説明

酸素インジケーターインキ組成物、酸素インジケーターおよび包装材料

【課題】高温の雰囲気の下に置かれた後でも脱酸素状態の判定が長期に渡って安定して行えるようにした酸素インジケーターインキ組成物と、この酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が設けられてなる酸素インジケーターおよび酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が一部に設けられてなる包装材料の提供を目的とする。
【解決手段】少なくとも酸化還元色素と還元剤とバインダー樹脂と溶剤とを含むインキ組成物であって、還元剤として耐熱性を有する天然酸化防止剤の一種類と、アルコールアミン類或いは多価アルコール類の一種類を少なくとも含んでいることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素の有無を判定する機能を有する酸素インジケーターインキ組成物と、酸素インジケーターおよび包装材料、さらに詳しくは、高温の雰囲気の下に置かれた後でも脱酸素状態の判定が長期に渡って安定して行えるようにした酸素インジケーターインキ組成物と、この酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が設けられてなる酸素インジケーター、および酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が一部に設けられてなる包装材料に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素がその反応性の高さから食品や医薬品などを酸化し、その有効成分を変性させたり、品質を劣化させることはよく知られている。このため、食品や医薬品などの包装体への収納に際しては、酸素吸収剤を一緒に入れることにより、食品や医薬品などの内容物の酸化を防止するようにしている。そして、この酸素吸収剤の包装体への収納に際しては、酸素の吸収状況や包装体のピンホール、シール不良などに起因する酸素の進入を検知するための酸素インジケーターを一緒に入れているのが一般的である。
【0003】
現在、このような酸素インジケーターとしては、酸化還元色素、還元剤、バインダー樹脂などを主剤とするインジケーター組成物から構成されるインジケーター部を有するものが数多く使用されている。このような酸素インジケーターは、酸化還元色素が還元型と酸化型とで異なる色相を呈する性質を酸素の有無の検知に利用したものである。そして、酸化還元色素としてはメチレンブルーが広く用いられている。このメチレンブルーを用いた酸素インジケーターは、脱酸素の環境下では還元剤の働きによって還元型、すなわち無色を呈し、酸素の存在下では酸化されて青色を呈するようになっており、色相の変化で周辺の酸素の有無を検知できるようになっている。
【0004】
このチアジン系色素の一つであるメチレンブルーが酸化還元色素として用いられている酸素インジケーターにおいては、メチレンブルーの染色性が強く、酸素インジケーター部を担持する基材フィルムなどを通って包装体内に同包されている内容物側へと移行し、内容物を汚染するといった問題を抱えている。特に、包装体に高温滅菌処理などが施されてその中にある酸素インジケーターが高温になると、その傾向が顕著になる。
【0005】
このような問題に対処すべく、酸素インジケーターに含まれている酸化還元色素の移行が防止できるように、酸素インジケーター自体を小袋などに入れたり、フィルムで包んでから食品や医薬品などと共に包装体内に収納する手法が取られてきている。しかしながら、この方法では、酸素インジケーターの小袋などへの収納や、包装した酸素インジケーターの包装体への投入などに係る一連の作業が煩雑で、コストが余分にかかるといった新たな問題が発生している。
【0006】
一方、上記した構成の酸素インジケーターが高温の状態に晒されて酸化還元色素が酸素インジケーターから溶出し、その他の部材と接触することにより色調異常を引き起こすことも問題点として指摘されている。要するに、酸素インジケーターが酸素のない環境に置かれている場合でも酸化還元色素の還元色が維持できず、酸化色を呈してしまうことがある。これは、例えば、溶出してしまった酸化還元色素が包装体を構成する酸素バリアフィルムの酸素バリア処理面まで浸透していき、その部分で凝集物などと接触することにより酸化色を呈する現象であると考えられている。
【0007】
これまでにも接着剤やインキ中の低分子量成分の溶出を防止し、溶出に起因する諸問題
を解消しようとする試みが種々なされている(例えば、特許文献1参照。)。確かに、シーラント剤からなる層により色素の浸透を抑制する方法は有効ではある。しかし、例えば包装体を構成する包装材料の内面に設けられている酸素インジケーター部を覆うようにシーラント層を設けた場合、包装体の内面への酸化還元色素の溶出は抑えられるが、外側への酸化還元色素の溶出は抑えにくく、包装体を構成する包装材料が酸化アルミニウムの蒸着薄膜を設けてなる酸素バリアフィルムなどの場合では、酸素バリア処理面まで酸化還元色素が移行していき、そこで色素の一部が酸素の存在がないにも拘わらず還元型から酸化型へと変化して酸化色を呈してしまう、所謂色調異常を引き起こすことがある。
【0008】
このような色調異常は、高温滅菌処理や高温加熱調理などにおいて高温が加えられたときに発生し易い現象であるが、このような現象が起きると、一旦酸化型となった酸化還元色素は低温に戻されても還元型には回復できず、酸素インジケーター機能を果さなくなってしまう。
【0009】
一方、酸化還元色素、還元剤、バインダー樹脂、溶剤などを主体としてなる酸素インジケーター部の還元剤としては、D−グルコースやL−アスコルビン酸などの、室温付近での還元作用が有効なものも広く使用されている。しかしながら、還元糖類に代表されるこれらの還元剤は耐熱性を有していないため、高温滅菌処理などにより高温が加えられた場合には分解し、インジケーター機能を維持できなくなるため、高温の下での使用が想定される酸素インジケーター用の還元剤としては使用できない。
【0010】
このような分解による能力失活を解決し得る還元剤としては、アルコールアミンや多価アルコール類などが挙げられる。これらの還元剤は室温で還元作用を示すだけでなく、分子量が大きく、かつ耐熱性を有することから、高温に加熱された場合においても分解することは少なく、高温時においても還元作用が有効に働くとされている。
【0011】
このような特性を有するアルコールアミンや多価アルコール類などの還元剤の利用に関しては、例えば特許文献2、3に示されている。しかし、これらはいずれも室温で使用する通常の酸素インジケーターへの利用を前提としており、ボイル・レトルト処理などによる加熱滅菌処理や加熱調理により高温で加熱された場合においても酸素の有無を的確に検知できるようにし、しかも前記したような色調異常を解消するようにしたものではない。
【0012】
また、このような還元剤は、例えば酸素インジケーター機能を有するインキ組成物中に大量に添加すると、それを使用した印刷においてインキの塗工表面にタックがでるため、印刷工程でロールへのインキ取られを起き易くさせてしまう。
【特許文献1】特開2001−162724号公報
【特許文献2】特開昭53−120493号公報
【特許文献3】特開平5−209871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、高温滅菌処理や高温加熱調理などにより高温に加熱されたとしても、酸素の有無が長期に渡って安定的に変色表示でき、かつ無酸素状態下での酸化色の呈色現象(色調異常)を起こすこともないようにした酸素インジケーターインキ組成物と、この酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部を有する酸素インジケーターおよび包装材料を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記問題点を解決するためになされ、請求項1記載の発明は、少なくとも酸化還元色素と還元剤とバインダー樹脂と溶剤とを含むインキ組成物であって、還元剤として耐熱性を
有する天然酸化防止剤の一種類と、アルコールアミン類或いは多価アルコール類の一種類を少なくとも含んでいることを特徴とする酸素インジケーターインキ組成物である。
【0015】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の酸素インジケーターインキ組成物において、前記天然酸化防止剤aと、前記アルコールアミン類或いは多価アルコール類bとの重量比が0.01≦b/a≦5.00であることを特徴とする。
【0016】
さらにまた、請求項3記載の発明は、請求項1または2記載の酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が支持体上に設けられていることを特徴とする酸素インジケーターである。
【0017】
さらにまた、請求項4記載の発明は、請求項1または2記載の酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が酸素バリア性を有する支持体の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする酸素インジケーター機能を有する包装材料である。
【発明の効果】
【0018】
本発明の酸素インジケーターインキ組成物と酸素インジケーター並びに包装材料は、インキ組成物中の還元剤として、耐熱性を有する天然酸化防止剤(a)の一種類と、アルコールアミン類或いは多価アルコール類(b)の一種類を少なくとも含んでいるので、高温が加えられた場合においても耐熱性を有する天然酸化防止剤の還元作用が有効に働いて酸素の有無が色変化により的確に表示でき、さらには、例え高温が加えられて酸化還元色素が酸素インジケーター部から溶出して他の部材へ浸透し、そこで僅かな部分が酸化型になって酸化色に変色したとしても、アルコールアミン類或いは多価アルコール類の還元作用により還元型へ回復させることができるので、無酸素状態下での酸化色の呈色現象(色調異常)を起こさずに、長期に渡って酸素インジケーター機能を発揮することができる。
【0019】
また、天然酸化防止剤(a)と、アルコールアミン類或いは多価アルコール類(b)の重量比が0.01≦b/a≦5.00であることにより、酸素インジケーター部を設ける際の印刷加工適性を良好にすることも可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の酸素インジケーターインキ組成物は、上記したように、少なくとも酸化還元色素と還元剤とバインダー樹脂と溶剤とを含むインキ組成物であって、還元剤として耐熱性を有する天然酸化防止剤の一種類と、アルコールアミン類或いは多価アルコール類の一種類を少なくとも含んでいることを特徴とするものである。
【0021】
また、本発明の酸素インジケーターは、上記した組成の酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が支持体上に設けられていることを特徴とするものである。
【0022】
さらにまた、本発明の包装材料は、上記した組成の酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が酸素バリア性を有する支持体の一部に設けられていることを特徴とするものである。
【0023】
酸化還元色素としては、酸化状態と還元状態で異なる色を呈する色素であれば、いずれのものも制限なく使用することができる。具体的にはメチレンブルーの他、ニューメチレンブルー、トルイジンブルー、チオニンアセテート、ニュートラルレッド、インジゴカルミン、インジゴスルフォン酸カリウム塩、サフラニンT、フェノサフラニン、カプリブルー、ナイルブルー、ジフェニルアミン、ジフェニルアミンスルホン酸、キシレンシアノール、ニトロジフェニルアミン、フェロイン、ニトロフェロイン、N−フェニルアントラニル酸などが挙げられる。これらの中では、発色性や視認性、コスト面などを考慮すると、メチレンブルーを使用するのが最も好ましい。
【0024】
特にフェノチアジン環を有するチアジン系色素は、還元型での浸透および溶出が顕著であることから、無酸素状態での酸化色の呈色現象(色調異常)が心配されるが、本発明の酸素インジケーターインキ組成物は、還元剤として耐熱性を有する天然酸化防止剤の他に、アルコールアミン類或いは多価アルコール類の少なくとも一種類も還元剤として含有させているので、高温が加えられて酸化還元色素が酸素インジケーター部から溶出して他の部材へ浸透し、そこで一部が酸化型になることにより酸化色に変色したとしても、アルコールアミン類或いは多価アルコール類の還元作用により還元型へ回復させることができるので、無酸素状態下での酸化色の呈色現象(色調異常)を起こさず、長期に渡って酸素インジケーター機能を発揮することが可能となる。
【0025】
本発明に使用される還元剤は、上述したように、高温滅菌処理や高温加熱調理などによって高温になったときに還元作用が有効な、耐熱性を有する天然酸化防止剤(a)の一種類と、耐熱性を有し、室温保管時における還元作用が有効なアルコールアミン類或いは多価アルコール類(b)の一種類である。
【0026】
このような天然酸化防止剤(a)としては、ローズマリー抽出物の他、トコフェロール、ケルセチンやアントシアニン、茶カテキンなどのポリフェノール、没食子酸誘導体、コーヒー酸やフェルラ酸、グルタチオンなどのアミノ酸、β−カロチンやリコピンなどのカロテノイド類などを挙げることができる。また、その使用量は上記酸化還元色素1重量部に対して、1〜100重量部程度であることが好ましい。
【0027】
また、アルコールアミン類或いは多価アルコール類(b)としては、3−アミノ−1,2−プロパンジオール、3−アミノ−1−プロパノール、3−アミノ−2−プロパノール、アミノフェノール、ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルコールアミン類、エチレングリコール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリビニルアルコールなどの多価アルコール類などを挙げることできる。
【0028】
その使用量は天然酸化防止剤(a)に対して、重量比で0.01≦b/a≦5.00の範囲であることが望ましい。使用量がこれよりも少ないと、室温付近での充分な還元作用を期待し難く、色調異常を改善できない可能性がある。また、その使用量は最大でも天然酸化防止剤(a)の5倍以下とすることで印刷適性を改善し、インキ塗工部の表面タックの発生を回避することができる。さらには、アルコールアミン類の一部は、下記するバインダー樹脂の官能基末端を保護する役割を担うことが可能で、これによりインキの貯蔵安定性を確保することができる。
【0029】
バインダー樹脂は、上記した酸化還元色素と二種類の還元剤と、溶媒などを支持体上に固着するために用いられる。インキ化する際に好適に用いられるバインダー樹脂としては、具体的にはエチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、セルロースアセテートなどのセルロース誘導体やブチラール樹脂、アセタール樹脂、親水基を導入したポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン−ウレア樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。特に酸化還元色素の溶解性とボイル・レトルトなどの高温滅菌処理に係る高温加熱に対する耐性を考慮し、耐熱性を有する水性樹脂を使用することが好ましい。
【0030】
上記バインダー樹脂は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルなどに代表される有機系溶剤、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどに代表される水系溶剤に溶解あるいは分散させて使用される。これら溶剤は単独で、または複
数を組み合わせて用いればよい。
【0031】
本発明の酸素インジケーターインキ組成物には、必要に応じて界面活性剤や分散剤、消泡剤、さらには酸化還元色素以外に別途、着色剤などを添加してもよい。インキ中にこれらを添加することにより、インキ組成物の安定性や速乾性、視認性などを向上させることができる。また、上記した組成の酸素インジケーターインキ組成物は2液型に調整してもよい。すなわち、少なくとも酸化還元色素とバインダー樹脂からなるA液と、少なくとも還元剤とバインダー樹脂からなるB液を印刷直前に混合して使用するインキ組成物とすることにより、インキ組成物の保存安定性を向上させるようにしてもよい。
【0032】
以上、本発明の酸素インジケータインキ組成物について説明したが、本発明の酸素インジケーター並びに包装材料は、上述したように、このような組成並びに特性を有する酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が支持体上の少なくとも一部に設けられてなるものである。
【0033】
酸素インジケーターを構成する支持体としては、酸素インジケーターインキ組成物と反応せず、しかも酸化還元色素の呈色性を阻害しないシートやフィルムなどが使用できる。具体的には、紙、合成紙、不織布、または合成樹脂フィルムなどである。
【0034】
本発明の酸素インジケーターは、このような支持体上に、上記した酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部を形成して得られる。酸素インジケーター部の形成に当たっては、印刷法、コーティング法などが用いられる。印刷方法としては、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などが利用でき、またコーティング法としては、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ベタコーティングなどが利用できる。
【0035】
また、本発明の酸素インジケーター機能を有する包装材料は、包装袋や包装容器などの包装体を構成するものであって、具体的には、酸素バリア性を有する包装用シート部材などの支持体の少なくとも一部に、上記した酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が設けられてなるものである。
【0036】
酸素バリア性を有する支持体としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリアミド6やポリアミド6−ポリアミド66共重合体、MXD6などの芳香族ポリアミドに代表されるポリアミド樹脂、ポリアクリルニトリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂などからなる熱可塑性樹脂層の上に、アルミニウム箔などの金属箔層や、酸化珪素、酸化アルミニウムなど無機酸化物の蒸着薄膜層、さらにはヘキサメチレンジシロキサンなどのオルガノシランとアセチレンガスやその他の炭素ガス源を用いたCVD蒸着法により得られる蒸着熱可塑性樹脂層などが積層されてなるものが用いられる。これらの酸素バリア性を有する支持体は、上記した酸素インジケーターインキ組成物と反応せず、しかもインキ組成物中に含有する酸化還元色素の呈色性を阻害しないものであることが要求される。
【0037】
このような支持体の少なくとも一部に、酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部を設けることによって本発明の酸素インジケーター機能を有する包装材料は得られるが、酸素インジケーター部の形成に当たっては、包装体としたときに外側に酸素バリアの部分が位置し、酸素インジケーター部は内側に位置するようにすればよい。また、酸素インジケーター部の形成に当たっては、密着強度の改善や色素の退色防止を目的に、その上下にアンカーコート層やオーバーコート層などを適宜設けておいてもよい。これらの層は、酸素を透過し、かつ支持体との密着性が良く、また酸素インジケーター部
における発色を妨げないものであればよい。
【0038】
支持体上への酸素インジケーター部の形成は、印刷法やコーティング法などにより行えばよい。印刷方法としては、凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などが利用でき、またコーティング法としては、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ベタコーティングなどが利用できる。
【0039】
以下に本発明の実施例について、具体的に説明する。本発明はこれに限定されるものではない。
【実施例1】
【0040】
まず、下記成分をペイントコンディショナーで微細・分散させることにより、比較のための実施例1に係る酸素インジケーターインキ組成物を得た。
【0041】
<酸素インジケーターインキ組成物の組成>
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・・1.00重量部
還元剤a:ローズマリー抽出物・・・・・・・・4.00重量部
水性アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・・48.00重量部
イソプロピルアルコール・・・・・・・・・・24.00重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24.00重量部
なお、還元剤a(ローズマリー抽出物)としては、三菱化学フーズ株式会社製のRM−21Aベースを使用した。
【0042】
このインキ組成物を用い、グラビア版(200L/In、30μm)を用いた2度刷りにより、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム、厚さ12μm)のコロナ処理面上にインキ薄膜を形成した後、室温で12時間乾燥させることにより酸素インジケーター部を設けた。続いて、ウレタン系2液硬化型接着剤を使用したドライラミネート法により、酸素インジケーター部上には低溶出シーラント層を、PETフィルムの酸素インジケーター部が設けられていない側にはアルミナ蒸着フィルムをそれぞれ積層させ、比較のための実施例1に係る包装材料を得た。この包装材料を製袋して、酸素吸収剤を入れた後、窒素置換して密封した。
【実施例2】
【0043】
下記組成の酸素インジケーターインキ組成物を実施例1と同様の方法で得、さらにこの酸素インジケーターインキ組成物を用いて実施例1と同様な方法で、比較のための実施例2に係る包装材料を得ると共に、この包装材料を製袋して、酸素吸収剤を入れた後、窒素置換して密封した。
【0044】
<酸素インジケーターインキ組成物の組成>
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・・1.00重量部
還元剤b:N−メチルジエタノールアミン・・・4.00重量部
水性アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・・48.00重量部
イソプロピルアルコール・・・・・・・・・・24.00重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24.00重量部。
【実施例3】
【0045】
下記組成の本発明に係る酸素インジケーターインキ組成物を実施例1と同様の方法で得、さらにこの酸素インジケーターインキ組成物を用いて実施例1と同様な方法で、本発明の実施例3に係る包装材料を得ると共に、この包装材料を製袋して、酸素吸収剤を入れた後、窒素置換して密封した。
【0046】
<酸素インジケーターインキ組成物の組成>
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・・1.00重量部
還元剤a:ローズマリー抽出物・・・・・・・・2.00重量部
還元剤b:N−メチルジエタノールアミン・・・2.00重量部
水性アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・・48.00重量部
イソプロピルアルコール・・・・・・・・・・24.00重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・24.00重量部。
【0047】
[試験1]
以上のようにして得られた各酸素インジケーターインキ組成物を室温にて保管し、その貯蔵安定性を観察した。結果を表1に示す。
【0048】
[試験2]
以上のようにして得られた各酸素インジケーターインキ組成物を用いて、グラビア印刷機にて印刷テストを行った。印刷直後のサンプルを取り出し、インキ塗工部表面のタックや、印刷機のガイドロールへのインキ取られが無いかを確認した。結果を表1に示す。
【0049】
[試験3]
実施例1から3に係る包装体に対して121℃−30minのレトルト処理を行った後、室温にて保管して、酸素インジケーター部における色相の変化を観察した。結果を表1に示す。
【0050】
【表1】

表1の試験1の欄からも明らかなように、還元剤aのみを用いた実施例1に係る酸素インジケーターインキ組成物は、数日でインキ固形分がサンプル管の底部に沈澱した。一方、還元剤bを含む実施例2および3に係る酸素インジケーターインキ組成物は、還元剤b:N−メチルジエタノールアミンがバインダー樹脂末端の官能基を保護するため、1ヵ月後も沈澱などは確認されず、貯蔵安定性が良好であることが確認された。
【0051】
一方、表1の試験2からも明らかなように、実施例2の還元剤bのみを用いた酸素インジケーターインキ組成物は、還元剤bが粘着質であることから、インキ塗工部にタックが残り、印刷工程や巻き替え工程でのインキ取られが発生した。
【0052】
他方、表1の試験2からも明らかなように、実施例1の酸素インジケーター機能を有する包装材料では、レトルト処理による高温加熱でメチレンブルーが支持体のアルミナ蒸着フィルム面まで浸透し、包装体内の酸素濃度が0%であるにもかかわらず還元色を維持できなかった。また、還元剤を併用した本発明の実施例3に係る包装材料においては、室温にて還元剤bの還元作用が有効であるため、酸化色を確認することはできなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも酸化還元色素と還元剤とバインダー樹脂と溶剤とを含むインキ組成物であって、還元剤として耐熱性を有する天然酸化防止剤の一種類と、アルコールアミン類或いは多価アルコール類の一種類を少なくとも含んでいることを特徴とする酸素インジケーターインキ組成物。
【請求項2】
前記天然酸化防止剤aと、前記アルコールアミン類或いは多価アルコール類bとの重量比が0.01≦b/a≦5.00であることを特徴とする請求項1記載の酸素インジケーターインキ組成物。
【請求項3】
請求項1または2記載の酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が支持体上に設けられていることを特徴とする酸素インジケーター。
【請求項4】
請求項1または2記載の酸素インジケーターインキ組成物からなる酸素インジケーター部が酸素バリア性を有する支持体上の少なくとも一部に設けられていることを特徴とする酸素インジケーター機能を有する包装材料。

【公開番号】特開2008−102074(P2008−102074A)
【公開日】平成20年5月1日(2008.5.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−286045(P2006−286045)
【出願日】平成18年10月20日(2006.10.20)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】