%(体積/体積)の、又は最大99%(体積/体積)若しくはそれを上回る、好適な担体で希釈されている溶液を挙げることが出来る。
【0048】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、1種以上のさらなる治療剤(例、抗菌剤(例、抗生物質)、抗ウイルス剤、抗炎症剤及びそれらの組み合わせからなる群から選択される1種以上の活性化合物)とさらに組み合わせる(又は併用して投与する)ことが出来る。
【0049】
本発明の文脈において、患者(例、哺乳動物、特にヒト)に投与される治療有効量は、適当な時間枠にわたって患者において治療的又は予防的な反応をもたらすのに十分でなければならない。投与量は、当分野において周知の方法を用いて容易に決定され得る。当業者は、任意の特定の患者に対する具体的な投薬量レベルは、様々な治療上関係し得る要因に依存することを認識するであろう。例えば、投与量は、用いられる特定のORP水溶液の強度、状態の重篤度、患者の体重、患者の年齢、患者の肉体的及び精神的状態、全般的な健康、性別、食事、適用の頻度などに基づいて決定され得る。投与量の規模はまた、特定のORP水溶液の投与に付随する可能性のあるあらゆる副作用の存在、性質及び程度に基づいて決定され得る。可能であれば常に、副作用を最小限に保つことが望ましい。
【0050】
具体的な投薬量のために考慮され得る因子としては、例えば、生物学的利用能、代謝プロファイル、投与時間、投与経路、排出速度、及び特定の患者における特定のORP水溶液に関連した薬力学などを挙げることができる。他の因子としては、例えば、治療される特定の状態に関するORP水溶液の効力又は有効性、治療過程前又は治療経過中に現れる症状の重篤度などを挙げることができる。場合によっては、治療有効量を構成するものは、特定の状態の治療又は予防のための特定のORP水溶液の有効性を、合理的に、臨床的に予測する1つ以上のアッセイ(例えば、バイオアッセイ)を用いることによっても部分的に決定され得る。
【0051】
本発明に従って使用されるORP水溶液は、患者(例、ヒト)に対して、例えば現存の状態を治療するために、単独で又は1種以上の更なる治療剤と組み合わせて投与され得る。本発明のORP水溶液はまた、状態に関連した1種以上の原因物質に曝露されてきた患者(例、ヒト)に対して、単独で又は1種以上の更なる治療剤と組み合わせて、予防的に投与され得る。例えば、ORP水溶液は、1種以上の炎症誘発微生物(例、感染症、ウイルス、細菌及び/又は真菌)(又は過敏性エピトープ若しくはアレルゲン)に曝露されてきた患者に対して、該患者における微生物又はエピトープに関連する炎症(及び感染症さえも)を阻害又は可能性を減少させるために、或いはそのような曝露の結果として発現する炎症(及び感染症又はアレルギーさえも)の重篤度を低減するために、予防的に好適に投与することができる。
【0052】
本発明に従って使用されるORP水溶液を投与する好適な方法が利用可能であり、また、複数の投与経路を用いることができるとはいえ、特定の経路が別の経路よりも迅速かつ有効な反応をもたらし得ることを当業者は理解するであろう。治療有効量は、1日あたりの適用の回数に関係なく、個々の患者においてORP水溶液の「有効レベル」を達成するのに必要な投与量であり得る。治療有効量は、例えば、患者における状態を予防又は治療するための、ORP水溶液(又はそこに含まれる1種以上の活性種)の血中レベル、組織内レベル及び/又は細胞内レベルを達成するために個々の患者に投与される必要がある量として定義され得る。
【0053】
投薬の好ましいエンドポイントとして有効レベルを用いる場合、実際の投与量及び投与計画は、例えば、薬物動態、分布、代謝などにおける個体差によって変化し得る。有効レベルはまた、ORP水溶液が、1種以上の更なる治療剤(例、1種以上の抗感染症剤、1種以上の「緩和剤」、「調節剤」又は「中和剤」(例、米国特許第5,334,383号及び同第5,622,848号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたようなもの)、及び1種以上の抗炎症剤など)と組み合わせて用いられる場合、変化し得る。
【0054】
有効レベルの決定及び/又はモニタリングのために、適切な指標が用いられ得る。例えば、有効レベルは、適切な患者サンプル(例、血液及び/又は組織)の直接的な分析(例、分析化学)又は間接的な分析(例えば、臨床化学的指標を用いる)によって決定され得る。有効レベルはまた、例えば、尿代謝産物の濃度、状態と関連するマーカー(例、ウイルス感染の場合のウイルス数)の変化、組織病理及び免疫化学的分析、画像解析(例、X線、CTスキャン、NMR、PETなど)における肯定的な変化、核医学検査、並びに状態と関連する症状の低減などの直接的又は間接的な観察によっても決定することが出来る。
【0055】
従来のORP水溶液は、極度に限られた品質保持期限を持っており、通常わずか数時間である。この短い寿命の結果、従来のORP水溶液の使用は、その製造が使用する場所の近くで行われることを必要とする。現実的な観点からは、このことは、施設(例、病院などの保健医療施設)が、従来のORP水溶液を製造するために必要な設備を購入し、保管し、維持しなければならないことを意味している。更に、従来の製造技術では、充分な商業規模の量を製造して、広範な使用(例、保健医療施設用の一般的な殺菌剤として)を可能にすることはできなかった。
【0056】
従来のORP水溶液とは異なり、本発明に従って投与されるORP水溶液は、その調製後少なくとも約20時間安定である。更に、本発明に従って投与されるORP水溶液は、通常環境的に安全であり、従って、コストのかかる廃棄手順の必要性を回避する。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは少なくとも約1週間(例、1週間、2週間、3週間、4週間又はそれを上回って)、より好ましくは少なくとも約2ヶ月間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、なおより好ましくは少なくとも約6ヶ月間安定である。本発明に従って投与されるORP水溶液は、更により好ましくは少なくとも約1年間安定であり、最も好ましくは約1年間を超えて(例、少なくとも約2年間又は少なくとも約3年間)安定である。
【0057】
安定性は、その調製後に所定の時間の間、通常の保存条件下(例、室温)でORP水溶液が1つ以上の用途(例、肥満細胞の脱顆粒の阻害、サイトカイン分泌の阻害、汚染除去、殺菌、滅菌、抗菌クレンジング、及び創傷のクレンジング)のために好適なままである能力に基づいて測ることができる。本発明に従って投与されるORP水溶液の安定性はまた、ORP水溶液が、好ましくは最大約90日間安定、より好ましくは最大約180日間安定である、加速条件下(例、約30℃から約60℃)での保存によっても測ることができる。
【0058】
安定性はまた、ORP水溶液の品質保持期限の間の、溶液中に存在する1種以上の種(又はその前駆体)の経時的な濃度に基づいて測ることもできる。好ましくは、1種以上の種(例えば、遊離塩素、次亜塩素酸(hypocholorous acid)、及び1種以上の更なる超酸化水種及び)の濃度は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ヶ月間、その初期濃度の約70%以上に維持される。より好ましくは、1種以上のそれらの種の濃度は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ヶ月間、その初期濃度の約80%以上に維持される。なおより好ましくは、1種以上のそのような種の濃度は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ヶ月間、その初期濃度の約90%以上に維持され、最も好ましくは約95%以上に維持される。
【0059】
安定性はまた、ORP水溶液への曝露後にサンプル中に存在する生物の量の減少に基づいて決定することもできる。生物濃度の減少の測定は、例えば、細菌、真菌、酵母又はウイルスを含む任意の好適な生物に基づいてなされ得る。好適な生物としては、例えば、エシェリヒア・コリ(Escherichia coli)、スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)、カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)及びバチルス・アトロフェーアス(Bacillus athrophaeus)(かつてのB.スブチリス(B. subtilis))を挙げることができる。
【0060】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、生存する微生物の濃度を4log(104)減少させることができる低レベルの殺菌剤として機能することができ、また、生存する微生物の濃度を6log(106)減少させることができる高レベルの殺菌剤としても機能することができる。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、溶液の調製から少なくとも約2ヶ月後の測定で、1分間の曝露後の総生物濃度において、少なくとも4log(104)の減少をもたらすことが可能である。ORP水溶液は、より好ましくは、溶液の調製から少なくとも約6ヶ月後の測定で、生物濃度の104−106の減少が可能である。ORP水溶液は、なおより好ましくは、溶液の調製から少なくとも約1年後の測定で、そして最も好ましくはORP水溶液の調製から約1年より後(例、少なくとも約2年後又は少なくとも約3年後)の測定で、生物濃度の104−106の減少が可能である。
【0061】
例えば、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製(BioSciences Labs, Montana, US)から少なくとも2ヶ月後の測定で、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、エシェリヒア・コリ、エンテロコッカス・ヒラエ(Enterococcus hirae)、アシネトバクター・バウマニ(Acinetobacter baumannii)、アシネトバクタースピーシズ、バクテロイデス・フラギリス(Bacteroides fragilis)、エンテロバクター・エロゲネス(Enterobacter aerogenes)、エンテロコッカス・フェカリス(Enterococcus faecalis)、バンコマイシン耐性エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)(VRE、MDR)、ヘモフィルス・インフルエンザ、クレブシエラ・オキシトカ(Klebsiella oxytoca)、クレブシエラ・ニューモニエ(Klebsiella pneumoniae)、ミクロコッカス・ルテウス(Micrococcus luteus)、プロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)、セラチア・マルセッセンス(Serratia marcescens)、スタフィロコッカス・アウレウス、スタフィロコッカス・エピデルミディス(Staphylococcus epidermidis)、スタフィロコッカス・ヘモリティカス(Staphylococcus haemolyticus)、スタフィロコッカス・ホミニス(Staphylococcus hominis)、スタフィロコッカス・サプロフィティカス(Staphylococcus saprophyticus)、ストレプトコッカス・ニューモニエ、ストレプトコッカス・ピオゲネス(Streptococcus pyogenes)、カンジダ・アルビカンスからなる群からの生存する微生物サンプルの濃度を、30秒以内の曝露で、少なくとも約5log(105)減少させることが可能であり得る。ORP水溶液は、好ましくは調製から少なくとも約6ヶ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、これら全ての生物の105の減少を達成する能力がある。
【0062】
本発明はまた、バイオフィルム内の細菌(例、バイオフィルム内のシュードモナス・エルギノーザ)を殺菌するための方法も提供する。本発明は更に、モラクセラ・カタラーリス(Moraexlla catarrhalis)及び抗生物質(antibotic)耐性細菌(例、ペニシリン耐性ストレプトコッカス)を殺菌するための方法を提供する。本明細書中に開示する方法は、ORP水溶液を使用して細菌を殺菌するために本発明に従って使用することが出来、バシトラシンを使用するよりも早い。
【0063】
一つの実施形態において、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、エシェリヒア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウス及びカンジダ・アルビカンスを含むがこれらに限定されない生存する微生物サンプルを、約1分間以内の曝露で、約1×106生物数/mlと約1×108生物数/mlとの間の初期濃度から、約0生物数/mlの最終濃度へ減少させ得る。これは、約6log(106)から約8log(108)の生物濃度の減少に相当する。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、エシェリヒア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウス又はカンジダ・アルビカンス生物の106−108の減少を達成することが可能である。
【0064】
或いは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約5分間以内の曝露で、バチルス・アトロフェーアス胞子の胞子懸濁液の濃度において約6log(106)の減少を生じさせ得る。好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、バチルス・アトロフェーアス胞子の濃度において約106の減少を達成し得る。
【0065】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約30秒間以内の曝露で、バチルス・アトロフェーアス胞子の胞子懸濁液の濃度において約4log(104)の減少を生じさせ得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、バチルス・アトロフェーアス胞子の濃度において、この減少を達成し得る。
【0066】
本発明に従って投与されるORP水溶液は更に、ORP水溶液の調製から少なくとも約2ケ月後の測定で、約5分から約10分以内の曝露で、アスペルギリス・ニガー(Aspergillis niger)胞子などの真菌胞子の濃度において約6log(106)の減少を生じさせ得る。好ましくは、ORP水溶液は、調製から少なくとも約6ケ月後の測定で、より好ましくは調製から少なくとも約1年後の測定で、真菌胞子の濃度において106の減少を達成し得る。
【0067】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、酸性であっても、中性であっても、塩基性であってもよく、通常約1から約14のpHを有し得る。このpH域内で、ORP水溶液は、例えば表面に対して、該表面を損傷したりORP水溶液と接触することになる対象物(ヒトの皮膚など)を害したりすることなく、適当な量で安全に適用され得る。好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液のpHは、約3から約8である。より好ましくは、ORP水溶液のpHは約6.4から約7.8であり、なおより好ましくは、pHは約7.4から約7.6である。
【0068】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、約−1000ミリボルト(mV)から約+1150ミリボルト(mV)の酸化還元電位を持ち得る。この電位は、溶液が金属電極によって感知される電子を受容するか受け渡す傾向(即ち、潜在性)の尺度であり、同溶液中の参照電極と比較される。この電位は、例えば、例えば銀/塩化銀電極などの標準参照に対するORP水溶液のミリボルト単位での電気ポテンシャルを測定することを含む、標準的な技術によって測定され得る。
【0069】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、約−400mVから約+1300mVの電位を有する。より好ましくは、ORP水溶液は、約0mVから約+1250mVの電位を有し、なおより好ましくは約+500mVから約+1250mVの電位を有する。更により好ましくは、本発明に従って投与されるORP水溶液は、約+800mVから約+1100mVの電位を有し、最も好ましくは約+800mVから約+1000mVの電位を有する。
【0070】
本発明に従って投与されるORP水溶液中には、様々なイオン種及び他の種が存在してもよい。例えば、ORP水溶液は、塩素(例、遊離塩素及び結合塩素)及び溶解酸素、並びに任意でオゾン及び過酸化物(例、過酸化水素)を含有してもよい。1種以上のこれらの種の存在は、少なくとも、細菌及び真菌並びにウイルスなどの様々な微生物を殺すORP水溶液の殺菌能に寄与すると思われる。いずれの特定の理論にも縛られることを望まないが、又はそれより多い(or more of)そのような種もまた、ORP水溶液の抗炎症効果に寄与し得ると思われる。
【0071】
遊離塩素としては、典型的には、次亜塩素酸(HClO)、次亜塩素酸イオン(ClO−)、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)及びそれらの前駆体が挙げられるが、これらに限定されない。次亜塩素酸の次亜塩素酸イオンに対する比は、pHに依存する。pH7.4では、次亜塩素酸レベルは、通常約25ppmから約75ppmである。温度もまた、遊離塩素成分の割合に影響する。
【0072】
結合塩素としては、典型的に、例えばアンモニア又は有機アミンと化学結合している塩素(例、クロラミン)が挙げられる。結合塩素は、最大約20ppmの量で存在することが好ましい。
【0073】
1種以上の塩素種、1種以上のさらなる超酸化水種(例、例えば、酸素などの1種以上のさらなる酸化種)は、任意の適切な量で、本発明に従って投与されるORP水溶液中に存在し得る。これらの成分のレベルは、当技術分野において既知の方法を含む、任意の好適な方法により測定され得る。
【0074】
遊離塩素種の総量は、好ましくは約10ppmから約400ppm、より好ましくは約50ppmから約200ppm、最も好ましくは約50ppmから約80ppmである。次亜塩素酸の量は、好ましくは、約15ppmから約35ppmである。次亜塩素酸ナトリウムの量は、好ましくは、約25ppmから約50ppmの範囲内である。任意として、二酸化塩素レベルは約5ppmより低いことが好ましい。
【0075】
塩素含有量は、DPD比色法(Lamotte社、チェスタータウン、メリーランド州)、又は、例えば米国環境保護局によって確立された方法などの他の公知の方法のような、当該分野で公知の方法によって測定され得る。DPD比色法では、遊離塩素とN,N−ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)との反応によって黄色が形成され、パーツ・パー・ミリオンでの出力を与える目盛り付きの熱量計でその強度が測定される。ヨウ化カリウムを更に添加することによって、溶液がピンク色に転じ、総塩素値が得られる。次いで、総塩素から遊離塩素を差し引くことによって、存在する結合塩素の量が決定される。
【0076】
ORP水溶液中に存在する酸化化学種の総量は、好ましくは、約2ミリモル濃度(mM)の範囲内であり、これには、上記の塩素種、酸素種、及び更なる種(例えばCl−、ClO3、Cl2−、ClOxなどの測定するのが困難であり得る種を含む)が含まれる。
【0077】
一つの実施形態において、本発明に従って投与されるORP水溶液は、1種以上の塩素種及び1種以上の更なる超酸化水種(例、例えば酸素などの1種以上の更なる酸化種)を含む。好ましくは、存在する塩素種は、遊離塩素種である。遊離塩素種としては、次亜塩素酸(HOCl)、次亜塩素酸イオン(OCl−)、次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)、塩化物イオン(Cl−)、及び任意で、二酸化塩素(ClO2)、溶解塩素ガス(Cl2)、それらの前駆体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される1種以上の種を挙げることができる。
【0078】
一つの実施形態において、ORP水溶液は、1種以上の塩素種又は1種以上のそれらの前駆体、及び1種以上の更なる酸化水種又は1種以上のそれらの前駆体、及び任意で過酸化水素を含み、且つ、その調製から少なくとも約24時間、好ましくは少なくとも約1週間、より好ましくは少なくとも約(at about least)2ケ月間、なおより好ましくは少なくとも約6ケ月間、安定である。そのようなORP水溶液は、更により好ましくは少なくとも約1年間、最も好ましくは約1年を越えて(例えば、少なくとも約2年、又は少なくとも約3年)、安定である。
【0079】
ORP水溶液が、1種以上の塩素種(例、次亜塩素酸及び次亜塩素酸ナトリウム)又は1種以上のそれらの前駆体、及び1種以上の更なる超酸化水種(例、1種以上の酸素種、溶解酸素)又は1種以上のそれらの前駆体を含み、且つ、約6から約8のpHを有することもまた、好ましい。より好ましくは約6.2から約7.8、最も好ましくは約7.4から約7.6である。本発明に従って投与される例示的なORP水溶液は、例えば、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウム、約1ppmから約4ppmの1種以上の更なる超酸化水種を含んで約6.2から約7.8のpHであり得、且つ、少なくとも約1週間(例、少なくとも約2ヶ月、少なくとも約6ヶ月、少なくとも約1年、又は約1年を超えて(例、少なくとも約2年又は少なくとも約3年))安定であり得る。
【0080】
決して本発明を限定するわけではないが、pH及び他の変数(例、塩分)の制御により、例えば次亜塩素酸及び次亜塩素酸イオンなどの1種以上の塩素種又はそれらの前駆体、及び1種以上の更なる超酸化水種(例、酸素)又は1種以上のそれらの前駆体を含有する安定なORP水溶液を与えることができると思われる。
【0081】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、鉄への曝露でフリーラジカル(例えば、ヒドロキシルラジカル類など)をもたらし得る1種以上の酸化水種を含む。水酸化ナトリウム、二酸化塩素、過酸化水素及びオゾンは、次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応して他の化学種の消費及び生成をもたらす可能性があることが報告されてきたとはいえ、ORP水溶液は、任意で、その製造中に生成される例えば、水酸化ナトリウム(NaOH)、二酸化塩素(ClO2)、過酸化物(例えば、過酸化水素(H2O2))及びオゾン(O3)などの1種以上の化合物を含み得る。
【0082】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば電解プロセス又は酸化還元反応による酸化還元法によって製造することが出来、そこでは、電気エネルギーが水溶液中で1つ以上の化学的な変化を引き起こすために使用される。好適なORP水溶液を調製するための例示的な方法は、例えば、米国特許出願公開US2005/0139808号及び同US2005/0142157号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0083】
電解プロセスにおいて、電気エネルギーは、電流形態での一つの点から別の点への電荷の伝導によって水中に導入され、水中を運ばれる。電流が生じ、存続するためには、水中に電荷担体が存在しなければならず、また、その担体を動かす力がなければならない。電荷担体は、金属及び半導体の場合のように電子であり得るか、又は溶液の場合は陽イオン及び陰イオンであり得る。還元反応はカソードで起こり、酸化反応はアノードで起こる。起こると思われる還元及び酸化反応の少なくとも一部は、国際出願WO03/048421 A1号に記載されている。
【0084】
本明細書で使用される場合、アノードで生成される水をアノード水といい、カソードで生成される水をカソード水という。アノード水は、通常、電解反応で生成される酸化種を含有し、カソード水は、通常、該反応からの還元種を含有する。アノード水は、一般に、通常約1から約6.8の低いpHを有する。アノード水は、好ましくは、例えば塩素気体、塩化物イオン、塩酸及び/又は次亜塩素酸、或いは1種以上のそれらの前駆体を含む様々な形態の塩素を含有する。例えば酸素気体、及び場合により、製造中に形成される1種以上の種(例、過酸化物及び/又はオゾン)、又は1種以上のそれらの前駆体を含む、様々な形態の酸素もまた、好ましくは存在する。カソード水は、一般に、通常約7.2から約11の高いpHを有する。カソード水は、水素気体、ヒドロキシルラジカル及び/又はナトリウムイオンを含有し得る。
【0085】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、アノード水(例えば、電解セルのアノードチャンバーで生成される水)とカソード水(例えば、電解セルのカソードチャンバーで生成される水)との混合物を含み得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、例えば該溶液の約10体積%から約90体積%の量でカソード水を含有する。より好ましくは、カソード水は、溶液の約10体積%から約50体積%、なおより好ましくは溶液の約20体積%から約40体積%(例えば、溶液の約20体積%から約30体積%)の量でORP水溶液中に存在する。更に、アノード水は、例えば、溶液の約50体積%から約90体積%の量でORP水溶液中に存在し得る。例示的なORP水溶液は、約10体積%から約50体積%のカソード水及び約50体積%から約90体積%のアノード水を含有し得る。アノード水及びカソード水は、図1に示した3チャンバーの電解セルを使用して製造され得る。
【0086】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、好ましくは、アノードチャンバー、カソードチャンバー、及びアノードチャンバーとカソードチャンバーとの間に位置する塩溶液チャンバーを含む少なくとも1つの電解セルを用いて製造され、ここで少なくとも一部のアノード水及びカソード水は、ORP水溶液がアノード水及びカソード水を含むよう混ぜ合わせられる。例示的なORP水溶液の調製に用いられ得る例示的な3チャンバーの電解セルの図解を図2に示す。
【0087】
電解セル100は、アノードチャンバー102、カソードチャンバー104及び塩溶液チャンバー106を有する。塩溶液チャンバーは、アノードチャンバー102とカソードチャンバー104との間に位置する。アノードチャンバー102は、インレット108及びアウトレット110を有して、アノードチャンバー100を通る水の流れを可能にしている。同様に、カソードチャンバー104は、インレット112及びアウトレット114を有して、カソードチャンバー104を通る水の流れを可能にしている。塩溶液チャンバー106は、インレット116及びアウトレット118を有する。電解セル100は、好ましくは、全てのコンポーネントをひとまとめに保つためのハウジングを含む。
【0088】
アノードチャンバー102は、アノード電極120及びアニオンイオン交換膜122によって塩溶液チャンバーから分離されている。アノード電極120は、アノード電極120と塩溶液チャンバー106との間に位置する膜122と共に、アノード電極120がアノードチャンバー102に隣接して配置されてもよい。或いは、膜122は、膜122と塩溶液チャンバー106との間に位置するアノード電極120と共に、膜122がアノードチャンバー102に隣接して配置されてもよい。
【0089】
カソードチャンバー104は、カソード電極124及びカソードイオン交換膜126によって塩溶液チャンバーから分離されている。カソード電極124と塩溶液チャンバー106との間に位置する膜126と共に、カソード電極124がカソードチャンバー104に隣接して配置されてもよい。或いは、膜126と塩溶液チャンバー106との間に位置するカソード電極124と共に、膜126がカソードチャンバー104に隣接して配置されてもよい。
【0090】
電極は、好ましくは、金属から構成され、電位がアノードチャンバーとカソードチャンバーとの間に印加されるのを可能にする。金属電極は、一般に平面的であり、イオン交換膜と同様の寸法及び断面積を有する。電極は、イオン交換膜の表面のかなりの部分がそれぞれのアノードチャンバー及びカソードチャンバー中で水に露出されるように構成されている。これにより、塩溶液チャンバーとアノードチャンバーとカソードチャンバーとの間でのイオン種の移動が可能となる。好ましくは、電極は、電極表面にわたって均等に配置された複数の通路又は開口部を有する。
【0091】
電位源は、アノード電極120及びカソード電極124に接続され、アノードチャンバー102で酸化反応を、カソードチャンバー104で還元反応を引き起こす。
【0092】
電解セル100で使用されるイオン交換膜122及び126は、塩溶液チャンバー106とアノードチャンバー102との間での例えば塩化物イオン(Cl−)などのイオンの交換、及び塩溶液塩溶液チャンバー106とカソードチャンバー104との間での例えばナトリウムイオン(Na+)などのイオンの交換を可能にする、任意の好適な素材から構成され得る。アノードイオン交換膜122及びカソードイオン交換膜126は、同一又は異なる構成素材から作られていてもよい。好ましくは、アノードイオン交換膜は、フッ素化ポリマーを含む。好適なフッ素化ポリマーとしては、例えば、ペルフルオロスルホン酸ポリマー、並びにペルフルオロスルホン酸/PTFEコポリマー及びペルフルオロスルホン酸/TFEコポリマーなどのコポリマーが挙げられる。イオン交換膜は、素材の単層又は複数層から構成され得る。好適なイオン交換膜ポリマーとしては、Nafion(登録商標)という商標のもとで販売されている1以上のイオン交換膜ポリマーが挙げられる。
【0093】
電解セル100のアノードチャンバー102及びカソードチャンバー104のための水の源は、任意の好適な給水であり得る。水は、市の上水道からでもよく、或いは電解セルでの使用前に前処理されてもよい。好ましくは、水は前処理され、軟水、精製水、蒸留水及び脱イオン化水からなる群から選択される。より好ましくは、前処理された水の源は、逆浸透精製装置を用いて得られる超純水である。
【0094】
塩水(salt water)チャンバー106で使用するための塩水溶液としては、ORP水溶液を製造するために好適なイオン種を含有する任意の塩水溶液を挙げることができる。好ましくは、塩水溶液は、食塩溶液とも通常言われる、塩化ナトリウム(NaCl)塩水溶液である。他の好適な塩溶液としては、塩化カリウム、塩化アンモニウム、塩化マグネシウムなどの他の塩化物塩、並びにカリウム塩及び臭素塩などの他のハロゲン塩を挙げることができる。塩溶液は、塩の混合物を含有してもよい。
【0095】
塩溶液は、任意の好適な濃度を有し得る。例えば、塩溶液は、飽和であっても濃縮されていてもよい。好ましくは、塩溶液は、飽和塩化ナトリウム溶液である。
【0096】
図2は、本発明と関連して有用な3チャンバーの電解セルで生成される種々のイオン種であると思われるものを示している。3チャンバーの電解セル200は、アノードチャンバー202、カソードチャンバー204及び塩溶液チャンバー206を含む。アノード208及びカソード210への適切な電流の印加時に、塩溶液チャンバー206を通って流れる塩溶液中に存在するイオンは、アノードイオン交換膜212及びカソードイオン交換膜214を通じて、それぞれ、アノードチャンバー202及びカソードチャンバー204を通って流れる水中に移動する。
【0097】
陽イオンは、塩溶液チャンバー206を通って流れる塩溶液216から、カソードチャンバー204を通って流れるカソード水218に移動する。陰イオンは、塩溶液チャンバー206を通って流れる塩溶液216から、アノードチャンバー202を通って流れるアノード水220に移動する。
【0098】
好ましくは、塩溶液216は、ナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl−)イオンとの両方を含有する塩化ナトリウム(NaCl)水溶液である。陽イオンNa+は、塩溶液216からカソード水218に移動する。陰イオンCl−は、塩溶液216からアノード水220に移動する。
【0099】
ナトリウムイオン及び塩化物イオンは、アノードチャンバー202及びカソードチャンバー204において、更なる反応を受け得る。例えば、塩化物イオンは、アノード水220中に存在する種々の酸素イオン及び他の種(例、酸素含有フリーラジカル、O2、O3)と反応して、ClOn−及びClO−を生成し得る。酸素フリーラジカル、水素イオン(H+)、酸素(例えばO2として)、オゾン(O3)及び過酸化物の形成を含む他の反応も、アノードチャンバー202で起こり得る。カソードチャンバー204において、水素気体(H2)、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化物イオン(OH−)及び他のラジカルが形成され得る。
【0100】
ORP水溶液を製造するための装置はまた、少なくとも2つの3チャンバーの電解セルを含むように構成され得る。各電解セルは、アノードチャンバー、カソードチャンバー、及びアノードチャンバーとカソードチャンバーとを分離する塩溶液チャンバーを含む。装置は、電解セルによって生成されたアノード水及び1つ以上の電解セルによって生成されたカソード水の一部を集めるための混合タンクを含む。好ましくは、装置は、電解セルの塩溶液チャンバーに供給される塩溶液の再利用を可能にするために塩再循環システムを更に含む。2つの電解セルを用いてORP水溶液を製造するための例示的なプロセスの図解を図3に示す。
【0101】
プロセス300は、2つの3チャンバーの電解セル、具体的には第1電解セル302及び第2電解セル304を含む。水は、水源305から第1電解セル302のアノードチャンバー306及びカソードチャンバー308へ、並びに第2電解セル304のアノードチャンバー310及びカソードチャンバー312へ、移送されるか、ポンプされるか、又は他の方法で分配される。好都合なことに、このプロセスは、約1リットル/分から約50リットル/分のORP水溶液を製造できる。製造容量は、更なる電解セルを用いることによって増加され得る。例えば、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又はそれより多い3チャンバーの電解セルを用いて、本発明に従って投与されるORP水溶液の生産量を増加させてもよい。
【0102】
アノードチャンバー306及びアノードチャンバー310で生成されるアノード水は、混合タンク314に集められる。カソードチャンバー308及びカソードチャンバー312で生成されるカソード水の一部は、混合タンク314に集められてアノード水と合わさる。本プロセスで生成されるカソード水の残りの部分は廃棄される。カソード水は、任意で、混合タンク314への添加前に、ガス分離器316及び/又はガス分離器318に供されてもよい。ガス分離器は、製造プロセス中にカソード水中で形成される水素気体などの気体を除去する。
【0103】
混合タンク314は、再循環ポンプ315に任意で連結されて、電解セル302及び304からのアノード水とカソード水の一部との均一な混合を可能とする。更に、混合タンク314は、ORP水溶液のレベル及びpHをモニターするのに好適な器具を任意で含み得る。ORP水溶液は、混合タンクの場所又はその近くでの殺菌若しくは消毒に適用するために、ポンプ317を通じて混合タンク314から移送され得る。或いは、ORP水溶液は、離れた場所(例、倉庫、病院など)への出荷のために1つ以上の好適な容器に分配され得る。
【0104】
プロセス300は、塩溶液再循環システムを更に含んで、第1電解セル302の塩溶液チャンバー322へ、及び第2電解セル304の塩溶液チャンバー324へ、塩溶液を与える。塩溶液は、塩タンク320において調製される。塩は、ポンプ321を通じて塩溶液チャンバー322及び324へ移送される。好ましくは、塩溶液は、まず塩溶液チャンバー322、次いで塩溶液チャンバー324を通って順次流れる。或いは、塩溶液は、両方の塩溶液チャンバーへ同時にポンプされ得る。
【0105】
塩タンク320へ戻る前に、塩溶液は、混合タンク314中の熱交換器326を通って流れて、必要に応じてORP水溶液の温度を制御し得る。
【0106】
塩溶液中に存在するイオンは、第1電解セル302及び第2電解セル304において、時間と共に枯渇する。更なるイオン源が混合タンク320に定期的に加えられて、アノード水及びカソード水へ移送されるイオンを補給し得る。更なるイオン源は、例えば、時間と共に下がる(即ち、酸性化する)ことがある塩溶液のpHを一定に保つために使用され得る。更なるイオン源は、例えば、例えば塩化ナトリウムなどの塩を含む任意の好適な化合物であり得る。好ましくは、アノード水及びカソード水へ移送されるナトリウムイオン(Na+)を補給するために、水酸化ナトリウムが混合タンク320へ添加される。
【0107】
調製後、ORP水溶液は、例えば保健医療施設(例、病院、養護施設、医院、外来手術センター、歯科医院などを含む)などのエンドユーザーへの配給及び販売のために、1種以上の好適な容器(例、密封容器)に移され得る。好適な容器としては、例えば、容器に入れられたORP水溶液の無菌性及び安定性を維持する密封容器を挙げることができる。容器は、ORP水溶液と適合する任意の素材から構成され得る。好ましくは、容器は、一般に、ORP水溶液中に存在する1種以上のイオン又は他の種と非反応性である。
【0108】
好ましくは、容器は、プラスチック又はガラスから構成される。容器が棚に保存されることが可能であるよう、プラスチックは硬質であり得る。或いは、容器は、柔軟であり得る(例、例えば柔軟な袋などの軟質プラスチック製の容器)。
【0109】
好適なプラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン、ポリエステルテレフタレート(PET)、ポリオレフィン、シクロオレフィン、ポリカーボネート、ABS樹脂、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル及びそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、容器は、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)及び直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)からなる群から選択される1種以上のポリエチレンを含む。最も好ましくは、容器は高密度ポリエチレンで構成される。
【0110】
容器は、好ましくは、ORP水溶液の分配を可能とする開口部を有する。容器の開口部は、任意の好適な方法で密封され得る。例えば、容器は、ネジ切りキャップ又は栓で密封され得る。任意で、開口部はホイルの層で更に密封され得る。
【0111】
密封容器の上部の気体は、空気、又はORP水溶液中の1種以上の種と好ましくは反応しない任意の他の好適な気体であり得る。好適な上部の気体としては、例えば、窒素、酸素及びそれらの混合物が挙げられる。
【0112】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば1種以上の感染性病原体(例えば感染性微生物など)による感染症の予防又は治療のためにも用いられ得る。そのような微生物としては、例えば、ウイルス、細菌及び真菌を挙げることができる。ウイルスとしては、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス、コクサッキーウイルス、HIV、ライノウイルス(rhinovirus)及びインフルエンザウイルスからなる群から選択される1種以上のウイルスを挙げることができる。細菌としては、例えば、エシェリヒア・コリ、シュードモナス・エルギノーザ、スタフィロコッカス・アウレウス及びマイコバクテリウム・ツベルクロシス(Mycobaterium tuberculosis)からなる群から選択される1種以上の細菌を挙げることができる。真菌としては、例えば、カンジダ・アルビカンス、バチルス・スブチリス及びバチルス・アトロフェーアスからなる群から選択される1種以上の真菌を挙げることができる。
【0113】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、アデノウイルスに対して効果的であり得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、ORP水溶液への約20分間の曝露の後、より好ましくは約15分間の曝露の後、なおより好ましくは約10分間の曝露の後、好ましくは約2を上回る、より好ましくは約2.5を上回る、なおより好ましくは約3を上回る、アデノウイルス負荷におけるログ10の減少を達成する。本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、ORP水溶液への約5分間の曝露の後、好ましくは約2を上回るログ減少係数で、より好ましくは約2.5を上回るログ減少係数で、なおより好ましくは約3を上回るログ減少係数で、HIV−1のウイルス負荷を減少させるために効果的であり得る。
【0114】
本発明の方法によれば、感染症の予防又は治療のためのORP水溶液の投与は、本明細書に記載するような感染(又は罹患組織)に関連する炎症を予防又は治療するためにも役立ち得る。
【0115】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、例えば1つ以上の障害のある又は損傷した組織を治療有効量のORP水溶液に接触させることによって、障害のある又は損傷した組織を治療するためにも用いられ得る。障害のある又は損傷した組織を治療するために、任意の好適な方法が、障害のある又は損傷した組織を接触させるために用いることができる。例えば、障害のある又は損傷した組織は、障害のある又は損傷した組織を治療有効量のORP水溶液に接触させるようにして、該組織にORP水溶液を注ぐすることによって治療され得る。ORP水溶液は、障害のある又は損傷した組織を治療有効量のORP水溶液に接触させるようにして、本明細書に記載されたように、スチーム又はスプレーとして、或いはエアロゾル化、ネブライゼーション又はアトマイゼーションによって投与され得る。
【0116】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、例えば外科手術によって障害を持った又は損傷した組織の治療のために用いられ得る。例えば、ORP水溶液は、切開によって障害を持った又は損傷した組織を治療するために用いられ得る。更に、ORP水溶液は、口腔外科手術、グラフト手術、インプラント手術、トランスプラント手術、焼灼、切断、放射線照射、化学療法及びそれらの組み合わせによって障害を持った又は損傷した組織の治療のために用いられ得る。口腔外科手術としては、例えば、例として根管手術、抜歯、歯肉手術などの歯科外科手術を挙げることができる。
【0117】
本発明に従って投与されるORP水溶液は、必ずしも外科手術によって引き起こされるものではない、1つ以上の、熱傷、切り傷、擦り傷、掻き傷、発疹、潰瘍、刺創及びそれらの組み合わせなどによって障害を持った又は損傷した組織を治療するために用いられ得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、感染した、障害のある又は損傷した組織、或いは感染症によって障害を持った又は損傷した組織を治療するために用いられ得る。このような感染症は、例えば、本明細書に記載したようなウイルス、細菌及び真菌からなる群から選択される1種以上の微生物などの1種以上の感染性病原体によって引き起こされ得る。
【0118】
本発明によれば、障害のある又は損傷した組織を治療するためのORP水溶液の投与は、該障害又は損傷(或いは障害のある又は損傷した組織)と関連する炎症を予防又は治療する役目も果たし得る。
【0119】
本発明に従って投与されるORP水溶液はまた、様々な環境において、細菌、ウイルス及び胞子を含む微生物を根絶するための殺菌剤としても使用することが出来(例えば、保健医療及び医療機器の分野において、表面及び医療機器を殺菌するため)、また、創傷ケア、医療機器の滅菌、食物の滅菌、病院、消費者家庭、及び対バイオテロリズムにおいても適用することが出来る。ORP水溶液は、例えば表面を抗感染量のORP水溶液と接触させることによって、表面を殺菌するために用いることが出来る。表面は、任意の好適な方法を用いて接触され得る。例えば、表面は、該表面を殺菌するために、ORP水溶液を該表面に注ぐことによって接触され得る。更に、表面は、該表面を殺菌するために、本明細書に記載したようにして、スチーム又はスプレーとして、或いはエアロゾル化、ネブライゼーション又はアトマイゼーションによって、ORP水溶液を表面に塗布することによって接触され得る。更に、ORP水溶液は、本明細書に記載したようにして、クリーニングワイプを用いて表面に塗布され得る。表面を殺菌することによって、該表面は、感染性微生物から浄化され得る。或いは(又は更には)、本発明に従って投与されるORP水溶液は、表面に塗布されて感染に対するバリアを提供し、それにより該表面を殺菌することができる。
【0120】
表面としては、1種以上の生物表面、1種以上の無生物表面、及びそれらの組み合わせを挙げることができる。生物表面としては、例えば、例として、口腔、副鼻腔、頭蓋腔、腹腔及び胸腔などの1種以上の体腔内の組織を挙げることができる。口腔内の組織としては、例えば、口組織、歯肉組織、舌組織及び咽喉組織が挙げられる。生物学的な組織としてはまた、筋組織、骨組織、臓器組織、粘膜組織、血管組織、神経組織及びそれらの組み合わせも挙げることができる。生物表面としてはまた、初期及び樹立細胞株、あらゆる種類の幹細胞、異種移植片、組織代替物(例、細胞成分に加えて又は細胞成分無しで、コラーゲン又は任意の他の有機物質から作られたもの)、組織工学によって作製されたその他のあらゆる代替物、並びにそれらの組み合わせなど、あらゆるその他のインビトロでの培養組織が挙げられる。
【0121】
無生物表面としては、例えば、外科的にインプラント可能な器具、人工装具、及び医療器具が挙げられる。本発明の方法によって、外科手術中に露出される可能性のある、臓器、内臓、筋肉などの表面が、例えば外科的環境の無菌性を保つために、殺菌され得る。本発明によれば、表面を殺菌するためのORP水溶液の投与は、そのような表面に関連する1つ以上の生物組織を侵している炎症を治療又は予防するためにも役立ち得る。
【0122】
ORP水溶液はまた、以下の1つ以上と関連する、炎症、過敏症、及び関連する全身性の作用を含む様々な状態を治療するために、ヒト及び/又は動物に適用しても良い:手術/開放創傷クレンジング剤;皮膚病原体の殺菌(例、細菌、マイコプラズマ、ウイルス、真菌、プリオンに対して);戦闘の創傷の殺菌;創傷治癒の促進;熱傷治癒の促進;胃潰瘍の治療;創傷の洗浄;皮膚真菌;乾癬;水虫;結膜炎及び他の眼の感染症;耳の感染症(例、外耳炎);肺/鼻/副鼻腔の感染症;及びヒト又は動物の身体上又は身体内におけるその他の医療用途;及び環境の浄化。組織細胞成長促進物としてのORP水溶液の使用は、米国特許出願公開2002/0160053号(参照により本明細書に組み込まれる)に更に記載されている。
【0123】
ORP水溶液は、殺菌剤、滅菌剤、除染剤、消毒剤及び/又はクレンジング剤として使用され得る。本発明に従って投与されるORP水溶液は、以下の代表的用途における使用に好適である:医療用、歯科用及び/又は獣医用の装置及び器具;食品産業(例、硬表面、果物、野菜、食肉);病院/保健医療施設(例、硬表面);化粧品産業(例、皮膚クレンジング剤);家庭用(例、床、流し台、硬表面);電子産業(例、回路の洗浄、ハードドライブ);並びにバイオテロリズム(例、炭疽菌、感染性微生物)。
【0124】
ORP水溶液での処理により制御、減少、殺菌又は根絶され得る生物としては、以下に限定されないが、細菌、真菌、酵母及びウイルスが挙げられる。感受性細菌としては、以下に限定されないが、エシェリヒア・コリ、スタフィロコッカス・アウレウス、バチルス・アトロフェーアス、ストレプトコッカス・ピオゲネス、サルモネラ・コレラスイス(Salmonella choleraesuis)、シュードモナス・エルギノーザ、シゲラ・ディセンテリエ(Shingella dysenteriae)及びその他の感受性細菌が挙げられる。ORP水溶液で処理され得る真菌及び酵母としては、例えば、カンジダ・アルビカンス及びトリコフィトン・メンタグロフィテス(Trichophyton mentagrophytes)が挙げられる。ORP水溶液は、例えば、アデノウイルス、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、ライノウイルス、インフルエンザ(例、A型インフルエンザ)、肝炎(例、A型肝炎)、コロナウイルス(重症急性呼吸器症候群(SARS)の原因である)、ロタウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、単純ヘルペスウイルス、水痘帯状疱疹ウイルス、風疹ウイルス及びその他の感受性ウイルスを含むウイルスに対しても適用され得る。
【0125】
ORP水溶液は、殺菌及び消毒するために、任意の好適な方法で塗布され得る。例えば、医療用又は歯科用機器を殺菌及び消毒するために、その機器は、十分な時間の間ORP水溶液との接触を維持されて、機器上に存在する生物のレベルを所望のレベルまで減少させ得る。或いは、ORP水溶液は、物理的手順を促進する用途(例、超音波、振盪器、加熱器など)を持つ又は持たない容器内に装置を浸すことによって、医療用又は歯科用装置に適用することが出来る。
【0126】
硬表面の殺菌及び消毒のために、ORP水溶液は、ORP水溶液が保存されている容器から直接硬表面へ塗布され得る。例えば、ORP水溶液は、硬表面へ、注がれるか、スプレーされるか、又は他の方法で直接塗布され得る。ORP水溶液はその後、例えば、布、織物又はペーパータオルなどの好適な素地を用いて硬表面上に広げられ得る。病院の適用においては、素地は好ましくは無菌である。或いは、ORP水溶液は最初に布、織物又はペーパータオルなどの素地に塗布され得る。湿った素地はその後、硬表面と接触され得る。或いは、ORP水溶液は、本明細書に記載したようにして、空気中に溶液を分散させることによって硬表面に塗布され得る。ORP水溶液は、同様の方法でヒト及び動物へ塗布され得る。
【0127】
ORP水溶液はまた、水不溶性素地及び本明細書に記載されたようなORP水溶液を含むクリーニングワイプを用いて塗布することが出来、ここでORP水溶液は該素地に分注されている。ORP水溶液は、素地に浸み込まされるか、コートされるか、覆われるか、又は他の方法で塗布され得る。好ましくは、素地は、クリーニングワイプのエンドユーザーへの配給前にORP水溶液で前処理される。
【0128】
クリーニングワイプ用の素地は、任意の好適な水不溶性の吸収素材又は吸着素材であり得る。多種の素材が素地として使用され得る。それは、十分な湿潤強度、磨耗性、厚み(loft)及び多孔性を有しているべきである。更に、素地は、ORP水溶液の安定性に悪影響を与えてはならない。例としては、不織素地、織素地、ハイドロエンタングル素地及びスポンジが挙げられる。
【0129】
素地は1以上の層を有してもよい。各層は、同一又は異なる構成及び磨耗性を有してもよい。異なる構成は、異なる組み合わせの素材の使用、又は異なる製造プロセスの使用、或いはそれらの組み合わせから生じ得る。素地は、水中で分解又は分裂してはならない。素地は、処理される表面にORP水溶液を送達するための媒体をそれにより提供し得る。
【0130】
素地は、単一の不織シート又は複数の不織シートであり得る。不織シートは、木材パルプ、合成繊維、天然繊維及びそれらの混合物から製造され得る。素地に使用するために好適な合成繊維としては、限定されないが、ポリエステル、レーヨン、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、他のセルロースポリマー、及びそのような繊維の混合物を挙げることができる。不織物としては、メルトブローン、コフォーム(coform)、エアレイド、スパンボンド、ウェットレイド、ボンデッド−カーデッド(bonded-carded)織物素材、ハイドロエンタングル(スパンレースとしても知られる)素材及びそれらの組み合わせを含む、不織繊維シート素材を挙げることができる。これらの素材は、合成若しくは天然繊維又はそれらの組み合わせを含み得る。結合剤が素地中に任意で存在し得る。
【0131】
好適な不織の水不溶性素地の例としては、Little Rapids Corporationが提供しているセルロース100%のWadding Grade 1804、American Non−wovens Corporationが提供しているポリプロピレン100%のニードルパンチ素材NB701−2.8−W/R、Ahlstrom Fibre Compositesが提供しているセルロース繊維と合成繊維との混合のHydraspun 8579、PGI Nonwovens Polymer Corpが提供している70%ビスコース/30%PESのCode 9881が挙げられる。クリーニングワイプに使用するのに好適な不織素地の更なる例は、米国特許第4,781,974号、同第4,615,937号、同第4,666,621号及び同第5,908,707号、並びに国際特許出願公開WO98/03713号、同WO97/40814号及び同WO96/14835号(全て、参照により本明細書に(herby)組み込まれる)に記載されている。
【0132】
素地は、綿繊維、綿/ナイロンのブレンド、又は他の繊維製品のような織素材から製造されてもよい。スポンジを製造するのに使用される再生セルロース、ポリウレタンフォームなどもまた使用に好適であり得る。
【0133】
素地の液体負荷容量は、その乾燥重量の少なくとも約50%−1000%、最も好ましくは少なくとも約200%−800%であるべきである。これは、素地の重量の1/2倍から10倍の負荷として表される。素地の重量は、非限定的に、1平方メートル当り約0.01から約1,000グラムまで、最も好ましくは25から120グラム/m2まで変化し(「基本重量」という)、適当な形状及び寸法に切られるか、打ち抜かれるか、又は他の方法で寸法化されたシート又は織物として通常製造される。クリーニングワイプは、非限定的に、好ましくは約25から約250ニュートン/m、より好ましくは約75−170ニュートン/mである、特定の湿潤引っ張り強さを持つ。
【0134】
ORP水溶液は、任意の好適な方法によって、素地に分配されるか、浸み込まされるか、コートされるか、覆われるか、又は他の方法で塗布され得る。例えば、素地の個々の部分は、個別の量のORP水溶液で処理され得る。好ましくは、ORP水溶液による素地素材の連続織物の一括処理が行われる。素地素材の織物全体がORP水溶液に浸されてもよい。或いは、素地織物が巻かれるとき、又は不織素地の作製中であっても、ORP水溶液は織物上にスプレー又は定量され得る。多量の個別に切断及び寸法化された素地の部分は、製造業者によって、容器内でORP水溶液を染み込まされるか又はコートされ得る。
【0135】
クリーニングワイプは、ワイプの特性を向上させるために、任意で更なる成分を含んでもよい。例えば、クリーニングワイプは、ワイプの特性を向上させるために、ポリマー、界面活性剤、多糖類、ポリカルボキシレート、ポリビニルアルコール、溶媒、キレート剤、緩衝液、増粘剤、染料、着色剤、香料及びそれらの混合物を更に含んでもよい。これらの任意成分は、ORP水溶液の安定性に悪影響を与えてはならない。クリーニングワイプに任意で含まれ得る様々な成分の例は、米国特許第6,340,663号、同第6,649,584号、及び同第6,624,135号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0136】
クリーニングワイプは、ヒートシール可能又は接着可能な熱可塑性オーバーラップ(ポリエチレン、マイラー(Mylar)など)で個別シールされ得る。ワイプは、より経済的な分配のために、多数の個別シートとしても包装され得る。クリーニングワイプは、まず素地の複数のシートをディスペンサー中に置き、それから素地シートを本発明に従って投与されるORP水溶液と接触させることによって調製され得る。或いは、クリーニングワイプは、製造プロセス中にORP水溶液を素地に塗布し、それから湿った素地をディスペンサー中に装填することによって、連続織物として形成され得る。
【0137】
ディスペンサーとしては、これらに限定されないが、ふた付きのキャニスター、又はふた付きのタブが挙げられる。ディスペンサーのふたは、湿ったワイプを外部環境から密封し、且つ液体成分の早すぎる揮発を防止するためである。
【0138】
ディスペンサーは、素地とORP水溶液との両方に適合性のある任意の好適な素材から製造され得る。例えば、ディスペンサーは、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、又は他の硬質プラスチックなどのプラスチックから製造され得る。
【0139】
ワイプの連続織物は、ディスペンサーの最上部の細い開口部、最も好ましくはふたを通り抜け得る。その結果、織物から所望の長さ又は寸法のワイプを寸法化する手段が望ましいものとなり得る。非限定的な例として、ナイフの刃、鋸歯状の縁、又は所望の寸法に織物を切断する他の手段を、ディスペンサーの最上部に備えることが出来、切断縁としての細い開口部の役目を現実的に倍加する。或いは、ワイプの連続織物は、均一又は不均一な寸法又は長さに、切り込み線を入れられ、折り畳まれ、分割され、ミシン目を入れられ、又は部分的に切断され得、ひいては鋭い切断縁の必要性を取り除く。更に、1枚のワイプの取り出しが次のワイプを推進するよう、ワイプは交互配置されてもよい。
【0140】
或いは、ORP水溶液は、空気などの気体状の媒体を通じて環境中に分散され得る。ORP水溶液は、任意の好適な手段で空気中に分散され得る。例えば、ORP水溶液は、任意の好適な寸法の液滴に形成されて室内に分散され得る。
小規模用途のために、ORP水溶液は、スタンドパイプ及びポンプを含むスプレーボトルを通じて分配され得る。或いは、ORP水溶液は、エアロゾル容器中に詰められ得る。エアロゾル容器は、分配される製品、推進剤、容器及びバルブを含み得る。バルブは、アクチュエータ及び浸漬チューブの両方を含み得る。容器の内容物は、アクチュエータを下に押すことによって分配され得る。エアロゾル容器の種々の成分は、ORP水溶液と適合性があるべきである。好適な推進剤としては、液化ハロカーボン、炭化水素、又はハロカーボン−炭化水素混合、或いは二酸化炭素、窒素又は亜酸化窒素などの圧縮気体を挙げることができる。エアロゾルシステムは、好ましくは、寸法が約0.15μmから約5μmに及ぶ液滴を与える。
【0141】
また、創傷清拭及び洗浄のための様々な水中手術(hydrosurgery)装置(例、Smith and Nephewにより合衆国で販売されているVersaJet器具、Medaxisによりヨーロッパで販売されているDebritom、DeRoyalにより合衆国及びヨーロッパで販売されているJetOx、又はイタリアで販売されているPulsaVac)、及び陰圧による洗浄システム(例、VAC Instill)などを使用することによって適用することも出来る。
【0142】
生体工学皮膚(Apligraf,Organogenesis社,カントン)、無細胞の皮膚代替物(Oasis Wound Matrix,Healthpoint)、ORP水溶液の超音波適用、及び局所酸素補充又は高圧酸素治療(例えば、高圧ブーツ(hyperbaric boots)、Vent−Ox Systemなど)を含むいくつかの補助療法も、本発明に従って任意で利用され得る。
【0143】
一部の用途のために、ORP水溶液は、漂白剤を任意で含有し得る。漂白剤としては、例えば、素地を明るくするか又は白くする任意の好適な化合物を挙げることができる。漂白剤を含有するORP水溶液は、衣類を明るくすると共に、細菌及び病原菌を殺菌及び消毒するために家庭での洗濯に用いることが出来る。好適な漂白剤としては、これらに限定されないが、塩素含有漂白剤及び過酸化物含有漂白剤が挙げられる。漂白剤の混合物もまた、ORP水溶液に加えることが出来る。好ましくは、漂白剤は、水溶液の形態でORP水溶液に加えられる。
【0144】
好適な塩素含有漂白剤としては、例えば、塩素、次亜塩素酸塩、N−クロロ化合物及び二酸化塩素を挙げることができる。好ましくは、ORP水溶液に加えられる塩素含有漂白剤は、次亜塩素酸ナトリウム又は次亜塩素酸である。他の好適な塩素含有漂白剤としては、例えば、塩素、次亜塩素酸カルシウム、漂白液(例、次亜塩素酸カルシウム及び塩化カルシウムとの水溶液)、漂白粉(例、次亜塩素酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、及びそれらの水和物の混合物)、二塩基性次亜塩素酸マグネシウム、次亜塩素酸リチウム、塩素化リン酸三ナトリウム及びそれらの混合物が挙げられる。
【0145】
ORP水溶液への漂白剤の添加は、任意の好適な方法で行われ得る。好ましくは、漂白剤を含有する水溶液が最初に調製される。漂白剤を含有する水溶液は、家庭用漂白剤(例、Clorox(登録商標)漂白剤)、又は塩素含有漂白剤若しくは他の漂白剤のその他の好適な供給源を用いて調製することが出来る。漂白剤の溶液は、その後、ORP水溶液と混合され得る。
【0146】
漂白剤は、任意の好適な量でORP水溶液に加えることが出来る。好ましくは、漂白剤を含有するORP水溶液は、ヒト又は動物の皮膚に対して非刺激性である。好ましくは、塩素含有漂白剤を含有するORP水溶液の塩化物イオン総含有量は、約1000ppmから約5000ppmであり、好ましくは約1000ppmから約3000ppmである。塩素含有漂白剤を含有するORP水溶液のpHは、好ましくは約8から約10であり、酸化還元電位は約+700mVから約+800mVである。
【0147】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、当然ながら、決して本発明の範囲を限定するものとして解釈してはならない。
【実施例】
【0148】
実施例1−3
これらの実施例は、本発明に従って用いられるORP水溶液の独自の特徴を示している。実施例1−3のORP水溶液のサンプルを、本明細書に記載の方法に基づいて分析し、各サンプルに存在するイオン種及び他の化学種の物理的特性及びレベルを決定した。二酸化塩素、オゾン及び過酸化水素について得られた結果は、そのような種を測定するために用いられる標準試験に基づいているが、これらの結果は、肯定的な試験結果を生じることもあり得る様々な種を示すものであり得る。さらに、二酸化塩素、オゾン及び過酸化水素が次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応し、これらの消費及び他の化合物(例、HCl及びO2)の生成をもたらすことが報告されている。ORP水溶液の各サンプルについて、pH、酸化還元電位(ORP)及び存在するイオン種を表1に示す。
【0149】
【表1】
【0150】
ORP水溶液は、例えば、殺菌、滅菌、クリーニング、並びに/或いは炎症、副鼻腔炎、腹膜炎又は感染症の予防及び/又は治療における使用に好適な物理的特徴を有する。
【0151】
実施例4−10
これらの実施例は、本発明に従う、ORP水溶液への種々の量での漂白剤の添加について示している。特に、これらの実施例は、組成物の抗菌活性及び織物を漂白する能力を示している。
【0152】
蒸留水を用いて10%Clorox(登録商標)漂白溶液を調製した。次いで、10%漂白溶液を用いて以下の溶液を調製した:80%ORP水溶液/20%漂白剤(実施例4);60%ORP水溶液/40%漂白剤(実施例5);40%ORP水溶液/60%漂白剤(実施例6);20%ORP水溶液/80%漂白剤(実施例7);及び0%ORP水溶液/100%漂白剤(実施例8)。100%ORP水溶液/0%漂白剤(実施例9)、及び0.01%Tween20界面活性剤を含むORP水溶液(実施例10)を含む2つの対照溶液も比較のために使用した。これらのサンプルの物理的特徴、特にpH、酸化還元電位(ORP)、塩素(Cl−)総含有量、及び次亜塩素酸(HClO)含有量を決定し、二酸化塩素含有量及び過酸化物含有量を分析した。その結果を表2に示す。
【0153】
【表2】
【0154】
漂白剤の一部として加えた多量の塩素イオンは、n.d.記号で示したとおり、二酸化塩素及び過酸化物のレベルの正確な測定を妨げた。また、二酸化塩素及び過酸化物について得られた結果は、そのような種を測定するために用いられる標準試験に基づいているが、これらの結果は肯定的な試験結果を生じることもあり得る様々な種を示すものであり得る。さらに、二酸化塩素、オゾン及び過酸化水素が次亜塩素酸塩(hypocholrite)と反応し、これらの消費及び他の化合物(例、HCl及びO2)の生成をもたらすことが報告されている。これらの実施例が示すように、漂白剤の添加の有り無しでORP水溶液の次亜塩素酸レベルは同様である。
【0155】
実施例4−10のサンプルを、バチルス・スブチリス変種ニガー(Bacillus subtilis var. niger)胞子(SPS Medical of Rush,New Yorkから入手したATCC #9372)を用いる高胞子カウント試験に供した。胞子懸濁液を、(無菌フード中での蒸発によって)100マイクロリットルあたり4×106胞子まで濃縮した。胞子懸濁液のサンプル100マイクロリットルを、実施例4〜10における各サンプル900マイクロリットルと混合した。表3に示すように、サンプルを1から5分間室温で培養した。示した時間に、100マイクロリットルの培養サンプルを個々のTSAプレート上にプレートし、35℃±2℃で24時間培養後、各プレート上に生じたコロニーの数を測定した。対照プレートは、開始時の胞子濃度が>1×106胞子/100マイクロリットルであることを示していた。種々のサンプルについての種々の培養時間でのバチルス胞子の濃度(2回測定の平均として)を表3に示す。
【0156】
【表3】
【0157】
これらの結果が示すように、2−3分間培養したサンプルについて、漂白剤(10%の漂白剤水溶液として)の濃度が上昇するにつれて、殺菌されたバチルス胞子の量は減少した。しかし、5分間培養したサンプルについては、漂白剤の濃度は、バチルス胞子の殺菌に影響しない。さらに、この結果は、ORP水溶液への0.01%界面活性剤の添加が胞子の殺菌を減少させないことを示している。
【0158】
実施例4−10のサンプルを織物の漂白試験に供した。サンプルを試験した織物は、紺色の染みの斑点の付いた100%レーヨンの子供用Tシャツであった。染みの付いた織物の2インチ四方の切れ端を、50mLプラスチックチューブ中に入れた。織物の各切れ端を、実施例4−10の溶液のサンプルで覆った。完全な漂白が得られるまでの経過時間(織物の白色化によって決定した)を表4に示す。
【0159】
【表4】
【0160】
これらの実施例が示すように、組成物中のORP水溶液の濃度が上昇するにつれて、完全な漂白が達成されるまでの時間が増加する。
【0161】
実施例11
本研究の目的は、ウサギの鼻腔に滴として投与した場合の、被験(test)である例示的なORP水溶液であるMicrocynの安全性を評価することであった。33匹のウサギを、群I及び群IIの2つの群に無作為に割り当てた。群I(18匹)を対照群とし、群II(15匹)には被験物質を投与した。−1日目又は0日目に、体重を記録し、選択したパラメーターの分析のために血液サンプルを集めた。0日目に、群Iの動物に500μLの無菌食塩水を投与し、群nのアニュアル(annual)に500μLの被験物質(50%濃度)を投与した。対照及び被験物質は共に、右鼻孔に滴として1日2回投与した。1日目−6日目に同じ方法で動物に投与した。鼻に特に注意を払って、薬理的及び/又は毒性効果の兆候について、動物を毎日観察した。研究が終わるまで体重を毎週記録した。7日目に各群の3分の1の動物を、採血、屠殺及び剖検のために選抜した。残りの動物には14日目まで投与を継続し、14日目に各群の半分の動物を、採血、屠殺及び剖検のために選抜した。21日目(7日の回復期間後)に、残りの動物を採血し、屠殺し、剖検した。両鼻孔由来の鼻粘膜サンプルを、病理組織学的分析のために各動物から採取した。
【0162】
剖検は、気道の巨視的観察から構成されていた。鼻道全体及び関連する骨を採取し、緩衝ホルマリン中に固定した。気道において何らかの異常が見られるサンプルもまた、組織病理診断(histopathology)のために採取した。3つの生検サンプル(前部、中部及び後部鼻孔)を鼻孔ごとに(処理した右側及び非処理の左側)検査した。鼻粘膜の顕微鏡的組織病理診断としては:上皮の完全性、上皮繊毛の有無、炎症性細胞浸潤、浮腫、杯細胞の存在、腺の肥大、血管の数又は特徴の変化、及び任意の他の変化又は観察を含んでいた。
【0163】
試験群からの結果(鼻の観察を含む生存中の観察、体重、血液分析、巨視的剖検及び組織病理診断の結果)を対照群と比較した。低刺激性の刺激に関して、試験群は、食塩水で処理した動物と有意な差はなかった。
【0164】
実施例12
本実施例は、例示的なORP水溶液の使用では、毒性がないことを示している。
【0165】
深い創傷に局所的に塗布したMicrocyn 60からの局所的及び全身の毒性の特徴をラットで評価した。異常も、血液化学又は血液細胞学のパラメーターにおける有意な差異も観察されず、剖検での異常性も観察されなかった。皮膚刺激のグレード付け、並びに創傷及び塗布した箇所の周辺組織の組織病理診断は、Microcyn 60で処理した創傷と食塩水溶液で処理した対照群の創傷とでいかなる差異も示さなかった。
【0166】
Microcyn 60の全身毒性も、マウスにおける腹腔内注射により評価した。このために、単回用量(50mL/kg)のMicrocyn 60を腹腔内経路で5匹のマウスに注射した。同様にして、単回用量(50mL/kg)の食塩水溶液(0.9%塩化ナトリウム)を5匹の対照マウスに注射した。この調査では、単回腹腔内用量のMicrocyn 60を受けたいずれの動物においても、死亡も全身毒性のいかなる証拠も観察されず、LD50は50mL/kgを上回ることが示された。
【0167】
Microcyn 60を経口経路でラットに投与して吸収させ、製品のあらゆる内在性の毒性効果を特徴付けた。本研究において、単回用量(4.98mL/kg)を食道管経路で3匹のSprague−Dawley系のアルビノラットに投与した。死亡も無く、単回経口用量のMicrocyn 60に曝露されたいずれの動物の剖検においても、臨床的症状も異常も無かった。
【0168】
局所的に塗布したMicrocyn 60の眼球刺激に対する可能性についても、ウサギで評価した。眼球経路での局所投与によりMicrocyn 60に曝露されたいずれの動物においても、眼球刺激も他のいかなる臨床的症状も観察されなかった。
【0169】
Microcyn 60を吸入経路でラットに適用し、吸入による潜在的な急性毒性を決定した。全ての動物が、曝露後の活動性及び立毛において、非常にわずか又はわずかな減少を示したが、それらは翌日には全て無症候性であった。吸入によりMicrocyn 60に曝露された動物の剖検では、死亡も異常も観察されなかった。
【0170】
Microcyn 60による皮膚の感作の可能性の評価を、改良した閉塞パッチ法(Buehler)を用いてモルモットで行った。簡易処理のチャレンジ後の対照群の動物においても、当該処理でのチャレンジ後の評価(誘導によって処理)した動物においても、刺激は観察されなかった。これらの研究はMicrocyn 60が感作反応を引き起こさないことを示している。
【0171】
このようにして、経口及び吸入経路、又は腹腔内注射によって、無傷の皮膚、深く開いた皮膚の創傷、結膜嚢内に適用されたとき、Microcyn 60は製品と関連する副作用を示していない。また、優れた消毒及び美容の結果で、皮膚及び粘膜における非常に多様な性質の創傷を有する数千人を超える患者を治療した経験もある。従って、局所的に塗布されたMicrocyn 60は、この臨床試験において、有効かつ耐容性良好のはずである。
【0172】
Microcyn 60は、透明な240mLの密閉されたPETボトルに詰められる。この製品は環境温度で保存され、そのようなボトル中で2年間まで安定なままである。Microcyn 60は、その高い生物学的安全性の特性より、汚染又は腐食の危険性無しで、例えば流しへ出して、安全に処分され得る。
【0173】
実施例13
本実施例は、咽頭炎の治療に対する例示的なORP水溶液の有効性を決定するために使用できる臨床研究を示している。
【0174】
合衆国及びメキシコの両方において、Microcyn 60を用いた複数の微生物試験が行われてきた。曝露の最初の数秒で90%を上回る細菌の根絶が起こる。この基準に従ってMicrocyn 60が示す抗菌活性及び抗真菌活性を表5に要約する。
【0175】
【表5】
【0176】
殺胞子活性試験をPAHO[汎米保健機構]/WHOプロトコルに従って行った。
【0177】
Microcyn 60の殺ウイルス活性は、HIVに対して合衆国で行われた研究で最近確認され、リステリア・モノサイトゲネス(Listeria monocytogenes)、MRSA及びマイコバクテリウム・ツベルクロシスに対する活性もまた実証されている。このように、Microcyn 60は、推奨されるように投与されるとき、1分から15分の曝露で、細菌、真菌、ウイルス及び胞子を根絶できることが示されている。
【0178】
更に、以下は、咽頭炎/扁桃炎の治療に対するMicrocyn 60の効果を評価するために使用され得る臨床研究である。この臨床試験においては、A群β溶血性ストレプトコッカスによって引き起こされた急性咽頭炎/扁桃炎を有し、かつ治療を受けていない患者40人を採用する。包含基準は以下の通りである:年齢12歳から40歳かつ2つ以上の下記症状:口腔咽頭の灼熱感;嚥下痛;咽頭紅斑又は扁桃腺の紅斑(浸出液有り又は無し);頸部リンパ節腫脹;及びA群ストレプトコッカス抗原(StrepA試験−Abbott Labs)について陽性の免疫アッセイ。除外基準は以下の通りである:>38℃の熱;気管支痙攣(クリニックにより除外);重度の咳;副鼻腔炎−鼻炎(クリニックにより除外);食道逆流(クリニックにより除外);本試験前の2週間内における抗生物質の使用;最近8週間で別の臨床試験に参加した患者;リウマチ熱;ストレプトコッカス感染後糸球体腎炎;重度の慢性心臓病;重度の腎、肝又は肺不全;及び妊娠又は授乳。
【0179】
本試験の開始時点で、患者はパラセタモール及びアセチルサリチル酸を含む解熱剤や鎮痛剤のような併用薬を使用し得るが、イブプロフェン、メスリド、COX−2阻害剤又はステロイドなどの抗炎症剤は使用し得ない。患者が任意の具体的な試験の手順を受ける前に、書面によるインフォームド・コンセントを得なければならない。
【0180】
患者は3回の来診で評価される。1回目の来診では、患者は臨床的に急性咽頭炎/扁桃炎を示し、病歴がとられ、医学検査、ストレプトコッカスについての簡易免疫アッセイ、及び咽頭滲出物の採取が行われる。適格であるとの告知後、及びインフォームド・コンセントの書類にサインした後、患者は、それぞれ30秒で5mLのMicrocyn 60での2回の口腔咽頭の洗浄を処方される。それらのリンスは、3日間、3時間ごとに1日合計4回行われる。
【0181】
2回目は、Microcyn 60での処置の72時間後になされる。2回目の来診では、臨床的進展及びMicrocyn 60の副作用が評価される。新たな咽頭滲出物が採取され、臨床的進展に従って、続く治療が抗生物質を用いるものであるのか、或いは苦痛緩和剤を用いるものであるのかが決定される。3回目の来診が10日後にされて、患者は解放される。
【0182】
本試験において適格であり臨床的に評価されるためには、各患者は、培養によって確認されるA β溶血性連鎖球菌咽頭炎/扁桃炎を示していなければならない。全ての患者は、それぞれ30秒で5mLのMicrocyn 60での18回のリンス、又は72時間の間に最大24回のリンスを遵守しなければならない。
【0183】
有効性の第1パラメーターは、Microcyn 60投与後に採取された培養物と比較しての、初期培養物の細菌負荷における3桁の減少である。この細菌学的評価は、Microcyn 60での処置の72時間後に実現される。有効性の第2パラメーターは、咽頭痛及び嚥下障害の減少に特に重きが置かれた、臨床的に報告される改善である。臨床症状は、来診1、2及び3で報告される。
【0184】
耐容性は、有害事象の報告によって評価される。有害事象は、治療の過程で現れる、該消毒剤に関連する又は関連しない、Microcyn 60での治療を受ける患者の任意の症候的な申告として定義される。
【0185】
細菌学的有効性の結果(有効性の主要基準)は、臨床症状とは関係なく細菌学者によって発表される。A群ストレプトコッカス抗原についての試験及び咽頭滲出物の初期培養は、Microcyn 60の投与前に、「評価のスケジュール」に従って、1回目の来診(来診1)において行われる。咽頭滲出物の2回目の採取及び培養は、Microcyn 60の投与から72時間後に行われる(来診2)。アンチバイオグラムが全ての培養物に対してなされ、標準拡散ディスク試験によって、ペニシリン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン及びリンコマイシンに対する細菌耐性を決定する。細菌学的有効性は、初期培養物と、Microcyn 60の投与から72時間後に採取した培養物との間の細菌数の3桁の減少として定義される。
【0186】
細菌学的失敗は、処置後72時間での培養物中の細菌数の3桁未満の減少によって示される。不確かな応答は、サンプルの搬送が48時間を超えて遅延されたケース、スワブが搬送培地中に含浸されなかったケース、又はサンプルが失われたケースで記録される。これらのケースは、本試験の分析外であり、40人の適格患者のケースが完了するまで、新たなケースによって置き換えられる。
【0187】
患者がMicrocyn 60の投与を終了するとき、そして2回目の来診から、追跡及び報告段階が始まる。この評価では、臨床的進展及びあり得る副作用の存在に従って、患者は以下のように分類される:
【0188】
初期兆候及び症状がなくならなかった場合、又は全身症状を伴う全般的な状態の悪化がある場合、治療上の失敗。これらの場合、プロカインペニシリン、クラリスロマイシン又はアジスロマイシンなどの経口抗生物質が、治療する医師が指示する用量及び回数で処方され、1週間のうちに評価される。
【0189】
来診1で存在した症状及び徴候がなくなった場合、臨床上治癒。急性プロセスが解消されるこれらの場合、患者は解放され、臨床的に治癒したと報告される。いずれの場合にも、患者は、3回目の検査来診のために、1週間のうちに戻るように求められる。
【0190】
不確かな進展。何らかのもっともな理由(例えば、重感染)のために臨床的に評価することができなかった任意の患者の進展、又は評価が非常に遅く、72時間よりも後になされた場合。これらの場合、72時間での咽頭滲出物及び培養物の結果を記録することが可能ならば、患者はまだ、本試験の分析に含めることができる。
【0191】
本臨床試験で使用する統計的分析は、72時間の期間中に、それぞれ30秒のMicrocyn 60での少なくとも18回のリンスを受けた全ての患者を考慮に入れる。これと同じ基準が、耐容性の分析において任意の患者を含めるために考慮される。有効性の分析についての主要な基準は、Microcyn 60での治療後72時間で行われる、培養物におけるβ溶血性ストレプトコッカスの細菌数の3桁の減少である。統計的分析は、Wilcoxonペアサンプル試験によって実現される。定量的変数についてのANOVA試験を用いて、臨床的変数の統計的分析は実現される。評価可能な最小の患者数は30人である。
【0192】
有害事象は、医薬製品が投与される臨床研究の患者又は対象における任意の不利な医学的出来事であり、必ずしもその医薬との因果関係を有するわけではない。従って、有害事象は、医薬製品の使用と一時的に関連した、任意の好ましくなく且つ意図しない兆候(異常な検査所見を含む)、症状又は疾患であり得る(それが、この使用に関連していると考えられようが、そうでなかろうが)。試験の間に悪化する、以前から存在している状態は、有害事象として報告される。
【0193】
強度が中程度から重度である有害事象の場合、治療は、72時間の継続期間の任意の時点で中止される。その後の治療は、治療する医師によって決定される。このようにして、本実施例に基づいて、副鼻腔炎の治療に対する本発明のORP水溶液の有効性が示される。
【0194】
実施例14
本実施例は、アデノウイルス血清型5に対する例示的なORP水溶液の殺ウイルス(viricidal)活性を示している。本実施例では、E1a、部分的にE1−b、及び部分的にE3欠損であるヒトアデノウイルス5型に基づいたアデノウイルス(Ad)ベクターを用いた。pCMVの転写調節下の緑色蛍光タンパク質(GFP)レポーター遺伝子を含むシャトルプラスミドを調製した(pAd−Track)。このpShuttleプラスミドとAdEasy1プラスミドとの相同的組み換えをエレクトロコンピテント細菌内で行った。挿入を有するクローンを、制限エンドヌクレアーゼ消化により試験した。確認されたら、大規模な増幅のために、超らせんプラスミドDMAをDH10B細胞に形質転換した。続いて、293細胞(ATCC 1573)を無血清培地(OptiMEM−GIBCO)で培養し、Padで消化した組み換えプラスミドでトランスフェクトした。細胞変性効果について感染細胞をモニターし、それらを収集し、凍結解凍を3サイクルして溶解した。得られたウイルス(AdGFP)を製造者の使用説明書に従ってAdenoPureカラム(BD Clontech)で精製した。ウイルスをOD260/280で定量した。最終収量は1.52X1011pfu/mLであった。
【0195】
緑色蛍光タンパク質遺伝子をコードしているアデノウイルス(AdGFP)の不活性化に対するORP水溶液の効果を、蛍光活性化フローサイトメトリーを用いて、対照AdGFPウイルス又はORP水溶液処理したAdGFPのいずれかを感染させたHeLa細胞由来の蛍光発光の検出に基づく試験を用いて評価した。HeLa細胞の感染は常に7.5X107pfu/mL(即ち150m.o.i.)で行った。全ての試験条件において、細胞は光学顕微鏡下では正常に見えた。対照HeLa細胞において測定されたバックグラウンド蛍光は0.06%であった。対照AdGFPによる感染後、HeLa細胞の88.51%がGFPを発現した。ORP水溶液に対する曝露後、アデノウイルスの感染性は曝露期間に反比例して減少した。従って、1、5及び10分間ORP水溶液処理したウイルスは、HeLa細胞培養物のそれぞれ2.8%、0.13%、及び0.09%においてのみGFPを発現し得た。全ての試験条件についての自己蛍光及び初期ウイルス負荷(即ち7.5X107pfu)を考慮すると、対照AdGFP−HeLa群における感染力価は、6.6X107pfuであった。ウイルスがORP水溶液で処理されていた群において、ORP水溶液に対する1、5及び10分間のウイルス曝露で、感染力価はそれぞれ2.0X106、5.2X104及び2.2X104であった。従って、ORP水溶液に対する1、5及び10分間のウイルス曝露で、ログ10減少係数は、1.5、3.1及び3.5であった。総合すると、これらの結果は、ORP水溶液に対する5分間のウイルス曝露で、ウイルス負荷における>3のログ10減少を達成することを示している。
【0196】
実施例15
本実施例は、無生物の環境表面の殺菌に関する米国環境保護局のプロトコルを用いて、HIVに対する例示的なORP水溶液の殺ウイルスの有効性を示している。
【0197】
HIV−1のSF33株を本試験に用いた。健康なドナー由来の抹消血単核細胞をPHA(3μg/mL、Sigma)及びヒトIL−2(20U/mL、Roche)を用いてHUT培地中で3日間活性化した。細胞を洗浄し、SF33株を感染させた。4日目及び6日目に上清を回収し、ELISA(Beckman Coulter)によってHIV−1 p24抗原に対して試験した。3000RPMで20分間室温にて上清(superantant)を遠心して細胞及びデブリを除去した。上清を除去し、分注し、ウイルスを使用する日まで−80℃で保存した。
【0198】
凍結アリコートを、その使用直前に2分間37℃で解凍した。HUT培地中の段階的な対数希釈物(−1から−5)を用いた。ウイルスのフィルムを、0.2mlのウイルス接取材料を55cm2無菌ポリスチレンペトリ皿の底面に均一に広げることで調製した。ウイルスフィルムを、視覚的に乾燥しているように見えるまで(20分間)、生物学的に安全なキャビネット内において室温(21℃)で風乾した。(ウイルス株(SF33)が複製及び細胞変性効果の惹起をし得ることを確実にするために、乾燥されることなくHUT培地中に残っていたウイルス懸濁液を用いて手順を繰り返した。)
【0199】
対照フィルムを2mlのHUT培地に5分間曝露した。次いで、このウイルスを擦り取り希釈した。別々の乾燥フィルムを各2mlのORP水溶液に5分間室温で曝露した。その曝露時間の後、プレートを擦り取り、これらの中身を再懸濁した。ウイルス−ORP水溶液混合液をすぐにHUT培地で希釈した(10:1)。この得られた懸濁液の段階的な対数希釈物を感染性についてアッセイした。(ORP水溶液のMT−2細胞への起こり得る直接的な細胞毒性効果を制御するために、ORP水溶液の2mlアリコートを培地内で段階的に希釈し(10:1から10:5)、MT−2細胞培養物に接種した。)
【0200】
MT−2細胞株を、感染性アッセイにおける指標の細胞株として用いた。この株はHIV−1に感染した場合に合胞体形成からなる細胞変性効果を示す。4つのマイクロウェルに、試験(ORP水中で再構成)群及び対照(対照培地で再構成)群由来の再構成ウイルス懸濁液の各希釈液を0.2ml接種した。感染していない細胞対照を試験培地のみと接種した。培養物を37℃及び5%CO2でインキュベートした。
【0201】
細胞変性効果の有無について、また、ELISAによってp24−HIV−1抗原の存在について、培養物を2日ごとに定期的に記録した。対照HIV−1による実験的感染は、感染MT−2培養物における細胞変性効果及び上清中へのAg p24タンパク質の放出に作用した。対照的に、ORP水溶液による5分間のHIV−1の処理は、両方のアッセイによってMT−2培養物において測定されたようにウイルス負荷における>3のログ減少係数を実現した。従って、これらの結果は、無生物表面におけるHIV−1の殺ウイルス活性に関するEPAの要件と適合する効果水準を示している。
【0202】
実施例16
本実施例は、過酸化水素(HP)に対する例示的なORP水溶液の、ヒト2倍体線維芽細胞(HDF)の生存能力に対する影響を示している。この潜在的な毒性を試験するために、HDFをインビトロでORP水溶液及び過酸化水素(HP)に曝露した。HPは真核細胞に対して毒性であることが知られており、アポトーシス及びネクローシスを増加させ、細胞の生存能力を減少させる。本実施例において、細胞の生存能力、アポトーシス及びネクローシスを、純粋なORP水溶液及び880mMのHP(HPの消毒用途で採用される濃度)に5分及び30分間曝露したHDFにおいて測定した。
【0203】
HDFの培養物を3つの異なる包皮から得、それらをこの試験の目的でプールし、一緒に凍結保存した。全ての実験について、2倍体細胞のみを用いた。細胞周期の解析において、DNAの2倍性を、少なくとも20000の全事象から集めたCV</=7%の単一G0−G1ピーク及び対応するG2/Mピークの存在として定義した。図4A−4Cは、曝露時間5分及び30分をそれぞれ白棒及び黒棒で表した結果を開示している。これらのパラメーターの同時解析を、同じ細胞集団内で、A)7−アミノアクチノマイシンD(7AAD);B)アネキシンV−FITC;及びC)ヨウ化プロピジウムを用いるフローサイトメトリーによって行った。図4A−4Cは、平均±SD(n=3)として表したパーセント値を開示している。
【0204】
消毒濃度の非希釈ORP水溶液及び880mM HPへの5分間の曝露後、細胞の生存率は、それぞれ75%及び55%であった(図4A)。非希釈ORP水溶液の細胞の生存率に対する効果は、亜致死的であるが殺菌効果はないと考えられている非常に希釈されたHP溶液(即ち、500μM)に匹敵していた。曝露を30分間に延長した場合、細胞の生存率は、それぞれ70%及び5%にまで更に低下した。両時間でのフローサイトメトリー解析において15%の細胞がヨウ化プロピジウムを取り込んだため(図4C)、明らかにORP水溶液はネクローシスによる細胞死を引き起こした。ORP水溶液処理した細胞の3%しかアネキシンV(アポトーシスのマーカー)を細胞表面に顕在化させなかったため(図4B)、アポトーシスはORP水溶液が細胞死を引き起こすメカニズムではなさそうである。このパーセンテージは、対照群において測定されたものと実質的に同様であった。一方、HPは、5分及び30分の曝露後、処理した細胞の20%及び75%でネクローシスを、15%及び20%でアポトーシスをそれぞれ引き起こした。要するにこれらの結果は、(未希釈の)ORP水溶液はHDFに対して、消毒的な濃度のHPよりもはるかに毒性が低いことを示している。
【0205】
実施例17
本実施例は、HDFにおける酸化的DNA損傷及びDNA付加体8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)の形成への、過酸化水素(HP)と比較した例示的なORP水溶液の影響を示している。細胞内での8−OHdG付加体の生成は、DNAの特定の残基における酸化的損傷のマーカーであることが知られている。さらに、この付加体の高い細胞内レベルは、突然変異生成、発癌及び細胞の老化と相関がある。
【0206】
図5は、30分間の対照処理、ORP水溶液処理及びHP処理後の、HDF由来のDNAサンプル中に存在する8−OHdG付加体のレベルを示している。曝露直後(T0、白棒)又はチャレンジ期間から3時間後(T3、黒棒)に、DNAを抽出した。DNAを消化し、8−OHdG付加体を、ELISAキットで製造者の使用説明書の通りに測定した。値は平均±SD(n=3)で示している(ng/mL)。ORP水溶液への30分間の曝露は、30分間のインキュベーション後の対照細胞と比較して、処理した細胞における付加体の形成を増加させなかった。一方、500μMのHPでの30分間の処理は、対照処理又はORP水溶液処理した細胞と比較して8−OHdG付加体の数を約25倍増加させた。
【0207】
ORP水溶液処理した細胞は、ORP水溶液への曝露後3時間の間、添加DMEM中に放置された場合、8−OHdG付加体のレベルを減少することが可能であった。同じ3時間の回復期間を与えたにも関わらず、HP処理した細胞はそれでもまだ、対照処理又はORP水溶液処理した細胞よりも約5倍多い付加体を示した。要するに、これらの結果は、ORP水溶液への急性曝露は有意なDNA酸化的損傷を引き起こさないことを示している。これらの結果はまた、ORP水溶液はインビトロ又はインビボでの突然変異形成又は発癌を引き起こさないらしいことを示している。
【0208】
実施例18
本実施例は、HPと対比した、低濃度の例示的なORP水溶液への慢性曝露の、HDFへの影響を示している。慢性の酸化ストレスは、細胞の早期老化を引き起こすことが知られている。長期の酸化ストレスを模倣するために、20集団の倍増の間、初代HDF培養物を低濃度のORP水溶液(10%)又はHP(5μM)に慢性的に曝露した。SA−β−ガラクトシダーゼ酵素の発現及び活性は、以前からインビボ及びインビトロでの老化プロセスと関連付けられてきた。本実施例においては、SA−β−ガラクトシダーゼ酵素の発現を、ORP水溶液又はHPに対するHDFの1ヵ月の継続的な曝露後に解析した。結果を図6に示す。酵素SA−β−ガラクトシダーゼの発現を、20の顕微鏡視野における青色の細胞の数をカウントすることにより解析した。図6は、SA−β−ガラクトシダーゼを過剰発現している細胞の数により示されるように(n=3)、HP処理のみが細胞の老化を加速させたことを示している。低用量のHPでの慢性的な処理は、86%の細胞においてSA−β−Galの発現を増加させたが、ORP水溶液での処理はこのタンパク質の過剰発現を引き起こさなかった。ORP水溶液は細胞の早期老化を引き起こすものではないということが本実施例より結論付けられ得る。
【0209】
実施例19
本実施例は、腹膜炎患者における、腹膜の細菌負荷の減少及び入院の長さの減少に対する例示的なORP水溶液の効果を示している。2004年6月から2005年1月までにメキシコシティーのRuben Lenero病院に入院し、且つ、急性の汎発性の続発性腹膜炎と診断された全ての患者をORP水溶液治療群に含んだ。続発性腹膜炎は、腹膜腔の汚染に繋がる胃腸又は尿生殖路の完全性の喪失の結果と定義した。同施設において2003年から2004年までの間に同様の腹膜感染症を示した対照症例(paired -case)の遡及的解析を対照群について行った。20人の継続患者を、予めORP水溶液治療群(即ち試験群)に含めた。
【0210】
入院時、全ての患者が、腹部四半部全ての開腹手術及び術中腹腔洗浄(「IOPL」)を受けた。両群で、手術中の腹膜培養サンプルを採取した。10Lの食塩溶液を用いて両群でIOPLを行い、続いて試験群のみ5LのORP水溶液でIOPLを行った。過剰のORP水溶液を除去し、さらなるリンスは行わなかった。両群で、腹腔をプラスチックのメッシュで覆った。しかしながら、試験群では、ORP水溶液に浸した包帯をメッシュの上に置いたままにした。包帯を1日3回取り替えた。全ての患者においてクリンダマイシン及びセフォタキシム又はアミカシンを含む2種の抗生物質を用いた経験的(emperic)抗菌療法を開始した。試験群での術後管理には、さらなるリンス又は洗浄をせずに、100mLのORP水溶液を用いて毎日、1日3回メッシュを洗浄することを含めた。重症の腹膜炎の症例は、72時間ごとの再開腹術及びIOPLを必要とした。好気性細菌及び真菌についての腹水の培養物を両群において最大1週間、72時間ごとに採取した。入院の長さの継続期間を記録した。
【0211】
20の対照(control)症例を当該施設の医療記録から選び、年齢、性別及び腹膜炎の病因により試験群に対してペアにした。対照集団と試験集団とは、年齢、性別及びエントリー時の予後因子について同等であった。解剖学的起源及び腹膜炎の病因もまた、両群について同様であった(表6)。
【0212】
【表6】
【0213】
対照群及び試験群のそれぞれ19及び17人の患者が術後腹膜炎を示した。全ての患者は外科治療、それに引き続いてIOPLを受けた。対照群/試験群で行われた手術のタイプは:虫垂切除(3/6)、胃切除(4/0)、胆嚢摘出(1/2)、膵臓の壊死組織切除(6/3)、吻合を伴う小腸縫合/切除(4/3)、ハートマン手術(1/1)、結腸切除(0/1)及び混合型(1/4)であった。抗生物質の使用は両群で非常に似ていた。対照群及び試験群について、3種の抗生物質を16人及び15人の患者に、並びに3種より多くの抗生物質を4人及び5人の患者にそれぞれ投与した。患者をICUに留め、術後に機械的人工呼吸をした。術中の腹腔内サンプルを40人の患者全てについて採取した(表7)。
【0214】
【表7】
【0215】
周術期並びに食塩溶液のみ(対照群)又は食塩溶液及びORP水溶液(試験群)での手術中の洗浄の翌週にサンプルを採取した。そして、平均的な入院期間を、エントリー時に単離された各微生物について、全ての群に対して分析した。
【0216】
40人の患者全てで、術中サンプルを採取した(表7)。これらのサンプルから増殖した微生物数の平均は、対照群で29、試験群で30であった。単離された微生物を表8に示す。エシェリヒア・コリ、エンテロコッカス、スタフィロコッカス・アウレウス、シュードモナス・エルギノーザ及び真菌が、これらの群よりそれぞれ3/6、4/2、10/8、2/3及び10/7の場合で単離された。A.キシロースオキシダンス(1)、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス(2)及びA.バウマニ(1)について陽性の培養物は、試験群においてのみ見られた。
【0217】
第2の腹腔内培養物を手術後第一週の間に採取した(表7)。この時、対照群における単離された生物数の平均(24)は、術中サンプルにおいて(29)とほぼ同様であった。重要なことに、試験群において陽性のサンプル数の大幅な減少があった。術中サンプルにおける30の陽性の培養物のうち、1つのみがS.アウレウスについて陽性のままであり、また、別の1つがE.コリについて陽性のままであった。入院日数の分析では、対照群(31.9日間)は試験群(22.4日間)と比較してより長い入院であった。従って、ORP水溶液は、腹膜炎患者において腹膜の細菌負荷及び入院の長さを効果的に減少させた。
【0218】
死亡率も分析した。対照群では6人が死亡し、試験群では3人が死亡した。死亡は全て、最初の手術から最初の30日のうちに起こり、算出された相対リスクは対照群でより高かった(即ち、3.3対0)。しかしながら、統計的有意性を達するにはサンプルサイズが小さ過ぎた。IOPLにおけるORP水の使用に伴う局所的な副作用は記録されなかった。試験群における生存患者を6から12ヶ月間追跡した。追跡期間中、ORP水治療群の20人の患者の一人も腸閉塞、又は硬化性腹膜炎を示唆するデータを示さなかった。
【0219】
実施例20
本実施例は、例示的なORP水溶液(Mycrocyn)の、肥満細胞の脱顆粒の阻害における有効性を示している。肥満細胞は、I型過敏性疾患において役割を果たす主要なものとして認識されてきた。アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎及びアトピー性喘息において観察される複数の臨床症状は、異なる罹患組織にある肥満細胞のIgE抗原刺激によって引き起こされる。アトピー性喘息の発症機序について現在認められている見解は、アレルゲンが、IgE産生肺肥満細胞(MC)を誘発することによってプロセスを開始させて、いわゆる即時相反応においてヒスタミン、ロイコトリエン、プロスタグランジン、キニン、血小板活性化因子(PAF)などのメディエーターを放出させるということである。続いて、これらのメディエーターは、気管支収縮を引き起こし、血管透過性及び粘液産生を亢進する。このモデルによれば、肥満細胞活性化に続いて、それらの細胞は腫瘍壊死因子アルファ(TNF−α)、IL−4、IL−5及びIL−6を含む様々な炎症促進性サイトカインを遅延相において分泌し、それらが好酸球、抗塩基球、Tリンパ球、血小板及び単核食細胞などの他の炎症性細胞の局所的動員及び活性化に関与する。次に、これらの動員された細胞が、その後自律性となる可能性があり、また、喘息の症状を悪化させる可能性がある炎症反応の進行に寄与する。この遅延相反応は、周囲組織における可塑的な変化を誘導し得る長期の炎症プロセスを構成する(Kumar et al., pp. 193-268参照)。
【0220】
肥満細胞の抗原刺激は、IgEに対する高親和性の受容体(FcεRI受容体)の活性化を通じて起こり、ここで前記受容体は、IgEに結合し、その後、受容体結合IgEの特異抗原との相互作用によって集合し得る多量体タンパク質である。その構造は4つのポリペプチドを含み、IgE結合α鎖、そのシグナル伝達能力を増幅する役目を果たすβ鎖、及びコードする免疫受容体チロシン(ITAM)活性化モチーフを通じた主要なシグナルトランスデューサーであるジスルフィド結合した2つのγ鎖を含む、この受容体の架橋結合により活性化される。シグナル伝達経路は、骨髄由来肥満細胞(BMMC)、ラット白血病細胞株RBL 2H3、マウス及びラットの腹膜肥満細胞、及びMC−9のようなその他の肥満細胞株を用いて特徴付けられてきた。これら全てにおいて、IgEに結合した抗原の存在が、肥満細胞の脱顆粒、カルシウム動員、細胞骨格再構成及びサイトカイン産生を最終的にもたらすサイトカイン遺伝子の転写を活性化する様々な転写因子(NFAT、NFκB、AP−1、PU.1、SP1、Etsなど)の活性化を引き起こす。
【0221】
成熟したマウスの骨由来(bone-derived)肥満細胞(BMMC)にモノクローナル抗ジニトロフェノールIgE(300ng/100万細胞)を37℃で4時間ロードした。培養培地を除去し、細胞を生理的緩衝液(Tyrode‘s Buffer/BSA)中に再懸濁した。次いで、細胞を異なる濃度の(Microcynでの実施形態における)ORP水溶液で15分間37℃で処理した。緩衝液を除去し、細胞を新たなTyrode’s/BSA中に再懸濁し、37℃で30分間インキュベートする間、様々な濃度の抗原(ジニトロフェノールに結合するヒトアルブミン)で刺激した。脱顆粒を、刺激された細胞の上清及びペレット中でのβ−ヘキソサミニダーゼの活性測定によって測定したが、それにはこの酵素が異なる糖質を加水分解する(hydrolize)能力に基づく比色分析反応を用いた。(β−ヘキソサミニダーゼは、肥満細胞中のヒスタミンを含有するのと同じ顆粒中にあることが示されている。)結果(図7)は、脱顆粒はORP水溶液の濃度が上昇するにつれて有意に減少することを示している。
【0222】
驚くべきことに、肥満細胞の脱顆粒に対するORP水溶液(Microcyn)の阻害効果は、臨床的に有効な「肥満細胞安定剤」であり、確立されている抗アレルギー性化合物であるクロモグリク酸ナトリウム(Intel(商標))で観察されたものと少なくとも類似している。脱顆粒を、刺激された細胞のペレット及び上清におけるβ−ヘキソサミニダーゼの酵素活性によって再度測定したが、それにはこの酵素が異なった糖質を加水分解する(hydrolize)能力に基づく比色分析反応を用いた。抗DNPモノクローナルIgEをロードした細胞を、15分間の前培養有り又は無しで、クロモグリク酸ナトリウム(Intel(商標))を用いて刺激した。クロモグリク酸塩は、脱顆粒の減少においてORP水溶液と同じ程度しか有効でなかった(図7を図8と比較されたい;どちらも少なくとも約50%の脱顆粒の減少を達成している)。
【0223】
実施例21
本実施例は、例示的なORP水溶液の、カルシウムイオノフォアによる肥満細胞の活性化に対する阻害活性を示している。
【0224】
肥満細胞は、カルシウムイオノフォアによって引き起こされるカルシウム流の活性化を通じて刺激され得る。カルシウムイオノフォアによって活性化されるシグナル伝達経路は、骨髄由来肥満細胞(BMMC)、ラット白血病細胞株RBL 2H3、マウス及びラットの腹膜肥満細胞、並びにMC−9のようなその他の肥満細胞株を用いて特徴付けられてきた。これらの系の全てにおいて、カルシウム動員は、肥満細胞の脱顆粒(例、ヒスタミン放出)、細胞骨格再構成、及びサイトカインの産生及び分泌を最終的にもたらすサイトカイン遺伝子の転写を活性化する様々な転写因子(例、NFAT、NFκB、AP−1、PU.1、SP1、Ets.)の活性化を引き起こす。
【0225】
成熟したマウスのBMMCにモノクローナル抗ジニトロフェノールIgE(300ng/100万細胞)を37℃で4時間ロードした。培養培地を除去し、細胞を生理的緩衝液(Tyrode‘s Buffer/BSA)中に再懸濁した。次いで、細胞を異なる濃度のORP水溶液(Microcyn)で15分間37℃で処理した。緩衝液を除去し、細胞を新たなTyrode’s/BSA中に再懸濁し、37℃で30分間インキュベートする間、カルシウムイオノフォア(100mM A23187)で刺激した。脱顆粒を、刺激された細胞の上清及びペレット中でのβ−ヘキソサミニダーゼの活性測定によって測定したが、それにはこの酵素が異なる糖質を加水分解する能力に基づく比色分析反応を用いた。(β−ヘキソサミニダーゼは、肥満細胞中のヒスタミンを含有するのと同じ顆粒中にあることが示されている。)結果(図8)は、脱顆粒はORP水溶液の濃度が上昇するにつれて有意に減少することを示している。
【0226】
これらの結果は、ORP水溶液がヒスタミン放出の非特異的な阻害剤であることを示唆している。従って、ORP水溶液(様々な濃度であっても)は、刺激物(例、抗原又はイオノフォア)に関係なく、肥満細胞の脱顆粒を阻害するであろう。いずれの理論によっても縛られることを望まないが、ORP水溶液は恐らく、原形質膜及び/又は細胞骨格のレベルで分泌経路系を改変する。ORP水溶液の作用機序は非特異的であると考えられているため、ORP水溶液は広範な臨床応用の可能性を有し得ると考えられる。
【0227】
実施例22
本実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のサイトカイン遺伝子の転写の活性化に対する影響を示している。
【0228】
図10A及び10Bは、実施例20に記載したようにして15分間様々な濃度のORP水溶液で処理し、さらに抗原によって刺激した肥満細胞由来のRNAaseプロテクションアッセイである。刺激後、アフィニティークロマトグラフィーカラム(RNAeasy kit,Qiagene)を用いてmRNAを抽出し、標準的なキット条件(Clontech,Becton & Dickinson)を用いてRNAseプロテクションアッセイを行い、抗原チャレンジ後の異なるサイトカインのmRNA産生を検出した。サイトカインとしては、TNF−α、LIF、IL13、M−CSF、IL6、MIF及びL32が含まれていた。
【0229】
図10A及び10Bは、ORP水溶液(Microcyn)は、実験のために用いたORP水溶液又は抗原の濃度に関わりなく、肥満細胞における抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを改変しなかったことを示している。
【0230】
本試験において、炎症促進性遺伝子の転写物のレベル(即ち、刺激された肥満細胞のRNA含有量)は、ORP水溶液処理した肥満細胞において、様々な濃度の抗原での刺激後に変化しなかった。従って、ORP水溶液は、これらのサイトカインの分泌経路を、それらの転写に影響を与えることなく阻害した。
【0231】
実施例23
本実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のTNF−α分泌に対する阻害活性を示している。
【0232】
実施例20に記載したようにして肥満細胞を様々な濃度のORP水溶液で15分間処理し、さらに抗原で刺激した。その後、組織培養培地を交換し、TNF−αのレベルを測定するために新たな培地のサンプルを様々な期間(2−8時間)で採集した。サンプルを凍結し、さらに市販のELISAキット(Biosource)を用いて、製造者の使用説明書に従って解析した。
【0233】
図11は、ORP水溶液で処理した細胞から抗原刺激後に培地に分泌されたTNF−αのレベルが、非処理の細胞と比較して有意に減少したことを示している。
【0234】
TNF−αの放出及び様々な他の炎症促進性分子の放出は、ヒスタミンの分泌経路とは別の分泌経路に依るため、ORP溶液は、炎症遅延相に導くそれら他のサイトカインの分泌を止めることが出来る可能性がある。
【0235】
従って、ORP水溶液は、抗原刺激された肥満細胞のTNF−α分泌を阻害した。これらの結果は、ORP水溶液の使用が外科手術処置後の様々な創傷における炎症反応を減少し得るという臨床上の観察に合致している。
【0236】
実施例24
本実施例は、例示的なORP水溶液の、肥満細胞のMIP 1−α分泌への阻害活性を示している。
【0237】
実施例20に記載したようにして肥満細胞を様々な濃度のORP水溶液(Microcyn)で15分間処理し、さらに抗原で刺激した。その後、組織培養培地を交換し、MIP 1−αのレベルを測定するために新たな培地のサンプルを様々な期間(2−8時間)で採集した。サンプルを凍結し、さらに市販のELISAキット(Biosource)を用いて、製造者の使用説明書に従って解析した。
【0238】
図12は、ORP水溶液で処理した細胞から抗原刺激後に培地に分泌されたMIP 1−αのレベルが、非処理の細胞と比較して有意に減少したことを示している。
【0239】
従って、ORP水溶液は、抗原刺激された肥満細胞のMIP 1−α分泌を阻害した。これらの結果は、ORP水溶液の使用が外科手術処置後の様々な創傷における炎症反応を減少し得るという臨床上の観察に合致している。
【0240】
MIP 1−αの放出及び様々な他の炎症促進性分子の放出は、ヒスタミンの分泌経路とは別の分泌経路に依るため、ORP溶液は、炎症遅延相に導くそれら他のサイトカインの分泌を止めることが出来る可能性がある。
【0241】
IL−6及びIL−13分泌を測定する類似の試験の結果を、図13及び14に示す。
【0242】
実施例20−23及び本実施例は、ORP水溶液がIgE受容体の架橋によって開始される即時相及び遅延相のアレルギー反応を阻害し得ることをさらに示している。
【0243】
実施例25
この実施例は、例示的なORP水溶液を使用した毒性調査の結果を示している。
【0244】
急性の全身毒性調査をマウスで行い、例示的なORP水溶液であるMicrocyn 60の潜在的な全身毒性を決定した。単回用量(50mL/kg)のMicrocyn 60を5匹のマウスに腹腔内注射した。5匹のコントロールのマウスに単回用量(50mL/kg)の食塩水(0.9%塩化ナトリウム)を注射した。全ての動物を、注射後すぐ、注射から4時間後、及び以後7日間毎日1回、死亡及び有害反応について観察した。全ての動物の体重も、注射前及び7日目に再度計量した。調査の間には、死亡はなかった。全ての動物は、調査を通じて臨床的に正常であるように見えた。全ての動物は体重が増加した。この調査から見積もられたMicrocyn 60の急性腹腔内LD50は、50mL/kgより大きい。この実施例は、Microcyn 60は有意な毒性を持たず、本発明に従った治療的な使用について安全であるはずであることを示している。
【0245】
実施例26
この実施例は、例示的なORP水溶液の潜在的な細胞遺伝毒性を決定するために行った調査を表している。
【0246】
例示的なORP水溶液(10% Microcyn(商標))を使用して微小核試験を行い、マウスへのORP水溶液の腹腔内注射の変異誘発の可能性を評価した。哺乳動物でのインビボの微小核試験は、マウスの多染性赤血球の染色体又は分裂装置への損傷を引き起こす物質の同定のために使用されている。この損傷は、ラギング染色体の断片又は分離した染色体全体を含有する細胞内構造である「微小核」の形成をもたらす。ORP水溶液の調査は、各10匹(オス5匹/メス5匹)のマウスの3つの群を含んだ:試験群、ORP水溶液を投与する;ネガティブコントロール群、0.9% NaCl溶液を投与する;及びポジティブコントロール群、変異原性のシクロホスファミド溶液を投与する。試験群及びネガティブコントロール群に、それぞれORP水溶液又は0.9% NaCl溶液の腹腔内注射(12.5ml/kg)を連続2日間(1日目及び2日目)与えた。ポジティブコントロールのマウスに、シクロホスファミド(8mg/mL,12.5ml/kg)の単回の腹腔内注射を2日目に与えた。何らかの有害反応について、全てのマウスを注射後すぐに観察した。全ての動物は、調査を通じて臨床的に正常であるように見え、いずれの群においても毒性の兆候は見られなかった。3日目に全てのマウスの体重を量り殺した。
【0247】
殺したマウスから大腿を摘出し、骨髄を抽出し、各マウスについて二重で塗抹標本を行った。各動物の骨髄のスライドを倍率40倍で読み取った。骨髄毒性の指標である、多染性赤血球(PCE)の正染性赤血球(NCE)に対する割合を、各マウスについて少なくとも合計200の赤血球をカウントすることにより決定した。それから、マウス1匹あたり最低2000の記録可能な(scoreble)PCEを微小核化多染性赤血球の発生について評価した。データの統計解析は、統計ソフトウェアパッケージ(Statview 5.0(登録商標),SAS Institute Inc.,USA)のマン・ホイットニー検定(5%のリスク閾値)を使用して行った。
【0248】
ポジティブコントロールのマウスは、それらの各ネガティブコントロールと比較して、統計的に有意に低いPCE/NCE比を有したが(雄:0.77対0.90、及び雌:0.73対1.02)、これは処理した骨髄へのシクロホスファミドの毒性を示している。しかしながら、ORP水溶液で処理したマウスとネガティブコントロールとの間には、PCE/NCE比に統計的に有意な差異は無かった。同様に、ポジティブコントロールのマウスは、ORP水溶液で処理したマウス(雄:11.0対1.4/雌:12.6対0.8)及びネガティブコントロール(雄:11.0対0.6/雌:12.6対1.0)の両方と比較して、微小核を有する多染性赤血球を統計的に有意に多く持っていた。ORP水溶液で処理したマウスとネガティブコントロールのマウスとの間には、微小核を有する多染性赤血球の数に統計的に有意な差異は無かった。
【0249】
この実施例は、10%のMicrocyn(商標)は、マウスへの腹腔内注射後に毒性効果も変異原性効果も引き起こさなかったことを示している。
【0250】
実施例27
この調査は、例示的なORP水溶液Dermacynには毒性がないことを示している。
【0251】
この調査は、ISO 10993−5:1999の基準に従って行い、例示的なORP水溶液Dermacynが細胞毒性を引き起こす可能性を決定した。0.1mLのDermacynを含むフィルターディスクをアガロース表面に置き、マウス繊維芽細胞(L−929)の単層に直接重層した。調製したサンプルを、5% CO2の存在下、37℃での24時間のインキュベーション後、細胞毒性の損傷について観察した。観察結果を陽性及び陰性対照のサンプルと比較した。Dermacynを含有するサンプルは、細胞溶解又は毒性のいかなる証拠も示さず、一方陽性及び陰性対照は予想された通りであった。
【0252】
この調査に基づいて、Dermacynはマウス繊維芽細胞に対して細胞毒性効果を生じないと結論付けた。
【0253】
実施例28
この調査は16匹のラットで行い、例示的なORP水溶液Dermacynの局所耐容性、及び全層皮膚創傷治癒のモデルにおける創傷床の組織病理への影響を評価した。創傷を対象ラットの両側に作った。治癒過程の間、皮膚切片を左側又は右側のいずれかに置いた(例えば、それぞれDermacyn処理及び食塩水処理)。
【0254】
Dermacyn及び食塩水処理した外科創傷部位のマッソントリクローム染色切片及びII型コラーゲン染色切片を有資格の獣医病理学者によって評価した。結合組織の増殖の現われとしての2型コラーゲンの発現量、繊維芽細胞の形態及びコラーゲンの形成、横断面における新表皮の存在、炎症及び皮膚潰瘍化の程度について、切片を評価した。
【0255】
結果は、Dermacynはラットにおいて十分に耐容されたことを示している。いずれかの側の創傷(それぞれDermacyn処理及び食塩水処理)からの皮膚切片において、処理に関連した組織病理学的な損傷はなかった。食塩水処理及びDermacyn処理した創傷部位の間に、関連性のある組織病理学的な差異は無く、これはDermacyn処理は十分に耐容されたことを示している。食塩水処理及びDermacyn(商標)処理した創傷部位の間に2型コラーゲン発現の有意な差異は無く、これはDermacynは創傷治癒の間、繊維芽細胞又はコラーゲンの同化に副作用を及ぼさないことを示している。
【0256】
実施例29
本実施例は、例示的な酸化還元電位水Microcynの有効な抗菌性溶液としての本発明に従った使用を示している。
【0257】
Microcyn酸化還元電位水を用いて、インビトロでの時間−殺菌評価を行った。Microcynを、Tentative Final Monograph, Federal Register, 17 June 1994, vol. 59: 116, pg. 31444に記載されているようにして、50の異なる微生物株(25のAmerican Type Culture Collection (ATCC)の株及び25のそれらと同種の臨床分離株)のチャレンジ懸濁液に対して評価した。各チャレンジ株の初期集団からのパーセント減少率及びLog10減少率を、30秒間、1分間、3分間、5分間、7分間、9分間、11分間、13分間、15分間及び20分間のMicrocynへの曝露後に決定した。全ての寒天プレーティングは重複して行い、Microcynを99%(v/v)濃度で評価した。全ての試験は、米国連邦規則第21条第58章に定められた通り、優良試験所基準(Good Laboratory Practices)に従って行った。
【0258】
以下の表は、5.0Log10を上回って減少した、試験した全ての集団についての30秒の曝露指標での上述したインビトロでの時間−殺菌評価の結果をまとめている。
【0259】
【表8−1】
【0260】
【表8−2】
【0261】
【表8−3】
【0262】
【表8−4】
【0263】
これらの微生物の減少を5.0log10未満で測定したが、Microcynはまた、表8に含まれない残りの3種に対する抗菌活性も示した。より具体的には、Microcynへの30秒の曝露により、ストレプトコッカス・ニューモニエ(臨床分離株; BSLI #072605Spn1)の集団は、この種の検出限界である4.5Log10を超えて減少した。さらに、カンジダ・トロピカリス(ATCC #750)でのチャレンジにおいて、Microcynは、30秒の曝露後、3.0Log10を超える微生物の減少を示した。それに加えて、カンジダ・トロピカリス(BSLI #042905Ct)でのチャレンジにおいて、Microcynは、20分の曝露後、3.0Log10を超える微生物の減少を示した。
【0264】
このインビトロの時間−殺菌評価の例示的な結果は、Microcyn酸化還元電位水が、広い範囲のチャレンジ微生物に対して急速な(即ち、ほとんどの場合30秒未満)抗菌活性を示すことを示している。評価した50のグラム陽性、グラム陰性及び酵母種のうちの47の微生物集団は、製品への30秒以内の曝露で、5.0Log10を超えて減少した。
【0265】
実施例30
本実施例は、HIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液4.0%(w/v)及び0.9%塩化ナトリウム洗浄液(USP)と対比した、本発明に従って用いた例示的な酸化還元電位水Microcynの抗菌活性の比較を示している。
【0266】
インビトロの時間−殺菌評価を、参考製品としてHIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液4.0%(w/v)及び無菌性0.9%塩化ナトリウム洗浄溶液(USP)を用いて実施例29に記載したようにして行った。各参考製品を、Tentative Final Monographにおいて具体的に表示された、10のAmerican Type Culture Collection (ATCC)株の懸濁液に対して評価した。集めたデータを次に、実施例29において記録されたMicrocynの微生物減少活性に対して解析した。
【0267】
Microcyn酸化還元電位水は、チャレンジ株のうち5つの微生物集団を、HIBICLENS(登録商標)グルコン酸クロルヘキシジン溶液で観察されるのと遜色無い水準まで減少させた。MicrocynとHIBICLENS(登録商標)との両方とも、以下の種:エシェリヒア・コリ(ATCC #11229及びATCC #25922)、シュードモナス・エルギノーザ(ATCC #15442及びATCC #27853)及びセラチア・マルセッセンス(ATCC #14756)への30秒の曝露後、5.0Log10を超える微生物の減少を与えた。更に、上記表9に示したように、Microcynは、ミクロコッカス・ルテウス(ATCC #7468)に対して、30秒の曝露後に5.8420Log10の減少を与えることによる優れた抗菌活性を示した。しかしながら、30秒の曝露後、HIBICLENS(登録商標)は試験の検出限度(この具体的ケースにおいては、4.8Log10を上回る)まで集団を減少させたため、ミクロコッカス・ルテウス(ATCC #7468)の活性のHIBICLENS(登録商標)との直接的な比較は不可能であった。なお、無菌性0.9%塩化ナトリウム洗浄溶液は、上述した6つのチャレンジ株のそれぞれの微生物集団を、全20分の曝露後に0.3Log10未満減少させた。
【0268】
Microcyn酸化還元電位水は、試験した4つのチャレンジ株:エンテロコッカス・フェカリス(ATCC #29212)、スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC #6538及びATCC #29213)及びスタフィロコッカス・エピデルミディス(ATCC #12228)について、HIBICLENS(登録商標)と塩化ナトリウム洗浄液の両方よりも強い抗菌活性を与えた。以下の表にこれら4種についてのインビトロの時間−殺菌評価の微生物減少結果をまとめた。
【0269】
【表9−1】
【0270】
【表9−2】
【0271】
この比較のインビトロの時間−殺菌評価の結果は、Microcyn酸化還元電位水が、エシェリヒア・コリ(ATCC #11229及びATCC #25922)、シュードモナス・エルギノーザ(ATCC #15442及びATCC #27853)、セラチア・マルセッセンス(ATCC #14756)及びミクロコッカス・ルテウス(ATCC #7468)に対してHIBICLENS(登録商標)と遜色ない抗菌活性を示すだけでなく、エンテロコッカス・フェカリス(ATCC #29212)、スタフィロコッカス・アウレウス(ATCC #6538及びATCC #29213)及びスタフィロコッカス・エピデルミディス(ATCC #12228)に対してより効果的な治療を与えることを示している。表9に示すように、Microcynは、一部の種において、より急速な抗菌反応(即ち、30秒未満)を実証している。さらに、Microcynへの曝露は、表9に記載した全ての種において、全微生物のより大きな減少をもたらす。
【0272】
実施例31
本実施例は、ペニシリン耐性ストレプトコッカス・ニューモニエ(ATCC 51915)に対するORP水溶液の有効性を示している。
【0273】
凍結培養物を用いて、複数のBAPのプレートに接種し、2−3日間35−37℃でCO2と共にインキュベートすることによって、ストレプトコッカス・ニューモニエの培養物を調製した。インキュベーション後、3−7mLの無菌希釈液/培地を各寒天プレートに移し、綿棒で採取して微生物を懸濁した。全てのプレートの懸濁液を集め、滅菌チューブに移し、4.0McFarland標準液と比較した。懸濁液を滅菌ガーゼに通して濾過し、試験手順に使用する前にボルテックス混合した。
【0274】
微生物懸濁液0.1mlの接種材料を49.9mlのMicrocyn又は対照物質に添加した。各曝露期間において、試験混合物をスワーリングして混合した。試験混合物を15秒、30秒、60秒、120秒、5分及び15分間25.0℃で曝露した。
【0275】
1.0mlのサンプルを試験混合物から取り出し、中和される接種試験混合物の100倍希釈に相当する9.0mlの中和剤に添加した。100倍中和した接種試験混合物の5mlアリコートを、10mlのButterfield’s Bufferで予め湿らせた0.45マイクロリットルのフィルター装置に移した。フィルターを約50mlのButterfield’s Bufferでリンスし、無菌的に装置から取り出し、BAPのプレートに移した。さらに1:10の段階希釈液を調製し、中和した接種試験混合物の10−3−10−4希釈液の1.0mlアリコートをBAPにデュプリケートでプレートした。
【0276】
細菌の継代培養のプレートを48±4時間35−37℃、C02下でインキュベートした。継代培養のプレートを検査前に2日間2−8℃で冷蔵した。インキュベーション及び保存の後、寒天プレートを増殖の存在について視覚的に観察した。コロニー形成単位を数え、各曝露時間における生存数を決定した。増殖を示している代表的な継代培養物を、試験微生物の確認のために適切に検査した。
【0277】
例示的なORP水溶液Microcynは、25.0℃での15秒、30秒、60秒、120秒、5分及び15分の接触時間後、ペニシリン耐性ストレプトコッカス・ニューモニエ(ATCC 51915)の>99.93197279%の減少を示した。
【0278】
実施例32
本実施例の目的は、細菌懸濁液アッセイを使用して、バシトラシンと対比した、例示的なORP水溶液(Dermacyn)の微生物活性を決定することである。
【0279】
Dermacynは使用準備済みの製品であり、従って試験の間の希釈の実行は必要とされなかった。バシトラシンは高濃度の補水液(re-hydrated solution)であり、33ユニット/mlに希釈する必要がある。
【0280】
購入した2.5x107/mlのB.アトロフェーアス(B. atropheus)胞子懸濁液を試験に用いた。さらにシュードモナス・エルギノーザ及びスタフィロコッカス・アウレウスの新たな懸濁液を調製し、分光光度計を用いて測定し、力価が許容範囲にあることを確実にした。
【0281】
9マイクロリットルの試験物質を100ulの微生物懸濁液に添加した。試験混合液を、20秒、5分及び20分の接触時間の間20℃に維持した。1.0mlの試験混合液(混合液全体)を9,0mlの中和剤に20分間添加し(これが最初の中和チューブ(original neutralization tube)即ちONTである)1.0mlの中和された試験混合物を、5分及び20分の接触時間の間、トリプトソイ寒天上にデュプリケートでプレートした。さらなる希釈液及びスプレッドプレートを20秒の時点に関して用い、カウント可能なプレートを得た。
【0282】
全てのプレートを30℃−35℃で合計3日間インキュベートし、インキュベーションの各日後に評価した。懸濁液を試験している間にDermacyn及びバシトラシンに曝露された微生物数を決定するために4回の10倍希釈を行い、最後の2回の希釈液1.0mlを、適用可能な場合に、デュプリケートでプレートした。
【0283】
試験微生物にチャレンジされた場合、Dermacynは、全ての時点の増殖性細菌(vegetative bacteria)並びに5分及び20分時点の胞子の完全な根絶(>4logの減少)を示した。バシトラシンは約1logの減少を引き起こすのみであった。20秒時点のMicrocynは、胞子における多少の減少を示した。バシトラシンは、試験期間中に細菌又は胞子集団を低下させた証拠を示さなかった。
【0284】
実施例33
本実施例は、バイオフィルム中の細菌に対する2つの例示的なORP水溶液(M1及びM2)の有効性を示している。
【0285】
全ての試験に関する親株は、P.エルギノーザPAO1である。全てのプランクトン株は、220rpmの振盪フラスコ内の最少培地(1リットルあたり2.56gのNa2HPO4、2.08gのKH2PO4、1.0gのNH4Cl、0.04gのCaCl2・2H2O、0.5gのMgSO4・7H2O、0.1mgのCuSO4・5H2O、0.1mgのZnSO4・H2O、0.1mgのFeSO4・7H2O、及び0.004mgのMnCl2・4H2O、pH 7.2)中22℃で好気的に成育させた。バイオフィルムを下記のとおり、最少培地中22℃で成育させた。グルタミン酸塩(130mg/リットル)を単一炭素源として用いた。
【0286】
バイオフィルムを、以前に記載されているようにして(参照により本明細書に組み込まれる、Sauer et.al., J. Bacteriol. 184:1140-1154 (2002))成育させた。簡潔に述べれば、貫流型連続流動チューブリアクターシステム(once-through continuous flow tube reactor system)のシリコンチューブの内表面を用いて22℃でバイオフィルムを育てた。バイオフィルムを流動条件下での成育3日後(成熟段階1)、6日後(成熟段階2)及び9日後(分散段階)に採取した。バイオフィルムの細胞を、チューブをその全長に沿ってつねることで管腔から細胞材料を押し出すことにより、内表面から採取した。得られた細胞ペーストを、氷上で回収した。サンプリング前に、大半の液体をチューブからパージして、分離した浮遊細胞からの干渉を防止した。
【0287】
浮遊及びバイオフィルム細胞の集団の大きさを、段階希釈のプレートカウントを用いることによりCFU数で決定した。そうするために、バイオフィルムを様々な時間でのSOSへの曝露後に内表面から採取した。貫流型流動セル中で成育したバイオフィルムの画像を、オリンパスBX60顕微鏡(Olympus,Melville,NY)及び100倍の倍率のA100PL対物レンズを用いて透過光により観た。画像を、Magnafire冷却式3チップ電荷結合素子カメラ(Optronics Inc.,Galena,CA)及び30分間の露光を用いて記録した。さらに、LSM 510 Meta倒立顕微鏡(Zeiss,Heidelberg,Germany)を用いて共焦点レーザー走査顕微鏡観察を行った。画像をLD−Apochrome 40_/0.6レンズ及びLSM 510 Metaソフトウェア(Zeiss)を用いて得た。
【0288】
60分以内の処理でM1処理したバイオフィルムについて、2logの減少が観察され。この結果は、M1での処理は、10.8分(+/−2.8分)ごとに、バイオフィルムの生存率において50%の減少をもたらすことを示している。
【0289】
【表10】
【0290】
しかしながら、M2での処理は、4.0分(+/−1.2分)ごとに、バイオフィルムの生存率において50%の減少をもたらすことを結果は示していたため、全体的には、M2は、バイオフィルムの殺菌においてM1よりも若干効果的であった。
【0291】
【表11】
【0292】
従って、ORP水はバイオフィルム中の細菌に対して効果的である。
【0293】
出版物、特許出願及び特許を含む本明細書で挙げた全ての文献は、各文献が個別且つ具体的に参照によって組み込まれると表示され、その全体が本明細書に示されたのと同程度に、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0294】
本発明を説明する文脈(特に添付の特許請求の範囲の文脈)における用語「a」及び「an」及び「the」並びに同様の指示対象の使用は、本明細書に別段の指示がないか又は明らかに文脈に矛盾しない限り、単数及び複数の両方を含むと解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」及び「含有する(containing)」は、別段の記載が無ければ、オープンエンドの用語(即ち、「含むが、それに限定されない」ということを意味する)として解釈されるべきである。本明細書における値の範囲の列挙は、本明細書に別段の指示がない限り、その範囲内に入る各個別の値を個別に言及する簡易な方法としての役目を持つことを単に意図しており、各個別の値は、それが個別に本明細書に列挙されたかのように本明細書に組み込まれる。本明細書に記載した全ての方法は、本明細書に別段の指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、任意の好適な順序で実行され得る。本明細書で与えた、任意及び全ての例、又は例示的な言葉使い(例、「のような(such as)」の使用は、本発明をより良く明らかにすることを単に意図しており、別段の請求が無ければ、本発明の範囲を制限しない。本明細書中の言葉使いは、あらゆる非請求の要素が本発明の実施に不可欠であることを指示していると解釈されてはならない。
【0295】
本発明の好ましい実施形態を、発明者らが知っている本発明を実施するための最良の形態を含めて本明細書に記載している。これらの好ましい実施形態の変形は、上述の記載を読めば当業者には明らかとなり得る。発明者らは、当業者がそのような変形を適宜採用することを予期しており、また、発明者らは、本発明が本明細書に具体的に記載したのとは別の方法で実施されることを意図している。従って、本発明は、本明細書に添付の特許請求の範囲に列挙した対象の、適用法によって認められるあらゆる修正及び同等物を含む。更に、上述の要素のあらゆる可能な変形でのあらゆる組み合わせが、本明細書に別段の指示がない限り、又は明らかに文脈に矛盾しない限り、本発明に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0296】
【図1】図1は、例示的なORP水溶液を製造するための、チャンバーが3つの電解セルを示している。
【図2】図2は、チャンバーが3つの電解セルを示しており、製造プロセス中に生成されると思われるイオン種を示している。
【図3】図3は、例示的なORP水溶液を製造するプロセスの模式的フローダイアグラムである。
【図4A】図4Aは、過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス及びネクローシスの図式的な比較を示している。
【図4B】図4Bは、過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス及びネクローシスの図式的な比較を示している。
【図4C】図4Cは、過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したヒト2倍体繊維芽細胞(HDF)における細胞の生存率、アポトーシス及びネクローシスの図式的な比較を示している。
【図5】図5は、500μM過酸化水素(HP)と対比した、例示的なORP水溶液(MCN)で処理したHDFにおける8−ヒドロキシ−2’−デオキシグアノシン(8−OHdG)付加物量の図式的な比較である。
【図6】図6は、過酸化水素(HP)と対比した、低濃度の例示的なORP水溶液(MCN)への慢性曝露後のHDFにおけるβ−ガラクトシダーゼの発現によって明らかにされる細胞老化を示している。
【図7】図7は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を示している。
【図8】図8は、クロモグリク酸塩で処理した抗原活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を比較して示している。
【図9】図9は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化及びカルシウムイオノフォア(A23187)活性化肥満細胞の脱顆粒への影響を示している。
【図10A】図10Aは、ORP水溶液処理肥満細胞に対する、コントロールにおける抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを示すRNAseプロテクションアッセイである。
【図10B】図10Bは、ORP水溶液処理肥満細胞に対する、コントロールにおける抗原チャレンジ後のサイトカインmRNAレベルを示すRNAseプロテクションアッセイである。
【図11】図11は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるTNF−α分泌の図式的な比較である。
【図12】図12は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるMIP1−α分泌の図式的な比較である。
【図13】図13は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるIL−6分泌の図式的な比較である。
【図14】図14は、様々な濃度の例示的なORP水溶液(MCN)で処理した抗原活性化肥満細胞によるIL−13分泌の図式的な比較である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における炎症の予防又は治療方法であって、当該方法は治療有効量の酸化還元電位水溶液を該患者に投与することを含み、該水溶液は少なくとも約24時間安定であり、且つ該水溶液は約6.4から約7.8のpHを有する、方法。
【請求項2】
酸化還元電位水溶液が局所的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酸化還元電位水溶液が非経口的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
酸化還元電位水溶液が内視鏡的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
酸化還元電位水溶液が粘膜表面に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
酸化還元電位水溶液が、鼻、洞、咽頭、気管、肺、食道、胃、腸、中皮、腹膜、滑膜、膀胱、尿道、膣、子宮、卵管、膵臓、神経、口腔、皮膚及び皮下からなる群から選択される1つ以上の組織に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
酸化還元電位水溶液が、液体、スチーム、エアロゾル、ミスト又はスプレーとして投与される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
酸化還元電位水溶液が、エアロゾル化、ネブライゼーション又はアトマイゼーションによって投与される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
酸化還元電位水溶液が、約0.1ミクロンから約100ミクロンの範囲内の直径を有する液滴の形態で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
炎症が急性炎症である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
炎症が慢性炎症である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
炎症が過敏性反応に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
炎症が細胞性ヒスタミン及び炎症促進性サイトカインの放出に関連する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
炎症が細胞介在性である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
酸化還元電位水溶液が肥満細胞の脱顆粒を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
酸化還元電位水溶液が肥満細胞のサイトカイン分泌を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
アレルギー性鼻副鼻腔炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、喘息、SLE、自己免疫性甲状腺炎、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、関節リウマチ、多発性硬化症及びリウマチ熱からなる群から選択される1つ以上の疾患又は状態を治療することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
炎症が自己免疫反応に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
炎症が感染に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
感染が、ウイルス、細菌及び真菌からなる群から選択される1つ以上の微生物による、請求項19記載の方法。
【請求項21】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約1週間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約2ヶ月間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約6ヶ月間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項24】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約1年間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
酸化還元電位水溶液のpHが約7.4から約7.6である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
酸化還元電位水溶液がカソード水とアノード水との混合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
酸化還元電位水溶液が、該溶液の約10体積%から約50体積%の量でカソード水を含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
酸化還元電位水溶液が、該溶液の約20体積%から約40体積%の量でカソード水を含む、請求項1記載の方法。
【請求項29】
酸化還元電位水溶液が、該溶液の約50体積%から約90体積%の量でアノード水を含む、請求項1記載の方法。
【請求項30】
酸化還元電位水溶液が、約10体積%から約50体積%のカソード水及び約50体積%から約90体積%のアノード水を含む、請求項1記載の方法。
【請求項31】
酸化還元電位水溶液が、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸イオン、塩化物イオン、溶解塩素ガス及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の遊離塩素種並びに任意で過酸化水素及び/又は二酸化塩素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
酸化還元電位水溶液が、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項33】
酸化還元電位水溶液が、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む、請求項1記載の方法。
【請求項34】
酸化還元電位水溶液が、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含み、約6.2から約7.8のpHであり、且つ該溶液が少なくとも1週間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項35】
酸化還元電位水溶液が、約−400mVと約+1300mVとの間の電位を有する、請求項1記載の方法。
【請求項36】
抗体、抗ウイルス剤及び抗炎症剤、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの治療剤を投与することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項1】
患者における炎症の予防又は治療方法であって、当該方法は治療有効量の酸化還元電位水溶液を該患者に投与することを含み、該水溶液は少なくとも約24時間安定であり、且つ該水溶液は約6.4から約7.8のpHを有する、方法。
【請求項2】
酸化還元電位水溶液が局所的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
酸化還元電位水溶液が非経口的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
酸化還元電位水溶液が内視鏡的に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
酸化還元電位水溶液が粘膜表面に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
酸化還元電位水溶液が、鼻、洞、咽頭、気管、肺、食道、胃、腸、中皮、腹膜、滑膜、膀胱、尿道、膣、子宮、卵管、膵臓、神経、口腔、皮膚及び皮下からなる群から選択される1つ以上の組織に投与される、請求項1記載の方法。
【請求項7】
酸化還元電位水溶液が、液体、スチーム、エアロゾル、ミスト又はスプレーとして投与される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
酸化還元電位水溶液が、エアロゾル化、ネブライゼーション又はアトマイゼーションによって投与される、請求項1記載の方法。
【請求項9】
酸化還元電位水溶液が、約0.1ミクロンから約100ミクロンの範囲内の直径を有する液滴の形態で投与される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
炎症が急性炎症である、請求項1記載の方法。
【請求項11】
炎症が慢性炎症である、請求項1記載の方法。
【請求項12】
炎症が過敏性反応に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項13】
炎症が細胞性ヒスタミン及び炎症促進性サイトカインの放出に関連する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
炎症が細胞介在性である、請求項1記載の方法。
【請求項15】
酸化還元電位水溶液が肥満細胞の脱顆粒を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項16】
酸化還元電位水溶液が肥満細胞のサイトカイン分泌を阻害する、請求項1記載の方法。
【請求項17】
アレルギー性鼻副鼻腔炎、アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、喘息、SLE、自己免疫性甲状腺炎、サルコイドーシス、炎症性腸疾患、関節リウマチ、多発性硬化症及びリウマチ熱からなる群から選択される1つ以上の疾患又は状態を治療することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
炎症が自己免疫反応に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項19】
炎症が感染に起因する、請求項1記載の方法。
【請求項20】
感染が、ウイルス、細菌及び真菌からなる群から選択される1つ以上の微生物による、請求項19記載の方法。
【請求項21】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約1週間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項22】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約2ヶ月間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項23】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約6ヶ月間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項24】
酸化還元電位水溶液が少なくとも約1年間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項25】
酸化還元電位水溶液のpHが約7.4から約7.6である、請求項1記載の方法。
【請求項26】
酸化還元電位水溶液がカソード水とアノード水との混合物を含む、請求項1記載の方法。
【請求項27】
酸化還元電位水溶液が、該溶液の約10体積%から約50体積%の量でカソード水を含む、請求項1記載の方法。
【請求項28】
酸化還元電位水溶液が、該溶液の約20体積%から約40体積%の量でカソード水を含む、請求項1記載の方法。
【請求項29】
酸化還元電位水溶液が、該溶液の約50体積%から約90体積%の量でアノード水を含む、請求項1記載の方法。
【請求項30】
酸化還元電位水溶液が、約10体積%から約50体積%のカソード水及び約50体積%から約90体積%のアノード水を含む、請求項1記載の方法。
【請求項31】
酸化還元電位水溶液が、次亜塩素酸、次亜塩素酸イオン、次亜塩素酸ナトリウム、亜塩素酸イオン、塩化物イオン、溶解塩素ガス及びこれらの混合物からなる群から選択される少なくとも1種の遊離塩素種並びに任意で過酸化水素及び/又は二酸化塩素を含む、請求項1記載の方法。
【請求項32】
酸化還元電位水溶液が、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸を含む、請求項1記載の方法。
【請求項33】
酸化還元電位水溶液が、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む、請求項1記載の方法。
【請求項34】
酸化還元電位水溶液が、約15ppmから約35ppmの次亜塩素酸、約25ppmから約50ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含み、約6.2から約7.8のpHであり、且つ該溶液が少なくとも1週間安定である、請求項1記載の方法。
【請求項35】
酸化還元電位水溶液が、約−400mVと約+1300mVとの間の電位を有する、請求項1記載の方法。
【請求項36】
抗体、抗ウイルス剤及び抗炎症剤、並びにそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの治療剤を投与することをさらに含む、請求項1記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2009−523829(P2009−523829A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551570(P2008−551570)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/060854
【国際公開番号】WO2007/085018
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(505234465)オキュラス イノヴェイティヴ サイエンシズ、インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【国際出願番号】PCT/US2007/060854
【国際公開番号】WO2007/085018
【国際公開日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(505234465)オキュラス イノヴェイティヴ サイエンシズ、インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]