説明

酸素濃度を高めた透析液

【課題】人工透析中に酸素不足に陥りやすい透析患者の酸素不足を回避できる透析液を提供する。
【解決手段】透析液は、透析原液に酸素が溶解されることで酸素濃度が増加された人工透析に用いられる。この酸素濃度の高い透析液が人工透析に用いられることで、人工透析中における透析患者の酸素不足状態を防止・回避できる。この結果、透析患者のQOLを高めることもでき、今後増えると予想される人工透析患者への利便を高めることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工透析に用いる透析液であって、酸素濃度を高めた透析液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、腎臓を患い、人工透析を受けなければならない患者が増えている。この人工透析の際には、透析液が用いられる。この透析液は、人体の血管から取り出した血液と半透膜を介して接触して、血液中の老廃物を取り除く。透析液は、血液との濃度差を有しており、この濃度差による拡散で、血液中の老廃物を取り除く。ここで人工透析は、血液透析(血液が半透膜を介して透析液と接触して腎臓患者を治療する)と腹膜透析(体液が腹膜を介して透析液と接触して腎臓患者を治療する)と、を含む概念である。本発明では、透析液の用途としては、血液透析が主であるが、腹膜透析に用いられることを排除するものではない。このため、本明細書では、人工透析は、血液透析や腹膜透析を特段の区別をしない概念として扱う。
【0003】
ここで、人工透析においては、血液透析、血液濾過、血液濾過透析、腹膜透析,自動腹膜透析、腹膜透析液連続循環療法が広く行なわれている。これらの血液浄化治療法に用いられる透析液及び補充液の調製は、必要な成分を含む高濃度原液を希釈、または固体原料をそのまま溶解することにより行なわれる。例えば血液透析に用いられる透析液はpH緩衝用の重炭酸塩とそれ以外の電解質塩溶液を別個の容器に収納し、透析施設のスタッフにより、混合・稀釈されて使用されている。
【0004】
透析液は、最初から一定の濃度と成分を有しており、そのまま人工透析装置に用いられるものもあるし、原液を希釈してから人工透析装置で用いられるものものある。どのような態様が用いられるかは人工透析装置や人工透析方法に依存する。いずれにしても、透析患者は、透析液によって血液中の老廃物を取り除くことで、腎臓疾患に対応している。
【0005】
このように、腎臓疾患患者にとっては、人工透析は必須の処置であるが、人工透析を受けることでの様々な問題に直面することもありえる。その一つに、透析患者は、人工透析を受けている最中に酸素不足状態になりやすいというものがある。
【0006】
透析患者の多くは、貧血状態にあることが多い。腎臓の機能が低下あるいは消失しているために、造血ホルモンである「エリスロポエチン」の働きが低下もしくは消失しているからである。正常な腎臓では、この「エリスロポエチン」なる造血ホルモンが働くので、貧血状態が生じない。透析患者は、造血ホルモンの欠損によって貧血状態であるので、薬剤投与を受けることで、貧血状態を解消するように治療を施される。
【0007】
この貧血状態を示す指標の一つは、ヘマトクリックであり、ヘマトクリックは血液中の血球が占める割合を示している。健康体のヘマトクリックの数値は、45%〜50%程度であるのに対して(男女差はある)、透析患者のヘマトクリックの数値は、33%〜36%程度を目標に上述の薬剤投与による治療が施されている。ヘマトクリックの数値が40%以上となると血液が濃くなりすぎるため血管が詰まりやすくなり、透析患者には不適当だからである。このように、透析患者は常に血液の絶対量が不足している状態にある。
【0008】
貧血状態にあることで、酸素運搬を行う血液の能力の絶対値が低下して、透析患者は酸素不足状態となりやすい背景を有している。
【0009】
加えて、通常でも酸素不足状態になりやすい透析患者は、人工透析を受けている最中に更に酸素不足状態に陥りやすい。人工透析装置は、人工腎臓(以下、「ダイアライザー」という)を有しているが、透析患者との生体適合性が悪い場合には、血液中の酸素不足が高まることが生じる。これは、例えばダイアライザーの親水化剤のポリビニルピロリドンが原因の一つと考えられている。
【0010】
以上のように、透析患者はそもそも低いヘマトクリック値と人工透析における生体適合性の悪いダイアライザーによって、酸素不足を生じさせることが非常に多い問題を有している。
【0011】
酸素不足に陥った透析患者は、血圧低下、嘔吐、痙攣などのショック状態になることが知られている。このような状態になった場合には、必要な薬剤等の投与によって処置は可能であるが、当然ながら、透析患者のQOLが低くなる問題もある。
【0012】
このように、増加傾向にある透析患者は、人工透析の最中に酸素不足に陥る危険性を有している。特に、糖尿病性腎症、透析困難症、高齢透析患者、SAS、下肢に壊疽が見られる患者などは、酸素不足に陥りやすい問題にさらされている。
【0013】
このような状況において、人工透析に用いる装置や透析液については、いくつかの技術提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2005−329061号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら特許文献1は、透析液に含まれる酸素濃度を減少させる技術を開示している。これは、人工透析における酸化ストレスを防止するためである。酸素を溶存した透析液が血液に触れることによる血中アルブミン等の酸化を抑制することができるので、溶存酸素による障害のない高品質の透析液又は補充液が得られるとの開示がある。しかしながら、この技術は実際の透析治療の現場で普及しておらず、これらの効能は、臨床によって十分に検証されたものではないと考えられる。加えて、従来の技術においては、透析液や人工透析についての技術提案は、人工透析のコスト低下、時間短縮、老廃物の混入防止などを主としており、透析液そのものについては、酸素濃度を低下させることを目的としていることが多い。酸化ストレスが、人工透析患者にとって負荷を与えると考えられているからである。
【0016】
このような従来技術における透析液は、人工透析の最中に透析患者の酸素不足を回避することができない問題がある。また、酸素不足の直接的な解決にならないブドウ糖や薬剤を透析液に添加することは、人工透析におけるコストを増加させることにもなる。
【0017】
本発明は、むしろ、人工透析中の透析患者の酸素不足の問題に着目し、これを解決することが、より重要な課題であるとの点に立脚している。
【0018】
本発明は、上記課題に鑑み、人工透析中に酸素不足に陥りやすい透析患者の酸素不足を回避できる透析液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題に鑑み、本発明の透析液は、透析原液に酸素が溶解されることで酸素濃度が増加された人工透析に用いられる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の透析液は、高い酸素濃度を有しており、この透析液が人工透析において用いられることで、血液に酸素を付与することが可能となる。この結果、人工透析時における透析患者の酸素不足状態を回避することができる。すなわち、人工透析による、透析患者のリスクやQOLの低下を防止できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における透析液の製造方法を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態1における人工透析の全体を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1における人工透析システムを示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1における人工透析の模式図である。
【図5】本発明の実施の形態1における人工透析の模式図である。
【図6】本発明の実施の形態2における製造装置のブロック図である。
【図7】本発明の実施の形態3における製造実験の工程図である。
【図8】図7の製造装置によって実際に製造した透析液の酸素分圧を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の発明に係る透析液の酸素濃度の高い透析液は、透析原液に酸素が溶解されることで酸素濃度が増加された人工透析に用いられる。
【0023】
この構成により、人工透析中における透析患者の酸素不足が防止できる。
【0024】
本発明の第2の発明に係る透析液の酸素濃度の高い透析液では、第1の発明に加えて、人工透析に用いられる際の透析液の酸素分圧が、200mmHg以上500mmHg以下となる。
【0025】
この構成により、人工透析における酸素不足を明確に防止できる。
【0026】
本発明の第3の発明に係る透析液の酸素濃度の高い透析液では、第1又は第2の発明に加えて、前記酸素は、酸素溶解器によって、前記透析原液に溶解される。
【0027】
この構成により、容易に透析液の酸素濃度を増加できる。
【0028】
本発明の第4の発明に係る透析液の酸素濃度の高い透析液では、第3の発明に加えて、前記酸素溶解器は、酸素マイクロバブルを発生させる。
【0029】
この構成により、酸素の溶解が容易に行われる。
【0030】
本発明の第5の発明に係る透析液の酸素濃度の高い透析液では、第4の発明に加えて、前記酸素マイクロバブルは、細孔処理、加圧溶解処理、超音波処理、気液混合・せん断処理および超高速旋回処理の、少なくとも一つの処理によって発生させられる。
【0031】
この構成により、酸素マイクロバブルが効率的に発生できる。
【0032】
本発明の第6の発明に係る透析液の酸素濃度の高い透析液では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、前記透析原液は、透析成分を有する透析液および透析成分を有する透析液を希釈する希釈液の少なくとも一方である。
【0033】
この構成により、様々な態様に最適に応じつつ、酸素濃度の高い透析液を、人工透析に用いることができる。
【0034】
本発明の第7の発明に係る透析液の酸素濃度の高い透析液では、第6の発明に加えて、前記希釈液は、原水、純水およびRO膜処理水の少なくとも一つである。
【0035】
この構成により、容易に酸素濃度の高い希釈液が得られる。
【0036】
本発明の第8の発明に係る透析液の酸素濃度の高い透析液では、第6の発明に加えて、前記透析成分を有する透析液は、人工透析にそのまま用いられる成分濃度を有している通常濃度透析液および希釈されてから人工透析に用いられる成分濃度を有する高濃度透析液のいずれかである。
【0037】
この構成により、様々な態様に合わせて、酸素濃度の高い透析液を得ることができる。
【0038】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0039】
(実施の形態1)
【0040】
実施の形態1について説明する。
【0041】
(全体概要)
実施の形態1の透析液は、透析原液に酸素が溶解されており、酸素濃度が高められている。酸素濃度が高められていることで、透析液が人工透析に用いられる際には、透析患者が酸素不足に陥ることを防止できる。
【0042】
この酸素濃度の高い透析液は、種々の製造方法で製造されれば良いが、一例として図1に示される製造方法によって製造される。図1は、本発明の実施の形態1における透析液の製造方法を示すブロック図である。図1は、製造方法を示すブロック図として、酸素濃度の高い透析液を製造する製造装置1を示している。
【0043】
透析液の製造装置1(以下、「製造装置1」と略す)は、透析原液タンク7、酸素供給口3と、原液供給口4と、溶解器5とを備える。酸素発生装置2は、製造装置1の内部に備わっていても良いし、別の要素であっても良い。酸素供給口3は、酸素発生装置2で発生された酸素を、溶解器5に供給する。原液供給口4は、透析液の原液となる透析原液を溶解器5に供給する。透析原液は、透析原液タンク7に貯蔵されており、透析原液タンク7から原液供給口4を通じて、溶解器5に透析原液が供給される。溶解器5は、透析原液に対して酸素を溶解させて、原液の酸素濃度を高める。酸素濃度の高まった原液は、酸素濃度の高い透析液として、吐出口6より吐出される。この吐出口6から吐出される酸素濃度の高い透析液が、人工透析装置で使用される。
【0044】
溶解器5は、種々の方式によって、発生された酸素を原液中に溶解できる。この溶解によって、吐出される透析液は、透析原液の酸素濃度よりも高くなる。
【0045】
人工透析、特に血液透析(血液が半透膜を介して透析液と接触して腎臓患者を治療する)では、透析液との接触により血液中の老廃物が取り除かれる。この場合に、透析液の濃度によって、血液の濃度が調整されてしまう。この際に、透析液の酸素濃度が低いと、血液の酸素濃度も低いまま(あるいは低くなる)となり、透析患者は酸素不足に陥る問題もある。
【0046】
これに対して、実施の形態1における透析液は、高い酸素濃度を有している。この高い酸素濃度によって、透析液は、血液透析の際に、血液に対して高い酸素濃度を与えることができる。血液透析に用いられる半透膜を通じた拡散によって、透析液が含む酸素が血液に移動するからである。この結果、通常でも酸素不足に陥りがちな透析患者が、人工透析の際に酸素不足状態に陥ることが防止できる。
【0047】
従来技術においては、透析液が高い酸素を含むことで、透析液の酸化や血液の酸化などの不具合を引き起こすとの考え方に基づき、透析液から酸素を除去することを主眼としていた。このような従来技術では、通常でも酸素不足に陥りがちな透析患者は、人工透析の際には更に酸素不足に陥ってしまう。本発明の透析液は、従来の発想とは全く異なり、人工透析の際に透析液と血液との濃度差が縮小される仕組みに着目し、酸素濃度の高い透析液を製造する。この結果、製造装置1で製造される透析液は、その酸素濃度が高く、人工透析(特に血液透析)における透析患者の酸素不足を回避できるようになる。
【0048】
次に、製造方法とこれに対応する製造装置1の詳細について説明する。
(透析原液)
透析原液タンク7は、透析原液を貯蔵している。この透析原液に酸素を溶解させることで、酸素濃度の高い透析液が得られる。
【0049】
ここで、透析原液タンク7は、いくつかのパターンに従った原液を貯蔵している。特に、透析原液タンク7は、透析成分を有する透析液(以下、「透析成分原液」という)もしくは透析成分を有する透析液を希釈する希釈液を貯蔵する。
【0050】
(パターン1)
透析原液タンク7は、透析成分原液であって、人工透析にそのまま用いられる成分濃度を有する通常濃度透析液を貯蔵する。人工透析に用いられる成分は、ナトリウムやカルシウムなどの浸透圧を生じさせつつ老廃物を除去できる機能を有する成分である。すなわち、パターン1の場合には、透析原液タンク7は、酸素濃度を無視すればそのまま人工透析に使用可能な透析成分原液を貯蔵している。
【0051】
原液供給口4は、この透析成分原液であって通常濃度透析液を溶解器5に供給する。溶解器5は、この通常濃度透析液に酸素を溶解させて、酸素濃度を高める。この結果、吐出口6は、酸素濃度の高い通常濃度透析液を吐出する。この酸素濃度の高い通常濃度透析液は、そのまま人工透析装置において使用される。当然ながら酸素濃度が高まっているので、人工透析中における透析患者の酸素不足を防止できる。
【0052】
このように、透析原液タンク7が、通常濃度透析液を貯蔵する場合には、溶解器5によって酸素が溶解されるだけで、所望の酸素濃度の高い透析液が得られる。更には、この酸素濃度の高い透析液は、そのまま使用されるので、人工透析において簡便に利用できる。
【0053】
(パターン2)
パターン2では、透析原液タンク7は、透析成分原液であって、希釈されてから用いられる成分濃度を有する高濃度透析液を貯蔵する。人工透析に用いられる成分は、ナトリウムやカルシウムなどの浸透圧を生じさせつつ老廃物を除去できる機能を有する成分である。すなわち、パターン2の場合には、透析原液タンク7は、希釈されることで人工透析に適した濃度となる透析原液を貯蔵している。
【0054】
原液供給口4は、この透析成分原液であって高濃度透析液を溶解器5に供給する。溶解器5は、この高濃度透析液に酸素を溶解させて、酸素濃度を高める。この結果、吐出口6は、酸素濃度の高い高濃度透析液を吐出する。この酸素濃度の高い高濃度透析液は、希釈液で希釈されてから、人工透析装置で用いられる。希釈液による希釈は、人工透析装置に用いられる前に行われても良いし、人工透析装置において行われても良い。
【0055】
図2は、本発明の実施の形態1における人工透析の全体を示すブロック図である。酸素濃度の高められた高濃度透析液が吐出口6から吐出される。製造装置1と人工透析装置10との間には、希釈手段11が介在しており、希釈手段11は、希釈液を用いて吐出される酸素濃度の高い高濃度透析液を希釈する。希釈されてもまだ酸素濃度の高い透析液であり、この酸素濃度の高い透析液が人工透析装置10で用いられる。
【0056】
もちろん、希釈手段11は、希釈液を用いて希釈するが、この希釈の目的は、成分濃度の希釈であって、酸素濃度を希釈することではない。しかしながら、酸素濃度も希釈されてしまうので、溶解器5は、希釈されることを想定した酸素濃度に調整しておくことが好適である。
【0057】
このように、希釈手段11を経て人工透析装置10で使用される透析液は、当然ながら酸素濃度が高くなっているので、人工透析中における透析患者の酸素不足を防止できる。
【0058】
このように、透析原液タンク7が、高濃度透析液を貯蔵する場合には、溶解器5で酸素が溶解された後、希釈手段11で希釈されて所望の酸素濃度の高い透析液が得られる。
【0059】
パターン1もしくはパターン2のいずれが選択されるかは、透析原液タンク7にどのような透析成分原液が供給されるかによって定まればよい。特に、人工透析装置10で、希釈を前提としているのか否かによって定められれば良い。
【0060】
(パターン3)
パターン3では、透析原液タンク7は、別途供給される透析液を希釈する希釈液を貯蔵する。例えば、透析成分を有する透析成分原液は専門のメーカーで製造されることが決まっており、製造装置1を用いて酸素濃度の高い透析液を製造する業者は、この透析成分に関連の無い希釈液なら製造できる場合などである。透析液は、医療現場で使用されるので、透析成分を有する透析成分原液は、特定のメーカーにその製造が許可されている場合もある。一方で、希釈液は、透析成分に影響を与えない液体であれば適宜採用できるので、様々な業者が製造可能である。
【0061】
パターン3では、この希釈液の酸素濃度を高めることで、結果として希釈液で希釈されて得られる透析液の酸素濃度も高くなる。
【0062】
図3は、本発明の実施の形態1における人工透析システムを示すブロック図である。図3においては、希釈手段11が、別途提供される高濃度透析液を、製造装置1から吐出される希釈液で希釈する。透析原液タンク7は、透析成分を有する透析成分原液ではなく、高濃度透析液タンク13からの高濃度透析液を希釈する希釈液を貯蔵している。
【0063】
製造装置1は、透析原液タンク7に希釈液を貯蔵しており、この希釈液は、原液供給口4から溶解器5に供給される。溶解器5は、この希釈液に酸素を溶解させて、この希釈液の酸素濃度を高める。酸素濃度の高まった希釈液は、吐出口6から希釈手段11に吐出される。希釈手段11は、この酸素濃度の高い希釈液で、高濃度透析液を希釈する。希釈されることで、透析成分が適度な濃度に希釈される。更には、希釈液の酸素濃度が高いので、希釈後の透析液も酸素濃度が高い。
【0064】
この酸素濃度の高い希釈後の透析液が、人工透析装置10で使用される。結果として、人工透析中における透析患者の酸素不足を防止できる。
【0065】
透析原液タンク7には、希釈液が貯蔵されているが、希釈液として、原水、純水およびRO膜処理水のいずれかが貯蔵される。これらのいずれかの希釈液の酸素濃度が高められて最終的に使用される透析液の酸素濃度を高める。ここで、製造装置1から吐出される酸素濃度の高い希釈液は、高濃度透析液を希釈することになる。このため、希釈の際に酸素濃度が減少することを想定して、溶解器5は、希釈液に酸素を溶解させることが好ましい。
【0066】
パターン1、2のように透析成分原液ではなく、透析液を希釈する希釈液が貯蔵されるのは、人工透析装置10や人工透析での都合によって選択されればよい。
【0067】
以上のように、透析原液タンク7は、透析成分を有する透析成分原液もしくは透析液を希釈する希釈液のいずれかを貯蔵している。実施の形態1における酸素濃度の高い透析液は、透析原液タンク7が貯蔵する種類に応じて、透析成分を有する透析液であったり希釈液であったりする。
【0068】
酸素濃度の高い透析液を製造する製造装置1の各部の詳細について説明する。
(酸素供給口)
【0069】
酸素供給口3は、発生された酸素を溶解器5に供給する。酸素は、製造装置1に含まれない要素あるいは製造装置1に含まれる要素である酸素発生装置2によって発生される。酸素発生装置2には、一般的に知られていたり販売されていたりする装置が用いられれば良い。例えば、酸素発生装置2は、病院で使用されている酸素発生器を利用する。
【0070】
酸素発生装置2の酸素発生の方式として、(1)PSA(Pressure Swing Adsorption)方式、(2)酸素富化膜方式などが知られている。
【0071】
PSA方式は、吸着式とも呼ばれ、シリンダー内に窒素を吸着する機能を有する特殊な素材を入れて、空気中の酸素と窒素を分離する。窒素を吸着する素材として、ゼオライトが用いられることが多い。空気中の窒素を分離して酸素濃度の高い気体を得ることができる。一例として、酸素濃度を97%程度に高めた気体を得ることができる。酸素発生装置2は、この酸素濃度の高い気体を酸素として発生させ、酸素供給口3を通じて溶解器5に送り込む。酸素発生装置2が、このPSA方式を採用している装置である場合には、ゼオライトのような窒素を吸着する素材を有して、大気中の酸素と窒素を分離して、酸素濃度を高めた空気を発生する。
【0072】
酸素富化膜方式は、酸素と窒素を分離する膜を備え、この膜を空気が透過する際には、窒素よりも酸素が多く透過する。原理的には、膜に空気を送り込むコンプレッサーによる空気圧と、溜まった窒素の排気で、この透過の機能を実現できる。原理上は、28%〜40%程度の酸素濃度を有する空気を発生できる。もちろん、この酸素富化膜を多段式にできれば、酸素濃度を更に高めることができる。このように、酸素発生装置1が酸素富化膜方式を採用する場合には、膜とこの膜に空気を送り込む機能によって、酸素濃度を高めた空気を発生させる。
【0073】
すなわち、酸素発生装置2で発生される酸素や酸素供給口3から供給される酸素というのは、酸素のみを含む気体だけでなく、高い酸素濃度を有する気体を含む。後者の気体は、酸素だけでなく、窒素やその他の気体も含みうる。
【0074】
酸素発生装置2は、発生させた酸素(上述の通り、本明細書で発生させた酸素とは、酸素のみもしくは酸素濃度を高めた気体(空気)を含む)を、酸素供給口3に送出する。酸素供給口3は、この送出された酸素を、溶解器5に供給する。このため、酸素供給口3は、酸素発生装置2とパイプや管で接続される。
【0075】
また、酸素供給口3は、溶解器5に連続的に酸素を供給しても良いし、断続的(もしくは不連続に)に酸素を供給しても良い。例えば、製造装置1で製造される酸素濃度を高めた透析液を、人工透析の作業中にリアルタイムに供給する必要がある場合には、酸素供給口3は、連続的に溶解器5に酸素を供給する。あるいは、製造装置1は、ストック用に酸素濃度を高めた透析液を製造する場合には、酸素供給口3は、断続的に溶解器5に酸素を供給する。あるいは、人工透析の作業中であっても、必要に応じて、酸素供給口3は、断続的に溶解器5に酸素を供給する。
【0076】
このため、酸素供給口3は、溶解器5に酸素を供給する開口部と、この開口部の開閉を制御する開閉部と、酸素供給に必要となる圧力を加える加圧部と、を備えていることが適当である。加圧部は、開閉部と連動して動作し、酸素発生装置2から送出される酸素を、溶解器5に送り込む。
【0077】
なお、衛生面を確保するために、酸素供給口3は、抗菌処理がなされていたり滅菌装置を備えていたりすることも好適である。例えば、紫外線による滅菌装置が用いられる。
【0078】
酸素発生装置2は、透析液の製造装置1と一体の要素であっても良いし、別体の要素であってもよい。また製造装置1は、酸素発生装置2を含んだ態様で提供あるいは流通されても良いし、酸素発生装置2を含まない態様で提供あるいは流通されても良い。
【0079】
例えば、既に酸素発生装置2が設置されている場合において、透析液の製造装置1は、この酸素発生装置2からの酸素を受け取れる状態に接続されて用いられる。この場合には、酸素発生装置2と酸素供給口3とが、パイプや管などで接続されるだけでよい。酸素発生装置2が既に設置されている場所とは、病院や人工透析センターなどがある。
【0080】
逆に、酸素発生装置2が設置されていない場合もある。人工透析センターであるが、人工透析を専門としているので、酸素吸入などの治療の可能性がなく、酸素発生装置2を設置する必要がない施設である。このような場合には、酸素発生装置2と製造装置1とを合わせて導入し、酸素濃度の高い透析液を用いた人工透析を可能とする。もちろん、透析液の製造装置1は、移動・移設可能であることも好適である。
【0081】
(原液供給口)
原液供給口4は、透析に用いられる透析原液を溶解器5に供給する。原液供給口4は、透析原液タンク7に貯蔵されている透析原液を溶解器5に供給する。このとき、透析原液タンク7は、種々のパターンに従った透析成分原液や希釈液を貯蔵していることは、上述の通りである。
【0082】
原液供給口4は、酸素供給口3と同様に、溶解器5に透析原液を供給する開口部と、この開口部の開閉を制御する開閉部と、供給に必要となる圧力を加える加圧部と、を備えていることが適当である。加圧部は、開閉部と連動して動作し、透析原液を、溶解器5に送り込む。なお、酸素供給口3と異なり気体ではなく液体を供給するので、それに合わせた構造や形状を有していることも好適である。
【0083】
なお、衛生面を確保するために、原液供給口4は、抗菌処理がなされていたり滅菌装置を備えていたりすることも好適である。例えば、紫外線による滅菌装置が用いられる。
【0084】
(溶解器)
溶解器5は、原液供給口4から供給される透析原液に対して、酸素供給口3から供給される酸素を溶解させる。溶解器5は、最終的に使用される透析液の酸素濃度を高めることができ、溶解器5から吐出される透析液は、酸素濃度が高くなっている。
【0085】
このように、溶解器5は、透析液の酸素濃度を増加させる。酸素濃度の増加としては、透析患者が人工透析の最中に酸素不足に陥らない程度であることが好ましい。このため、溶解器5による酸素濃度の増加目標値は、透析患者の特性や体質により様々である。ただし、一例として、最終的に得られる透析液の酸素分圧が200mmHg以上500mmHg以下となるように、溶解器5は酸素を溶解する。
【0086】
ここで、上述の通り、パターン1〜パターン3に従って溶解器5から吐出される透析液の用いられ方は異なる。パターン1では、溶解器5より吐出されるそのまま人工透析装置10において用いられる。パターン2では、溶解器5より吐出された透析液は、希釈液で希釈されてから人工透析装置で用いられる。パターン3では、溶解器5より吐出された希釈液は、高濃度透析液を希釈して人工透析装置10で用いられる。
【0087】
このため、上述の酸素濃度の目標の一例である酸素分圧が200mmHg〜500mmHgの範囲は、パターン1〜3のいずれであっても、人工透析装置10で用いられる際の透析液の酸素濃度である。このため、パターン1の場合には、溶解器5から吐出される透析液がそのまま人工透析装置10で用いられるので、溶解器5から吐出される際の酸素分圧が、200mmHg〜500mmHgであれば良い。一方、パターン2の場合には、溶解器5から吐出される透析液が希釈されてから人工透析装置10で用いられるので、溶解器5から吐出される際には、酸素分圧が200mmHg〜500mmHgよりも高い濃度を有していることが好ましい。あるいは、パターン3の場合には、溶解器5から吐出される希釈液が高濃度透析液を希釈するので、当然ながら人工透析装置10に到達する際には、その溶解器5から吐出された際よりも希釈されている。このため、パターン3の場合も、溶解器5からと出される際には、透析液は、酸素分圧が200mmHg〜500mmHgよりも高いことが好ましい。
【0088】
いずれにしても、溶解器5は、最終的に人工透析装置10で使用される透析液の酸素濃度を、所定の目標値に増加させる。なお、200mmH〜500mmHgなる酸素分圧の数値は、一例であって、これに限られるものではない。
【0089】
(溶解器による酸素の溶解)
溶解器5は、透析原液に酸素を溶解させて、透析原液の酸素濃度を高める。ここで、溶解器5は、様々な手段によって酸素を溶解させる。一例として、溶解器5に供給された透析原液の内部で、酸素マイクロバブルを発生させて酸素を溶解させる。
【0090】
溶解器5は、種々の方式で酸素マイクロバブルを発生させる。酸素マイクロバブルとは、非常に細密な酸素の気泡であって、一例として50μm以下の気泡になると、通常の泡と異なり液体中に長く存在する。ここでは、溶解器5内部に供給された透析原液内部で酸素マイクロバブルが長時間存在することになり、酸素マイクロバブルを通じて、透析原液中に酸素が溶け出して溶解が進む。溶解が進むことで、透析原液の酸素濃度が増加して、酸素濃度の高い透析液が、吐出される。
【0091】
酸素マイクロバブルを発生させるには、種々の方式が用いられる。例えば、加圧減圧処理、細孔処理、超音波処理、気液混合・せん断処理および超高速旋回処理の少なくとも一つが用いられれば良い。
【0092】
気液せん断処理とは、渦流(毎秒400〜600回転)を生成して、この中に気体である酸素を巻き込み、ファンなどによってこの気体である酸素を切断・粉砕させて酸素マイクロバブルを生成させる。この酸素マイクロバブルが、透析原液に対して溶解して、酸素濃度が増加する。
【0093】
また、細孔処理とは、セラミックス、金属板、膜、フィルターなどの多孔質物質内に配置された細孔に気体を通過させることによりミリ単位のバブルを発生させる方式である。加圧減圧処理とは、加圧された液体中に気体を過飽和状態で溶解させた後、減圧解放してマイクロバブルを発生させる方式である。これは、ヘンリーの法則で、圧力が高いほどあるいは温度が低いほど気体が溶解する。
【0094】
超音波処理とは、液体中で超音波を発生させることで圧力変動を伴う流体の乱れを発生させる。この流体運動の低圧部において液体中に溶存している気体がマイクロバブルとなる。
【0095】
以上のように、溶解器5は、酸素マイクロバブルを発生させて、透析原液の酸素濃度を高める。酸素マイクロバブルは、酸素の溶解の一例であり、他の方式によって透析原液に酸素を溶解させてもよい。溶解器5は、透析原液の酸素濃度を高めることができればよいからである。
【0096】
例えば、溶解器5は、内部に供給された透析原液と酸素に対して、高い圧力を加えることで、酸素を透析原液に溶解させても良い。
【0097】
以上のように、製造装置1および製造装置1による製造方法を用いて製造された酸素濃度の高い透析液は、人工透析装置10における人工透析に用いられる。このような透析液は、人工透析の治療現場と異なる場所で製造されてから、必要となる各治療現場に提供されても良い。あるいは、人工透析の現場で透析液が製造されてそのまま人工透析装置10で使用されても良い。実施の形態1における透析液は、人工透析の治療に用いられると共に酸素濃度が高くなっている透析液である。
【0098】
実際の人工透析の現場では、次のようなパターンで酸素濃度の高い透析液が用いられる。
【0099】
(態様1)透析センターや透析を行っている病院の人工透析装置10に、製造装置1が組み込まれて、製造される酸素濃度の高い透析液がそのまま使用される。
【0100】
(態様2)酸素濃度の高い透析液(透析成分を含んでいる透析液、透析成分を含んでいる透析液を希釈する希釈液の2つがある)を予め製造して、透析センターや病院にこの酸素濃度の高い透析液を提供する。
【0101】
図4は、本発明の実施の形態1における人工透析の模式図である。上述の(態様1)のように、人工透析センターや病院であって、人口透析装置10および酸素発生装置2が既設されている場合が、図4には示されている。人工透析センターなどであれば、人工透析装置10は設置されており、既に使用している透析液を供給するシステムも有している。例えば、図4に示されるように、人工透析に必要な成分を有する透析液であって、高濃度透析液が、高濃度透析液タンク13が設置されている。人工透析装置10は、この高濃度透析液タンク13から供給される高濃度透析液を希釈して(希釈手段11)で希釈して用いることを前提としている。
【0102】
ここで、通常は、生理食塩水や純水などが、そのまま希釈液として用いられていた。
【0103】
これに対して、図4の態様では、実施の形態1で説明した酸素濃度の高い透析液を、希釈液として用いることで、人工透析が行われる。ここで、透析センターや病院などでは、呼吸困難となっている患者のために、酸素発生装置2を有していることが多い。このため、透析液の製造装置1を、この酸素発生装置2に接続すると共に、希釈手段11と接続する。具体的には、酸素発生装置2と酸素供給口3とをパイプ等で接続し、吐出口6と希釈手段11とをパイプなどで接続する。この接続の結果、図4の人工透析の全体態様が実現される。
【0104】
この構造により、酸素発生装置2で発生された酸素によって、製造装置1は、酸素濃度の高い希釈液(透析液)を吐出し、吐出された希釈液で高濃度透析液タンク13から供給される高濃度透析液が希釈される。この希釈された透析液は、酸素濃度の高い透析液であり、この酸素濃度の高い透析液が人工透析装置10で用いられる。
【0105】
すなわち、図4に示される人工透析の全体態様によって、人口透析装置10は、酸素濃度の高い希釈液(吐出口6から吐出される透析液)によって希釈された酸素濃度の高い透析液を、人工透析に用いることができる。
【0106】
この結果、人工透析装置10による人工透析において、酸素濃度の高い透析液によって老廃物が除去される。この除去の際には、半透膜を介して、透析液に含まれる酸素が血液中に移動する。結果として、血液中の酸素不足の発生が回避され、透析患者の酸素不足や酸素不足によって生じる不測の事態が防止できる。
【0107】
図4では、高濃度透析液を希釈液(この希釈液を製造装置1が製造する)で希釈して人工透析を行う態様を説明したが、製造装置1が、人工透析装置10に用いられる透析液(酸素濃度が高い)を直接製造して人工透析装置10に供給してもよい。あるいは、製造装置1が高濃度の透析液(酸素濃度が高い)を製造して、希釈手段11で製造装置1以外から供給される希釈液で希釈されてから、人工透析装置10で用いられても良い。
【0108】
一方、(態様2)による場合には、酸素濃度の高い透析液(人工透析にそのまま用いられる透析液である場合、希釈されてから人工透析に用いられる透析液である場合、別途の透析液を希釈する希釈液である場合、とがある)を工場などで製造し、製造された酸素濃度の高い透析液が、透析センターや病院に運搬されて使用されても良い。図5は、本発明の実施の形態1における人工透析の模式図である。
【0109】
図5では、酸素濃度の高い透析液を製造する製造センター100と人工透析を行う透析センター200が、別の場所や建物である場合を前提としている。製造センター100では、製造装置1が酸素濃度の高い透析液を製造し、収容容器18に収容する。
【0110】
この収容容器18は、透析センター200に運搬される。運搬された収容容器18が、人工透析装置10に接続されて、収容されている酸素濃度の高い透析液が使用される。このとき、上述のように、酸素濃度の高い透析液は、透析液そのもの、希釈されて使用される高濃度透析液、他の透析液を希釈する希釈液の、いずれかである。
【0111】
このように、製造センター100で製造された透析液が、運搬されて使用されることで、酸素濃度の高い透析液の製造が集約されて、コストが削減できるメリットがある。
【0112】
透析液の製造装置1は、これらのように様々な実施態様に適合して利用される。
【0113】
以上のように、実施の形態1における酸素濃度の高い透析液(通常濃度透析液、高濃度透析液、透析液の希釈液を様々に含む)は、人工透析中における透析患者の酸素不足状態を防止でき、透析患者にとっての高いメリットを提供できる。酸素不足が防止できれば、透析患者のQOLを低下させることもない。
(実施の形態2)
【0114】
次に実施の形態2について説明する。
図6は、本発明の実施の形態2における製造装置のブロック図である。図6に示される製造装置1は、酸素濃度を増加させた原液であって吐出口6から吐出される透析液に新たな成分を添加する添加部20を更に備えている。すなわち、実施の形態1で説明された酸素濃度の高い透析液に他の成分が添加されることになる。
【0115】
添加部20には、容器21から新たな成分が供給され、添加部20は、この新たな成分を、吐出口6から吐出される透析液に添加する。例えば、人工透析において、特殊な処理を行うために新たな成分を有する透析液を必要とする場合には、このような添加部20が新たに設けられる。
【0116】
例えば、製造装置1から吐出される透析液と容器21から供給される成分とが合わさることで人工透析が可能となる場合には、添加部20が設けられてそれぞれの成分が合わされる。
【0117】
あるいは、特殊な人工透析を必要とする場合であって糖類や薬剤をさらに添加する必要には、添加部20は、これらの糖類や薬剤を添加して透析液を製造する。これらのように、添加部20が設けられることで、様々な人工透析の態様に対応することができる。
【0118】
酸素濃度の高い透析液に更なる成分が添加されることで、人工透析における透析患者への医薬的なメリットが高まる。酸素濃度の高い透析液であることで、様々な成分や薬剤を新たに添加しやすいので、このような応用が可能となる。
【0119】
(酸素濃度の高い透析液の製造実験)
【0120】
発明者は、酸素濃度の高い透析液の製造実験を行った。図7は、本発明の実施の形態3における製造実験の工程図である。図7に示される製造装置110は、通常の透析液を貯蔵するタンク111、タンク111の透析液を送出するポンプ112、ポンプ112から溶解器114に送出される際の絞り弁113、溶解器114、酸素濃度の高い透析液を貯留する収容器115および酸素発生器116を備えている。
【0121】
酸素発生器116は、酸素マイクロバブルを溶解器114で発生させ、溶解器114はこの酸素マイクロバブルによって透析液に酸素を溶解させる。酸素発生器116は、間歇的に酸素を供給する。発明者は、このような製造装置によって、実際に酸素濃度の高い透析液を製造した。
【0122】
図8は、図7の製造装置によって実際に製造した透析液の酸素分圧を示す表である。図8から明らかな通り、DO値、PO値のいずれも、図7の製造装置110での処理後に高まっている。すなわち、本発明の実施の形態1〜2で説明した製造装置および製造方法に対応する実験によって、酸素濃度の高い透析液が製造されることが確認された。
【0123】
以上、実施の形態1〜2で説明された酸素濃度の高い透析液は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0124】
1 製造装置
2 酸素発生装置
3 酸素供給口
4 原液供給口
5 溶解器
6 吐出口
7 原液タンク
10 人工透析装置
11 希釈手段
12 希釈液タンク
13 高濃度透析液タンク
18 収容容器
20 添加部
21 容器
100 製造センター
200 透析センター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析原液に酸素が溶解されることで酸素濃度が増加された人工透析に用いられる酸素濃度の高い透析液。
【請求項2】
人工透析に用いられる際の透析液の酸素分圧が、200mmHg以上500mmHg以下となる、請求項1記載の酸素濃度の高い透析液。
【請求項3】
前記酸素は、酸素溶解器によって、前記透析原液に溶解される、請求項1又は2記載の酸素濃度の高い透析液。
【請求項4】
前記酸素溶解器は、酸素マイクロバブルを発生させる、請求項3記載の酸素濃度の高い透析液。
【請求項5】
前記酸素マイクロバブルは、細孔処理、加圧溶解処理、超音波処理、気液混合・せん断処理および超高速旋回処理の、少なくとも一つの処理によって発生させられる、請求項4記載の酸素濃度の高い透析液。
【請求項6】
前記透析原液は、透析成分を有する透析液および透析成分を有する透析液を希釈する希釈液の少なくとも一方である、請求項1から5のいずれか記載の酸素濃度の高い透析液。
【請求項7】
前記希釈液は、原水、純水およびRO膜処理水の少なくとも一つである、請求項6記載の酸素濃度の高い透析液。
【請求項8】
前記透析成分を有する透析液は、人工透析にそのまま用いられる成分濃度を有している通常濃度透析液および希釈されてから人工透析に用いられる成分濃度を有する高濃度透析液のいずれかである、請求項6記載の酸素濃度の高い透析液。
【請求項9】
酸素が溶解された前記透析原液に、他の成分が添加される、請求項1から8のいずれか記載の酸素濃度の高い透析液。
【請求項10】
前記透析原液が供給される供給手段と、前記酸素が供給される酸素供給手段と、前記透析原液に前記酸素供給手段からの酸素を溶解させる溶解手段と、によって製造される酸素濃度の高い透析液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−228285(P2012−228285A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−96646(P2011−96646)
【出願日】平成23年4月23日(2011.4.23)
【出願人】(305053880)サンセラミックス株式会社 (4)
【Fターム(参考)】