説明

重力圧力調節メカニズム

体液の圧力および分流の制御のためにバルブ(14)と併用される重力圧力調節メカニズム(10)が提供される。このメカニズムは、第1端部と第2端部を有するリザーバー(18) を備え、その第1端部(18a)は開口し、第2端部(18b)は床部(26)と入口部(20)を有し、浮動性の重り(16)が床部に接し、この重りが床部から離れて位置する開放位置に動く。重りは、これが閉鎖位置にある時に入口部と係合する面を有する閉鎖部材(28)を有する。本メカニズムはさらに、リザーバーの開口した第1端部をシールするために、出口部を有するキャップ(22)を備える。重りの質量は、調節メカニズムを通る体液の流れ抵抗の量に比例する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、髄液(脳脊髄液)の排液のためのシャント弁(バルブ)に関する。
【背景技術】
【0002】
水頭症の治療では、過剰の髄液(CSF)を体内のある部位から別の部位に排液することが一般的になってきた。例えば、CSFを血流中または腹腔内に導入するように、カテーテルを脳内の脳室に入れて圧力動作型の逆止弁(チェックバルブ)を介して皮下カテーテルに接続する方法がある。別の手法として、カテーテルを脊椎に隣接して体内に入れ、腹腔内に挿入された別のカテーテルに逆止弁を介して接続する方法もある。後者は腰椎−腹腔シャントシステムと一般に呼ばれ、過剰CSFが頭蓋内に制限されずに脊椎領域にも存在する交通性水頭症の罹患患者だけに採用されうる。
【0003】
機能する最初の水頭症シャントの発明は、米国特許第2,969,066号(Holter)に開示されているように1956年になされた。この発明に対しては、次にさらに説明するように多くの改良および改変がなされた。しかし、CSFの過剰排液という問題は、いまだにシャント機能不全および見直しの主要な原因であり続けている。
【0004】
この一般的な種類のシャントシステムは、米国特許第3,288,142号(Hakim)および第3,527,226号(Hakim)に開示されている。これらのシャントシステムは、患者が実質的に水平の姿勢から実質的に垂直の姿勢に転じた時に生ずる圧力低下により起こる問題をうまく解決できない。逆止弁は、CSF圧力が弁の所定の圧力設定値に上昇するまでは弁を閉鎖状態に保持するスプリング作用(spring action)を普通は備えている。しかし、腰椎−腹腔シャントシステムが装着された患者の場合には、逆止弁に作用する静水頭は、患者が水平姿勢から垂直姿勢に動いた時に突如増大し、この圧力増大により逆止弁が開いてしまう。その結果が排液速度の過剰となる。これに似た排液速度の変化は、脳室−心房または脳室−腹腔シャントシステムの排液チューブの長さによっても、患者が水平姿勢から垂直姿勢に動いた時に起こる。
【0005】
1976年、過剰排液の危険性を最小限にする試みとして、患者が仰向け姿勢から起き上がった時に起こるCSFの流れを制御するためのアンチサイホン(anti-siphon)装置に関する米国特許第3,991,768号 (Portnoy)が発行された。ここでは、シャントシステムは、人体のある領域から体液を排液し、それを別の領域に排出するが、低い下流側静水圧の結果として起こるその領域の過剰排液またはサイホン作用に抗する手段が設けられている。このシステムは、採集カテーテルおよび排出カテーテルと、これらのカテーテルを相互接続するバルブとを備え、このバルブは、これらのカテーテルにより伝えられたバルブ内の圧力と大気圧のような基準圧力との差圧に応答するバルブの閉鎖手段の位置の結果として、システムを流れのために開放し、またはそれを流れから閉鎖する。この装置の背後にある技術思想は、圧力を一定の正の値に保持することは、過剰排液の危険性と合併症の発生を最小限にするということである。このアンチサイホン装置は、患者が起立した時に遠位側のカテーテルに生ずる静水圧力柱を抑制して、バルブの前後の差圧を大気圧に近づくように保持する。
【0006】
米国特許第4,795,437号 (Schulteら)は、Portnoyの発明を改良したもので、シャントシステムに使用するための皮下移植可能なサイホン制御装置を開示する。この装置は近位側のカテーテル、流量制御弁、および遠位側のカテーテルを備える。このサイホン制御装置は、遠位側カテーテル出口に対して近位側カテーテル入口が高いことにより生ずる負の静水圧が示すサイホン効果のためにシャントシステムを通る流体の流れを制限する。このサイホン制御装置は、流動制御弁の出口と流体連通するよう配置された入口と、遠位側カテーテルと流体連通するよう配置された出口とを有するベース部を備え、このベース部のハウジングがベース部と一緒に該入口と該出口との間に流体流路を画成している。ベース部は、実質的に平行な上下の座面を有する壁面を与え、この壁面が前記入口を前記出口から分離している。内面と外面を有する一対の離間した実質的に平行な可撓性かつ弾性の隔膜がハウジングにより与えられ、これらは前記壁面の両側に配置されて、各内面の一部を座面の隣接する面と接触するように位置させる。残念ながら、このアンチサイホン装置の使用により不足および過剰排液の両方に起因する合併症が高い割合でなお起こった。さらに、このアンチサイホン装置は、組織の被包化に起因する閉塞という全く新しい合併症を持ち込んだ。
【0007】
その後、2000年に、プログラミングが可能なアンチサイホン装置を開示する米国特許第6,090,062号(Soodら)が発行された。これはなお組織被包化を受けやすいものの、座面と隔膜との間の関係を、組織被包化またはアンチサイホン圧力の上昇もしくは下降レベルを補償するように調節することができるという特徴を組み込んでいる。
【0008】
2002年に、米国特許第6,383,160号(Madsen)は、髄液シャントシステムに使用するための可変アンチサイホン装置を開示した。この装置は、内部チャンバーを持つハウジング、該チャンバーを2つのキャビティに分割する調節可能なバリアー、およびこの調節可能なバリアーに着座する1つの隔膜を備え、隔膜の着座力はその前後での差圧に比例する。調節可能なバリアーによりアンチサイホン保護のレベルを修正することが可能となる。1態様において、調節可能なバリアーの高さを変化させてもよい。別の態様では、バリアーを内部チャンバー内で長さ方向に移動させて各チャンバーの容積を変化させる。この装置は、非侵襲性の調節を可能にすることによって米国特許第6,090,062号(Soodら)の発明を改良するものである。
【0009】
上記の設計はいくつかの問題点を抱える。まず、それが1つのエラストマー性の膜に依存することである。この膜は、エラストマーという特性のために、硬さが経時的に増大し、それにより膜の機能特性が変化する。また、これらの圧力感受性の膜が周囲組織と接触し、メカニズムを包囲する瘢痕組織により押圧されることがあり、それによりこの包囲に打ち勝つのに必要な圧力が増大する。さらに、この装置は一般に頭皮下の頭蓋骨上に移植され、患者が横臥している時には装置上に乗る頭蓋の重さにより妨げられることがある。最後に、この装置が圧力の変化に十分に感受性であるためには、膜が非常に薄くかつデリケートでなければならない。そのような膜は、ニードルでの穿刺により損傷または破損が起こり易いので、シャントを介したCSF検体の採取や投薬の時にはいつでも膜の損傷または破損が起こる可能性がある。
【0010】
米国特許第3,889,687号(Harrisら)は、圧力バルブ・メカニズムと別個のシリンダーに入れた複数ボールの設計からなる重力および姿勢動作装置を用いることによる過剰排液を補償する髄液の輸送のためのシャントシステムを開示している。バルブシリンダーの軸方向寸法が患者の垂直軸に平行になるように適正に移植されると、ボールはシリンダー内で自由に移動し、頭蓋内圧(ICP)が圧力バルブにより制御される。この場合、患者が横臥位から起立または着座姿勢に起き上がると、ボールおよびシリンダーが垂直位置をとり、ボールがシリンダーの入口に接するように偏倚し、ボールの重さがシステムの圧力を増大させて過剰排液を防止する。残念ながら、この装置は嵩が大きく、また位置感受性が高すぎて、垂直位置の時にしか適正に機能しない。この設計は、患者の脇腹の腰より高い、腰椎カテーテルを脊椎に導入する高さに移植されて、腰部空間からのCSFの排液用の腰椎カテーテルと一緒に使用されるように設計されていた。別の問題点は、シリンダーとボールならびに差動バルブメカニズムがステンレス鋼製であったため、CTまたはMRI映像上に人工産物(アーチファクト)を生ずることであった。腰椎カテーテルの配置はより高い合併症割合で脊椎の問題を生じることから、正確な部位の映像化がこの磁性移植物により邪魔されることになるので、これは特に厄介である。
【0011】
米国特許第5,042,974号(Agarwal)は、髄液を排液するためのシャント弁を開示している。このシャント弁は、近位端部と遠位端部とを有する変形可能なハウジングを備える。ハウジング内には非変形性のバルブチャンバーが配置されていて、該遠位端部とは入口チャンバーを、該近位端部とは出口チャンバーをそれぞれ形成している。このシャント弁は入口チャンバーへの入口と出口チャンバーからの出口とを有する。シャント弁内の流体の流れはZ型流路であり、入口と出口は同じ軸に沿って設けられている。この設計は上述したHarrisの’687号米国特許の設計を改良したものである。ここでは、バルブメカニズムが削除され、それによりサイズと嵩が小さくなって、装置は、患者が起立または着座している時に患者の垂直軸に平行となるように装置を頭皮下の頭蓋骨後部の隣に配置するのに適したものとなる。しかし、シャントとして適正に機能するには、装置を抗逆流メカニズムと一緒に使用しなければならない。また、この装置はステンレス鋼から製作されたので、CTおよびMRI画像を損なう。
【0012】
米国特許第3,769,982号(Schulte)は、下流での吸引に応答する閉鎖手段を備えた生理学的排液システムに関する。このシステムは人体の供給源からの液体を、それを処分すべき領域まで排液するためのものである。後者の領域は、供給源の領域とは異なる高さにある。このシステムは下流での吸引に応答する制御手段を備える。吸引が過剰であると、供給源領域の過剰排液を防止するように制御手段がシステムの流れを閉鎖する。制御手段はバルブを備え、このバルブは正常な流量および下流吸引レベルで流れるよう開いたままとなるが、下流の吸引レベルが所定のレベルを超えた場合には閉じる。
【0013】
米国特許第4,621,654号(Holter)は、姿勢および圧力応答性バルブアセンブリに関する。このバルブアセンブリは頭蓋内圧を軽減するためのものであり、脳室カテーテルへの接続のための入口と静脈または腹腔カテーテルへの接続のための出口とを有する、移植に適合したバルブハウジングを備える。バルブハウジングは、流体流路を有し、その流路を通る流れは、比較的高抵抗の第1の感圧性(従圧性)バルブと比較的低抵抗2の感圧性バルブとにより制御される。姿勢応答性バルブが第1の感圧性バルブと並列に流体流路内に配置される。このバルブアセンブリは、姿勢応答性バルブが、患者が直立姿勢である時に閉鎖位置にあって、患者が水平姿勢である時には開放位置にあるように患者に移植される。感圧性バルブと姿勢応答性バルブを並列させて採用することにより、患者の姿勢に関係なく脳質圧力を軽減する。
【0014】
米国特許第4,443,214号(Marion)は、脳室カテーテルと排液カテーテルとの間に挿入されるのに適合させたバルブを開示している。このバルブは、チャンバーを包囲する偏平な円筒形状の本体からなり、チャンバーは、その円筒壁面を貫通して形成された、頭脊柱液(cephalorachidian fluid)を導入するための入口通路とこの液体を排出するための出口通路とを有する。入口通路の内側端部には、逆止弁として作用するボールバルブが係合可能な円錐台形の弁座が設けられている。このボールバルブは、チャンバーの側方内壁に沿って位置する湾曲したバネ翼(spring blade)により弁座に押しつけられていて、バネ翼は磁性材料の直径バー上にオーバーハンギング(張出し)関係に装着されており、直径バーはチャンバーを横断して延びているピボットピン上に同心回転するように装着されている。バネ翼とは反対側のバーの端部が保有している歯が、チャンバーの側方壁面に形成された戻り止め(デテント)位置決めデント(窪み)と係合している。
【0015】
米国特許第4,595,390号(Hakimら)は、外部磁界の印加によりポッピング(パルシング)圧力が決まった増分で調整される、水頭症の治療においてCSFを抜き出すための外科的に移植可能なシャント弁を開示する。
【0016】
米国特許第4,615,691号(Hakimら)は、電源から物理的に隔離され、装置の外部から印加された磁界により動力が供給される外科的に移植可能なステッピングモーターを開示する。
【0017】
米国特許第6,126,628号(Nissels)は、患者体内の第1の領域から第2の領域への体液体の流れを制限するための装置を開示する。この装置は、流体流量が所定レベル未満であるのに応答して流体を装置の入口から出口に送る第1の通路と、流量が所定レベル以上であるのに応答して流体を入口から出口に送る第2の通路とを備える。第2の通路は蛇行した流路であり、第1の通路より高い流体流れ抵抗を与える。検出器が、流量が所定のレベルに達したのに応答して第1の通路を閉鎖し、流体が第2の通路を通るように仕向ける。流体流量が過剰排液に達したら、流体が第2の通路の方に送り込まれるので、流体流量が効果的に低減され、過剰排液が防止される。流量が所定レベルより低くなるまで低減したとたんに、第1の通路が自動的に開く。
【0018】
米国特許第3,111,125号 (Schulte) は、隔膜型ポンプと人体の各種部分とのシャント接続を形成するための導管とを備えた、望ましくない体液蓄積の部分のいずれかを軽減するための排液装置を開示している。
【0019】
米国特許第4,787,887号 (Luis Saenz Arroyo) は、水頭症において頭脊柱液を排液するための脳室バイパス装置を開示している。これは、脳吸引口(brain suction orifice)を遮断する逆止弁装置からなる。その弁はバルブ内のある点の圧力とバルブの外側でその近くの体内領域内の圧力との差に応じてシャントシステム内の体液の流れを制御する。
【0020】
米国特許第5,643,195号 (Drevetら) は、排液回路内の患者の産生サイトと吸収サイトとの間の有機液体の流れを調節するための装置を開示している。この回路は該2つのサイトの間を通り、サイトの一方は圧力変動の小さいサイトであり、他方は圧力変動の大きなサイトである。圧力は特に患者の姿勢に応じて調節される。
【0021】
ここに挙げた全ての特許文献の全体をここに完全に援用する。
【特許文献1】米国特許第2,969,066号
【特許文献2】米国特許第3,288,142号
【特許文献3】米国特許第3,527,226号
【特許文献4】米国特許第3,991,768号
【特許文献5】米国特許第4,795,437号
【特許文献6】米国特許第6,090,062号
【特許文献7】米国特許第6,383,160号
【特許文献8】米国特許第3,889,687号
【特許文献9】米国特許第5,042,974号
【特許文献10】米国特許第3,769,982号
【特許文献11】米国特許第4,621,654号
【特許文献12】米国特許第4,443,214号
【特許文献13】米国特許第4,595,390号
【特許文献14】米国特許第4,615,691号
【特許文献15】米国特許第6,126,628号
【特許文献16】米国特許第3,111,125号
【特許文献17】米国特許第4,787,887号
【特許文献18】米国特許第5,643,195号
【発明の開示】
【0022】
本発明は、作製と使用が簡単で、信頼性があって正確であり、かつCTおよびMRI映像を損なわないように非磁性の装置を提供することである。さらに、本発明は、単独で使用するか、または標準的なバルブシステムと組み合わせてそれらの機能上の欠陥を補償するために使用することができるので、医師は自分が熟知しているバルブ・メカニズムを使用することが可能となる。最後に、本発明の装置は患者の安全性レベルの向上を与える。
【0023】
本発明は、移植可能な重力圧力(gravitational pressure、重力下での静水圧)の調節メカニズム(調節機構装置)に関し、これはバルブに取付けると、CSFのような体液の圧力および分流(迂回)を制御するための重力圧力調節バルブとなる。
【0024】
本発明は、体液の圧力および分流の制御のためにバルブと一緒に使用するための重力圧力調節メカニズムに関する。第1の態様において、下記を備える体液の圧力および分流の制御のための重力圧力調節メカニズムが提供される:入口部と出口部を有するリザーバー、重りが前記入口部を封鎖している閉鎖位置から重りが前記入口部から離れて位置する開放位置までリザーバー内を自由に摺動するようになっている浮動性の重り、および 前記出口部をシールするためのキャップ。浮動性重りの質量は、該調節メカニズムを通る体液の流れ抵抗(流れに対する抵抗)の量に比例する。好ましくは、この浮動性重りの形状は略円筒形である。最後のこの重りは、重りが閉鎖位置にある時に出口部から流入した体液の出口部への最小流れを可能にする、重りを貫通した孔を有していてもよい。
【0025】
別の好ましい態様において、本発明のメカニズムは、第1端部および第2端部を有し、第1端部は開口していて、第2端部は床部および入口部を有するリザーバーと、重りが該床部に接する閉鎖位置から重りが該床部から離れて位置する開放位置までリザーバー内を自由に摺動するようになっている浮動性の重りとを備える。重りは、重りが閉鎖位置にある時に入口部と係合させるための表面を有する閉鎖部材を有している。このメカニズムはさらに、リザーバーの開口している第1端部をシールするために、出口部を有するキャップを備える。浮動性重りの質量は、この調節メカニズムを通る体液の流れ抵抗の量に比例する。やはり、浮動性重りの形状が略円筒形であることが好ましい。
【0026】
リザーバーの床部は、好ましくは略円錐形状で、前記入口部は円錐形状の床部の中心に位置している。好ましくは、リザーバーおよび浮動性重りが生体適合性の非鉄材料、好ましくはエルギロイ(Elgiloy)、フィノックス(Phynox)およびタンタルといった比重がステンレス鋼と同じかそれより大きい非鉄材料から構成される。重りが閉鎖位置にある時に入口部と係合するようになっている表面は、重りとの一体ユニットとして構成されていてもよく、或いは重りに別部材として取り付けられていてもよい。この表面は、例えば、円錐、平面、半球、湾曲、テーパー付きまたはニードルといった形状を有する凸状部であってもよい。重りの閉鎖部材は、重りをリザーバー内で中心に位置させるように助けるものであってもよい。
【0027】
重りは、入口部からメカニズムに流入した体液の一部が出口部まで制限されずに流れるのを可能にする複数のチャネルを有していてもよい。好ましくは、キャップはエラストマー材料から構成される。また、好ましくは、閉鎖部材はサファイア、ルビー、または合成セラミックから構成され、より好ましくは半円形の形状のこれらの材料の1種から構成される。閉鎖部材とは反対側の重りの端部とエラストマーキャップの内面との間の距離が重りの高さより小さいことが望ましい。最後に、重りは、重りが閉鎖位置にある時に出口部から流入した体液の出口部への最小流れを可能にする、重りを貫通した孔を有していてもよい。
【0028】
別の態様において、入口部はチューブとして床上をリザーバー中に伸びており、重りはこのチューブを回転軸としてピボット旋回するようになっている。この場合、本メカニズムが垂直位置から水平位置に移動する(例、患者が横になる)と、入口部と閉鎖面(閉鎖表面)により作られたチューブ内の開口の大きさが完全に開くまで大きくなるように、重りがチューブの回りをピボット旋回する。この態様では、入口部と出口部を有するリザーバーを備えた、体液の圧力および分流の制御のための重力圧力調節メカニズムが提供され、入口部はチューブとして床上をリザーバー中に伸びている。このメカニズムはさらに、一端に閉鎖面を有する浮動性の重りを備え、この重りは、閉鎖面が前記入口部を封鎖している閉鎖位置から入口部が開いている開放位置までリザーバー内で回転するようになっている。このメカニズムは前記出口部をシールするためのキャップも備える。重りがチューブ上でピボット旋回することにより、メカニズムが垂直位置から水平位置に移動すると、入口部と閉鎖部材により作られたチューブ内の開口の大きさが完全に開くまで大きくなる。最後に、重りは、重りが閉鎖位置にある時に出口部から流入した体液の出口部への最小流れを可能にする、重りを貫通した孔を有していてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明を添付図面と一緒に説明する。図中、類似の要素には類似の参照番号が付してある。
複数の図面を通して類似の部材番号が類似の要素を意味している添付図面を参照すると、図1には、重力圧力調節メカニズム10が、バルブアセンブリ14も装着されている人体12に取り付けられた状態で示されている。この重力圧力調節メカニズム10は、頭蓋骨の頂部に、この頂部に穿孔した穴の中に装着されていて、脳内の脳室13に導入されたカテーテル15に取り付けられている。頭部の頂部へのリザーバーの配置が必要である。フロンタルホーン(frontal horn)カテーテル配置が好ましい。図1に見られるように、流体は調節メカニズム10からバルブアセンブリ14を通して、類似器具について当業者には知られるように、人体の離れた部分まで排液される。
【0030】
図2〜5に見ることができるように、重力圧力調節メカニズム10は、硬質のリザーバー(液体溜め)18の内部に収容された浮動性の重り16からなる。リザーバー18は第1端部18aと第2端部18bとを有する。第1端部18aは開口しており、第2端部18bは床部と底部の入口部20とを有する。開口した第1端部18aは、側方に伸びたサイドアーム型の出口部24を有するエラストマー性キャップ22により覆われる。リザーバー18は床部26を有し、好ましくは、床部26は円錐形で、入口部20は座面となる床部26の中心にくる。浮動性重り16は、好ましくは形状が略円筒形で、その底面30に閉鎖部材28を有し、これはリザーバー18の円錐形床部26により形成される座面および入口部20に対して偏倚するように設計されている。本発明における「円筒形」とは、ほぼ円筒形である形状を広く包含する意味である。すなわち、上面とこれにほぼ平行な底面(下面)とを有し、断面の形状が少なくとも一部は円形である形状である。この円形断面は、断面の一部が例えばチャネル(みぞ型の流路)等のために取り除かれている断面を包含するものである。
【0031】
浮動性重り16は、閉鎖メカニズムとして作用するための表面(閉鎖面)32を有していなければならない。この表面32は、切削または成形加工された浮動性重り16の一体部分であってもよく、或いは別部材として取り付けられたものであってもよい。表面32は多くの異なる形状を有することができるが、どの形状であっても、重り16の重心が底面の入口部20の上または実質的のその上に位置する時に、リザーバー18の底面中心の位置で円錐形床部26上において入口部20により形成されるオリフィスのシールを与えるように設計される。例えば、閉鎖部材の表面32は、例えば、V型、平面または湾曲形状を有するものでよい。或いは、図2および3に見られるように、重り16aの閉鎖部材表面32は、例えば、リザーバー18の底部入口部20の中に嵌入するように設計されたテーパー付きニードル形状(またはピン形状)の突出表面28aであってもよい。この形態では、ニードル形状の突出表面28aは重り16aのセンタリング・ガイドとしても作用し、浮動性重り16aが入口部20の上にある時は必ず重り16aが入口部20の上の中心位置に常にくるように保証する。さらに、ニードル形状の突出表面28aは、調節メカニズム10のさまざまな姿勢で適当なレベルの抵抗を生ずるような形状としてもよい。場合により、図4に見られるように、重りは重り16を縦方向に貫通して設けた小孔27を有していてもよい。この孔27は、最初に重り16を着座させる時にある少量の流れを可能にする。その後は、重り16を着座位置から移動させるにはより大きな力が必要となろう。
【0032】
この重力圧力調節メカニズム10の好ましい形態において、浮動性重り16の外径は、リザーバー18の内径よりわずかに、例えば、1000分の1または2インチだけ小さくなっていて、重り16は、リザーバー18の垂直軸方向にリザーバー18に対して制限されずに動くことが可能である。図3および図4に見られるように、浮動性重り16の高さは、リザーバー18の内面の垂直壁面の高さと同じか、それよりわずかに小さいことが好ましい。浮動性重り16は、複数のチャネル38、38aを有しており、各チャネルは間隔が互いに等間隔になっていて、重り16の外面に沿って頂部から底部まで通っている。チャネル38によって、浮動性重り16上の閉鎖部材28が入口部20から外れている時には常に、流体がリザーバー18の第2端部18bにある底部入口部20からエラストマー性キャップ22に設けたサイドアームの出口部24を通って制限されずに流れることができる。浮動性重りの略円筒形という形状により、チャネル38の利用が容易となる。
【0033】
重り16の好ましい形態は、図3および4に最もよく示されるように、浮動性重り16の底面中心において、レセプタクルにサファイアボール32aを配置することにより形成された2部材(ツーピース)型ユニットである。リザーバー18の内部での重り16の嵌合とリザーバー18の円錐形床部26とが作用して、ボール32aが底部入口部20の上に直接乗るように位置する。エラストマー性キャップ22はリザーバー18を決まった位置に据えるように設計されている。重り16の頂部とエラストマー性キャップ22の内面ドーム部22aとの距離は、好ましくは重り16の縦方向の高さより小さい。これにより、たとえ重力圧力調節メカニズム10の全体が逆さまに反転しても、浮動性重り16は決してリザーバー18から外れることがないように保証される。サファイアは優れた密封を与えるために非常に平滑な表面を有するよう製作可能である点で、サファイアの球形形状が特に有用である。
【0034】
図7のグラフからわかるように、本発明の重力重量調節メカニズム10が示す過剰排液に対する抵抗の量は、浮動性重り16(または16a)の重量(質量)に正比例する。浮動性重り16は、316外科用ステンレス鋼のような生体適合性の任意の材料から作製しうる。CTおよび/またはMRIのアーチファクトのような映像のアーチファクトを最小限にするか、または回避するため、生体適合性の非鉄材料、好ましくはエルギロイ、フィノックス、タンタルまたは他の類似の生体適合性物質といった、比重がステンレス鋼以上であるものを使用することが好ましい。円筒形の重り16の質量は、例えば、重り16の一部に穴を開けて軽くするか、または多用な材料から所望の密度を有するものを選択して利用することにより変動させることができる。図2からわかるように、浮動性重り16aの方が浮動性重り16より実質的に多量の材料を使用している。しかし、異なる密度を有する材料を選択することで、浮動性重り16aは浮動性重り16と実質的に同じ重量を持つように製作することができる。この場合、浮動性重り16は、浮動性重り16aより高密度の材料から製作される。
【0035】
図6に示すような別の形態の重力圧力調節メカニズム40では、底部入口部42の壁面が、リザーバー44の床部46より上まで、リザーバー44の中心まで上方に(図6の図面に関して)突き出ており、浮動性重り50は好ましくは、突き出た入口部42を受け入れるように設計された凹部48またはへこみを有する。重り50が入口部52の上方で中心に位置している時は常に、重り50は突き出た入口部42に接するよう偏倚してシールを形成する。この重力圧力調節メカニズム40が垂直軸方向から水平軸方向に移動するにつれて、重り50は突き出た入口部42の回りでピボット回転し、入口部42と重り50との間の開口(開き)の大きさが増大して、重り50がその側面の方に乗っている時に完全に開くまでになる。
【0036】
図1に見られるように、本発明の重力圧力調節システム10(あるいは別形態のメカニズム40)は、バルブアセンブリ14に接続される。バルブアセンブリは、アンチサイホン作用を与えるように適正に動作する、当業者に公知の任意のタイプのバルブアセンブリでよい。
【0037】
本発明を以上にその特定の例に関して詳細に説明したが、本発明の技術思想と範囲を逸脱せずに各種の変化および変更をなすことができることは当業者には明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】人体に装着されたバルブアセンブリと共に重力圧力調節メカニズムを示す側面図である。
【図2】図1の重力圧力調節メカニズムの等角図であり、利用可能な浮動性重りの代替となる2つの例を示す。
【図3】浮動性重りの代替となる2つの例の最初の例の使用を示す、図2の3−3線に実質的に沿って描いた、図1の重力圧力調節メカニズムの部分断面正面図である。
【図4】浮動性重りの代替となる2つの例の第2の例の使用を示す、図2の4−4線に実質的に沿って描いた、図1の重力圧力調節メカニズムの部分断面正面図である。
【図5】図3の5−5線に実質的に沿って描いた、図1の重力圧力調節メカニズムの部分断面図である。
【図6】図2〜5に示したものに類似する別の重力圧力調節メカニズムの部分断面正面図である。
【図7】図1の重力圧力調節メカニズム内で利用された浮動性重りの重量に対する、該メカニズムが生じた圧力の変化の1例を示すグラフ表示である。
【符号の説明】
【0039】
10:重力圧力調節メカニズム、12:人体、13:脳室、14:バルブアセンブリ、15:カテーテル、16:浮動性の重り、18:リザーバー、20:入口部、22:キャップ、4:出口部、26:床部、27:孔、28:閉鎖部材、28a:突出面、30:底面、32:閉鎖面、38、38a:チャネル、40:重力圧力調節メカニズム、42:入口部、44:リザーバー、46;床部、48:凹部、50:浮動性の重り

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体液の圧力および分流の制御のために生体に配置するための重力圧力調節メカニズムであって、
(a) 生体の頭部の頂部への装着に適合させた、入口部と出口部を有するリザーバー、
(b) 一端に閉鎖部材を有する浮動性の重り、この重りは、該閉鎖部材が前記入口部を封鎖している閉鎖位置から重りが該入口部から離れて位置する開放位置までリザーバー内を自由に摺動するようになっている;および
(c) 前記出口部をシールするためのキャップ、
を備え、浮動性重りの質量が調節メカニズムを通る体液の流れ抵抗の量に比例する重力圧力調節メカニズム。
【請求項2】
浮動性重りの形状が略円筒形である、請求項1に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項3】
リザーバーと重りが生体適合性の非鉄材料から製作される、請求項1に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項4】
リザーバーと重りが、比重がステンレス鋼と同じかそれより大きい材料から構成される、請求項3に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項5】
リザーバーと重りが、エルギロイ(Elgiloy)、フィノックス(Phynox)およびタンタルよりなる群から選ばれた非鉄材料から構成される、請求項3に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項6】
入口部がチューブとして床上をリザーバー中に伸びている、請求項1に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項7】
重りが前記チューブの回りをピボット旋回するようになっていて、それにより、メカニズムが垂直位置から水平位置に移動すると、入口部と閉鎖部材により作られたチューブ内の開口の大きさが完全に開くまで増大する、請求項6に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項8】
重りが、入口部からメカニズムに流入した体液の一部が出口部まで制限されずに流れるのを可能にする複数のチャネルを有する、請求項1に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項9】
重りが、重りが閉鎖位置にある時に出口部から流入した体液の出口部への最小流れを可能にする、重りを貫通した孔を有している、請求項1に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項10】
体液の圧力および分流の制御のためにバルブと併用して生体に配置するための重力圧力調節メカニズムであって、
(a) 第1端部と第2端部とを有するリザーバー、第1端部は開口しており、第2端部は床部と入口部とを有し、該リザーバーは生体の頭部の頂部への装着に適合している;
(b) 重りがリザーバーの床部に接する閉鎖位置から重りがリザーバーの床部から離れて位置する開放位置までリザーバー内を自由に摺動するようになっている浮動性の重り、この重りは、重りの一端に閉鎖部材を有し、この閉鎖部材が、重りが閉鎖位置にある時に入口部と係合するようになっている表面を有している;および
(c) リザーバーの開口している第1端部をシールするための、出口部を有するキャップ、
を備え、浮動性重りの質量が調節メカニズムを通る体液の流れ抵抗の量に比例する重力圧力調節メカニズム。
【請求項11】
浮動性重りの形状が略円筒形である、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項12】
リザーバーの床部が略円錐形状で、入口部が円錐形状の床部の中心に位置する、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項13】
リザーバーと重りが生体適合性の非鉄材料から製作される、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項14】
リザーバーと重りが、比重がステンレス鋼と同じかそれより大きい材料から構成される、請求項13に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項15】
リザーバーと重りが、エルギロイ、フィノックスおよびタンタルよりなる群から選ばれた非鉄材料から構成される、請求項13に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項16】
重りが閉鎖位置にある時に入口部と係合するようになっている表面が、重りとの一体ユニットとして構成されている、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項17】
重りが閉鎖位置にある時に入口部と係合するようになっている表面が、重りに別部材として取り付けられている、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項18】
重りが閉鎖位置にある時に入口部と係合するようになっている表面が、円錐、平面、半球、湾曲、テーパー付きおよびニードルよりなる群から選ばれた形状を有する凸状部である、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項19】
重りの閉鎖部材が、重りをリザーバー内で中心に位置させるようになっている、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項20】
重りが、入口部からメカニズムに流入した体液の一部が出口部まで制限されずに流れるのを可能にする複数のチャネルを有する、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項21】
キャップがエラストマー材料から構成される、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項22】
閉鎖部材がサファイアから構成される、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項23】
閉鎖部材がサファイアの半球である、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項24】
閉鎖部材とは反対側の重りの端部とエラストマーキャップの内面との間の距離が重りの高さより小さい、請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項25】
重りが、重りが閉鎖位置にある時に出口部から流入した体液の出口部への最小流れを可能にする、重りを貫通した孔を有している請求項10に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項26】
体液の圧力および分流の制御のために生体に配置するための重力圧力調節メカニズムであって、下記を備え
(a) 生体の頭部の頂部への装着に適合させた、入口部と出口部を有するリザーバー、入口部はチューブとして床上をリザーバー中に伸びている;
(b) 一端に閉鎖面を有する浮動性の重り、この重りは、該閉鎖面が前記入口部を封鎖している閉鎖位置から該入口部が開いている開放位置までリザーバー内で回転するようになっている;および
(c) 前記出口部をシールするためのキャップ;そして
(d) メカニズムが垂直位置から水平位置に移動するにつれて、入口部と閉鎖部材により作られたチューブ内の開口の大きさが完全に開くまで増大するように、重りがチューブの回りをピボット旋回するようになっている、重力圧力調節メカニズム。
【請求項27】
重りの形状が略円筒形である、請求項26に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項28】
リザーバーと重りが生体適合性の非鉄材料から製作される、請求項26に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項29】
リザーバーと重りが、比重がステンレス鋼と同じかそれより大きい材料から構成される、請求項28に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項30】
リザーバーと重りが、エルギロイ、フィノックスおよびタンタルよりなる群から選ばれた非鉄材料から構成される、請求項28に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項31】
重りが、入口部からメカニズムに流入した体液の一部が出口部まで制限されずに流れるのを可能にする複数のチャネルを有する、請求項26に記載の重力圧力調節メカニズム。
【請求項32】
重りが、重りが閉鎖位置にある時に出口部から流入した体液の出口部への最小流れを可能にする、重りを貫通した孔を有している請求項26に記載の重力圧力調節メカニズム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−512139(P2006−512139A)
【公表日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−564831(P2004−564831)
【出願日】平成15年10月29日(2003.10.29)
【国際出願番号】PCT/US2003/034359
【国際公開番号】WO2004/060452
【国際公開日】平成16年7月22日(2004.7.22)
【出願人】(592243302)
【氏名又は名称原語表記】VYGON
【Fターム(参考)】