説明

酸素濃縮装置

【課題】呼吸用気体の供給持続時間を有効に伸張が可能な酸素濃縮装置を提供する。
【解決手段】酸素濃縮装置1に装着されたバッテリー13から正規範囲の出力電圧が検出されるとともに、商用電源など他の外部電源の接続が検出されない場合に、このバッテリー13を駆動電力源とすること、呼吸用気体の供給を患者の吸気期間のみ行う同調モードとすること、を自動選択するメイン制御部14を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素濃縮装置に係り、特に酸素富化気体の供給持続時間を有効に伸張可能とした、在宅酸素療法用の酸素濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、呼吸器疾患の患者に対して空気中の酸素を分離濃縮して酸素富化気体を得るための呼吸用気体供給装置(以下、酸素濃縮装置ともいう)が開発され、それを用いた酸素療法が次第に普及するようになってきた。
【0003】
斯かる酸素療法は患者が医療機関に入院しつつ実施される場合もあるが、患者の呼吸器疾患が慢性症状を呈し、長期に渡ってこの酸素療法を実行して症状の平静化、安定化を図る必要がある場合には、患者の自宅に上記の酸素濃縮装置を設置し、この酸素濃縮装置が供給する酸素富化された気体をカニューラと呼ぶ管部材を用いて患者の鼻腔付近まで導いて、患者が吸引を行う治療方法も行われている。この種の治療方法を特に、在宅酸素療法あるいはHOT(Home Oxygen Therapy)とも称する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−354630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の在宅酸素療法に用いる酸素濃縮装置は、患者宅等に固定的に設置されて自宅で療養を行う患者に対して呼吸用気体を供給するよう構成されており、商用交流電源をその駆動電力源とすることが一般的である。
【0006】
商用電源を電力源とする酸素濃縮装置の消費電力を減らして装置の小型化を図ったり、あるいは可搬型とするため内蔵蓄電池を電力源とした酸素濃縮装置の使用時間を伸張させるための構成が、例えば下記する特許文献1に、酸素富化気体の取り出し量(設定流量)が比較的小さいときに酸素富化気体貯留タンクの内圧を検知して電動式コンプレッサの駆動をコントロールする酸素濃縮装置として記載されている。
【0007】
しかしながら上記の従来技術構成では、酸素富化気体の取り出し量が特定範囲以外のときには効果を奏することが出来ず、また電力の削減量も十分とはいえない問題がある。
【0008】
一方、酸素濃縮装置を構成するエアコンプレッサや空気中の窒素を選択的に吸収して酸素を分離する気体分別器等の小型軽量化も技術的進歩に伴って着実に実現されつつあり、この結果、酸素濃縮装置全体を小型軽量化して可搬型に構成し、患者自身が外出時に帯同しつつ酸素富化気体の吸入を行えるようにし、患者が自宅内にいるときも外出時にもこの可搬型酸素濃縮装置を用いて酸素富化気体の吸入を行うように改善した在宅酸素療法の実現が、視野に入りつつある。
【0009】
この種の可搬型酸素濃縮装置は、典型的には繰り返し充放電が可能な2次電池を電力源として構成されており、充電を行うことなく気体供給を持続できる時間は電池の充放電容量によって規定されることとなる。また在宅療法患者は定期的に医療機関へ通院して診察を受ける必要があり、医療機関への往復路及び待合時間を考慮すれば上記の気体供給持続時間はより伸張されることが不可欠であるとともに、患者の歩行運動量を増加させて在宅酸素療法の効果を向上させるためにも可搬型酸素濃縮装置の気体供給時間伸張が必要となる。
【0010】
すなわち酸素富化気体供給時間を従来よりも有効に伸張できる酸素濃縮装置が実現されなければ、患者の行動範囲を広げて利便性を増し、患者の体力向上にも有効な、より改善された在宅酸素療法を実現することが出来ない。
【0011】
本発明は上記の状況に鑑みなされたものであって、呼吸用気体の供給持続時間を有効に伸張が可能な酸素濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、下記する1)〜4)に記載の各構成を有する酸素濃縮装置を提供する。
1)酸素濃縮装置に装着又は送電路経由で接続された電力蓄積手段から所定範囲内の出力電圧が検出され、且つ、他の該装置外部の電源手段との接続が検出されない場合に、この電力蓄積手段を該装置の駆動電力源とすること、及び、呼吸用酸素富化気体の供給を使用者の吸気期間のみ行う呼吸同調モードとすること、を自動選択する制御手段を備えた酸素濃縮装置。
2)酸素濃縮装置への電力蓄積手段の装着が検出され、且つ、他の該装置外部の電源手段との接続が検出されない場合に、この電力蓄積手段を該装置の駆動電力源とすること、及び、呼吸用酸素富化気体の供給を使用者の吸気期間のみ行う呼吸同調モードとすること、を自動選択する制御手段を備えた酸素濃縮装置。
3)下記する(A)乃至(D)に記載された時間の内の少なくともいずれかを所定期間内につき積算した値を表示又は出力する出力手段を備えた、1)又は2)に記載の酸素濃縮装置。
(A)呼吸用酸素富化気体が生成された時間。
(B)前記制御手段の制御に従い呼吸同調モードで呼吸用酸素富化気体が供給された時間。
(C)前記電力蓄積手段が該装置の駆動電力源として選択された時間。
(D)呼吸同調モードによる呼吸用酸素富化気体の供給を実現するための呼吸検知手段が使用者の呼吸を検出した時間。
4)呼吸用酸素富化気体が生成された全時間に対する、下記する(E)乃至(G)に記載された時間の比率の内の少なくともいずれかを、所定期間内につき算出した値を表示又は出力する出力手段を備えた、1)又は2)に記載の酸素濃縮装置。
(E)前記制御手段の制御に従い呼吸同調モードで呼吸用酸素富化気体が供給された時間。
(F)前記電力蓄積手段が該装置の駆動電力源として選択された時間。
(G)呼吸同調モードによる呼吸用酸素富化気体の供給を実現するための呼吸検知手段が使用者の呼吸を検出した時間。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、呼吸用気体の供給持続時間を有効に伸張が可能な酸素濃縮装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態に係る好ましい実施例である酸素濃縮装置の構成図である。
【図2】図1の酸素濃縮装置の接続図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態に係る好ましい実施例である酸素濃縮装置を、各図面を参照して説明する。
【0016】
図1は本発明の実施の形態に係る好ましい実施例である酸素濃縮装置の構成図、図2は図1の酸素濃縮装置の接続図である。
【0017】
〔酸素濃縮装置の構成〕
本実施例の酸素濃縮装置1は、先に説明したように主に在宅酸素療法に用いるために空気中の窒素を分離し高濃度酸素(酸素富化気体)を供給する装置であり、例えば、酸素より窒素を選択的に吸着し得る吸着剤としてモレキュラーシーブゼオライト5A、13X、或いはリチウム系ゼオライトなどを吸着筒(吸着ユニット5内)に充填し、空気圧縮装置(コンプレッサ4)によって作られた加圧空気を供給することで、酸素を取り出す圧力変動吸着型の酸素濃縮装置である。
【0018】
尚、本発明の実施に際して、酸素濃縮装置の基本的な酸素濃縮機能に係る構成はここに説明を行う態様に限定されず、既に公知の構成、あるいは今後提案される様々な構成とすることが出来る。
【0019】
圧力変動型吸着型酸素濃縮装置である本実施例の酸素濃縮装置1は、図1の構成図に示すように、酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤を充填した吸着筒(吸着ユニット5に含まれる)に、コンプレッサ4によって大気中から圧縮された加圧空気を供給し、吸着筒内部を加圧状態にして窒素を吸着させ、吸着されなかった酸素を取り出す。吸着筒より取り出された酸素を主とする酸素富化気体は、製品タンク6に貯留した後、超音波センサー部7、呼吸同調部8を経て製品供給端9から装置1の外部へ吐出され、酸素富化気体を酸素濃縮装置1から患者の鼻腔付近まで輸送するチューブ部材である鼻カニューラ12を介して使用者(酸素療法患者)に供給される。
【0020】
ここで吸着剤は、1回の工程で吸着できる窒素の量が吸着剤の量や種類によって決まっているため、吸着剤に吸着される窒素の量が飽和する前に流路切換弁を切り換えて吸着筒を大気開放して吸着筒内部を減圧し、窒素を脱着させて吸着剤を再生させる。また、流路切換弁は、予め設定された時間によって切り換えられるようにメイン制御部14によって制御される。なお、一工程中の吸脱着量を増やすべく、真空ポンプを用いて、脱着工程における吸着筒内部の圧力を真空にしても良い。
【0021】
尚、本実施例の酸素濃縮装置1は、従来の酸素濃縮装置よりも小型軽量として可搬型として実現するために、例えば、特許第3269626号公報に記載された構成を用いて、複数の吸着筒に対する加圧及び脱着のための気体流路を順次連続的に形成する回転バルブ手段を備えた吸着ユニット5とすることは望ましい態様である。
【0022】
超音波センサー部7は、本出願人の出願に係る特開2002−214012号公報等に記載されているように、鼻カニューラ1c内を流れる酸素富化気体の流れる方向と同方向及び逆方向の2つの音波、例えば超音波の伝播速度を測定し、2つの測定値の相違する量から、鼻カニューラ1c内を流れる酸素富化気体の実際の流量を測定することが出来る。またその他の構成や方式を用いて酸素富化気体の実際の流量を測定するようにしても良い。
【0023】
更に、呼吸同調部8は、患者の呼吸を検知して吸気期間(空気を吸っている)だけに酸素富化気体を供給し、呼気期間(空気をはいている)内は供給を停止する所謂デマンドレギュレータの機能を実現することによって、患者の吸入に影響が無いようにしつつ患者へ供給する酸素富化気体の量を節約(conserving)するためのものであって、この結果、AC電源を電力供給源としている運転モードでは使用電力量を削減することが出来、特に再充電可能な電池(2次電池)を電力供給源としている運転モードでは次の充電までの運転時間(呼吸用気体の供給持続時間)を伸張させることが出来る。
【0024】
尚、上記の如く患者の呼吸を検知して吸気期間のみ酸素富化気体を供給する運転モード(以下、同調モードともいう)と、患者の呼吸とは無関係に一定の流量の酸素富化気体を常に供給する運転モード(以下、連続モードともいう)とは、以下に説明するようにバッテリー13使用選択時の自動選択制御の他に、使用者が手動で切り替え操作することも可能であって、この操作のための操作スイッチ(図示しない)を酸素濃縮装置1は備えており、例えば睡眠時には必ずこの操作スイッチを操作して連続モードで酸素富化気体の吸入を行うこととなっている。これは睡眠時の患者が鼻腔ではなく口腔経由で呼吸を行って呼吸の検知がされない場合であっても、酸素富化気体の供給を継続出来るようにするためである。
【0025】
患者の呼吸を検知するための具体的な構成は、例えば、本出願人の出願に係る特開2002−272845号公報に記載された構成の如く、光マイクを用いて音声信号(患者の呼吸音)を光信号に変換したのち電圧信号に変換し、更に周波数に変換することにより周波数領域での解析を行い、周波数帯域の違いにより呼吸を検知する構成や、特開昭62−270170号公報に記載があるように鼻カニューラに焦電素子からなるセンサーを設ける方法や、特公平5−71894号公報に記載があるようにダイヤフラム式圧力計で、導電性層を積層した高分子フィルムを用いて静電容量を検出する圧力検出器を用いる構成や、特開平2−88078号公報に記載があるように圧力検出器を酸素濃縮装置本体の酸素供給口近傍に設け、圧力検出器の信号に基づいて酸素富化気体の供給を制御する方法や、あるいはその他の方法により実現することが出来る。
【0026】
表示部10は、液晶パネルのような表示部材とその周辺インターフェイス部を含んだ表示手段であって、メイン制御部14から送信された情報をこの表示部材に表示する。
【0027】
表示部10が表示を行うデータの内容は、運転オン状態の表示、警報やアラームの表示、設定された流量の表示などのような従来の酸素濃縮装置でも表示が行われていた内容の他に、下記する(A)乃至(D)に記載された時間の内の少なくともいずれかを、所定期間の間、例えば図示しないリセットボタンを操作することによりリセット操作を行った後から現在まで積算した値としている。
(A)吸着ユニット5が酸素富化気体を生成した全時間。
(B)メイン制御部14の制御に従い呼吸同調部8が酸素富化気体の供給モードとして同調モードを選択した全時間。
(C)電源制御部3が電力源として電池を選択した全時間。
(D)同調モードでの気体供給を行うために使用者の呼吸検出を行う呼吸同調部8が実際に使用者の呼吸を検出した全時間。
【0028】
あるいはまた吸着ユニット5が酸素富化気体を生成した全時間に対する、下記する(E)乃至(G)に記載された時間の比率の内の少なくともいずれかを所定リセット操作の後から現在までの積算時間に基づき算出した値を表示するようにしてもよい。
(E)メイン制御部14の制御に従い呼吸同調部8が酸素富化気体の供給モードとして同調モードを選択した全時間。
(F)電源制御部3が電力源として電池を選択した全時間。
(G)同調モードでの気体供給を行うために使用者の呼吸検出を行う呼吸同調部8が実際に使用者の呼吸を検出した全時間。
【0029】
情報出力端11はメイン制御部14から送出される種々の情報を、無線あるいは有線伝送路を介して酸素濃縮装置1外の装置例えばパーソナルコンピュータへ送出するための出力端子あるいは送信インターフェイスであって、IrDA、RS−232C、USB、bluetoothその他公知の通信規格に準じた構成であっても良い。送出される情報は、同じく従来の酸素濃縮装置でも表示が行われていた内容の他に、上記に説明した、表示部10が表示を行うのと同様の情報などである。
【0030】
流量設定部12は患者等使用者が操作して供給すべき酸素富化気体の流量を設定操作するためのもので、例えばダイアルスイッチを回転操作して、1リットル/分、2リットル/分、3リットル/分等の内から所望の選択値を選択操作すると、この選択値を検知したメイン制御部14がコンプレッサ4や吸着ユニット5の動作速度などを制御して、設定された所望の流量を実現するものである。
【0031】
コンプレッサ4は、コンプレッサ4を駆動させるためのコンプレッサ駆動モーターを具備しており、コンプレッサ駆動モーターはメイン制御部14によって設定された回転数を実現するように電源制御部3が生成出力する駆動電流に従いコンプレッサ4を回転駆動させる。コンプレッサ4が有する圧縮機構部は、コンプレッサ駆動モーターによって得た回転力によって空気を圧縮するものであり、その圧縮方式によって様々な種類が存在し、往復運動式のピストンタイプや回転式のスクロールタイプなどが一般的によく用いられているが、大気中の空気を圧縮できるものであればどのタイプを用いても構わない。
【0032】
電源制御部3は上述のようにコンプレッサ4を駆動する駆動電流出力のほかに、装置1に含まれる各構成へ電力を供給する機能を有する。
【0033】
ここで電源制御部3が供給する電力の電力源は、従来の典型的な固定設置型酸素濃縮装置では家庭用AC電源のみからの電力供給方法であったのを改め、内蔵または外付けの2次電池であるバッテリー13、家庭用AC電源(商用電源)、及び自動車の車載DC電源、のスリーウェイ電源方式としている。そのために、装置外部に面する筐体外周部には電源入力端2を設け、ここを通じてAC電源ユニット15または、自動車車内のシガーライター接点に接続する車載電源ユニット16から直流にて電力の供給を受けることが出来る。
【0034】
更に、バッテリー13を内蔵型として実現した場合には酸素濃縮装置1の内部に取り外しが可能な態様にて設けられたバッテリー13からの放電により電源制御部3へ電力が供給される。
【0035】
尚、バッテリー13への充電は、通常、バッテリー13を酸素濃縮装置1へ装着したまま、AC電源ユニット15または車載電源ユニット16から供給された電力が電源入力端2及び電源制御部3を経由して供給されることにより実行される。
【0036】
また、電源制御部3は、内蔵バッテリー13と、電源入力端2に接続する外部電源である商用電源または自動車車内のシガーライター電源と、のいずれかを酸素濃縮装置1へ駆動電力を供給する電力源として選択する機能を有する。選択の手順は次の通りである。
【0037】
(1)まず電源入力端2にAC電源ユニット15又は車載電源ユニット16が接続されており、この結果、AC電源ユニット15又は車載電源ユニット16内に設けられた図示しない信号源から同じく図示をしない信号路を経由して所定信号が電源制御部3へ到達した場合には、内蔵バッテリー13の有無に拘らず電源入力端2に接続したこれらAC電源ユニット15又は車載電源ユニット16を、装置1の電力源として選択する。
あるいは電源入力端2に接続したAC電源ユニット15又は車載電源ユニット16から正規の範囲内の電圧が印加されている場合に、これらを装置1の電力源としてもよい。
【0038】
(2)次に、電源入力端2にAC電源ユニット15も車載電源ユニット16も接続されておらず、従って接続を示す上記の信号が電源制御部3に到達していないか、あるいは電源入力端2に加わった印加電圧が正規範囲外である場合であって、内蔵バッテリー13の放電出力端から正規範囲内の電圧が印加されている場合は、内蔵バッテリー13を電力源として選択する。
【0039】
(3)更に電源入力端2に正規範囲内の印加電圧が無く、且つ内蔵バッテリー13の放電端からも正規範囲内の印加電圧が検出されない場合には、いずれも電力源として選択することなく酸素濃縮装置1の運転を可能とせず、必要に応じて「バッテリーの充電が必要です」等の表示を行うようにする。
【0040】
電力源選択の方法は上記に限定されず種々の方法が他にも考えられ、例えば複数の電力源が選択可能な場合に使用者が選択スイッチを操作して所望の電力源を選択可能とする方法を単独で、あるいは上記の自動選択方法と組み合わせても良い。
【0041】
あるいはメカニカルな押圧スイッチを設けることによって内蔵バッテリー13が今、酸素濃縮装置1に装着されているかどうかを検知したり、光インタラプタ部を酸素濃縮装置1に設けて内蔵バッテリー13の筐体部の一部がこの光インタラプタ部の光路を遮断するか否かにより内蔵バッテリー13の装着の有無を検知したり、酸素濃縮装置1側で内蔵バッテリー13と接続する端子間のインピーダンスを計測して、内蔵バッテリー13の内部インピーダンスに相当するインピーダンスが検出されるかどうかを調べるなどして、内蔵バッテリー13の装着の有無を判断し、選択に反映をさせてもよい。
【0042】
更に、移動中に用いる電力源として上記したバッテリー13(2次電池)のほかに、その他の電力蓄積機能を有する構成、例えば燃料電池等をこの酸素濃縮装置1に内蔵、あるいはこの酸素濃縮装置1とともに携行可能に構成し、上記したバッテリー13を用いた制御に準じた制御を行うように構成することも考えられる。
【0043】
メイン制御部14は、酸素濃縮装置1が有する各構成を制御して酸素富化気体の供給を行わせる、という従来構成の酸素濃縮装置と同様な機能とともに、電源制御部3が先に説明したように電力源として内蔵又は外付けのバッテリー13を選択した場合に、呼吸同調部8が呼吸用気体供給のモードとして同調モードを選択するよう制御する機能を有する。
【0044】
メイン制御部14を上記のように構成したので、特に消費電力を削減して呼吸用気体供給持続時間の伸張が必要なバッテリー13による駆動時に、確実に同調モードが選択されて供給時間伸張が実行されるので、使用者の操作に依存せず確実性が高まり、使用者もわずらわしい操作を行う必要が無くストレスから開放される。
【0045】
更にメイン制御部14は、下記する(A)乃至(D)に記載された時間の内の少なくともいずれかを、所定の期間内、例えば図示しないリセットボタンを操作することによりリセット操作を行った後から現在まで積算したり、あるいはまた吸着ユニット5が酸素富化気体を生成した全時間に対する、下記する(E)乃至(G)に記載された時間の比率の内の少なくともいずれかを、所定の期間内、例えば所定リセット操作の後から現在までの積算時間に基づき算出して、これらの積算値あるいは算出値を表示部10にて表示させたり、あるいは情報出力端11から出力させて装置外部のパーソナルコンピュータなどで表示や蓄積を行うよう、制御を行う。
(A)吸着ユニット5が酸素富化気体を生成した全時間。
(B)メイン制御部14の制御に従い呼吸同調部8が酸素富化気体の供給モードとして同調モードを選択した全時間。
(C)電源制御部3が電力源として電池を選択した全時間。
(D)同調モードでの気体供給を行うために使用者の呼吸検出を行う呼吸同調部8が実際に使用者の呼吸を検出した全時間。
(E)メイン制御部14の制御に従い呼吸同調部8が酸素富化気体の供給モードとして同調モードを選択した全時間。
(F)電源制御部3が電力源として電池を選択した全時間。
(G)同調モードでの気体供給を行うために使用者の呼吸検出を行う呼吸同調部8が実際に使用者の呼吸を検出した全時間。
【0046】
本実施例の酸素濃縮装置1が上記したような積算値あるいは算出値を表示又は出力する目的を、以下に説明する。
酸素濃縮装置1を用いる在宅酸素療法を始めるに際して医師は、患者が受けるべき酸素療法の処方が記された指示書を発行する。上記の処方は、(1)患者に供給すべき酸素富化気体の酸素濃度、(2)同じく患者に供給すべき酸素富化気体の使用流量と使用時間、等が記されている。
【0047】
一方、酸素富化気体の吸入は患者の自宅内や患者の外出先などで行われることから、医師は吸入の有無などを、吸入が行われている現場で直接確認することが出来ない。
【0048】
そこで医師は、定期的、例えば月に一度の通院診療時に患者へ問診を行って、処方通りの吸入が行われているか否かを確認することが必要になるが、患者は実際に吸入した状況と異なる内容を医師の問診に対して答える場合が有り得るので、在宅酸素療法を確実且つ有効に行う上で従来、大きな障害となっていた。
【0049】
それに対して本実施例の酸素濃縮装置1は上記の用に構成したので、通常一ヶ月ある通院インターバル期間中に、(1)通算どれほどの時間、酸素濃縮装置1が酸素富化気体を供給したのか、(2)その時間中、患者が比較的活動的であったと考えられる同調モードで供給が行われた時間や時間比率はどれほどか、(3)同じくその期間中、患者が比較的活動的であったと考えられるバッテリー駆動で供給が行われた時間や時間比率はどれほどか、あるいは(4)同じくその期間中、実際に患者が酸素富化気体の吸入を行った時間や時間比率は如何程かを、患者が実際に治療に使っている酸素濃縮装置1という物理的なエビデンスに基づいて医師が把握することが可能となり、在宅酸素療法の確実且つ有効な実行が行える。
【0050】
また、本実施例の酸素濃縮装置1は可搬型の機能を実現するための特徴的な構成として、先に説明した点の他に例えば、必要な程度の防塵、防滴機能を持って酸素濃縮装置1の内部を保護する筐体部、この筐体部に付帯する車輪部、同じく筐体部に付帯する保持ハンドルなど(いずれも図示しない)を有して、患者が引っ張るなどして外出時に帯同することが出来る。車輪部を有することなく、スリングベルトで直接患者が携行したりリュックに入れて背負ったりするなどの構成としてもよい。
【0051】
更に、本実施例では酸素濃縮装置1を可搬型とするために、その質量及び容積を従来から大きく低減しており、例えば従来の固定設置型の典型的な酸素濃縮装置が約30kgの質量を有していたものが、本実施例の装置1は5kgを切る質量にて構成されており、持ち運びが容易であるので、患者が通院先である医療機関へ帯同することも容易である。
【0052】
〔酸素濃縮装置の動作〕
次に本実施例の酸素濃縮装置1の動作を、装置1の接続図である図2を参照しつつ説明する。
まず、患者1bが患者宅1aに居て酸素療法を受ける場合には、従来と同様に家庭用AC電源から電力供給を受けて本実施例の酸素濃縮装置1から酸素富化気体の吸入を行うことが出来るとともに、患者宅内でバッテリー13駆動で吸入を行えば、ACコンセントの制約なく患者1bは装置1を帯同して患者宅内を自由に移動しながら吸入が継続できるので、従来の固定設置型装置のように何メートルにも及ぶ長大な延長チューブ付きカニューラを酸素濃縮装置に接続し、この延長チューブ付きカニューラ経由で吸入を行う不便さが解消される。
【0053】
そして上記のように患者宅内で、あるいは外出先3aでバッテリー13駆動で酸素濃縮装置1を運転する際には、先に説明した構成上の特徴に基づいて自動的に呼吸用気体の供給モードが同調モードに設定されるので、気体供給持続時間の伸張が確実に実行される一方、患者側も一々供給モードを切り替える操作上のわずらわしさが無いので操作においてストレスを感ずることもなく、有効に呼吸用気体供給時間の伸張が実行される。
【0054】
さらに、本実施例に特徴的な点として、装置1が有するメイン制御部14は、酸素富化気体を供給している際に、常時、あるいは適当なタイミングで上記した内容の、酸素富化気体の供給時間などの積算値あるいは算出値をメイン制御部14内部のメモリ部(図示しない)に記録保持する。
【0055】
ここで、上記した内容の、酸素富化気体の供給時間などの積算値あるいは算出値が記録保持されるのがメイン制御部14内部のメモリではなく、独立して設けられたメモリ手段であってもよいし、あるいはメモリーステッィク−TM、SDカード−TMのように脱着可能なメモリ手段として、医療機関2aへの通院時には酸素濃縮装置1全体ではなくこれら脱着可能なメモリ手段のみを取り出して医療機関2aへ持ち込むようにしても良い。あるいは通院先の医療機関2aへ酸素濃縮装置1を患者が持ち込むものの、上記の積算値や算出値を医療機関の情報機器に渡す方法として酸素濃縮装置1からこれら脱着可能なメモリ手段を取り外した後、医療機関の情報機器に取り付けて受け渡す、所謂媒体渡しを行う様にしても良い。
【0056】
そして定期的、例えば月に一度の通院日に、患者1bはこの酸素濃縮装置1を帯同して医療機関を訪れ、医療機関2aの医師2bは上記のような積算値あるいは算出値を、装置1の表示部10に表示させて確認したり、あるいは伝送ケーブル2eその他の伝送路を介して情報出力端11と接続したパーソナルコンピュータで表示確認することにより、医療従事者による患者の在宅酸素療法実施状況の把握を促して、在宅酸素療法の治療効果を大きく増進させることが出来る。
【0057】
また、通院時に医療機関で出力された上記の積算値あるいは算出値は、セキュリティ管理の下でインターネット通信網5aを経由して、患者に対してこの医療機関2aと提携して診療を行う提携医療機関4aの提携医療機関端末4cへ送信されて、医療情報の共有化を行うことも考えられる。
【0058】
そして、上記した内容の、酸素富化気体の供給時間などの積算値あるいは算出値などは、呼吸同調モードを実行するために呼吸同調部8が検知した患者の呼吸検知結果を用いたり、あるいは電源制御部3が実行した駆動電力源の選択の結果を利用して生成する事が出来るので、酸素濃縮装置1の簡潔な構成を維持しつつ患者の在宅酸素療法実施状況を直接医療従事者が把握できる効果が発揮される。
【0059】
すなわち本実施例の酸素濃縮装置1によれば、酸素富化気体供給時間の有効な伸張が図れることに加えて、患者の酸素富化気体の吸入状況が使用する医療機器から直接把握できるので、従来に無い効果的な在宅酸素療法が実行可能となる。
【符号の説明】
【0060】
1.酸素濃縮装置
8.呼吸同調部(呼吸検出手段)
13.バッテリー(電力蓄積手段)
14.メイン制御部(制御手段、出力手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素濃縮装置に装着され又は送電路経由で接続された電力蓄積手段から所定範囲内の出力電圧が検出され、且つ、他の該装置外部の電源手段との接続が検出されない場合に、この電力蓄積手段を該装置の駆動電力源とすること、及び、呼吸用酸素富化気体の供給を使用者の吸気期間のみ行う呼吸同調モードとすること、を自動選択する制御手段を備えた酸素濃縮装置。
【請求項2】
酸素濃縮装置への電力蓄積手段の装着が検出され、且つ、他の該装置外部の電源手段との接続が検出されない場合に、この電力蓄積手段を該装置の駆動電力源とすること、及び、呼吸用酸素富化気体の供給を使用者の吸気期間のみ行う呼吸同調モードとすること、を自動選択する制御手段を備えた酸素濃縮装置。
【請求項3】
下記する(A)乃至(D)に記載された時間の内の少なくともいずれかを所定期間内につき積算した値を表示又は出力する出力手段を備えた、請求項1又は請求項2に記載の酸素濃縮装置。
(A)呼吸用酸素富化気体が生成された時間。
(B)前記制御手段の制御に従い呼吸同調モードで呼吸用酸素富化気体が供給された時間。
(C)前記電力蓄積手段が該装置の駆動電力源として選択された時間。
(D)呼吸同調モードによる呼吸用酸素富化気体の供給を実現するための呼吸検知手段が使用者の呼吸を検出した時間。
【請求項4】
呼吸用酸素富化気体が生成された全時間に対する、下記する(E)乃至(G)に記載された時間の比率の内の少なくともいずれかを、所定期間内につき算出した値を表示又は出力する出力手段を備えた、請求項1又は請求項2に記載の酸素濃縮装置。
(E)前記制御手段の制御に従い呼吸同調モードで呼吸用酸素富化気体が供給された時間。
(F)前記電力蓄積手段が該装置の駆動電力源として選択された時間。
(G)呼吸同調モードによる呼吸用酸素富化気体の供給を実現するための呼吸検知手段が使用者の呼吸を検出した時間。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−261979(P2009−261979A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160549(P2009−160549)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【分割の表示】特願2003−282458(P2003−282458)の分割
【原出願日】平成15年7月30日(2003.7.30)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(000003001)帝人株式会社 (1,209)
【Fターム(参考)】