説明

酸性抗菌洗浄剤組成物

【課題】酸性洗浄剤でありながら、油性汚れに対する洗浄効果に優れ、希釈使用された場合にも抗菌効果が高く、しかもプラスチック樹脂製品に対するケミカルクラックの問題が少ない酸性抗菌洗浄剤組成物の提供。
【課題の解決手段】(A)有機酸及び/又はその塩、(B)ベタイン型両性界面活性剤、(C)カチオン性抗菌剤を必須成分として含有し、且つpHが4.0〜5.5であることを特徴とする酸性抗菌洗浄剤組成物。
(B)ベタイン型両性界面活性剤が、アルキルカルボベタイン、アルキルアミドカルボベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタインから選ばれる1種以上を含有することが特に好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、台所や浴室等の硬表面の洗浄に有用な酸性抗菌洗浄剤組成物に関し、更に詳しくは、油性汚れの洗浄に優れ、抗菌効果が高く、プラスチック樹脂に対して影響の少ない酸性抗菌洗浄剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
住居の汚れには、水道水中に含まれるケイ素やカルシウム等の無機質成分が蓄積した台所や洗面台の水アカ汚れ、脂肪酸アルカリ土類金属塩を主成分とする浴室の湯垢汚れ、リン酸カルシウム等を主成分とするトイレの尿石汚れ、調理時や食器類からの変性油汚れ、手の皮脂等からの手垢汚れ等がある。これらの汚れの中で、水アカ汚れ、湯垢汚れや尿石汚れ等の水まわりの汚れの洗浄には、有機酸等を使用した酸性洗浄剤が有効であることが知られている。しかしながら、これらの酸性洗浄剤は変性油汚れや手垢汚れ等の油性汚れに対しては効果が劣るという欠点があった。
【0003】
また、浴室や台所等の排水口付近に発生する悪臭やぬめりは、細菌やカビ等の微生物が増殖して起こることも知られているが、実際の排水口には溜まり水があるため、通常の洗浄剤等を使用してもこの溜まり水によって希釈されてしまい、これら微生物の増殖を抑制できなくなって悪臭やぬめりを発生してしまうという問題点があった。
【0004】
一方、住居設備には、タイル、ステンレス等のいろいろな材質の製品があり、最近ではABS樹脂やポリスチレン樹脂等で成型されたプラスチック樹脂製品も多く存在する。このプラスチック樹脂製品には樹脂のひび割れなどケミカルクラックの問題があり、プラスチック樹脂製品に対してより影響が少ない洗浄剤の開発も望まれている。
【0005】
特許文献1には、両性界面活性剤とノニオン界面活性剤、ポリカルボン酸塩等を必須成分として含有し、pHが約1〜約5.5好ましくは約2〜約4.5の浴室用酸性液体組成物が開示されている。本文献の組成物はノニオン界面活性剤でもポリアルキレンアルキルエーテル系の配合を推奨しているため、プラスチック樹脂製品に対するケミカルクラックの問題がある。また、特許文献1には排水口の溜り水等によって希釈された場合の抗菌性に関する記述はない。特許文献2には、アミンオキシド型界面活性剤及びカルボベタイン型両性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の化合物からなる、浴室、台所まわり用酢酸配合洗浄剤組成物の酢酸臭低減化剤及び酢酸臭低減化方法が開示されており、特許文献3には、酢酸、フルーツ香料、界面活性剤を必須成分とする洗浄剤組成物が開示されているが、いずれの文献にも排水口の溜り水等によって希釈された場合の抗菌性については論述していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表平6−500581号公報
【特許文献2】特開2001−354994号公報
【特許文献3】特開2002−3886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は酸性洗浄剤でありながら、油性汚れに対する洗浄効果に優れ、希釈使用された場合にも抗菌効果が高く、しかもプラスチック樹脂製品に対するケミカルクラックの問題が少ない酸性抗菌洗浄剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の構成が上記目的を達成するために優れた効果を奏することを見出したものである。
(1)(A)有機酸及び/又はその塩、(B)ベタイン型両性界面活性剤、(C)カチオン性抗菌剤を必須成分として含有し、且つpHが4.0〜5.5であることを特徴とする酸性抗菌洗浄剤組成物。
(2)(B)ベタイン型両性界面活性剤が、アルキルカルボベタイン、アルキルアミドカルボベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタインから選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)に記載の酸性抗菌洗浄剤組成物。
(3)(C)カチオン性抗菌剤が、ジェミニ型第四級アンモニウム塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩から選ばれる1種以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の酸性抗菌洗浄剤組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の酸性抗菌洗浄剤組成物は、酸性洗浄剤でありながら油性汚れに対する洗浄力に優れ、プラスチック樹脂製品に対するケミカルクラックの問題も少なく、且つ抗菌性が高い酸性洗浄剤を提供することができる。本発明酸性抗菌洗浄剤組成物は、その高い抗菌性により、溜まり水がある台所の流し台や浴室、洗面台等の排水口の悪臭防止にも効果的である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プラスチック樹脂のケミカルクラック試験に使用する試験器を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。
本発明の酸性抗菌洗浄剤組成物の(A)成分である有機酸及び/又はその塩としては、グリコール酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、クエン酸等のヒドロキシカルボン酸またはそれらの塩、エチレンジアミン4酢酸等のアミノカルボン酸またはそれらの塩、1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸等のホスホン酸またはそれらの塩、酢酸等の低級カルボン酸またはそれらの塩が挙げられる。また、これらの有機酸の塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やモノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩、アンモニウム塩などが使用できる。
【0012】
この成分(A)の配合量は、酸性抗菌洗浄剤組成物中、通常は0.1〜15質量%であり、好ましくは0.3〜10質量%である。有機酸及び/又はその塩の配合量が0.1質量%より少ないと酸性洗浄剤の特徴である湯垢汚れや水アカ汚れ等の水まわりの汚れに対する洗浄効果が乏しく、一方、15質量%より多くてもその洗浄効果は向上しない。
【0013】
本発明の(B)成分である界面活性剤はベタイン型両性界面活性剤から成り、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、高級脂肪酸塩等に代表されるアニオン界面活性剤やポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルケニルフェニルエーテル等に代表されるノニオン界面活性剤は本発明の酸性抗菌洗浄剤組成物には適さない。本発明酸性抗菌洗浄剤組成物の特徴の一つである酸性領域での油性汚れに対する高い除去効果は、界面活性剤にベタイン型両性界面活性剤を使用することによって達成されるが、アニオン界面活性剤やノニオン界面活性剤ではその効果は不十分である。更に、アニオン界面活性剤は本発明の(C)成分であるカチオン性抗菌剤の抗菌効果を減じてしまい、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル等のノニオン界面活性剤はABSやポリスチレン等のプラスチック樹脂にケミカルクラックを発生しやすくするので本発明酸性抗菌洗浄剤組成物にアニオン界面活性剤やポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルを使用することは好ましくない。
【0014】
この(B)成分であるベタイン型両性界面活性剤としては、アルキルカルボベタイン、アルキルアミドカルボベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタイン等が挙げられる。
【0015】
該両性界面活性剤は、更に具体的には、ラウリル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ヤシアルキル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ラウリルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ヤシアルキル−N,N−ジメチルスルホベタイン、ラウリル−N,N−ジメチル−プロピルスルホベタイン、ラウリル−N,N−ジメチル−2−ヒドロキシプロピルスルホベタイン、ミリスチル−N,N−ジメチル−2−ヒドロキシプロピルスルホベタイン、パルミチル−N,N−ジメチル−2−ヒドロキシプロピルスルホベタイン、アルキルアミドプロピル−N,N−ジメチル−プロピルスルホベタイン、ヤシアルキルアミドプロピル−N,N−ジメチルヒドロキシプロピルスルホベタイン等が挙げられ、中でも特に、酸性領域での油性汚れに対する洗浄性の点でラウリル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ヤシアルキル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ラウリルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピル−N,N−ジメチル酢酸ベタイン等が好ましい。
【0016】
この成分(B)の配合量は、酸性抗菌洗浄剤組成物中、通常は0.1〜10質量%であり、好ましくは0.3〜6質量%である。ベタイン型両性界面活性剤の配合量が0.1質量%より少ないと酸性領域での油性汚れに対する洗浄効果が乏しく、一方、10質量%より多くてもその洗浄効果は向上しない。
【0017】
本発明の(C)カチオン性抗菌剤としては、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、ジェミニ型第四アンモニウム塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩、ポリリジン等が挙げられ、特に、タンパク質等の有機物汚れがあるところで抗菌効果が低下しにくいという点でジェミニ型第四級アンモニウム塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩が好ましい。ジェミニ型第四級アンモニウム塩の具体例としては、1,4−ビス(3,3´−(1−デシルピリジニウム)メチルオキシ)ブタンジブロマイド等が挙げられる。
【0018】
この成分(C)の配合量は特に限定されないが、家庭用の台所の流し台や洗面台のシンクの排水口のたまり水は約100〜500mlあり、酸性抗菌洗浄剤組成物を1回に1〜5ml処理したときに効果を発揮する、つまり、酸性抗菌洗浄剤組成物を少なくとも100倍希釈しても抗菌効果を示すように配合するのが好ましく、酸性抗菌洗浄剤組成物中0.01〜2質量%配合することが好ましい。
【0019】
本発明の酸性抗菌洗浄剤組成物のpHは、4.0〜5.5の範囲にすることが重要である。pHが4.0未満になると水アカ汚れ等の水まわりの汚れに対する洗浄力は十分であるが、油性汚れに対する洗浄力が低下してしまう。一方、pHが5.5を越えると油性汚れに対する洗浄力は十分であるが、水アカ汚れ等の汚れに対しては洗浄力が低下するので本発明の目的に合致しない。また、本発明の酸性抗菌洗浄剤組成物においては、排水口の溜り水等によって希釈された場合でも抗菌効果を発揮するうえで効果的であることも認められた。
【0020】
本発明の酸性抗菌洗浄剤組成物には、上記必須成分の他、本発明の効果を損なわない範囲で通常の洗浄剤組成物に配合されている添加剤、例えば溶剤、防汚剤、ハイドロトロープ剤、増粘剤、研磨剤、香料、色素等を配合することができる。
【0021】
溶剤としては、例えば、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、エチレングリコール、イソプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール−tert−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、ポリオキシエチレン(P=1〜3)ポリオキシプロピレン(P=1〜4)グリコールモノエチルエーテル(以下に、Pは平均付加モル数を示す)、ポリオキシエチレン(P=1〜2)ポリオキシプロピレン(P=1〜4)グリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(P=2〜3)ポリオキシプロピレン(P=2〜3)グリコールジメチルエーテル、ポリオキシエチレン(P=2〜4)グリコールフェニルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等のグリコールエーテル系溶剤、その他3−メチル−4−メトキシブタノール、メチルピロリドン等が挙げられる。
【0022】
これらの溶剤は、油性汚れに対する洗浄力向上剤或いは本発明酸性抗菌洗浄剤組成物をトリガー、スクイズフォーマー等の容器で使用する場合の泡調整剤として有効であり、中でも特に、グリコールエーテル系溶剤が好ましい。これらの溶剤の配合量は15質量%以下、好ましくは1〜10質量%である。
【0023】
本発明酸性抗菌洗浄剤組成物に配合される防汚剤としては、カチオン性の防汚剤、両性の防汚剤、ノニオン性の防汚剤が好ましく、具体例としては、アクリルアミド・ジアリルジメチルアンモニウムクロライド共重合体、カチオン化グアガム、ポリベタイン、PEGホスフェートエステル、PPGホスフェートエステル、グリセリンホスフェートエステル、低分子量のポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、アミノ変性シリコーン等が挙げられる。
【0024】
ハイドロトロープ剤は水に溶解しにくい香料や溶剤等に対する可溶化剤、或いは溶液を均一にするための安定化剤や泡調整剤として配合でき、具体例としてはp−トルエンスルホン酸、m−キシレンスルホン酸又はそれらの塩、アルキルポリグリコシド等が挙げられる。
【0025】
増粘剤としては、キサンタンガム、セルロース誘導体、カラギーナン、ローカストビーンガム、アルギン酸塩等の高分子多糖類、高分子量のポリアクリル酸塩やポリビニルアルコール等が挙げられ、中でも特に、カチオン性キサンタンガム、カチオン性セルロース誘導体等のカチオン性増粘剤やポリビニルアルコール等のノニオン性増粘剤が好ましい。
【0026】
研磨剤としては、シリカまたは多孔質シリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、アルミノシリケート、炭化珪素、石英砂、砂、貝殻等の天然粉砕物、雲母粉末、珪石、珪藻土、カオリナイト、ハロイサイト、モンモリロナイト、イライト、バーミキュライト等が使用できる。
【0027】
香料としては、特に限定するものではないが、例えば、脂肪族炭化水素、テルペン炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素類、脂肪族アルコール等のアルコール類、脂肪族エーテル、芳香族エーテル等のエーテル類、脂肪族オキサイド、テルペン類のオキサイド等のオキサイド類、脂肪族アルデヒド、テルペン系アルデヒド、水素化芳香族アルデヒド、チオアルデヒド、芳香族アルデヒド等のアルデヒド類、脂肪族ケトン、テルペンケトン、水素化芳香族ケトン、脂肪族環状ケトン、非ベンゼン系ケトン、芳香族ケトン等のケトン類、アセタール類、ケタール類、フェノール類、フェノールエーテル類、脂肪酸、テルペン系カルボン酸、水素化芳香族カルボン酸、芳香族カルボン酸等の酸類、酸アマイド類、脂肪族ラクトン、大環状ラクトン、テルペン系ラクトン、水素化芳香族ラクトン、芳香族ラクトン等のラクトン類、脂肪族エステル、フラン系カルボン酸エステル、脂肪族環状カルボン酸エステル、シクロヘキシルカルボン酸族エステル、テルペン系カルボン酸エステル、芳香族カルボン酸エステル等のエステル類、ニトロムスク類、ニトリル、アミン、ピリジン類、キノリン類、ピロール、インドール等の含窒素化合物等々の合成香料及び天然香料を挙げることができ、これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0028】
具体的に用いることができる香料としては、香料として使用される香料原料リスト、例えば、「合成香料 化学と商品知識」、印藤元一著、化学工業日報社(1996)及び「香りの百科」、日本香料協会編、朝倉書店(1989)等で見られ、それぞれを引用することにより本明細書の開示の一部とされる。
【0029】
本発明酸性抗菌洗浄剤組成物の剤型としては、例えば、水溶液状、水性分散液等が挙げられ、ボトル、トリガースプレー、スクイズフォーマー、エアゾール等の各種剤型とすることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例に先だって、まず実施例における試験方法について説明する。
【0031】
(1)油汚れ洗浄力
市販のサラダオイル9.5部にCobalt Tallateを含有する硬化剤0.5部を加え、常温にて2時間攪拌して汚垢溶液を調製する。この溶液をステンレス片(5×9cm)に均等に塗布した後、100〜110℃の温度で20分間加熱処理してモデル油汚れ片を作成する。(油汚れ量0.1±0.05g/枚)
このモデル油汚れ片に洗浄剤液2mlを均等に滴下して常温にて2分間放置した後、洗浄力試験機を使用して水を湿らせて固く絞ったウレタンスポンジ(6×9×3cm)を用いて荷重570gの条件で5回こすり洗浄する。この洗浄後のモデル油汚れ片を水洗して風乾し、重量を測定して洗浄後の油除去率を下記の式により算出して洗浄力とした。
洗浄力(%)=(W2−W0)/(W1−W0)×100
W0:ステンレス片の重量
W1:洗浄前のモデル油汚れ片の重量
W2:洗浄風乾後のモデル油汚れ片の重量
なお、洗浄力の評価基準は次の通りとした。
○:洗浄力が70%以上
△:洗浄力が50%以上70%未満
×:洗浄力が50%未満
【0032】
(2)水アカ汚れ洗浄力
一般家庭の調理台の流しの部分にステンレス片(3×8cm)を貼り付け、その部分を1週間洗浄せずに実際の汚れを採取した。これを洗浄剤液中に2分間浸漬し、水洗後に風乾して下記基準にて目視評価を行った。
○:汚れが殆ど落ちた。
△:汚れが半分程度落ちた。
×:汚れがほとんど落ちなかった。
【0033】
(3)手垢汚れ洗浄力
一般家庭のテーブルの手垢汚れに、洗浄剤液をトリガースプレーヤー(1回の吐出量が約0.7cc)を用いて2回スプレーし、乾いた布で往復5回こすって手垢汚れに対する洗浄力を下記基準にて目視評価した。
○:汚れが殆ど落ちた。
△:汚れが半分程度落ちた。
×:汚れがほとんど落ちなかった。
【0034】
(4)プラスチック樹脂のケミカルクラック試験
幅5cm,長さ10cm,厚さ2mmのABS樹脂及びポリスチレン樹脂の試験片を図1のようなd=9.6cmの試験器にアーチ状に取り付け、樹脂表面全体にティッシュペーパーを被せてから洗浄液1mlを塗布して常温で1日間放置する試験を7日間繰り返した。7日間後の樹脂表面の様子を下記基準にて目視評価した。
○:割れ、白化ともなし。
△:白化した。
×:割れた。
【0035】
(5)抗菌性試験
SCD培地で抗菌組成物の100倍希釈液を作製する。100倍希釈液10mlに0.1mlの台所の排水口(ヌメリの発生あり)の水を接種して、25℃で3日間培養し、菌の生育の有無で抗菌効果を下記の基準にて評価した。
○:100倍希釈で菌の生育が認められない。
×:100倍希釈で菌の生育が認められる

【0036】
<試験1>
表1に示す酸性抗菌洗浄剤組成物を調製し、油汚れと水アカ汚れに対する洗浄力を評価した。pHは水酸化ナトリウムで調整した。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示される結果より、酸性抗菌洗浄剤組成物のpHが4.0未満になると水アカ汚れに対する洗浄力は十分であるが、油性汚れに対する洗浄力が低下した。一方、pHが5.5を越えると逆に油性汚れに対する洗浄力は十分であるが、水アカ汚れに対しては洗浄力の低下が認められた。本発明酸性抗菌洗浄剤である実施例1,2の組成物は、油汚れと水アカ汚れの両方の汚れに対して良好な洗浄力を示した。
【0039】
<試験2>
表2に示す酸性抗菌洗浄剤組成物を調整し、油汚れと水アカ汚れに対する洗浄力を評価した。
【0040】
【表2】


1:アルキル基の平均炭素数14
2:オキシエチレン平均付加モル数2
3:アルキル基の平均炭素数10、オキシエチレン平均付加モル数8


【0041】
表2に示される結果より、実施例3,4の組成物は、油汚れと水アカ汚れの何れの汚れにも良好な洗浄力を示したが、アニオン界面活性剤を配合した比較例4,5の組成物及びノニオン界面活性剤を配合した比較例6の組成物は、油汚れに対する洗浄力が不十分であった。
【0042】
<試験3>
表3に示す酸性抗菌洗浄剤組成物を調製し、油汚れと水アカ汚れに対する洗浄力、ABS樹脂のケミカルクラック試験、抗菌性試験を評価した。
【0043】
【表3】


1:アルキル基の平均炭素数14
2:オキシエチレン平均付加モル数3
3:アルキル基の平均炭素数12、オキシエチレン平均付加モル数12

【0044】
表3に示されるように、実施例5,6の組成物は、油汚れと水アカ汚れに対する洗浄力、ABS樹脂のケミカルクラック試験、抗菌性試験のいずれも良好な結果であったが、アニオン界面活性剤を配合した比較例7,8の組成物及びノニオン界面活性剤を配合した比較例9の組成物は、これらの試験のすべてに良好な結果を得ることができなかった。

【0045】
<試験4>
表4に示す酸性抗菌洗浄剤組成物を調製し、手垢汚れに対する洗浄力、ポリスチレン樹脂のケミカルクラック試験及び抗菌性試験を評価した。

【0046】
【表4】



1:ローディア日華株式会社製のMIRATAIN CBSを使用

【0047】
表4に示されるように、実施例7〜9の組成物は、手垢汚れに対する洗浄力、ポリスチレン樹脂のケミカルクラック試験、抗菌性試験のいずれも良好な結果であった。

【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の酸性抗菌洗浄剤組成物は、広範な洗浄ならびに抗菌用途を目的として利用することが可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)有機酸及び/又はその塩、(B)ベタイン型両性界面活性剤、(C)カチオン性抗菌剤を必須成分として含有し、且つpHが4.0〜5.5であることを特徴とする酸性抗菌洗浄剤組成物。
【請求項2】
(B)ベタイン型両性界面活性剤が、アルキルカルボベタイン、アルキルアミドカルボベタイン、アルキルスルホベタイン、アルキルヒドロキシスルホベタイン、アルキルアミドスルホベタイン、アルキルアミドヒドロキシスルホベタインから選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の酸性抗菌洗浄剤組成物。
【請求項3】
(C)カチオン性抗菌剤が、ジェミニ型第四アンモニウム塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩、ポリヘキサメチレングアニジン塩から選ばれる1種以上を含有することを特徴とする請求項1又は2記載の酸性抗菌洗浄剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2012−111846(P2012−111846A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261877(P2010−261877)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000207584)大日本除蟲菊株式会社 (184)
【Fターム(参考)】