説明

重合体粒子の水性分散液の製造方法

【課題】 長期の保存安定性に優れ、かつ平均粒子径が0.01μm以上〜0.05μm以下の重合体粒子の水性分散液の製造方法を提供する。
【解決手段】 水性媒体中、アニオン性界面活性剤、及び水溶性重合開始剤の存在下で重合性ビニル系モノマーを乳化重合させて重合体粒子を得る工程を含み、
前記水性媒体がpH7.0を超えてpH10.0以下であり、前記アニオン性界面活性剤が前記重合性ビニル系モノマー100重量部に対して0.3重量部以上〜5.0重量部以下使用され、
前記重合性ビニル系モノマーを水性媒体中に滴下供給することにより重合して得られる0.01μm以上〜0.05μm以下の平均粒子径であることを特徴とする重合体粒子の水性分散液の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子の水性分散液の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、pH7.0を超えてpH10.0以下の範囲内の水性媒体中、アニオン性界面活性剤、及び水溶性重合開始剤の存在下での重合性ビニル系モノマーの乳化重合によって得られ、保存安定性に優れる平均粒子径が0.01μm以上〜0.05μm以下の重合体粒子の水性分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
重合体粒子は、塗料添加剤、粘着剤、化粧品添加剤、トナー外添剤、光拡散剤、液晶スペーサ等として広く用いられている。近年これら用途における一層の性能向上を狙い、0.05μm以下といったより微小な粒子径の重合体粒子の水性分散液の開発が進められている。水分散液中の重合体粒子が微小になれば、紙などの表面コーティング剤、成形体の耐衝撃性の改善剤、各種混和剤などとして広汎に使用される他、前記水性分散液中の重合体粒子と異なる粒子径の重合体粒子を含むラテックスを混合させることにより特異な粘度挙動を実現でき、この混合物は塗料の粘度調整剤として有用であるためである。
ところで、重合体粒子の水性分散液は、乳化重合、懸濁重合、シード重合、分散重合、乳化分散重合等の方法により製造できる。これら方法は、重合体粒子の粒子径や、重合体粒子を使用する目的・用途に応じて選択されている。
上記方法の内、乳化重合では、水性媒体中、界面活性剤の存在下、水溶性重合開始剤により重合性ビニル系モノマーの重合を行うことで重合体粒子の水性分散液が得られることが知られている。
特に、0.05μmを下回るような重合体粒子の水性分散液を製造する方法として、水性媒体中、界面活性剤、及び重合開始剤存在下において重合性ビニル系モノマーを滴下供給する方法が知られている(特開平5−209007号公報:特許文献1、特開2007−99897号公報:特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−209007号公報
【特許文献2】特開2007−99897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の技術では平均粒子径が0.05μmを下回る粒度の揃った重合体粒子の水性分散液は製造できるものの、重合体粒子の水性分散液を保管する場合、時間の経過と共に重合体粒子どうしの凝集が起こり、保存安定性が悪いという問題があった。上記のように重合体粒子の水性分散液の保存安定性が悪いと、例えば該重合体粒子の水性分散液を塗料の粘度調整剤として用いた場合、重合体粒子どうしの凝集により、粘度の調整が困難となることや、長期間安定した使用ができないといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、pH7.0を超えてpH10.0以下の範囲内に調製した水性媒体中、アニオン性界面活性剤、及び水溶性重合開始剤の存在下で重合性ビニル系モノマーを滴下供給しながら乳化重合させることで、長期の保存安定性に優れる平均粒子径0.01μm以上〜0.05μm以下の重合体粒子の水性分散液が得られることを見出し、本発明に至った。
かくして本発明によれば、水性媒体中、アニオン性界面活性剤、及び水溶性重合開始剤の存在下で重合性ビニル系モノマーを乳化重合させて重合体粒子を得る工程を含み、
前記水性媒体がpH7.0を超えてpH10.0以下であり、前記アニオン性界面活性剤が前記重合性ビニル系モノマー100重量部に対して0.3重量部以上〜5.0重量部以下において使用され、
前記重合性ビニル系モノマーを水性媒体中に滴下供給することにより重合して得られる0.01μm以上〜0.05μm以下の平均粒子径であることを特徴とする重合体粒子の水性分散液の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本発明の製造方法により得られる重合体粒子の水性分散液は、該水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径が0.01μm以上〜0.05μm以下と非常に微小であり、かつ長期の保存安定性に優れていることから、塗料の粘度調整剤、印刷インクのバインダー、粘着剤、化粧品添加剤、トナー添加剤、光拡散剤、液晶スペーサ等の用途に好適に用いることができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明は、水性媒体中、アニオン性界面活性剤、及び水溶性重合開始剤の存在下で重合性ビニル系モノマーを滴下供給して乳化重合させて重合体粒子を得る方法である。
本発明で使用できる重合性ビニル系モノマーとしては、特に限定されないが、好ましくはスチレン系モノマー、(メタ)アクリルエステル系モノマー等が挙げられる。ここで、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
スチレン系モノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン等が挙げられる。(メタ)アクリルエステル系モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸トリデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル等が挙げられる。
上記重合性ビニル系モノマーは、単独でも、組み合わせて使用してもよい。
【0008】
重合性ビニル系モノマーには、本発明の効果を阻害しない範囲で、他のモノマーや添加剤が添加されていてもよい。
他のモノマーとしては、例えば、二官能性重合性ビニルモノマーが挙げられる。具体的には、ジビニルベンゼン、アルキレングリコールジメタクリレート(アルキレンは炭素数2以上〜4以下の範囲が好ましい)等が挙げられる。二官能性重合性ビニルモノマーの混合割合は、重合性ビニル系モノマー100重量部に対して10重量部以下であることが好ましく、0.1重量部以上〜5重量部以下であることがより好ましい。
【0009】
他の添加剤としては、連鎖移動剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、消泡剤、増粘剤、熱安定剤、レベリング剤、滑剤、帯電防止剤等が挙げられる。
【0010】
上記重合性ビニル系モノマーを水性媒体中で乳化重合するに際して、重合性ビニル系モノマーを滴下供給させる。重合性ビニル系モノマーを一括で投入すると、重合体粒子の平均粒子径が0.05μmを超えてしまい、目的とする重合体粒子が得られないため好ましくない。モノマーの滴下時間は、短すぎると、重合時に凝集が生じることがあり、長すぎると、重合開始剤が失活し、重合が完了しないことがあるため、15分〜4時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【0011】
本発明で使用できる水性媒体としては、pH7.0を超えてpH10.0以下に調製した水を使用することができる。水性媒体のpHが7又は7未満であると、保存安定性が悪化してしまい、pHが10を超えると重合中に凝集物が多量に発生してしまうことがあるため、pH7.0を超えpH10.0以下の範囲とする。好ましくはpH7.1以上〜pH10.0以下、pH7.5以上〜pH9.5以下がより好ましい。
【0012】
上記水性媒体のpH調節方法は特に限定されないが、アンモニア水、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸水素ナトリウム等を用いることにより所定のpHに調整することができる。
上記水性媒体は、水、水と水溶性有機溶媒(例えば、低級アルコール)との混合物等が挙げられる。この内、廃水処理の問題が少ない水が好ましい。
【0013】
水性分散液における重合体粒子の固体分濃度を3重量%以上〜15重量%以下とすることが好ましい。固体分濃度を上記割合にするためには、固体分となる成分と水性媒体の割合を以下のようにすることで行なえる。重合性モノマー100重量部に対して水性媒体を566〜3233重量部用いる。水性分散液における重合体粒子の固体分濃度が15重量%を超えると、重合体粒子の分散性が悪くなり、重合体粒子の凝集物が生じる場合があるので好ましくない。水性分散液における重合体粒子の固体分濃度が3重量%未満では、生産性が低く好ましくない。
【0014】
本発明ではアニオン性界面活性剤を用いる。これは、カチオン性界面活性剤では水性媒体中のpH7.0を超えpH10.0以下の範囲ではイオン性が低いために、重合体粒子の分散性が不十分となるからである。
【0015】
本発明で使用できるアニオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、モノアルキルスルホコハク酸塩などの非反応性のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルプロペニルフェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸アンモニウムなどの反応性のアニオン性界面活性剤を挙げることができる。
特に本発明ではポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩を使用することが好ましい。このような反応性のアニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩として第一工業製薬社から商品名「アクアロンKH−10」、「アクアロンKH−1025」、「アクアロンHS−10」や、花王社から商品名「ラテムルPD−104」などとして市販されている。
アニオン性界面活性剤は単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0016】
アニオン性界面活性剤は、重合性ビニル系モノマー100重量部に対して、0.3重量部以上〜5.0重量部以下使用される。0.3重量部未満の場合、重合体粒子の分散性が悪くなり凝集物が生じる場合があるので好ましくない。5.0重量部を超える場合、重合系の粘度が大きくなることを防ぐため、水等の媒体を大量に使用する必要があり、工業的に適さないので好ましくない。好ましいアニオン性界面活性剤の使用量は0.5重量部以上〜3.5重量部以下である。より好ましいアニオン性界面活性剤の使用量は1.0重量部以上〜3.0重量部以下である。
【0017】
本発明で用いられる水溶性重合開始剤としては公知の水溶性重合開始剤を用いることができる。得られる重合体粒子の水性分散液の保存安定性が優れるという点で過硫酸金属塩が好ましい。過硫酸金属塩の具体例としては、例えば過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等があげられ、特に過硫酸カリウムが好ましい。また、前記過硫酸金属塩以外の水溶性重合開始剤としては、過硫酸アンモニウム等も使用することができる。
前記水溶性重合開始剤にナトリウムスルホオキシレートホルムアルデヒド、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素アンモニウム、チオ硫酸ナトリウム、チオ硫酸アンモニウム、過酸化水素、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム、L−アスコルビン酸、およびその塩、第一銅塩、第一鉄塩などの還元剤を重合開始剤に組み合わせて用いるレドックス系開始剤を併用しても良い。
【0018】
水溶性重合開始剤は、その種類により相違するが、重合性モノマー混合物100重量部に対して、0.1重量部以上〜3重量部以下使用することが好ましい。より好ましくは、0.3重量部以上〜2.5重量部以下である。
【0019】
重合系の攪拌回転数は、例えば、1リットル容量のフラスコを使用した場合、100rpm以上〜500rpm以下であることが好ましい。また、重合温度は、使用するモノマーや重合開始剤の種類により相違するが、30℃以上〜100℃以下であることが好ましく、重合性ビニル系モノマー滴下供給後の重合時間は、30分以上〜10時間以下であることが好ましい。
【0020】
本発明の製造方法で得られた重合体粒子は、水性媒体に分散した状態、すなわち水性分散液として得られる。こうして得られた重合体粒子の水性分散液は公知の方法で、重合体粒子と水性媒体とを分離することもできるし他の分散媒に再分散させることもできる。
【0021】
本発明の製造方法で得られた重合体粒子は、0.01μm以上〜0.05μm以下の平均粒子径を有する。0.01μm未満の場合、重合体粒子が凝集しやすくなってしまい、水性分散液の保存安定性が低下することがあるため好ましくない。0.05μmを越える場合、重合体粒子の比表面積が小さくなるので、例えば塗料添加剤として使用する場合に添加量を多くする必要があるので好ましくない。より好ましい平均粒子径は0.02μm以上〜0.045μm以下である。なお、平均粒子径の測定方法は、実施例の欄に記載する。
【0022】
更に、本発明の重合体粒子の水性分散液は、長期の保存安定性に優れており、水性分散液を長期保管しても、粒子の凝集が生じず、分散状態を維持することができる。なお、保存安定性の測定方法は、実施例の欄に記載する。
そのため、得られた重合体粒子は、塗料の粘度調整剤、印刷インクのバインダー、粘着剤、化粧品添加剤、トナー添加剤、光拡散剤、液晶スペーサ等の用途に適している。
【実施例】
【0023】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の平均粒子径、及び保存安定性の測定方法を下記する。
【0024】
(平均粒子径)
ここでいう平均粒子径は、動的光散乱法あるいは光子相関法と呼ばれる方法を利用して測定した粒子径を意味する。すなわち、0.1vol%に調製した重合体粒子の水性分散液に25℃においてレーザー光を照射し、重合体粒子から散乱される散乱光強度をマイクロ秒単位の時間変化で測定する。検出された重合体粒子に起因する散乱強度分布を正規分布に当てはめて、平均粒子径を算出するためのキュムラント解析法により求めた平均粒子径である。この種の平均粒子径は、市販の測定装置で簡便に測定可能であり、本実施例ではマルバーン社から市販されている「ゼータサイザーナノZS」を測定に使用している。
上述の市販の測定装置にはデータ解析ソフトが搭載されており、測定データを自動的に解析できる。
【0025】
(保存安定性)
重合体粒子の水性分散液50mLを密閉容器に入れ、55℃で20日間放置した。放置後の水性分散液の状態を目視、および重合体粒子の平均粒子径の測定にて確認し、次のような基準で評価した。
◎・・・(保存安定性が非常に優れている)水性分散液の外観に変化がなく、重合体粒子の平均粒子径の変化が±0.01μm未満である。
○・・・(保存安定性に優れている)容器壁面に凝集物が付着しているが、重合体粒子の平均粒子径の変化が±0.01μm未満である。
×・・・(保存安定性が悪い)水性分散液の粘度が上昇しゲル化した状態である、およびまたは、平均粒子径の変化が±0.01μm以上である。
【0026】
(実施例1)
1L容量の3口セパラブルフラスコに、pH8.0に調整したイオン交換水350重量部、アニオン性界面活性剤として、ポリオキシエチレン−1−(アリルオキシメチル)アルキルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製:商品名「アクアロンKH1025(25%水溶液)」)3.2重量部(界面活性剤は重合性ビニル系モノマー100重量部に対して2重量部)を供給し、250rpmの攪拌回転数で攪拌しつつ、80℃に加熱した。次に、水溶性重合開始剤として過硫酸カリウム0.4部を供給した後、メタクリル酸メチル40重量部を1時間に亘って滴下供給した。滴下供給終了後、80℃にて2時間に亘って攪拌を続けながらさらに乳化重合を行なった。その後、乳化液を室温まで冷却することで重合体粒子の水性分散液を得た。使用した原料の種類及び使用量を表1に示す。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.041μmであり、保存安定性が非常に優れるものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.043μmであった。
【0027】
(実施例2)
pH9.5に調整したイオン交換水を使用したこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.039μmであり、保存安定性が非常に優れるものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.039μmであった。
【0028】
(実施例3)
pH7.5に調整したイオン交換水を使用したこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.045μmであり、保存安定性が非常に優れるものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.045μmであった。
【0029】
(実施例4)
アニオン性界面活性剤を1.6重量部(重合性ビニル系モノマー100重量部に対して1重量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.046μmであり、保存安定性が非常に優れるものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.048μmであった。
【0030】
(実施例5)
アニオン性界面活性剤を4.8重量部(重合性ビニル系モノマー100重量部に対して3重量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.032μmであり、保存安定性が非常に優れるものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.032μmであった。
【0031】
(実施例6)
水溶性重合開始剤として過硫酸アンモニウムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.041μmであり、保存安定性に優れるものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.046μmであった。
【0032】
(実施例7)
メタクリル酸メチルを38重量部とし、更にエチレングリコールジメタクリレート(EGDMA)を2重量部使用したこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.039μmであり、保存安定性が非常に優れるものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.041μmであった。
【0033】
(実施例8)
メタクリル酸メチルの代わりにスチレンとしたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.043μmであり、保存安定性が非常に優れるものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.043μmであった。
【0034】
(実施例9)
アニオン性界面活性剤を0.8重量部(重合性ビニル系モノマー100重量部に対して0.5重量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.047μmであり、保存安定性に優れるものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.048μmであった。
【0035】
(実施例10)
アニオン性界面活性剤をドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムとしたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.040μmであり、保存安定性が非常に優れるものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.042μmであった。
【0036】
(比較例1)
pH4.0に調整したイオン交換水を使用したこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.042μmであったが、保存安定性が悪いものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.098μmであった。
【0037】
(比較例2)
pH12に調整したイオン交換水を使用したこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
この場合、重合中に凝集が生じたことによる水性分散液の粘度上昇のため、重合の進行が不可となり、重合を中断した。
【0038】
(比較例3)
アニオン性界面活性剤を0.16重量部(重合性ビニル系モノマー100重量部に対して0.1重量部)としたこと以外は、実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径は0.078μmと目的の重合体粒子は得られず、保存安定性も非常に悪いものであった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.175μmであった。
【0039】
(比較例4)
メタクリル酸メチルを滴下供給せずに、一括で供給したこと以外は実施例1と同様にして重合体粒子の水性分散液を得た。
得られた重合体粒子の水性分散液の保存安定性は非常に優れるものであったが、重合体粒子の平均粒子径は0.081μmであり、目的の重合体粒子は得られなかった。55℃、20日間放置後の平均粒子径は、0.081μmであった。
【0040】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明の製造方法により得られる重合体粒子の水性分散液は、該水性分散液中の重合体粒子の平均粒子径が0.01μm以上〜0.05μm以下と非常に微小であり、かつ長期の保存安定性に優れていることから、塗料の粘度調整剤、印刷インクのバインダー、粘着剤、化粧品添加剤、トナー添加剤、光拡散剤、液晶スペーサ等の用途に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性媒体中、アニオン性界面活性剤及び水溶性重合開始剤の存在下で重合性ビニル系モノマーを乳化重合させて重合体粒子を得る工程を含み、
前記水性媒体がpH7.0を超えてpH10.0以下であり、
前記アニオン性界面活性剤が前記重合性ビニル系モノマー100重量部に対して0.3重量部以上〜5.0重量部以下使用され、
前記重合性ビニル系モノマーを水性媒体中に滴下供給することにより重合して得られる0.01μm以上〜0.05μm以下の平均粒子径であることを特徴とする重合体粒子の水性分散液の製造方法。
【請求項2】
前記水溶性重合開始剤が過硫酸金属塩であることを特徴とする請求項1に記載の重合体粒子の水性分散液の製造方法。
【請求項3】
前記水性分散液における固体分濃度を3重量%以上〜15重量%以下とすることを特徴とする請求項1に記載の重合体粒子の水性分散液の製造方法。