説明

酸性ガス除去用処理剤及び酸性ガス除去用フィルタ

【課題】 酸性ガス、特に一酸化窒素などの窒素酸化物を含有する酸性ガスを効率よく除去する。
【解決手段】 活性炭と、この活性炭に担持されたアルカリ成分(カリウムなどのアルカリ金属の炭酸塩又は水酸化物など)及びアルミン酸金属塩(ナトリウムなどのアルカリ金属塩など)とで酸性ガス除去用の処理剤を構成する。このような処理剤は、酸性ガスを含む被処理ガスと接触させて、前記酸性ガス(一酸化窒素などの窒素酸化物)を除去するために有用である。アルカリ成分と、アルミン酸金属塩との割合(重量比)は、前者/後者=50/50〜90/10程度であってもよく、アルカリ成分及びアルミン酸金属塩の総量は、活性炭100重量部に対して、0.01〜25重量部程度であってもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸性ガス、特に、一酸化窒素などの窒素酸化物を含有する酸性ガスを除去するのに有用な処理剤、フィルタ、及び酸性ガスの除去方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空気中の酸性ガスなどの有害ガスを除去するための種々の方法が検討されており、これらの方法の1つとして、活性炭(ACF)による吸着作用を利用した吸着方法が利用されている。活性炭を用いる方法には、活性炭に薬品を添着し、活性炭の吸着作用に加えて、薬品の化学的な作用を利用する方法も知られている。また、活性炭を繊維と組み合わせてフィルタ濾材として用いたフィルタも知られている。
【0003】
しかし、活性炭(ACF)は、窒素酸化物、特に一酸化窒素に対する吸着能が低いため、窒素酸化物を効率よく除去できない。そのため、窒素酸化物の腐食性により、装置などの構成部品が早期に損傷し、結果として装置自体が故障する。例えば、低濃度の一酸化窒素の雰囲気中に設置されるガスセンサなどのフィルタとして活性炭を使用した場合、一酸化窒素がフィルタで除去されずにセンサ部分に到達し、この到達した一酸化窒素に起因する濃度変化によって誤作動が生じる。
【0004】
そこで、一酸化窒素、二酸化窒素などの窒素酸化物の除去能を高めるため、種々の薬剤を添着した活性炭が検討されている。例えば、「空気清浄」第31巻3号(平成5年9月)の第19〜21頁(非特許文献1)には、アルカリ添着炭、特に水酸化カリウム添着炭が、二酸化窒素吸着後の一酸化窒素発生を防止する効果が高いことが記載されている。また、特開昭64−85137号公報(特許文献1)には、活性炭素繊維の表面に、銅の水酸化物、銅の酸化物、ニッケルの水酸化物、ニッケルの酸化物、コバルトの水酸化物などを分散処理した一酸化窒素吸着能を有する活性炭素繊維が開示されている。特開平2−69311号公報(特許文献2)には、活性炭素繊維の表面に、マンガンの含水酸化物、チタンの含水酸化物、クロムの水酸化物、バナジウムの水酸化物などを分散処理した一酸化窒素吸着能を有する活性炭素繊維が開示されている。「現代化学」、1987年12月号、第18〜22頁(非特許文献2)には、活性炭素繊維の表面に、酸化鉄又は水酸化鉄を担持させることにより、一酸化窒素に対する吸着性能が向上することが報告されている。特開平4−150940号公報(特許文献3)には、吸着能を有する炭素材に、水酸化鉄と、水酸化銅とが担持されている吸着剤が、一酸化窒素に対する吸着能が高いことが記載されている。しかし、これらの薬剤添着活性炭では、一酸化窒素の除去性能が不十分である。また、窒素酸化物に対する吸着材の吸着能に限界があるため、窒素酸化物を長期に亘って吸着除去するのは困難であり、飽和吸着量に達する毎に、吸着材を交換する必要が生じる。さらに、一酸化窒素吸着用に処理された活性炭は、高価であるため、交換に際して、多大の費用を要し、コスト的に不利である。また、上記の方法は、有害物質である窒素酸化物を無害物質に変換するのではなく、単に吸着処理するに過ぎないため、根本的な解決法とはいえない。
【0005】
そこで、吸着した窒素酸化物を、触媒を用いて分解又は反応させて除去する方法が検討されている。例えば、特開平6−79176号公報(特許文献4)には、活性炭素繊維を非酸化性雰囲気中600〜1200℃で焼成し、次いで硫酸不活処理して得られた活性炭素繊維触媒に、アンモニアと一酸化窒素含有ガスとを接触させることによって一酸化窒素の除去を行うことが開示されている。しかし、このような触媒では、被処理ガスが一酸化窒素と共にアンモニアを含有する必要があり、適用できる被処理ガスの種類が限定され、一酸化窒素を効率よく除去するのは困難である。また、特開平10−118493号公報(特許文献5)には、活性炭素繊維中にRu又はPtを分散させ、前記繊維中にRu又はPtを担持させたNOの還元触媒を用いて、常温でNOを還元し窒素ガスとすることが開示されている。しかし、このような触媒は高価であり、コスト的に不利である。
【特許文献1】特開昭64−85137号公報(請求項1)
【特許文献2】特開平2−69311号公報(請求項1)
【特許文献3】特開平4−150940号公報(請求項1、第1頁左欄第16〜18行)
【特許文献4】特開平6−79176号公報(請求項1及び2)
【特許文献5】特開平10−118493号公報(請求項1及び2、段落番号[0001])
【非特許文献1】「空気清浄」第31巻3号(平成5年9月)の第19〜21頁
【非特許文献2】「現代化学」、1987年12月号、第18〜22頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、一酸化窒素などの除去が困難な窒素酸化物などを含有する酸性ガスであっても、効率よく除去できる酸性ガスの除去用処理剤及びフィルタ、並びに酸性ガスの除去方法を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、簡便、かつ経済的に有利に酸性ガスを除去できる処理剤及びフィルタ、並びに酸性ガスの除去方法を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに他の目的は、圧力損失を低減して、被処理ガス中の酸性ガスを高い除去率で効率よく除去できる酸性ガスの除去用処理剤及びフィルタ、並びに酸性ガスの除去方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、活性炭に、アルカリ成分及びアルミン酸金属塩を担持又は添着させ、酸性ガス(特に、一酸化窒素、二酸化窒素などの窒素酸化物を含む酸性ガス)と接触させると、効率よく酸性ガスを除去できることを見いだし、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明の処理剤は、酸性ガスを含む被処理ガスと接触させて、前記酸性ガスを除去するための処理剤であって、活性炭と、この活性炭に担持されたアルカリ成分及びアルミン酸金属塩とで少なくとも構成されている。前記処理剤は、特に、窒素酸化物を含む被処理ガスと接触させ、窒素酸化物を除去するために有用である。前記窒素酸化物は、少なくとも一酸化窒素を含有してもよい。前記アルカリ成分は、アルカリ金属の炭酸塩及び水酸化物から選択された少なくとも一種(例えば、炭酸カリウム及び/又は水酸化カリウム)であってもよく、アルミン酸金属塩は、アルミン酸アルカリ金属塩(アルミン酸ナトリウムなど)であってもよい。前記処理剤は、粉粒状、繊維状、シート状、又はハニカム状であってもよい。また、処理剤は、粉粒状活性炭及び繊維状活性炭から選択された少なくとも一種の活性炭と繊維成分とで構成されたシート状成形体で構成されていてもよい。前記シート状成形体は、活性炭とともに繊維成分を抄紙した抄紙構造を有していてもよい。本発明の処理剤は、平面状のシート状成形体と波形状のシート状成形体とが交互に積層した積層体で構成してもよく、この積層体の少なくとも被処理ガスと接触可能な部位にアルカリ成分及びアルミン酸金属塩が担持されていてもよい。
【0011】
前記処理剤において、アルカリ成分と、アルミン酸金属塩との割合(重量比)は、前者/後者=50/50〜90/10程度であってもよく、アルカリ成分及びアルミン酸金属塩の総量は、活性炭100重量部に対して、0.01〜25重量部程度であってもよい。
【0012】
本発明には、前記処理剤で構成されたフィルタも含まれる。このようなフィルタは、通常、活性炭を含むシート状又はハニカム状成形体と、前記活性炭に担持されたアルカリ成分及びアルミン酸金属塩とで構成されている。なお、フィルタにおいて、(i)粉粒状活性炭及び繊維状活性炭から選択された少なくとも一種の活性炭と繊維成分とを抄紙した抄紙構造を有するシート状成形体、又は(ii)前記シート状成形体の積層体で構成されていてもよい。
【0013】
さらに、本発明には、前記処理剤に、酸性ガスを含む被処理ガスを接触させる酸性ガスの除去方法も含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、活性炭に、アルカリ成分及びアルミン酸金属塩を担持又は添着させ、酸性ガスと接触させるので、除去が困難な窒素酸化物(特に、一酸化窒素、二酸化窒素などを含む窒素酸化物)などを含有する酸性ガスであっても、効率よく除去することができる。また、高価な金属触媒を使用する必要もないため、簡便、かつ経済的に有利に酸性ガスを除去することができる。さらに、活性炭を含むシート状成形体(特に、粉粒状活性炭及び/又は繊維状活性炭を繊維成分とともに抄紙した抄紙構造を有するシート状成形体)、シート状成形体の積層体(特に、平面状のシート状成形体と波形状のシート状成形体とが交互に積層した積層体)、又は活性炭を含むハニカム状成形体などを用いると、圧力損失を低減して、被処理ガス中の酸性ガスを高い除去率で効率よく除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[酸性ガス除去用処理剤]
本発明の酸性ガス除去用処理剤(以下、単に処理剤と称する場合がある)は、活性炭と、この活性炭に担持されたアルカリ成分及びアルミン酸金属塩とで構成されている。
【0016】
活性炭としては、種々の活性炭、例えば、黒鉛、鉱物系材料(褐炭、れき青炭などの石炭、石油又は石炭ピッチなど)、植物系材料(木材、果実殻(やし殻など)など)、動物系材料(動物の骨、皮など)、高分子材料(ポリアクリロニトリル(PAN)、フェノール系樹脂、セルロース、再生セルロースなど)などを原料とする活性炭などが挙げられる。活性炭は、これらの原料を必要に応じて炭化又は不融化した後、賦活処理することにより得ることができる。なお、炭化方法、不融化方法、賦活方法は、特には限定されず、慣用の方法が利用できる。例えば、賦活は、炭素原料(又はその炭化物若しくは不融化物)を賦活ガス(水蒸気、二酸化炭素など)中、500〜1000℃程度で熱処理するガス賦活法、炭素原料(又はその炭化物若しくは不融化物)を賦活剤(リン酸、塩化亜鉛、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)と混合し、300〜800℃程度で熱処理する化学的賦活法などにより行うことができる。
【0017】
活性炭のうち、やし殻活性炭などの植物系活性炭、石炭などを原料とする鉱物系活性炭、PAN系活性炭・セルロース系活性炭などの高分子系活性炭などが好ましい。活性炭は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。
【0018】
活性炭の形状は、特に制限されず、粒状(粉粒状)、繊維状などであってもよい。なお、粒状活性炭の平均粒子径は、例えば、1〜1000μm、好ましくは10〜750μm、さらに好ましくは100〜500μm程度であってもよい。また、繊維状活性炭の平均繊維径は、特に制限されず、1〜200μm、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは10〜70μm程度であってもよい。
【0019】
前記処理剤において、活性炭は、単独で用いてもよく、活性炭とバインダー成分(又は賦形成分)とで構成された成形体として用いてもよい。
【0020】
なお、活性炭の比表面積は、例えば、350〜2500m2/g、好ましくは700〜2500m2/g、さらに好ましくは1000〜1800m2/g程度である。
【0021】
バインダー成分としては、活性炭を適当な形状(例えば、粒状、シート状、ハニカム状など)に賦形又は成形できればよく、例えば、セピオライト、ゼオライト、アタパルジャイト、タルク、モンモリロナイトなどの無機粘土鉱物、フェノール系樹脂、ピッチ系樹脂などの結合剤に限らず、繊維成分なども含まれる。これらのバインダー成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用でき、必要により、結合剤と繊維成分とを組み合わせて用いてもよい。
【0022】
前記バインダー成分のうち、繊維成分としては、合成繊維(ポリエステル繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維など)、ポリアミド繊維、ポリカーボネート繊維、ポリイミド繊維、ポリエーテルエーテルケトン繊維、ポリエーテルスルホン繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維、ポリアセタール繊維、フェノール樹脂繊維、ポリアリレート繊維、液晶ポリマー繊維など)、半合成繊維(セルロースアセテートなどのセルロースエステル繊維など)、天然繊維(例えば、セルロース繊維、綿、麻、岩綿、羊毛繊維など)、無機繊維(炭素繊維、炭化ケイ素繊維、ガラス繊維、シリカ−アルミナ繊維など)などが挙げられる。これらの繊維成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。上記繊維成分のうち、セルロース繊維、セルロースエステル繊維、又はこれらのセルロース系繊維を含有する混合繊維、パルプなどが好ましい。繊維成分は、必要により、叩解してもよい。
【0023】
活性炭とともにバインダー成分を用いた成形体には、通常、(i)活性炭と結合剤と、必要により繊維成分とを用いて、繊維状、シート状、ハニカム状などに成形したり、ペレット化した成形体、及び(ii)活性炭と、繊維成分と、必要により結合剤とを用いて、抄紙などの手段でシート状に成形した成形体などが含まれる。
【0024】
バインダー成分を含む前記成形体において、バインダー成分の割合は、活性炭100重量部に対して、例えば、0.1〜500重量部、好ましくは1〜400重量部、さらに好ましくは5〜300重量部程度であってもよい。例えば、活性炭を繊維成分とともに抄紙した抄紙構造を有する活性炭などでは、バインダー成分(繊維成分)の割合は、活性炭100重量部に対して、例えば、10〜500重量部、好ましくは50〜450重量部、さらに好ましくは100〜350重量部程度であってもよい。
【0025】
このような活性炭含有成形体の形状は、特に制限されず、粒状(粉粒状又はペレット状)、繊維状、シート状、ハニカム状であってもよい。
【0026】
なお、粒状活性炭の平均粒子径は、例えば、1〜1000μm、好ましくは10〜750μm、さらに好ましくは100〜500μm程度であってもよい。また、繊維状活性炭の平均繊維径は、特に制限されず、1〜200μm、好ましくは5〜100μm、さらに好ましくは10〜70μm程度であってもよい。
【0027】
なお、活性炭を含むシート状成形体としては、粉粒状活性炭及び/又は繊維状活性炭と前記結合剤と、必要により前記繊維成分などとを混合してシート状に成形した成形体、粉粒状活性炭及び/又は繊維状活性炭と前記繊維成分と必要により前記結合剤とで構成された成形体[例えば、不織布状成形体、活性炭を前記繊維成分(必要により叩解した繊維成分(パルプなど))とともに抄紙した抄紙構造を有する成形体など]、粉粒状活性炭をバインダー成分としての樹脂とともに混合し、さらに溶融紡糸した繊維で形成された織布又は不織布、炭素繊維不織布を賦活化処理した不織布状成形体の他、樹脂フィルム、不織布、織布、紙などの表面に、粉粒状活性炭及び/又は繊維状活性炭と前記結合剤とを混合したペーストを塗布又はコーティングしたシート状成形体、前記表面に接着剤又は前記結合剤などを塗布又はコーティングし、粉粒状活性炭及び/又は繊維状活性炭を付着させたシート状成形体などが挙げられる。なお、抄紙構造を有するシート状成形体は、慣用の抄造法、例えば、湿式又は乾式抄造法を利用することにより得ることができる。抄紙においては、必要により、慣用の添加剤、例えば、紙力増強剤、熱融着繊維などを用いてもよい。
【0028】
シート状成形体には、フィルム状又は板状のシート状成形体の他、ネット状、不織布状(フェルト状など)、織布状成形体などが含まれる。また、シート状成形体は、平面状(又は平板状)の他、波形状(又は波板状(コルゲート状))、又はプリーツ状であってもよく、袋状に形成されていてもよい。さらに、成形体には、複数の前記シート状成形体が積層された積層体も含まれる。
【0029】
シート状成形体の積層体としては、同一形状(例えば、平面状)のシート状成形体を積層した積層体の他、異なる形状のシート状成形体を積層した積層体、例えば、平面状のシート状成形体と波形状及び/又はプリーツ状のシート状成形体とを積層した積層体(例えば、平面状のシート状成形体と波形状のシート状成形体とを交互に積層した積層体、平面状のシート状成形体と波形状のシート状成形体との積層体を縦方向の端部を芯部にして巻いて形成される積層体、波形状又はプリーツ状のシート状成形体を縦方向の端部を芯部にして巻いて形成される積層体など)などが例示できる。なお、積層体において、隣接するシート状成形体は、必要により、バインダー、接着剤などにより部分的に固定されていてもよい。
【0030】
シート状成形体の厚みは、特に制限されず、例えば、0.01〜2mm、好ましくは0.02〜1.5mm、さらに好ましくは0.03〜1mm程度である。なお、平面状のシート状成形体と、波形状及び/又はプリーツ形状のシート状成形体との積層体では、積層体の端面に、隣接するシート状成形体間に多くのセルが形成され、ハニカム様の形態を有している。このような積層体において、端面のセル数は、1平方インチ(2.5cm×2.5cm)あたり、例えば、20〜1000個、好ましくは25〜750個、さらに好ましくは30〜500個(例えば、35〜300個)程度であってもよい。
【0031】
なお、シート状成形体の目付量は、例えば、10〜500g/m2、好ましくは50〜300g/m2、さらに好ましくは90〜250g/m2程度であってもよい。
【0032】
また、ハニカム状成形体には、慣用の活性炭ハニカムの製造方法に従って得られるハニカム状成形体の他、バインダー成分と粉粒状活性炭及び/又は繊維状活性炭とを混合して、ハニカム状に成形することにより得られる成形体も含まれる。
【0033】
ハニカム状成形体において、ハニカムのセル数は、1平方インチ(2.5cm×2.5cm)あたり、20〜1000個、好ましくは25〜750個、さらに好ましくは30〜500個(例えば、35〜300個)程度であってもよい。
【0034】
これらの活性炭含有成形体は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記成形体のうち、粉粒状活性炭及び繊維状活性炭から選択された少なくとも一種の活性炭と繊維成分とで構成されたシート状成形体、特に、活性炭とともに繊維成分を抄紙した抄紙構造を有するシート状成形体、及びその積層体(特に、平面状のシート状成形体と波形状のシート状成形体とが交互に積層した積層体)などが好ましい。
【0035】
アルカリ成分としては、有機塩基であってもよいが、通常、無機塩基、例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなど)、アルカリ土類金属水酸化物(水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化バリウムなど)、アルカリ金属炭酸塩(炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどの炭酸塩;炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウムなどの炭酸水素塩など)などが挙げられる。なお、前記アルミン酸金属塩も水溶液はアルカリ性を示す場合があるが、本明細書において「アルカリ成分」とはアルミン酸金属塩を除くアルカリ成分を意味する。
【0036】
アルカリ成分は、単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。前記アルカリ成分のうち、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属の水酸化物が好ましく、特に、炭酸カリウム、水酸化カリウムが好ましい。
【0037】
アルミン酸金属塩としては、例えば、アルミン酸アルカリ金属塩(アルミン酸カリウム、アルミン酸ナトリウムなど)、アルミン酸アルカリ土類金属塩(アルミン酸カルシウム、アルミン酸マグネシウムなど)、アルミン酸亜鉛などが挙げられる。これらのアルミン酸金属塩は単独で又は二種以上組み合わせて使用できる。アルミン酸金属塩のうち、アルミン酸アルカリ金属塩、特にアルミン酸ナトリウムが好ましい。なお、アルミン酸金属塩としては、水酸化アルミニウムとアルカリ金属水酸化物との反応(通常、等モル反応)により生成させた反応生成物を使用してもよい。
【0038】
アルカリ成分と、アルミン酸金属塩との割合(重量比)は、例えば、前者/後者=50/50〜90/10、好ましくは60/40〜85/15、さらに好ましくは65/35〜80/20程度である。
【0039】
また、アルカリ成分及びアルミン酸金属塩の総量は、活性炭100重量部に対して、0.01〜25重量部、好ましくは0.1〜20重量部、さらに好ましくは1〜15重量部程度であってもよい。
【0040】
アルカリ成分及びアルミン酸金属塩の活性炭への担持は、慣用の方法、例えば、アルカリ成分及びアルミン酸金属塩を含む溶液(通常、水溶液)を活性炭又は活性炭含有成形体に散布、含浸、又は浸漬し、必要により乾燥(例えば、40〜100℃程度の温度で乾燥)することにより行うことができる。なお、担持は、必ずしもアルカリ成分及びアルミン酸金属塩の双方を含む溶液を用いて行う必要はなく、アルカリ成分の溶液(水溶液など)とアルミン酸金属塩の溶液(水溶液など)とを別個に活性炭又は活性炭含有成形体に散布、含浸又は浸漬することにより行ってもよい。アルカリ成分及びアルミン酸金属塩を活性炭に担持させる順序も特に制限されず、いずれを先に担持させてもよく、両者を同時に担持させてもよい。また、アルカリ成分及びアルミン酸金属塩は、活性炭又は活性炭含有成形体の少なくとも一部に担持されていればよく、必ずしも活性炭又は活性炭含有成形体全体に担持されている必要はない。例えば、平面状のシート状成形体と波形状のシート状成形体との積層体では、平面状のシート状成形体及び波板状のシート状成形体のいずれか一方に薬品(アルカリ成分及びアルミン酸金属塩)を担持させてもよく、双方に担持させてもよい。また、積層体において、薬品担持活性炭層(複数層)と未担持の層(複数層)とを交互に形成してもよい。積層体の少なくとも被処理ガスと接触可能な部位にアルカリ成分及びアルミン酸金属塩を担持させてもよい。
【0041】
また、活性炭含有成形体を用いる場合、予め薬品(アルカリ成分及び/又はアルミン酸金属塩)を活性炭に担持させた後、バインダー成分を用いて賦形又は成形してもよく、活性炭とバインダー成分とを賦形又は成形した後、得られた成形体(成形体中の活性炭)に薬品(アルカリ成分及びアルミン酸金属塩)を担持させてもよい。例えば、抄紙構造を有するシート状成形体では、粉粒状又は繊維状活性炭に薬品を担持させた後、繊維成分とともに抄紙してもよく、薬品未担持の粉粒状又は繊維状活性炭を繊維成分とともに抄紙した後、薬品を担持してもよい。
【0042】
本発明の処理剤は、酸性ガスを含む被処理ガスと接触させて、前記酸性ガスを除去するために使用される。酸性ガスとしては、NOx(例えば、一酸化窒素、二酸化窒素などの窒素酸化物)、酸性のイオウ含有ガス[SOx(例えば、二酸化硫黄などの硫黄酸化物)など]、ハロゲン化水素(塩化水素、フッ化水素など)、硫化水素などが挙げられる。被処理ガスは、これらの酸性ガスを一種又は二種以上含有していてもよい。本発明の処理剤は、前記酸性ガスのうち、窒素酸化物、特に、従来除去が困難であった一酸化窒素を少なくとも含む窒素酸化物であっても効率よく除去できる。このような処理剤は、被処理ガスと少なくとも接触させて用いる用途、例えば、フィルタに用いるのに有用である。特に、活性炭を含有するシート状又はハニカム状成形体を用いると、処理剤はそのままフィルタとして使用できる。このようなフィルタは、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。例えば、同種又は異種の複数のフィルタを上流側のフィルタと、下流側のフィルタとで構成してもよく、同種又は異種の複数のフィルタを縦、横及び/又は斜め方向に並列させて用いてもよい。
【0043】
フィルタの厚みは、例えば、1〜150cm、好ましくは10〜100cm、さらに好ましくは20〜80cm(例えば、20〜50cm)程度である。
【0044】
フィルタと被処理ガスとの接触は特に制限されず、被処理ガスの流路にフィルタを配置すればよいが、例えば、ハニカム状フィルタや積層体状のフィルタでは、ハニカムのセル、積層体の積層面(ハニカム様の端面など)を被処理ガスの流路に向けて配置され、フィルタ内の空間に被処理ガスを通過又は流通させるのが、酸性ガスの除去効率を向上させる点から好ましい。
【0045】
なお、被処理ガスの温度は、フィルタの酸性ガス除去能を損なわない範囲で、適宜選択でき、例えば、−30℃〜100℃、好ましくは−10℃〜80℃、さらに好ましくは0〜50℃(例えば、5〜35℃)程度であってもよい。
【0046】
被処理ガスの線流速は、例えば、10cm/秒〜4m/秒、好ましくは30cm/秒〜3.5m/秒、通常50cm/秒〜3m/秒(例えば、50cm/秒〜2m/秒)程度であってもよい。また、空間速度は、例えば、20〜500,000h-1、好ましくは100〜300,000h-1、さらに好ましくは1,000〜200,000h-1(例えば、10,000〜150,000h-1)、特に100,000〜150,000h-1(例えば、120,000〜150,000h-1)程度であってもよい。
【0047】
本発明のフィルタは、必要により、他のフィルタユニット、例えば、慣用の除塵フィルタ(電気集塵式フィルタ、帯電フィルタ、不織布フィルタなど)、他のガス成分の除去フィルタ(アルカリガス除去フィルタ、他の酸性ガス除去フィルタ(活性炭フィルタ、慣用の薬品添着フィルタなど)など)などと組み合わせて用いてもよい。なお、除塵フィルタは、通常、酸性ガス除去用フィルタの上流側に配設する場合が多い。
【0048】
本発明の処理剤及びフィルタでは、活性炭にアルカリ成分とアルミン酸金属塩とが担持されているため、一酸化窒素などの従来除去が困難であった窒素酸化物を含む酸性ガスであっても高い除去効率で除去することができ、処理剤又はフィルタからの分解ガスや脱離ガスの再放出など、二次的な有害ガスの発生も防止できる。また、フィルタの耐候性、安定性、難燃性も高い。さらに、活性炭を含有するハニカム状や積層体状の成形体を用いると、低い圧力損失で、被処理ガスを処理することができ、酸性ガスの除去効率を損なうことがない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明の処理剤又はフィルタは、一酸化窒素などの窒素酸化物を含む酸性ガスであっても、効率よく除去できるため、種々の気体浄化用途、例えば、排気口に配設して浄化された排気ガスを放出する用途などの他、浄化された処理ガスを循環させる用途、例えば、空調装置のフィルタに有用である。特に、本発明の処理剤又はフィルタは、クリーンルーム(半導体や液晶製造用のクリーンルームなど)で使用されるフィルタ(例えば、空調装置のフィルタなど)として利用可能であり、クリーンルームを浄化するのに有用である。
【実施例】
【0050】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0051】
実施例1〜2及び比較例1〜6
(1)フィルタの作製
粒状活性炭とともにセルロースパルプを湿式抄紙し、平面状のシート状に加工した成形体(目付量100g/m2、活性炭量40g/m2)を得た。この平面状のシート状成形体上に別の平面状のシート状成形体を波板状に積層し、この波板状のシート状成形体上に、さらに平面状のシート状成形体を積層し、積層を繰り返して、平面状のシート状成形体と波板状のシート状成形体とが交互に積層した状態のコルゲート状成形体(すなわち、活性炭保持コルゲート紙、サイズ:縦550mm×横550mm×厚み45mm)を作製した。このコルゲート紙は、目付量が210g/m2、活性炭量が84g/m2であり、吸水量が440g/m2であった。
【0052】
(2)薬品担持
上記フィルタに、表1に示す成分を粒状活性炭100重量部に対して10重量部(アルミン酸ナトリウムについては、金属原子換算;他の成分については、乾燥又は無水物重量換算)の割合で使用して、フィルタ中の活性炭に担持させた。すなわち、フィルタの上記吸水量に相当する量の水を用いて、表1の成分を含む水溶液を調製し、この水溶液に上記フィルタを浸漬し、水溶液を吸収させた。さらに50℃で10時間乾燥させることにより、薬品添着活性炭を保持したフィルタを得た。
【0053】
(3)酸性ガスの除去性能の評価
室内の空気を上記(2)で得られたフィルタに、線速LV0.6m/sで通過させ、分析装置(日本サーモエレクトロン(株)製NOx計)を用いてフィルタの入口及び出口におけるNO濃度及びNO2濃度をそれぞれ測定し、NO除去率及びNO2除去率を算出した。測定は、各フィルタ試料につき、4サンプルで行い、空気の通過はそれぞれ1パスで行った。そして、得られたNO濃度及びNO2濃度、並びに除去率の平均値を算出した。
【0054】
なお、実施例2では、実施例1のフィルタを流路方向に3つ並べて空気を通過させた。また、比較例5では、上記コルゲート状のフィルタに代えて、積層前のシート状成形体を単層で用い、比較例6では、シート状成形体を2枚重ねて2層で用いた。
【0055】
結果を表1に示す。なお、用いた成分(薬品)は以下の通りである。
【0056】
(i)アルミン酸ナトリウム(Al/Na(当量比)=0.79/1,和光純薬工業(株)製)
(ii)炭酸カリウム(旭硝子(株)製)
(iii)硝酸銅・3水和物(純度99%,和光純薬工業(株)製)
(iv)硝酸マンガン・6水和物(純度97%,和光純薬工業(株)製)
(v)塩化コバルト・6水和物(純度97%,和光純薬工業(株)製)
(vi)塩化ニッケル・6水和物(純度98%,和光純薬工業(株)製)
【0057】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性ガスを含む被処理ガスと接触させて、前記酸性ガスを除去するための処理剤であって、活性炭と、この活性炭に担持されたアルカリ成分及びアルミン酸金属塩とで構成されている酸性ガス除去用の処理剤。
【請求項2】
窒素酸化物を含む被処理ガスと接触させて、窒素酸化物を除去するための請求項1記載の処理剤。
【請求項3】
窒素酸化物が、少なくとも一酸化窒素を含有する請求項2記載の処理剤。
【請求項4】
アルカリ成分が、アルカリ金属の炭酸塩及び水酸化物から選択された少なくとも一種であり、アルミン酸金属塩が、アルミン酸アルカリ金属塩である請求項1記載の処理剤。
【請求項5】
アルカリ成分が、炭酸カリウム及び水酸化カリウムから選択された少なくとも一種であり、アルミン酸金属塩が、アルミン酸ナトリウムである請求項1記載の処理剤。
【請求項6】
粉粒状、繊維状、シート状、又はハニカム状である請求項1記載の処理剤。
【請求項7】
粉粒状活性炭及び繊維状活性炭から選択された少なくとも一種の活性炭と繊維成分とで構成されたシート状成形体で構成されており、前記活性炭にアルカリ成分及びアルミン酸金属塩が担持されている請求項1記載の処理剤。
【請求項8】
活性炭とともに繊維成分を抄紙した抄紙構造を有するシート状成形体で構成されている請求項7記載の処理剤。
【請求項9】
平面状のシート状成形体と波形状のシート状成形体とが交互に積層した積層体で構成されており、この積層体の少なくとも被処理ガスと接触可能な部位に、アルカリ成分及びアルミン酸金属塩が担持されている請求項7又は8記載の処理剤。
【請求項10】
アルカリ成分と、アルミン酸金属塩との割合(重量比)が、前者/後者=50/50〜90/10であり、アルカリ成分及びアルミン酸金属塩の総量が、活性炭100重量部に対して、0.01〜25重量部である請求項1記載の処理剤。
【請求項11】
酸性ガスを含む被処理ガスと接触させて、前記酸性ガスを除去するためのフィルタであって、活性炭を含むシート状又はハニカム状成形体と、前記活性炭に担持されたアルカリ成分及びアルミン酸金属塩とで構成されているフィルタ。
【請求項12】
(i)粉粒状活性炭及び繊維状活性炭から選択された少なくとも一種の活性炭と繊維成分とを抄紙した抄紙構造を有するシート状成形体、又は(ii)前記シート状成形体の積層体で構成されている請求項11記載のフィルタ。
【請求項13】
請求項1記載の酸性ガス除去用の処理剤に、酸性ガスを含む被処理ガスを接触させる酸性ガスの除去方法。

【公開番号】特開2006−341150(P2006−341150A)
【公開日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−167031(P2005−167031)
【出願日】平成17年6月7日(2005.6.7)
【出願人】(591147694)大阪ガスケミカル株式会社 (85)
【出願人】(501213893)産栄サービス株式会社 (3)
【Fターム(参考)】