説明

酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒

【課題】酸素吸放出性能およびS被毒耐久性を有する酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒を提供する。
【解決手段】LnSO(Lnは希土類元素を示す。)とセリア複合酸化物とを混合してなる酸素吸放出材、前記の酸素吸放出材を含む排ガス浄化用触媒。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒に関し、さらに詳しくはセリア複合酸化物を必須成分として含む酸素吸放出能およびS(硫黄)被毒耐久性を有し触媒の劣化を抑制し得る酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車等の内燃機関から排出される排ガス中には、HC、CO及びNOが含まれており、これらの物質は排ガス浄化用触媒によって浄化されてから大気中に放出されている。ここで用いられる排ガス浄化用触媒の代表的なものとしては、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、ジルコニア(ZrO)、チタニア(TiO)などの多孔質酸化物担体に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)などの貴金属を胆持した三元触媒が広く用いられている。
【0003】
この三元触媒は、排ガス中のHC及びCOを酸化して浄化するとともに、NOを還元して浄化するものであり、理論空燃比近傍で燃焼されたストイキ雰囲気の排ガスにおいて最も高い効果が発現される。
しかし、現実の空燃比は、自動車の走行条件によってストイキを中心としてRich(リッチ)側あるいはリーン(Lean)側に変動するため、排ガス雰囲気もリッチ側あるいはリーン側に変動する。そのため、上記構成の三元触媒のみで必ずしも高い浄化性能が確保されるとは限らない。
特に、近年は、燃費を向上させることが求められ、高温でFC回数を増やすなど、排ガス浄化用触媒にとっては、高温でA/F変動に基く急激な雰囲気変動に晒される機会が増えている。こうした急激な雰囲気変動は、触媒劣化を大幅に促進する。
【0004】
そこで、排ガス中の酸素濃度の変動を吸収して三元触媒の排ガス浄化能力を高めるために、排ガス中の酸素濃度が高いときには酸素を吸蔵し、排ガス中の酸素濃度が低いときには酸素を放出する、酸素吸放出(以下、OSCと略記することもある)能を有する材料である酸素吸放出材が排ガス浄化用触媒において用いられている。
このような酸素吸放出材としては、例えば、セリア(CeO)やセリア複合酸化物、すなわちセリア−ジルコニア(CeO−ZrO)複合酸化物などが知られている。これらの酸素吸放出材は、自動車排ガス浄化用触媒にとって、A/F変動を吸収し、触媒が最も有効に作用する雰囲気に保つために必須の構成材料となっているが、安定して排ガスを浄化するために、より大容量の酸素を吸放出し得る酸素吸放出材が望まれている。
そこで、CeOやセリア複合酸化物と比較して理論値で1分子当たり8倍の酸素を吸放出可能なランタノイド系オキシサルフェート(LnSO)が注目されるに至った。
一方、自動車等のエンジンからの排ガス中にはS成分、例えばSO、SOなどの硫黄酸化物が含まれており、酸素吸放出材はS被毒耐久性を有することが求められている。
【0005】
特許文献1には、A2−xCO4−y(SO(式中、Aは希土類元素、Bはアルカリ土類金属、Cは遷移金属であり、xは、1≦x<2、yは、0<y≦1である)で示されるペロブスカイト型複合酸化物を備えたガス浄化触媒がS被毒を防止し得ることが記載されている。
特許文献2には、ASO(Aは希土類元素)で表わされる希土類のオキシ硫酸塩からなる酸素吸放出材に貴金属等を担持した触媒が従来のCeO−ZrO複合酸化物に貴金属を担持した触媒に比べ酸素吸放出能が高いことが記載されている。
特許文献3には、ASOで(Aは希土類元素)表わされる化合物からなる第1の酸素吸放出材とNOX吸蔵材とを備え、さらに貴金属を担持した排ガス浄化触媒が高温での酸素吸放出能が高いこと、さらに前記第1の酸素吸放出材にCeO又はCeO−ZrO複合酸化物などの第2の酸素吸放出材を組み合わせて使用することが記載されている。しかし、前記第2の酸素吸放出材としてCeO−ZrO複合酸化物を用いた具体例は記載されていない。
また、特許文献4には、PrSO及び/又はPrSからなる化合物におけるPrの少なくとも一部をCeで置換した酸素吸放出材、および前記酸素吸放出材に金属を担持させた排ガス浄化用触媒が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−87891号公報
【特許文献2】特開2005−87892号公報
【特許文献3】特開2006−75716号公報
【特許文献4】特開2008−284512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの特許文献に記載された酸素吸放出材は、酸素吸放出容量が十分でないため触媒の使用量を多くせざるを得ず、さらに高いOSC能を示す酸素吸放出材が求められている。
このため、本発明者らは、低温も含めて広い温度範囲で酸素吸放出能の高い酸素吸放出材及びそれを含む排ガス浄化用触媒について特許出願(特願2008−229893号)を行った。
しかし、前記特許出願に記載の酸素吸放出材に関して、その出願明細書にはセリア成分としてセリア複合酸化物を用いた具体的記載がなくまたS被毒耐久性についての記載がなく、酸素吸放出能とS被毒耐久性とを兼ね備えた酸素吸放出材及び排ガス浄化用触媒を得ることについて具体的な記載がない。
従って、本発明の目的は、酸素吸放出性能およびS被毒耐久性を有する酸素吸放出材及び排ガス浄化用触媒を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、LnSO(Lnは希土類元素を示す。)とセリア複合酸化物とを混合してなる酸素吸放出材に関する。
また、本発明は前記の酸素吸放出材を含む排ガス浄化用触媒に関する。
本発明において、セリア複合酸化物とは、セリア−ジルコニア(CeO−ZrO)固溶体の粉末、すなわち2次粒子をいう。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、酸素吸放出能およびS被毒耐久性を有する酸素吸放出材を得ることが可能である。
また、本発明によれば、酸素吸放出材が酸素吸放出能およびS被毒耐久性を有しているため、安定した触媒性能を有する排ガス浄化用触媒を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、公知の代表的な酸素吸放出材の酸素吸放出能を示すグラフである。
【図2】図2は、本発明の1つの実施態様の酸素吸放出材と公知の代表的な酸素吸放出材との酸素吸放出能を比較して示すグラフである。
【図3】図3は、排ガス雰囲気がRich側およびLean側での公知の貴金属触媒のシンタリングの程度を示すグラフである。
【図4】図4は、排ガス雰囲気がRich側およびLean側での他の公知の貴金属触媒のシンタリングの程度を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明の実施態様の酸素吸放出材を含む排ガス浄化用触媒の実施態様の一部断面模式図である。
【図6】図6は、本発明の実施態様の酸素吸放出材を含む排ガス浄化用触媒の他の実施態様の模式図である。
【図7】図7は、各実施例および各比較例で得られた酸素吸放出材を適用した排ガス浄化用触媒の性能を比較して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明によれば、LnSO(Lnは希土類元素を示す。以下、この特記を省略する場合もある。)(以下、LOSと略記することもある)と二次粒子であるセリア複合酸化物(以下、CZと略記することもある)とを混合することによって酸素吸放出能とともにS被毒耐久性を与え得る酸素吸放出材が得られる。特に、Pt、Pd、Rh、Feからなる群から選択される1種以上の金属元素を担持した酸素吸放出材はOSC能がさらに向上する。
また、本発明によれば、前記の酸素吸放出材を含むことによって排ガス雰囲気が変化し硫黄酸化物を含む高温環境下においても貴金属触媒のシンタリングを抑制し得る排ガス浄化用触媒が得られる。
【0012】
以下、本発明について、図1〜7を参照して説明する。
図1に示すように、従来公知の酸素吸放出材であるLOSは、Oの放出容量は大きいがOを放出するのに時間を必要とし急激な雰囲気変動に対応し得ない。このため、LOSは酸素吸放出材として実際には使用され得ない。一方、従来公知の他の酸素吸放出材であるCZは、急激にOを放出するが直にOを放出し得なくなる。
これに対して、図2に示すように、本発明の実施態様の酸素吸放出材は、急激にOを放出した後もOの放出が続く。これにより、本発明の実施態様の酸素吸放出材は急激な雰囲気変動にも対応し得る。
【0013】
図3および図4に示すように、酸素吸放出材を用いない場合、Pt粒子を代表的な担体であるCZ担体に担持させた排ガス浄化用触媒では特にRichにおいて、Pt粒子を他の代表的な担体であるAl担体に担持させた排ガス浄化用触媒では特にLeanにおいて触媒の劣化が顕著である。このため、いずれの担体であっても高温運転により、RichとLeanとの間で変動する排ガス雰囲気で使用される排ガス浄化用触媒には大幅な劣化を生じるのである。
図5および図6に示すように、本発明の実施態様の排ガス浄化用触媒は、Pdなどの金属元素を担持させた酸素吸放出材を排ガス浄化用触媒の排ガス流入側、すなわち排ガスの不純物濃度の高い側に設けた前段部のA/F変動の吸収部、貴金属、例えばPtを担持させた貴金属触媒部を下流側、すなわち排ガスの不純物濃度の低い側に設けた後段部の貴金属触媒部から構成される。
図7から、本発明の実施態様の酸素吸放出材は、比較例の酸素吸放出材と比較して、排ガス浄化用触媒に適用することによって、硫黄酸化物を含むRich/Leanの雰囲気変動下での耐久試験において後段の貴金属触媒部の貴金属(Pt)のシンタリングが大幅に抑制し得ることが理解される。
【0014】
本発明の酸素吸放出材による前記雰囲気での貴金属触媒部の貴金属のシンタリング抑制効果は、理論的には解明されていないが、本発明によりセリア複合酸化物を高い割合で含む酸素吸放出材を得ることが可能となるため、セリア複合酸化物の有する熱に強く且つCeOに比べて高いOSC性能と、LaSOの有する硫黄酸化物のSの被毒を受けない特性とが併せて発揮されることによると考えられる。
【0015】
本発明の酸素吸放出材は、セリア複合酸化物の含有量がLnSOとセリア複合酸化物との合計量に対して20質量%より多い、特に25〜75質量%、その中でも40〜60質量%であるものが好適である。前記のセリア複合酸化物の含有量が20質量%以下では排ガス浄化用触媒の硫黄酸化物の存在下における前記の貴金属、例えばPtのシンタリング抑制効果が少なくなり好ましくなく、過度に多いと硫黄酸化物のSによる被毒を受け易くなる。
【0016】
本発明における前記のLnSOとしては、LaSO、CeSO、PrSO、NdSO、PmSO、SmSO、EuSOが挙げられ、好適にはLaSOが挙げられる。前記のLnSOは、通常微細粒子として用いられる。
また、本発明におけるセリア複合酸化物としては、セリア−ジルコニア(CeO−ZrO)固溶体、例えば一次粒子径が3〜50nmである2次粒子が挙げられる。本発明におけるセリア複合酸化物としては、前記のCe、ZrおよびOの3元素からなる固溶体の2次粒子、および前記3元素に加えて希土類元素、例えばY、Ndを加えた4元素以上の元素からなる固溶体の2次粒子が挙げられる。前記のY、Ndなどの希土類元素の量は、CeとZrとの合計1原子に対して0.2原子以下、例えば0.01〜0.2原子、特に0.025〜0.15原子の範囲であり得る。
【0017】
本発明の酸素吸放出材は、前記のLnSOおよび前記のセリア複合酸化物を混合することによって得ることができる。
つまり、本発明の酸素吸放出材は、LnSOおよび2次粒子化したセリア複合酸化物を混合することによってセリア複合酸化物を高い濃度で含む両者の混合物を得ることが可能となる。これに対して、特願2008−229893号明細書で示唆しているLnSOを含む溶液中でセリア複合酸化物を与えるセリウム塩とジルコニウム塩を混合する工程を含む方法によって調製したのでは、LnSOの粒子表面にCeOとZrOとが別々に生成する可能性があり、目的とするセリア複合酸化物を高い濃度で含む酸素吸放出材を得ることが困難となる。
【0018】
本発明の実施態様の酸素吸放出材は、前記のLnSOおよび前記のセリア複合酸化物に加えて、さらに任意の多孔質酸化物、例えばAlを含み得る。前記の多孔質酸化物の量は、LnSOとセリア複合酸化物との合計量100質量部に対して50質量部以下、例えば1〜50質量部の範囲であり得る。
また、本発明の酸素吸放出材の実施態様として、前記各成分にさらに、Pt、Pd、Rh、Feからなる群から選択される1種以上の金属元素を担持してなる酸素吸放出材が挙げられる。前記の実施態様において、Pt、Pd、Rh、Feからなる群から選択される1種以上の金属元素の合計の担持量が、LnSOおよびセリア複合酸化物の合計量100質量部に対して0.1〜5質量部、特に0.25〜2質量部である酸素吸放出材が挙げられる。前記のPt、Pd、Rh、Feからなる群から選択される1種以上の金属元素を担持することによって、酸素吸放出能が増大する。
【0019】
本発明の酸素吸放出材は、例えば以下の方法によって得ることができる。すなわち、先ず、LnSOを与えるLnの硝酸塩、例えばLn(NO・9HOと長鎖アルキル硫酸塩、例えばドデシル硫酸ナトリウム(以下、SDSと略記することもある。)をアルカリ水溶液中、例えばアンモニア水溶液中で、攪拌下に加熱して反応させた後、冷却して、沈殿物を分離取得する。次いで、乾燥して得られる粉末を空気中で焼成、例えば500℃以上の温度で数時間、加熱して焼成してLnSOの粉末を得る。
別に、セリア複合酸化物を与える各金属の塩、例えば硝酸二アンモニウムセリウム、オキシ硝酸ジルコニウム、さらに場合により希土類元素の硝酸塩、例えば硝酸イットリウム又は硝酸ネオジウムをアルカリ水溶液中、例えばアンモニア水溶液中で、攪拌下に加熱して反応させた後、冷却して、沈殿物を分離取得する。次いで、乾燥して得られる粉末を空気中で焼成、例えば500℃以上の温度で数時間、加熱して焼成後、粉砕してセリア複合酸化物の2次粒子を得る。
このようにして得られるLnSOの粉末とセリア複合酸化物と、さらに場合により他の多孔質酸化物、例えばアルミナおよび場合によりさらに貴金属触媒を与える貴金属塩、例えば硝酸パラジウムを水中で均一に混合し、スラリーを調製し、沈殿物を分離取得する。次いで、乾燥して得られる粉末を空気中で焼成、例えば500℃以上の温度で数時間、加熱して焼成して本発明の酸素吸放出材を得ることができる。
【0020】
本発明の排ガス浄化用触媒は、前記の酸素吸放出材を必須成分として含むものであり、目的とする用途に応じて酸素吸放出材以外の任意の他の成分を含み得る。また、本発明の排ガス浄化用触媒は、他の機能を有する部材、例えば貴金属触媒部材と組み合わせて排ガス浄化用触媒となし得る。
例えば、本発明の実施態様の排ガス浄化用触媒は、前記の酸素吸放出材を排ガス浄化用触媒の排ガス流入側に設けた排ガス浄化用触媒であり得て、例えば図5又は図6に示すように、金属元素、例えばPdを担持させた酸素吸放出材を排ガス浄化用触媒の排ガス流入側、すなわち排ガスの不純物濃度の高い側に設けた前段のA/F変動の吸収部、貴金属、例えばPtを担持させた貴金属触媒部を下流側、すなわち排ガスの不純物濃度の低い側に設けた後段の貴金属触媒部から構成され得る。
このような排ガス浄化用触媒を構成する本発明の酸素吸放出材を含む2つ以上の複数の部材を用いた排ガス浄化用触媒の調製は、当業界で公知の技術を適用することによって実現し得る。
【0021】
また、本発明の実施態様の排ガス浄化用触媒は、ハニカム等の触媒基材上に塗布等により他の成分と組み合わせて担持することによって得られる。前記の触媒基材として用いるハニカムは、コージェライトなどのセラミックス材料やステンレス鋼などにより形成され得る。また、本発明の排ガス浄化用触媒は任意の形状に成形して用いることができる。
【0022】
前記の他の成分としては、NO吸蔵材および触媒活性成分等が挙げられる。NO吸蔵材はNOの吸蔵および放出を行うもので、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素のうちの少なくとも1種以上の元素を含み得る。
前記の触媒活性成分としては、貴金属および遷移金属のうちの少なくとも1種の金属が挙げられる。貴金属として、Pt、Pd、Rh、Irからなる群から選ばれる少なくとも1種の元素が挙げられる。触媒活性成分として遷移金属を用いる場合には、例えばNiなどが挙げられる。本発明の酸素吸放出材に前記のPt、Pd、Rh、Feからなる群から選択される1種以上の金属元素が担持されている場合には、通常は追加の触媒活性成分を用いなくてもよいが触媒活性の観点から加えて用いてもよい。
【0023】
前記の触媒活性成分を担持させた酸素吸放出材上に、さらに前記のNO吸蔵材、例えば、Ba、K、Liを担持させ得る。又は、酸素吸放出材とは別の機能部材にNO吸蔵材を担持させて酸素吸放出材と組み合わせて用い得る。NO吸蔵材の担持は、例えば、前記元素の塩溶液中、例えば前記元素の酢酸水溶液中に触媒活性成分を担持させた粉末状の酸素吸放出材を浸漬して含浸させた後、乾燥、焼成して行うことができる。あるいは、同様にして酸素吸放出材とは別の機能部材にNO吸蔵材の担持を行い得る。
前記の触媒活性成分およびNO吸蔵材を酸素吸放出材又は酸素吸放出材とは別の機能部材に担持することによって、本発明の排ガス浄化用触媒が得られる。
【0024】
本発明の排ガス浄化用触媒は、酸素吸放出材が前記の酸素吸放出能およびS被毒耐久性を併せて有しているため、安定した触媒性能を達成することが可能である。
【実施例】
【0025】
以下、本発明の実施例を示す。
以下の実施例は単に説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。
各例において、以下に示す原料1〜4以外については市販の試薬をそのまま使用した。
【0026】
参考例1
1.LaOSO(原料1)の調製
硝酸ランタン・9水和物(ナカライテスク社製)、SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、アンモニアおよび精製水を)La(NO・6HO:SDS:アンモニア:水=1:2:30:60(モル比)の割合でセパラブルフラスコ中に入れて攪拌を続けた。攪拌後、得られた沈殿物を遠心分離し、減圧乾燥して、粉末状に粉砕し、900℃で5時間焼成した。得られたLaOSOを原料1とした。
2.(Ce0.495Zr0.4530.052)O(原料2)の調製
硝酸ニアンモニウムセリウム(IV)(ナカライテスク社製)、オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物(ナカライテスク社製)および硝酸イットリウム・6水和物(ナカライテスク社製)を49.5:45.3:5.2(モル%)の割合で蒸留水に溶解した。得られた水溶液を、ミキサーで攪拌している28%アンモニア水溶液(ナカライテスク社製)の中へ流し込み、30分間攪拌を続けた。その後、生成した沈殿をろ過し、脱脂炉中120℃で12時間乾燥後、電気炉中700℃で5時間の焼成を行った。得られた粉末を乳鉢で粉砕して、原料2とした。
【0027】
3.(Zr0.82Nd0.090.09)O(原料3)の調製
オキシ硝酸ジルコニウム・2水和物(ナカライテスク社製)、硝酸ネオジム(III)・6水和物(キシダ化学社製)および硝酸イットリウム・6水和物(ナカライテスク社製)を82:9:9(モル%)の割合で蒸留水に溶解した。得られた水溶液を、ミキサーで攪拌している28%アンモニア水溶液(ナカライテスク社製)の中へ流し込み、30分間攪拌を続けた。その後、生成した沈殿をろ過し、脱脂炉中120℃で12時間乾燥後、電気炉中700℃で5時間の焼成を行って、得られた粉末を乳鉢で粉砕して、原料3とした。
4.1.0質量%Pt担持(Zr0.82Nd0.090.09)O(原料4)の調製
含浸法により、貴金属含有量8.6質量%の硝酸白金水溶液を用いて原料3に1.0質量%のPtを担持した。この含浸法において、含浸後の粉末を脱脂炉中120℃で12時間乾燥後、電気炉中600℃で2時間の焼成を行い、得られた粉末を原料4とした。
【0028】
比較例1
(1)前段部のA/F変動吸収部の調製
θ−Al11.8g、原料2を33.2g、水酸化アルミニウム粉末0.7g、40%硝酸アルミニウム水溶液15.1g、精製水48.9gおよびPd含有量8.2質量%の硝酸パラジウム水溶液8.2gを300mLポリビーカー中、ミキサーを用いて30分間攪拌した。その後、ボールミルで24時間混合し、スラリーを調製した。その後、17.5mLセラミックハニカム(φ30mmxL25mm、400セル/4ミル=0.1mm、NGK社製)にスラリーを均一に流し込み、余分なスラリーを吹き払った後、脱脂炉中250℃で2時間乾燥後、電気炉中500℃で2時間の焼成を行い、前段部(前段部−1)とした。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
【0029】
(2)後段部のPt触媒部の調製
θ−Al11.8g、原料4を33.2g、水酸化アルミニウム粉末0.7g、40%硝酸アルミニウム水溶液15.1gおよび精製水48.9gを300mLポリビーカー中、ミキサーを用いて30分間攪拌した。その後、17.5mLセラミックハニカム(φ30mmxL25mm、400セル/4ミル=0.1mm、NGK社製)にスラリーを均一に流し込み、余分なスラリーを吹き払った後、脱脂炉中250℃で2時間乾燥後、電気炉中500℃で2時間の焼成を行い、後段部のPt触媒部とした。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
(3)排ガス浄化用触媒の調製
得られた前段部のA/F変動吸収部を図5のように排ガス流入側に、後段部のPt触媒部を排ガス流出側に設けて排ガス浄化用触媒を得た。
(4)評価
得られた前段部のA/F変動吸収部についてOSC性能を、排ガス浄化用触媒について排ガス浄化性能を各々評価した。結果を他の結果とまとめて表1および図7に示す。
【0030】
実施例1
(1)前段部のA/F変動吸収部の調製
θ−Al11.8g、原料1を8.3g、原料2を24.9g、水酸化アルミニウム粉末0.7g、40%硝酸アルミニウム水溶液15.1gおよび精製水48.9gおよびPd含有量8.2質量%の硝酸パラジウム水溶液8.2gを300mLポリビーカー中、ミキサーを用いて30分間攪拌した他は比較例1と同様にして、前段部(前段部−2)を得た。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
(2)後段部のPt触媒部の調製
比較例1と同様にして、後段部のPt触媒部を得た。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
(3)排ガス浄化用触媒の調製
前段部のA/F変動吸収部として前段部−1に代えて前段部−2を用いた他は比較例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。
(4)評価
得られた前段部のA/F変動吸収部についてOSC性能を、排ガス浄化用触媒について排ガス浄化性能を各々評価した。結果を他の結果とまとめて表1および図7に示す。
【0031】
実施例2
(1)前段部のA/F変動吸収部の調製
θ−Al11.8g、原料1を16.6g、原料2を16.6g、水酸化アルミニウム粉末0.7g、40%硝酸アルミニウム水溶液15.1g、精製水48.9gおよびPd含有量8.2質量%の硝酸パラジウム水溶液8.2gを300mLポリビーカー中、ミキサーを用いて30分間攪拌した他は比較例1と同様にして、前段部(前段部−3)を得た。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
(2)後段部のPt触媒部の調製
比較例1と同様にして、後段部のPt触媒部を得た。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
(3)排ガス浄化用触媒の調製
前段部のA/F変動吸収部として前段部−1に代えて前段部−3を用いた他は比較例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。
(4)評価
得られた前段部のA/F変動吸収部についてOSC性能を、排ガス浄化用触媒について排ガス浄化性能を各々評価した。結果を他の結果とまとめて表1および図7に示す。
【0032】
実施例3
(1)前段部のA/F変動吸収部の調製
θ−Al11.8g、原料1を24.9g、原料2を8.3g、水酸化アルミニウム粉末0.7g、40%硝酸アルミニウム水溶液15.1g、精製水48.9gおよびPd含有量8.2質量%の硝酸パラジウム水溶液8.2gを300mLポリビーカー中、ミキサーを用いて30分間攪拌した他は比較例1と同様にして、前段部(前段部−4)を得た。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
(2)後段部のPt触媒部の調製
比較例1と同様にして、後段部のPt触媒部を得た。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
(3)排ガス浄化用触媒の調製
前段部のA/F変動吸収部として前段部−1に代えて前段部−4を用いた他は比較例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。
(4)評価
得られた前段部のA/F変動吸収部についてOSC性能を、排ガス浄化用触媒について排ガス浄化性能を各々評価した。結果を他の結果とまとめて表1および図7に示す。
【0033】
比較例2
(1)前段部のA/F変動吸収部の調製
θ−Al11.8g、原料1を33.2g、水酸化アルミニウム粉末0.7g、40%硝酸アルミニウム水溶液15.1g、精製水48.9gおよびPd含有量8.2質量%の硝酸パラジウム水溶液8.2gを300mLポリビーカー中、ミキサーを用いて30分間攪拌した他は比較例1と同様にして、前段部(前段部−5)を得た。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
(2)後段部のPt触媒部の調製
比較例1と同様にして、後段部のPt触媒部を得た。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
(3)排ガス浄化用触媒の調製
前段部のA/F変動吸収部として前段部−1に代えて前段部−5を用いた他は比較例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。
(4)評価
得られた前段部のA/F変動吸収部についてOSC性能を、排ガス浄化用触媒について排ガス浄化性能を各々評価した。結果を他の結果とまとめて表1および図7に示す。
【0034】
比較例3
(1)前段部のA/F変動吸収部の調製
θ−Al11.8g、原料1を33.2g、水酸化アルミニウム粉末0.7g、40%硝酸アルミニウム水溶液15.1g、精製水48.9gおよびPd含有量8.2質量%の硝酸パラジウム水溶液8.2gを300mLポリビーカー中、ミキサーを用いて30分間攪拌した。その後、ボールミルで24時間混合し、スラリーを調製した。その後、17.5mLセラミックハニカム(φ30mmxL25mm、400セル/4ミル=0.1mm、NGK社製)にスラリーを均一に流し込み、余分なスラリーを吹き払った後、脱脂炉中250℃で2時間乾燥後、電気炉中500℃で2時間の焼成を行った。なお、下層コート量は2.5(g/個)となるように調整した。
また、θ−Al11.8g、原料2を33.2g、水酸化アルミニウム粉末0.7g、40%硝酸アルミニウム水溶液15.1gおよび精製水48.9gを300mLポリビーカー中、ミキサーを用いて30分間攪拌した。その後、ボールミルで24時間混合し、スラリーを調製した。その後、先に調製した下層コート済の17.5mLセラミックハニカムにスラリーを均一に流し込み、余分なスラリーを吹き払った後、脱脂炉中250℃で2時間乾燥後、電気炉中500℃で2時間の焼成を行って前段部(前段部−6)を得た。なお、得られた前段部(前段部−6)のコート量は下層と合わせて5(g/個)となるように調整した。
【0035】
(2)後段部のPt触媒部の調製
比較例1と同様にして、後段部のPt触媒部を得た。なお、コート量は5(g/個)となるように調整した。
(3)排ガス浄化用触媒の調製
前段部のA/F変動吸収部として前段部−1に代えて前段部−6を用いた他は比較例1と同様にして、排ガス浄化用触媒を得た。
(4)評価
得られた前段部のA/F変動吸収部についてOSC性能を、排ガス浄化用触媒について排ガス浄化性能を各々評価した。結果を他の結果とまとめて表1および図7に示す。
【0036】
評価方法
以上の各例で行った評価法においては以下に記載の方法に従って行った。
1.物性測定
耐久試験後のPt粒子径は、ハニカムからコート粉末をかきとり、XRD測定による粉末X線のPt回折ピークの半値幅から、下記のScherrerの式を用いて算出した。
粒子サイズ=Kλ/(βcosθ)
(式中、Kは定数で0.94λはX線の波長、βは半値幅〔rad〕(Pt粒子径に起因)であり1.5405を用い、θは角度である。)
なお、XRD測定装置は、リガク社製RINT2000(CuKα、出力40KV、40mA)を用いた。
【0037】
2.耐久試験
下記のガス組成1に示すモデルガスを、5分毎に切り替え触媒固定床に流しながら、1000℃で3時間耐久試験を行った。その時のガス流速は5L/分とした。
なお、触媒は、比較例、実施例の各々について、流れ方向に対して前段部+後段部を組み合わせて耐久試験を実施した。
ガス組成1
リッチ:30ppmSO+0.1%NO+0.8%O+0.65%CO+0.1%C+10%CO+3%H
リーン:30ppmSO+0.1%NO+0.6%O+0.65%CO+0.1%C+10%CO+3%H
【0038】
3.浄化性能評価試験
下記のガス組成2を示すモデルガスを触媒固定床に流しながら25℃/分で昇温して、Cが50%浄化するときの温度(HC−T50と略記する。)を活性の指標とした。その時のガス流速は30L/分とした。
なお、触媒は、比較例、実施例の各々について、流れ方向に対して前段部+後段部を組み合わせて評価した。
ガス組成2
0.15%NO+0.7%O+0.65%CO+0.1%C+10%CO+3%H
4.OSC性能評価
浄化性能評価試験を行ったのと同じ装置を用いて、1%O/N(30分)⇒(Nパージ)⇒2%CO/N(30分)、600℃(床温)の順でガスを導入した(10L/分)。
OSC量は、COガス導入時に、OSC材の酸素を消費して発生するCO量から算出し、これをOS能とした。なお、OSCについては、前段部のみを用いた。
【0039】
【表1】

【0040】
表1および図7から、実施例1〜3で得られた酸素吸放出材およびそれを用いた排ガス浄化用触媒は、比較例1〜3の酸素吸放出材およびそれを用いた排ガス浄化用触媒と比較して、硫黄酸化物を含むリッチ/リーンの雰囲気変動下での耐久試験において後段部の貴金属(Pt)のシンタリングが大幅に抑制され、LOS単独あるいは混合しない場合に比べて高い触媒性能を有していることが理解される。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の酸素吸放出材によれば、S成分を含む排ガスを放出する自動車などからの排ガスであっても酸素吸放出能およびS被毒耐久性を有する酸素吸放出材を得ることが可能である。
また、本発明の排ガス浄化用触媒によれば、酸素吸放出材が酸素吸放出能およびS被毒耐久性を有しているため、安定した触媒性能を有する排ガス浄化が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 本発明の排ガス浄化用触媒
2 前段部のA/F変動の吸収部
3 後段部の貴金属触媒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
LnSO(Lnは希土類元素を示す。)とセリア複合酸化物とを混合してなる酸素吸放出材。
【請求項2】
前記セリア複合酸化物の含有量がLnSOとセリア複合酸化物との合計量に対して20質量%より多い請求項1に記載の酸素吸放出材。
【請求項3】
前記セリア複合酸化物の含有量がLnSOとセリア複合酸化物との合計量に対して25〜75質量%である請求項1又は2に記載の酸素吸放出材。
【請求項4】
前記セリア複合酸化物の含有量がLnSOとセリア複合酸化物との合計量に対して40〜60質量%である請求項1〜3のいずれか1項に記載の酸素吸放出材。
【請求項5】
前記LnがLaである請求項1〜4のいずれか1項に記載の酸素吸放出材。
【請求項6】
さらに、Pt、Pd、Rh、Feからなる群から選択される1種以上の元素を担持してなる請求項1〜5のいずれか1項に記載の酸素吸放出材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の酸素吸放出材を含む排ガス浄化用触媒。
【請求項8】
前記の酸素吸放出材を排ガス浄化用触媒の排ガス流入側に設けた請求項7に記載の排ガス浄化用触媒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−92859(P2011−92859A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249340(P2009−249340)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】