説明

酸素6員環からなるアルミノホスフェート系ゼオライト吸着剤及びその製造方法並びにその用途

【課題】水の有効吸着量が大きく、且つ優れた耐久性を持つ、ヒートポンプ用、デシカント空調用、湿度調節壁材用、湿度調節シート用の吸着剤を提供する。
【解決手段】骨格を構成する元素として少なくともAlとPを含み、且つ、細孔が径2.0から3.0オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造であるゼオライト、特にゼオライトがSOD構造またはAST構造からなる吸着剤を用いる。当該吸着剤はERI構造のゼオライトを相転移させて製造した針状又は柱状のゼオライトを用いることが好ましい。本発明の吸着剤はヒートポンプ用、特にデシカント空調、湿度調節壁材、及び、湿度調節シート用の吸着剤として優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ、デシカント空調、湿度調節壁材、湿度調節シート用の吸着剤として有用なアルミノホスフェート系ゼオライト、及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アルミノホスフェート系ゼオライト吸着剤を用いたヒートポンプとしては、細孔径が3Å以上(細孔入り口が酸素8員環以上と実質的に同義)で細孔が2次元以上に繋がっている構造のゼオライトが数多く提案されている。
【0003】
例えば、SAPO−34(CHA構造;細孔径3.8×3.8オングストロームの酸素8員環を持つ;細孔は3次元)、ALPO−34(CHA構造;細孔径3.8×3.8オングストロームの酸素8員環を持つ;細孔は3次元)、ALPO−18(AEI構造;細孔径3.8×3.8オングストロームの酸素8員環を持つ;細孔は3次元)などが例示されている(特許文献1,2参照。)。しかし、これらのゼオライトは、細孔径が3オングストローム以上と大きいため安定性が低く、耐久性も低いものであった。なお、細孔径が3オングストローム以上で細孔が1次元のゼオライトとして、ALPO−5(AFI構造)が提案されているが、高い相対湿度で吸着量が大きく変化するため、ヒートポンプ用吸着剤としては適していない(特許文献2)。これは、ALPO−5の細孔径が7.3×7.3オングストロームと大きすぎるのが原因と考えられる。
【0004】
また、特許文献2において、「25℃で測定した水蒸気吸着等温線において、相対蒸気圧0.05以上、0.30以下の範囲で相対蒸気圧が0.15変化したときに水の吸着量変化が0.18g/g以上の相対蒸気圧域を有する吸着材からなる吸着ヒートポンプ用吸着材」が提案されているが、実施例はSAPO−34が示されているのみであった。
【0005】
更に、アルミニウムとリンと鉄を含むゼオライトからなるヒートポンプ用吸着剤について、特許文献3、4の中で、数多くのアルミノホスフェート系ゼオライトの構造が記載されているが、細孔径と耐久性との関連性について検討されていなかった。
【0006】
これまで、開放式ヒートポンプとも呼ばれるデシカント空調機は、吸着剤として一般にシリカゲルが用いられている。アルミノホスフェート系ゼオライト吸着剤を用いた開放式ヒートポンプとしては、特許文献5において、ALPO−5(細孔径7.3×7.3オングストロームの酸素12員環を持つ)が例示されているが、高い相対湿度で吸着量が大きく変化するため、ヒートポンプと同様に利用し難く、デシカント空調用としても実用的な価値はまだ十分ではなかった。
【0007】
湿度調節壁材および湿度調節シートは、自律的調湿機能を持つ吸着剤が用いられ、特許文献6ではアルミノケイ酸塩の多孔質材などが提案されているが、やはり性能、耐久性が十分とは言えなかった。
【0008】
以上、細孔径が3オングストローム以上(細孔入り口が酸素8員環以上と実質的に同義)で細孔が2次元以上に繋がっているアルミノホスフェート系ゼオライト吸着剤は構造の安定性が低いため、ヒートポンプ用、デシカント空調用、湿度調節壁材用、湿度調節シート用の吸着剤としての耐久性が低く、実用的な価値が不十分であった。
【0009】
【特許文献1】特開2002−372332号公報
【特許文献2】特開2003−114067号公報
【特許文献3】特開2004−136269号公報(7頁43行−49行)
【特許文献4】特開2005−205331号公報(8頁37行−42行)
【特許文献5】特開平11−137947号公報(第21段39行−41行)
【特許文献6】特開平9−294931号公報(第2段2行−7行)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、従来技術の問題点を解決するために、水の有効吸着量が大きく、且つ優れた耐久性を持つ、ヒートポンプ用、デシカント空調用、湿度調節壁材用、湿度調節シート用の吸着剤及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは従来技術の問題点を解決するために、アルミノホスフェート系ゼオライトの構造、組成、および水分吸着・脱離特性、サイクル試験による耐久性について鋭意検討を重ねた結果、水の有効吸着量が大きく、且つ優れた耐久性を持つゼオライトとして、アルミノホスフェート系ゼオライトの中から、骨格を構成する元素として少なくともAlとPを含み、且つ、細孔が径2.0から3.0オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造であるゼオライト、例えば特に少なくともAlとPを含んだSOD構造のゼオライトは水の有効吸着量が大きく、且つ優れた耐久性を持つことを見出し、これらの吸着剤はヒートポンプ用、特にデシカント空調用、湿度調節壁材用、湿度調節シート用の吸着剤として有用である事を見出し、本願発明を完成した。
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明のゼオライトは、骨格を構成する元素として少なくともAlとPを含み、且つ、細孔が径2.0から3.0オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造であるゼオライトである。
【0014】
当該ゼオライトの例として、SOD構造を有するゼオライト及びAST構造を有するゼオライトが挙げられる。
【0015】
本発明では、骨格を構成する元素とは、酸素以外でゼオライト骨格を構築している元素のことを呼び、いわゆる交換カチオンや担持成分は含まない。
【0016】
本発明のゼオライトは、骨格を構成する元素として少なくともAlとPを含むことが必須である。少なくともAlとPを含むことにより、水などの吸着質の有効吸着量が大きくなるという吸着剤として優れた特性が発現する。AlとP以外の元素が含まれても良く、含まれている場合の元素の種類も特に限定されない。例えば、Si、Fe、Li、Be、B、Mg、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Geなどが例示できる。これらの中で、Si、Fe、B、Ga、Geが耐久性の点から好ましく、Siが最も好ましい。これらの元素は、単独で含まれても良いし、2種以上の元素が同時に含まれても良い。
【0017】
また、AlとP以外の元素の量は特に限定されないが、AlとP以外の元素をMとすると、Mの割合(M/(Al+P+M)のモル比)として、0.4以下が例示できる。Mの割合は、大きいほど水の有効吸着量が小さくなるため、0.2以下が好ましく、特に0.1以下が好ましく、0つまりAlとP以外の元素を含まないものが最も好ましい。
【0018】
本発明のゼオライトは、細孔が径2.0から3.0オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造である。
【0019】
本発明において、細孔径は、細孔の形状が円状の場合には直径、楕円状の場合には長径と短径の平均と定義する。また、複数の細孔をもつゼオライトの場合には、その中で最も大きな細孔の径を細孔径とする。
【0020】
本発明のゼオライトの「骨格を構成する元素として少なくともAlとPを含み、且つ、細孔が径2.0から3.0オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造であるゼオライト」である好適な例として、SOD構造を有するゼオライトが挙げられる。SOD構造は、刊行物(「ATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES(第5改訂版)」、p.254〜255、発行所:ELSEVIER、発行年:2001)に記載せれた構造として規定されている。
【0021】
AlとPからなるSOD構造のゼオライトは、ALPO−SODまたはALPO−20と呼ばれ、AlとPとSiからなるSOD構造のゼオライトは、SAPO−20と呼ばれている。
【0022】
SOD構造は、細孔が径2.2×2.2オングストロームの酸素6員環からなり、3オングストローム以下である(「ZEOLITE MOLECULAR SIEVES」 著者:D.W.Breck、p.155、発行所:KRINGER PUBLISHING COMPANY、発行年:1984)。そのため、SOD構造は安定性が高いと考えられ、ヒートポンプ用、デシカント空調用、湿度調節壁材用、湿度調節シート用の吸着剤としての耐久性も高くなる。
【0023】
一方、その他のアルミノホスフェート系ゼオライトであり、酸素8員環以上の大きな環を持つALPO−34(CHA構造;細孔径3.8×3.8オングストロームの酸素8員環を持つ)、ALPO−18(AEI構造;細孔径3.8×3.8オングストロームの酸素8員環を持つ)では安定性が低く、耐久性も低い。
【0024】
アルミノホスフェート系ゼオライトの中から、本発明のゼオライトのその他の好適な例として、AST構造を有するゼオライトを挙げる事ができる。このゼオライトは、刊行物(「ATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORK TYPES(第5改訂版)」、p.58〜59、発行所:ELSEVIER、発行年:2001)に記載されている。AST構造は、細孔が径2.2×2.2オングストローム程度の酸素6員環からなる3次元構造である。
【0025】
AlとPからなるAST構造のゼオライトは、ALPO−16と呼ばれ、AlとPとSiからなるAST構造のゼオライトは、SAPO−16と呼ばれている。
【0026】
本発明のゼオライトの結晶の形状は特に限定されない。例えば、球状、立方体状、板状、針状、柱状などが例示できる。これらの形状の中では、結晶間の空隙が大きく、水などの吸着質の吸脱着速度が速くなるため、針状および柱状が好ましい。
【0027】
本発明のゼオライトの結晶の粒子径としては、特に限定されないが、0.01μm〜100μmが例示でき、0.1μm〜10μmが好ましい。0.1μmより小さいと安定性が低くなり、10μmより大きいと結晶内の拡散速度が遅くなるため好ましくない。
【0028】
本発明のゼオライトの製造方法は特に限定されないが、例えば本発明のゼオライトの1種であるSOD構造を有するゼオライトは、直接合成のほかに、ERI構造のゼオライトを相転移させて製造することが出来る。ERI構造を相転移させて得られるSOD構造のゼオライトは、結晶の形状が針状又は柱状のゼオライトとなるため特に好ましい。
【0029】
ERI構造のゼオライトを合成する方法は限定されないが、特公平1−57041の実施例42〜44および特公平3−72010の実施例25〜26で示された有機SDAとしてキヌクリジン、ネオペンチルアミン、シクロヘキシルアミン、ピペリジンを用いた方法が例示できる。これらの中で、シクロヘキシルアミンを有機SDA(Strusture Directing Agent;構造規定材,構造指向材)として用いる方法が、安価なため好ましい。
【0030】
ERI構造のゼオライトをSOD構造へ相転移させる方法としては、窒素若しくは空気中での熱処理、または塩酸若しくは硫酸などの酸との接触による処理により有機SDAを取り除いたERI構造のゼオライトを水熱処理することが例示できる。
【0031】
水熱処理の方法としては、水の吸脱着の繰り返し処理が例示できる。例えば、ERI構造のゼオライトを相対湿度の高いガスと接触させ(吸着)、次いで、相対湿度の低いガスと接触またはゼオライトの温度を高くすること(脱着)を繰り返すことによりSOD構造へ相転移させることができる。
【0032】
ERI構造のゼオライトを相転移させて得られるSOD結晶は、針状および柱状となる。SOD構造は立方晶のため、その結晶形状は、通常の合成方法では、針状および柱状には成りえなく、立方体状、球状などになる。針状および柱状結晶はその形状のため、結晶間の空隙が大きくなり、水などの吸着質の吸脱着速度が速くなるという優れた効果が期待される。
【0033】
一方、SOD構造のゼオライトを直接合成する方法としては、有機SDAとして、TMAOH(テトラメチルアンモニウム水酸化物)を用いる方法、TMAOHとTPAOH(テトラプロピルアンモニウム水酸化物)の混合液を用いる方法、DMF(ジメチルホルムアミド)を用いる方法が例示できる。これらの中で、TMAOHまたはDMFを有機SDAとして用いる方法が、安価なため好ましい。
【0034】
アルミニウム源、リン源、上に示した有機SDA、水、およびAlとP以外の元素を含む場合にはその元素の化合物、また場合によってはフッ酸、塩酸などの酸を均一混合し、所定の温度で所定時間保持することによりSOD構造のゼオライトを合成することができる。アルミニウム源としては、擬ベーマイト、リン源としてリン酸が例示でき、温度は80〜200℃、時間は12〜240時間が例示できる。
【0035】
SOD構造のゼオライトから有機SDAを取り除く方法としては、窒素若しくは空気中での熱処理、又は塩酸若しくは硫酸などの酸との接触による処理が例示できる。
【0036】
また、本発明のゼオライトの1種であるAST構造を有するゼオライトは、キヌクリジンを有機SDAとして合成することができる。
【0037】
アルミニウム源、リン源、キヌクリジン、水、およびAlとP以外の元素を含む場合にはその元素の化合物、また場合によってはフッ酸、塩酸などの酸を均一混合し、所定の温度で所定時間保持することによりAST構造のゼオライトを合成することができる。アルミニウム源としては、擬ベーマイト、リン源としてリン酸が例示でき、温度は80〜200℃、時間は12〜240時間が例示できる。
【0038】
本発明のゼオライトからなる吸着剤は、主成分がゼオライトの吸着剤のことである。ゼオライトは、粉末のまま用いても良いし、粉末スラリーをハニカムローターなどに適切な方法でコーティングしたものであっても良い。ゼオライト粉末に適切な量のバインダや成形助剤を混合して粒状成形体としても良い。また、他の材料と一体成型しても良く、紙又は樹脂に混合することによりシート状にして良い。
【0039】
粒状成形体の形状は特に限定されず、使用されるシステムの容器の大きさや充填密度を考慮して形状、大きさが選択される。この際に使用されるバインダは特に限定されないが、熱交換を効率的に行うために、熱伝導度を上げる工夫をすることが好ましい。バインダの添加量が多くなると、それに伴い、吸着剤の重量および体積あたりの吸着量が低下する。したがって、バインダの混合比は少ない程よいが、使用条件に耐えうる強度を持つように調整することが好ましい。
【0040】
粒状成形体はバインダレス成形体でもよい。バインダレス成形体は通常の成形体よりもゼオライト分が多く、粒状成形体単位量あたりの有効吸着量が大きいため更に好適に使用される。
【0041】
本発明のゼオライトからなる吸着剤は、カーエアコン、燃料電池などの低温排熱を用いたヒートポンプに用いることができる。吸着質としては、蒸発潜熱が大きく安全で安価な水が好ましい。
【0042】
例えばカーエアコン用のヒートポンプとして用いるときには、排熱は80〜100℃、低温熱として30〜45℃、生成冷熱として5〜10℃程度であり、この時、吸着時の相体湿度は9〜29%、脱着時の相対湿度は5〜20%に相当する。従って吸着剤は、吸着時と脱着時の相対湿度の中心である16%付近で吸着量が大きく変化することが望ましい。
【0043】
本発明で使用されるゼオライトは低い排熱を用いても、高いヒートポンプ性能が保持できる。また、水の吸脱着に対して非常に安定な結晶なため、水分吸着−加熱再生のサイクルを繰り返してもゼオライト構造はほとんど変化せず、有効吸着量の低下もほとんどない。
【0044】
また、本発明のゼオライトからなる吸着剤は、開放式ヒートポンプとも呼ばれるデシカント空調機用の吸着剤として用いることができる。ゼオライトをコーティングしたハニカムローターに、熱交換器、冷却器、加熱器などを組み合わせることにより、主に除湿を目的とした空調機として使用させる。本発明で使用されるゼオライトは低い加熱温度であっても、ハニカムローターからの水の脱着を十分に行える。
【0045】
また、本発明のゼオライトからなる吸着剤は、湿度調節壁材、湿度調節シートに用いることができる。湿度の高いときは水を吸着し、湿度が低いときは水を脱着するため、自律的な湿度の調整ができる。本発明のゼオライトからなる吸着剤は、既存のアルミノケイ酸塩などの多孔質材よりも低い湿度(5から35%)で調節できることが特長である。また相対湿度に対する水の吸着量は、ある相対湿度で急激に変化するため、自律的な湿度の調整機能が大きい。
【発明の効果】
【0046】
本発明のゼオライトからなる吸着剤は、水の有効吸着量が大きく、且つ優れた耐久性を持つため、ヒートポンプ用、デシカント空調用、湿度調節壁材用、湿度調節シート用の吸着剤として用いることができる。またERI構造のゼオライトをSOD構造へ相転移させる方法により、特に吸脱着速度が速いゼオライト吸着剤を製造することができる。
【実施例】
【0047】
以下、実施例を用いて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0048】
水吸着特性評価はすべて減圧下350℃で2時間活性化した後、スプリングバランス法によって25℃の水分吸着等温線を測定し、相対湿度5%と25%の差による有効吸着量を求めた。
【0049】
また、粉末X線回折はマックサイエンス社製のMXP3を用いて測定し、走査型電子顕微鏡観察は日本電子製JSM−T220Aを用いて行った。
【0050】
実施例1
[ALPO−ERIを相転移させて合成したALPO−SOD]
以下の手順で、ALPO−17(ALPO−ERI)を合成した。擬ベーマイト(Al=74%):8.63g、85%リン酸:14.4g、シクロヘキシルアミン:6.20g、水:37.2gを均一に混合し、オートクレーブを用いて、200℃×168時間静置合成した。得られた固形物をろ過後、水で洗浄し、さらに550℃×4時間(窒素流通下1時間+空気流通下3時間)焼成してシクロヘキシルアミンを取り除いた。
【0051】
次に、乾燥器と水の蒸発器からなる水吸脱着装置(装置No.1)を用いて、吸着:40℃、相対湿度38%、脱着:90℃、相対湿度2%の条件で、ALPO−17の水吸脱着処理を行った。200サイクル後の試料を粉末X線回折で評価したところ、少量のERI構造が共存したSOD構造(細孔が径2.2×2.2オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造であるゼオライト)の生成が確認できた(図1)。走査型電子顕微鏡で結晶の形状を観察したところ、針状結晶であった(図2)。
【0052】
得られたALPO−SODの初期水分吸着等温線を測定したところ、相対湿度18%で吸着量が大きく変化した。また、相対湿度5%と25%の差による有効吸着量は、20.0(g/100g)であった(図3)。
【0053】
次に装置No.1の水吸脱着装置を用いて、吸着:40℃、相対湿度38%、脱着:90℃、相対湿度2%を繰り返すサイクル耐久試験を行った。300サイクル、500サイクル後の試料を粉末X線回折で評価したところ、SOD構造のみが確認できた。また、得られたALPO−SODのサイクル耐久試験後の水分吸着等温線を測定したところ、相対湿度5%と25%の差による有効吸着量は、300サイクル:20.0(g/100g)、500サイクル:21.7(g/100g)で大きな変化は認められなかった(図3)。
【0054】
実施例2
[ALPO−ERIを相転移させて合成したALPO−SOD]
実施例1で得られたシクロヘキシルアミン除去後のALPO−17を、耐圧容器、真空ポンプ、恒温槽からなる水吸脱着装置(装置No.2)を用いて、吸着:90℃、相対湿度30%、脱着:90℃、相対湿度3%を繰り返す水の吸脱着処理を行った。1200サイクル後の試料を粉末X線回折で評価したところ、微量のERI構造が共存したSOD構造(細孔が径2.2×2.2オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造であるゼオライト)が確認できた(図4)。また、走査型電子顕微鏡で結晶の形状を観察したところ、針状結晶であった。
【0055】
得られたALPO−SODの初期水分吸着等温線を測定したところ、相対湿度16%で吸着量が大きく変化した。また、相対湿度5%と25%の差による有効吸着量は、23.5(g/100g)であった(図5)。
【0056】
実施例3
[ALPO−ERIを相転移させて合成したALPO−SOD]
実施例1で得られたシクロヘキシルアミン除去後のALPO−17を、マッフル炉、水蒸気ライン、除湿空気ラインからなる水吸脱着装置(装置No.3)を用いて、吸着:120℃、相対湿度50%、脱着:120℃、相対湿度5%以下を繰り返す水の吸脱着処理を行った。100サイクル後の試料を粉末X線回折で評価したところ、少量のERI構造が共存したSOD構造(細孔が径2.2×2.2オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造であるゼオライト)が確認できた。また、走査型電子顕微鏡で結晶の形状を観察したところ、針状結晶であった。
【0057】
得られたALPO−SODの初期水分吸着等温線を測定したところ、相対湿度17%で吸着量が大きく変化した。また、相対湿度5%と25%の差による有効吸着量は、23.6(g/100g)であった(図6)。
【0058】
実施例4,5
[SAPO−ERI(Si:2,7%)を相転移させて合成したSAPO−SOD]
まず、以下の手順で、SAPO−17(SAPO−ERI;Si:2,7%)を合成した。アルミニウムイソプロポキシド:17.9g、85%リン酸:10.1g、シリカゾル(SiO=40%):0.66又は1.97g、シクロヘキシルアミン:4.34g、47%フッ酸:1.86g、水:28.2又は27.4gを均一に混合し、オートクレーブを用いて、200℃×24時間回転合成した。得られた固形物をろ過後、水で洗浄し、さらに550℃×4時間(窒素流通下1時間+空気流通下3時間)焼成してシクロヘキシルアミンを取り除いた。
【0059】
次に、装置No.2を用いて、吸着:90℃、相対湿度30%、脱着:90℃、相対湿度3%の条件で、SAPO−17の水吸脱着処理を行った。1200サイクル後の試料を粉末X線回折で評価したところ、微量のERI構造が共存したSOD構造(細孔が径2.2×2.2オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造であるゼオライト)が確認できた(図7)。また、走査型電子顕微鏡で結晶の形状を観察したところ、柱状結晶であった(図8,9)。
【0060】
得られたSAPO−SODの初期水分吸着等温線を測定したところ、相対湿度15%で吸着量が大きく変化した。また、相対湿度5%と25%の差による有効吸着量は、Si:2%品で20.4(g/100g)、Si:7%品で18.4(g/100g)であった(図10)。
【0061】
実施例6
[TMAOH+TPAOHを用いて合成したALPO−SOD]
擬ベーマイト(Al=74%):9.95g、85%リン酸:16.6g、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド5水和物:6.63g、40%テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド:18.0g、水:40.3gを均一に混合し、200℃×16時間でALPO−SODを静置合成した。得られたALPO−SODを620℃×4時間(窒素流通下1時間+空気流通下3時間)焼成し、有機SDAを取り除いた。
【0062】
試料を粉末X線回折で評価したところ、SOD構造(細孔が径2.2×2.2オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造であるゼオライト)が確認でき、また、走査型電子顕微鏡で結晶の形状を観察したところ、球状から立方体状の結晶であった(図11)。
【0063】
得られたALPO−SODの初期水分吸着等温線を測定したところ、相対湿度15%で吸着量が大きく変化した。また、相対湿度5%と25%の差による有効吸着量は、16.6(g/100g)であった(図12)。
【0064】
比較例1
[ALPO−34]
特開平9−294931号公報に基づき、モルホリンを有機SDAとして、200℃×240時間でALPO−34を合成した。得られたALPO−34を560℃×7時間(窒素流通下1時間+空気流通下6時間)焼成し、モルホリンを取り除いた。
【0065】
試料を粉末X線回折で評価したところ、CHA構造(細孔径3.8×3.8オングストロームの酸素8員環を持つ)が確認できた。
【0066】
得られたALPO−34の初期水分吸着等温線を測定したところ、相対湿度6%で吸着量が大きく変化した。また、相対湿度5%と25%の差による有効吸着量は、27.9(g/100g)であった(図13)。
【0067】
次に装置No.1の水吸脱着装置を用いて、吸着:40℃、相対湿度38%、脱着:90℃、相対湿度2%を繰り返すサイクル耐久試験を行った。200サイクル、500サイクル後の試料を粉末X線回折で評価したところ、CHA構造のみが確認できたが、ピーク強度の低下が認められた。また、得られたALPO−34のサイクル耐久試験後の水分吸着等温線を測定したところ、相対湿度5%と25%の差による有効吸着量は、200サイクル:19.9(g/100g)、500サイクル:12.0(g/100g)とサイクル数の増加に従い低下した(図13)。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】実施例1で調整したALPO−SODの粉末X線回折図
【図2】実施例1で調整したALPO−SODの走査型電子顕微鏡写真
【図3】実施例1で調整したALPO−SODの水吸着等温線
【図4】実施例2で調整したALPO−SODの粉末X線回折図
【図5】実施例2で調整したALPO−SODの水吸着等温線
【図6】実施例3で調整したALPO−SODの水吸着等温線(25℃)
【図7】実施例4,5で調整したSAPO−SODの粉末X線回折図
【図8】実施例4で調整したSAPO−SOD(Si2%)の走査型電子顕微鏡写真
【図9】実施例5で調整したSAPO−SOD(Si7%)の走査型電子顕微鏡写真
【図10】実施例4,5で調整したSAPO−SODの水吸着等温線(25℃)
【図11】実施例6で調整したALPO−SODの走査型電子顕微鏡写真
【図12】実施例6で調整したALPO−SODの水吸着等温線(25℃)
【図13】比較例1で調整したALPO−34の水吸着等温線(25℃)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨格を構成する元素として少なくともAlとPを含み、且つ、細孔が径2.0から3.0オングストロームの酸素6員環からなる3次元構造であるゼオライトからなる吸着剤。
【請求項2】
ゼオライトがSOD構造またはAST構造である請求項1の吸着剤。
【請求項3】
骨格を構成する元素として少なくともAlとP以外にSiを含むゼオライトからなる請求項1〜2に記載の吸着剤。
【請求項4】
ゼオライト中の結晶の形状が針状又は柱状であることを特徴とする請求項1〜3に記載の吸着剤。
【請求項5】
ERI構造のゼオライトを相転移させる事を特徴とする請求項1〜4記載の吸着剤の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4記載の吸着剤を使用するヒートポンプ、デシカント空調、湿度調節壁材、湿度調節シートのいずれか1種の用途。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−181796(P2007−181796A)
【公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−2327(P2006−2327)
【出願日】平成18年1月10日(2006.1.10)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】