説明

酸素濃縮装置

【課題】装置の過剰冷却を無くし、騒音低減・消費電力低減を実現した酸素濃縮装置を提供する。
【解決手段】酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着剤を充填した少なくとも1個の吸着床3と、該吸着床に圧縮空気を供給して窒素を吸着させることにより酸素濃縮気体を生成するための空気圧縮手段2、該空気圧縮手段の温度を検出する温度検出手段8、該空気圧縮手段を冷却する送風手段7を備えた酸素濃縮装置において、該温度検出手段により得られた温度に基づいて送風手段の駆動を制御する制御手段9を備え、該温度検出手段が上限温度値以上の値を検知した場合に、該送風手段の送風量を増加させる制御を、下限温度値以下の値を検知した場合に、該送風手段の送風量を減少させる制御を行う手段であることを特徴とする酸素濃縮装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着剤を用いた圧力変動吸着型の酸素濃縮装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、喘息、肺気腫症、慢性気管支炎等の呼吸器系器官の疾患に苦しむ患者が増加する傾向にあるが、その治療法として最も効果的なもののひとつに酸素吸入療法がある。かかる酸素吸入療法とは、酸素ガスあるいは酸素富化空気を患者に吸入させるものである。その供給源として、酸素濃縮装置、液体酸素、酸素ガスボンベ等が知られているが、使用時の便利さや保守管理の容易さから、在宅酸素療法においては酸素濃縮装置が主流で用いられている。
【0003】
酸素濃縮装置は、空気中に存在する約21%の酸素を濃縮して使用者に供給する装置であり、それには酸素を選択的に透過する膜を用いた膜式酸素濃縮装置と、窒素または酸素を優先的に吸着しうる吸着剤を用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置があるが、得られる酸素濃度の点から圧力変動吸着型酸素濃縮装置が主流になっている。
【0004】
かかる圧力変動吸着型酸素濃縮装置として、窒素又は酸素を選択的に吸着し得るゼオライトなどの吸着剤を1個或いは、複数の吸着筒に充填した酸素濃縮装置が知られている。通常、窒素を選択的に吸着し得る吸着剤を充填した1個或いは複数の吸着筒にコンプレッサで圧縮空気を供給して加圧状態で窒素を吸着させることにより酸素濃縮気体を得る吸着工程、吸着筒の内圧を減少させて窒素を脱着させ吸着剤の再生を行う脱着工程、更には脱着工程終了直前に既に生成した乾燥酸素濃縮気体を一部逆流させ再生効率の向上と昇圧を目的とする均圧工程を、順次一定サイクルで行うことにより酸素濃縮気体を得る装置である。
【0005】
【特許文献1】特開2004-018313号公報
【特許文献2】特開2003-246607号公報
【特許文献3】特開2001-278606号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる酸素濃縮装置は在宅用、医療用途として使用する為には、装置の小型化、長期寿命、装置安定化が必須であり、装置内における熱発生の大部分を占めるコンプレッサの冷却は必須要件となる。
かかる酸素濃縮気体を得る装置におけるコンプレッサを冷却する方法としては、特開2001-278606号公報に示されるように、ファンまたはブロアなどの冷却ファン(送風手段)によりコンプレッサボックスの上方から冷却空気を強制対流させ、下方の排気口から排気するのが一般的である。
【0007】
さらに特に酸素濃縮装置に使用されるコンプレッサボックスに収納された揺動型、往復型コンプレッサを均一かつ効率よく冷却する方法として、特開2003-246607号公報には、コンプレッサボックス上部に冷却ファンを備えると共に、冷却ファンによる空気の流れが、該ボックス下部に配置された吸気開口部より吸入され、コンプレッサ下面で回折したのち、ボックス上部に配置された排気開口部より排出されることを特徴とする酸素濃縮装置が記載されている。
【0008】
また、特開2004-18313号公報には、冬季等の低温環境下で所定の酸素濃度を簡易に確保することができる在宅医療用の酸素濃縮装置として、設置環境温度及び/または圧縮空気温度を検出する温度検出手段を備え、検出された該設置環境温度または圧縮空気温度のいずれかに基づいて圧縮空気が酸素濃度条件と対応する所定の目標温度となるように冷却送風手段の駆動を制御する駆動制御手段を備えた装置が記載されている。
【0009】
酸素濃縮装置の筐体内の冷却、特に発生熱源の大部分を占めるコンプレッサの冷却は、装置の長期耐久性を維持するためには必須要素であり、いずれの装置のおいても、品質保証期間の間は、運転保証条件下で必要な装置の冷却能力を有する冷却ファンを搭載している。大型の冷却ファンは消費電力が大きく、更に発生する騒音も大きくなる。
本発明は、かかる装置のコンプレッサの温度を測定し、状況に応じ送風手段を制御することにより過剰冷却を無くし、騒音低減・消費電力低減を実現した装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、かかる課題を解決する手段として以下の記する酸素濃縮装置を提供する。すなわち本発明は、酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着剤を充填した少なくとも1個の吸着床と、該吸着床に圧縮空気を供給して窒素を吸着させることにより酸素濃縮気体を生成するための空気圧縮手段、該空気圧縮手段の温度を検出する温度検出手段、該空気圧縮手段を冷却する送風手段を備えた酸素濃縮装置において、該温度検出手段により得られた温度に基づいて送風手段の駆動を制御する制御手段を備え、該温度検出手段が予め設定した上限温度値以上の値を検知した場合に、該送風手段の送風量を増加させる制御を、下限温度値以下の値を検知した場合に、該送風手段の送風量を減少させる制御を行う手段であることを特徴とする酸素濃縮装置を提供する。
【0011】
また本発明は、かかる送風手段がPWM制御で駆動する冷却ファン、または印加電圧を切替えて駆動する冷却ファンであることを特徴とする酸素濃縮装置を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の酸素濃縮装置は、慢性呼吸器疾患患者などに対して行われる酸素吸入療法に使用する医療用酸素濃縮装置に適用することができ、装置の使用環境状況に応じて、冷却手段である送風手段の運転を制御することにより、騒音の低減および消費電力の低減を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施態様例である圧力変動吸着型の酸素濃縮装置は、原料空気を圧縮し供給する空気圧縮手段、該空気圧縮手段を冷却するための送風手段、該空気圧縮手段の温度を検出する温度検出手段を備え、該温度検出手段に基づき該空気圧縮手段の状態を監視し、該送風手段の駆動を制御する駆動制御手段を備えたことを特徴とする。詳細には、該空気圧縮手段があらかじめ定めた切替温度に達すると該送風手段の駆動状態を制御することを特徴とする。
【0014】
かかる構成の圧力変動吸着型酸素濃縮装置は、吸入空気を空気圧縮手段によって圧縮し、この圧縮空気を吸着床に送ることによって窒素を吸着し濃縮酸素を送出する。このとき検出された空気圧縮手段の温度により送風手段が空気圧縮手段を過剰に冷却していないか判断し制御することから、騒音低減・消費電力低減を図ることができる。
【0015】
本発明の酸素濃縮装置の実施形態について図面を用いて説明する。
圧力変動吸着型酸素濃縮装置のシステム構成図を図1に示す。酸素濃縮装置1は、空気を吸入して圧縮するコンプレッサ2、その圧縮空気から選択的に窒素を吸着する吸着剤を充填した吸着筒3,3を介し生成された濃縮酸素を一時保管する製品タンク4、製品酸素の圧力を調整する圧力調整器5等で構成され、カニューラ6により利用者に濃縮酸素を供給する。
【0016】
この酸素ガスの取り出しは、原料空気を酸素ガス分子よりも窒素ガス分子を選択的に吸着する5A型、13X型やLi-X型、MD-X型などのゼオライトなどからなる吸着剤が充填された吸着筒に対して、切換弁によって対象とする吸着筒を順次切り換えながら、原料空気をコンプレッサにより加圧して供給し、吸着筒内で原料空気中に含まれる約77%の窒素ガスを選択的に吸着除去する。
【0017】
前記の吸着筒3としては、前記吸着剤を充填した円筒状容器で形成され、通常、1筒式、2筒式の他に3筒以上の多筒式が用いられるが、連続的かつ効率的に原料空気から酸素富化空気を製造するためには、2筒式や多筒式の吸着筒を使用することが好ましい。
【0018】
また、前記のコンプレッサ2としては、圧縮機能及び真空機能を有するコンプレッサとして2ヘッドのタイプの揺動型空気圧縮機が用いられるほか、スクリュー式、ロータリー式、スクロール式などの回転型空気圧縮機が用いられる場合もある。また、このコンプレッサ2を駆動するモータの電源は、交流であっても直流であってもよい。
【0019】
詳細には、コンプレッサ2は冷却ファン7、モータ温度を検出する温度センサ8、冷却ファン制御回路9を備えており、温度センサ8の検出値に応じ決められた動作をするよう制御回路9にて冷却ファン7の送風量を制御する。更にコンプレッサ2のみを冷却する冷却ファン7以外にも、外気を装置内に取り込み、電装部品などを含め、筐体内全体を冷却する冷却ファン7’を備え、冷却ファン制御回路9により両者のファンモータ回転数を制御することで装置全体の冷却効率の最適化を図る。冷却ファン7や冷却ファン7’には軸流ファンやシロッコファンなどを用いることができ、各冷却ファンのモータ回転数はPWM制御による連続運転制御や、例えば24V、12V、0Vなど印加電圧の切替制御による回転数制御を採用することができる。
【0020】
また、コンプレッサ2の吸気管10には、インテイクフィルタ11、吸気フィルタ12、消音器13等を備えている。吐出側には熱交換器14を介して送気管15を接続する。排気管16には消音器17を接続する。
二本の吸着筒3,3は、それぞれ圧縮空気の出入りを制御するための切り替え弁18,18、送出側を均圧弁20で両筒を繋ぐと共にそれぞれ逆止弁21,21を備え、濃縮酸素を一時保管する製品タンク4へ接続される。
その先、カニューラ6までには、圧力調整器5、酸素濃度センサ19、流量調整器22、パーティクルフィルタ13を備える。
【0021】
上記構成の圧力変動型酸素濃縮装置は、原料空気を圧縮し窒素吸着部に送ることで濃縮酸素が送出される。冷却ファン制御部はコンプレッサのモータ温度を監視することから、コンプレッサの温度状態を把握し冷却ファンを動作させる。例えばコンプレッサの温度を0.5秒間隔で測定し、その温度により低温、通常、高温を判断して冷却ファンの駆動状態を制御する。温度制御を設けない場合、冷却ファンを常に駆動させることとなり、コンプレッサの過剰冷却及び無駄な電力消費を招いてしまうが、コンプレッサの温度を監視することによりコンプレッサの過剰冷却を無くし、騒音低減・消費電力低減を実現する。
【0022】
近年如何なる電子機器も低消費電力化が求められている。特に本装置のような在宅医療機器において消費電力低下は利用者の負担の低減することに繋がりQOL向上の観点からも重要である。従来の冷却ファン連続運転に比べ、コンプレッサの温度監視による冷却ファンの過冷却防止は、冷却が不要な場合冷却ファンを停止させることが可能であり消費電力は確実に低下する。
【0023】
本装置は、在宅および病院で利用することが多く騒音低減は、利用者にとって低消費電力と共に重要な項目である。従来行われていたファン連続運転では、ファンによる風切り音が大きく、騒音低減が望まれていた。本装置によれば冷却が不要な場合において冷却ファンを停止させるので冷却ファンが発する風切り音がなく低騒音化が実現できる。
【実施例】
【0024】
図1に記載の2L/分の最大酸素生成能力を有する圧力変動吸着型酸素濃縮装置を用い、コンプレッサ温度の検知結果に基いて冷却ファンの回転を制御することによる消費電力への効果、騒音低減への効果を確認した。かかる装置には冷却ファンとして装置全体を冷却するシロッコファン7’および2ヘッド型レシプロコンプレッサ2のシリンダ部を直接冷却する2個の軸流ファン7,7を備える。
【0025】
コンプレッサを一定回転数で運転させた状態で外部の環境温度を−5℃、25℃、35℃に変化させることによりコンプレッサの温度を変化させ、冷却ファンの作動状態を遷移させた。
【0026】
冷却ファンの回転数制御は、シロッコファン7’について、コンプレッサ温度が30℃未満でOFF、30℃以上で連続運転とし、軸流ファン7については、コンプレッサ温度が30℃未満で0V、30℃以上65℃未満で12V、65℃以上で24Vの電圧で駆動させる制御を行なった。
【0027】
環境温度−5℃では、コンプレッサの温度tは30℃以下となり冷却ファン7,7’は共にOFFの状態、環境温度25℃では、コンプレッサの温度tは30℃以上、65℃未満となりシロッコファン7’を12Vで駆動、軸流ファン7は連続運転した。さらに環境温度35℃では、コンプレッサの温度は65℃以上となり、シロッコファン7’を24Vで駆動した。
【0028】
その結果を表1及び表2に示す。比較対照として冷却ファン制御を行わない(OFF)の状態での消費電力及び騒音測定の結果を示す。冷却ファンの運転制御有無により最大で5.39[W](環境温度-5℃の時の平均消費電力)、最小で3.18[W](環境温度35℃の時の平均消費電力)消費電力を抑えることができた。騒音に関しては、0.2[dBA]〜3.2[dBA]の騒音を低減している。装置の前後左右で騒音を測定した結果、特に排気口が設けてある機台を正面に見て右後方の騒音は冷却ファンの制御有無による効果が大きいことが明らかになった。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の実施態様例の説明図。
【符号の説明】
【0032】
1. 酸素濃縮器
2. コンプレッサ(空気圧縮手段)
3. 吸着筒(吸着床)
4. 製品タンク
5. 圧力調整器
6. カニューラ
7. 冷却ファン
8. 温度センサ
9. 冷却ファン制御回路
10. 吸気管
11. インテイクフィルタ
12. 吸気フィルタ
13. 消音器
14. 熱交換器
15. 送気管
16. 排気管
17. 消音器
18. 切り替え弁
19. 酸素濃度センサ
20. 均圧弁
21. 逆止弁
22. 流量調整器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素よりも窒素を優先的に吸着する吸着剤を充填した少なくとも1個の吸着床と、該吸着床に圧縮空気を供給して窒素を吸着させることにより酸素濃縮気体を生成するための空気圧縮手段、該空気圧縮手段の温度を検出する温度検出手段、該空気圧縮手段を冷却する送風手段を備えた酸素濃縮装置において、該温度検出手段により得られた温度に基づいて送風手段の駆動を制御する制御手段を備え、該温度検出手段が上限温度値以上の値を検知した場合に、該送風手段の送風量を増加させる制御を、下限温度値以下の値を検知した場合に、該送風手段の送風量を減少させる制御を行う手段であることを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
該送風手段がPWM制御で駆動する冷却ファンであることを特徴とする、請求項1記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
該送風手段が印加電圧を切替えて駆動する冷却ファンであることを特徴とする、請求項1記載の酸素濃縮装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−272350(P2008−272350A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−122327(P2007−122327)
【出願日】平成19年5月7日(2007.5.7)
【出願人】(503369495)帝人ファーマ株式会社 (159)
【Fターム(参考)】