説明

酸素ガスの溶解方法および溶解装置

【課題】 加圧型気体溶解機構とその後に設置された降圧機構より成る気体溶解装置に於いて、降圧機構という、内径が5〜1000μmのキャピラリーを100〜1000本形成するという、かなり高価な大掛かりな装置を必要とし、それでも過飽和に溶解した気体が気泡となって析出、飛散していた。
【解決手段】 溶解槽20からの水が循環配管121、122、123、124、125、126によって循環する途中で酸素富化ガスを供給する酸素ガス配管131、132、133を合流させた後に、気液混合ポンプ50によって吸引と混合と攪拌と加圧させることで高濃度の酸素ガスの溶解した液体を作り出し、その液体を溶解槽20に一気に減圧しながら放出することで超微細な酸素気泡を発生させ、その酸素気泡から水に酸素ガスを溶解する酸素ガスの溶解装置に於いて、酸素ガス配管131、132、133の上流に圧縮空気より酸素富化ガスを分離する中空糸膜10を接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素ガスの溶解方法および溶解装置に関する技術であって、更に詳細に述べると、気体である酸素富化ガスと液体である水を気液混合ポンプによって吸引と混合と攪拌と加圧させることで高濃度の酸素ガスの溶解した液体を作り出し、その液体を溶解槽に一気に減圧しながら放出することで超微細な酸素気泡を発生させて水に酸素ガスを溶解する技術に関して述べたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、酸素ガスの溶解方法および溶解装置に関する技術としては、加圧液体と加圧気体とを接触させることにより、気体を液体に溶解させる加圧型気体溶解機構と、液体流路において該加圧型気体溶解機構の後に設置された降圧機構とで構成される気体溶解装置で、降圧機構が、複数のキャピラリーの内側に加圧液体を流すことにより、液体を降圧させるように構成したものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
この場合、加圧型気体溶解機構としては、加圧した液体に気体を溶解させる機構であれば、膜式のものでも、液送ポンプを用いるものでも、小形容器中で回転翼を高速攪拌させる高速攪拌式によるものでも構わない。
【0004】
また、降圧機構は、加圧型気体溶解機構で過飽和に気体を溶解させた場合には、使用圧力まで降圧すると過飽和分が気泡として析出するために、それに対応する為に配設したものである。
【特許文献1】特開平8−89771
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来の、酸素ガスの溶解方法および溶解装置に関しては、以下に示すような課題があった。
【0006】
即ち、降圧機構という、内径が5〜1000μmのキャピラリーを100〜1000本形成するという、かなり高価な大掛かりな装置を必要とした。
【0007】
また、そのように大掛かりな装置を準備しても、過飽和に溶解した気体が気泡となって析出、飛散していた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、溶解槽20からの水が循環する途中で酸素富化ガスを合流させた後に、吸引と混合と攪拌と加圧させることで高濃度の酸素ガスの溶解した液体を作り出し、その液体を前記溶解槽20に一気に減圧しながら放出することで超微細な酸素気泡を発生させ、その酸素気泡によって水に酸素ガスを溶解する酸素ガスの溶解方法に於いて、合流が円滑に成されるように合流前の酸素富化ガスの圧力を循環している水の圧力より高い圧力としたことを特徴とし、更には、酸素富化ガスは、圧縮空気を中空糸膜10に送り込むことによって作り出すものであることを特徴とし、更には、前記溶解槽20で超微細な酸素気泡だけが発生するように、吸引と混合と攪拌と加圧させた液体から大きな酸素気泡を除去することを特徴とすることによって、上記課題を解決したのである。
【0009】
また、本発明は、溶解槽20からの水が循環配管121、122、123、124、125、126によって循環する途中で酸素富化ガスを供給する酸素ガス配管131、132、133を合流させた後に、気液混合ポンプ50によって吸引と混合と攪拌と加圧させることで高濃度の酸素ガスの溶解した液体を作り出し、その液体を前記溶解槽20に一気に減圧しながら放出することで超微細な酸素気泡を発生させ、その酸素気泡から水に酸素ガスを溶解する酸素ガスの溶解装置に於いて、前記酸素ガス配管131、132、133の上流に圧縮空気より酸素富化ガスを分離する中空糸膜10を接続したことを特徴とし、更には、前記酸素ガス配管131、132、133の途中に前記中空糸膜10の側に酸素富化ガスが逆流しないように逆流防止装置11、12を設け、前記気液混合ポンプ50と前記溶解槽20の間に吸引と混合と攪拌と加圧した液体から大きな酸素気泡を除去する加圧溶解槽60を配設したことを特徴とし、更には、前記逆流防止装置11は、逆止弁11であることを特徴とすることによって、上記課題を解決したのである。
【発明の効果】
【0010】
以上の説明から明らかなように、本発明によって、以下に示すような効果をあげることが出来る。
【0011】
第一に、溶解槽からの水が循環する途中で酸素富化ガスを合流させた後に、吸引と混合と攪拌と加圧させることで高濃度の酸素ガスの溶解した液体を作り出し、その液体を溶解槽に一気に減圧しながら放出することで超微細な酸素気泡を発生させ、その酸素気泡によって水に酸素ガスを溶解させる中で、合流が円滑に成されるように合流前の酸素富化ガスの圧力を循環している水の圧力より高い圧力としたことで、気液混合ポンプでの吸引と混合と攪拌と加圧の動作が確実なものとなった。
【0012】
第二に、酸素富化ガスは、圧縮空気を中空糸膜に送り込むことによって作り出すことにより、圧力の高い酸素富化ガスを容易に水が循環する途中の合流部に送り込む事が可能となった。
【0013】
第三に、溶解槽で超微細な酸素気泡だけが発生するように、吸引と混合と攪拌と加圧させた液体から大きな酸素気泡を除去することで、より確実に酸素を溶解することが可能となった。
【0014】
第四に、酸素ガス配管の途中に中空糸膜の側に酸素富化ガスが逆流しないように逆流防止装置を設けることで、気液混合ポンプに於ける吸引と混合と攪拌と加圧の動作がより確実なものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面と共に詳細に説明する。
ここで、図1は、本願発明の全体を示した図であり、図2は、本願発明の別の全体を示した図である。
【0016】
(第一の実施例)
図1に見られるように、10は中空糸膜であり、圧縮空気を受け入れる圧縮空気配管111と、窒素富化ガスを排出する窒素ガス排出管112と、酸素富化ガスを排出する酸素ガス配管131を接続している。
【0017】
ところで、中空糸膜10は、ポリエステル製で孔径300μm程度の何千ものストロー状の中空糸を一つに束ねたものより構成されていて、その中空糸の内部に圧縮空気等の各種の気体が混合したものを通すことにより、それぞれの気体が固有にもっている中空糸の膜の透過するスピードの違いを利用して、混合している各々の気体を分離することが出来るのである。
【0018】
この場合、圧縮空気を構成している各気体の成分が、中空糸膜10である中空糸の膜に対する(放出という視点から見た)透過量の差を利用して早く放出する気体と放出しにくい気体がある中で、放出しにくくて残った気体が下流の方に流れていくことになるのである。
【0019】
特に、中空糸の膜がポリエステル製の場合には、水蒸気が一番透過しやすく、以下水素ガスやヘリウムガスが透過しやすく、最後に酸素ガスとアルゴンガスと窒素ガスが一番透過しにくく、その中でも窒素ガスが一番透過しにくい気体ということで、窒素ガス排出管112に窒素富化ガスを排出している。
【0020】
従って、早い時点に透過した酸素ガスを中心とする酸素富化ガスが、酸素ガス配管131に流れるようになっているのである。
【0021】
尚、中空糸の膜としては、ポリエステルの他に、ポリイミドやポリオレフィンやポリプロピレン等の樹脂も考えられる。
【0022】
一方、酸素ガス配管131の下流には、酸素ガスが中空糸膜10の側に逆流しないようにする逆流防止装置11でもある逆止弁11と、酸素ガス配管132と、酸素ガスの流量を調整することが可能な流量調整弁15と、酸素ガス配管133を記載の順に接続し、更に溶解槽20からの循環配管121と合流して循環配管122に流れるようにしているのである。
【0023】
尚、流量調整弁15に関しては、流量を少なくすることによって酸素ガスの濃度を高めることが可能である。 別の観点から述べると、この流量調整弁15は、窒素ガス排出管112の何れかの場所に位置させることで窒素ガスの濃度を高めることに使用することも考えられる。
【0024】
ところで、循環配管121は、水に酸素ガスを溶解させる溶解槽20の水を循環させる目的で溶解槽20に接続したものであり、酸素ガス配管133と合流した後に循環配管122と、気液を吸引し混合し攪拌し加圧させることで高濃度の酸素ガスの溶解した液体を作り出す気液混合ポンプ50と、循環配管123と、液体の流れを開閉する開閉弁61と、循環配管124と、吸引し混合し攪拌し加圧させた液体の中の大きな気泡を除去する加圧溶解槽60と、循環配管125と、液体の流れを開閉する開閉弁62と、循環配管126を溶解槽20に接続し、溶解槽20に吸引し混合し攪拌し加圧させた液体を一気に減圧しながら放出することで超微細な酸素気泡を発生させ、その酸素気泡によって溶解槽20の中の水に酸素ガスを溶解している。
【0025】
この場合、気液混合ポンプ50としては、気体と液体を吸引し混合し攪拌し加圧させることで高純度の酸素ガスの溶解した液体を作り出すものであれば、どの様な形式のものでも構わないが、特に渦流タービンポンプを使用するのが、今回のような水と酸素ガスの混合には最善である。
【0026】
また、加圧溶解槽60の上部には排気管141と開閉弁63を接続することで、加圧溶解槽60の上部に溜まった大きな気泡を状況に応じて除去することが可能となっているのである。
【0027】
更に、溶解槽20に吸引し混合し攪拌し加圧させた液体を一気に減圧しながら放出するに際し、液体の流速を抑えながら放出するのが望ましい。
【0028】
本発明による、酸素ガスの溶解方法および溶解装置は前述したように構成されており、以下にその動作について説明する。
【0029】
先ず、中空糸膜10に圧縮空気を流すことによって、窒素ガス排出管112には窒素富化ガスを、酸素ガス配管131には酸素富化ガスを分離することが出来るようになっているのである。
【0030】
この場合、圧縮空気から酸素富化ガスを分離することで、後に述べる循環配管121、122、123、124、125、126を流れる水の圧力より高い圧力の酸素富化ガスを容易に得ることが出来るのである。 また、逆流防止手段11である逆止弁11によって、循環配管121、122の側から中空糸膜10の側に酸素富化ガスが逆流するのを防止している。 更に、流量調整弁15により、流量を少なくすることによって酸素ガスの濃度を高めることを可能にしているのである。
【0031】
一方、溶解槽20を出発点として、溶解槽20から循環配管121と循環配管122と気液混合ポンプ50と循環配管123と開閉弁61と循環配管124と加圧溶解槽60と循環配管125と開閉弁62と循環配管126と溶解槽20に循環配管経路を形成している中で、酸素ガス配管131は、逆止弁11と酸素ガス配管132と流量調整弁15と酸素ガス配管133を経由して、循環配管121と合流して循環配管122から気液混合ポンプ50に流入するようになっている。
【0032】
ここで、気液混合ポンプ50に於いては、酸素富化ガスと水を吸引と混合と攪拌と加圧させることで高濃度の酸素ガスを溶解した液体を作り出し、加圧溶解槽60に於いては、高濃度の酸素ガスを溶解した液体より発生した比較的おおきな気泡を加圧溶解槽60の上部に分離し、溶解槽20に於いては、加圧された高濃度の酸素ガスを溶解した液体を一気に減圧しながら溶解槽20に放出することで溶解槽20内の水に酸素ガスが溶解するのである。
【0033】
尚、気液混合ポンプ50に於いては、気液を吸引と混合と攪拌と加圧して高濃度の酸素ガスを溶解した液体を作り出しているが、溶解槽20に於いては、吸引と混合と攪拌と加圧された高濃度の酸素ガスを溶解した液体を一気に減圧しながら放出することにより、以降に於いて水に溶解した過飽和の酸素ガスが析出する心配は無くなっている。
【0034】
(第二の実施例)
図2に見られるように、第二の実施例が第一の実施例と異なる点は、逆止弁11に代わって逆流防止装置12である電磁弁12を配設し、その電磁弁12に配線151、152、155とスィッチ51と気液混合ポンプ50と図2に具体的に示されていない電源と接続したことである。
【0035】
この様な構成によって、気液混合ポンプ50が作動している場合には、電磁弁12を開放することで酸素富化ガスが流れるようにし、気液混合ポンプ50が作動していない場合には、電磁弁12を閉鎖することで酸素富化ガスが流れないようにしたことである。尚、前述以外の内容に関しては第一の実施例と同じになるので省略する。
【産業上の利用可能性】
【0036】
水に高濃度の酸素ガスを溶解させることで、いけすに利用して魚の成長促進効果を期待したり、水耕栽培に利用して植物の成長促進効果を期待することが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】 本願発明の全体を示した図
【図2】 本願発明の別の全体を示した図
【符号の説明】
【0038】
10・・・・・・中空糸膜
11・・・・・・逆止弁(逆流防止装置)
12・・・・・・電磁弁(逆流防止装置)
15・・・・・・流量調整弁
20・・・・・・溶解槽
50・・・・・・気液混合ポンプ
51・・・・・・スイッチ
60・・・・・・加圧溶解槽
61・・・・・・開閉弁
62・・・・・・開閉弁
63・・・・・・開閉弁
111・・・・・圧縮空気配管
112・・・・・窒素ガス排出管
121・・・・・循環配管
122・・・・・循環配管
123・・・・・循環配管
124・・・・・循環配管
125・・・・・循環配管
126・・・・・循環配管
131・・・・・酸素ガス配管
132・・・・・酸素ガス配管
133・・・・・酸素ガス配管
141・・・・・排気管
151・・・・・配線
152・・・・・配線
155・・・・・配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶解槽(20)からの水が循環する途中で酸素富化ガスを合流させた後に、吸引と混合と攪拌と加圧させることで高濃度の酸素ガスの溶解した液体を作り出し、その液体を前記溶解槽(20)に一気に減圧しながら放出することで超微細な酸素気泡を発生させ、その酸素気泡によって水に酸素ガスを溶解する酸素ガスの溶解方法に於いて、合流が円滑に成されるように合流前の酸素富化ガスの圧力を循環している水の圧力より高い圧力としたことを特徴とする酸素ガスの溶解方法。
【請求項2】
酸素富化ガスは、圧縮空気を中空糸膜(10)に送り込むことによって作り出すものであることを特徴とする請求項1に記載の酸素ガスの溶解方法。
【請求項3】
前記溶解槽(20)で超微細な酸素気泡だけが発生するように、吸引と混合と攪拌と加圧させた液体から大きな酸素気泡を除去することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸素ガスの溶解方法。
【請求項4】
溶解槽(20)からの水が循環配管(121、122、123、124、125、126)によって循環する途中で酸素富化ガスを供給する酸素ガス配管(131、132、133)を合流させた後に、気液混合ポンプ(50)によって吸引と混合と攪拌と加圧させることで高濃度の酸素ガスの溶解した液体を作り出し、その液体を前記溶解槽(20)に一気に減圧しながら放出することで超微細な酸素気泡を発生させ、その酸素気泡から水に酸素ガスを溶解する酸素ガスの溶解装置に於いて、前記酸素ガス配管(131、132、133)の上流に圧縮空気より酸素富化ガスを分離する中空糸膜(10)を接続したことを特徴とする酸素ガスの溶解装置。
【請求項5】
前記酸素ガス配管(131、132、133)の途中に前記中空糸膜(10)の側に酸素富化ガスが逆流しないように逆流防止装置(11、12)を設け、前記気液混合ポンプ(50)と前記溶解槽(20)の間に吸引と混合と攪拌と加圧した液体から大きな酸素気泡を除去する加圧溶解槽(60)を配設したことを特徴とする請求項4に記載の酸素ガスの溶解装置。
【請求項6】
前記逆流防止装置(11)は、逆止弁(11)であることを特徴とする請求項5に記載の酸素ガスの溶解装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−854(P2007−854A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−213388(P2005−213388)
【出願日】平成17年6月27日(2005.6.27)
【出願人】(000154521)株式会社フクハラ (87)
【Fターム(参考)】