説明

酸捕捉剤

【課題】樹脂への相溶性が高く、樹脂への悪影響が少なく、樹脂自体の分解により生成する酸成分のみならず、樹脂に添加された添加剤より生成される酸性物質の捕捉能力も有する酸捕捉剤を提供すること。
【解決手段】カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合され環構造を形成している環状化合物を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸捕捉剤に関する。更に詳しくは、樹脂中に含有される酸を効果的に捕捉し、安定な樹脂を製造することのできる酸捕捉剤に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、広汎な種類の樹脂、とりわけ溶融加工あるいは溶融成形される樹脂が、多様な用途に使用されている。しかしながら、溶融加工あるいは溶融成形される熱可塑性樹脂に関して、前記工程時、樹脂成分が分解して生成される酸性化合物、とりわけ低分子量の酸性化合物により、溶融加工あるいは溶融成形装置が腐食されることや、樹脂成分自体が劣化する場合がある。
【0003】
かかる低分子量の酸性成分としては、例えば、熱加工、溶融成形時に樹脂自体が分解生成する酸性成分、例えば、ポリアセタールセグメントを保有する樹脂が生成する蟻酸、ポリビニルアセテート樹脂あるいは塩素化エラストマーが生成する酢酸、あるいは塩化水素などの酸性成分、あるいは熱可塑化性樹脂に適用された各種添加剤、例えば燐酸系化合物、亜リン酸系安定剤、スルホン酸塩、燐系難燃化剤、ハロゲン系難燃剤、抗酸化剤、帯電防止剤などに含まれる酸性不純物、前記添加剤が熱加工時、分解生成する酸性成分さらには樹脂成形品を使用時、前記添加剤が経時的に分解して生成する酸性成分などが例示される。
【0004】
溶融加工時、樹脂自体が分解、生成する低分子量酸性成分を、捕捉不活性化する提案は多数なされており、例えばセルロース系光学フィルムにおいて、熱溶融時の安定化のために、エポキシ化合物等を用いること(例えば、特許文献1参照)、ポジ型フォトレジスト組成物において、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナ−5−エンなど強塩基性アミノ化合物等(例えば、特許文献2参照)を用いること、エステル系冷凍機油においてエポキシ系添加剤(例えば、特許文献3参照)を用いること、ポリアセタール系樹脂にアミノ置換トリアジンやアミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの重縮合物、例えばメラミン−ホルムアルデヒド重縮合物等をさらに、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシド(例えば、特許文献4参照)を用いること、エチレン酢酸ビニル共重合体へ、カルボジイミド化合物を適用すること(例えば、特許文献5参照)、さらにEVA系樹脂をワイヤーおよびケーブル材料などをパッケージ用に使用する場合、平均粒径5μm以下である酸化マグネシウム等を用いること(例えば、特許文献6参照)、追加のポリマー層または金属層または非金属層との接触を含む多層パッケージ構造用に、アミノケイ酸ナトリウムを含む分子ふるいなどを適用すること(例えば、特許文献7参照)、塩素化エチレン系重合体を含むゴム弾性体において、加硫工程において、ハイドロタルサイト石群を使用すること(例えば、特許文献8参照)、ハロゲン含有エラストマー、例えば含フッ素エラストマー組成物において加硫時などに発生するフッ化水素によるゴム物性低下や成形金型の鏡面板の腐蝕を防止する、金属酸化物、金属水酸化物、ハイドロタルサイト化合物などを用いること(例えば、特許文献9参照)が提案されている。
【0005】
しかしながら、上記酸捕捉剤に関して、無機化合物を用いた場合には、樹脂中への溶解性が無く、異物として樹脂中に残存するためその用途が限定される欠点があり、さらに無機化合物を構成する金属イオンが樹脂の分解を誘起することがある。
【0006】
また、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナ−5−エンなどの強塩基性アミノ化合物を用いる場合においては、酸捕捉のために、化学両論的に等当量使用する必要があるものの、この化合物が強塩基性のため、かかる操作は工業的にはほとんど不可能に近いほど困難である。
【0007】
またエポキシ化合物、アミノ置換トリアジン、線状カルボジイミド化合物等の適用においては、酸捕捉能力が十分で無く、酸の影響を排除することができない場合がある。
さらに、各種添加剤を含有する樹脂組成物に関し、添加剤の溶融加工時の分解により生成する低分子量酸性成分の捕捉剤について、具体的な提案はなされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−106247号公報
【特許文献2】特開2003−066611号公報
【特許文献3】特開2002−129179号公報
【特許文献4】特開2000−159850号公報
【特許文献5】特開2007−314373号公報
【特許文献6】特開2005−029588号公報
【特許文献7】特表2001−505951号公報
【特許文献8】特許第3207949号公報
【特許文献9】特開平6−331040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記従来技術が有していた問題点を解消し、樹脂への相溶性が高く、樹脂への悪影響が少なく、樹脂自体の分解により生成する酸成分のみならず、樹脂に添加された添加剤より生成される酸性物質の捕捉能力も有する酸捕捉剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記課題を解決するため、鋭意研究の結果、特定構造を有するカルボジイミド化合物が、樹脂中に生成した、あるいは含有される酸成分を効果的に捕捉することを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明によれば、
下記式(i)の構造式で表される、酸捕捉剤が提供される。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。)
【0012】
更に、本発明によれば、
上記に記載の酸捕捉剤を用いて、樹脂中に含有され、該樹脂以外のハロゲン酸、カルボン酸基、スルホン酸基、酸性硫酸基、スルフィン酸基、酸性亜硫酸基、酸性ホスホン酸基、酸性燐酸基及び酸性ホスフィン酸基からなる群より選択される少なくとも一種の酸性基を保有する化合物を捕捉する、安定化樹脂の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の酸捕捉剤は、樹脂との相溶性が高く、効率的に樹脂中発生あるいは、樹脂中に含まれる酸成分を捕捉することができ、加工装置腐食の懸念を解消し、溶融加工することのできる、安定化樹脂を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明における酸捕捉剤は、下記式(i)で表される化合物である。
【化2】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。)
【0015】
本発明の酸捕捉剤は上記のように環状構造を有する(以下、本発明の化合物(i)を「環状カルボジイミド化合物」と略記することがある。)環状カルボジイミド化合物は、環状構造を複数有していてもよい。
環状構造は、カルボジイミド基(−N=C=N−)を1個有しその第一窒素と第二窒素とが結合基により結合されている。一つの環状構造中には、1個のカルボジイミド基のみを有する。
【0016】
本発明の酸捕捉剤は、上記の環状構造を有することにより、従来の線状構造を有するカルボジイミド化合物に比較して、より温和な条件で、効率的に酸成分を捕捉できる利点を保有する。
環状構造中の原子数は、好ましくは8〜50、より好ましくは10〜30、さらに好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15である。
【0017】
ここで、環状構造中の原子数とは、環構造を直接構成する原子の数を意味し、例えば、8員環であれば8、50員環であれば50である。環状構造中の原子数が8より小さいと、環状カルボジイミド化合物の安定性が低下して、保管、使用が困難となる場合があるためである。また反応性の観点からは環員数の上限値に関しては特別の制限はないが、50を超える原子数の環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より環状構造中の原子数は好ましくは、10〜30、より好ましくは10〜20、特に好ましくは10〜15の範囲が選択される。
【0018】
環状カルボジイミド化合物の分子量は、好ましくは100〜1,000である。100より低いと、環状カルボジイミド化合物について構造の安定性や揮発性が問題となる場合がある。また1,000より高いと、環状カルボジイミドの製造上、希釈系での合成が必要となったり、収率が低下したりするため、コスト面で問題となる場合がある。かかる観点より、より好ましくは100〜750であり、さらに好ましくは250〜750である。
【0019】
以下、上記式(i)で表される化合物について詳細に記載する。
式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。
この結合基の価のうち2つの価は環状構造を形成するために使用される。Qが3価あるいは4価の結合基である場合、単結合、二重結合、原子、原子団を介して、ポリマーあるいは他の環状構造と結合している。
【0020】
結合基は、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基またはこれらの組み合わせであることが好ましい。結合基として、環状構造を形成するための必要炭素数を有するものが選択される。組み合わせの例としては、アルキレン基とアリーレン基が結合した、アルキレン−アリーレン基のような構造などが挙げられる。
【0021】
結合基を構成する脂肪族基、脂環族基、芳香族基は、各々ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。ヘテロ原子とは、O、N、S、Pを指す。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
本発明においてハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0022】
結合基(Q)は、下記式(i−1)、(i−2)または(i−3)で表される2〜4価の結合基であることが好ましい。
【化3】

式中、ArおよびArは各々独立に、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。
【0023】
芳香族基として、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基(2価)として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。
【0024】
これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。またこれらの芳香族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0025】
およびRは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、これらの組み合わせ、またはこれら脂肪族基、脂環族基と2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基の組み合わせであり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。
【0026】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0027】
これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。またこれらの脂肪族基はヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0028】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。シクロアルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。シクロアルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0029】
これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの脂環族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0030】
芳香族基として、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。
【0031】
これら芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。
また、これらの芳香族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0032】
およびXは各々独立に、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。
【0033】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0034】
これらの脂肪族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。またこれらの脂肪族基はヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0035】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0036】
これらの脂環族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの脂環族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0037】
芳香族基として、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。
【0038】
これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの芳香族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0039】
s、kは各々独立に、0〜10の整数、好ましくは0〜3の整数、より好ましくは0〜1の整数である。sおよびkが10を超えると、環状カルボジイミド化合物は合成上困難となり、コストが大きく上昇する場合が発生するためである。かかる観点より整数は好ましくは0〜3の範囲が選択される。なお、sまたはkが2以上であるとき、繰り返し単位としてのX、あるいはXが、他のX、あるいはXと異なっていてもよい。
【0040】
は、2〜4価の炭素数1〜20の脂肪族基、2〜4価の炭素数3〜20の脂環族基、2〜4価の炭素数5〜15の芳香族基、またはこれらの組み合わせであり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。
【0041】
脂肪族基として、炭素数1〜20のアルキレン基、炭素数1〜20のアルカントリイル基、炭素数1〜20のアルカンテトライル基などが挙げられる。アルキレン基として、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ドデシレン基、へキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、メタントリイル基、エタントリイル基、プロパントリイル基、ブタントリイル基、ペンタントリイル基、ヘキサントリイル基、ヘプタントリイル基、オクタントリイル基、ノナントリイル基、デカントリイル基、ドデカントリイル基、ヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、メタンテトライル基、エタンテトライル基、プロパンテトライル基、ブタンテトライル基、ペンタンテトライル基、ヘキサンテトライル基、ヘプタンテトライル基、オクタンテトライル基、ノナンテトライル基、デカンテトライル基、ドデカンテトライル基、ヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0042】
これら脂肪族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの脂肪族基はヘテロ原子を含んでいてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0043】
脂環族基として、炭素数3〜20のシクロアルキレン基、炭素数3〜20のシクロアルカントリイル基、炭素数3〜20のシクロアルカンテトライル基が挙げられる。シクロアルキレン基として、シクロプロピレン基、シクロブチレン基、シクロペンチレン基、シクロヘキシレン基、シクロへプチレン基、シクロオクチレン基、シクロノニレン基、シクロデシレン基、シクロドデシレン基、シクロへキサデシレン基などが挙げられる。アルカントリイル基として、シクロプロパントリイル基、シクロブタントリイル基、シクロペンタントリイル基、シクロヘキサントリイル基、シクロヘプタントリイル基、シクロオクタントリイル基、シクロノナントリイル基、シクロデカントリイル基、シクロドデカントリイル基、シクロヘキサデカントリイル基などが挙げられる。アルカンテトライル基として、シクロプロパンテトライル基、シクロブタンテトライル基、シクロペンタンテトライル基、シクロヘキサンテトライル基、シクロヘプタンテトライル基、シクロオクタンテトライル基、シクロノナンテトライル基、シクロデカンテトライル基、シクロドデカンテトライル基、シクロヘキサデカンテトライル基などが挙げられる。
【0044】
これら脂環族基は置換基を含んでいてもよく、置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリーレン基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの脂環族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
【0045】
芳香族基として、炭素数5〜15のアリーレン基、炭素数5〜15のアレーントリイル基、炭素数5〜15のアレーンテトライル基が挙げられる。アリーレン基として、フェニレン基、ナフタレンジイル基などが挙げられる。アレーントリイル基(3価)として、ベンゼントリイル基、ナフタレントリイル基などが挙げられる。アレーンテトライル基(4価)として、ベンゼンテトライル基、ナフタレンテトライル基などが挙げられる。
【0046】
これらの芳香族基は置換されていても良い。置換基として、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜15のアリール基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミド基、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基などが挙げられる。また、これらの芳香族基はヘテロ原子を含んで複素環構造を有していてもよい。ヘテロ原子として、O、N、S、Pが挙げられる。
以上のように、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXはヘテロ原子を含有していてもよい。
【0047】
また、Qが2価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXは全て2価の基である。Qが3価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが3価の基である。Qが4価の結合基であるときは、Ar、Ar、R、R、X、XおよびXの内の一つが4価の基であるか、二つが3価の基である。
【0048】
本発明の酸捕捉剤である環状カルボジイミド化合物としては、例えば、以下の化合物が例示される。
【0049】
【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】

【化23】

【0050】
本発明の酸捕捉剤は単独で適用することもできるし、2種以上の混合物として適用することもできる。
かかる剤の適用量は、酸性基1当量あたり、環状カルボジイミド化合物に含まれるカルボジイミド基が0.5〜100当量の範囲が選択される。0.5当量より過少に過ぎると、カルボジイミド適用の意義がない場合がある。また100当量より過剰に過ぎると、基質の特性が変成する場合がある。かかる観点より、上記基準において、好ましくは0.6〜75当量、より好ましくは0.65〜50当量、さらに好ましくは0.7〜30当量、とりわけ好ましくは0.7〜20当量の範囲が選択される。
【0051】
本発明の環状カルボジイミド化合物の製造法は特に限定はなく、従来公知の方法で、好適に製造される。
かかる製造方法としては、アミン体からイソシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からイソチオシアネート体を経由して製造する方法、アミン体からトリフェニルホスフィン体を経由して製造する方法、アミン体から尿素体を経由して製造する方法、アミン体からチオ尿素体を経由して製造する方法、カルボン酸体からイソシアネート体を経由して製造する方法、ラクタム体を誘導して製造する方法などが挙げられる。
【0052】
製造する化合物に応じて、適切な製法を採用すればよいが、例えば、(1)下記式(a−1)で表されるニトロフェノール類、下記式(a−2)で表されるニトロフェノール類および下記式(b)で表される化合物を反応させ、下記式(c)で表されるニトロ体を得る工程、
【0053】
【化24】

【化25】

【0054】
(2)得られたニトロ体を還元して下記式(d)で表わされるアミン体を得る工程、
【化26】

【0055】
(3)得られたアミン体とトリフェニルホスフィンジブロミドを反応させ下記式(e)で表されるトリフェニルホスフィン体を得る工程、および
【化27】

【0056】
(4)得られたトリフェニルホスフィン体を反応系中でイソシアネート化した後、直接脱炭酸させることによって製造したものは、本願発明に用いる環状カルボジイミド化合物として好適に用いることができる。
(上記式中、ArおよびArは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基またはフェニル基で置換されていてもよい芳香族基である。EおよびEは各々独立に、ハロゲン原子、トルエンスルホニルオキシ基およびメタンスルホニルオキシ基、ベンゼンスルホニルオキシ基、p−ブロモベンゼンスルホニルオキシ基からなる群から選ばれる基である。Arは、フェニル基である。Xは、下記式(i−1)から(i−3)の結合基である。)
【0057】
【化28】

(式中、nは1〜6の整数である。)
【化29】

(式中、mおよびnは各々独立に0〜3の整数である。)
【化30】

(式中、RおよびRは各々独立に、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基を表す。)
【0058】
本発明の酸捕捉剤が捕捉対象とする酸は、その由来あるいは化学種に関し特に限定無く、樹脂中で発生、あるいは樹脂中に含有される遊離の酸成分を含むが、具体的には、ハロゲン酸、カルボン酸基、スルホン酸基、酸性硫酸基、スルフィン酸基、酸性亜硫酸基、酸性ホスホン酸基、酸性燐酸基及び酸性ホスフィン酸基からなる群より選択される少なくとも一種の酸性基を保有する化合物がその対象となる。
【0059】
これら化合物のうち、特に、分子量1000以下となるような比較的分子量が小さい化合物は、樹脂中での移動能が高く、熱加工時、容易に樹脂表面に浸出して金属装置へ接触、金属装置表面を腐食する能力が高いため、溶融加工に先立ち、不活性化しておく利点は大きいが、本発明の酸捕捉剤は、このような、分子量が1000以下の化合物、さらに好適には300以下、とりわけ好適には200以下の腐食性の高い酸に対して好適に適用することができる。化合物の分子量の下限値は特に限定は無いが、例えば、一例としてフッ化水素の19が例示される。
【0060】
本発明においては、上記記載の本発明の酸捕捉剤を用いて、樹脂中に含有され、該樹脂以外のハロゲン酸、カルボン酸基、スルホン酸基、酸性硫酸基、スルフィン酸基、酸性亜硫酸基、酸性ホスホン酸基、酸性燐酸基及び酸性ホスフィン酸基からなる群より選択される少なくとも一種の酸性基を保有する化合物を捕捉する、安定化樹脂の製造方法が提供される。
【0061】
ここで、本発明において、酸捕捉剤を樹脂に適用する量比は、樹脂の種類により有効量は異なるが、樹脂100重量部あたり、0.001から10重量部の範囲である。前記基準において0.001重量部より少ないと、例えば腐食性の抑制等の効果が認められず、また10重量部より過剰に適用すると、過剰な剤が分解して、樹脂の劣化を誘起する場合がある。
【0062】
したがって、好ましくは前記基準において、0.002から5重量部、より好ましくは0.005から3重量部、とりわけ好ましくは0.01から1重量部である。
本発明の酸捕捉剤は単独で適用することもできるし、2種以上の混合物として適用することもできる。
【0063】
本発明の酸捕捉剤の腐食性抑制効果は、例えば酸捕捉剤を含有する樹脂を溶融加工時、装置のエッジ部表面に発生する腐食痕により判定されるが、加速評価として、例えば、樹脂を熱水抽出した後のpHをブランク値と比較する評価法、また上記抽出液中の酸性成分をイオンクロマトグラフにより定量する方法なども例示できる。
【0064】
本発明剤で捕捉される酸は、その由来あるいは化学種に関しては、特に限定無く、例えば、
(ア)溶融加工時の樹脂の分解成分、
(イ)樹脂添加剤の不純物、
(ウ)樹脂溶融加工時の添加剤の分解成分などが例示される。
【0065】
本発明の剤の捕捉対象である遊離酸に関し、例えばハロゲン酸は、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、ヨウ化水素が例示され、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選ばれた少なくとも一種のハロゲン元素を含有する熱可塑性樹脂を溶融加工するときに生成することがあり、かかるハロゲン化水素は、水分の存在により、より一層腐食性が高まると同時に樹脂の品質を低下させるため、本発明の剤を適用することにより、有効に捕捉する利点は大きい。
【0066】
ここで、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選ばれた少なくとも一種のハロゲン元素を含有する熱可塑性樹脂とは、ハロゲン元素が樹脂を構成する分子中に結合して存在している樹脂、あるいはハロゲン系難燃剤が樹脂中に存在する、いわゆる樹脂組成物を包含する。
【0067】
カルボキシル基を保有する遊離酸としては、具体的には例えば、蟻酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、プロピオン酸、コハク酸、ヘキサヒドロフタル酸、乳酸、グリコール酸、ミリスチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、コハク酸モノエチル、マレイン酸モノオクチル、ヘキサヒドロフタル酸モノオクチルなどの脂肪族カルボン酸及びその誘導体等、安息香酸、p−オキシ安息香酸、テレフタル酸、フタル酸、ジフェニルジカルボン酸、フタル酸モノオクチル、テレフタル酸モノデシルなどの芳香族カルボン酸及びその誘導体などが例示される。
【0068】
かかる遊離酸成分はEVA系樹脂やポリアセタール樹脂の分解、さらにはポリカーボネートの側鎖、ポリエステル樹脂その他の樹脂の自動酸化により生成することがある。
なかでも蟻酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、乳酸などの低分子量の酸は腐食性が高く装置の腐食が懸念されるが、本発明の酸捕捉剤を適用することにより、その腐食性を有効に抑制できる。
【0069】
スルホン酸基を保有する遊離酸は、例えば帯電防止剤あるいは染料.顔料などの不純物として、あるいは分解成分として含有あるいは生成することがある。かかるスルホン酸化合物は、使用添加剤の種類に依存するが、具体的には例えばメタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ブタンスルホン酸、デカンスルホン酸、ヘキサデカンスルホン酸などの脂肪族スルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、1,3−ジカルボキシベンゼンスルホン酸−5などの芳香族スルホン酸などが例示される。
【0070】
酸性硫酸基を保有する遊離酸としては、例えば、硫酸モノメチル、硫酸モノブチル、硫酸モノデシル、硫酸モノヘキサデシル、硫酸モノフェニル、硫酸モノ(オクチルフェニル)、硫酸モノ(ノニルフェニル)、硫酸モノ(p−ヘキサデシルフェニル)などが例示される。
【0071】
スルフィン酸基を保有する酸は、例えば例えば帯電防止剤、スルホン基あるいはチオエーテル基等の分解により生成することがあり、具体的には例えば、メタンスルフィン酸、エタンスルフィン酸、デカンスルフィン酸、ヘキサデカンスルフィン酸などの脂肪族スルフィン酸類、ベンゼンスルフィン酸、ドデシルベンゼンスルフィン酸、ヘキサデシルベンゼンスルフィン酸、1,3−ジカルボキシベンゼンスルフィン酸‐5などの芳香族スルフィン酸類などが例示される。
【0072】
酸性硫酸基を保有する遊離酸は、例えば、例えば帯電防止剤あるいは染料.顔料などの不純物として、あるいは分解成分として含有あるいは生成することがある。かかる酸性硫酸基を保有する化合物は使用添加剤の種類に依存するが、具体的には例えば硫酸、硫酸モノメチル、硫酸モノブチル、硫酸モノデシル、硫酸モノヘキサデシル、硫酸モノフェニル、硫酸モノ(p−オクチルフェニル)、硫酸モノ(o‐ノニルフェニル)、硫酸モノ(p−ヘキサデシルフェニル)などが、酸性亜硫酸基を保有する遊離酸としては、例えば、亜硫酸、亜硫酸モノメチル、亜硫酸モノブチル、亜硫酸モノデシル、亜硫酸モノヘキサデシル、亜硫酸モノフェニル、亜硫酸モノ(n−オクチルフェニル)、亜硫酸モノ(m−ノニルフェニル)、亜硫酸モノ(p−ヘキサデシルフェニル)などが例示される。
【0073】
酸性ホスホン酸基を保有する遊離酸としては、例えばメタンホスホン酸、エタンホスホン酸、ブタンホスホン酸、デカンホスホン酸、ヘキサデカンホスホン酸などの脂肪族ホスホン酸、ベンゼンホスホン酸、ドデシルベンゼンホスホン酸、ヘキサデシルベンゼンホスホン酸、1,3−ジカルボキシベンゼンホスホン酸‐5、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−酸性ビフェニレンジホスホナイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−酸性ビフェニレンジホスホナイト、ビフェニレンジホスホン酸などの芳香族ホスホン酸などが、酸性ホスフィン酸基を保有する遊離酸としては、例えばメタンホスフィン酸、エタンホスフィン酸、ブタンホスフィン酸、デカンホスフィン酸、ヘキサデカンホスフィン酸などの脂肪族ホスホフィン酸、ベンゼンホスフィン酸、ドデシルベンゼンホスフィン酸、ヘキサデシルベンゼンホスフィン酸、1,3−ジカルボキシベンゼンホスフィン酸‐5などの芳香族ホスフィン酸、などが例示される。
【0074】
酸性燐酸基を保有する遊離酸は、例えば、難燃剤などの燐酸エステル系添加剤の不純物、あるいは分解成分として樹脂中に含有されることがあり、具体的には例えば、燐酸、燐酸モノメチル、燐酸ジメチル、燐酸モノブチル、燐酸ジへキシル、燐酸モノデシル、燐酸ジトリデシル、燐酸モノヘキサデシル、燐酸ジオレイル、燐酸モノフェニル、燐酸ジトリル、燐酸モノ(n−オクチルフェニル)、燐酸モノ(m−ノニルフェニル)、燐酸モノ(p−ヘキサデシルフェニル)燐酸ビス(p−ヘキサデシルフェニル)、などが例示される。
【0075】
酸性亜燐酸基を保有する遊離酸としては、例えば、酸化防止剤として添加された亜燐酸エステル系化合物の不純物あるいは分解物として樹脂中に含有されることがあり、具体的には例えば、亜燐酸、亜燐酸モノメチル、亜燐酸ジメチル、亜燐酸モノブチル、亜燐酸ジブチル、亜燐酸モノデシル、亜燐酸ジデシル、亜燐酸モノヘキサデシル、亜燐酸ジヘキサデシル、亜燐酸モノフェニル、亜燐酸ジフェニル、亜燐酸モノ(n−オクチルフェニル)、亜燐酸モノ(m−ノニルフェニル)、亜燐酸モノ(p−ヘキサデシルフェニル)燐酸ビス(p−ヘキサデシルフェニル)、(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール酸性ジホスファイト、酸性ペンタエリスリトールジホスファイトなどが例示される。
【0076】
本発明における樹脂は特に限定は無いが、溶融加工される熱可塑性樹脂が溶融加工装置の腐食抑制に観点より、より好適な対象として例示される。
熱可塑性樹脂としては例えばポリエステル樹脂、その成分が脂肪族成分のみからなる脂肪族ポリエステルとしては、例えばポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸、ポリグルタル酸、ポリカプロラクトン等が、脂肪族/芳香族成分を含む共重合ポリエステルとしては、例えばポリ1,4−ブチレンテレフタレート、ポリε―カプロラクトン共重合体、ポリ1,4−ブチレンテレフタレート、ポリ1,4−ブチレンアジペートブロック共重合体等が、酸成分が芳香族酸成分のみからなる芳香族ポリエステルとしては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン(テレフタレート/イソフタレート)、ポリエチレンナフタレート、ポリ1,3−プロピレンテレフタレート、ポリ1,4−ブチレンテレフタレート、ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)テレフタレート、ポリ(シクロヘキサンジメチレン/エチレン)(テレフタレート/イソフタレート)、ポリ(シクロへキサンジメチレン/シクロヘキサンジカルボキシレート)、酸及びヒドロキシ成分がいずれも芳香族成分よりなる全芳香族ポリエステルとしてはビスフェノールA(テレフタレート/イソフタレート)、ビスフェノールA(テレフタレート/イソフタレート/カーボネート)等が例示される。
【0077】
また、ポリアミド樹脂としては、例えばナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン116、ナイロン11、ナイロン12、ポリテレフタルアミド(ナイロン11T(H))およびこれらの共重合ポリアミド、混合ポリアミド等が例示される。
【0078】
さらに縮合系樹脂として、例えばポリカーボネート樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアミド‐イミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル系アルキッド樹脂、ポリオレフィン系樹脂として、例えばポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂等が例示される。
【0079】
ポリビニル系樹脂として、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ビニルエステル系樹脂、例えば酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体等が例示される。
【0080】
またアクリル系樹脂として、例えばポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸及びまたはポリメタクリル中、メタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルより選ばれる1種以上の単量体の共重合体、さらにメタクリル酸メチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸tert−ブチルシクロヘキシル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルより選ばれる1種以上の単量体の重合体などが例示される。
【0081】
さらに、ハロゲン含有樹脂として、例えば、塩素化ポリエチレン樹脂、塩素化ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等が例示される。
【0082】
エラストマーとして、例えばイソブチレン/イソプレンゴム、スチレン/ブタジエンゴム、エチレン/プロピレンゴム、アクリル系エラストマー、シリコンゴム、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、MBSゴム、MASゴム等、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS樹脂)、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、アクリロニトリル/PPDM/スチレン共重合体(AES樹脂)、塩素化ポリエチレン/アクリロニトリル/スチレン共重合体(ACS樹脂)、アクリロニトリル/アクリレート/スチレン共重合体(AAS樹脂)、メチルメタクリレート/スチレン共重合体(MS樹脂)等が例示される。
【0083】
天然系樹脂として、例えばロジン樹脂、ギルソナイト樹脂、セラック樹脂、酢酸セルロース樹脂、メチルセルロース樹脂、エチルセルロース樹脂、熱可塑性澱粉等が例示される。
その他、ポリブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、芳香族および脂肪族ポリケトン樹脂、ポリエーテルエ−テルケトン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、フェノキシ樹脂、ポリフェニレンオキシド樹脂、ポリ4−メチルペンテン−1などが例示できる。
【0084】
さらに本発明の酸捕捉剤は、フォトレジスト樹脂に対しても好適に適用可能である。ここでフォトレジスト樹脂としては、光を照射することによって酸を発生する物質(以下、光酸発生剤と略記する。)から発生した酸によりアルカリ不溶性からアルカリ可溶性に変化し、アルカリ現像液で現像するとポジ型のレジストパターンを形成するポジ型フォトレジスト樹脂や、光酸発生剤から発生した酸により架橋反応し、アルカリ可溶性からアルカリ不溶性に変化し、アルカリ現像液で現像するとネガ型のレジストパターンを形成するネガ型フォトレジスト樹脂等が例示できる。
【0085】
本発明の酸捕捉剤は、樹脂の重合から溶融加工までの段階において、添加することができる。
本発明の酸捕捉剤を前記樹脂に配合する方法は特に限定なく、従来公知の方法により、溶液、融液あるいは適用する高分子のマスターバッチとして、従来公知の混練装置を使用して添加することができる。
【0086】
混練に際しては、溶液状態での混練法あるいは溶融状態での混練法が、均一混練性の観点より好ましい。混練装置としては、とくに限定なく、従来公知の縦型の混練槽あるいは一軸または多軸の横型混練装置、例えば一軸あるいは多軸のルーダー、ニーダーなどが例示される。
前記高分子との混練時間は特に限定は無く、本発明の酸捕捉剤が樹脂中に均一に分散する条件が好ましい。混練時間は反応装置、混練温度にもよるが、0.5分から2時間、好ましくは0.5分から30分、より好ましくは1分から10分である。
【0087】
前述の溶媒としては、本発明の樹脂及び酸捕捉剤に対し、不活性であることが必要であり、両者に親和性を有し、両者を少なくとも部分的に溶解、あるいは少なくとも両者に部分的に溶解する溶媒が好ましい。
かかる溶媒として、炭化水素系溶媒としては、ヘキサン、シクロへキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘプタン、デカンなどケトン系溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、シクロへヘキサノン、イソホロンなど、エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸メチル、コハク酸エチル、炭酸メチル、安息香酸エチル、ジエチレングリコールジアセテートなど、エーテル系溶媒としては、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、ジフェニルエーテルなどが例示される。
これらの溶媒は単一であるいは所望により混合溶媒として使用することができる。
【0088】
本発明において、かかる溶媒は、樹脂100重量部あたり1から1000重量部の範囲で適用される。
1重量部より少ないと、溶媒適用の意義がない。また、溶媒使用量の上限値は、特にないが、操作性、操作効率の観点より1000重量部程度である。
酸捕捉反応は無触媒で十分速やかに進行するが、所望により反応を促進する触媒を使用することもできる。触媒は、少量の添加で反応を促進する効果のある化合物が好ましい。
【0089】
このような化合物の例としてはアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、3級アミン化合物、イミダゾール化合物、第4級アンモニウム塩、ホスフィン化合物、ホスホニウム塩が挙げられる。
反応触媒の添加量は、特に限定されるものではないが、酸性基保有化合物と環状カルボジイミドの合計を100重量部としたときに、0.001〜1重量部が好ましく、また0.01〜0.1重量部がより好ましく、さらには0.02〜0.1重量部が最も好ましい。
【0090】
本発明の酸捕捉剤は、酸を有効に捕捉することができるが、本発明の主旨に反しない範囲において、所望により従来公知の酸捕捉剤あるいは受酸剤を併用することができる。
かかる従来公知の酸捕捉剤あるいは受酸剤としては、
例えば下記(ii‐1)から(ii‐5)の構造を有する含窒素塩基性化合物を用いることができる。
【0091】
【化31】

(式中、R250、R251およびR252は、同一または異なり、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアミノアルキル基、炭素数1〜6のヒドロキシアルキル基または炭素数6〜20の置換もしくは非置換のアリール基であり、ここでR251とR252は互いに結合して環を形成してもよい)
【0092】
【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

(式中、R253、R254、R255およびR256は、同一または異なり、炭素数1〜6のアルキル基を示す。)
【0093】
また、窒素含有環状化合物、あるいは一分子中に異なる化学的環境の窒素原子を2個以上有する含窒素塩基性化合物を用いることもできる。
窒素含有環状化合物としては、下記一般式(iii)で示される化合物を挙げることができる。
【0094】
【化36】

【0095】
式中、Y、Wは、各々独立に、ヘテロ原子を含んでいてもよく、置換してもよい直鎖、分岐、環状アルキレン基を表す。ここで、ヘテロ原子としては、窒素原子、硫黄原子、酸素原子が挙げられる。アルキレン基としては、炭素数2〜10個が好ましく、より好ましくは2〜5個のものである。アルキレン基の置換基としては、炭素数1〜6個のアルキル基、アリール基、アルケニル基の他、ハロゲン原子、ハロゲン置換アルキル基が挙げられる。
【0096】
更に、上記一般式(iii)で示される化合物の具体例としては、下記(iii−1)〜(iii‐8)の構造を有する含窒素環状化合物を挙げることができる。
【0097】
【化37】

【化38】

【化39】

【化40】

【化41】

【化42】

【化43】

【化44】

【0098】
上記の中でも、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナ−5−エン(上記式(iii−1))、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン(上記式(iii−2))が特に好ましい。
【0099】
また、一分子中に異なる化学的環境の窒素原子を2個以上有する塩基性含窒素化合物としては、特に好ましくは、置換もしくは未置換のアミノ基と窒素原子を含む環構造の両方を含む化合物もしくはアルキルアミノ基を有する化合物である。
【0100】
好ましい具体例としては、置換もしくは未置換のグアニジン、置換もしくは未置換のアミノピリジン、置換もしくは未置換のアミノアルキルピリジン、置換もしくは未置換のアミノピロリジン、置換もしくは未置換のインダゾール、置換もしくは未置換のピラゾール、置換もしくは未置換のピラジン、置換もしくは未置換のピリミジン、置換もしくは未置換のプリン、置換もしくは未置換のイミダゾリン、置換もしくは未置換のピラゾリン、置換もしくは未置換のピペラジン、置換もしくは未置換のアミノモルフォリン、置換もしくは未置換のアミノアルキルモルフォリン等が挙げられる。好ましい置換基は、アミノ基、アミノアルキル基、アルキルアミノ基、アミノアリール基、アリールアミノ基、アルキル基、アルコキシ基、アシル基、アシロキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ニトロ基、水酸基、シアノ基である。
【0101】
特に好ましい化合物として、グアニジン、1,1−ジメチルグアニジン、1,1,3,3,−テトラメチルグアニジン、2−アミノピリジン、3−アミノピリジン、4−アミノピリジン、2−ジメチルアミノピリジン、4−ジメチルアミノピリジン、2−ジエチルアミノピリジン、2−(アミノメチル)ピリジン、2−アミノ−3−メチルピリジン、2−アミノ−4−メチルピリジン、2−アミノ−5−メチルピリジン、2−アミノ−6−メチルピリジン、3−アミノエチルピリジン、4−アミノエチルピリジン、3−アミノピロリジン、ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペリジン、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ピペリジノピペリジン、2−イミノピペリジン、1−(2−アミノエチル)ピロリジン、ピラゾール、3−アミノ−5−メチルピラゾール、5−アミノ−3−メチル−1−p−トリルピラゾール、ピラジン、2−(アミノメチル)−5−メチルピラジン、ピリミジン、2,4−ジアミノピリミジン、4,6−ジヒドロキシピリミジン、2−ピラゾリン、3−ピラゾリン、N−アミノモルフォリン、N−(2−アミノエチル)モルフォリン、トリメチルイミダゾール、トリフェニルイミダゾール、メチルジフェニルイミダゾール等が挙げられる。
【0102】
また、米国特許第4,137,201号明細書に記載されているエポキシ化合物、アミノ置換トリアジンやアミノ置換トリアジンとホルムアルデヒドとの重縮合物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、無機酸塩、カルボン酸塩又はアルコキシド、金属酸化物、金属水酸化物、例えば酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化鉛、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等、Mg(OH)CO・nHO(ただし、MはAl、CrまたはFeを、aは1〜10の整数を、bは1〜5の整数を、cは10〜20の整数を、またnは0〜8の整数をそれぞれ表わす。)で示されるハイドロタルサイト石群等が挙げられる。
【0103】
前記エポキシ化合物としては例えば、種々のポリグリコールのジグリシジルエーテル、特にポリグリコール1モル当たりに約8〜40モルのエチレンオキシド等の縮合によって誘導されるポリグリコール、グリセロールのジグリシジルエーテル等、エポキシ化エーテル縮合生成物、ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(即ち、4,4’−ジヒドロキシジフェニルジメチルメタン)、エポキシ化不飽和脂肪酸エステル(特に、炭素原子数2〜22個の脂肪酸の炭素原子数2〜4個程度の炭素原子のアルキルのエステル(例えば、ブチルエポキシステアレート)等)、及び種々のエポキシ化長鎖脂肪酸トリグリセリド等(例えば、エポキシ化大豆油等のエポキシ化植物油及び他の不飽和天然油(これらは時としてエポキシ化天然グリセリドまたは不飽和脂肪酸と称され、これらの脂肪酸は一般に12〜22個の炭素原子を含有している))が含まれる。特に好ましいのは、市販のエポキシ基含有エポキシド樹脂化合物「EPON」815c、及び下記一般式(iv)で表される他のエポキシ化エーテルオリゴマー縮合生成物である。
【0104】
【化45】

【0105】
これらの剤は樹脂100重量部当り0.001から5重量部、好ましくは0.005から3重量部、より好ましくは0.007から1重量部添加される。
これらの剤は単独で使用することもできるが、複数の種類を組み合せて使用することもできる。
以下本発明を実施例により、説明するが、本発明の論旨を超えない限り、実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0106】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何等限定を受けるものではない。
なお、本実施例で使用した各種剤は以下の通りである。
(樹脂)
ポリアセタール樹脂;旭化成ケミカルズ(株)製、:「テナック」HC450、
ポリカーボネート樹脂;帝人化成(株)製;「パンライト」L−1225WS
ポリブチレンテレフタレート;ウィンテックポリマー(株)製、IV=0.92、商品名C7000Z
ABS樹脂;日本A&L(株)製「クララスチック」SXH−330、
グラフト共重合体;三菱レイヨン(株)製「メタブレン」C−223A、
含フッ素ドリップ防止剤;ダイキン工業(株)製「ポリフロン」MPA FA−500C;
(難燃剤)
燐酸エステル系難燃剤;大八化学工業(株)製:CR−741(ビスフェノールAビス(ジフェニルホスフェート))、
ブロム系難燃剤;(1)DIC(株)製ECX−30、(2)帝人化成(株)製、「ファイヤガード」7500、
難燃助剤(三酸化アンチモン);日本精鉱(株)製、商品名「PATOX」−M
帯電防止剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとポリオキシエチレン誘導体との混合物);竹本油脂(株)製、商品名TPL−456、
脂肪酸エステル系離型剤;理研ビタミン(株)製「リケマール」SL−900、
フェノール系安定剤;Ciba Specialty Chemicals K.K.製「IRGANOX」1076、
リン酸金属塩(リン酸二水素ナトリウム二水和物):和光純薬(株)製、試薬特級
(酸捕捉剤)
酸捕捉剤として、以下の環状カルボジイミド化合物を製造、使用した。
【0107】
[製造例1]環状カルボジイミド(CC1):
o−ニトロフェノール(0.11mol)と1,2−ジブロモエタン(0.05mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)200mlを攪拌装置および加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物A(ニトロ体)を得た。
次に中間生成物A(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(1g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)200mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了する。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物B(アミン体)が得られた。
【0108】
次に攪拌装置および加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌した。そこに中間生成物B(0.05mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。
滴下終了後、70℃で5時間反応させた。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物C(トリフェニルホスフィン体)が得られた。
【0109】
次に、攪拌装置および滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌した。そこに、25℃で中間生成物C(0.05mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下した。滴下後、12時間反応させた。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を精製することで、下記式に示す構造を有する環状カルボジイミド化合物(CC1:MW=252)を得た。CC1の構造はNMR,IRにより確認した。
【0110】
【化46】

【0111】
[製造例2]環状カルボジイミド化合物(CC2)
o−ニトロフェノール(0.11mol)とペンタエリトリチルテトラブロミド(0.025mol)、炭酸カリウム(0.33mol)、N,N−ジメチルホルムアミド200mlを攪拌装置および加熱装置を設置した反応装置にN雰囲気下仕込み、130℃で12時間反応後、DMFを減圧により除去し、得られた固形物をジクロロメタン200mlに溶かし、水100mlで3回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、ジクロロメタンを減圧により除去し、中間生成物D(ニトロ体)を得た。
【0112】
次に中間生成物D(0.1mol)と5%パラジウムカーボン(Pd/C)(2g)、エタノール/ジクロロメタン(70/30)400mlを、攪拌装置を設置した反応装置に仕込み、水素置換を5回行い、25℃で水素を常に供給した状態で反応させ、水素の減少がなくなったら反応を終了した。Pd/Cを回収し、混合溶媒を除去すると中間生成物E(アミン体)が得られた。
【0113】
次に攪拌装置および加熱装置、滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、トリフェニルホスフィンジブロミド(0.11mol)と1,2−ジクロロエタン150mlを仕込み攪拌した。そこに中間生成物E(0.025mol)とトリエチルアミン(0.25mol)を1,2−ジクロロエタン50mlに溶かした溶液を25℃で徐々に滴下した。滴下終了後、70℃で5時間反応させる。その後、反応溶液をろ過し、ろ液を水100mlで5回分液を行った。有機層を硫酸ナトリウム5gで脱水し、1,2−ジクロロエタンを減圧により除去し、中間生成物F(トリフェニルホスフィン体)が得た。
【0114】
次に、攪拌装置および滴下ロートを設置した反応装置に、N雰囲気下、ジ−tert−ブチルジカーボネート(0.11mol)とN,N−ジメチル−4−アミノピリジン(0.055mol)、ジクロロメタン150mlを仕込み攪拌させた。そこに、25℃で中間生成物F(0.025mol)を溶かしたジクロロメタン100mlをゆっくりと滴下させた。滴下後、12時間反応させる。その後、ジクロロメタンを除去し得られた固形物を、精製することで、下記構造を有する環状カルボジイミド化合物(CC2)を得た。CC2の構造はNMR、IRにより確認した。
【0115】
【化47】

【0116】
その他比較対象の酸捕捉剤として、線状カルボジイミドである、日清紡ケミカル(株)製、「カルボジライト」LA−1、ラインケミージャパン製、「スタバクゾール」Iを用いた。
【0117】
[実施例1]
ポリアセタール樹脂100重量部に対し、酸捕捉剤(CC1)0.1重量部をブレンダーで混合、二軸押出機で、シリンダー温度210℃、ベント圧3kPa、滞留時間3分で溶融混練した後、ダイより押し出しペレット化した。
鏡面研磨したアルミ製テストピース上で、前記ペレットを溶融し、200℃、24時間、保持したところ、蟻酸による腐食によるテストピースの鏡面色調の変化は認められず、酸捕捉剤が有効に働き、安定な樹脂が得られていることを確認した。
【0118】
[比較例1〜3]
実施例1において、酸捕捉剤をステアリン酸カルシウム(比較例1)または線状ポリカルボジイミド(比較例2:日清紡ケミカル(株)製「カルボジライト」LA−1)(比較例3:ラインケミージャパン(株)製「スタバクゾール」I):0.1重量部に変更すること以外は同様にして、実施例1と同様の腐食テストを行ったところ、比較例1、2及び3では、いずれもテストピースエッジ部に蟻酸による腐食による曇りが発生していた。
【0119】
[実施例2]
ポリカーボネート:82重量部と含フッ素ドリップ防止剤:0.45重量部、グラフト共重合体:4重量部及びフェノール系熱安定剤:0.1重量部及び環状カルボジイミド化合物(CC2)0.2重量部をV型ブレンダーで混合し第一供給口より、ABS樹脂:18重量部はサイドフィーダー(第二供給口)より、燐酸エステル系難燃剤は80℃に加熱した状態で液注装置を用いてシリンダー途中の第3供給口(第2供給口とベント排気口との間に位置)から、各々所定の割合になるよう押出機に供給し、径30mmφのベント式二軸押出機((株)日本製鋼所TEX30α−38.5BW−3V)を使用し、ベントの真空度3kPaで溶融混練したペレットを得た。なお、押出温度については、第1供給口からダイス部分まで260℃とした。
得られたペレットは金属アルミニウム製テストピース上、260℃、24hr保持したところ、テストピースの光沢変化は認められなかった。酸捕捉剤が有効に働き、安定な樹脂が得られていることを確認した。
【0120】
[比較例4]
実施例2の操作において、環状カルボジイミド化合物に替え、等しい重量の1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデカ−7−エン、1,5−ジアザビシクロ〔4.3.0〕ノナ−5−エンを使用し、ペレットを作成した。
テストピース上、腐食テストを行ったところ、樹脂が黒褐色に変色、分解して、テストピース表面の光沢が低下した。
【0121】
[実施例3]
ポリブチレンテレフタレート樹脂:74.4重量部、ブロム系難燃剤(DIC(株)製ECX−30):15重量部、ブロム系難燃剤(帝人化成(株)製、「ファイヤガード」7500):4重量部、難燃助剤(日本精鉱(株)製、「PATOX」−M):4重量部、フェノール系安定剤:0.2重量部、及び酸捕捉剤としての環状カルボジイミド化合物(CC2):1重量部をブレンダーで混合、実施例2の装置を使用して、シリンダー温度、260℃で溶融混練した後、ダイより押し出し、ペレット化した。前記ペレットをアルミニウム製テストピース上で溶解、260℃、24時間保持したところ、テストピースの光沢変化は認められなかった。酸捕捉剤が有効に働き、安定な樹脂が得られていることを確認した。
【0122】
[比較例5]
実施例3において、酸捕捉剤を使用しなかったこと以外は同様の操作を行った。テストピースの腐食性評価を行ったところ表面光沢が大きく低下し、臭化水素によるものと考えられる腐食が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本発明の酸捕捉剤によれば、樹脂中含有される低分子量酸性成分を効率的に捕捉することができ、前記樹脂を装置の腐食性の懸念を抑制して、溶融加工することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(i)の構造式で表される、酸捕捉剤。
【化1】

(式中、Qは、脂肪族基、脂環族基、芳香族基またはこれらの組み合わせである2〜4価の結合基であり、ヘテロ原子、置換基を含んでいてもよい。)
【請求項2】
捕捉する酸が、ハロゲン酸、カルボン酸基、スルホン酸基、酸性硫酸基、スルフィン酸基、酸性亜硫酸基、酸性ホスホン酸基、酸性燐酸基及び酸性ホスフィン酸基からなる群より選択される少なくとも一種の酸性基を保有する化合物である、請求項1に記載の酸捕捉剤。
【請求項3】
化合物が、分子量1000以下である、請求項2に記載の酸捕捉剤。
【請求項4】
請求項1に記載の酸捕捉剤を用いて、樹脂中に含有され、該樹脂以外のハロゲン酸、カルボン酸基、スルホン酸基、酸性硫酸基、スルフィン酸基、酸性亜硫酸基、酸性ホスホン酸基、酸性燐酸基及び酸性ホスフィン酸基からなる群より選択される少なくとも一種の酸性基を保有する遊離酸を捕捉する、安定化樹脂の製造方法。
【請求項5】
樹脂が熱可塑性樹脂である、請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂がフッ素、塩素、臭素及びヨウ素からなる群から選ばれた少なくとも一種のハロゲン元素を含有する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
熱可塑性樹脂が、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリアミド、ポリアミド‐イミド、ポリイミド、ポリウレタン系樹脂、グラフト共重合体、スチレン系樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びビニルエステル樹脂の群より選択される少なくとも一種の樹脂を含む、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
熱可塑性樹脂が亜燐酸系化合物、燐酸系化合物、ホスフィン酸系化合物、ホスホン酸系化合物、スルホン酸系化合物より選択される少なくとも一種の化合物を含有する、請求項5に記載の製造方法。
【請求項9】
樹脂がフォトレジスト樹脂である請求項4に記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−178837(P2011−178837A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−42306(P2010−42306)
【出願日】平成22年2月26日(2010.2.26)
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】