説明

酸素吸収剤およびその製造方法ならびにそれを用いた酸素吸収性組成物および包装材

無機物粒子と、該無機物粒子に化学吸着した不飽和の有機化合物と、酸素吸収促進剤とを含む。この酸素吸収剤は、不飽和の有機化合物を無機物粒子に化学吸着させる工程を含む製造方法によって製造できる。本発明によれば、酸素吸収能の高い樹脂組成物を構成できる酸素吸収剤、および、それを用いた酸素吸収性の樹脂組成物および包装材が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸収剤およびその製造方法ならびにそれを用いた酸素吸収性組成物および包装材に関する。
【背景技術】
【0002】
食品などのように、酸素による劣化が大きい物品を安定に保存するためには、酸素が少ない環境下で保存することが重要である。そのような保存を可能にするため、従来からさまざまな酸素吸収剤が提案されている。そのような酸素吸収剤として、有機化合物を無機物に担持させた酸素吸収剤が開示されている(たとえば、特開平11−278845号公報、特開2000−462号公報、特開2000−5596号公報、特開2000−86415号公報、特開2002−320917号公報)。
【0003】
しかしながら、従来から提案されてきた酸素吸収剤では、樹脂に分散させたときの性能の低下が大きいという問題があった。
【発明の開示】
【0004】
このような状況に鑑み、本発明は、酸素吸収能の高い樹脂組成物を構成できる酸素吸収剤およびその製造方法、ならびにそれを用いた酸素吸収性の樹脂組成物および包装材を提供することを目的の1つとする。
【0005】
上記目的を達成するため、本発明の酸素吸収剤は、無機物粒子と、前記無機物粒子に化学吸着した有機化合物(有機基)と、酸素吸収促進剤とを含む。
【0006】
上記本発明の酸素吸収剤では、前記有機化合物は、カルボン酸、エステル、アルデヒド、アルコキシシラン誘導体およびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つの有機化合物(A)が前記無機物粒子と反応することによって形成された有機化合物であってもよい。
【0007】
上記本発明の酸素吸収剤では、前記有機化合物が不飽和の有機化合物であってもよい。
【0008】
上記本発明の酸素吸収剤では、前記有機化合物が以下の式(1)で表される構造を含んでもよい。
【0009】
【化1】

[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、置換基を有するアルキルアリール基、−COOR3、−OCOR3、シアノ基およびハロゲン原子から選ばれる1つである。R3は、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、および置換基を有するアルキルアリール基から選ばれる1つである。]
【0010】
上記本発明の酸素吸収剤では、前記有機化合物が以下の式(2)で表される構造を含んでもよい。
【0011】
【化2】

[式中、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、置換基を有するアルキルアリール基、−COOR3、−OCOR3、シアノ基およびハロゲン原子から選ばれる1つである。R3は、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、および置換基を有するアルキルアリール基から選ばれる1つである。]
【0012】
上記本発明の酸素吸収剤では、前記有機化合物が不飽和の脂環式構造を有するものであってもよい。
【0013】
上記本発明の酸素吸収剤では、前記有機化合物の式量が3000以下であってもよい。
【0014】
上記本発明の酸素吸収剤では、前記無機物粒子が層状無機化合物からなるものであってもよい。
【0015】
上記本発明の酸素吸収剤では、前記無機物粒子はその表面に水酸基を有するものであってもよい。この場合、前記無機物粒子がハイドロタルサイトの粒子であってもよい。
【0016】
上記本発明の酸素吸収剤では、前記酸素吸収促進剤が、遷移金属塩、ラジカル発生剤および光触媒から選ばれる少なくとも1つであってもよい。
【0017】
また、本発明の製造方法は、無機物粒子と酸素吸収促進剤とを含む酸素吸収剤の製造方法であって、有機化合物を前記無機物粒子に化学吸着させる工程を含む。
【0018】
上記本発明の製造方法では、前記有機化合物が不飽和の有機化合物であってもよい。
【0019】
上記本発明の製造方法では、前記無機物粒子は表面に水酸基を有し、前記有機化合物は水酸基と反応する官能基を有するものであってもよい。
【0020】
上記本発明の製造方法では、前記有機化合物が、カルボン酸、エステル、アルデヒド、アルコキシシラン誘導体およびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つの有機化合物であってもよい。
【0021】
上記本発明の製造方法は、(i)前記有機化合物と前記無機物粒子と有機溶媒とを含む混合物を調製する工程と、(ii)前記混合物から前記有機溶媒を除去する工程とを含んでもよい。この場合、前記(ii)の工程ののちに前記混合物を水の沸点以上の温度で加熱する工程を含んでもよい。
【0022】
上記本発明の製造方法は、(I)前記有機化合物と前記無機物粒子とを含む混合物を調製する工程と、(II)前記混合物を加熱することによって前記有機化合物を前記無機物粒子に化学吸着させる工程とを含んでもよい。この場合、前記(II)の工程は、前記混合物を水の沸点以上の温度で加熱する工程を含んでもよい。
【0023】
上記本発明の製造方法では、前記混合物を窒素雰囲気下または減圧下で加熱してもよい。
【0024】
上記本発明の製造方法では、前記無機物粒子が層状無機化合物からなるものであってもよい。
【0025】
また、本発明の他の酸素吸収剤は、上記本発明の製造方法によって製造された酸素吸収剤である。
【0026】
また、本発明の酸素吸収性組成物は、樹脂と前記樹脂に分散された酸素吸収剤とを含む酸素吸収性組成物であって、前記酸素吸収剤が上記本発明の酸素吸収剤である。
【0027】
上記本発明の酸素吸収性組成物では、前記樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体を含んでもよい。
【0028】
また、本発明の包装材は、上記本発明の酸素吸収性組成物からなる部分を含む。
【0029】
本発明の酸素吸収剤は、粒子状であるため、樹脂に均一に分散させることが容易である。また、本発明の酸素吸収剤は、酸化される有機化合物が無機物粒子に化学吸着しているため、高い酸素吸収能を発揮する。
【0030】
また、本発明の製造方法によれば、酸化される有機化合物が無機物粒子に化学吸着した酸素吸収剤を容易に得られる。
【0031】
また、本発明の酸素吸収性樹脂組成物は、本発明の酸素吸収剤を用いているため、高い酸素吸収能を発揮するとともに、ブリードアウトの発生を抑制できる。また、酸素吸収剤を樹脂にブレンドする際に、酸化される有機化合物がベントから揮発することを防止できる。また、樹脂に酸素吸収剤をブレンドする前に酸素吸収剤を洗浄する場合でも、酸化される有機化合物が除去されることを防止できる。このような樹脂組成物を用いることによって、酸素吸収能が高く、成形加工性に優れ、食品衛生上安全性の高い包装材が得られる。また、このような包装材を用いることによって、包装材を用いて形成された包装体内部の酸素を減少させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、本発明および比較例の酸素吸収剤について酸素吸収能の一例を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の酸素吸収剤の赤外吸収スペクトルの一例を示す図である。
【図3】図3は、本発明の酸素吸収剤について酸素吸収能の一例を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明の酸素吸収剤について酸素吸収能の他の一例を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の酸素吸収剤について酸素吸収能の他の一例を示すグラフである。
【図6】図6は、本発明の酸素吸収性組成物からなるプレスフィルムについて酸素吸収能の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の説明において特定の機能を発現する化合物として、具体的な化合物を例示しているが、本発明はこれに限定されない。また、例示される材料は、特に記載がない限り、単独で用いてもよいし、組み合わせて用いてもよい。
【0034】
(実施形態1)
実施形態1では、本発明の酸素吸収剤について説明する。本発明の酸素吸収剤は、無機物粒子と、該無機物粒子に化学吸着した有機化合物(有機基)と、酸素吸収促進剤とを含む。該有機化合物は、酸素吸収促進剤として遷移金属塩またはラジカル発生剤を用いる場合には、炭素−炭素二重結合を含む不飽和の有機化合物である。その場合には、不飽和結合に隣接するメチレン基が置換されていないことが好ましい。そのような構成によれば、高い酸素吸収能が得られるとともに、有機化合物の酸化による低分子化合物の発生を抑制できる。そのような構成としては、たとえば、上記有機化合物が以下の式(1)または(2)で表される構造を含んでもよい。
【0035】
【化3】

[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、置換基を有するアルキルアリール基、−COOR3、−OCOR3、シアノ基およびハロゲン原子から選ばれる1つである。R3は、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、および置換基を有するアルキルアリール基から選ばれる1つである。]
【0036】
【化4】

[式中、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、置換基を有するアルキルアリール基、−COOR3、−OCOR3、シアノ基およびハロゲン原子から選ばれる1つである。R3は、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、および置換基を有するアルキルアリール基から選ばれる1つである。]
R1、R2、R3、R4およびR5が、置換基を有するアルキル基、置換基を有するアリール基、置換基を有するアルキルアリール基である場合、その置換基は、樹脂との親和性を向上させるものが好ましく、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基が例示できる。
【0037】
無機物粒子に化学吸着している有機化合物は、無機物粒子の表面と反応する官能基を有する有機化合物(以下、有機化合物(A)という場合がある)と、無機物粒子の表面とが反応することによって形成される。無機物粒子と、それに化学吸着する有機化合物(A)と、酸素吸収促進剤との割合は特に限定はなく、用いる材料や使用目的に応じて決定される。一例では、無機物粒子100重量部に対して、それに吸着する有機化合物(A)の量は、1重量部〜100重量部の範囲であり、好ましくは1重量部〜50重量部の範囲である。また、酸素吸収促進剤として遷移金属塩を用いる場合には、有機化合物(A)100重量部に対して、遷移金属塩の量を10-4重量部〜5重量部の範囲としてもよい。また、酸素吸収促進剤としてラジカル発生剤や光触媒を用いる場合には、有機化合物(A)100重量部に対して、酸素吸収促進剤の量を0.1重量部〜100重量部の範囲としてもよい。
【0038】
無機物粒子の平均粒径に特に限定はなく、たとえば1000nm以下、好ましくは500nm以下である。無機物粒子の平均粒径を1000nm以下とすることによって、表面積の増加により有機化合物(A)を効率よく化学吸着させることができる。また、樹脂への分散性を向上させることができ、透明性を付与することができる。
【0039】
無機物粒子は、表面に反応性の官能基を有することが好ましく、特に、表面に水酸基を有することが好ましい。また、無機物粒子は、層状無機化合物からなることが好ましい。層状化合物としては、たとえば、ハイドロタルサイトなどの層状複水酸化物、モンモリロナイトやカオリナイトなどの層状粘土鉱物、カネマナイトなどの層状ケイ酸塩、層状金属リン酸塩、層状水酸化銅などが挙げられる。層状化合物からなる粒子を層分離させることによって、ガスバリア性が高い酸素吸収性組成物および包装材を製造できる。また、層分離させることにより、表面積を増大でき、実質的に反応性の高い官能基を有効に利用でき、有機化合物(A)をより多く吸着することができる。中でも、ハイドロタルサイトは、その表面に多数の水酸基を有するため、無機物粒子としてハイドロタルサイトを用いることによって、それに吸着する有機化合物(A)の量を増加させることができる。更に、ハイドロタルサイトは、酸塩基の両サイトを有する中性化合物であるため、様々な樹脂中に分散させる場合にも、樹脂そのものを侵すことなく、安定して組成物を構成できる。そのため、ハイドロタルサイトは、酸素吸収性組成物に用いられた場合にも安定した酸素吸収性を発現させることができる。
【0040】
有機化合物(A)は、無機物粒子の表面と反応する官能基を含み、無機物粒子が表面に水酸基を含む場合には水酸基と反応する官能基を含む。水酸基との反応性が高い官能基としては、たとえば、カルボキシル基、エステル基、アルデヒド基、アルコキシシリル基、アミノ基などが挙げられる。すなわち、有機化合物(A)としては、たとえば、カルボン酸、エステル、アルデヒド、アルコキシシラン誘導体およびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物が挙げられる。これらの化合物と無機物粒子表面の水酸基とが反応することによって、無機物粒子の表面に化学吸着した有機化合物が形成される。
【0041】
通常、有機化合物(A)の一部(たとえば水素原子や水酸基など)は無機物粒子の表面の水酸基と反応する際に水などを形成して脱離する。たとえば、反応する官能基がカルボキシル基、エステル基またはアルデヒド基である場合には、それらの−C−O−の部分などで無機物粒子に結合する。また、反応する官能基がアルコキシシリル基である場合には、その−Si−O−の部分などで無機物粒子に結合する。また、反応する官能基がアミノ基の場合には、その窒素の部分などで無機物粒子に結合する。
【0042】
有機化合物(A)、および無機物粒子に化学吸着している有機化合物は、上述した式(1)で表される構造を含む、カルボン酸、エステル、アルデヒド、アルコキシシラン誘導体およびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であってもよい。
【0043】
また、有機化合物(A)、および無機物粒子に化学吸着している有機化合物は、上述した式(2)で表される構造を含む、カルボン酸、エステル、アルデヒド、アルコキシシラン誘導体およびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であってもよい。
【0044】
また、有機化合物(A)、および無機物粒子に化学吸着している有機化合物は、5員環〜10員環までの不飽和の脂環式構造を有する、カルボン酸、エステル、アルデヒド、誘導体およびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物であってもよい。不飽和の脂環式構造を有する化合物を用いることによって、酸素吸収の際に有機化合物(A)が分解して低分子物質が発生することを抑制でき、これによって酸素吸収に伴う臭気の発生を抑制できる。なお、環状構造を構成する炭素に結合する水素は、他の置換基によって置換されていてもよい。複数の置換基が存在する場合、それらは同一であっても異なってもよい。置換基としては、たとえば、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルコキシ基、ハロゲン原子、メチレン基を含む環状置換基、およびオキシメチレン基を含む環状置換基が挙げられる。
【0045】
有機化合物(A)として適用できる代表的なカルボン酸としては、たとえば、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、ドコサヘキサエン酸、エイコサペンタエン酸、パリナリン酸、ダイマー酸、アマニ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、桐油脂肪酸、糖油脂肪酸、胡麻油脂肪酸、綿実油脂肪酸、菜種油脂肪酸、魚油脂肪酸、トール油脂肪酸といった不飽和カルボン酸が挙げられる。これらの中でも、リノレン酸は分子内に3つの二重結合を有するため、1分子あたりの酸素吸収量が高く、酸素吸収能が高い酸素吸収剤が得られる。酸素吸収促進剤に光触媒を用いる場合には、上記不飽和カルボン酸に加えて、たとえば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、ステアリン酸といった飽和脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸といった飽和脂肪族ジカルボン酸;安息香酸、フタル酸、テレフタル酸といった芳香族カルボン酸も適用できる。
【0046】
また、有機化合物(A)として適用できる代表的なエステルとしては、上記カルボン酸のエステルが挙げられる。
【0047】
また、有機化合物(A)として適用できる代表的なアルデヒドとしては、たとえばクロトンアルデヒド、セネシオンアルデヒド、ペンテナール、ヘキセナール、7−オクテナール、ノネナール、デセナール、2,4−ヘキサジエナール、3−シクロヘキセンカルボクスアルデヒド、5-ノルボルネン−2−カルボクスアルデヒド、アクロレイン、メタクロレインなどが挙げられる。酸素吸収促進剤に光触媒を用いる場合には、上記不飽和アルデヒドに加えて、たとえば、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、バレルアルデヒド、イソバレルアルデヒド、ヘキサナール、オクタナール、ノナナール、デカナール、ノナンジアールといった飽和脂肪族アルデヒドも適用できる。
【0048】
また、有機化合物(A)として適用できる代表的なアルコキシシラン誘導体、すなわちアルコキシシリル基を有する化合物としては、たとえばトリメトキシシリル基やトリエトキシシリル基などを含む化合物が挙げられる。アルコキシシリル基以外の部分に特に限定はないが、たとえば、ハロゲン、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していてもよいアルキニル基、置換基を有していてもよいアリール基、置換基を有していてもよいアルキルアリール基、アルコキシ基、カルボキシル基、アシル基、シアノ基といった原子団を含んでもよい。
【0049】
また、有機化合物(A)として適用できる代表的なアミンとしては、たとえばアリルアミン、オレイルアミン、N−メチルアリルアミン、ジアリルアミン、N,N’−ジエチル−2−ブテン−1,4−ジアミン、N−アリルシクロペンチルアミン、アリルシクロヘキシルアミン、2−(1−シクロヘキセニル)エチルアミンなどが挙げられる。酸素吸収促進剤に光触媒を用いる場合には、上記不飽和アミンに加えて、たとえばメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、セカンダリーブチルアミン、ターシャリーブチルアミン、アミルアミン、イソアミルアミン、ターシャリーアミルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、エチレンジアミン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノプロパン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカンといった飽和脂肪族アミンも適用できる。
【0050】
これらの化合物の中でも、カルボン酸は、無機物粒子の表面に強く化学吸着させることができるため好ましい。
【0051】
有機化合物(A)の分子量は特に限定はないが、無機物粒子に化学吸着している有機化合物の式量を3000以下(たとえば500以下)とすることによって、樹脂への分散が容易になる。したがって、有機化合物(A)の分子量も3000以下(たとえば500以下)であることが好ましい。
【0052】
酸素吸収促進剤は、酸素吸収を促進するための添加剤である。酸素吸収促進剤によって、無機物粒子に化学吸着した有機化合物(A)の酸化が促進され、その結果、雰囲気の酸素が消費される。本発明の酸素吸収剤は、酸素吸収促進剤を含むため、無機物粒子が光触媒機能を有する必要がない。酸素吸収促進剤には、たとえば、酸化触媒(たとえば遷移金属塩)、ラジカル発生剤および光触媒からなる群より選ばれる少なくとも1つを用いることができる。
【0053】
酸化触媒には、遷移金属塩を用いることができる。塩を構成する遷移金属としては、たとえば、鉄、ニッケル、銅、マンガン、コバルト、ロジウム、チタン、クロム、バナジウム、およびルテニウムが挙げられる。これらの中でも、鉄、ニッケル、銅、マンガン、およびコバルトが好ましい。遷移金属塩を構成するアニオンとしては、たとえば、有機酸または塩化物由来のアニオンが挙げられる。有機酸としては、たとえば、酢酸、ステアリン酸、ジメチルジチオカルバミン酸、パルミチン酸、2−エチルへキサン酸、ネオデカン酸、リノール酸、トール酸、オレイン酸、樹脂酸、カプリン酸、およびナフテン酸が挙げられる。代表的な遷移金属塩としては、たとえば、2−エチルへキサン酸コバルト、ネオデカン酸コバルト、ナフテン酸コバルト、およびステアリン酸コバルトが挙げられる。なお、遷移金属塩として、イオノマー(ionomer)を用いてもよい。
【0054】
ラジカル発生剤としては、たとえば、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、3−スルホニル−N−ヒドロキシフタル酸イミド、3−メトキシカルボニル−N−ヒドロキシフタル酸イミド、3−メチル−N−ヒドロキシフタル酸イミド、3−ヒドロキシ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−ニトロ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−クロロ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−メトキシ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−ジメチルアミノ−N−ヒドロキシフタル酸イミド、4−カルボキシ−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、4−メチル−N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N−ヒドロキシヘット酸イミド、N−ヒドロキシハイミック酸イミド、N−ヒドロキシトリメリット酸イミド、N,N−ジヒドロキシピロメリット酸ジイミドなどが挙げられる。これらの中でも、N−ヒドロキシコハク酸イミド、N−ヒドロキシマレイン酸イミド、N−ヒドロキシヘキサヒドロフタル酸イミド、N,N’−ジヒドロキシシクロヘキサンテトラカルボン酸ジイミド、N−ヒドロキシフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラブロモフタル酸イミド、N−ヒドロキシテトラクロロフタル酸イミドが特に好ましい。
【0055】
光触媒としては、たとえば、二酸化チタン、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化セリウム、チタン酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウムが挙げられる。これらは、通常、粉末の形態で用いられる。これらの中でも、光触媒機能が高く、食品添加物としても認められており安全かつ安価であることから、二酸化チタンが好ましい。二酸化チタンはアナターゼ型であることが好ましく、二酸化チタン粉末の30重量%以上(より好ましくは50重量%以上)がアナターゼ型二酸化チタンであることが好ましい。アナターゼ型二酸化チタンを用いることによって、高い光触媒作用が得られる。
【0056】
酸素吸収促進剤は、無機物粒子と単に混合されていてもよいし、無機物粒子に吸着していてもよい。また、無機物粒子と酸素吸収促進剤とを樹脂などの分散媒に分散させてもよい。
【0057】
実施形態1の酸素吸収剤では、有機化合物(A)が無機物粒子の表面に化学吸着(化学結合)することが重要である。このような化学吸着は、たとえば、実施形態2の方法によって実現できる。
【0058】
本発明の酸素吸収剤は、粉末の形態で用いることができるため、樹脂に均一に分散させることが容易である。このため、均一な酸素吸収性組成物が容易に得られる。また、本発明の酸素吸収剤では、有機化合物(A)が無機物粒子の表面に化学吸着しているため、無機物粒子に有機化合物が化学吸着していない従来の酸素吸収剤に比べて、以下の効果が得られる。(1)化学吸着によって、物理吸着の場合よりも高い酸素吸収能が得られる。(2)物理吸着している場合とは異なり、ブリードアウトが発生しにくい。(3)樹脂とブレンドする際に、ベントから有機化合物(A)が揮発することを防止できる。(4)樹脂とブレンドする際に遊離した有機化合物が分解されることを抑制するためブレンド前に酸素吸収剤を洗浄することが好ましいが、物理吸着の場合とは異なり、洗浄の際に有機化合物(A)が無機物粒子の表面から脱落することを抑制できる。(5)得られた樹脂組成物は物理吸着の場合とは異なり、溶剤への溶出性が抑えられる。
【0059】
(実施形態2)
実施形態2では、酸素吸収剤を製造するための本発明の方法について説明する。なお、実施形態2の方法で製造された酸素吸収剤は、本発明の酸素吸収剤の1つである。
【0060】
本発明の製造方法は、不飽和の有機化合物を無機物粒子に化学吸着させる工程を含む。不飽和の有機化合物および無機物粒子には、実施形態1で説明した有機化合物(A)および無機物粒子を適用できる。
また、無機物粒子は、通常、無機物粒子の集合体である粉末の形態で使用される。
【0061】
以下に、無機物粒子が表面に水酸基を有し、有機化合物(A)が水酸基と反応する官能基を有する場合の工程について2つの例を挙げて説明する。
【0062】
第1の方法では、まず、有機化合物(A)と無機物粒子と有機溶媒との混合物を調製する(工程1a)。有機溶媒は、有機化合物と無機物粒子とを均一に分散または溶解できるものであればよい。そのような有機溶媒としては、たとえば、トルエン、キシレン、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、塩化メチレン、クロロホルム、酢酸メチル、酢酸エチルなどが挙げられる。これらの中でも、ヘキサンやトルエンは、有機化合物(A)が無機物粒子表面の水酸基と反応した際に生成する水を共沸脱水によって取り除くことができるため、好ましい。
【0063】
次に、上記混合物から有機溶媒を除去する(工程2a)。有機溶媒の除去の方法は特に限定がなく、たとえば、濾過、減圧乾燥、および加熱といった方法の少なくとも1つを適用できる。有機化合物(A)、無機物粒子および有機溶媒の種類を選択することによって、工程2aによって有機化合物(A)の一部を無機物粒子に化学吸着させることができる場合がある。
【0064】
第2の方法では、まず、有機化合物(A)と無機物粒子とを含む混合物を調製する(工程1b)。次に、混合物を加熱することによって有機化合物(A)を無機物粒子に化学吸着させる(工程2b)。
【0065】
本発明の方法では、工程2aおよび工程2bにおいて、官能基と水酸基との反応で生じた水を除去することが特に好ましい。水を除去することによって、有機化合物(A)の官能基と無機物粒子の表面の水酸基との反応を促進させることができ、化学吸着する有機化合物(A)の割合を高めることができる。そのため、工程2aおよび工程2bで加熱を行う場合には、窒素気流下などの窒素雰囲気下や減圧下などのように、水を除去しやすい雰囲気で行うことが好ましい。同様に、工程2aおよび工程2bは、水の沸点以上の温度で混合物を加熱する工程を含むことが好ましい。また、加熱は有機化合物(A)の分解温度未満の温度で行うことが好ましい。工程2aにおいて水を除去する場合、有機溶媒と水とは別々に除去してもよいし、同時に除去してもよい。たとえば、有機溶媒を除去してから、有機溶媒が除去された混合物を水の沸点以上の温度で加熱してもよい。
【0066】
上記工程によれば、有機化合物(A)が化学吸着(化学結合)した無機物粒子が得られる。実施形態1で説明した酸素吸収促進剤は、上記工程の途中で有機化合物(A)とともに無機物粒子に吸着させてもよいし、上記工程ののちに無機物粒子に吸着させてもよい。また、上記工程で得られる無機物粒子と酸素吸収剤とをドライブレンドしてもよい。また、上記工程で得られる無機物粒子と酸素吸収剤とを、樹脂などの分散媒に分散させてもよい。
【0067】
このようにして、実施形態1で説明した酸素吸収剤が得られる。なお、実施形態1および2の酸素吸収剤は、それのみで使用しても、樹脂などに分散させて使用してもよい。
【0068】
(実施形態3)
実施形態3では、本発明の酸素吸収性組成物について説明する。実施形態3の酸素吸収性組成物は、樹脂(高分子化合物)と、樹脂に分散された酸素吸収剤とを含む。その酸素吸収剤は実施形態1または2で説明した酸素吸収剤である。
【0069】
実施形態3の組成物に含まれる酸素吸収剤の量に特に限定はなく、目的に応じて調整される。一例の組成物では、樹脂100重量部に対する酸素吸収剤の量が、たとえば1重量部〜30重量部の範囲であり、好ましくは1重量部〜10重量部の範囲である。
【0070】
樹脂は、組成物の用途に応じて選択される。代表的な樹脂としては、たとえば、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂といった合成樹脂が挙げられる。これらの樹脂は、酸素バリア性が高いため、酸素による劣化が問題となる物品の包装材料に適した組成物が得られる。
【0071】
上記以外の樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ1−ブテンといったポリオレフィンを用いてもよい。また、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリアクリレートを用いてもよい。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートといったポリエステルを用いてもよい。また、エチレンまたはプロピレンと他の単量体との共重合体を用いてもよい。他の単量体としては、たとえば、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンといったα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸といった不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネートといったカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類を挙げることができる。
【0072】
ポリビニルアルコール系樹脂は、ビニルエステルの単独重合体、またはビニルエステルと他の単量体との共重合体(特にビニルエステルとエチレンとの共重合体)を、アルカリ触媒等を用いてケン化することによって得られる。ビニルエステルとしては、たとえば酢酸ビニルが挙げられるが、その他の脂肪酸ビニルエステル(プロピオン酸ビニル、ピバリン酸ビニル等)を用いてもよい。
【0073】
ポリビニルアルコール系樹脂のビニルエステル成分のケン化度は、好ましくは90モル%以上であり、たとえば95モル%以上である。ケン化度を90モル%以上とすることによって、高湿度下におけるガスバリア性の低下を抑制できる。なお、ケン化度の異なる2種類以上のポリビニルアルコール系樹脂を用いてもよい。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、核磁気共鳴(NMR)法によって求めることができる。
【0074】
ポリビニルアルコール系樹脂の好適なメルトフローレート(MFR)(210℃、2160g荷重下、JIS K7210に基づく)は0.1〜100g/10分、より好適には0.5〜50g/10分、さらに好適には1〜30g/10分である。メルトフローレートが0.1g〜100g/10分の範囲から外れる場合、溶融成形を行うときの加工性が悪くなる場合が多い。
【0075】
ポリビニルアルコール系樹脂の中でも、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)は、溶融成形が可能で、高湿度下でのガスバリア性が良好であるという特徴を有する。EVOHの構造単位に占めるエチレン単位の割合は、たとえば5〜60モル%(好ましくは10〜55モル%)の範囲である。エチレン単位の割合を5モル%以上とすることによって、高湿度下におけるガスバリア性の低下を抑制できる。また、エチレン単位の割合を60モル%以下とすることによって、高いガスバリア性が得られる。エチレン単位の割合は、核磁気共鳴(NMR)法によって求めることができる。なお、エチレン単位の割合が異なる2種類以上のEVOHの混合物を用いてもよい。
【0076】
また、本発明の効果が得られる限り、EVOHは、共重合成分として少量の他の単量体を含んでもよい。このような単量体の例としては、たとえば、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸といった不飽和カルボン酸やその誘導体;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリ(β−メトキシ−エトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類が挙げられる。EVOHが共重合成分としてビニルシラン化合物0.0002〜0.2モル%を含有する場合は、共押出成形または共射出成形によって成形を行う場合に、均質な成形物の製造が容易になる。ビニルシラン系化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
【0077】
なお、EVOHにホウ素化合物を添加してもよい。これによって、共押出成形または共射出成形によって成形を行う場合に、均質な成形物の製造が容易になる。ホウ素化合物としては、たとえば、ホウ酸類(たとえばオルトホウ酸)、ホウ酸エステル、ホウ酸塩、水素化ホウ素類が挙げられる。また、EVOHにアルカリ金属塩(たとえば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、リン酸ナトリウム)を添加してもよい。これによって、層間接着性や相溶性を向上できる場合がある。また、EVOHにリン酸化合物(たとえば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素二カリウム)を添加してもよい。これによって、EVOHの熱安定性を向上できる場合がある。ホウ素化合物、アルカリ金属塩およびリン化合物といった添加剤が添加されたEVOHは、公知の方法で製造することができる。
【0078】
ポリアミド系樹脂の種類は特に限定されず、たとえば、ポリカプロアミド(ナイロン−6)、ポリウンデカンアミド(ナイロン−11)、ポリラウリルラクタム(ナイロン−12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ナイロン−6,12)等の脂肪族ポリアミド単独重合体;カプロラクタム/ラウロラクタム共重合体(ナイロン−6/12)、カプロラクタム/アミノウンデカン酸共重合体(ナイロン−6/11)、カプロラクタム/ω−アミノノナン酸共重合体(ナイロン−6/9)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド共重合体(ナイロン−6/6,6)、カプロラクタム/ヘキサメチレンアジパミド/ヘキサメチレンセバカミド共重合体(ナイロン−6/6,6/6,10)等の脂肪族ポリアミド共重合体;ポリメタキシリレンアジパミド(MX−ナイロン)、ヘキサメチレンテレフタラミド/ヘキサメチレンイソフタラミド共重合体(ナイロン−6T/6I)等の芳香族ポリアミドが挙げられる。これらのポリアミド樹脂は、それぞれ単独で用いることもできるし、2種以上を混合して用いることもできる。これらの中でも、ポリカプロアミド(ナイロン−6)およびポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン−6,6)が好ましい。
【0079】
ポリアクリロニトリル系樹脂としては、アクリロニトリルの単独重合体や、アクリル酸エステルなどの単量体とアクリロニトリルとの共重合体が挙げられる。
【0080】
実施形態3の組成物は、本発明の効果が得られる限り、酸化防止剤、可塑剤、熱安定剤(溶融安定剤)、光開始剤、脱臭剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、着色剤、フィラー、充填剤、顔料、染料、加工助剤、難燃剤、防曇剤、および乾燥剤といった添加剤の少なくとも1つを含んでもよい。
【0081】
熱安定剤(溶融安定剤)としては、たとえば、ハイドロタルサイト化合物や、高級脂肪族カルボン酸の金属塩(たとえばステアリン酸カルシウムやステアリン酸マグネシウム)の1種または2種以上を用いることができる。これらの化合物を用いることによって、組成物の製造時において、ゲルの発生やフィッシュアイの発生を防止することができる。
【0082】
脱臭剤としては、たとえば、亜鉛化合物、アルミニウム化合物、ケイ素化合物、鉄(II)化合物、有機酸類が挙げられる。
【0083】
本発明の組成物は、酸素吸収剤(すなわち有機化合物が吸着した無機物粒子および酸素吸収促進剤)、樹脂、および添加剤といった成分を混合することによって形成できる。各成分を混合する方法および混合の順序は特に限定されない。たとえば、全部の成分を同時に混合してもよい。また酸素吸収剤と添加剤とを混合した後に樹脂と混合してもよいし、酸素吸収剤と樹脂とを混合した後に、添加剤と混合してもよい。また、添加剤と樹脂とを混合した後に酸素吸収剤と混合してもよい。また、これらの場合において、有機化合物が吸着した無機物粒子と酸素吸収促進剤とは、予め混合しておいてもよいし、異なる段階で別々に他の成分と混合してもよい。
【0084】
混合の具体的な方法としては、たとえば、各成分を溶媒に溶解させて複数の溶液を作製し、これらの溶液を混合した後に溶媒を蒸発させる方法や、溶融した樹脂に他の成分を添加して混練する方法が挙げられる。
【0085】
混練は、たとえば、リボンブレンダー、高速ミキサー、コニーダー、ミキシングロール、押出機、またはインテンシブミキサーを用いて行うことができる。
【0086】
本発明の組成物は、様々な形態、たとえば、フィルム、シート、容器などに成形できる。これらの成形物は、包装材や脱酸素剤として用いることができる。なお、本発明の組成物を一旦ペレットとしてから成形してもよいし、組成物の各成分をドライブレンドして、直接成形してもよい。
【0087】
(実施形態4)
実施形態4では、本発明の包装材について説明する。本発明の包装材は、実施形態3で説明した酸素吸収性組成物からなる部分を含む。この部分は、どのような形状であってもよく、たとえば層状、ボトル状、またはキャップ状といった形状である。この包装材は、実施形態3の組成物を様々な形状に加工することによって形成できる。
【0088】
実施形態3の組成物は、たとえば、溶融押出成形法によってフィルム、シートおよびパイプといった形状に成形されてもよい。また、射出成形法によって容器形状に成形してもよい。また、中空成形法によってボトルなどの中空容器に成形されてもよい。中空成形としては、たとえば、押出中空成形や射出中空成形を適用できる。
【0089】
実施形態4の包装材は、実施形態3の組成物からなる層(以下、層(A)という場合がある)のみで構成されてもよいが、他の材料からなる層(以下、層(B)という場合がある)との積層体であってもよい。積層体とすることによって、機械的特性、水蒸気バリア性、酸素バリア性といった特性をさらに向上させることができる。層(B)の材料および数は、包装材に必要とされる特性に応じて選択される。
【0090】
積層体の構造は特に限定はない。層(A)と層(B)との間には、両者を接着するための接着性樹脂層(以下、層(C)という場合がある)を配置してもよい。積層体の構成は、たとえば、層(A)/層(B)、層(B)/層(A)/層(B)、層(A)/層(C)/層(B)、層(B)/層(C)/層(A)/層(C)/層(B)、層(B)/層(A)/層(B)/層(A)/層(B)、および層(B)/層(C)/層(A)/層(C)/層(B)/層(C)/層(A)/層(C)/層(B)が挙げられる。積層体が複数の層(B)を含む場合、それらは同じであっても異なってもよい。積層体の各層の厚さは、特に限定されない。積層体全体の厚さに対する層(A)の厚さの割合を2〜20%の範囲とすることによって、成形性およびコストの点で有利となる場合がある。
【0091】
層(B)は、たとえば、熱可塑性樹脂や金属で形成できる。層(B)に使用される金属としては、たとえば、スチールやアルミ等が挙げられる。層(B)に使用される熱可塑性樹脂は特に限定されないが、たとえば、層(A)について例示した樹脂を用いることができる。たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン、ポリ1−ブテンといったポリオレフィンを用いてもよい。また、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリカーボネート、ポリアクリレート、エチレン−ビニルアルコール共重合体を用いてもよい。また、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートといったポリエステルを用いてもよい。また、ポリカプロアミド、ポリヘキサメチレンアジパミド、ポリメタキシリレンアジパミドといったポリアミドを用いてもよい。また、エチレンまたはプロピレンと他の単量体との共重合体を用いてもよい。他の単量体としては、たとえば、1−ブテン、イソブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテンといったα−オレフィン;イタコン酸、メタクリル酸、アクリル酸、無水マレイン酸といった不飽和カルボン酸、その塩、その部分または完全エステル、そのニトリル、そのアミド、その無水物;ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ビニルブチレート、ビニルオクタノエート、ビニルドデカノエート、ビニルステアレート、ビニルアラキドネートといったカルボン酸ビニルエステル類;ビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン系化合物;不飽和スルホン酸またはその塩;アルキルチオール類;ビニルピロリドン類を挙げることができる。
【0092】
層(A)および層(B)は、無延伸のものであってもよいし、一軸もしくは二軸に延伸または圧延されているものであってもよい。
【0093】
層(C)に使用される接着性樹脂は、各層間を接着できるものであれば特に限定されない。たとえば、ポリウレタン系、ポリエステル系一液型または二液型硬化性接着剤、不飽和カルボン酸またはその無水物(無水マレイン酸等)をオレフィン系重合体に共重合またはグラフト変性したもの(カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂)を用いることができる。層(A)および層(B)がポリオレフィン樹脂を含む場合には、カルボン酸変性ポリオレフィン樹脂を用いることによって高い接着性を実現できる。カルボン酸変性ポリオレフィン系樹脂としては、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、共重合ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、およびエチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体といった重合体をカルボン酸変性して得られる樹脂が挙げられる。
【0094】
積層体を構成する層の少なくとも1層に、脱臭剤を配合してもよい。脱臭剤には、たとえば、実施形態3で例示した脱臭剤を用いることができる。
【0095】
実施形態4の積層体の製造方法は特に限定されず、たとえば公知の方法で形成できる。たとえば、押出ラミネート法、ドライラミネート法、溶剤流延法、共射出成形法、共押出成形法といった方法を適用できる。共押出成形法としては、たとえば、共押出ラミネート法、共押出シート成形法、共押出インフレーション成形法、共押出ブロー成形法が適用できる。
【0096】
本発明の包装材が多層構造を有する容器である場合、実施形態3の組成物からなる層を容器の内面に近い層、たとえば最内層に配置することによって、容器内の酸素を速やかに吸収することが可能となる。
【0097】
本発明は、多層容器のなかでも、全層の厚さが300μm以下である多層容器、または押出しブロー成形法によって製造される多層容器に好適に用いられる。
【0098】
全層の厚さが300μm以下である多層容器は、多層フィルムのような比較的薄い多層構造体からなる容器であり、通常パウチ等の形態で使用される。フレキシブルで製造も簡便であり、かつガスバリア性に優れ、さらには持続的な酸素吸収機能を有するので、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品の包装に極めて有用である。全層厚さを300μm以下とすることによって、高いフレキシブル性が得られる。全層の厚さを250μm以下、特に200μm以下とすることによって、より高いフレキシブル性が得られる。また、機械的強度を考慮すると、全層厚さは10μm以上であることが好ましく、20μm以上であることがより好ましい。
【0099】
このような多層容器を密封するために、多層フィルムの少なくとも一方の表面層は、ヒートシール可能な樹脂からなる層であることが好ましい。そのような樹脂としては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンといったポリオレフィンを挙げることができる。袋状に加工された多層フィルムに内容物を充填してヒートシールすることによって、多層容器が得られる。
【0100】
一方、押出しブロー成形法によって製造される多層容器は、通常ボトル等の形態で使用される。生産性が高く、かつガスバリア性に優れ、さらには持続的な酸素吸収機能を有するので、酸素に対し感受性が高く劣化し易い製品の包装に極めて有用である。
【0101】
ボトル型の容器の胴部の厚さは、一般的には100〜2000μmの範囲であり、用途に応じて選択される。この場合、実施形態2の組成物からなる層の厚さは、たとえば2〜200μmの範囲とすることができる。
【0102】
本発明の包装材は、容器用のパッキング(ガスケット)、特に容器のキャップ用のガスケットであってもよい。この場合、実施形態3の組成物によってガスケットが形成される。
【0103】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明する。
【0104】
[実施例1]
実施例1では、本発明の酸素吸収剤の酸素吸収能を評価した結果を示す。なお、以下のサンプルの作製では、ハイドロタルサイトの粉末として、協和化学工業(株)製、Kyowado−500を用いた。
【0105】
(サンプル1)
リノレン酸4.00gを、脱気したヘキサン150mLに溶解し、ハイドロタルサイトの粉末16.0gを加え、窒素雰囲気下、バス温80℃でヘキサンを留去した。次に、窒素雰囲気下、バス温110℃で粉末を撹拌しながら3時間加熱した。次に、粉末を減圧乾燥し、リノレン酸が化学吸着したハイドロタルサイトの粉末(サンプル1)を得た。
【0106】
(サンプル2)
上記サンプル1の酸素吸収剤9.78gに、脱気したヘキサン100mLを加え、室温で2時間撹拌したのちに吸引濾過を行った。このようにして、サンプル1をヘキサンで洗浄した粉末(サンプル2)を得た。
【0107】
(サンプル3)
リノレン酸2.00gをヘキサン100mLに溶解し、ハイドロタルサイトの粉末8.00gを加え、室温で2時間撹拌した。混合後の液体を吸引濾過し、得られた粉末を減圧乾燥した。このようにして、リノレン酸が吸着したハイドロタルサイトの粉末(サンプル3)を得た。
【0108】
(比較サンプル1)
リノレン酸2.00gをヘキサン100mLに溶解し、活性炭(クラレケミカル(株)製、BP−20)8.00gを加えて室温で2時間撹拌した。混合後の液体を吸引濾過し、得られた粉末を減圧乾燥した。このようにして、リノレン酸が物理吸着した活性炭粉末(比較サンプル1)を得た。
【0109】
(酸素吸収剤の作製および評価)
上記4種類の粉末、および比較サンプル2としてハイドロタルサイト粉末のそれぞれに、約10倍の重量の脱気したヘキサンを加え、さらにナフテン酸コバルトをコバルト換算で800ppmとなるように添加して混合した。混合後の液体から、減圧下で溶媒を留去し、得られた粉末を乾燥した。このようにして得られた4種類の酸素吸収剤について、それぞれ0.5gを、23℃で50%RHの室内で容量260ccの瓶に投入し、瓶を密封した。そして、この瓶を23℃で保管し、一定期間経過後の瓶内の酸素濃度を測定して酸素吸収剤の酸素吸収速度を算出した。評価結果を図1に示す。
【0110】
図1の縦軸は、酸素吸収剤1gあたりの酸素吸収量を示す。図1に示すように、サンプル1〜3は、リノレン酸が活性炭に物理吸着している比較サンプル1に比べて高い酸素吸収能を示した。ただし、サンプル3は、サンプル1および2に比べて酸素吸収能が劣った。また、熱処理をして作製したサンプル1を洗浄して得られるサンプル2では、サンプル1に比べて大きな特性低下は見られなかった。サンプル2において洗浄による酸素吸収能の低下が小さい理由は、サンプル1のハイドロタルサイトに多量のリノレン酸が化学吸着しているためであると考えられる。一方、比較サンプル2はほとんど酸素吸収を示さなかった。
【0111】
サンプル1〜3について、KBr錠剤法で赤外吸収スペクトルを測定したところ、C=O伸縮振動に由来するピーク(1500cm-1〜1700cm-1)に差が見られた。図2に、赤外吸収スペクトルを示す。
【0112】
サンプル1〜3について、酸素吸収能および赤外吸収スペクトルが異なる理由は明確ではないが、処理の方法によってリノレン酸の吸着量や吸着の状態が異なるためであると考えられる。
【0113】
[実施例2]
実施例2では、本発明の酸素吸収剤を作製して評価した他の一例について説明する。
【0114】
(サンプル4)
まず、窒素雰囲気下、リノレン酸2.00gに、ナフテン酸コバルトのヘキサン溶液2.0mL(ナフテン酸コバルトの濃度はCo換算で0.8mg/mL)を加えて攪拌し、第1の溶液を得た。一方、ヘキサン100mL中に、ハイドロタルサイトの粉末8.00gを加えて攪拌し、第2の溶液を得た。次に、窒素雰囲気下、第2の溶液に第1の溶液を滴下して混合した。得られた液体をバス温80℃で加熱し、ヘキサンを留去し、さらにオイルバスで120℃で2時間加熱したのち、放冷した。得られた粉末を減圧乾燥し、リノレン酸がハイドロタルサイトに主に化学吸着した粉末(サンプル4)を得た。
【0115】
このようにして得られた酸素吸収剤0.5gを、23℃で50%RHの室内で容量260ccの瓶に投入し、瓶を密封した。そして、この瓶を23℃で保管し、一定期間経過後の瓶内の酸素濃度を測定して酸素吸収剤の酸素吸収速度を算出した。評価結果を図3に示す。図3に示すように、サンプル4は、サンプル3と同等以上の酸素吸収能を示した。
【0116】
[実施例3]
実施例3では、本発明の酸素吸収剤を作製して評価した他の一例について説明する。
【0117】
(サンプル5)
リノレン酸4.00gを、脱気したヘキサン150mLに溶解し、合成雲母であるソマシフME(コープケミカル株式会社製)の粉末16.0gを加え、窒素雰囲気下、バス温80℃でヘキサンを留去した。次に、ヘキサンの留去によって得られた粉末を、窒素雰囲気下、バス温110℃で撹拌しながら3時間加熱した。次に、粉末を減圧乾燥し、リノレン酸が化学吸着したソマシフMEの粉末(サンプル5)を得た。
【0118】
(酸素吸収剤の作製および評価)
サンプル5に約10倍の重量の脱気したヘキサンを加え、さらにナフテン酸コバルトをコバルト換算で800ppmとなるように添加して混合した。混合後の液体から、減圧下で溶媒を留去し、得られた粉末を乾燥した。このようにして得られた酸素吸収剤0.5gを、23℃で50%RHの室内で容量260ccの瓶に投入し、瓶を密封した。そして、この瓶を23℃で保管し、一定期間経過後の瓶内の酸素濃度を測定して酸素吸収剤の酸素吸収速度を算出した。評価結果を図4に示す。
【0119】
[実施例4]
実施例4では、本発明の酸素吸収剤を作製して評価した他の一例について説明する。
【0120】
(サンプル6)
エイコサペンタエン酸エチルエステル4.00gを、脱気したヘキサン150mLに溶解し、ハイドロタルサイトの粉末16.0gを加え、窒素雰囲気下、バス温80℃でヘキサンを留去した。次に、ヘキサンの留去によって得られた粉末を、窒素雰囲気下、バス温110℃で撹拌しながら3時間加熱した。次に、粉末を減圧乾燥し、エイコサペンタエン酸が化学吸着したハイドロタルサイトの粉末(サンプル6)を得た。
【0121】
(酸素吸収剤の作製および評価)
サンプル6に約10倍の重量の脱気したヘキサンを加え、さらにナフテン酸コバルトをコバルト換算で800ppmとなるように添加して混合した。混合後の液体から、減圧下で溶媒を留去し、得られた粉末を乾燥した。このようにして得られた酸素吸収剤0.5gを、23℃で50%RHの室内で容量260ccの瓶に投入し、瓶を密封した。そして、この瓶を23℃で保管し、一定期間経過後の瓶内の酸素濃度を測定して酸素吸収剤の酸素吸収速度を算出した。評価結果を図5に示す。
【0122】
[実施例5]
実施例5では、酸素吸収性組成物からなるプレスフィルムを作製した一例について説明する。
【0123】
(サンプル7)
まず、実施例1で説明した、リノレン酸が化学吸着したハイドロタルサイトの粉末(サンプル1)を作製した。サンプル1に約10倍の重量の脱気したヘキサンを加え、さらにナフテン酸コバルトをコバルト換算で800ppmとなるように添加して混合した。混合後の液体から、減圧下で溶媒を留去し、得られた粉末を乾燥して酸素吸収剤を得た。次に、このようにして得られた酸素吸収剤10重量部と、90重量部のEVOHとを混合し、5分間溶融ブレンドした。ブレンドは、窒素雰囲気下で行った。そして、得られた混合物を圧縮成型機で、厚さ100μm程度にプレスし、プレスフィルム(サンプル7)を作製した。
【0124】
0.5gのサンプル7を、23℃で50%RHの室内で容量85ccの瓶に投入し、瓶を密閉した。そして、この瓶を23℃で保管し、一定期間経過後の瓶内の酸素濃度を測定して酸素吸収剤の酸素吸収速度を算出した。評価結果を図6に示す。
【0125】
以上、本発明の実施形態について例を挙げて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の技術的思想に基づいて他の実施形態に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、酸素吸収剤、酸素吸収性組成物、およびそれらを用いた包装材に適用できる。特に、酸素による劣化の影響が大きい物品、たとえば、食品、医薬、医療器材、機械部品、衣料等の包装材として好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機物粒子と、前記無機物粒子に化学吸着した有機化合物と、酸素吸収促進剤とを含む酸素吸収剤。
【請求項2】
前記有機化合物は、カルボン酸、エステル、アルデヒド、アルコキシシラン誘導体およびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つの有機化合物(A)が前記無機物粒子と反応することによって形成された有機化合物である請求項1に記載の酸素吸収剤。
【請求項3】
前記有機化合物が不飽和の有機化合物である請求項1に記載の酸素吸収剤。
【請求項4】
前記有機化合物が以下の式(1)で表される構造を含む請求項3に記載の酸素吸収剤。
【化5】

[式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、置換基を有するアルキルアリール基、−COOR3、−OCOR3、シアノ基およびハロゲン原子から選ばれる1つである。R3は、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、および置換基を有するアルキルアリール基から選ばれる1つである。]
【請求項5】
前記有機化合物が以下の式(2)で表される構造を含む請求項3に記載の酸素吸収剤。
【化6】

[式中、R4およびR5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、置換基を有するアルキルアリール基、−COOR3、−OCOR3、シアノ基およびハロゲン原子から選ばれる1つである。R3は、アルキル基、置換基を有するアルキル基、アリール基、置換基を有するアリール基、アルキルアリール基、および置換基を有するアルキルアリール基から選ばれる1つである。]
【請求項6】
前記有機化合物が不飽和の脂環式構造を有する請求項3に記載の酸素吸収剤。
【請求項7】
前記有機化合物の式量が3000以下である請求項1に記載の酸素吸収剤。
【請求項8】
前記無機物粒子が層状無機化合物からなる請求項1に記載の酸素吸収剤。
【請求項9】
前記無機物粒子はその表面に水酸基を有する請求項1に記載の酸素吸収剤。
【請求項10】
前記無機物粒子がハイドロタルサイトの粒子である請求項9に記載の酸素吸収剤。
【請求項11】
前記酸素吸収促進剤が、遷移金属塩、ラジカル発生剤および光触媒から選ばれる少なくとも1つである請求項1に記載の酸素吸収剤。
【請求項12】
無機物粒子と酸素吸収促進剤とを含む酸素吸収剤の製造方法であって、有機化合物を前記無機物粒子に化学吸着させる工程を含む酸素吸収剤の製造方法。
【請求項13】
前記有機化合物が不飽和の有機化合物である請求項12に記載の酸素吸収剤の製造方法。
【請求項14】
前記無機物粒子は表面に水酸基を有し、前記有機化合物は水酸基と反応する官能基を有する請求項12に記載の酸素吸収剤の製造方法。
【請求項15】
前記有機化合物が、カルボン酸、エステル、アルデヒド、アルコキシシラン誘導体およびアミンからなる群より選ばれる少なくとも1つの有機化合物である請求項14に記載の酸素吸収剤の製造方法。
【請求項16】
(i)前記有機化合物と前記無機物粒子と有機溶媒とを含む混合物を調製する工程と、
(ii)前記混合物から前記有機溶媒を除去する工程とを含む請求項14に記載の酸素吸収剤の製造方法。
【請求項17】
前記(ii)の工程ののちに前記混合物を水の沸点以上の温度で加熱する工程を含む請求項16に記載の酸素吸収剤の製造方法。
【請求項18】
(I)前記有機化合物と前記無機物粒子とを含む混合物を調製する工程と、
(II)前記混合物を加熱することによって前記有機化合物を前記無機物粒子に化学吸着させる工程とを含む請求項14に記載の酸素吸収剤の製造方法。
【請求項19】
前記(II)の工程は、前記混合物を水の沸点以上の温度で加熱する工程を含む請求項18に記載の酸素吸収剤の製造方法。
【請求項20】
前記混合物を窒素雰囲気下または減圧下で加熱する請求項17に記載の酸素吸収剤の製造方法。
【請求項21】
前記無機物粒子が層状無機化合物からなる請求項13に記載の酸素吸収剤の製造方法。
【請求項22】
請求項13に記載の製造方法によって製造された酸素吸収剤。
【請求項23】
樹脂と前記樹脂に分散された酸素吸収剤とを含む酸素吸収性組成物であって、
前記酸素吸収剤が請求項1に記載の酸素吸収剤である酸素吸収性組成物。
【請求項24】
前記樹脂がエチレン−ビニルアルコール共重合体を含む請求項23に記載の酸素吸収性組成物。
【請求項25】
請求項23に記載された酸素吸収性組成物からなる部分を含む包装材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【国際公開番号】WO2005/079607
【国際公開日】平成17年9月1日(2005.9.1)
【発行日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−510210(P2006−510210)
【国際出願番号】PCT/JP2005/002333
【国際出願日】平成17年2月16日(2005.2.16)
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)
【Fターム(参考)】