説明

重力および真空により駆動される自動透析システム

【課題】重力および真空により駆動される自動透析システムの提供。
【解決手段】腹膜透析機は、(i)供給バッグ(24a)と、(ii)患者の腹膜腔より上に位置する供給バッグを支持するように構成された装置(24)と、(iii)真空源(70)と、(iv)患者に接続されるように構成された患者ライン(56)と、(v)ドレイン(60)に接続されるように構成された排液ライン(58)と、(vi)(a)充填サイクル中に、未使用の透析液を供給バッグから患者ラインを通じて腹膜腔に重力送液し、(b)排液サイクル中に、真空源により使用済みの透析液が腹膜腔から排液ラインを通じてドレインに抜けるように構成された論理インプリメンタ(40)とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概して、本発明は、滅菌液路を備える使い捨て可能なセットを採用する薬液送達システムに関する。具体的には、本発明は、使い捨て可能なセットをベースとする透析薬液治療用のシステム、方法および装置を提供し、蠕動ポンプ、ダイアフラムポンプ、空気ポンプおよび重力を使用するものを含むがそれらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
多様な原因によって、ヒトの腎臓系は不全を起こし得る。腎不全は、いくつかの生理的障害を生じる。水、ミネラル、および日々の代謝負荷の排せつのバランスが不可能になり、窒素代謝の毒性最終生成物(尿、クレアチニン、尿酸等)が血液および組織中に蓄積する可能性がある。
【0003】
腎不全および腎機能低下は、透析で治療されている。本来なら正常に機能する腎臓により除去される老廃物、毒素および過剰な水を透析により体から除去する。腎機能に代わる透析治療は、救命治療であるため、多くの人々にとって重要である。
【0004】
血液透析(「HD」)および腹膜透析(「PD」)は、腎機能の喪失を治療するため一般に使用される2種類の透析治療である。HDは、老廃物、毒素および過剰な水を患者の血液から除去する。患者は、カテーテルを介して患者の静脈および動脈に血液透析機が接続される。血液は患者から拍出され、機械に接続されたダイアライザの空洞多孔質チューブの内部を通る。機械は透析液を産生し、透析液は空洞多孔質チューブの外側に拍出される。圧力勾配により、過剰な水は血液から膜の孔を通り、透析液に引き込まれて除去される。拡散および浸透により、老廃物および毒素は孔を通って透析液に入り、除去される。清浄された血液が患者に戻される。一回の血液透析治療中に、血液を透析するために大量の透析液、例えば約120リットルが消費される。HDは数時間続き、一般に週約3〜4回、治療センターにおいて行われる。
【0005】
PDは、カテーテルを介して患者の腹膜腔に注入される透析溶液または「透析液」を使用する。透析液は、腹膜腔の腹膜に接触する。老廃物、毒素および過剰な水は、拡散および浸透により患者の血流から腹膜を通り、透析液に入る。つまり、浸透勾配は膜全体で生じる。使用済みの透析液を患者から排出し、老廃物、毒素および過剰な水を患者から除去する。このサイクルを繰り返す。
【0006】
持続的携帯型腹膜透析(「CAPD」)、自動腹膜透析(「APD」)、潮流APDおよび連続流腹膜透析(「CFPD」)を含む多様な種類のPD治療がある。CAPDは、手動の透析治療である。患者は、埋め込まれたカテーテルをドレインに手動で接続し、使用済みの透析液を腹膜腔から排出できる。患者は、次にカテーテルを未使用の透析液のバッグに接続し、カテーテルを通じて未使用の透析液を自身に注入する。患者は、未使用の透析液バッグからカテーテルを外し、透析液を腹膜腔内に滞留させることができる。ここで、老廃物、毒素および過剰な水の移動が生じる。対のバッグセットの導入は、排液ラインおよび未使用の透析液バッグを「Y字状にする」ことにより、着脱回数を削減した。それにもかかわらず、手動のPDは、膨大な時間と患者の努力を必要とし、改善の余地が多く残る。滞留期間の後、患者は、手動の透析手順を繰り返す。例えば、1回約1時間の治療を1日に4回繰り返す。
【0007】
APDは、透析治療が排液、充填、および滞留サイクルを含む点においてCAPDと類似している。しかしAPD機械は、通常、患者が眠っている間に自動でサイクルを行う。
APD機械の場合、患者は手動で治療サイクルを行う必要がなく、昼間にサプライを輸送する必要がない。APD機械は、埋め込まれたカテーテル、未使用の透析液源またはバッグ、および液体ドレインと流体連通する。APD機械は、未使用の透析液を透析液源からカテーテルを通じて患者の腹膜腔に拍出し、透析液を腔内に滞留させ、老廃物、毒素および過剰な水の移動を生じさせることができる。源は、複数の滅菌透析液バッグであってもよい。
【0008】
APD機械は、使用済みの透析液を腹膜腔からカテーテルを通じてドレインに押し出す。手動プロセスと同様に、APD中にいくつかの排液、充填および滞留サイクルが生じる。「最終充填」は、CAPDおよびAPDの最後に生じ、次回の治療まで患者の腹膜腔内に残る。
【0009】
CAPDおよびAPDはいずれも、使用済みの透析液をドレインに送るバッチタイプのシステムである。潮流システムは、修正されたバッチシステムである。潮流を用いて、長い時間をかけて患者から液体をすべて除去する代わりに、液体の一部を除去し、わずかな増分時間後に置換する。
【0010】
連続流、またはCFPDシステムは、使用済みの透析液を清浄または再生することにより、CAPDまたは従来のAPDと比較して少量の透析液を消費する。再生システムは、ループを通じて液体を患者に注入および排出する。透析液は、1つのカテーテルルーメンを通って腹膜腔に流入し、別のカテーテルルーメンから出る。患者から出る液体は、例えば炭素フィルタ、およびウレアーゼを採用して酵素的に尿素をアンモニアに変換する尿素除去カラムを介して、透析液から老廃物を除去する再構成装置を通過する。次に、アンモニアを吸着により透析液から除去した後、透析液を腹膜腔に再導入する。追加のセンサを採用し、アンモニアの除去を監視する。CFPDシステムは、一般にバッチシステムよりも複雑である。
【0011】
多くのPDシステムは、重力を使用して充填および排液する。Brandesらにより開示された患者データは、充填サイクル中の流量が比較的一定であり、患者の体位(臥位流量が座位流量より多い)および供給バッグの絶対ヘッド高に関連することを示す。しかし、排液サイクルは、通常充填サイクルの2倍の長さであり、時間との真数関係がある。排液サイクルにおいて、腹膜内容量の約80%が、総排液時間の最初の40%以内に排出される。同様の結果は、Amiciらによる患者データおよびBaxter’s HomeChoiceおよびQuantum PD循環装置の患者実験からも得られる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
重力充填および排液の流量は、患者の腹膜までのヘッド高、カテーテルの種類(抵抗)、チューブセットの種類等含む、いくつかの物理パラメータの関数である。充填および排液の問題を克服するため、最新式のAPD機械にはポンプを使用して充填および排液するものもある。ポンプは、能動的な液体送達を提供するが、複雑性とコストが増す。したがって、異なる種類のAPDシステムの望ましい側面を併せ持つ、比較的低コストのPD機械を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
重力透析液送達とポンプ式透析液送達の利点を併せ持つ腹膜透析(「PD」)システムについて以下に説明する。具体的には、好適な一実施形態において、重力を使用して患者に充填する一方、真空源またはポンプを使用して患者から排液する。真空源は、例えば、0〜−1.5psigの範囲で可変であってもよい。真空源により、患者は床、排液バッグの下、またはそれ以外の重力による適切な排液流が可能でない高さで眠ることができる。
【0014】
主要な一実施形態において、システムはスタンドを含む。ヒータプレートがスタンドの頂部に位置する。ヒータプレートは、1つ以上の供給バッグ、例えば、1つ以上の供給バッグおよび最終バッグ(次の自動治療までの間、患者の体内に残る透析液の量を保持する)を支持および加熱する。スタンドは調節可能であり、供給バッグが患者より上で適切な位置、例えば36インチに支持されるようにする。ラインまたはチューブは、各供給バッグから弁、例えば多岐ピンチ弁に延在する。ピンチ弁は、真空源により動作される。制御装置は、真空源シーケンスを操作する。一実施形態において、制御装置は、マイクロプロセッサおよびメモリを含み、真空源を制御する。また制御装置は、排液コンテナに連結されるロードセルまたはひずみゲージから信号を受信する。これは、一般に排出された液体の容量と充填された液体の容量との差であると考えられる、限外ろ過液を監視および制御するために行う。
【0015】
患者ラインは、多岐弁から延在する。患者ラインは、その遠位端において、患者に埋め込まれた輸送セットおよびカテーテルに接続するコネクタを含む。また排液ラインも多岐弁から延在する。排液ラインは、硬質コンテナ等の再利用可能な排液コンテナに接続される。真空ラインは、硬質コンテナから真空源に延在する。一実施形態において、真空ラインは、使用済みの液体が排液コンテナ内で上昇するレベルよりも高い位置にある。この構成において、液体は真空ラインに到達できないため、排液コンテナからの使用済みの液体が真空源に至り、真空源を損傷する可能性をなくす。またこの目的で、排液コンテナと排液ラインとの間にあるインターフェースに疎水性膜を配置してもよい。
【0016】
本第1の実施形態において、プライミングサイクルは以下のように生じる。患者は、患者ラインの端部を、その遠位端が実質的に供給バッグと同じ高さになるように配置する。例えば、ヒータまたはそのスタンドは、患者がプライミングのための患者ラインコネクタを掛けるためのフックを含んでもよい。制御装置は、供給バッグ、患者ラインおよび排液ラインのそれぞれに対する弁を開くように真空源を制御する。制御装置をプログラム化し、一定期間または特定容量(または重量)の液体が流れるまで弁を開いたまま維持し、過剰な未使用の液体をドレインに廃棄することなく、各ラインに液体でプライムされることを保証する。
【0017】
第1の実施形態において、排液サイクルを行い、例えば、前夜から患者の腹膜内に残留している使用済み最終バッグ容量の液体を最初に除去する。ここで制御装置は、真空源により排液弁および患者ライン弁を開き、すべての供給弁を閉じたまま維持する。また制御装置により、真空源は、排液ラインに接続される硬質排液コンテナに真空を引き寄せる。真空は、使用済みの透析液を患者の腹膜から多岐弁を通じて排液コンテナに引き込み、排液コンテナを重力により底面から上方に充填する。ロードセルおよび制御装置は、排液コンテナ内の液体の重量を測定する。時間の経過に伴う重量の変化も測定し、流量を特定する。流量をフィードバックとして使用し、排液コンテナに適用される真空の量を制御することにより、排液サイクルの流量を最適化できる。
【0018】
一実施形態における制御装置は、1つ以上の患者プロファイルを保存する。ここで可変真空源を修正し、患者の特定の生理的特徴に合わせて流量および圧力を最適化する。例えば、患者の腹膜が比較的充填されている場合は、真空源により液体を迅速かつ比較的一定して患者から除去するようにコントローラを設定できる。使用済みの液源は比較的豊富にあり、腹膜腔から容易に流れるため、比較的低い吸引圧力を使用してこれを行ってもよい。患者の腹膜が徐々に空になり、使用済みの液源が次第に減少するにつれ、液流は減速し始める。吸引圧力を下げ、患者の腹膜腔内の陰圧により患者に痛みを与えないようにしてもよい。吸引圧力は、例えば、−1.5〜−1.2psigまで下げてもよい。したがって、プロファイルを調節し、できる限り迅速、安全かつ快適に患者から排液する。
【0019】
次に、充填サイクルは以下のように生じる。制御装置は、真空源により排液弁および最初の供給バッグ弁を除く供給バッグ(最終バッグ)弁のそれぞれを閉じる。また制御装置は、真空源により患者ライン弁を開く。重力により、液体が最初の供給バッグから患者の腹膜に押し出される。供給バッグから患者までのヘッド高が流量を決定する。外径6mmx内径4mmのチューブを通るこの充填流は、24インチヘッド高下で200ml/分に達し、36インチヘッド高下で300ml/分に達し得る。
【0020】
その後、制御装置は、真空源により滞留期間の間すべての弁を閉じる。ここで、第1の供給の液体は患者の腹膜内に残留し、老廃物を吸収する。
【0021】
滞留後、次の排液サイクル等が生じる。次の充填サイクルでは、異なる供給バッグを使用する。最後の充填サイクルでは、最終バッグを使用する。最終バッグは、少量または大量の透析液を含んでもよく、次の治療セッションまで患者の腹膜内に滞留することが意図される。一実施形態において、各充填および最終バッグは、独自の専用制御弁を有する。
【0022】
第2の主要実施形態において、再度重力を使用して患者に充填し、真空を使用して患者から排液する。ここでシステムは、ナイトスタンド上、例えば患者より上、例えば患者から15〜40インチ上に配置される機械または制御装置を含む。ユニットの上部は、ロードセルおよびヒータパンを含む。デュアルチャンババッグは、ロードセル/ヒータパン上に配置される。ヒータパンの直上にある下側チャンバは、加熱コンテナまたは加温パウチであり、未使用の液体を供給バッグから受容する。上側チャンバは、一時的排液コンテナであり、真空源により患者の腹膜から拍出された使用済みの液体を受容する。デュアルチャンババッグの上側の一時的排液コンテナは、デュアルチャンババッグより下の高さにある屋内排水または最終排液コンテナと流体連通する。使用済みの液体は、デュアルチャンババッグから屋内排水に重力送液される。
【0023】
真空気密カバーは、デュアルチャンババッグの上に配置される。適切なガスケットおよびロック機構を提供し、カバーが装置に密閉され、ロードセルおよびヒータパンの周囲を密閉できるようにする。このようにして、真空をカバーの内側およびカバーの下にあるデュアルチャンババッグの外側に引き込んでもよい。カバーは、1つ以上の供給バッグ(最終バッグを含む)を支持するように構成される。
【0024】
デュアルチャンババッグは、一実施形態において弁部分を含む。例えば、未使用および使用済みのコンテナを形成するために使用される同一シートまたは層を使用し、弁チャンバおよび弁部分の液路を形成してもよい。または、同一シートまたは層を硬質のパスおよび弁形成部材と併用し、弁部分を形成してもよい。別の実施形態において、デュアルチャンババッグは、別個の弁カセットと流体連通する。いずれの場合においても、弁部分または弁カセットは、制御装置の弁作動部分で動作可能である。一実施形態における弁アクチュエータは、バネ作動で閉じ、(バネに逆らって)真空作動で開く。この構成において、電力損失または真空源が故障した際に、弁はフェイルセーフ様式で閉じる。
【0025】
本第2の実施形態において、プライミングサイクルは以下のように生じる。患者は、患者ラインの端部を、その遠位端が真空気密カバーの上部にある1つ以上の供給バッグと実質的に同じ高さになるように配置する。例えば、カバーは、患者がプライミングのための患者ラインコネクタを掛けるためのフックを含んでもよい。制御装置は、真空源を制御し、デュアルチャンババッグの未使用のコンテナに対する弁および患者ラインに対する弁が開くようにする。制御装置をプログラム化し、一定期間または特定容量の液体が流れるまで弁を開いたまま維持し、未使用のコンテナおよび患者ラインに液体でプライムされることを保証する。デュアルチャンババッグの重量を測定および記録する。
【0026】
次に、前夜から残る患者の最終バッグ充填からの排液が生じる一方、プライムによるデュアルチャンババッグの未使用のコンテナにおける充填容量を加熱する。ここで制御装置は、真空源により(i)複数の弁を開き、使用済みの液体が患者からデュアルチャンババッグの使用済みコンテナに流れるようにする(計量用)、また(ii)例えば、真空気密カバーの下、−1.5psigで、デュアルチャンババッグの一時的使用済みコンテナと患者との間のヘッド高差に逆らって、最終バッグの使用済みの液体を患者から引き抜く。患者から引き抜かれた液体の容量を計量および記録する。
【0027】
未使用の液体が望ましい温度に加熱され、使用済み最終バッグの液体がすべて患者から抜かれると、計量器および制御装置は、デュアルチャンババッグ内にある液体の総合重量を記録する。次に、充填サイクルが始まり、加熱された未使用の液体が患者に重力送液される。ここで制御装置は、真空源により1つ以上の弁を開き、加熱された液体をデュアルチャンババッグの未使用のコンテナから患者の腹膜に重力送液できるようにする。
【0028】
デュアルチャンババッグの未使用のコンテナから患者へのラインは、バッグの底面に位置し、加熱された液体からの空気が、未使用のコンテナの上部まで上昇し、加熱された未使用の液体のみが未使用のコンテナから患者に流れるようにする。代替実施形態において、未使用のコンテナと連通する統合空気分離チャンバが提供され、加熱された液体からの空気を収集する。液体が加熱された供給バッグを出る際に、計量器またはロードセルは、患者に送達された液体の量を計量および記録する。これは、前述の二重充填の総合重量からのデュアルチャンババッグにおける重量の損失と見なされる。プログラム化された容量の液体が患者に送達されるか、または計量器が重量の減少を感知しなくなると、充填サイクルにおける患者充填部分が完了し、1つ以上の弁が閉じて、デュアルチャンババッグに残留する重量が計量器および制御装置により記録される。制御装置は、排液および充填サイクルの両方に関して、計量前後の重量を差し引くことにより、排液および充填容量を計算する。
【0029】
充填サイクルにおける患者への充填部分が完了した後に、制御装置は、真空源により少なくとも患者弁および排液弁を滞留期間の間閉じる。ここで、第1の供給の液体が患者の腹膜内に残留し、拡散および浸透により老廃物を吸収できる。滞留期間中に、制御装置は、真空源により1つ以上の弁を開き、同一または異なるデキストロース供給バッグからの液体をデュアルチャンババッグの未使用のコンテナに補充し、次の患者への充填サイクル用に事前加熱できるようにする。重量の増加を再度記録する。まだ起こっていなければ、制御装置は真空源により、1つ以上の弁を開き、最初の使用済み最終バッグの液体をデュアルチャンババッグの一時的排液チャンバから最終排液コンテナまたは屋内排水に重力送液できるようにもする。
【0030】
滞留後に、次の排液サイクルが生じる。ここで、真空源により使用済みの液体が患者からヘッド高差に逆らってデュアルチャンババッグの一時的使用済みコンテナに引き抜かれる。一時的使用済みコンテナに到達する液体による重量の増分獲得を記録する。第1の充填の使用済みの液体が患者から拍出されるとすぐに、新しく加熱された未使用の液体をデュアルチャンババッグの未使用のコンテナから患者に重力送液してもよい。重量の増分損失を第2の充填容量として記録する。供給バッグが処方された充填容量を含む場合は、記録および処方された容量は互いをダブルチェックする働きをする。
【0031】
次に、第2の滞留期間が始まり、上述のプロセスを繰り返す。最終バッグ容量の未使用の透析液が徐々に患者に送達され、翌日または翌晩に次の治療が開始されるまで、患者の体内に滞留できる。
【0032】
主要な実施形態を実施し、完全な充填、滞留および排液サイクルを行うか、または例えば潮汐モードタイプの様式で、同様のサイクルを部分的に行ってもよい。最後に、患者から除去された液体の量と患者に送達された液体の量との差を計算し、その差は限外ろ過液またはUFを表す。治療の最後に、患者が自身の「乾燥重量」に至るようにUF治療処方を設定する。24時間UF計算は、前夜からの最終バッグの容量を使用するため、2回の治療の充填および排液を含む。
【0033】
したがって、本明細書に記載する実施形態の利点は、改良された透析システムを提供することである。
【0034】
本明細書に記載する実施形態の別の利点は、床または最も低くは地面で眠る患者に重力充填透析システムを提供することである。
【0035】
本明細書に記載する実施形態のさらなる利点は、簡易空気力学および/または水力学を採用する重力充填透析システムを提供することである。
【0036】
本明細書に記載する実施形態のさらに別の利点は、簡易化した使い捨て可能なセットまたは装置を採用する重力充填透析システムを提供することである。
【0037】
本明細書に記載する実施形態のさらなる利点は、異なる治療方法に適合できる重力充填透析システムを提供することである。
【0038】
本明細書に記載する実施形態のさらに別の利点は、比較的患者に優しい重力充填透析システムを提供することである。
【0039】
本明細書に記載する実施形態のさらに別の利点は、最大流量を実現し、最大滞留時間およびクリアランスを可能にする重力充填透析システムを提供することである。
【0040】
さらに、本明細書に記載する実施形態の利点は、重力充填、真空排液透析システムを提供することである。
【0041】
本発明の追加の特徴および利点は、以下の発明を実施するための最良の形態および図面に記載され、それらから明らかになるであろう。
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
供給バッグと、
該供給バッグを支持するように構成された装置であって、該供給バッグは患者の腹膜腔より上に位置する、装置と、
真空源と、
該患者に接続されるように構成された患者ラインと、
ドレインに接続されるように構成された排液ラインと、
(i)充填サイクル中に、未使用の透析液を該供給バッグから該患者ラインを通じて該腹膜腔に重力送液すること、および(ii)排液サイクル中に、該真空源により使用済みの透析液が該腹膜腔から該排液ラインを通じて該ドレインに抜けることを可能にするように構成された論理インプリメンタと
を備える、腹膜透析機。
(項目2)
前記未使用の透析液を前記供給バッグ中で加熱するように構成および配置されたヒータを含む、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目3)
前記論理インプリメンタは、(i)プライムサイクル中に、未使用の透析液を前記供給バッグから前記患者ラインの遠位端に重力送液すること、(ii)滞留サイクル中に、透析液を前記腹膜内に一定期間維持すること、および(iii)前記充填および排液サイクルを少なくとも1回繰り返すことのうちの少なくとも1つを可能にするようにさらに構成される、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目4)
前記論理インプリメンタは、(i)前記患者ラインを開閉するように動作可能な患者ライン弁、および(ii)前記排液ラインを開閉するように動作可能な排液ライン弁のうちの少なくとも1つを制御するように構成される、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目5)
前記弁のうちの少なくとも1つは、前記真空源により動作される、項目4に記載の腹膜透析機。
(項目6)
前記真空源を収容するエンクロージャを含み、該エンクロージャは、前記論理インプリメンタで動作可能なユーザ−マシンインターフェースを提供する、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目7)
前記供給バッグ支持装置は、(i)前記エンクロージャも支持するスタンドを含むか、(ii)該エンクロージャの頂部であるか、または(iii)該エンクロージャから離間したヒータを支持するように構成される、項目6に記載の腹膜透析機。
(項目8)
(i)前記真空源で動作可能な少なくとも1つのソレノイド弁と、
(ii)前記供給バッグおよび前記排液バッグのうちの少なくとも1つを計量するように構成されたロードセルと、
(iii)前記患者ラインおよび前記排液ラインのうちの少なくとも1つと流体連通する使い捨て可能なカセットと、
(iv)該患者ラインおよび該排液ラインのうちの少なくとも1つを開閉するように動作可能な弁アクチュエータと、
(v)該患者ライン、該排液ラインおよび該真空源のうちの少なくとも1つの圧力を感知するように構成および配置された少なくとも1つの圧力センサと
を含む群から選択された少なくとも1つの他の構成要素を含む、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目9)
前記ドレインは、(i)再利用可能なコンテナまたは(ii)使い捨て可能なバッグを含む、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目10)
前記真空源は、前記ドレインと空気連通し、前記論理インプリメンタは、該真空源が該ドレインに陰圧を印加することにより、前記排液サイクル中に、前記使用済みの透析液が前記腹膜腔から抜けるように構成される、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目11)
前記真空源は、前記ドレインを囲むチャンバと空気連通し、前記論理インプリメンタは、該真空源が該チャンバに陰圧を印加することにより、前記排液サイクル中に、前記使用済みの透析液が前記腹膜腔から抜けるように構成される、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目12)
前記患者ラインを通じて前記腹膜腔に未使用の透析液を重力送液するように構成された複数の供給バッグを含む、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目13)
充填バッグを含み、前記論理インプリメンタは、前記充填サイクル後に、該充填バッグから前記供給バッグを補充するように構成される、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目14)
前記論理インプリメンタは、前記排液サイクル中に、前記真空源を制御し、透析液を前記腹膜腔から異なる流速で除去できるように構成される、項目1に記載の腹膜透析機。
(項目15)
供給バッグと、
該供給バッグを支持するように構成された装置であって、該供給バッグは患者の腹膜腔より上に位置する、装置と、
該患者に接続されるように構成された患者ラインと、
ドレインに接続されるように構成された排液ラインと、
該ドレインと空気連通する真空源と、
(i)充填サイクル中に、未使用の透析液を該供給バッグから該腹膜腔に重力送液すること、および(ii)排液サイクル中に、該真空源が該ドレインに陰圧を印加することにより、使用済みの透析液が該腹膜腔から該排液ラインを通じて該ドレインに抜けることを可能にするように構成された論理インプリメンタと
を備える、腹膜透析機。
(項目16)
前記論理インプリメンタは、(i)プライムサイクル中に、未使用の透析液を前記供給バッグから前記患者ラインの遠位端に重力送液すること、(ii)滞留サイクル中に、透析液を前記腹膜内に一定期間維持すること、および(iii)前記充填および排液サイクルを少なくとも1回繰り返すことのうちの少なくとも1つを可能にするようにさらに構成される、項目15に記載の腹膜透析機。
(項目17)
前記論理インプリメンタは、(i)前記患者ラインを開閉するように動作可能な患者ライン弁、および(ii)前記排液ラインを開閉するように動作可能な排液ライン弁のうちの少なくとも1つを制御するように構成される、項目15に記載の腹膜透析機。
(項目18)
前記供給バッグ支持装置は、(i)前記真空源および前記論理インプリメンタのうちの少なくとも1つを収容するエンクロージャ、および(ii)前記供給バッグを加熱するように構成および配置されたヒータのうちの少なくとも1つをさらに支持する、項目15に記載の腹膜透析機。
(項目19)
(i)前記真空源で動作可能な少なくとも1つのソレノイド弁と、
(ii)前記ドレインを計量するように構成されたロードセルと、
(iii)前記患者ラインおよび前記排液ラインのうちの少なくとも1つと流体連通する多岐弁と、
(iv)該患者ライン、該排液ラインおよび該真空源のうちの少なくとも1つの圧力を感知するように構成および配置された少なくとも1つの圧力センサと
を含む群から選択された少なくとも1つの他の構成要素を含む、項目15に記載の腹膜透析機。
(項目20)
前記ドレインは、(i)印加された陰圧に耐えるように構成された密閉構造、および(ii)透析液ではなく空気を該ドレインから前記真空ラインに流すことができるフィルタのうちの少なくとも1つを含む、項目15に記載の腹膜透析機。
(項目21)
前記患者ラインを通じて前記腹膜腔に未使用の透析液を重力送液するように構成された複数の供給バッグを含む、項目15に記載の腹膜透析機。
(項目22)
前記論理インプリメンタは、前記排液サイクル中に、前記真空源を制御し、透析液を異なる流速で前記腹膜腔から除去できるように構成される、項目15に記載の腹膜透析機。
(項目23)
未使用の透析液コンテナと、
該未使用のコンテナを支持するように構成された装置であって、該未使用のコンテナは患者の腹膜腔より上に位置する、装置と、
該患者に接続されるように構成された患者ラインと、
使用済みの透析液コンテナと、
該使用済みコンテナを囲むチャンバと空気連通する真空源と、
(i)充填サイクル中に、未使用の透析液を該未使用のコンテナから該患者ラインを通じて該腹膜腔に重力送液すること、および(ii)排液サイクル中に、該真空源が該チャンバに陰圧を印加し、使用済みの透析液が該腹膜腔から該使用済みコンテナに抜けることを可能にするように構成された論理インプリメンタと
を備える、腹膜透析機。
(項目24)
前記論理インプリメンタは、(i)プライムサイクル中に、未使用の透析液を前記未使用のコンテナから前記患者ラインの遠位端に重力送液すること、(ii)滞留サイクル中に、透析液を前記腹膜内に一定期間維持すること、および(iii)前記充填および排液サイクルを少なくとも1回繰り返すことのうちの少なくとも1つを可能にするようにさらに構成される、項目23に記載の腹膜透析機。
(項目25)
前記未使用および使用済みのコンテナは、患者ライン弁座および排液ライン弁座のうちの少なくとも1つを有する使い捨て可能な弁部分に流体連結される、項目23に記載の腹膜透析機。
(項目26)
前記未使用および使用済みのコンテナは、前記チャンバより下に収容されたデュアルチャンババッグの一部として構成される、項目23に記載の腹膜透析機。
(項目27)
前記未使用および使用済みのコンテナは、別個の供給バッグおよび排液バッグとして構成される、項目23に記載の腹膜透析機。
(項目28)
前記支持装置は、前記論理インプリメンタに動作可能に接続されたヒータパンおよびロードセルのうちの少なくとも1つを含む、項目23に記載の腹膜透析機。
(項目29)
前記未使用のコンテナが前記ヒータパン上に配置されるように構成される、項目28に記載の腹膜透析機。
(項目30)
前記使用済みコンテナが前記未使用のコンテナの上に配置されるように構成される、項目29に記載の腹膜透析機。
(項目31)
(i)前記真空源で動作可能な少なくとも1つのソレノイド弁と、
(ii)前記未使用のコンテナおよび前記使用済みのコンテナのうちの少なくとも1つを計量するように構成されたロードセルと、
(iii)前記患者ラインおよび前記排液ラインのうちの少なくとも1つを開閉するように動作可能な弁アクチュエータと、
(iv)該患者ライン、該排液ライン、および該真空源のうちの少なくとも1つの圧力を感知するように構成および配置された少なくとも1つの圧力センサと
を含む群から選択された少なくとも1つの他の構成要素を含む、項目23に記載の腹膜透析機。
(項目32)
充填バッグを含み、前記論理インプリメンタは、前記充填サイクル後に、該充填バッグから前記未使用のコンテナを補充するように構成される、項目23に記載の腹膜透析機。
(項目33)
前記使用済みコンテナに流体接続されるドレインを含む、項目23に記載の腹膜透析機。
(項目34)
前記論理インプリメンタで動作可能な計量器を含み、該計量器は、(i)前記充填サイクル中に送達される未使用の透析液の量、および(ii)前記排液サイクル中に戻される使用済みの透析液の量のうちの少なくとも1つを感知するように構成される、項目23に記載の腹膜透析機。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】図1は、重力および真空により駆動される自動腹膜透析システムの一主要実施形態の斜視図である。
【図2】図2は、図1に示されるシステムの使い捨て可能な部分、弁、真空ライン、電気ライン、制御装置および制御スキームの一実施形態の概略図である。
【図3】図3は、図1に示されるシステムのヒータおよび関連スタンドの一実施形態の斜視図である。
【図4】図4は、重力および真空により駆動される自動腹膜透析システムと併用されるマルチチューブ弁アクチュエータの一実施形態の斜視図である。
【図5】図5は、2人の患者に関して排出された液体の容量を排液サイクルの時間と対比して示す図である。
【図6】図6は、重力および真空により駆動される自動腹膜透析システムの第2主要実施形態の立面図である。
【図7A】図7Aは、統合ヒータおよびロードセルを備える図6のシステムの制御装置の一実施形態の正面立面図である。ここでシステムの真空気密カバーは除去されている。
【図7B】図7Bは、統合ヒータおよびロードセルを備える図6のシステムの制御装置の一実施形態の平面図である。ここでシステムの真空気密カバーは除去されている。
【図8A】図8Aは、真空気密カバーを適所に備えて示される図7Aの装置の正面立面図である。
【図8B】図8Bは、真空気密カバーを適所に備えて示される図7Bの装置の平面図である。
【図9】図9は、図6に示されるシステムの弁部分および関連チューブを含む、使い捨て可能な重量/供給バッグの一実施形態の上面図である。
【図10】図10は、図9の使い捨て可能な重量/供給バッグ、弁およびチューブの側面図である。
【図11】図11は、図6のシステムの第2主要実施形態の一機械構成を説明する。
【図12】図12は、図6のシステムの第2主要実施形態の一機械構成を説明する。
【図13】図13は、図6のシステムの第2主要実施形態の一機械構成を説明する。
【図14】図14は、図6のシステムの第2主要実施形態の一機械構成を説明する。
【図15】図15は、第2主要実施形態と併用できる使い捨て可能なセットを説明する。
【図16】図16は、第2主要実施形態の代替配置のセットアップシーケンスにおけるステージを説明する。
【図17】図17は、第2主要実施形態の代替配置のセットアップシーケンスにおけるステージを説明する。
【図18】図18は、第2主要実施形態の代替配置のセットアップシーケンスにおけるステージを説明する。
【図19】図19は、第2主要実施形態の代替配置のセットアップシーケンスにおけるステージを説明する。
【発明を実施するための形態】
【0043】
ここで図1〜3を参照し、自動腹膜透析(「APD」)システムの第1主要実施形態をシステム10により説明する。システム10は、実施形態において、比較的強く、軽量かつ低コストの金属または硬質プラスチックで形成される調節可能なスタンド12を含む。スタンド12は、例えば、アルミニウム、スチールまたは金属とプラスチックの任意の組み合わせであってもよい。調節可能なスタンド12は、内側チューブまたはステム14を含む。内側チューブまたはステム14は、外側チューブ16内をスライドするサイズである。患者または介護者は、外側チューブ16に対して内側チューブ14を上下に移動させて望ましい位置に移動することにより、スタンド12の全高を設定する。その後、患者または介護者は、適切なロック機構18により、外側チューブ16に対して内側チューブを適所にロックする。外側チューブ16は、脚20のセットに締め付けられ、溶接され、または一体形成され、脚20のセットは、チューブ14および16ならびにそこに接続される装置を保持し、平衡を保つ。キャスタまたはホイール22は、脚20の端部に連結され、システム10を容易に操作できるようにする。1つ以上のキャスタ22は、システム10を望ましい位置にロックするためのロック機構を有してもよい。
【0044】
図3において詳細に見られるように、内側チューブ14は、薬液ヒータ30に接続され、それを支持する。薬液ヒータ30は、1つ以上の薬液供給バッグ内の液体の加熱に適切な任意の熱伝達モードを使用してもよく、例えば、抵抗プレート加熱、放射加熱、対流加熱、およびそれらの任意の適切な組み合わせを含む。例示的実施形態におけるヒータ30は、ふた32および基部34を有するクラムシェル構造を含む。実施形態において、ヒータ要素および関連する加熱は、基部34内に位置する。代替として、要素または加熱パッドは、ふた32内に位置する。さらなる代替として、加熱要素またはパッドは、ふた32および基部34の両方に位置する。
【0045】
例示的実施形態において、ヒータ30は、一対の供給バッグ24aおよび24bを保持するサイズおよび構成であり、第1の供給バッグ24aが第2の供給バッグ24bの上に位置するようにする。代替として、単一の供給バッグを提供する。さらなる代替として、3つ以上の供給バッグ24(供給バッグ24a、24b等を集合的に意味する)を提供する。供給バッグ24の1つは、治療の最後に、次回の治療まで患者の腹膜に残留する最終バッグ容量の液体を保持する最終バッグであってもよい。ヒータ30は、代替として横に並んだ2つの供給バッグと、2つの下のバッグの上かつそれらの間に配置される任意の第3のバッグを保持してもよい。
【0046】
図示されるように、基部34は、1つ以上の開口および/またはノッチ36を画定する。開口36により、供給チューブ26aおよび26bは、供給バッグ24aおよび24bからそれぞれ延在することができる一方、ふた32および基部34はともに、バッグ24aおよび24bの周囲をしっかりと閉合できる。この構成は、チューブ26aおよび26bがひだになるのを防止することを助ける。
【0047】
図2に見られるように、供給バッグ24aおよび24bは、温度検知装置38を密閉様式で受容するように構成された1つ以上のポート28を含むか、または画定してもよい。温度検知装置38は、サーミスタ、熱電対または抵抗温度装置(「RTD」)センサ等の任意の適切な装置であってもよい。例示的実施形態において、温度検知装置38は、加熱された透析液の温度を直接測定する。つまり、温度検知装置38は、実際に透析液に接触する。代替実施形態において、温度検知装置38は、例えばふた32および基部34の1つ以上の内面上に位置し、代わりにバッグ材料に接触する。ここでバッグ材料の温度は、時間とともに透析液の温度に達すると仮定される。代替として、バッグと透析液の温度にわずかな差が常に存在する場合は、その差を判断して補正する。
【0048】
図1は、外側チューブ16が制御装置40を支持することを示す。制御装置40は、液晶ディスプレイ(「LCD」)またはその他の適切な種類のディスプレイ等のビデオモニタ42を含む。実施形態におけるビデオモニタ42は、タッチスクリーンオーバーレイ(図示せず)で動作し、オペレータがコマンドを制御装置40に入力できるようにする。代替として、制御装置40は、オフスクリーン入力装置44を含む。これは、膜スイッチ、ノブ、プッシュボタンまたはその他の種類の電気機械的入力装置であってもよい。
【0049】
図2に見られるように、ビデオモニタ42および入力装置44は、1つ以上のプリント基板46により接続および制御され、プリント基板46は、数ある構成要素の中で、ランダムアクセスメモリ(「RAM」)、読み取り専用メモリ(「ROM」)46b、マイクロプロセッサ46cおよび電源46dを含む。コードおよびデータは、当該技術分野において知られているように、ROM46bおよびRAM46a上に保存される。プロセッサ46cは、RAM46aおよびROM46bと協働し、例えば、ヒータ30の制御、限外ろ過液除去の制御、および電気ソレノイド48a〜48eを介したシステム10の弁の制御等のシステム10の各機能を制御する。代替または追加として、制御装置40は、特定用途向け回路(「ASIC」)、半導体継電器、MOSFET等を使用し、それらの機能を制御する。電源46dは、必要な電力(量および種類)をソレノイド48a〜48eおよびヒータ30に提供する。システム10が異なる種類または範囲の電力を必要とする構成要素を含む程度まで、電源46d等の電源を複数提供してもよい。
【0050】
ソレノイド48a〜48dは、それぞれ真空ライン66a〜66eを介し、多岐弁アセンブリ50の弁52a〜52dをそれぞれ制御する。実施形態における弁アセンブリ50は、弁52(弁52a〜52dを集合的に意味する)のチャンバを画定または提供するハウジング54を含む。ハウジング54は、必要に応じてプラスチックまたは金属で形成されてもよい。弁アセンブリ50は、制御装置40のハウジングに取り付けられる、または統合されてもよい。
【0051】
図4は、多岐弁アセンブリ50の適切な一構成を説明する。ここで弁アセンブリ50は、制御装置110の扉に統合される特注製造のアセンブリであり、チューブセット(図15)を治療用に装填できる。弁アセンブリ50は、6つのピンチ弁52a〜52dを提供する(図2では4つのみが使用される)。バネ72は、弁頭を押してチューブを締めて閉じる。真空を適用し、バネ76を圧縮して液路を開く。図4において、ソレノイド48a〜48fは、多岐弁アセンブリ50とともに載置される。ソレノイド48a〜48fは、図2に関連して以下に記述されるように動作する。
【0052】
図2において、多岐弁アセンブリ50は、供給ライン26aおよび26b、患者ライン56(患者に連結されるポートに接続され、患者ポートは、患者の体内で患者の腹膜腔まで延在するカテーテルと流体連通する)で直接動作する。第4の排液ライン58は、弁アセンブリ50内の多岐接続部から排液コンテナ60に走行する。
【0053】
排液コンテナ60は、排液ライン58に連結される使用済みの液体入口62aを含む。また排液コンテナ60は、第5の真空ライン66eに連結される使用済みの液体出口62bも含む。疎水性膜64が、一実施形態において、排液コンテナ60の出口62b内に配置され、使用済みの液体が真空ライン66eに入るのを防ぐ。また図2に見られるように、排液コンテナ60の入口62aおよび出口62bは、排液コンテナ60の上部に高い位置で配置され、入口62aに入る使用済みの液体が重力により排液コンテナ60の底面に落下し、排液コンテナを上方に充填する傾向がある。したがって、排液コンテナ60自体の構成は、使用済みの透析液が真空ライン66eに入るのを防ぐ傾向がある。
【0054】
真空源70は、真空マニホールド72を介し、ソレノイド48a〜48eの入口端に接続される。真空源70およびマニホールド72は、真空源70に電源が投入されている間、ソレノイド48a〜48eの入口端で陰圧を維持するように構成される。一実施形態における真空源70は、真空レギュレータおよび真空ポンプを含み、それらを総合して多様な真空出力を提供し、0psig〜最大−1.5psigおよびそれ以上の陰圧を弁52a〜52dおよび排液コンテナ60に供給できる。真空源70に適切な真空レギュレータの1つは、SMC Corporation of America(Indianapolis,Indiana)により提供されるITV209モデル電子真空レギュレータである。レギュレータは、一実施形態において、真空ポンプの上流に配置される。
【0055】
図2で例示される実施形態において、弁52a〜52dは、バネ負荷のフェイルセーフ弁である。弁52a〜52dは、それぞれプランジャ74を含む。プランジャは、バネ76を介して圧縮され、患者ライン56、排液ライン58、供給ライン26aおよび供給ライン26bをそれぞれ締め、または閉じる。それらのラインのうちの1つ以上を開くには、真空または陰圧を弁源70、マニホールド72、1つ以上の電気動作ソレノイド48a〜48eの開口、および適切な真空ライン66a〜66dに適用する。弁52a〜52dは、電力または真空を喪失した場合に、バネ76により各プランジャ74がそれぞれのチューブまたはラインを閉じ、未使用または使用済みの透析液がそれ以上流れないようにするため、フェイルセーフであると言われている。
【0056】
PCB46は、実施形態において、それぞれ電気ライン78a〜78eを介してオン/オフ電気信号をソレノイドに送ることにより、電気動作ソレノイド48a〜48eを制御する。コントローラまたはPCB46上に保存されるプログラムにより、電気信号が1つ以上のソレノイド弁48a〜48eを適切な時間に開き、望ましい真空流路を確立し、および/または排液コンテナ60上に真空を引き込む。
【0057】
図1および2に見られるように、排液コンテナ60は、スケール80により支持される。スケール80は、ロードセルまたはひずみゲージ84を介し、機械グラウンド82に順に接続される。ロードセルまたはひずみゲージ84は、信号ライン86aを経由して信号をコントローラまたはPCB46に送信する。ひずみゲージ84からの信号は、例えば、可変4〜20ミリアンプまたは0〜10VDC信号であってもよく、真空により排液コンテナ60に引き込まれた使用済み液体の量に応じて異なる。ひずみゲージが衝突すると、符号付きの不正重量が一時的に生じる。コントローラまたはPCB46は、これらの異常に対応するそのソフトウェアに平均化ルーチンを含んでもよい。加速度計をロードセルに取り付け、ロードセルが衝突した場合にコントローラが認識するようにしてもよい。次に、異常な読み取り値を平均化ルーチンから除外する。また同様の可変信号を、温度測定装置38からそれぞれライン86bおよび86cに沿って、コントローラまたはPCB46に送信する。またコントローラ46は、入力信号ライン86dを経由し、手動で動作する入力装置44から入力(例えば、オン/オフ)を受信する。
【0058】
出力端上で、ソレノイド48a〜48eのそれぞれに対する出力ライン78a〜78e(例えば、オン/オフ)に加え、コントローラ46は、可変信号を介し、出力ライン88aに沿って可変真空源70を制御する。コントローラ46は、可変信号を介し、出力ライン88bに沿ってヒータ30に対する出力をさらに制御する。別の実施形態において、ヒータ30への出力は、オン/オフタイプの出力であり、ヒータ30のデューティサイクルを制御する周波数が異なる。
【0059】
システム10の制御装置40は、患者の腹膜腔から液体を除去する速度を最適化するように構成される。ここで、排液コンテナ60内の液体の重量が時間とともに変化する割合は、ひずみゲージ82により信号ライン86aに沿ってコントローラ46に送信される信号の差を対応する時間の差で割ることにより決定する。この割合をコントローラ46に保存される最適な割合と比較してもよい。次に、コントローラ46から可変出力ライン88aに沿って可変真空源70に送信される信号を調節し、真空ライン66eに沿って排液コンテナ60に供給される真空の量を調節する。真空を調節し、ひずみゲージ84により測定された限外ろ過液重量の実際の変化率が、最適な排液または限外ろ過液除去率と一致するようにする。
【0060】
動作中に、システム10は、最初にプライミングサイクルを実行する。ここで患者ライン56の遠位端90は、供給バッグ24aおよび24bと少なくとも実質的に同一の高度レベルで固定される。図3は、それを行うための一実施形態を示す。クリップまたはラッチ92がヒータ30の基部34に固定され、患者ライン56の端部90を供給バッグ24aおよび24bの高さと実質的に同じ高さに保持するように構成される。患者が患者ライン56を上記のように固定した後、患者は入力44を押す。制御装置40が弁52a〜52dをそれぞれ適切なときに開かせることにより、未使用の透析液が供給ライン26aおよび26b、患者ライン56および排液ライン58のそれぞれを通じて流れ、それらのラインから空気を流し出すようにする。
【0061】
患者ライン56を通る液流は重力により駆動されるため、透析液は、供給バッグ24aおよび24bと同じ高さに配置された端部90より上を流れない。プライムサイクルは、一実施形態において、制御装置40のコントローラ46により、事前設定した期間または代替として事前設定した量の液体がチューブを通って流れたことが感知されるまで、弁52a〜52dが開かれ、その後、すべての弁が閉じるように構成できる。弁アセンブリ50におけるラインを閉鎖することにより、流体カラムの重量のために、ラインの遠位開口端、例えば排液ライン58の排液コンテナ60の入口62aから液体が流出することを防ぐ。ラインに使用されるチューブの内径が小さいため、空気が上昇してチューブに入り、流体カラムの重量により形成された真空を逃がすことを妨げる。さらに、閉じられた弁アセンブリは液漏れを防ぐ。
【0062】
プライムの後、一連の動作において、システム10は、初期排液シーケンスを行う。ここで、以前の治療から残留する使用済み透析液を最初に患者の腹膜腔から除去する。これを行うため、患者は、プライムされた患者ライン56の端部90をヒータ30のクリップ92から取り外す。患者は、当該技術分野において知られるように、患者に縫い込まれたポートに端部90を接続する。次に、患者は、治療を開始できることを示す入力44を押す。初期排液の場合、制御装置40のコントローラ46により、ソレノイド48aおよび48bを開く。対応する真空は、真空ライン66aおよび66bを経由して、弁52aおよび52bにそれぞれ供給され、それらの弁を開く(バネ力に対してそれらを引き近づける)。弁52cおよび52dには真空を供給せず、対応するバネ76により対応するプランジャ74が供給ライン26aおよび26bの両方を締め閉じるようにする。
【0063】
同時に、コントローラ46によりソレノイド48eを開き、順に真空ライン66eに沿って疎水性膜64を通り、排液コンテナ60のチャンバに真空を引き込むことができる。排液コンテナ60内の真空は、液体を患者の腹膜腔から患者ライン56を通じ、排液ライン58を経由してコンテナ60に引き込む。ここでコンテナの充填が開始する。上述のように、ひずみゲージ84からのフィードバックは、コントローラ46および可変真空源70と協働し、液体が患者から排液コンテナ60に引き抜かれる速度を最適化する。患者の排液は真空を通して行われるため、患者は、排液コンテナ60より低い高度レベル、同一レベル、または重力により効率的に患者から排液するには十分でないが、排液コンテナ60より高い高度レベルにあってもよい。
【0064】
一実施形態における排液サイクルは、患者の腹膜から排液コンテナ60への液流を最適化し、患者が快適な状態に維持されることを保証するプロファイルを使用して行う。これを行うため、一実施形態における容量測定値から排液流量を計算し、患者がいつ不快感を受けやすくなるかを判断する。例えば、プロファイルは、排液サイクルを2つの相に分け、一方を高流量相、他方を低流量相としてもよい。患者が低流量相に到達した場合は、そのような低流量で生じ得る不快感を考慮し、真空を調節する。
【0065】
排液サイクルの開始時に、比較的低い吸気圧力を使用し、高流量相を実施してもよい。これは、使用済みの液源が比較的豊富にあり、患者の腹膜腔から容易かつスムーズに流れるためである。患者の腹膜が徐々に空になり、また使用済みの液源が次第に減少するにつれ、排液流は減速し始める。図5は、排液流量の変化として当業者に理解される「ブレークポイント」の概念を示し、ブレークポイントは、腹膜が比較的空であることを示す。システム10は、次に吸気圧力を下げ、患者に痛みをもたらさないようにする。例えば、吸気圧力を−1.5psigから−1.2psigまで下げる。プロファイルをこのように調節し、できる限り迅速、安全かつ快適に患者から排液する。
【0066】
いつ低流量相が生じ、どれだけ排液流量が低下するかは、各患者で異なる可能性がある。例えば、ある患者は、充填容量の70%が排液された後に高流量相から低流量相に移行する可能性があるが、別の患者は、充填容量の90%が排液されるまで移行しない可能性がある。また低流量相に到達した場合に、第1患者の流量は、50ml/分以下に下がる可能性があるが、第2患者の流量は25ml/分以下に下がる可能性がある。
【0067】
図5のチャートは、患者の排液速度がどのように異なり得るかを説明する。ここで、2人の患者の初期排液速度は一定であり、排液サイクルの最初の10分は密接に推移する。この時点で残りの容量は約900mlであり、第1患者の排液速度は、約8分の「ムーブオン」タイムの間に著しく減速し、この時点で排液サイクルは、患者の腹膜内に約550mlの液体を残して停止する。一方、第2患者の場合、高い排液速度が約13.5分まで継続する。この時点で残りの容量は約300mlであり、第2患者の排液速度は、約5分の「ムーブオン」タイムの間に著しく減速し、この時点で排液サイクルは、患者の腹膜内に約150mlの液体を残して停止する。
【0068】
上述の患者の生理的特徴に基づき、排液の流量と容量の組み合わせに基づいて吸気圧力の移行を行う。また「ムーブオン」タイムを調節し、患者が使用済みの液体を最後の一滴まで排出しようとして治療滞留時間を過度に無駄にしないようにする必要がある。
【0069】
次に、第1の充填サイクルを実行する。一実施形態において、充填サイクルは、初期排液後に自動的に始まり、必要に応じて治療のこの期間中、患者が眠れるようにする。充填サイクルにおいて、制御装置40のコントローラ46によりソレノイド48cまたは48dのいずれかを開き、真空により供給ライン26aまたは26bのうちの1つをそれぞれの弁52cまたは52dを介して開くようにすることができる。またコントローラ46によりソレノイド48aを開き、真空により患者の弁52aを開くようにできる。次に、未使用の透析液は、供給バッグ24aまたは24bのうちの1つから、多岐弁アセンブリ50におけるインターフェースを通じ、患者ライン56を経由して患者の腹膜腔に流れるようになる。患者の充填における送液は重力により行われる。したがって、供給バッグ24aおよび24bは、チューブ14および16ならびにロック装置18を介して、最小でも患者の腹膜腔より上のヘッド高距離があるように、例えば腹膜腔から3フィート(0.9m)に設定する必要がある。供給ライン26aおよび26bならびに患者ライン56の内径が4mmであると仮定すると、透析液の重力送液流は200ml/分以上に達し、最高300ml/分に至る可能性もある。
【0070】
既知量の未使用の液体が患者に送達された後、滞留サイクルが生じ、ここで未使用の液体は患者の腹膜内に滞留する一方、拡散および浸透力により老廃物および過剰な水が患者から除去される。滞留期間は必要に応じて異なってもよいが、一般に透析治療処方に基づいて1〜2時間続く。滞留サイクルが生じた後、医師の処方に従い、上述の排液、充填および滞留サイクルを1回以上繰り返す。最終充填は、最終バッグを使用して行ってもよく、最終量の液体を患者に送達する。最終量の液体は、次回の治療が行われるまで患者の腹膜腔に残留する。またシステム10は、警告目的で使用される1つ以上の圧力および/またはフローセンサを含み、例えば、屈折または脱離したラインを検出する。圧力/フローセンサは、患者ライン、排液ライン、供給ラインおよび真空ライン/マニホールドのいずれかの少なくとも1つの圧力/フローを感知するように構成してもよい。
【0071】
治療の最後に、コンテナ60に収集された液体の総量がわかる。さらに、すべての液体が供給バッグから患者に送達されたと仮定し、供給バッグ24aおよび24bから送達された液体の総量もわかる。コンテナ60において、供給バッグ24から患者に送達された液体を超える追加重量の使用済み液体は、限外ろ過液として知られ、腎不全のために治療と治療の間に患者により維持される過剰な液体または水である。コンテナ60内の液体の大部分は、前回の治療の最終バッグまたは最終充填に由来するため、24時間の限外ろ過液容量は、前夜の最終充填容量を踏まえている。これは、一般にその時の治療の最終バッグ充填に近いか、または等しい。
【0072】
実施形態において、排液ライン58および真空ライン66eを排液コンテナ60の入口および出口62aおよび62bにそれぞれ接続することは、迅速交換またはその他の着脱の容易な接続により行われる。これは、患者または介護者が、朝または治療後に、排液コンテナ60をそれらのラインから容易に取り外し、その内容物を屋内排水、例えばトイレに流すことができるように行う。したがって、スケール80は、排液コンテナ60をラインから容易に取り外し、再装着できるように構成される。
【0073】
次に図6〜19を参照し、重力および真空により駆動されるシステムの第2の主要実施形態をシステム100により説明する。システム100は、システム10と同一の構成要素の多くを含む。可能であれば、これらの構成要素に同一番号を付ける。例えば、システム100は、蒸留端90を有する患者ライン56を含む。またシステム100は、排液ラインまたはチューブ58を含む。さらにシステム100は、1つ以上の供給バッグ24を含む(一般に、供給バッグ24a、24b等のうちの1つを意味する)。供給バッグ24は、供給ライン26と流体連通する。システム100は、ロードセルが患者に送達される液体の容量および患者から排出される液体の容量の両方を測定するという点においてシステム10とは異なる。
【0074】
またシステム100は、治療の特定サイクル中に、液体を望ましい目的地に流すことを可能にする弁を含む。一実施形態における弁は、フェイルセーフのバネ/真空作動弁、例えば、図10に関連して示される弁52a〜52dである。それらの弁は、システム100の制御装置110の内側に位置する。制御装置110内の弁は、バネ76等のバネアクチュエータ、およびシステム10のプランジャ74等のプランジャまたはピンチャを含む。一実施形態におけるシステム100の弁の開閉は、システム10に関連して上述されたとおりである。したがって、そのような動作を再度図示または説明する必要はない。
【0075】
同様に、システム100は、ヒータ130およびロードセル184を含む。ヒータ130は、ヒータ30に関して上述された液体バッグ加温器の種類のいずれかであってもよい。しかし、システム100におけるヒータ130は、制御装置110の上部に位置する。ヒータパンは、ロードセル184上に配置されるか、または組み込まれる。ロードセル184は、システム10のひずみゲージ84として、システム100において同様の機能を実行する。つまり、ロードセル184は、真空によりデュアルチャンババッグ120に引き込まれる液体の重量を測定する。ここでさらに、ロードセル184は、患者に供給される未使用の透析液の重量を測定する。システム100内のロードセル184は、デュアルチャンババッグ120内の液体の重量による圧縮力に基づいて、制御装置110内に位置するコントローラまたはPCB(PCB46に関して上述の各代替例を用いて構成される)に信号を送るように構成される(システム10の例示的実施形態においては、ひずみゲージ84は、制御コンテナ60に引き込まれる液体の重量によりスケール80に適用される張力に基づいて、信号を提供する)。そのため、ヒータ130およびロードセル184は、ヒータ30およびロードセル84と同様の機能を提供するが、それらの物理的構成および動作は異なる。
【0076】
図示されるように、制御装置110は、システム10の制御装置40に関連して上述されたように、入力装置44およびビデオモニタ42を含む。システム10に関する図2の電気レイアウトは、制御装置110の内側に収容されるシステム100の電気レイアウトにも広く適用できる。つまり、RAM、ROM、マイクロプロセッサ(ASICまたはMOSFET)および1つ以上の電源を含むPCBは、変化するアンペアまたは電圧信号をロードセル184、および1つ以上の温度測定装置(図示せず)から受信し、温度測定装置は、デュアルチャンババッグ120の未使用のコンテナ122内に位置する未使用の透析液を直接に、または未使用のコンテナ122内の加熱されたサプライに直接隣接するバッグ120の外面で、温度を測定する。
【0077】
システム100の電気スキームは、可変真空源に対する可変電気出力も含む(ライン88aに沿って図2に示されるシステム10の可変真空源70に提供されるものと同様)。さらに、システム100のコントローラまたはPCBは、(システム10のコントローラ46およびヒータ30に関連して行われるように)可変またはデューティサイクル出力をヒータ130に送信する。実施形態における制御装置110は、電気的に作動されるソレノイド(例えば、システム10のソレノイド48a〜48e)を収容し、ソレノイドは、真空ライン(例えば、システム10のライン66c〜66e)に沿って、弁(上述)および真空気密カバー102(図8A、8B、18および19に示す)の下に確立された真空チャンバに真空を適用することを可能にするか、または可能にしない。システム100は、システム10のように、必要な真空ラインを含み、実施形態において、制御装置110の内部に収容される。
【0078】
カバー102は、ロードセル184およびヒータ130の外周に位置するシール104により、制御装置110の上部に密閉される。シール104は、柔らかいゴムまたはスポンジゴムシール、例えば、ネオプレンゴムまたはクローズドセルスポンジシリコンゴムであってもよい。またシール104は、エラストマで構成されてもよく、真空下で十分に密閉する幾何学形状に押出または成形される。大気圧に面してその開口側を備えるV字型ガスケットは、適切な形状の真空シールの一例である。カバーの重量は、カバーを適所に保持するために十分であり得る。クランプ留め装置106、例えばバネ負荷ツイストクランプを提供し、制御装置110の上部と密閉関係でカバー102を保持してもよい。実施形態において、ヒンジ108は、カバー102が制御装置110の上部からヒンジ連結で回って上がるように提供される。また供給バッグ24内の液体の重量は、制御装置110の上部に対するカバー102の密閉を助ける。その重量は、システム100において使用される比較的低い陰圧下、例えば、約0〜−1.5psigの間で密閉を維持するために十分である。また陰圧自体がふた102をガスケット104に引っ張る傾向にあるため、クランプ留め装置106および/またはヒンジ108は不要である。
【0079】
またシステム100は、再利用可能な排液コンテナまたは使い捨て可能な排液バッグ(簡略化のため図示せず、以下排液コンテナと称する)を含んでもよく、排液ライン58に接続し、流体連通する。しかし、システム100において、排液コンテナは計量されず、限外ろ過液除去の決定および制御のためにシステム10の場合と同様には使用されない。ここでシステム100の排液コンテナを使用し、使用済みの透析液を収集する。制御装置110の下に位置するように構成され、デュアルチャンババッグ120の使用済みのコンテナ124からの使用済みの液体が排液コンテナに重力送液される。
【0080】
除去される液体の容量および流速の制御は、デュアルチャンババッグ120、ロードセル184、および弁の切り替え(図10の弁52a〜52dに関連して上述のように、一実施形態において、バネで閉じ、真空で開く)を使用して行う。図9および10に見られるように、デュアルチャンババッグ120は、加熱コンテナ122および一時的使用済みコンテナ124を含む。実施形態において、デュアルチャンババッグ120の加熱サプライバッグコンテナおよび一時的排液バッグコンテナ、122および124のそれぞれ形成するために使用される柔軟な膜が、弁部分128の少なくとも一部を形成するためにも使用される。流路126a〜126dは、例えば、熱形成され、デュアルチャンババッグ120の上層または下層の1つであってもよい。代替実施形態において、コンテナ122および124を形成するために使用される2つの層を硬質部材に密閉し、弁部分128を形成する。さらに代替として、弁部分128をバッグ120から分離し、流路126a〜126dの一部を形成する個別のチューブを介してそこに流体連通する。
【0081】
流路126a〜126dは、それぞれ弁座136a〜136dと流体連通する。以下の理由から、追加の弁座136eを流路126b、126cおよび患者ライン56の交差点に配置する。加熱された未使用のコンテナ122は、供給ライン26および流路126a、126bと流体連通する。一時的使用済みコンテナ124は、排液ライン58および流路126c、126dと流体連通する。コンテナ122および124はいずれも患者ライン56と流体連通するため、第5の弁136eが必要となる。
【0082】
図6に見られるように、制御装置110は、ナイトスタンド上、または患者の腹膜より高いその他の場所に配置される。デュアルチャンババッグ120は、制御装置110の上に位置し、よって患者の腹膜より上にある。さらに、供給バッグ24は、デュアルチャンババッグ120より高く配置され、デュアルチャンババッグ120を重力充填できる。デュアルチャンババッグ120は、順に患者の腹膜を充填する。さらに、前述のように、デュアルチャンババッグ120の一時的使用済みコンテナ124に保存された使用済みの透析液を、例えば、寝室または治療を行うその他の部屋の床に配置された排液コンテナまたは排液バッグに重力充填してもよい。
【0083】
図11〜19は、システム100の一構成およびセットアップシーケンスを説明する。図11は、ロードセル184がベースプレート186に載置されることを説明する。一実施形態において、ロードセル184はデュアルロードセルであり、冗長を提供する。プレート186は、硬質プラスチックまたは金属、例えば、ステンレス鋼、スチールまたはアルミニウムであってもよい。図12は、加熱されたバッグホルダ130がロードセル184に載置されることを説明する。加熱されたバッグホルダ130は、ホルダを形成するテーパのついた底面132および側面134を加熱する加熱要素(図示せず)を含む。テーパのついた底面132は、バッグを加熱されたバッグホルダ130の開口(ライン接続)端に向けて下方に傾斜し、液体をバッグ122および124の外に配向する助けとなる。底面132から側面134への移行部を面取り、または丸くして、バッグ122および124の支持を助け、ヒータ接触領域を増大させる。
【0084】
図13は、多岐弁アセンブリ50もベースプレート186に載置されることを示す。多岐弁アセンブリ50は、図4に関連して図示および説明される6つのピンチ弁ユニットであってもよい。図14は、制御装置110に載置されるプレート186、加熱されるバッグホルダ130および多岐弁アセンブリ50を示す。制御装置110は、本明細書に記載されるように、ビデオモニタ42および入力装置44を含む。また制御装置は、患者ライン56および排液ライン58を加熱バッグ122および排液バッグ124にそれぞれ接続するためのスロット112を含む、または画定する。また制御装置は、ラインホルダ114、例えば、プライミングのための患者ライン56の遠位端90を固定するプレス嵌めラインホルダを含む、または画定する。
【0085】
図15は、システム100の使い捨て可能なセット190の一構成を示す。使い捨て可能なセット190は、患者ライン56および排液ライン58を含み、クロス188と流体連通する。供給ライン26は、T字部192において患者ライン56とT字を形成する。患者ライン56は、肘部194を経由してクロス188に接続され、肘部194は、ラインを適切に配向して使い捨て可能なセット190のクロス188の領域を制御装置110に装填する。ライン26、56および58の遠位端は、必要に応じてコネクタおよびクランプを備える。
【0086】
図16〜19は、システム100の第2の主要実施形態のわずかに異なる構成を示す。ここでは、個別のコンテナ122および124を有するデュアルチャンババッグ120の代わりに、個別の加熱バッグ122および供給バッグ124を使用する。図16は、使い捨て可能なセット190のクロス188の領域が、制御装置110内、具体的には多岐弁アセンブリ50のヒンジ取付扉の後ろに装填されていることを示す。ラインは、多岐弁アセンブリ50の選択されたピンチ弁と動作可能な位置に配置され、選択的に開閉できる。患者ライン56の遠位端90は、プライミングのためのラインホルダ114に嵌入される。加熱バッグ122は、加熱されたバッグホルダ130内に配置され、それにより支持される。患者ライン56は、加熱バッグに接続される。
【0087】
図17において、空の一時的排液バッグ124は、加熱バッグ122の上に配置される。排液ライン58は、この排液バッグに接続される。上述のように、この構成において、加熱バッグ122および排液バッグ124は、単一のデュアルチャンババッグ120の一部ではなく、個別のバッグである。いずれの構成も使用できる。ここで、前日の供給バッグを当日の空の一時的加重バッグとして使用し、コストと処分できる老廃物の容量を削減できる。図18において、カバー102は、バッグ122および124の上に配置される。図19において、供給バッグ24は、カバー102上に配置される。供給ライン26は、供給バッグ24に接続される。ここでシステム100は、プライムされる準備が完了する。
【0088】
デュアルチャンババッグ120を使用するか、または個別のバッグ122および124を使用するか否かにかかわらず、システム100のプライミングサイクルにおいて、弁座136a〜136eがそれぞれ開き、液体が各ラインを通って流れるようにする。プライミングは、患者ライン56を含む空気のラインをすべてパージする。ラインに空気が存在しないことにより、ロードセル184は、患者に送達された液体の容量および患者から排出された液体の容量を正確に測定することができ、また患者への空気の送達を防ぐ。重力が加熱された未使用のコンテナまたはバッグ122から患者への空気の送達を防ぐため、ヒータバッグ122またはデュアルチャンババッグ120をプライムで完全に充填する必要はない。加熱された未使用のコンテナまたはバッグ122は、例えば、疎水性膜を含む排気口(図示せず)を備えてもよく、排気口は、液体で充填されるにつれ、コンテナ122から空気がパージされる。
【0089】
制御装置110内のコントローラまたはPCBは、真空源により弁座136aおよび136eにおいて弁を開くことにより、未使用の液体が供給バッグ24から供給ライン26を通り、流路126aを経由して、デュアルチャンババッグ120(または個別のバッグ122)の下の供給コンテナ122に入り充填できるようにする。コンテナ122は、ヒータ130に接触し、流路126bを通り、患者ライン56を経由して遠位端90に至る。システム10に関連する上記のように、システム100は、プライミングサイクル期間中、患者ライン56の遠位端90を、供給バッグ24と少なくとも実質的に同一の高さに保持する装置を含む。プライムを終わると、患者は、患者ライン56の遠位端90を患者に縫い込まれたポートに接続する。このポートは、挿入されたカテーテルを経由して患者の腹膜と連通する。プライムの間に、供給コンテナまたはバッグ122内の未使用の透析液の加熱を開始してもよい。
【0090】
システム10の場合のように、一実施形態における治療の次のステップは、患者の最後の治療からの最終バッグの容量を除去することである。これを行う前に、未使用のコンテナまたはバッグ122に入っている未使用の液体の重量を記録する。その後、真空源により、(i)弁座136cおよび136eにおいて弁を開き、そして(ii)真空型カバー102内に真空を引き込むことができる(プライムため事前に開かれた弁座126aおよび126bにおける弁は、ここで閉じられる)。この作用により、使用済みの液体が患者の腹膜からライン56を通り、デュアルチャンババッグ120の一時的使用済みのコンテナ124に引き込まれる。そのため、プライムからの未使用の透析液のバッチが加熱されると同時に、以前の最終バッグの容量を患者から抜かれることができる。デュアルチャンババッグ120に入る使用済みの液体の追加重量を記録する。
【0091】
供給コンテナ122内の液体の容量がその望ましい温度に加熱されるとすぐに、患者に送達してもよい(これは、最終バッグの容量が患者から完全に除去される前に生じないと仮定する)。最終バッグの除去よりも加熱に時間を要すると仮定し、未使用のコンテナ122内の未使用の液体を加熱しながら、一時的使用済みのコンテナ124を排液バッグに排水してもよい。ここで、制御装置110は、弁を弁座136dで動作させてパス126dを開くことにより、使用済みの液体を一時的使用済みのコンテナ124から排液バッグに重力排出できる。ドレインのこの部分が充填前に生じる場合は、各コンテナ122および124に送達される液体および各コンテナから送達される液体の量をダブルチェックできるように、デュアルチャンババッグ120内の重量の低下が、ロードセル184により記録され得る。
【0092】
コンテナ122における未使用の液体がその望ましい温度に加熱されると、加熱された未使用の透析液は、流路126bを通って送達され、弁座136bおよび136eを通過し、患者ライン56を経由して患者の腹膜に入る。透析液の加熱に伴う透析液からのガスは、未使用のコンテナ122の上部で収集される。したがって、流路126bと未使用のコンテナ122との間のインターフェースは、液体のみがコンテナ122から患者ライン56に流れるように、未使用のコンテナ122の底面またはその付近に位置する。既知量の未使用の液体を患者に送達した後に、滞留サイクルが生じる。ここで、未使用の液体は患者の腹膜内に滞留する一方、拡散および浸透力により老廃物および過剰な水が患者から除去される。滞留期間は、例えば、透析治療処方に応じて、1〜2時間続く場合がある。
【0093】
滞留期間中のデュアルチャンババッグ120または個別バッグの状態に応じて、異なる充填、排液および弁調節シーケンスが生じ得る。例えば、まだ行っていないならば、滞留サイクル中のシステム100のコントローラは、一時的使用済みのコンテナまたはバッグ124内にある最終バッグの使用済み透析液を排液コンテナに重力送液することができる。この後半の充填は、加熱用に未使用の透析液のコンテナ122またはバッグへの第2の充填が起こる間に生じる。一時的使用済みコンテナまたはバッグ124の排液は、それらの重量が計算に不要であるため、未使用のコンテナまたはバッグ122の補充と同時または順次に生じてもよい。第1の充填が患者から除去され、第2の充填がその望ましい液体温度に加熱された場合、第2の充填を第2の滞留期間等の間、患者に送達してもよい。
【0094】
恐らく最初の最終バッグの容量は、第1の滞留が生じる前に最終の使用済みコンテナに送液されているため、未使用の透析液の第2バッチを供給バッグ24からデュアルチャンババッグ120の未使用のコンテナまたはバッグ122に送達して加熱してもよい。これが起こる場合、一時的使用済みコンテナまたはバッグ124は空であるため、システム100は、第2の充填液体の重量が第2の充填の最終時のコンテナまたはバッグ122の重量に等しいことを把握している。第1の滞留期間が終了すると、未使用のコンテナまたはバッグ122内で液体が加熱されている間、使用済みの液体が真空により一時的使用済みコンテナまたはバッグ124に駆動される。第1の充填が患者から除去され、第2の充填がその望ましい液体温度まで加熱された場合、第2の充填を第2の滞留期間等に患者に送達してもよい。システム100は、上述のように動作する最終バッグの容量を治療の最後に送達してもよい。
【0095】
システム10および110は、どちらも前述のバッチ型治療の代替として、潮流腹膜透析治療(tital flow peritoneum dialysis treatment)を行うことができる。潮流システムにおいて、使用済みの液体の一部のみを患者の腹膜から除去する。除去した使用済み分を戻し、未使用の液体で充填する。部分交換は、バッチ型治療で典型的に行われるよりも頻繁に生じる。したがって潮流治療は、より連続的である。
【0096】
当然のことながら、本明細書において説明される本好適な実施形態に対する多様な変更および修正は、当業者には明らかとなるであろう。そのような変更および修正は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、またその意図される利点を失うことなく行うことができる。したがって、そのような変更および修正は、添付の請求項の対象であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載された発明。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2012−179432(P2012−179432A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−139840(P2012−139840)
【出願日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【分割の表示】特願2009−512300(P2009−512300)の分割
【原出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(591013229)バクスター・インターナショナル・インコーポレイテッド (448)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER INTERNATIONAL INCORP0RATED
【出願人】(501453189)バクスター・ヘルスケヤー・ソシエテ・アノニム (289)
【氏名又は名称原語表記】BAXTER HEALTHCARE S.A.
【Fターム(参考)】