説明

酸素を含む環を複数含むテトラヒドロピラン誘導体類、およびそれの調製方法

【課題】テトラヒドロピラン化合物類の調製方法。
【解決手段】本発明は、少なくとも1個の更なる酸素を含む環を含むテトラヒドロピラン誘導体類の調製方法に関する。特に、2個のテトラヒドロピラン環を含むか、少なくとも1個のテトラヒドロピラン環および少なくとも1個のジオキサン環を含む化合物を調製する。ここでは、アルデヒドとの縮合および/または閉環反応が使用される。本調製方法により、少なくとも2個のO−複素環を含む新規のテトラヒドロピラン化合物を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1個の更なる酸素を含む環を含むテトラヒドロピラン誘導体類の調製方法に関する。特に、2個のテトラヒドロピラン環を含むか、少なくとも1個のテトラヒドロピラン環および少なくとも1個のジオキサン環を含む化合物を調製する。ここでは、アルデヒドとの縮合および/または閉環反応が使用される。本調製方法により、少なくとも2個のO−複素環を含む新規のテトラヒドロピラン化合物を生成する。
【背景技術】
【0002】
分子の中心的構成要素としてテトラヒドロピラン環を有する化合物類は、例えば、天然および合成芳香物質の成分として、薬剤またはメソゲン性または液晶化合物中で、またはこれらの物質を合成するための前駆体として、有機化学において重要な役割を演じている。
【0003】
液晶物質は、しばしば、全体として棒状の構造の1,4−置換シクロヘキサン環を有する。これらのシクロヘキサン環を2,5−置換テトラヒドロピラン単位により任意の所望の方向で置き換える場合、電気陰性な酸素原子の方向に依存して、分子の全体としての物理的特性を良好に改良できる。特に、正(Δε>0)および負(Δε<0)の誘電化合物の両者において、誘電率の異方性(Δε)の増加を達成できる。
【0004】
Δεが正の値の例は、EP1482019A1(特許文献1)に記載されており、同じくして、EP0967261A1(特許文献2)に記載されるような化合物において、負のΔεの値が増加することが見出されている。同様に、それぞれ反対方向のテトラヒドロピラン単位を介してΔεの絶対値が特異的に減少すると考えられる。
【0005】
正のΔεの増加は、例えばIPS(In Plane Switching)型の液晶ディスプレイ中での使用にとって有利であり、負のΔεの増加は、VA(Vertical Alignment)型の液晶ディスプレイ中で有利である。
【0006】
DE3306960A1(特許文献3)、DE10353658A1(特許文献4)、DE10353656A1(特許文献5)、DE10359469A1(特許文献6)、DE10318420A1(特許文献7)およびEP1482021A1(特許文献8)および上記文献には、2,5−置換テトラヒドロピラン環が液晶分子構造の構成要素として開示されている。構造的に興味深いものの、テトラヒドロピラン環のような複素環構造は非対称であると言う難問を呈する。よって、これらの化合物の有益性の全てが十分には知られておらず、現在までのところ、構造的な多様性の可能性は尽きていない。
【0007】
特に、テトラヒドロピラン環を更なるジオキサン環と組み合わせることは、これまでのところ、それのメソゲン的特性に関する文献DE102004025808A1(特許文献9)で述べられたのみである。2個以上のジオキサンおよびテトラヒドロピラン環を含む化合物は、液晶としては知られていない。少なくとも2個のO−複素環(即ち、ジオキサンまたはテトラヒドロピラン)を含む既知の液晶またはメソゲン性物質は、現在までに、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−CH=CH−、−CF=CF−、−CHCHCFO−または−CFOCHCH−のようなフッ素化された基よりなる如何なる鎖状の連結要素(下ではZ〜Zと呼ぶ)も含んでいない。DE102004025808A1(特許文献9)においては、ピラン環およびジオキサン環は全て互いに直接連結されている。
【特許文献1】EP1482019A1
【特許文献2】EP0967261A1
【特許文献3】DE3306960A1
【特許文献4】DE10353658A1
【特許文献5】DE10353656A1
【特許文献6】DE10359469A1
【特許文献7】DE10318420A1
【特許文献8】EP1482021A1
【特許文献9】DE102004025808A1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、テトラヒドロピラン環および更なるテトラヒドロピラン環またはジオキサン環を含み好ましい物理的および化学的特性を有する既知のメソゲン性または液晶物質を合成する入手方法、およびそれらを液晶混合物中で使用するために、この構造型の新規な液晶物質を調製することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は、本発明に従い、一般式Iの化合物およびそれを調製する方法により達成される。
【0010】
【化1】


ただし、式I中、
【0011】
【化2】

a、b、c、d、e、fは、互いに独立に、0または1を表し、ただし、a+b+c+d+e+fは、1、2、3、4、5または6に等しく、およびc+dは0に等しくなく、
、A、A、A、A、Aは、互いに独立に、同一または異なって、回転されたものまたは鏡像のものでもよく、以下を表し、
【0012】
【化3】


ただし、A、A、A、A、A、Aからの少なくとも1つの環は、CまたはBを表すことを条件とし、
ただし、
【0013】
【化4】

、YおよびYは、互いに独立に、水素、ハロゲン、CN、C1〜6−アルカニル、C2〜6−アルケニル、C2〜6−アルキニル、−OC1〜6−アルカニル、−OC2〜6−アルケニルまたは−OC2〜6−アルキニルを表し、ただし、脂肪族基は無置換であるか、ハロゲンにより1置換または多置換されており、
、Zは、単結合、−CH=CH−または−CHCH−を表し、
、Z、Z、Zは、単結合、1〜6個の炭素原子を有し無置換かFおよび/またはClで1置換または多置換されているアルキレン架橋、または−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−CH=CF−、−CHO−、−OCH−、−CO−O−、−O−CO−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−または−CFOCHCH−を表し、
n1は、0、1、2、3または4であり、
n2およびn3は、互いに独立に、0、1、2または3であり、
n4は、0、1または2であり、
は、−CH−、−CF−または−O−を表し、
は、H、1〜15個のC原子を有するアルキル基で、該基は無置換であるか、−CNにより1置換されているか、ハロゲンにより1置換または多置換されており、ただし加えて、これらの基中の1個以上のCH基は、鎖中のヘテロ原子が互いに直接結合しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
は、H、ハロゲン、CN、NCS、SF、CF、OCF、NH、1〜15個のC原子を有するアルキル基で、該基は無置換であるか、−CNにより1置換されているか、ハロゲンにより1置換または多置換されており、ただし加えて、これらの基中の1個以上のCH基は、鎖中のヘテロ原子が互いに直接結合しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の主な特徴は、本発明の式Iの化合物を調製するための単純な方法を含む。本発明の方法はスキーム1にまとめられており、下に詳細に記載される。ここで、MESおよびMES’はメソゲン性成分を表しており、例えば、式MES=R−(A−Z−(A−Z−(A−Z−またはMES’=R−(A−Z−(A−Z−(A−Z−の部分構造で再現され、Z1〜6、A1〜6、a〜f、RおよびRは式Iで定義される通りである。同様に、MESおよびMES’は完了された構造を与える少ない反応工程中で誘導できる成分を表すこともでき、よって所望の最終化合物の合成上での前駆体に対応する。例えば、MESは、1,3−ジキサン環を構築するための前駆体として1,3−ジオール基を含むことができる。部分構造MESおよびMES’の少なくとも一方は、更なるO−複素環(1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル)を含み、全体として少なくとも1つのピラン環が分子中に存在することを意味する。スキーム1中の反応は、出発材料より式Iの生成物を直接または中間体を介して導く。普通、閉環メタセシスに続き、例えば、ジヒドロピラン環の形成において形成する二重結合を触媒的に水素化する。
【0015】
【化5】


式Iの化合物を調製するための本発明の方法は、以下で特徴付けられる。
【0016】
a)ジオールおよびアルデヒドを互いに縮合して下記ジオキサン化合物を得るか、
【0017】
【化6】

【0018】
【化7】

または
b)ジエン化合物をオレフィンメタセシスで環化して下記ピラン類を得て、および引き続き水素化して式Iの化合物を得るか、
【0019】
【化8】

【0020】
【化9】

または
c)エニンエーテルを該エニンのオレフィン閉環メタセシスにより環化して下記ピラン化合物類を得て、および引き続き水素化により式Iの化合物類に転化するか、
【0021】
【化10】

【0022】
【化11】

または
d)2−置換3−ブテニルアルコール(ホモアリルアルコール)および下式のアルデヒドを反応させて下式のピラン誘導体類を得て、およびそして(還元的)脱離および/または水素化による1つ以上の工程を経て式Iの化合物に転化するか、
【0023】
【化12】

【0024】
【化13】

または
e)2−置換3−ブテニルアルコール(ホモアリルアルコール)および少なくとも最初に水酸基が保護されている下式の2−ホルミル−1,3−ジオールを反応させて下式のピラン中間体の1つを得て、
【0025】
【化14】

【0026】
【化15】

この中間体より、還元的脱離または還元、ジオールの脱保護、およびアルデヒドOHC−MES’と反応により化合物:
【0027】
【化16】

を得る。
ただし、式中
は、塩素、臭素またはヨウ素を表し、
およびRは、アルコールのための保護基であり、および
MES、MES’は、メソゲン性、特にカラミティックメソゲン性または棒形状の基を表す。
【0028】
本発明の変法a)〜e)に共通の特性は、複数のO−複素環を含むテトラヒドロピラン化合物の単純および可変的で置換可能な入手方法の途を初めて開くものである。
【0029】
式Iの化合物を調製するための本発明の方法は、特に、以下を特徴とする。
【0030】
a)式IIのジオールおよび式IIIのアルデヒドを互いに縮合して式Iaのジオキサン化合物を得るか、
【0031】
【化17】

【0032】
【化18】

または
b)式IVの化合物をオレフィンメタセシスで環化して式Vの化合物を得て、引き続き水素化して式Iの化合物を得るか、
【0033】
【化19】

【0034】
【化20】

または
c)式Qaのエニンエーテルを該エニンのオレフィン閉環メタセシスにより環化して式Qbの化合物を得て、引き続き水素化により式Iの化合物に転化するか、
【0035】
【化21】

【0036】
【化22】

または
d)式VIの2−置換3−ブテニルアルコール(ホモアリルアルコール)および式VIIのアルデヒドを反応させて式VIIIまたはIXのピラン誘導体を得て、そして(還元的)脱離および/または水素化を含む1つ以上の工程を経て式Iの化合物に転化するか、
【0037】
【化23】

【0038】
【化24】

または
e)式VIの2−置換3−ブテニルアルコール(ホモアリルアルコール)および式Xのアルデヒドを反応させて式XIまたはXIIの中間体を得て、そして、式Ieの化合物を中間体XIまたはXIIより、還元的脱離または還元し、ジオールを脱保護し、および式OHC−[Z−A−[Z−A−Rのアルデヒドと反応させて得る。
【0039】
【化25】

【0040】
【化26】

【0041】
【化27】

ただし、式中、
は、塩素、臭素またはヨウ素を表し、
およびRは、アルコールのための保護基であり、および
、R、B、A〜A、a〜fおよびZ〜Zは、式Iで示される意味を有する。
【0042】
工程の項目a)の好ましい実施形態において、式IIIのアルデヒド化合物中のBは下式の群を表す。
【0043】
【化28】

酸素含有環およびO−複素環との用語は、特にピランおよびジオキサン環、特には2,5−置換ピラン誘導体(B)および2,5−置換1,3−ジオキサン誘導体(C)を表す。飽和している変体、即ちテトラヒドロピラン類および1,3−ジオキサン類、および1不飽和ジヒドロピラン類が好ましい。複素環は、好ましくは、無置換であるか、2,5−位で離れているか、1〜2個のハロゲン置換を有している。
【0044】
本発明の方法から得られる式Iの化合物は、少なくとも1つのピラン環を含む。加えて、式Iの化合物は、定義された環の位置A〜A中に少なくとも1つの更なるO−複素環を含む。変法a)の方法は、互いに前もって指定されている方向のピラン環に加えジオキサンを含む化合物を生じる。他の変法b)〜e)によれば、更なる鎖要素ZおよびAもO−複素環の間に位置してよい。好ましくは、結合、エチレン架橋、ビニレン架橋、シクロヘキサン−1,4−ジイル環、1,3−シクロブタン−1,3−ジイル環またはスピロ[3.3]ヘプタン−2,6−ジイル環が、2つのO−複素環の間に位置している。結合またはエチレン架橋、非常に特に好ましくは単結合が、特に好ましくは環の間に位置している。
【0045】
出発材料の調製を以下に記載する。
【0046】
本発明の調製方法の第1の実施形態において、スキーム2に示されるように、式Iの化合物は、アルデヒド基と2位で置換された1,3−プロパンジオール化合物との縮合反応を経て調製される。ここで、アルデヒド官能基はテトラヒドロピラン環Bに、直接または連結要素Zを介して連結されている。同時に、テトラヒドロピラン環中の酸素原子の位置を、適当なアルデヒド化合物の選択を通じて変えることができる。
【0047】
【化29】

スキーム2の好ましい実施形態において、式Iaのジオキサンジオキサン化合物は式IIのジオールおよび式IIIのアルデヒドよりトルエン中で酸触媒により形成される。添加される酸は、好ましくはスルホン酸、特に好ましくはp−トルエンスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸である。好ましい方法において、形成される水は反応混合物より共沸蒸留によって示される反応条件下で除去される。同様に、ジオキサンを形成する好ましい方法は、ルイス酸を触媒とするアセタールを形成する変法である。ルテニウムハロゲン化物またはインジウムハロゲン化物、特にRuClおよびInClの触媒量の酸による特に穏和な方法も特に好ましい(文献B.C.Januら、Adv.Synth.Catal.(2004)、346、446〜50;J.−Y.Qiら、Tetr.Lett.(2004)、45、7719〜21;S.K.De、R.A.Gibbs、Tetr.Lett.(2004)、45、8141〜4参照)。穏和な反応条件は、特にエーテル型の成分を有する化合物および酸に敏感な基に特に適する。
【0048】
本発明の調製方法の第2の実施形態において、式Iの化合物はジエン化合物上の閉環メタセシスにより得られ、スキーム3中で説明されるように環Bとして新たなピラン環が形成される。ジエンの適当な選択を通して、環中の酸素原子を種々の位置で有するピラン環を一般に形成できる。閉環後に形成される不飽和ジヒドロピランは、例えば触媒的水素化により飽和テトラヒドロピランに転化される。水素化は、文献より既知の方法により適当な均一または不均一金属触媒上、特に遷移金属触媒上で達成される。閉環メタセシスのための出発材料として必要なジエンは、好ましくはスキーム3aに示される方法で調製される。少なくとも1つの更なるテトラヒドロピランまたはジオキサン環は、スキーム3a中の式中の環A〜Aの場所に位置しており、好ましくはAおよび/またはAの場所である。この結果、この実施形態で調製される化合物Ibは少なくとも2つのテトラヒドロピラン環を含む。
【0049】
【化30】

ここで、それぞれ式XIVおよびXVのアリルハロゲン化物およびホモアリルは、エーテル結合で連結される。エーテル化は、ジアルキルエーテルを形成するための文献から既知の方法により、原理的に行われる。アリルハロゲン化物XIVの調製およびエーテル化の可能性は、特にEP1482018A1に原理的に記載されており、よって、ここでは、代表的な方法で記載する。ホモアリルアルコールXVの調製を以下に記載する。
【0050】
がテトラヒドロピラン環を表す場合、Xがハロゲンまたは置換基−OSOCF(スキーム3b)であれば、式XIVのアリルハロゲン化物の以下の合成が好ましい。
【0051】
【化31】

アルデヒドはCorey法(E.J.Corey、P.L.Fuchs、Tetr.Lett.(1972)、3769)によりアセチレンに転化され、シリルホルミル化(Ojimaら、Tetrahedron(1993)、49、5431〜44)、還元(Ojimaら)および通常の方法によるハロゲン化後、式XIVの化合物を得る。
【0052】
本発明の調製方法の第3の実施形態において、少なくとも2個のテトラヒドロピラン環を含む式Iの化合物は、スキーム4より明らかな通り、エニンメタセシスにより対応する置換エニンエーテルから調製される。
【0053】
【化32】

エニン前駆体の閉環メタセシスを、EP1482020A1中のコメントに類似して行う。少なくとも1つの更なるテトラヒドロピランまたはジオキサンがスキーム4の式中の環A〜Aの場所に位置しており、好ましくはAおよび/またはAの場所である。
【0054】
スキーム4の調製に必要な出発材料は、2,5−テトラヒドロピランジイルに等しいAに好ましい変法a)または2,5−テトラヒドロピランジイルに等しいAのためのb)より生成する。テトラヒドロピラン環を含まない出発材料は、EP1482020A1中のように調製される。変法a)では、アリル化されたテトラヒドロピランの合成がテトラヒドロピラン化合物を調製するための既知の方法を取り込み類似して行われる。b)の場合、各種の方法(DE3306960A1)により調製できるホルミルテトラヒドロピランが必要である。ホルミルテトラピランを調製するための可能な方法は、例えば対応するカルボン酸の酸化であり、それらは一般により簡単に入手でき、遷移金属触媒による対応するカルビノールの還元または対応するジヒドロピランのホルミル化である。
【0055】
本発明の調製方法の第4の実施形態では、式Iの化合物がホモアリルアルコールおよびアルデヒドからピラン環を形成することで調製される。少なくとも1つの更なるテトラヒドロピランまたはジオキサン環はスキーム5の式中のA〜Aの場所に位置しており、好ましくはAおよび/またはAの場所である。本方法のこの実施形態では、少なくとも1つの反応性基が好ましくは更なるテトラヒドロピラン環B、ジオキサン環またはO−複素環の構築のために機能する部分構造に連結されている。この型の基は、特には、ジオキサンを構築するための1,3−ジオール、(ヒドロ)ピラン環を構築するためのホモアリルアルコールまたはOH官能基上の保護基を有することができるこれらの基の誘導体でよい。好ましい保護基は、ベンジルエーテル、アセタール、アシル誘導体またはシリル基である。特に好ましい実施形態では、反応物質はホルミルテトラヒドロピランおよび置換ホモアリルアルコールである。前記の環形成の第1の生成物はハロゲン(XがCl、Br、I)で置換された式VIIIのテトラヒドロピランか、VIIIからHXを脱離した式IXの対応する第2の生成物である。アルデヒドとホモアリルアルコールとの反応は、ハロゲンを含有する酸の助けにより行われ、好ましくはハロゲンを含有するルイス酸で、例えばジクロロメタンのような有機溶媒中である。アルデヒドのアルケノールとの同様の反応が、J.O.Metzgerらおよびそこで引用されている文献に記載されている(Bull.Soc.Chem.Belg.(1994)、103、393〜7)。
【0056】
本方法は、式M(XまたはRM(Xn−1のルイス酸の存在下で行うことができ、ただし、
Mは、B、Al、In、Sn、Ti、Fe、Zn、Zr、AuまたはBiを表し、
は、Cl、BrまたはIを表し、
は、1〜10個の炭素原子を有する直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、
nは、2、3または4の整数で、Mの形式上の酸化数に等しく選択される。
【0057】
本発明の反応ための特に適当なルイス酸の例は、ホウ素、アルミニウム、鉄、亜鉛またはビスマス元素のハロゲン化物である。例えばAlClおよびBiBrが、非常に適している。一方、臭化水素(HBr)のようなブレンステッド酸もルイス酸の代わりに使用できる。式VIIIの中間体は脱離により式IXのジヒドロピランに、または直接、還元的脱離により式I(また、ここではId)の最終生成物に(その場または単離して)転化される。ハロゲン化物置換基Xの脱離は、塩基の作用により行うことができる。特に好ましくは例えば1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン(DBN)、1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン(DBU)または1,1,3,3−テトラメチルグアニジンのような、商業的な塩基のような強力な非イオン性の窒素塩基の使用が好ましく、固体状態または溶媒中で2〜6時間ブロモテトラヒドロピランと共に温める。この目的のために好ましい溶媒は、例えばトルエンおよびジオキサンである。式IXの中間体を水素化して、文献より既知の方法により式Iの生成物を得るが、好ましくは少なくとも1つのリン含有配位子を有する金属ロジウム、ルテニウムまたはイリジウムの遷移金属錯体の形の触媒を使用し、特に好ましくは[Rh(PPhCl]のようなロジウム/ホスフィン錯体またはホスフィン配位子と共に商業的なロジウム錯体前駆体の対応する混合物を使用する。
【0058】
還元的脱離は、種々の変法により行うことができる。好ましい変法において、Idを得るVIIIの還元的脱離はフリーラジカル連鎖反応により行われ、反応の過程において−形式的に考えれば−式VIIIのテトラヒドロピラン誘導体中のハロゲン原子Xが取り除かれ水素原子で置き換えられる。ここで、反応される式VIIIの化合物中のXは臭素または塩素であることが特に好ましく、特に臭素である。
【0059】
還元的脱離のこの変法は、好ましくは水素化有機スズまたは水素化有機ケイ素の存在下で行う。ここで、好ましい水素化有機スズは水素化トリアルキルおよびモノアラルキルジアルキルスズ、特に好ましくは水素化トリアルキルスズ、特には水素化トリ−n−ブチルスズ(BuSnH)である。典型的には、還元されるべき式VIIIの化合物に基づき1〜10等量および好ましくは2〜4等量の水素化スズを使用する。更に、固体、好ましくは固体有機担体に結合している水素化有機スズの使用が好ましく、非常に特に好ましい固体担体に結合している水素化有機スズは、BuSnHLi(Buはn−ブチル)(その場で形成されたもの)をα−ハロアルキルポリスチレンと反応させて得られるものである(例えば、U.Gerigkら、Synthesis(1990)、448〜452およびG.Dumartinら、Synlett.(1994)、952〜954参照)。個体担体に結合した水素化有機スズは、通常、式VIIIの化合物に基づき2〜4等量で使用される。
【0060】
好ましい水素化有機ケイ素は置換シランで特に好ましくはトリス(トリアルキルシリル)シラン、特にトリス(トリメチルシリル)シラン(TTMSS)である(例えば、M.Ballestriら、J.Org.Chem.1991、56、678〜683参照)。水素化有機ケイ素は、普通、還元されるべき式VIIIの化合物に基づき1〜3等量、好ましくは1.1〜1.5等量の量で使用される。TTMSSを、例えば、水素化ホウ素ナトリウムNaBHの水素化金属錯体(例えば、M.Lesageら、Tetrahedron Lett.(1989)、30、2733〜2734参照)のような更なる還元剤と組み合わせて使用することが非常に特に好ましい。この変法では半化学量論的な量の実際の還元剤TTMSSを使用でき、水素化ホウ素ナトリウムのよって反応サイクルの過程中に再形成され、よって、より安価なNaBHを使用することにより、比較的高価なTTMSSの相当量を節約できる。典型的な混合比は、式VIIIの化合物を基礎として2〜10倍量、好ましくは約5倍量のNaBHおよび5〜20mol%、好ましくは約10mol%のTTMSSである。
【0061】
水素化有機スズまたは水素化有機ケイ素を使用する還元的脱離の好ましい変法は、例えばAIBN(2,2’−アゾビスイソブチロニトリル)またはtert−ブチルヒドロパーオキサイドの適当なアゾまたはペルオキシ化合物のような少なくとも1種類のフリーラジカル鎖反応開始剤(「フリーラジカル開始剤」)存在下で、UV光存在下で通常行われる。フリーラジカル開始剤はこの型の反応の従来量で使用され、好ましくは1〜20mol%の量である。フリーラジカル開始剤の代わりかこれに加えて、UV照射の作用により反応を開始することもできる。
【0062】
本発明の好ましい実施形態に適当な溶媒は、ヘプタン、ベンゼン、キシレンのような炭化水素およびジメトキシエタンまたはメトキシエタノールのようなエーテルである。反応は20〜140℃で通常行われる。反応時間は一般的に2〜24時間である。
【0063】
還元的脱離の更なる好ましい変法において式VIII中のXは臭素であり、水素との反応は水素化触媒およびアミンの存在下で行う。水素化触媒は、均一系触媒(例えば、アルキル−および/またはアリール−置換ホスフィンまたはホスファイト配位子のPd(0)またはPd(II)またはNi(0)またはNi(II)錯体)または好ましくは不均一系遷移金属触媒である。水素化触媒は、特に好ましくは不均一系パラジウムまたはニッケル触媒、特には炭素上パラジウムまたは酸化アルミニウム上パラジウムである。
【0064】
アミンは、好ましくはトリアルキルアミン、特に好ましくはジイソプロピルエチルアミンまたはトリエチルアミンであり、特にはトリエチルアミンである。
【0065】
【化33】

式Iの化合物の調製方法の第5の実施形態は、スキーム6に従い式VIの2−置換ホモアリルアルコールおよび置換として1,3−ジオールシントンを含む式Xのアルデヒドから行われる。RおよびRはジオールの保護基を表す。適当な保護基は、選択的開裂可能なエーテルまたはエステル型の文献より既知の保護基で、ここでは好ましくはベンジルエーテルおよびトリアルキルシリルエーテル(例えば、トリメチルシリルエーテル)である。脱保護後、2つのOH基は、更なるアルデヒドOHC−(Z−A−(Z−A−Rとの縮合によりジオキサン環を構築するために機能する。ピラン環の形成は、スキーム5の反応と類似して進行する。この目的のために示される反応条件は、この実施形態に適用できる。
【0066】
従って、ホモアリルアルコールのアルデヒドとの縮合のための2つの実施形態によれば、式VIの化合物を式VIIまたはXのアルデヒドと、I、BrおよびClの一連からの少なくとも1種類のハロゲン化物を含む少なくとも1種類の(ルイス)酸存在下に反応することを特徴とする式Iの化合物の調製方法が好ましい。
【0067】
特に好ましい第5の実施形態は、BiBrのようなルイス酸の作用下での反応である。ハロゲン化されたテトラヒドロピラン誘導体は、式VIIIの化合物で上に記載したように種々の経路を介して更に反応させることができる。好ましい変法は、塩基の作用下におけるハロゲン化水素の脱離である。好ましい方法は4−ブロモテトラヒドロピラン誘導体をDBNと処理するもので、式XIの化合物を得る。化合物XIの環中の二重結合を水素化し、対応するテトラヒドロピラン誘導体を導く。水素化は文献より既知の触媒的水素化法により行われ、例えば、塩化ロジウム(I)トリストリフェニルホスフィンのようなロジウム(I)錯体上での水素化である。更なる好ましい方法は、遷移金属触媒上でのトリエチルアミンのような塩基の存在下で水素化による基Xの還元的脱離である。Xは、好ましくは臭素である。
【0068】
ベンジル保護基の場合のOH基の脱保護は、事前に行われる二重結合の水素化後か組み合わせて、再び水素化することで行われる。ロジウム触媒での二重結合の水素化が好ましく、非常に好ましくはロジウムホスフィン触媒である。ベンジルエーテルの脱保護のためには、担体固定貴金属触媒が好ましく、特に炭素または不活性金属酸化物上のパラジウムまたは白金触媒であり、非常に特に好ましくは炭素上のパラジウムである。式XIの化合物の式Ieの最終生成物への更なる誘導は、ジオールを残っている部分構造−[Z−A−[Z−A−Rを有するアルデヒド化合物と少なくとも更に1回縮合することで行われ、式IIの化合物を式IIIの化合物と縮合するのに類似の方法で行う。記載される反応工程の順番も、同生成物Ieを得るために原理的には適当に変更できる。
【0069】
【化34】

式I(またはIa、Ib、Ic、IdおよびIe)の化合物を調製する先の実施形態も、負または減少されたΔεの特に適当な化合物の調製のために使用でき、複素ピラン成分は誘電異方性に対して(負の)寄与する。スキーム3a、4、5および6中の記載に関すれば、特に適当な化合物は左手側に向いているテロラヒドロピラン環によって区別される。形式上、負または減少されたΔεの特に適当な化合物は、基RおよびRを交換し、構造要素ZおよびAの1〜6の番号を反転させる、即ち、指数6を1に代え、指数5を2に代え、指数4を3に代え、および反対に、指数1を6に代え、指数2を5に代え、指数3を4に代えることで達成できる。その式の部分的に鏡像反転された構造を形成するための示された方法は、概略図のスキーム1の右手側の部分に対応する。必須のアリルアルコールの調製も定式化でき、スキーム7、8および9を同様に修正することで行える。
【0070】
変法a)〜e)中の前記調製方法の好ましい実施形態は、以下を特徴とする式Iの化合物を調製するための方法を含む。
【0071】
【化35】


前記調製方法の特に好ましい実施形態は、式I中、中央の部分構造−[A−Z−B−[Z−A−が以下の式の1つであることを特徴とする式Iの化合物の調製方法を含む。
【0072】
【化36】

ただし、構造成分が全エカトリアルトランス配置である立体異性体が、非常に特に好ましい。式I中、中央部分構造−[A−Z−B−[Z−A−が以下の式の1つであることを特徴とする式Iの化合物の調製方法が、非常に特に好ましい。
【0073】
【化37】

同時に、特に好ましい方法は、式XXIII、XXIVまたはXXVの化合物を調製することを特徴とする。
【0074】
【化38】


ただし、
は、H、F、CN、SF、OCF、CFまたはフッ素を含む電子吸引基を表し、
Qは、単結合、−CFO−または−OCF−を表し、
、L、L、Lは、それぞれ独立に、同一または異なって、HまたはFを表し、
a、m、nは、0または1に等しく、
、Bは、独立に、同一または異なって、少なくともBまたはBはBに等しいように、Bまたは1,3−ジオキサン−2,5−ジイルを表し、および
は、単結合、−CHCH−または−CH=CH−を表す。
【0075】
XXIII中、部分構造−B−Z−B−が以下を表す式XXIIIの化合物を調製することを特徴とする方法が、非常に特に好ましい。
【0076】
【化39】

同様に、XXIV中、部分構造−B−Z−B−が以下を表す式XXIVの化合物を調製することを特徴とする方法が、非常に特に好ましい。
【0077】
【化40】

前記調製方法の非常に特に好ましい実施形態は、以下の式A〜Fの化合物の調製方法を含む。
【0078】
【化41】

ただし、alkyl(アルキル)は下で定義される通りである。式A〜Fのalkyl(アルキル)は、好ましくは直鎖状で8個までの炭素原子を有するアルコキシ、アルカニルまたはアルケニル基を表す。
【0079】
本発明との関係において、用語「アルキル」は、−−明細書または特許請求の範囲において別に定義されなければ−−、その最も一般的な意味において、直鎖状または分岐状で、飽和または不飽和で、1〜15個(即ち、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14または15個)の炭素原子を有するの炭素原子を有する脂肪族炭化水素基を示し、この基は無置換またはフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、ニトロ、NH、N(アルカニル)および/またはシアノで1置換または多置換されており、ただし、同一または異なる置換基により多置換されていてもよい。脂肪族炭化水素鎖中のアルキル基も、それ自身、官能基化されていてもよい。
【0080】
このアルキル基が飽和している基の場合、「アルカニル」とも呼ばれる。更に、「アルキル」との語は、置換されていないかまたは対応して同一または異なって、特にF、Cl、Br、Iおよび/またはCNによって1置換または多置換された炭化水素基も含み、1個以上のCH基は、鎖中のヘテロ原子(OまたはS)が互いに直接結合しないように、−O−(「アルコキシ」、「オキサアルキル」)、−S−(「チオアルキル」)、−SO−、−CH=CH−(「アルケニル」)、−C≡C−(「アルキニル」)、−(CO)O−または−O(CO)−で置き換えられていてもよい。好ましくは、アルキルは直鎖または分岐しており、無置換または置換された、1、2、3、4、5、6、7または8個の炭素原子を有するアルカニル、アルケニルまたはアルコキシ基である。アルキルがアルカニル基を表す場合、これは、好ましくは、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、i−ブチル、t−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチル、CF、CHF、CHF、CFCFである。アルカニル基は、特に好ましくは直鎖で無置換かFで置換されている。
【0081】
アルキル基中の1個以上のCH基を−O−で置き換える場合もあるため、「アルキル」との語は、「アルコキシ」または「オキサアルキル」基も含む。アルコキシは、酸素原子がアルコキシ基で換基された基または置換された環に直接結合しているO−アルキル基を意味し、アルキルは上に定義される通りであるが;アルキルは好ましくはアルカニルまたはアルケニルである。好ましいアルコキシ基は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシおよびオクチルオキシであり、ただし、これらの基のそれぞれも、好ましくは1個以上のフッ素原子によって置換されていてよい。特に好ましくは、アルコキシは、OCH、OC、O−n−C、O−n−C、O−t−C、OCF、OCHF、OCHFまたはOCHFCHFである。本発明との関連において、「オキサアルキル」との語は、隣接しているヘテロ原子(OまたはS)がないように末端でないCH基の少なくとも1個が−O−で置き換えられているアルキル基を意味する。好ましくは、オキサアルキルは式C2a+1−O−(CH−の直鎖の基を含み、aおよびbは、それぞれ互いに独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10を表し、特に好ましくは、aは1〜6の整数で、bは1または2である。
【0082】
示された合成における出発材料、特に式IIのジオールおよび式IIIおよびVIIのアルデヒドは、先行技術より既知であるか、商業的に入手可能であるか、原理的に文献より既知の合成方法により調製できる。
【0083】
式VIおよびXVのホモアリルアルコールも先行技術より既知であるか、商業的に入手可能であるか、それ自体は文献より既知の合成方法により簡単に調製できる。
【0084】
スキーム7は、アルデヒドから1−置換ホモアリルアルコールの合成を示す。この合成では、例えば、アリル−グリニャール試薬をアルデヒドと反応させる。今回では、アルデヒドは既知の化合物であるか、標準的な方法で調製できるか、例に基づく方法で入手できる。
【0085】
【化42】

スキーム8は、式XVIIIのハロゲン化アリル誘導体より出発してホモアリルアルコールの2−置換改変体の合成経路の概要を示す。
【0086】
【化43】

式VIIIの化合物(これは例えばアルデヒドR−[A−Z−[A−Z−CHOより出発して、例えばReformatsky合成により不飽和エステルR−[A−Z−[A−Z−CH=CH−CO−アルカニルを得て、引き続きDIBAL−Hを使用して対応するアリルアルコールR−[A−Z−[A−Z−CH=CH−CHOH還元し、最後にPBr(Hal=Br)、PClまたはSOCl(Hal=Cl)またはHI(Hal=I)を使用して合成される)から出発して適当な金属または有機金属試薬との反応により化合物XIXを得る。ここで「Met」はCu、Bi(radical)、In(radical)、Sn(radical)、Sn(radical)、Zn(radical)、Ge(radical)を表し、使用される金属または有機金属試薬に依存して、「radical」は1種類以上の有機基、配位子または該金属上の対イオンを表す。中間体として形成されたXIXを先立って単離することなく行うこともできるが、式XIXの化合物とホルムアルデヒド(または合成上同等のもの)の反応により、対応する処理の後に式IIIの所望のホモアリルアルコールを得る。
【0087】
式IIIのホモアリルアルコールの更なる入手を、スキーム9に示すように行う。「Hal」はスキーム8中の上と同じ意味を有し、「Met」は好ましくはCuである(A.Carpita、R.Rossi、Synthesis(1982)、469参照)。
【0088】
【化44】

ハロゲン化物XXは、−スキーム8中の方法に対応するやり方で−適当な試薬を使用して有機金属誘導体XXIに転化され、引き続きXXIIと反応させて酢酸ホモアリルXXIIIを得る。そして、式IIIの所望のホモアリルアルコールは、XXIIIから鹸化によって入手可能である。
【0089】
更に、R−[A−Z−[A−Z−がアルキル基を表す式IIIのホモアリルアルコールも、クロトン酸のジアニオンのアルキル塩化物R−[A−Z−[A−Z−Halを使用する対応するアルキルかおよびLiAlHを使用する引き続く還元により入手できる。このジアニオンは、例えばリチウムジイソプロピルアミド(LDA)の2等量との反応よりクロトン酸から得る(P.E.Pfeffer、L.S.Silbert、J.Org.Chem.(1971)、36、3290;R.H.van der Veen、H.Cerfountain、J.Org.Chem.(1985)、50、342参照)。
【0090】
本発明の更なる主な特徴は、本発明の方法により得られる化合物を含む。したがって、化合物は、テトラヒドロピラン環に加え少なくとも更に1つのO−複素環を含む。複数のO−複素環と正しく組む合わせることにより、改良された特性を有する化合物の調製が可能となり、粘度、液晶混合物中での溶解性および光学異方性のような重要な値を保ったまま、特に誘電異方性の高い絶対値を有する。その物質は、簡単にそして示された合成経路により工業的スケールで調製でき、それらの実用上の値、加えて優れた物理的特性が加えて増加する。一般的な合成法は、液晶ディスプレイの1つの型中のみでの使用を必ずしも念頭としていない。これに対して優れていることに、本発明の化合物は、それらの双極子特性(例えばΔεの値)の特徴に依存して、完全に異なる型の液晶ディスプレイ装置(IPS、VA、TN、STNなど)で使用できる。これらの新規な化合物の物理的および化学的特性により、これらのディスプレイ装置のための代替の液晶混合物に特に適することとなる。
【0091】
本発明の化合物は、特には、式XXVI、XXVIIおよびXXVIIIの化合物を含む。
【0092】
【化45】


ただし、式中、
、A、A、A、Z、Z、a、eは、式Iで定義される通りであり、
は、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−CHCHCFO−を表し、
は、F、CN、SF、NCS、OCF、CFを表し、
、Lは、H、ClまたはFを表し、および
pは、0または1を表す。
【0093】
式XXVI、XXVIIおよびXXVIIIの好ましい化合物は、LがFを表し、LがHまたはFを表し、特に好ましくはLおよびLがFを表すことを特徴とする。
【0094】
本発明の特に好ましい化合物は、以下の式CおよびDの化合物である。
【0095】
【化46】

ただしalkyl(アルキル)は上で定義される通りである。
【0096】
表された全ての式、特に置換された環系は投影的な式であり、特定の特に強調された結合形式が示されない限り、全ての立体異性体を含む。1,4−、2,5−または3,6−2置換6員環の場合も、一般に式は全ての立体異性体を表し、任意の所望の混合物または純物質としてである。これらの中でも、式の上で全てトランス配置の立体異性体が特に好ましく、鎖中において分子を最も直線の形状とする。また、キラル化合物の場合、両方のエナンチオマーを任意の所望の混合または純物質として基本的に網羅する。
【0097】
以下の例は、本発明を制限することなく、本発明を説明するものである。
【0098】
以上および以下において、パーセントのデータは重量パーセントを表す。温度はすべて摂氏で示される。Tgはガラス転移温度であり、cl.p.は透明点である。さらに、Cは結晶状態、Nはネマチック相、Smはスメクティック相およびIは等方相である。これらの記号間のデータは相転移温度を表す。Δnは光学異方性(589nm、20℃)を表わし、Δεは誘電異方性(1kHz、20℃)を表し、γは20℃での回転粘度(mPa・s)を表す。
【0099】
本発明の化合物のΔnおよびΔεの値は、10%の本発明のそれぞれの化合物と、90%の商業的に入手可能な液晶ZLI−4792(メルク社、ダルムスタット市)とから成る液晶混合物から外挿して得られる。
【0100】
上および下では、以下の略称を用いる。
【0101】
RT 室温
MTBエーテル メチルtert−ブチルエーテル
THF テトラヒドロフラン
DBN 1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エン
DBU 1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ−7−エン
【実施例】
【0102】
<例1>
【0103】
【化47】

30mg(0.035mmol)の塩化トリシクロヘキシルホスフィン(1,3−ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)−4,5−ジヒドロイミダゾール−2−イリデンベンジリデンルテニウム(IV)を、メタセシス触媒(Grubbs2触媒)として、0.35mol(84.8g)の固体状態のジオレフィン(1)に、40℃において窒素雰囲気下で数回に分けて加え、最初は20mg、2回目は1時間後に10mgである。2時間後、エチレンの発生が事実上完了する。トルエン/ヘプタン(1:4)によりシリカゲルを通して濾過後、反応混合物より61.3g(理論の81.7%)の(2)を得て、ヒドロホルミル化に直接使用し、(3)を得る。
【0104】
このために、200mlのトルエン中の0.25mol(53.55g)の(2)を、60barおよび150℃で、3gの水素化トリス(トリフェニルホスフィン)カルボニルロジウム(I)を使用し、合成ガス(H/CO=1:1)の取り込みが完了するまで24時間の過程に渡りヒドロホルミル化する。反応生成物を真空で蒸発させることで溶媒より遊離させ、残渣をトルエン/酢酸エチル(9:1)によりシリカゲルを通して濾過する。ホルミルテトラヒドロピラン成分中の置換基の配置のトランス成分を濃縮するために、濾液を蒸発させた残渣(37.2g=理論の69.5%)を塩基で異性化する。
【0105】
このために、1.8mlの20%水酸化ナトリウム水溶液を190mlのメタノールおよび48mlのテトラヒドロフランの混合物37.2gに加え、混合物を室温で1時間攪拌する。そして、塩酸を使用して混合物を中和し、溶液を蒸発させて乾燥する。1lのMTBを蒸発残渣に加え、それぞれの時で300mlの水で混合物を2回洗浄する。乾燥後、有機抽出物を蒸発させ、トランス−5−ホルミルテトラヒドロピラン(3)に加え4−ホルミルテトラヒドロピランも僅かに含む、88%のアルデヒド混合物33gを得る。
【0106】
(4a)を合成するために、33g(0.135mol)の(3)を還流下2時間、250mlのトルエン中の27.1g(0.135mol)の2−(4−トランス−プロピルシクロヘキシル)−1,3−プロパンジオールと共に、500mgのトルエン−4−スルホン酸一水和物と共に、脱水が完了するまで、水分離器上で温める。
【0107】
冷却後、10gの炭酸カリウムを攪拌しながら加え、混合物を濾過し、濾液を蒸発させて乾燥する。蒸発残渣を最初ヘプタン/トルエン(1:1)そして純トルエンでシリカゲルを通して濾過する。
【0108】
2つの生成物画分を得る。一方からは、12.4gの所望の直線状の全トランス異性体(4a)(理論の21.4%)を再結晶により得て、他方からは、4−ホルミルテトラヒドロピランから誘導されるジオキサン誘導体の間違った異性体5gを得る。
【0109】
(4a):C106N206.91I、Δε=21.7、Δn=0.0871。
【0110】
<例2>
例1に類似の方法で、2−プロピル−1,3−プロパンジオールおよび式(3)のピランアルデヒドより(4b)を得る。
【0111】
【化48】

(4b):C87I、Δε=23.7、Δn=0.0550。
【0112】
<例3>
例1に類似の方法で、−プロピル−1,3−プロパンジオールおよび対応するピランアルデヒドより(4c)を得る。
【0113】
【化49】

(4c):C88N(87.9)I、Δε=35.8、Δn=0.0880。
【0114】
必要なピランアルデヒドを以下の通り調製する。
【0115】
【化50】

窒素下、800mlのジエチルエーテル中の臭化アリルマグネシウムの1M溶液を25℃より低い室温で、500mlTHF中の272g(800mmol)のアルデヒド溶液に加える。反応物を一晩、室温で攪拌し、氷水に加え、引き続きメチルtert−ブチルエーテルで抽出する。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させる。得られた残渣を、シリカゲルに通す。
【0116】
【化51】


103g(81%、220mmol)のアルコールおよび21g(80mmol)のトリフェニルホスフィンを500mlの酢酸エチルに溶解し、500mgの酢酸ロジウム二量体を加える。ヒドロホルミル化を25barの合成ガスおよび100℃で行う。反応溶液を蒸発させ、シリカゲルを通す。
【0117】
【化52】


窒素下、24.5ml(320mmol)の塩化メタンスルホニルを0〜5℃で、500mlのジクロロメタン中の100g(240mmol)のラクトンおよび101ml(299mmol)のトリエチルアミンの溶液に加える。反応物を一晩、室温で攪拌する。反応物を水に加え、MTBエーテルで抽出する。有機相を飽和NaCl溶液で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、蒸発させる。残渣をシリカゲルに通す。
【0118】
【化53】

60g(148mmol)のエノールエーテルを300mlのトルエンに溶解し、9.8g(15mmol)のトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスフィンおよび390mg(1.5mmol)のジカルボニルアセチルアセトナートロジウム(I)を加える。ヒドロホルミル化を100barの合成ガスおよび100℃で行う。溶液を引き続き蒸発させ、残渣をシリカゲルに通して、アルデヒドのシス/トランス混合物を得る。
【0119】
アルデヒドプロトンのシグナルは、δ=9.69ppmおよびδ=9.88ppmである。
【0120】
<例4>
【0121】
【化54】

200mlのテトラヒドロフラン中に溶解された0.2mol(48.8g)の(3)と、100mlのテトラヒドロ中の2モル濃度の塩化アリルマグネシウム溶液とを、滴下により30分かけて15および25℃の間で加える。添加が完了すれば、混合物を室温で更に2時間攪拌し、そして200mlの0.5N塩酸に投入し、有機相を分離して、水相をメチルtert−ブチルエーテルで2回抽出する。混合された有機抽出物を水で洗浄し、乾燥し蒸発させる。蒸発残渣をトルエン/酢酸エチル(98:2から9:1)でシリカゲルを通して濾過する。濾液より、38.7g(理論の67.6%)のホモアリルアルコール(5)の異性体混合物を得る。
【0122】
0.135mol(38.7g)の(5)および0.135mol(16.1g)の臭化プロパルギルを80mlのテトラヒドロフランに溶解し、水酸化ナトリウムのペレット(0.27mol;10.8g)、0.5mlの水、40mlのテトラヒドロフランおよび6.75mmol(2.46g)の臭化N−セチル−N,N,N−トリメチルアンモニウムを含む激しく攪拌された乳濁液に加え、45℃に温め、この温度で16時間攪拌する。そして、混合物を1.5lの氷水に加え、有機相を分離して、水相をMTBエーテルで3回抽出する。前もって乾燥および蒸発させた後に、混合された有機相の残渣をトルエン/ヘプタン2:8によりシリカゲルを通して濾過する。濾液を蒸発させ34.3g(理論の78.4%)の(6)を得て、エニンメタセシス中で粗混合物として直接使用し、(7)を得る。
【0123】
このために、115mg(0.14mmol)の塩化ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウム(IV)(Grubbs1触媒)を20mlのジクロロメタン中の0.028mol(9.4g)の(6)に加え、混合物を室温で4時間攪拌し、同じ分量の115mgの触媒を加えた後、混合物を室温で更に16時間攪拌する。蒸発させ、トルエン/ヘプタン(3:7)でシリカゲルを通して濾過し、濾液を乾燥して得られる残渣(1.0g)を最初エタノールより、そしてヘプタンより再結晶して、構造(7)に同定される0.6gの異性体を得る。
【0124】
(7):C97I、Δε=14.2、Δn=0.0800。
【0125】
0.2gの(7)を6時間、10barの水素圧、90℃で、5mlのメタノールおよび1mlのトルエン中で、0.1gの塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)を使用して、水素化する。冷却後、反応混合物を真空で蒸発させ、トルエン/ヘプタン(3:7)でシリカゲルを通して濾過する。乾燥後、0.15gの(8)を油分として得る。
【0126】
<例5>
【0127】
【化55】

化合物(9)を、対応するホモアリルアルコール前駆体から2−(ブロモメチル)アクリレートを使用して、O−アルキル化により調製する。このために、80mlのテトラヒドロフラン中の0.2mol(76.1g)のホモアリルアルコールを、温度を20℃に保ちながら窒素の保護ガス雰囲気下で80mlのテトラヒドロフラン中の60%の懸濁液としての0.2mol(8.0g)の水素化ナトリウムに、滴下により攪拌および氷水を使用して外部より冷却しながら加える。約2時間後、水素の発生が完了する。そして、40mlのテトラヒドロフラン中の0.2mol(38.6g)の酢酸ブロモメチルを、温度が25℃を超えない速度で滴下により加える。引き続き、攪拌を室温で更に16時間継続する。そして、反応混合物を600mlの氷水に投入し、1NのHClを使用して中和し、有機相を分離する。水相をメチルtert−ブチルエーテルで2回抽出後に、混合された有機相を蒸発させて乾燥し、トルエン/メチルtert−ブチルエーテル(3:1)でシリカゲルを通して濾過する。濾液を蒸発させた残渣は、65.9g(理論の71%)のアルキル化生成物(9)を含む。
【0128】
0.1mol(49.2g)の(9)を25mlのトルエンと共に60℃に温め、それぞれ212mgのGrubbs2触媒を4分割(合計1mol%)して1時間ごとに加える。エチレンの発生が完了すれば、混合物をトルエン/メチルtert−ブチルエーテルでシリカゲルを通して濾過する。濾液を蒸発させると、28.8g(理論の62%)のジヒドロピランエステル(10)が残る。
【0129】
0.05mol(23.2g)のジヒドロピランエステル(10)を、12時間で10barの水素圧、および100℃で300mlのメタノールおよび60mlのトルエン中で2gの塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)を使用して水素化する。溶媒を蒸発させ、残渣をトルエン/メチルtert−ブチルエーテルでシリカゲルを通して濾過後、水素化されたエステル(11)を得る(18.4g=理論の79%)。
【0130】
アルデヒド(12)の合成のために、80mlのトルエン中の0.039mol(18.4g)のエステル(11)を−70℃まで冷却し、トルエン中の32.5mlの水素化1,2−N−ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)を攪拌しながら−70℃で加え、4時間後に添加を完了し、攪拌を継続後、混合物を更に冷たいうちに100mlの冷1NHClに投入する。有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液および水で洗浄し、乾燥し蒸発させる。アルデヒド(12)の蒸発残渣を、例1に記載されるように、(4c)の合成で直接使用できる。
【0131】
【化56】


アルデヒド(12)を引き続き2−エチル−1,3−プロパンジオールと反応させて、ジオキサン(4c)を得る。このために、44.5g(110mmol)のアルデヒド(12)および12.0g(115mmol)のジオール2−エチル−1,3−プロパンジオールを250mlのトルエンに溶解し、400mgのp−トルエンスルホン酸一水和物を加え、アルデヒドの転化が完了するまで(TLC)、混合物を水分離器上で還流下により加熱する。冷却された反応物を飽和炭酸水素ナトリウム溶液で3回洗浄し、乾燥し、シリカゲル(トルエン/ヘプタン7:3;トルエン;トルエン/酢酸エチル95:5)を通す。生成物を含む画分を蒸発させ、残渣をエタノールより−20℃で再結晶する。
【0132】
(4c):C88N(87.9)I;Δε=35.8;Δn=0.0880。
【0133】
<例6>
(13)の合成も、例5に類似してアルデヒド(12)より以下の式のジオールを使用して行う。
【0134】
【化57】

【0135】
【化58】

<例7>
(14)の合成も例5および6に類似して行うが、この場合、アルデヒド(3)を使用する。
【0136】
【化59】

(14):C91SmH(63)N203.4I、Δε=21.3、Δn=0.0880。
【0137】
<例8>
【0138】
【化60】

メタセシスにより形成されたジヒドロピラン(32)を、例1に類似のヒドロホルミル化によりアルデヒド(33)に転化し、エン−カルボニル反応中でホモアリルアルコール(34)と反応させ、最初にブロモテトラヒドロピラン(35)を得る。
【0139】
ホモアリルアルコールの合成を、亜鉛粉およびCoBr存在下でガス状ホルムアルデヒドとの反応による古典的な方法で調製できる亜鉛アルコール(38)の酢酸エステルを経由して行う。
【0140】
【化61】


このために、1mlのトリフルオロ酢酸を使用して亜鉛を活性化したあと、分離可能なフラスコ中で1.0mol(30g)のパラホルムアルデヒドを220℃まで加熱して形成されるガス状ホルムアルデヒドを、400mlのアセトニトリル中の26gの亜鉛粉(0.4mol)、13.2g(0.06mol)のCoBrおよび0.2mol(51.2g)の(38)の溶液中を通過させる。導入が終了すれば、混合物を室温で更に12時間攪拌する。そして、混合物を100mlの2NHClに投入し、有機相を分離し、水相をメチルtert−ブチルで2回抽出する。混合された有機相を蒸発させ、残る残渣をトルエン/酢酸エチル(7:3)でシリカゲルを通して濾過し、より極性の画分を蒸発させ、ホモアリルアルコール(34)を粗材料として理論の48%の収率(21.9g)で得る。
【0141】
最初に0.09mol(20.5g)のホモアリルアルコール(34)を、0.69mol(14.0g)のアルデヒド(33)および5mol%のBiBr(2g)と共に0℃で導入する。そして、反応容器の後にある気泡計数器から生じるのと同じ多さの気泡が反応容器の前にある洗浄瓶より発生するまで(約10分)、ガスとしてHBrを5〜20℃の間の温度で外部より冷却させながら通過させる。そして、混合物を素早く氷冷された飽和炭酸水素ナトリウム溶液に投入し、有機相を水で洗浄し、乾燥し、蒸発させる。異性体ブロモテトラヒドロピラン(35)の異性体混合物を粗精製の形成で次の反応工程で使用し、HBrを脱離して、ジヒドロ(36)を得る。
【0142】
前の工程(23.3g、理論の63.3%)からの0.057molの異性体混合物(36)を還流下で6時間、40mlのトルエン中の0.086mol(10.2ml)の1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノナ−5−エンと共に温める。冷却後、水および希硫酸を使用してpHを3に合わせた後、混合物を激しく混合する。分離後、有機相を飽和NaHCO溶液および水で洗浄し、シリカゲルを通して濾過する。蒸発させて、15.7g(理論の84%)のジヒドロピラン(36)の異性体混合物を得る。
【0143】
異性体混合物(36)(15.7g)の水素添加を300mlのメタノールおよび75mlのトルエンに溶解し、10bar、90℃、20時間で、0.48mmol(448mg)の塩化トリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)を触媒として水素化して行う。溶媒を蒸発後、残渣をトルエンでシリカゲルを通して濾過する。エタノールおよびヘプタンから分別結晶を繰り返し、0.5gの(37)を得る。
【0144】
<例9>
【0145】
【化62】

375ml(1.87mol)のマロン酸エステル(39)を2.1lのキシレン中に、142ml(2.55mol)のエチレングリコールおよび9.75g(50mmol)のp−パラトルエンスルホン酸一水和物と共に溶解し、沸騰するまで加熱する。1lのキシレンを最高温度140℃までで留去する。反応容器中に残った混合物を炭酸水素ナトリウムで洗浄し、蒸発させる。(40)よりなる得られる残渣を真空で分留する。収率:280gの無色液体(64%)。
【0146】
【化63】


窒素下、THF中の187.2g(790mmol)のマロン酸エステル(40)の溶液を、1lのTHF中の45.5g(1.03mol)の水素化リチウムアルミニウムの懸濁液に沸点で加え、混合物を沸騰させながら1時間加熱する。冷却された反応物をTHF/水混合物(4:1)を使用して加水分解し、123mlの水中の炭酸ナトリウム十水和物の溶液を80℃で加える。230分後、形成された固体(41)を分離し、MTBエーテルで洗浄する。有機相を蒸発させ、特に精製することなく引き続く工程で使用する。
【0147】
【化64】

窒素下、86.3g(580mmol)のジオール(41)を1100mlのDMFに溶解し、14g(38mmol)のヨウ化テトラ−n−ブチルアンモニウムを加える。87.2g(2.18mol)のミネラルオイル中の60%水素化ナトリウム懸濁液を何回かに分けて導入する。室温で30分後、264ml(2.18mol)のベンジルブロマイドを冷却しながら注意深く加える。室温で48時間後、反応物を3lの水に加え、MTBエーテルで抽出する。有機相を水で洗浄し、蒸発させる。残渣をシリカゲル(トルエン)に通す。(42)の3つの画分を単離する。
【0148】
69.6g;含有量62.9%
194.1g;含有量92.1%
23.0g;含有量64.8%
【0149】
【化65】

290mlのギ酸を830mlのトルエン中の149g(92.1%;540mmol)のアセタール(42)の溶液に加え、混合物を激しく攪拌しながら60℃で6時間保持する。1lのヘプタンおよび1lの水を、冷却された反応物に加える。有機相を水および炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、蒸発させる。残渣をシリカゲル(トルエン/ヘプタン)に通す。163.7gのアルデヒド(43)を単離する(含有量:63%;収率:67%)。
【0150】
【化66】

22.5g(63%;50mmol)のアルデヒド(43)および5.95g(96%;50mmol)の2−ビニルプロパノールを140mlのジクロロメタンに溶解し、11.4g(25mmol)のビスマス(III)ブロミドを加える。反応物を一晩、室温で攪拌する。反応物を引き続きシリカゲルを通して濾過し、蒸発させる。26.1gの臭化化合物(44)を単離する(含有量:60%;収率:68%)。
【0151】
【化67】

窒素下、100g(219mmol)の臭素化化合物(44)を165mlのトルエンに溶解し、38.5mlのDBNを加え、混合物を沸騰させながら5時間加熱する。200mlの水を引き続き冷却された反応物に加え、そして希硫酸を使用して酸性とする。有機相を300mlのヘプタンで希釈し、分離して除去し、炭酸水素ナトリウム溶液で洗浄し、蒸発させる。得られる残渣をシリカゲル(トルエン)に通す。57.1gの化合物(45)を単離する(含有量:60%;収率:41%)。
【0152】
【化68】

57g(150mmol)の不飽和ピラン(45)を360mlのメタノールおよび90mlのトルエンに溶解し、8bar/80℃で、(PPhRhCl触媒上で水素化する。水素化溶液を蒸発させ、残渣をシリカゲル(トルエン/MTBエーテル)に通し、ピラン(46)の2つの画分を得る:32.1g(77%含有量;43%)および21.6g(含有量:69%;収率:26%)。
【0153】
【化69】

32.1g(77%)の保護されたジオール(46)を321mlのTHFに溶解し、パラジウム触媒上で水素化する。触媒を引く続き分離し除去して、溶液を蒸発させる。(47)の残渣を、更に精製することなく引き続く工程で使用する。
【0154】
【化70】

11g(54mmol)のジオール(47)を70mlのトルエンに8.8g(55mmol)の3,4,5−トリフルオロベンズアルデヒドと共に加え、350mgのp−トルエンスルホン酸一水和物を加え、混合物を水分離器上で沸騰するまで加熱する。反応物を引き続き、シリカゲルに通し、溶出液を蒸発させる。(48)の得られる残渣を、アセトニトリル、アセトンおよびヘプタンから結晶化して精製する。
【0155】
(48):C61I;Δε=21.6;Δn=0.067。
【0156】
<例10>
【0157】
【化71】


15.8g(78mmol)のジオール(47)を100mlのトルエンに27.4g(78mmol)のアルデヒド(49)と共に加え、500mgのp−トルエンスルホン酸一水和物を加え、混合物を水分離器上で沸騰するまで加熱する。反応物を引き続き、シリカゲルに通し、溶出液を蒸発させる。(50)の得られる残渣を、アセトニトリル、アセトンおよびヘプタンから結晶化して精製する。
【0158】
(50):C92N113I;Δε=35;Δn=0.099。
【0159】
以下の化合物をそれぞれの場合で化合物(47)に類似のジオールおよび式(49)に類似の適当なアルデヒドから調製する。
【0160】
【化72】

ただし、R11、A11、A12、A21、Z21、A22およびX11は、特に表1で示される意味を有する。
【0161】
【表1.1】

【0162】
【表1.2】

【0163】
【表1.3】


以下を例10に類似してアルデヒド(49)および対応するジオールより調製する。
【0164】
【化73】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iのテトラヒドロピラン化合物類:
【化1】

{ただし、式I中、
【化2】

a、b、c、d、e、fは、互いに独立に、0または1を表し、ただし、a+b+c+d+e+fは、1、2、3、4、5または6に等しく、およびc+dは0に等しくなく、
、A、A、A、A、Aは、互いに独立に、同一または異なって、回転されたものまたは鏡像のものでもよく、
【化3】

を表し、
ただし、A、A、A、A、A、Aからの少なくとも1つの環は、CまたはBを表すことを条件とし、
ただし、
【化4】

、YおよびYは、互いに独立に、水素、ハロゲン、CN、C1〜6−アルカニル、C2〜6−アルケニル、C2〜6−アルキニル、−OC1〜6−アルカニル、−OC2〜6−アルケニルおよび−OC2〜6−アルキニルを表し、ただし、脂肪族基は無置換であるか、ハロゲンにより1置換または多置換されており、および
、Zは、単結合、−CH=CH−または−CHCH−を表し、
、Z、Z、Zは、単結合、1〜6個の炭素原子を有し無置換かFおよび/またはClで1置換または多置換されているアルキレン架橋、または−CH=CH−、−C≡C−、−CF=CF−、−CH=CF−、−CHO−、−OCH−、−CO−O−、−O−CO−、−CFO−、−OCF−、−CHCHCFO−または−CFOCHCH−を表し、
n1は、0、1、2、3または4であり、
n2およびn3は、互いに独立に、0、1、2または3であり、
n4は、0、1または2であり、
は、−CH−、−CF−または−O−を表し、
は、H、1〜15個のC原子を有するアルキル基で、該基は無置換であるか、−CNにより1置換されているか、ハロゲンにより1置換または多置換されており、ただし加えて、これらの基中の1個以上のCH基は、鎖中のヘテロ原子が互いに直接結合しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよく、
は、H、ハロゲン、CN、NCS、SF、CF、OCF、NH、1〜15個のC原子を有するアルキル基で、該基は無置換であるか、−CNにより1置換されているか、ハロゲンにより1置換または多置換されており、ただし加えて、これらの基中の1個以上のCH基は、鎖中のヘテロ原子が互いに直接結合しないようにして、−C≡C−、−CH=CH−、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−O−または−O−CO−で置き換えられていてもよい。}
の調製方法であって
a)式IIのジオールおよび式IIIのアルデヒドを互いに縮合して式Iaのジオキサン化合物を得るか、
【化5】

【化6】

または
b)式IVの化合物をオレフィンメタセシスで環化して式Vの化合物を得て、および引き続き水素化して式Iの化合物を得るか、
【化7】


【化8】

または
c)式Qaのエニンエーテルを該エニンのオレフィン閉環メタセシスにより環化して式Qbの化合物を得て、および引き続き水素化により式Iの化合物に転化するか、
【化9】

【化10】

または
d)式VIの2−置換3−ブテニルアルコール(ホモアリルアルコール)および式VIIのアルデヒドを反応させて式VIIIまたはIXのピラン誘導体を得て、およびそして(還元的)脱離および/または水素化を含む1つ以上の工程を経て式Iの化合物に転化するか、
【化11】

【化12】

または
e)式IIIの2−置換3−ブテニルアルコール(ホモアリルアルコール)および式Xのアルデヒドを反応させて式XIまたはXIIの中間体を得て、そして式Ieの化合物を中間体XIまたはXIIより
i)還元的脱離または還元し、
ii)ジオールを脱保護し、および
iii)式OHC−[Z−A−[Z−A−Rのアルデヒドと反応させて調製すること、
【化13】

【化14】

【化15】

(ただし、式中、
は、塩素、臭素またはヨウ素を表し、
およびRは、アルコールのための保護基であり、および
、R、B、A〜A、a〜fおよびZ〜Zは、式Iで示される意味を有する。)
を特徴とする調製方法。
【請求項2】
および/またはAの少なくとも一方は、BまたはCを表すことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
式VIIIの化合物を、VIIIから置換基Xを還元的に引き抜くことで式Iの化合物に転化することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
式IXの化合物を、IXを水素化することで式Iの化合物に転化することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項5】
式VIの化合物を、一連のI、BrおよびClからの少なくとも1種類のハロゲン化物を含む少なくとも1種類の(ルイス)酸存在下で、式VIIまたはXのアルデヒドと反応させることを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項6】
式M(XまたはRM(Xn−1のルイス酸存在下で反応を行い、ただし
Mは、B、Al、In、Sn、Ti、Fe、Zn、Zr、AuまたはBiを表し、
は、Cl、BrまたはIを表し、
は、1〜10個の炭素原子を含む直鎖状または分岐状のアルキル基を表し、および
nは2、3または4の整数で、Mの形式的な酸化数と等しくなるよう選択される
ことを特徴とする請求項5記載の方法。
【請求項7】
式XXVIの化合物。
【化16】


(ただし、
、A、A、Z、Z、aおよびeは、請求項1中の式Iで定義される通りであり、
は、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−CHCHCFO−を表し、
は、F、CN、SF、NCS、OCF、CFを表し、および
、Lは、H、ClまたはFを表す。)
【請求項8】
式XXVIIの化合物。
【化17】

(ただし、
、A、A、Z、Z、aおよびeは、請求項1中の式Iで定義される通りであり、
は、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−CHCHCFO−を表し、
は、F、CN、SF、NCS、OCF、CFを表し、および
、Lは、H、ClまたはFを表す。)
【請求項9】
式XXVIIIの化合物。
【化18】

(ただし、
、A、A、Z、Z、aおよびeは、請求項1中の式Iで定義される通りであり、
は、−CFO−、−OCF−、−CFCF−、−CHCHCFO−を表し、
は、F、CN、SF、NCS、OCFを表し、および
、Lは、H、ClまたはFを表す。)

【公表番号】特表2008−545669(P2008−545669A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512723(P2008−512723)
【出願日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際出願番号】PCT/EP2006/004425
【国際公開番号】WO2006/125530
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフトング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】