説明

酸素分離膜エレメントならびに該エレメントの接合方法および接合材

【課題】ペロブスカイト型酸化物から成る酸素分離膜を備える酸素分離膜エレメントの接合部分(シール部)であって使用高温域で十分なシール性を実現し得る接合部分を備えた酸素分離膜エレメントを提供すること。
【解決手段】 本発明によって提供される酸素分離膜エレメント10は、多孔質基材14上に酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る酸素分離膜15を備え、その酸素分離膜には少なくとも一つのペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る接続部材12,16が接合されており、酸素分離膜と接続部材との接合部分は、該接合部分におけるガス流通を遮断するシール部20a,20bを構成しており、該シール部はペロブスカイト構造酸化物セラミックスとシリカとから形成されており、該シール部におけるシリカ含有率は8〜14質量%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は酸素分離膜エレメントに関する。詳しくは、酸素イオン伝導体であるペロブスカイト型酸化物セラミックスから成る酸素分離膜を備えた酸素分離膜エレメントを気密性を保持しながら他の接続部材と接続する接合方法(シール方法)と、そのような気密性を保持した接合部分(シール部)を形成するために使用される接合材に関する。
【背景技術】
【0002】
酸素イオン(典型的にはO2−;酸化物イオンとも呼ばれる。)伝導性を有する酸素イオン伝導体として、いわゆるペロブスカイト型構造の酸化物セラミックスやパイロクロア型構造の酸化物セラミックスが知られている。特に、酸素イオン伝導体であることに加え、電子伝導性を兼ね備えた酸素イオン−電子混合伝導体(以下、単に「混合伝導体」という。)であるペロブスカイト型酸化物から成る緻密なセラミック材、典型的には膜状に形成されたセラミック材は、その両面を短絡させるための外部電極や外部回路を用いることなく一方の面から他方の面に連続して酸素イオンを透過させることができる。このため、一方の面に供給された酸素含有ガス(空気等)から酸素を他方の面に選択的に透過させる酸素分離材として、特に使用温度が800〜1000℃というような高温域で好適に利用することができる。
例えば、ペロブスカイト型酸化物等の混合伝導体から構成される酸素分離膜を多孔質基材上に備えた酸素分離材(酸素分離膜エレメント)は、深冷分離法やPSA(Pressure Swing Adsorption)法に代わる有効な酸素精製手段として好適に使用することができる。
或いはまた、かかる構成の酸素分離膜エレメントは、一方の面から他方の面に供給された酸素イオンによって当該他方の面に供給された炭化水素(メタンガス等)を酸化させて合成液体燃料(メタノール等)を製造するGTL(Gas To Liquid)技術、或いは燃料電池分野で好適に使用することができる。
この種の従来技術として、特許文献1〜4には、混合伝導体である幾つかのペロブスカイト型酸化物が記載されている。また、特許文献5〜9には、ペロブスカイト型酸化物から構成された酸素分離膜を備える酸素分離材(膜エレメント)の好例が開示されている。また、特許文献10〜11には、円筒状の酸素分離材(エレメント)と当該酸素分離材を備える装置(モジュール)が記載されている。
【0003】
ところで、上記円筒形状或いはその他の形状の酸素分離材(膜エレメント)を基本構成要素として酸素分離装置(モジュール)を構築する場合、種々の部材が相互に接合される結果、酸素分離材は気密性を保持するシール部(接合部分)を伴う形態で構築される。
従来、使用温度が例えば800〜1000℃となるような高温域で使用する酸素分離装置(モジュール)においては、かかるシール部のシール性(気密性)を確保するべく、シール部(接合部分)を構成する接合材としてガラス材料や金属材料が検討されている。例えば、特許文献12〜14には、従来の接合材(シール材)の例が記載されている。その他、接合に関する従来技術として特許文献15〜19が挙げられる。
【0004】
【特許文献1】特開2000−251534号公報
【特許文献2】特開2000−251535号公報
【特許文献3】特表2000−511507号公報
【特許文献4】特開2001−93325号公報
【特許文献5】国際公開第WO2003/040058号パンフレット
【特許文献6】特開2006−82040号公報
【特許文献7】特開2007−51032号公報
【特許文献8】特開2007−51034号公報
【特許文献9】特開2007−51035号公報
【特許文献10】特開平11−70314号公報
【特許文献11】特開2002−292234号公報
【特許文献12】特開2002−83517号公報
【特許文献13】特開2002−349714号公報
【特許文献14】特開2004−323334号公報
【特許文献15】特開昭63−256574号公報
【特許文献16】特開平1−164772号公報
【特許文献17】特開平8−2977号公報
【特許文献18】特開2004−284947号公報
【特許文献19】特許第2627566号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この種のセラミック材の接合に用いられる従来の典型的な接合材は、上記高温域において溶融状態となり得るガラス又は金属材料(例えば特許文献13、14参照)であり、当該高温域(例えば800〜1000℃)で使用する場合には、溶融して所定の接合部位から流出する虞がある。そこで、溶融した接合材が流出しないように構造上の対策(例えば溶融した接合材を囲い込むバリア構造の追加、或いは接合材の流出を防止する荷重をかける構造)を施す必要があった。また、溶融状態でシールされる場合、接着強度が得られ難い、あるいは加圧雰囲気で使用し難い、等の問題もある。
また、比較的熱膨張し易いペロブスカイト型酸化物(例えば熱膨張係数が10〜15×10−6−1)に対し、熱膨張し難い従来のガラス材料(例えば熱膨張係数が1〜5×10−6−1である一般的なホウケイ酸ガラス)を接合材として適用した場合、低温固化の際の熱膨張差によって当該接合材が破損する虞がある。さらに、熱膨張差の大きい従来の接合材を採用して得られた酸素分離材を上記高温域で繰り返し使用する場合、使用前の昇温時ならびに使用後の降温時においてシール部のシール性が徐々に低下する虞もあり、耐久性の観点から改善する余地がある。
【0006】
本発明は、高温域で使用する酸素分離膜エレメント(ひいては酸素分離モジュール)に使用されている従来の接合材に関する上記問題点に鑑み創出されたものであり、上記ペロブスカイト型酸化物から成る酸素分離膜を備える酸素分離膜エレメントのシール部(接合部分)を構成する接合材であって使用高温域で流出することなく十分なシール性を実現し得る接合材を提供することを目的とする。また、本発明は、そのような接合材で酸素分離膜エレメントの接合部分を形成する接合方法(換言すればシール方法)、ならびにそのような接合材で接合部分(シール部)が形成された酸素分離膜エレメントの提供を他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によって多孔質基材上に酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る酸素分離膜を備える酸素分離膜エレメントが提供される。ここで開示される酸素分離膜エレメントでは、上記酸素分離膜には、少なくとも一つのペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る接続部材が接合されている。そして、上記酸素分離膜と上記接続部材との接合部分は、該接合部分におけるガス流通を遮断する(即ち該接合部分における気密性を保持する)シール部を構成している。ここで、上記シール部は、ペロブスカイト構造酸化物セラミックスとシリカとから形成されており、該シール部におけるシリカの含有率は8〜14質量%であることを特徴とする。
【0008】
本発明者は、ペロブスカイト構造酸化物セラミックスの緻密化温度がシリカの存在によって低下(典型的には50〜100℃程度)することを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、ここで開示される酸素分離膜エレメントでは、酸素分離膜と当該酸素分離膜に接合されるペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る接続部材との接合部分が当該接合対象物と同様のペロブスカイト構造酸化物セラミックスを主体としさらにシリカを8〜14質量%の含有率で含む。このことにより、酸素分離膜に熱的ダメージを与えない比較的低い焼成温度で緻密性の高い接合部分、即ちガス流通を遮断するシール部が形成されている。これにより、本発明の酸素分離膜エレメントによると、上記酸素分離膜と上記接続部材との接合部分(シール部)からのガスのリークを防止しつつ高性能な酸素分離処理を行うことができる。また、シリカの融点が高いために典型的には800〜1000℃の範囲内であるような高温域で繰り返し使用しても(換言すれば常温からの昇温と使用後の降温とを繰り返しても)、上記接合部分(シール部)からシリカが溶解して流出することがない。このため、典型的には800〜1000℃の範囲内であるような高温域で長期にわたって高い気密性を保持することができる。従って、本発明によると、耐熱性および耐久性に優れる酸素分離膜エレメントが提供される。
【0009】
ここで開示される酸素分離膜エレメントとして好ましい一態様では、上記酸素分離膜および接続部材は、いずれも一般式:Ln1−xAeMO(但し、式中のLnはランタノイドから選択される少なくとも一種であり、AeはSr,CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種であり、Mは、Mg,Mn,Ga,Ti,Co,Ni,Al,Fe,Cu,In,Sn,Zr,V,Cr,Zn,Ge,ScおよびYからなる群から選択される少なくとも一種であり、0≦x≦1である。)で表される組成のペロブスカイト構造を有する酸化物セラミックスにより構成される。
特に好ましい態様では、上記酸素分離膜および上記接続部材が同一の組成のペロブスカイト構造酸化物セラミックスにより形成されており、さらに上記シール部を構成するペロブスカイト構造酸化物セラミックスもまた同一組成のペロブスカイト構造酸化物セラミックスであることを特徴とする。
かかる構成の酸素分離膜エレメントでは、接合部分において特に高い接合強度と気密性(シール性)を実現することができる。また、接合対象の上記酸素分離膜および接続部材の熱膨張係数と、それらの間の接合部分に存在するシール部の熱膨張係数とが、特によく近似する。従って、本態様の酸素分離膜エレメントは、高温域での繰り返し使用に適し、長期にわたって気密性を保持し得る高い耐久性を実現する。
【0010】
また、本発明は他の側面として上記課題を解決する接合方法を提供する。即ち、ここで開示されるシール方法は、多孔質基材上に酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る酸素分離膜を備える酸素分離膜エレメントの接合方法である。この方法は、上記酸素分離膜と接合する対象のペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る接続部材を用意すること、平均粒子径が10μm未満であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックス粉末と平均粒子径が300nm以下のシリカ粉末とを含む接合材であって上記酸化物セラミックス粉末とシリカ粉末の合計量のうち該シリカ粉末の含有率が8〜14質量%である接合材を用意すること、上記接続部材と上記酸素分離膜とを接続した部分に上記用意した接合材を塗布すること、および、上記塗布された接合材を焼成することによって、上記接続部材と上記酸素分離膜との接合部分をガス流通を遮断するシール部とすることを包含する。典型的には、上記接合材はペースト状に調製されて使用される。また、上記シリカ粉末が単分散シリカ粒子で構成されていることが特に好ましい。
なお、本明細書および特許請求の範囲において「単分散」とは、単分散度、即ちCV値(%)が30%以下、好ましくは10%以下(例えば0.1〜10%、特に好ましくは0.1〜5%)であるものをいう。
ここでCV値(%)は以下の式から求めることができる。
CV値(%)=(粒子径の標準偏差/平均粒子径)×100
【0011】
上記構成の接合方法では、酸素分離膜とセラミックス製接続部材との接続部分(即ちその後の焼成によって接合させる部位)に、上記含有率でナノレベルの微細なシリカ粉末(好ましくは単分散シリカ粒子で構成されたもの)を含む上記組成の接合材を塗布し(典型的にはペースト状に調製された接合材を塗布する。)、次いで適当な温度域、好ましくは酸素分離膜の焼成温度(典型的には1400〜1600℃)より低温であり且つ所望される酸素分離膜使用温度(典型的には800〜1000℃)よりも高温で焼成する。
本構成の接合方法によると、高い機械的強度と高い緻密性を備えるシール部を接合部分に形成することができる。また、上記焼成温度以下の温度域(例えば800〜900℃、より好ましくは800〜1000℃の温度域)でシール部からシリカが溶け出して流出する虞がない。
従って、本構成の接合方法によると、典型的には800〜1000℃の範囲内で繰り返し使用しても(換言すれば常温からの昇温と使用後の降温とを繰り返しても)、上記酸素分離膜と接続部材とが接合された部分(即ち本発明に係るシール部)からのガスのリークがなく長期にわたって高い気密性を保持し得る耐熱性および耐久性に優れる酸素分離膜エレメントを製造することができる。また、ガラス接合材を完全に溶融させることなく両部材を接合するため、従来の溶融接合材ではシールすることが困難であった特殊な構造、あるいは荷重がかけられない構造の接合部分にも適用してシール部を形成することができる。
【0012】
本発明の接合方法の好ましい一態様では、上記酸素分離膜および接続部材は、いずれも一般式:Ln1−xAeMO(但し、式中のLnはランタノイドから選択される少なくとも一種であり、AeはSr,CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種であり、Mは、Mg,Mn,Ga,Ti,Co,Ni,Al,Fe,Cu,In,Sn,Zr,V,Cr,Zn,Ge,ScおよびYからなる群から選択される少なくとも一種であり、0≦x≦1である。)で表される組成のペロブスカイト構造を有する酸化物セラミックスにより構成される。
特に好ましい態様では、上記酸素分離膜および上記接続部材が同一の組成のペロブスカイト構造酸化物セラミックスにより形成されており、さらに上記シール部を構成するペロブスカイト構造酸化物セラミックスもまた同一組成のペロブスカイト構造酸化物セラミックスであることを特徴とする。
このような材料を用いることにより、接合部分において特に高い接合強度と気密性(シール性)を実現することができる。
【0013】
また、本発明は他の側面として上記課題を解決する接合材を提供する。即ち、ここで開示される接合材は、多孔質基材上に酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る酸素分離膜を備える酸素分離膜エレメントを接合するための接合材である。そして、平均粒子径が10μm未満であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックス粉末と平均粒子径が300nm以下のシリカ粉末とを含む接合材であって上記酸化物セラミックス粉末と該シリカ粉末の合計量のうち該シリカ粉末の含有率が8〜14質量%である。前記シリカ粉末が単分散シリカ粒子で構成されていることが特に好ましい。
好適な一態様では、ここで開示される接合材はペースト状に調製される。例えば、シリカ粉末原料として上記範囲内の平均粒子径の単分散シリカ粒子(例えばコロイダルシリカを構成する単分散シリカナノ粒子)を使用することによって、ナノレベルのシリカ粒子が均一に分散したペースト状接合材を提供することができる。
【0014】
また、好ましくは、上記酸化物セラミックス粉末は、一般式:Ln1−xAeMO(但し、式中のLnはランタノイドから選択される少なくとも一種であり、AeはSr,CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種であり、Mは、Mg,Mn,Ga,Ti,Co,Ni,Al,Fe,Cu,In,Sn,Zr,V,Cr,Zn,Ge,ScおよびYからなる群から選択される少なくとも一種であり、0≦x≦1である。)で表される組成のペロブスカイト構造を有する酸化物セラミックスにより構成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、本明細書において特に言及している事項(例えば、接合材の組成やその調製法)以外の事柄であって本発明の実施に必要な事柄(例えば、セラミックスの成形法や焼成法)は、当該分野における従来技術に基づく当業者の設計事項として把握され得る。本発明は、本明細書に開示されている内容と当該分野における技術常識とに基づいて実施することができる。
【0016】
本明細書中で「膜」とは、特定の厚みに限定されず、酸素分離膜エレメントにおいて「酸素イオン伝導体(好ましくは混合伝導体)」として機能する膜状若しくは層状の部分をいう。例えば、所定の多孔質基材上に形成された平均厚み5mm未満(典型的には1mm未満、例えば10〜500μm程度)の膜状酸素分離層はここでいう酸素分離膜の形状の一典型例である。
また、酸素分離膜エレメントの形状(外径)は特に限定されない。例えば、ペロブスカイト構造の酸化物セラミックス(酸素イオン伝導体)から成る酸素分離膜として厚さ1mm未満の酸素分離膜(例えば厚さ100μm未満の薄膜)を備える板状(平面状、曲面状等を包含する。)、管状(両端が開口した開管状、一端が開口し他端が閉じている閉管状等を包含する。)、その他層状に形成されたものが挙げられる。酸素分離膜が形成されている多孔質基材や該基材と接合される接続部材の形状やサイズに応じて酸素分離膜エレメントの外径やサイズも適宜決定され得る。
【0017】
本発明の酸素分離膜エレメントは、接合部分(即ちシール部)が上記接合材により構成されていることで特徴づけられるものであり、その他の構成部分、例えば多孔質基材やペロブスカイト構造の酸素分離膜の形状や組成は、種々の基準に照らして任意に決定することができる。
酸素分離膜の支持体である多孔質基材は、従来のこの種の膜エレメントで採用されている種々の性状のセラミック多孔質体が使用できる。膜エレメントの使用温度域(通常500℃以上、典型的には800℃以上、例えば800〜900℃、好ましくは800〜1000℃)において安定な耐熱性を有する材質からなるものが好ましく用いられる。例えば、ペロブスカイト構造の酸素分離膜と同様の組成を有するセラミック多孔体、あるいはマグネシア、ジルコニア、窒化ケイ素、炭化ケイ素等を主体とするセラミック多孔体を用いることができる。酸素分離膜と同様の(特には同一の組成の)ペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る多孔質体が特に好ましい。或いは、金属材料を主体とする金属質多孔体を用いてもよい。
特に限定しないが、使用する多孔質基材の水銀圧入法に基づく平均細孔径は0.1μm〜20μm程度が適当であり、水銀圧入法に基づく気孔率は5〜60%程度が適当である。
【0018】
酸素分離膜を構成する酸化物セラミックスおよび接続部材は、酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造をとるものであればよく、特定の構成元素のものに限られない。酸素分離膜を構成する酸化物セラミックスとしては、酸素イオン伝導性と電子伝導性の両方を有する混合伝導体が、外部電極や外部回路を用いることなく酸素分離膜の一方の側(酸素供給側)から他方の側(酸素透過側)へ連続的に酸素イオン(酸化物イオン)を透過させることができるため、好ましい。
酸素分離膜と当該接続部材とを共にペロブスカイト型酸化物とすることによって、これら部材とさらには後述する組成の接合材の熱膨張係数を近似させることができる。この結果、製造時や使用時の昇温(加熱)及び/又は降温(冷却)に伴う熱膨張の差によって接合部分にクラックが生じるのを防止することができる。接合対象の酸素分離膜と接続部材とが同一組成の酸化物セラミックスから構成されていることが特に好ましい。
この種の酸化物セラミックスとして、典型的には、一般式:Ln1−xAeMOで表される組成の複合酸化物が挙げられる。ここで式中のLnはランタノイドから選択される少なくとも一種(典型的にはLa)であり、AeはSr,CaおよびBaからなる群から選択される少なくとも一種であり、Mは、Mg,Mn,Ga,Ti,Co,Ni,Al,Fe,Cu,In,Sn,Zr,V,Cr,Zn,Ge,ScおよびYからなる群から選択される少なくとも一種であり、0≦x≦1である。例えば、好適な混合伝導体として、式:(La1−xSr)(Ti1−yFe)O(但し0<x<1、0<y<1)で示される複合酸化物(以下「LSTF酸化物」ともいう。)が挙げられる。具体例として、La0.6Sr0.4Ti0.1Fe0.9、La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7等が挙げられる。
【0019】
なお、上記一般式において酸素原子数は3であるように表示されているが、実際には酸素原子の数は3以下(典型的には3未満)であり得る。ただし、この酸素原子数はペロブスカイト構造の一部を置換する原子(例えば式中のAeやMの一部)の種類および置換割合その他の条件により変動するため、正確に表示することは困難である。そこで、本明細書中においてペロブスカイト型材料を示す一般式では酸素原子の数を便宜的に3として表示するが、ここで教示する発明の技術的範囲を限定することを意図したものではない。したがって、この酸素原子の数を例えば3−δと表示することもできる。ここでδは典型的には1を超えない正の数(0<δ<1)である。
【0020】
酸素分離膜エレメントの酸素分離膜との接合対象であるセラミックス製接続部材の形状(外径)は特に限定されない。上記多孔質基材および該基材上に形成される酸素分離膜の形状に応じて接続部材も板状、管状その他の形状であり得る。
【0021】
セラミックス製多孔質基材およびセラミックス製接続部材は、例えば以下のようにして製造することができる。
即ち、製造しようとするセラミックスを構成する原子を含む化合物の粉末(原料粉末)を成形し、酸化性雰囲気(例えば大気中)または不活性ガス雰囲気で焼成して所望する形状のセラミックス(多孔質基材、接続部材)を得ることができる。原料粉末としては、セラミックスを構成する金属原子を含む酸化物あるいは加熱により酸化物となり得る化合物(当該金属原子の炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、オキシハロゲン化物等)の一種以上を含有するものを用いることができる。原料粉末は、セラミックスを構成する金属原子のうち二種以上の金属原子を含む化合物(複合金属酸化物、複合金属炭酸塩等)を含有してもよい。
【0022】
適切な焼成温度は、セラミックスの組成等によっても異なるが、典型的には1000〜1800℃(好ましくは1200〜1600℃、特には1400〜1600℃)である。また、焼成工程は、一回以上の仮焼工程と、その後に行われる本焼成工程とを包含することができる。この場合、本焼成工程は上記のような焼成温度で行い、仮焼工程は本焼成工程よりも低い焼成温度(例えば800〜1500℃)で行うことが好ましい。
例えば、原料粉末を仮焼し、湿式ボールミル等を用いて当該仮焼原料を粉砕することにより、仮焼粉末(本焼成用原料粉末)を得ることができる。さらに原料粉末(又は仮焼粉末)に、水、有機バインダー等の成形助剤、および分散剤を添加・混合してスラリーを調製し、スプレードライヤー等の造粒機を用いて所望する粒径(例えば平均粒子径が10〜100μm)に造粒することができる。
なお、原料粉末や仮焼物を粉砕して得られた仮焼粉末(本焼成用原料粉末)の成形には、一軸圧縮成形、静水圧プレス、押出成形等の従来公知の成形法を採用することができる。また、かかる成形のために従来公知のバインダー、分散剤等を使用することができる。
【0023】
多孔質基材の表面にペロブスカイト構造の酸素分離膜を形成する手法は特に限定されず、従来公知の種々の手法を採用することができる。例えば、ペロブスカイト型酸化物を構成する所定の組成の複合酸化物から成るセラミックス粉末(例えば上述したLSTF酸化物粉末)を適当なバインダー、分散剤、可塑剤、溶媒等と混合してスラリーを調製し、一般的なディップコーティング等の手法によって該スラリーを多孔質基材表面に付与(塗布)することができる。これで得られた多孔質基材上の塗布物(皮膜)を適当な温度(典型的には60〜100℃)で乾燥させ、次いで、上記のような温度域で焼成することによって、多孔質基材(支持体)の表面にペロブスカイト構造の酸化物セラミックス(例えばLSTF酸化物)から成る酸素分離膜を形成することができる。
なお、上述したようなセラミックス成形技法自体は従来と同様で良く、本発明を特徴付けるものではないため、これ以上の詳細な説明は省略する。
【0024】
次に、本発明に係る接合材について詳細に説明する。本発明に係るシール部を形成し得る接合材は、ペロブスカイト構造酸化物セラミックス粉末とシリカ粉末とを主体とする接合材料である。そして、当該酸化物セラミックスとシリカとの合計量(100質量%)に占めるシリカの含有率は8〜14質量%であることが好ましい。かかる含有率が8質量%よりも少なすぎると、接合部分の緻密化が不良となり好ましくない。一方、かかる含有率が14質量%よりも多すぎると熱膨張率の差も大きくなり、接合部分にクラックが生じ易くなり好ましくない。かかるシリカ含有率が9〜13質量%(さらには10〜13質量%)であることが特に好ましい。
【0025】
接合材に含有させるシリカ粉末としては、平均粒子径(SEM観察による一次粒子径をいう。本明細書において同じ。)が300nm以下であればよいが、平均粒子径が100nm以下(例えば5nm〜100nm)の球状シリカ粉末(特に単分散シリカ)が好ましい。このようなシリカ粉末の原料として単分散シリカ微粒子が好ましい。例えば、コロイダルシリカ(即ち、シリカを水や有機溶媒等の溶媒に分散したコロイド液)が好適例として挙げられる。特に平均粒子径100nm以下(例えば5nm〜100nm、特に5〜50nm)の球状シリカ粉末(特に単分散球状シリカ粒子)が分散して成るシリカコロイド液が好ましい。例えばシリカ粒子表面に電気二重層が形成されていることによって水等の溶媒に高度に分散したコロイダルシリカが得られる。また、シリカ粒子表面を各種シランカップリング剤の使用により種々のポリマーで修飾することによって有機溶媒に当該ポリマー修飾シリカ粒子が安定的に分散したコロイダルシリカ(オルガノゾル)が得られる。
尚、本発明の実施に適する上述したようなコロイダルシリカは市販されており、所望する粒子径およびSiO濃度(質量%)のコロイダルシリカを用意する(例えば触媒化成工業株式会社から購入できる。)ことによって、本発明に係る接合材の調製に好ましく使用し得る単分散シリカナノ粒子(例えばCV値10%以下)を得ることができる。
【0026】
また、接合材の主体たるペロブスカイト構造の酸化物セラミックス粉末としては、平均粒子径が10μm以下(例えば0.1μm〜10μm)の粉末が適当であり、平均粒子径が2μm以下(例えば0.1μm〜2μm、特に平均粒子径が1μm程度又はそれ以下)の粉末が好ましい。このような粉末材料は焼成された所定形状のペロブスカイト構造の酸化物セラミックスを種々の方法(例えばボールミル)で粉砕したり、適宜篩いがけすることによって得ることができる。
【0027】
用意したペロブスカイト構造の酸化物セラミックス粉末およびシリカ粉末(典型的にはコロイダルシリカとして用意する。)は、典型的にはペースト状に調製される。例えば、上記粉末材料に適当なバインダーや溶媒を混合して目的の組成、濃度のペースト(接合材)を調製することができる。
なお、ペーストに用いられるバインダー、溶媒及び他の成分(例えば分散剤)は、特に限定されるものではなく、ペースト製造(例えば同様の目的に使用される一般的なホウケイ酸ガラス等を主成分とする接合材の製造)において従来公知のものから適宜選択して用いることができる。
例えば、バインダーの好適例としてセルロース又はその誘導体が挙げられる。具体的には、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、カルボキシエチルメチルセルロース、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、及びこれらの塩が挙げられる。バインダーは、ペースト全体の5〜20質量%の範囲で含まれることが好ましい。
【0028】
また、ペースト中に含まれ得る溶媒としては、例えば、エーテル系溶剤、エステル系溶剤、ケトン系溶剤、又は他の有機溶剤が挙げられる。好適例としてエチレングリコール及びジエチレングリコール誘導体、トルエン、キシレン、ターピネオール等の高沸点有機溶媒又はこれらの2種以上の組み合わせが挙げられる。ペーストにおける溶媒の含有率は、特に限定されないが、ペースト全体の1〜40質量%程度が好ましい。
【0029】
ここで開示される接合材は、従来のこの種の接合材と同様に用いることができる。具体的には、接合対象である酸素分離膜(及び多孔質基材)と接続部材の被接合部分を相互に接触・接続し、当該接続した部分にペースト状に調製された接合材を塗布する。そして、その塗布物を適当な温度(典型的には60〜100℃)で乾燥させる。
次いで、十分な焼結が行われる適当な温度域、好ましくは、酸素分離膜エレメントの使用温度域(例えば800〜1000℃)よりも高い温度域であって酸素分離膜の焼成温度(例えば1400〜1600℃)よりも低い温度域、典型的には、1200℃以上1400℃未満程度の温度域で焼成する。このことによって、酸素分離膜(及び多孔質基材)と接続部材との接続部分に緻密なシール部が形成され、同時にガスリークが無い接合部分が形成される。
【0030】
以下、本発明に関する実施例を説明するが、本発明を以下の実施例に示すものに限定することを意図したものではない。
【0031】
<LSTF酸化物から成る酸素分離膜の作製>
LSTF(La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7)粉末(平均粒子径:約50μm)に一般的なバインダー(ここではメチルセルロースを使用した。)及び水を添加して混練した。次いで、この混練物を用いて押出成形を行い、外径約20mm×内径約12mm×全長約1000mmの円筒形状の成形体を得た。そして、この成形体を大気中において1400〜1500℃(ここでは最高焼成温度:約1400℃)で焼成した。焼成後、焼成物の表面を研磨し、所望の外形寸法(外径20mm×内径12mm×全長1000mm)のLSTF製多孔質基材14(図1)を作製した。
【0032】
一方、本実施例に係るLSTF酸化物である平均粒子径が約1μmのLa0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7粉末に、適当量の一般的なバインダーと水をそれぞれ添加し、混合して成膜用スラリーを調製した。
次いで、上記得られた円筒形状LSTF成形体を上記スラリー中に浸漬し、ディップコーティングを行った。こうしてスラリーがコーティングされた成形体は、80℃で乾燥後、大気中において1000〜1600℃の温度域(ここでは最高焼成温度:約1400℃)まで昇温し、最高焼成温度で3時間保持して成形体を焼成した。これにより、円筒形状多孔質基材14の表面に、ペロブスカイト型酸化物である本実施例に係るLSTF酸化物から成る酸素分離膜15(図1)が形成された。
【0033】
<接続部材の作製>
上記平均粒子径が約1μmのLa0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7粉末に、一般的なバインダー(ここではポリビニルアルコールを使用した。)及び水を添加して混練した。次いで、市販のスプレードライヤーを用いて造粒し、平均粒子径が約60μmの原料粉末を得た。次に、得られた原料粉末を100MPaの圧力条件でプレス成形し、外径約35mm×厚さ約20mmの円板形状の成形体を得た。さらにCIP成形により当該成形体に150MPaの加圧を行った。
こうして得られた成形体を、大気中において先ず200〜500℃の温度域(ここでは約500℃)まで昇温し、10時間保持した。これにより有機物を分解除去した。その後、大気中において1300〜1600℃の温度域(ここでは最高焼成温度:約1400℃)まで昇温し、そして、最高焼成温度で3時間保持して焼成し、上記酸素分離膜15と同じ組成のペロブスカイト型酸化物から成る焼成体を得た。
次に、この円板形状焼成体を機械研磨し、図1中に符号12で示す外径20mm×厚さ5mmの円板状接続部材(以下「キャップ部材12」という。)と、図1中に符号16で示す外径27mm×内径20mm×厚さ15mmの円板形状接続部材であって内側に多孔質基材14を嵌合する貫通穴17が形成された接続部材(以下「リング部材16」という。)とを作製した。
【0034】
<ペースト状接合材の作製>
表1に示すシリカ含有率となるように、平均粒子径が約1μmのLa0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7粉末と平均粒子径が約12nmの単分散シリカ粒子を含むコロイダルシリカ(シリカ固体分30質量%、触媒化成工業株式会社製品)とを混合した。具体的には、La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7粉末100質量部に対して上記コロイダルシリカ(単分散シリカコロイド液)を10質量部〜60質量部の比率で加えた。
さらに、上記La0.6Sr0.4Ti0.3Fe0.7粉末とシリカの合計量40質量部に対して、一般的なバインダー(ここではエチルセルロースを使用した。)3質量部と、溶剤(ここではターピネオールを使用した。)47質量部を添加・混合し、表1のサンプル1〜6に対応する計6種類のペースト状接合材を調製した。
【0035】
<接合処理>
上記6種類のペーストを接合材として用いて接合処理を行った。具体的には、図1及び図2に示すように、円筒形状多孔質基材14の一方の端面14bをリング部材16の嵌合穴17に差し込み、他方の端面14aにはキャップ部材12を配置した。而して、多孔質基材14表面の酸素分離膜15とキャップ部材12との接触部分(接続部分)20a、および酸素分離膜15とリング部材16との接触部分(接続部分)20bに、それぞれ、上記ペーストのいずれかを塗布した。
次いで、80℃で乾燥後、大気中で1300℃または1350℃で1時間焼成した。これにより、多孔質基材14および酸素分離膜15の両端に接続部材(キャップ部材12およびリング部材16)が接合された計6種類(サンプル1〜6)の酸素分離膜エレメント10が構築された。
【0036】
【表1】

【0037】
表1には、各サンプルのペーストを使用して得られるシール部20a,20bの熱膨張係数(但し室温(25℃)から1000℃の間の熱膨張平均値)を示している。なお、酸素分離膜15と各接続部材12,16を構成する上記LSTF酸化物セラミックス単体での同条件での熱膨張係数は12.8×10−6−1であった。表1に示すように、シリカ含有率が高くなるほど熱膨張係数が低下していくことがわかるが、その低下の度合いは比較的低く抑えられていた。サンプル5(シリカ含有率:約13質量%)までのシリカ含有率であれば酸素分離膜の熱膨張係数との差が1(×10−6−1)以下であり、好ましい。
【0038】
また、上記得られた計6種類の膜エレメント10の接合部分(シール部20b)の表面を電子顕微鏡(SEM)によって観察した。図3〜図8は、それぞれ、焼成温度1350℃の場合のサンプル1〜6についてのSEM写真である。SEM観察の結果、サンプル3(シリカ含有率:約8質量%)、サンプル4(シリカ含有率:約10質量%)、サンプル5(シリカ含有率:約13質量%)については、緻密性が高くクラックの無いシール部表面(図5〜図7)が観察された。他方、サンプル1(シリカ含有率:約3質量%)、サンプル6(シリカ含有率:約15質量%)については、焼成温度が1300℃および1350℃のいずれの場合も緻密化されなかった。また、サンプル2(シリカ含有率:約6質量%)については焼成温度が1300℃の場合で緻密化されず、焼成温度が1350℃の場合は緻密化されたがその程度はやや低かった。なお、表中の◎○×は相対評価であり、◎は緻密化が十分であったもの、○は緻密化の程度がやや低かったもの、×は緻密化しなかったものを示す。
【0039】
<ガスリーク試験>
次に、上記構築した計6種類(サンプル1〜6、焼成温度1300℃)の膜エレメントについて、接合部分(シール部)からのガスリークの有無を確認するリーク試験を行った。具体的には、リング部材16底面の嵌合穴17開口部から膜エレメント10の中空部13に空気を0.2MPa加圧した条件で供給し、その状態で膜エレメント10を水中に沈め、水中でバブル発生の有無を目視で調べた。結果を表1の該当欄に示す。
表1に示すように、サンプル3(シリカ含有率:約8質量%)〜サンプル5(シリカ含有率:約13質量%)については、ガス(空気)のリークは全く観察されなかった。他方、サンプル1(シリカ含有率:約3質量%)、サンプル2(シリカ含有率:約6質量%)およびサンプル6(シリカ含有率:約15質量%)では、シール部表面からのバブル発生、即ちガス(空気)のリークが認められた。
【0040】
上述のように、本発明によると、典型的には膜使用温度(例えば1000℃以下、例えば800〜1000℃)より高温で且つ膜焼成温度(例えば1400℃以上、例えば140〜1600℃)より低温で焼成することによって酸素分離膜とジョイント管等の接続部材とを、ガスリークを生じさせることのない十分な気密性を確保しつつ接合する(即ちシール部を形成する)ことができる。本発明により得られる接合部分(シール部)は、昇温時および降温時にシリカの流出がなく、耐久性に優れる。このため、用途に応じた種々の形態で酸素分離膜(及び多孔質基材)と各種の形態の接続部材(例えば長尺状のガス配管用部材)とが接合して成る酸素分離膜エレメント、延いては該膜エレメントを構成要素として構築される酸素分離モジュールを提供することができる。
本発明によって提供される酸素分離膜エレメントは、例えば800〜1000℃というような高温域での使用に好ましく、GTL或いは燃料電池分野で好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】一実施例に係る酸素分離膜エレメントの構成部材を模式的に示す分解斜視図である。
【図2】一実施例に係る酸素分離膜エレメントの構成を模式的に示す斜視図である。
【図3】サンプル1の酸素分離膜エレメントのシール部表面を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図4】サンプル2の酸素分離膜エレメントのシール部表面を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図5】サンプル3の酸素分離膜エレメントのシール部表面を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図6】サンプル4の酸素分離膜エレメントのシール部表面を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図7】サンプル5の酸素分離膜エレメントのシール部表面を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図8】サンプル6の酸素分離膜エレメントのシール部表面を示す電子顕微鏡(SEM)写真である。
【符号の説明】
【0042】
10 酸素分離膜エレメント
12 キャップ部材(接続部材)
14 多孔質基材(支持体)
15 酸素分離膜
16 リング部材(接続部材)
20a,20b 接続部分(シール部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質基材上に酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る酸素分離膜を備える酸素分離膜エレメントであって、
前記酸素分離膜には、少なくとも一つのペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る接続部材が接合されており、
前記酸素分離膜と前記接続部材との接合部分は、該接合部分におけるガス流通を遮断するシール部を構成しており、
ここで前記シール部は、ペロブスカイト構造酸化物セラミックスとシリカとから形成されており、該シール部におけるシリカの含有率は8〜14質量%である、酸素分離膜エレメント。
【請求項2】
前記酸素分離膜および前記接続部材は、同一の組成のペロブスカイト構造酸化物セラミックスにより形成されており、
前記シール部を構成するペロブスカイト構造酸化物セラミックスは、前記同一組成のペロブスカイト構造酸化物セラミックスである、請求項1に記載の酸素分離膜エレメント。
【請求項3】
多孔質基材上に酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る酸素分離膜を備える酸素分離膜エレメントの接合方法であって、
前記酸素分離膜と接合する対象のペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る接続部材を用意すること、
平均粒子径が10μm未満であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックス粉末と平均粒子径が300nm以下のシリカ粉末とを含む接合材であって前記酸化物セラミックス粉末とシリカ粉末の合計量のうち該シリカ粉末の含有率が8〜14質量%である接合材を用意すること、
前記接続部材と前記酸素分離膜とを接続した部分に前記用意した接合材を塗布すること、および、
前記塗布された接合材を焼成することによって、前記接続部材と前記酸素分離膜との接合部分を、ガス流通を遮断するシール部とすること、
を包含する、酸素分離膜エレメントの接合方法。
【請求項4】
前記シリカ粉末が単分散シリカ粒子で構成されている、請求項3に記載の接合方法。
【請求項5】
多孔質基材上に酸素イオン伝導体であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックスから成る酸素分離膜を備える酸素分離膜エレメントを接合するための接合材であって、
平均粒子径が10μm未満であるペロブスカイト構造の酸化物セラミックス粉末と平均粒子径が300nm以下のシリカ粉末とを含む接合材であって前記酸化物セラミックス粉末とシリカ粉末の合計量のうち該シリカ粉末の含有率が8〜14質量%である、接合材。
【請求項6】
前記シリカ粉末が単分散シリカ粒子で構成されている、請求項5に記載の接合材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−195866(P2009−195866A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−42445(P2008−42445)
【出願日】平成20年2月25日(2008.2.25)
【出願人】(000004293)株式会社ノリタケカンパニーリミテド (449)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】