説明

重合体粒子の製造方法

【課題】所望の粒径を有し、しかも大きさの揃った重合体粒子を提供することを課題とする。
【解決手段】エチレン系単量体と重合開始剤とを吸収させたシード粒子と分散剤とを含む水性媒体を加熱して、前記シード粒子に吸収させたエチレン系単量体を重合させて重合体粒子を得る方法であって、前記分散剤が、平均粒子径が300nm以下のリン酸カルシウム粒子と重合リン酸塩とを含む懸濁液であることを特徴とする重合体粒子の製造方法により上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体粒子の製造方法に関する。更に詳しくは、本発明は、リン酸カルシウム粒子と重合リン酸塩とを含む懸濁液を分散剤として用いる重合体粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1〜100μmの範囲の粒径を有し、しかも大きさの揃った重合体粒子が、スペーサー、滑り性付与剤、複写機のトナー、塗料のつや消し剤、機能性担体等の分野で要求されている。更に、近年、液晶分野において、光拡散板や光拡散フィルム、防眩フィルムといった用途でも、上記重合体粒子が要求されている。このような要求に応じるための重合体粒子の製造方法として、下記方法が知られている。
まず、微細な重合体粒子の製造方法として、乳化重合法が知られている。しかし、乳化重合法によって作った粒子は粒径が通常1μmより小さく、それ以上の大きさの粒子を作ることは困難である。
【0003】
1μmよりも大きな粒径の重合体粒子の製造方法としては、懸濁重合法が知られている。懸濁重合法によれば5〜数百μmの範囲にわたる粒径の重合体粒子を製造できる。しかし、懸濁重合法は、大きさが不揃いで、粒径が広い範囲にわたって分布した粒子が得られる。
そこで、1〜100μmの範囲の粒径を有し、しかも大きさの揃った重合体粒子を製造できる方法の提供が望まれている。
【0004】
上記の要望に応じる製造方法としてシード重合法が知られている。シード重合法とは、重合体粒子をシード粒子として使用し、このシード粒子に単量体を吸収させ、吸収された単量体をシード粒子内で重合させることで、シード粒子よりも大きな重合体粒子を得るという方法である。この方法では、大きさの揃ったシード粒子を使用すること、各シード粒子に単量体を一様に吸収させることにより、大きさの揃った粒子を得ることができる。原料となる大きさの揃ったシード粒子は、ソープフリー乳化重合法及び分散重合法等によって製造できる。
【0005】
シード重合法としては、例えば、特開平9−241310号公報(特許文献1)記載の方法が知られている。この公報には、25℃での溶解度パラメータが10.5〜12である分散媒を用いる分散重合法によって得られるシード粒子の存在下に、シード重合法により粒子を得る方法が記載されている。また、得られた粒子は、耐溶剤性に優れ、単分散性に優れているとされている。この公報では、ポリビニルアルコールのような水溶性高分子や、ヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)のような無機物等が分散剤として記載されている。
【特許文献1】特開平9−241310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記公報で分散剤として使用されているポリビニルアルコールのような水溶性高分子は、それを使用した場合、得られた重合体粒子を洗浄しても一部粒子に付着したまま残留する。分散剤の付着量が多いと、得られた粒子が癒着することがある。更に、粒子を高温下に曝した場合、分散剤の変質により、粒子が変色することがある。例えば、粒子とそれを含む透明樹脂とからなる製品を押出法により作製する場合、透明樹脂に粒子を練り込んで押出す際の加熱により、粒子が黄変することがある。
【0007】
上記癒着や変色を解決するために、大量の水もしくは温水、又は有機溶剤で、粒子を洗浄する方法がある。しかしながら、このような洗浄方法では洗浄効果が低く、粒子間に残った分散剤、あるいは粒子に付着した分散剤を充分に除去できない。加えて、この方法は、水を大量に使用するため不経済である。また、有機溶剤で洗浄する方法では、廃液処理あるいは有機溶剤を回収するための設備が必要となり、設備コストが高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために本発明の発明者は、熱により変質する水溶性高分子ではなく、熱により変質し難いリン酸カルシウムを分散剤とする変色し難い粒子の製造方法について検討している。ところで、上記公報では、ヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)からなる無機物を分散剤として使用できると記載されている。しかし、実際にどのような性状のリン酸カルシウムが使用できるのかについての記載は一切ない。
【0009】
本発明の発明者は、種々のリン酸カルシウムをシード粒子の製造に使用した結果、重合リン酸塩と特定の平均粒子径のリン酸カルシウム粒子とを含む分散剤をシード重合法に使用することで、所望の粒径を有し、しかも大きさの揃った重合体粒子が得られることを意外にも見い出し本発明に至った。
【0010】
かくして本発明によれば、エチレン系単量体と重合開始剤とを吸収させたシード粒子と分散剤とを含む水性媒体を加熱して、前記シード粒子に吸収させたエチレン系単量体を重合させて重合体粒子を得る方法であって、
前記分散剤が、平均粒子径が300nm以下のリン酸カルシウム粒子と重合リン酸塩とを含む懸濁液であることを特徴とする重合体粒子の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、所望の粒径を有し、しかも大きさの揃った重合体粒子が得られる。加えて、得られた重合体粒子を塩酸水溶液で洗浄することで、分散剤を容易に分解除去ができる。その結果、後の工程で重合体粒子が加熱されても、分散剤に由来する重合体粒子の変色を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、シード重合法に、平均粒子径が300nm以下のリン酸カルシウム粒子と重合リン酸塩とを含む懸濁液からなる分散剤を使用することを特徴の1つとする。
本発明で使用されるリン酸カルシウム粒子は、リン酸カルシウムのみからなる粒子でもよく、リン酸カルシウム1モルに対して1/3モル程度の水酸化カルシウムを含む混合体からなる粒子であってもよい。また、リン酸カルシウム粒子は、カルシウム(Ca)とリン(P)との重量比(Ca/P比)が、1.4〜1.75の範囲にあるものが好ましい。
【0013】
リン酸カルシウム粒子は、300nm以下の平均粒子径を有している。平均粒子径が大きすぎると、懸濁液の安定性が悪くなり、リン酸カルシウム粒子の凝集、合一により粗大粒子が発生する。粗大粒子を含む分散剤をシード重合法に使用すると、大きさの揃った(粒度分布の狭い)重合体粒子を得ることが困難である。好ましい平均粒子径は100nm以下である。なお、平均粒子径は、通常、一次粒子径を意味するが、前記範囲内であれば、リン酸カルシウム粒子の凝集体の粒子径であってもよい。
懸濁液中のリン酸カルシウム粒子の含量は、0.1〜15重量%が好ましい。
【0014】
リン酸カルシウム粒子だけからなる懸濁液は、リン酸カルシウム粒子が凝集して流動性を失うことで、プリン状にゲル化してしまう。そこで、本発明では、ゲル化を抑えるため懸濁液に重合リン酸塩を含有させている。
重合リン酸塩としては、ヘキサメタリン酸ナトリウム等が挙げられる。
重合リン酸塩の含量は、懸濁液中の固形分(主にリン酸カルシウム粒子)に対して、5〜20重量%であることが好ましく、8〜15重量%であることがより好ましい。
【0015】
懸濁液を構成する溶媒は、主に水からなる。この溶媒に、本発明の効果を阻害しない範囲で、他の水溶性の有機溶媒を添加してもよい。このような有機溶媒としては、メタノール、エタノール等の低級アルコールが挙げられる。
懸濁液は、更に、アルミン酸塩を含有することが好ましい。懸濁液は、長期保存(例えば、25℃で7日以上)によりpHが上昇することでリン酸カルシウム粒子の凝集により流動性を失うことがあるが、アルミン酸を含有させることで、長期保存時でも安定した流動を保つことができる。
アルミン酸塩としては、アルミン酸ナトリウム等が挙げられる。
アルミン酸塩の含量は、固形分に対して、0.5重量%以上が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましく、0.5〜3重量%が更に好ましい。
【0016】
分散剤の使用量は、エチレン系単量体100重量部に対して、0.1〜45重量部(固形分)であることが好ましく、1〜15重量部であることがより好ましい。0.1重量部未満の場合は、エチレン系単量体の液滴を安定に分散させることが困難なため、大きさの揃った重合体粒子を得難いため好ましくない。45重量部より多い場合は、添加に見合う効果が得られず、製造コストが高くつくと共に、重合体粒子から分散剤を容易に除去し難くなるため好ましくない
分散剤は、例えば以下の方法により得ることができる。
【0017】
塩基性(例えばpH9以上)に保たれた塩化カルシウム水溶液とリン酸水溶液を混合することで、リン酸カルシウム粒子が沈殿する。沈殿を含む水溶液から、上澄み液を必要に応じて除去し、沈殿に重合リン酸塩と任意にアルミン酸塩を添加することで分散剤を得ることができる。
【0018】
リン酸カルシウム粒子の沈殿時及び/又は重合リン酸塩の添加時に、超音波のような攪拌手段により攪拌してもよい。また、上澄み液の沈殿に、重合リン酸塩の水溶液を添加し、攪拌して均一な懸濁液を得た後、懸濁液をろ過膜により濃縮し、濃縮物に重合リン酸塩と任意にアルミン酸塩を添加することで分散剤を得てもよい。
【0019】
重合体粒子は、エチレン系単量体と重合開始剤とを吸収させたシード粒子と分散剤とを含む水性媒体を加熱して、シード粒子に吸収させたエチレン系単量体を重合させることにより得られる。
エチレン系単量体及び重合開始剤のシード粒子への吸収は、水性媒体への添加前に行ってもよく、添加時に行なってもよい。分散剤は、シード粒子の添加時に水性媒体へ添加してもよく、シード粒子の添加前に予め水性媒体中へ添加しておいてもよい。
【0020】
エチレン系単量体は、特に限定されず、公知の単量体をいずれも使用できる。例えば、スチレン、p−メチルスチレン等のスチレン系モノマー;アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ラウリル、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート等のアクリル酸エステルモノマー;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ラウリル、ジメチルアミノエチルメタクリレート等のメタクリル酸エステル系モノマー、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系モノマー;N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニトリル系モノマー;ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の多官能モノマー等が挙げられる。これらのエチレン系単量体は、単独で使用でき、また2種類以上を組み合わせて使用できる。なお、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0021】
重合開始剤は、特に限定されず、例えば過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、オルソクロロ過酸化ベンゾイル、オルソメトキシ過酸化ベンゾイル、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ジ−t−ブチルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスシクロヘキサカルボニトリル、アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物が挙げられる。これらの重合開始剤は、単独で使用でき、また2種類以上を組み合わせて使用できる。
【0022】
重合開始剤は、シード粒子のエチレン系単量体への添加時に加えてもよく、予めエチレン系単量体に加えておいてもよい。これらの内、重合開始剤は、予めエチレン系単量体に加えておくことが好ましい。
シード粒子は、できるだけ大きさの揃った粒子が好ましい。また、シード粒子は、得ようとする重合体粒子よりも小さい平均粒子径でなければならない(例えば、重合体粒子の平均粒子径の85%以下)。このようなシード粒子は、公知のソープフリー乳化重合法あるいは分散重合法により得ることができる。なお、シード粒子は、エチレン系単量体として例示された単量体に由来する粒子を使用できる。
【0023】
エチレン系単量体の吸収量の向上は、シード粒子を構成する重合体の分子量を低下させることで実現できる。分子量の低下は、シード粒子の製造のための重合の際に連鎖移動剤を用いることで行うことができる。連鎖移動剤としては、例えばノルマルオクチルメルカプタンが挙げられる。
水性媒体は、水、又は水と水溶性有機溶媒(例えば、エタノールのような低級アルコール)との混合媒体が挙げられる。
【0024】
重合時の重合体粒子及び/又はエチレン系単量体を吸収したシード粒子の分散安定性を高めるため、水性媒体中に、水溶性有機分散剤や補助安定剤を加えてもよい。水溶性有機分散剤としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン等が挙げられる。補助安定剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、長鎖アルコール等が挙げられる。
【0025】
更に、目的とする重合体粒子以外の新たな粒子の発生を抑制する目的で、重合時に水溶性の重合禁止剤を使用してもよい。そのような重合禁止剤としては、亜硝酸ナトリウム、塩化第二鉄、ハイドロキノン等が挙げられる。
【0026】
以下、本発明の重合体粒子の製造方法の一例を詳述する。
まず、エチレン系単量体と重合開始剤を、水性媒体中に加え、得られた系をホモジナイザー、超音波処理機、ナノマイザー、マウントガリン型等の微細乳化機により微分散させることで、エチレン系単量体及び重合開始剤を微分散させたエマルジョンを得ることができる。重合開始剤は、エチレン系単量体と別に、水性媒体に微分散させた後、エチレン系単量体を微分散させたエマルジョンに加えてもよい。また、重合性単量体と重合開始剤とを予め混合した後で微分散させてもよい。微分散したエチレン系単量体の液滴の粒径は、シード粒子への吸収性の観点から、シード粒子よりも小さいことが好ましい。
【0027】
上記エマルジョンにシード粒子を混合する。この後、得られた混合物を室温下で暫く攪拌すると、エチレン系単量体がシード粒子に吸収される。この吸収は、例えば光学顕微鏡で混合物を観察することによって容易に確認できる。
吸収は、エチレン系単量体が実質的に重合しない温度下で行うことが好ましい。十分に吸収させる前に重合が進行するとエチレン系単量体に由来する重合体粉末を生成する場合があるため好ましくない。エチレン系単量体が実質的に重合しない温度は、高い方が吸収速度を速めるには有利である。吸収時間は、30分〜3時間が適当である。
【0028】
こうして、エチレン系単量体を吸収したシード粒子の分散状態を安定化するために、エマルジョンに分散剤が添加される。添加後、攪拌を続けながらエマルジョンを数時間加熱することで、シード粒子中に吸収されたエチレン系単量体を重合させる。上記工程により、重合体粒子が得られる。
【0029】
エチレン系単量体の重合は、40〜80℃で行うことが好ましい。重合温度が80℃より高い場合、反応が急激に起こることがあるので好ましくなく、40℃より低い場合、重合に時間がかかることがあるので好ましくない。なお、この重合温度への昇温は、一定あるいは段階的に漸次昇温(このときの昇温速度は、例えば0.1〜2℃/分である)して行うことが好ましい。
得られた重合体粒子は、必要に応じて水性媒体から単離される。単離後の重合体粒子は、通常水洗することで、その表面に付着した分散剤が除去される。塩酸水溶液で水洗すれば、分散剤の除去をより確実に行うことができる。
【0030】
本発明の製造方法によれば、1〜100μmの範囲内の平均粒子径を有する重合体粒子を得ることができる。また、CV値が3〜15%の範囲内の大きさの揃った重合体粒子を得ることができる。これらの範囲の平均粒子径とCV値を有する重合体粒子は、表示装置(PDP、液晶表示パネル)のスペーサー、滑り性付与剤、複写機のトナー、塗料のつや消し剤、機能性担体等の原料として有用である。更に、液晶表示パネル分野において、光拡散板、光拡散フィルム、防眩フィルム等の原料としても有用である。
【実施例】
【0031】
以下、実施例及び比較例により本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、実施例及び比較例中の各種値の測定方法を下記する。
<平均粒子径の測定方法>
・リン酸カルシウム粒子、シード粒子の平均粒子径
リン酸カルシウム粒子、シード粒子の平均粒子径は、ベックマンコールター社製のLS230型で測定する。具体的には、粒子0.1gと0.1%ノニオン性界面活性剤溶液10mlを投入し、ヤマト科学社製タッチミキサーTOUCHMIXER MT−31で2秒間混合する。この後、試験管を市販の超音波洗浄器であるヴェルボクリーア社製ULTRASONIC CLEANER VS−150を用いて10分間分散させる。分散させたものをベックマンコールター社製のLS230型にて超音波を照射しながら測定する。そのときの光学モデルは作製した粒子の屈折率にあわせる。
・重合体粒子の平均粒子径
重合体粒子の平均粒子径は、ベックマンコールター社製のコールターカウンターで測定する。測定方法は、Coulter Electronics Limited発行のREFERENCE MANUAL FOR THE COUTERMULTISIZER(1987)に従って、50μmのアパチャーを用いてキャリブレーションを行い測定する。
【0032】
<CV値>
変動係数(CV値)は、粒子径の標準偏差(σ)及び平均粒子径(x)を次の式に代入することにより算出する。
CV値(%)=(σ/x)×100
【0033】
<色差b値>
重合体粒子を含むスラリーを吸引濾過装置により脱水し、60℃の恒温槽中で充分に乾燥する。乾燥した重合体粒子を乳鉢で解砕し、アルミニウム製の容器にとり、恒温槽中200℃で1時間加熱する。次いで、乳鉢中で重合体粒子を更に解砕し、得られた解砕物の色差b値を色彩色差計(CR−300;ミノルタ社製)により測定する。
【0034】
分散剤製造例1
塩化カルシウム2水和物147gを、50Lの脱イオン水に溶解する。完全に溶解後、25%NaOH水溶液160gをゆっくりと添加し塩基性に調整した。このようにして得られた塩基性塩化カルシウム水溶液をA液とする。
85%リン酸100gを10Lの脱イオン水で希釈する。更に25%NaOH水溶液320gを添加し塩基性に調整した。このようにして得られた塩基性リン酸水溶液をB液とする。
【0035】
A液を激しく攪拌しながら、B液をすばやく全量添加し反応を行った。反応は室温で行った。
全量添加後、更に10分間攪拌を行った後、反応液を静置し、生じたリン酸カルシウム粒子の沈殿を沈降させた。
沈殿の容積が20L以下になるまで静置後、上澄み液を抜き出し、沈殿層に10%ヘキサメタリン酸ソーダ200g及び10%水酸化ナトリウム40gを添加し、攪拌を行い均一な懸濁液とした。
【0036】
上記で得たリン酸カルシウム粒子を含有した懸濁液を、限外ろ過膜を用いて懸濁液が1L以下になるまで濃縮を行った。
上記リン酸カルシウム粒子含有懸濁液に、10%へキサメタリン酸ナトリウム溶液100gと10%水酸化ナトリウム水溶液40g及び10%アルミン酸ナトリウム水溶液20gを添加した後、超音波ホモジナイザーにて分散を行いリン酸カルシウム粒子が均一に分散したゾルを得た。これにより、一次粒子径50nmのリン酸カルシウム粒子を含む分散剤が得られた。
リン酸カルシウム粒子の平均粒子径を表1に示す。
【0037】
分散剤製造例2
分散剤製造例1の条件からアルミン酸塩を除くこと以外は分散剤製造例1と同様にして分散剤を作製した。
分散剤製造例3
分散剤製造例1の条件から重合リン酸塩とアルミン酸塩を除くこと以外は分散剤製造例1と同様にして分散剤の作製を試みたが、ゲル状混合物が得られ、分酸剤として使用できなかった。
表1に分散剤製造例1〜3のリン酸カルシウム粒子の平均粒子径、重合リン酸塩及びアルミン酸塩の使用不使用をまとめて示す。
【0038】
【表1】

【0039】
シード粒子製造例1
純水630g中にメタクリル酸メチル(MMA)108gとオクチルメルカプタン1.1gを投入した後、窒素パージを行い、更に55℃まで昇温した。その後、過硫酸カリウムを0.54g純水100gに溶解したものを添加した後、再び窒素パージを行った。その後、55℃で12時間重合を行い、平均粒子径0.75μmのシード粒子をスラリーの状態(シード粒子14重量%含有)で得ることができた。
表2にシード粒子の構成単量体及び平均粒子径をまとめて示す。
【0040】
【表2】

【0041】
実施例1
エチレン系単量体としてメタクリル酸メチル112gとエチレングリコールジメタクリレート48gからなる混合溶液に、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.96g溶解して、重合性単量体成分とした。
これとは別に、純水160gにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8gを溶解し、この水溶液に上記の重合性単量体成分を混合し、T・Kホモミキサーを用いて8000rpmで10分間攪拌した。このエマルジョンを攪拌機及び温度計を備えた容量1Lの反応容器に入れ、シード粒子製造例1のスラリーを57g添加した。120rpmで4時間攪拌することで、シード粒子を膨潤させた。
【0042】
分散剤製造例1の1%水溶液480gに亜硝酸ナトリウムを0.13g添加し、次いで膨潤終了後のスラリーを添加し、更に70℃で12時間重合を行い、平均粒子径2μm、CV値10.5%の重合体粒子を得た。得られた重合体粒子の電子顕微鏡写真(倍率2500倍)を図1に示す。
【0043】
実施例2
エチレン系単量体としてメタクリル酸メチル112gとエチレングリコールジメタクリレート48gからなる混合溶液に、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.96g溶解して、重合性単量体成分とした。
これとは別に、純水160gにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.8g溶解し、この水溶液に上記の重合性単量体成分を混合し、T・Kホモミキサーを用いて8000rpmで10分間攪拌した。このエマルジョンを攪拌機及び温度計を備えた容量1Lの反応容器に入れ、シード粒子製造例1のスラリーを57g添加した。120rpmで4時間攪拌することで、シード粒子を膨潤させた。
分散剤製造例2の1%水溶液480gに亜硝酸ナトリウムを0.13g添加し、次いで膨潤終了後のスラリーを添加し、更に70℃で12時間重合を行い、平均粒子径2μm、CV値11.0%の重合体粒子を得た。
【0044】
比較例1
エチレン系単量体としてのメタクリル酸メチル112gとエチレングリコールジメタクリレート48gからなる混合溶液に、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.96g溶解して、重合性単量体成分とした。
これとは別に、純水160gにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.8gを溶解し、この水溶液に上記の重合性単量体成分を混合し、T・Kホモミキサーを用いて8000rpmで10分間攪拌した。このエマルジョンを攪拌機及び温度計を備えた容量1Lの反応容器に入れ、シード粒子製造例1のスラリーを57g添加した。得られた系を120rpmで4時間攪拌を行い、シード粒子を膨潤させた。
5%ポリビニルアルコール水溶液(ゴーセノールGM−14:日本合成化学社製)480gに亜硝酸ナトリウムを0.13g添加し、次いで膨潤終了後のスラリーを添加し、更に70℃で12時間重合を行い、平均粒子径2μm、CV値11.0%の重合体粒子を得た。
【0045】
比較例2
エチレン系単量体としてメタクリル酸メチル98gとエチレングリコールジメタクリレート42gからなる混合溶液に、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリルを0.84g溶解して、重合性単量体成分とした。
これとは別に、純水140gにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを0.7g溶解し、この水溶液に上記の重合性単量体成分を混合し、T・Kホモミキサーを用いて8000rpmで10分間攪拌した。このエマルジョンを攪拌機及び温度計を備えた容量1Lの反応容器に入れ、シード粒子製造例1のスラリーを50g添加した。120rpmで4時間攪拌を行い、シード粒子を膨潤させた。
【0046】
膨潤終了後に分散剤としてTCP−10(日本化学社製、スーパータイト:アパタイト濃度10%)560gに亜硝酸ナトリウムを0.11g添加し、次いで膨潤終了後のスラリーを添加し、更に70℃で12時間重合を行い、重合体粒子を得た。得られた重合体粒子を光学顕微鏡で観察したところ、得られた重合体は、粒子の形状を維持していない大きな塊であった。得られた重合体の電子顕微鏡写真(倍率2500倍)を図2に示す。
表3に実施例1と2及び比較例1と2で使用したエチレン系単量体、シード粒子及び分散剤の種類、分散剤の平均粒子径、得られた重合体粒子の平均粒子径、CV値、色差b値をまとめて示す。
【0047】
【表3】

【0048】
実施例1及び2によれば、300nm以下の平均粒子径を有するリン酸カルシウム粒子を含む分散剤を使用することで、所望の粒径を有し、しかも大きさの揃った重合体粒子が得られることがわかる。また、加熱による変色が少ないこともわかる。
一方、比較例1の重合体粒子は、ポリビニルアルコールの変質により粒子が変色していることがわかる。
また、比較例2によれば、平均粒子径が大きなリン酸カルシウム粒子を含む分散剤を使用した場合、重合体が粒子の形状を維持しない大きな塊となり重合体粒子が得られないことがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1の重合体粒子の電子顕微鏡写真である。
【図2】比較例2の重合体粒子の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン系単量体と重合開始剤とを吸収させたシード粒子と分散剤とを含む水性媒体を加熱して、前記シード粒子に吸収させたエチレン系単量体を重合させて重合体粒子を得る方法であって、
前記分散剤が、平均粒子径が300nm以下のリン酸カルシウム粒子と重合リン酸塩とを含む懸濁液であることを特徴とする重合体粒子の製造方法。
【請求項2】
前記分散剤が、更にアルミン酸塩を含む請求項1に記載の重合体粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−231380(P2008−231380A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77301(P2007−77301)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】