説明

重合体組成物およびこれを含有する硬化性組成物

【課題】貯蔵時の増粘率を低く抑えることができる重合体組成物を提供する。
【解決手段】ポリオキシアルキレン鎖と水酸基を有する重合体(pP)と、アルコキシシリル基とイソシアネート基を有する化合物(U)をウレタン化反応させて得られる、ウレタン結合を有する、アルコキシシリル基含有オキシアルキレン重合体(P)、およびジアシルヒドラジン系化合物、アミノトリアゾール系化合物、およびベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物(A)を含有する重合体組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン結合を有し、アルコキシシリル基を有するオキシアルキレン重合体(P)を含有する重合体組成物、および該重合体組成物を含有する硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオキシアルキレン鎖の末端にウレタン結合を介して加水分解性ケイ素基を有する重合体を硬化成分とする硬化性組成物は、湿分硬化してゴム弾性に優れた硬化物を形成するためシーリング材として用いられる(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献2には、ポリオキシアルキレン鎖と、該ポリオキシアルキレン鎖端にウレタン結合を介して結合したトリアルコキシシリル基とを有するシリコーン系樹脂が速硬化性を有すること、該シリコーン系樹脂に硬化触媒である錫触媒を配合すると貯蔵安定性が著しく損なわれること、および該シリコーン系樹脂に錫触媒とともにアミノ基置換アルコキシシラン類を配合すると貯蔵中の増粘が抑えられることが記載されている。
【0004】
特許文献3には、建築用変成シリコーン系シーリング材組成物に、ジアシルヒドラジン系化合物またはアミノトリアゾール系化合物を含有させることにより、該シーリング材組成物の貯蔵安定性を向上させる方法が記載されている。特許文献3において、貯蔵安定性の向上を図る対象は、シロキサン結合を形成することにより架橋し得る珪素基を有するゴム状有機重合体(ウレタン結合を有しない。)の他に、可塑剤、充填剤等の添加剤、およびジブチル錫オキシド等の硬化触媒を含有するシーリング材組成物である(特許文献3の[0004][0028]等参照)。
【特許文献1】特開平03−047825号公報
【特許文献2】特開平10−245482号公報
【特許文献3】特開2000−273440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2,3はいずれも、硬化性の重合体と硬化触媒とを含む組成物の貯蔵安定性を向上させる方法に関する。
しかしながら、ポリオキシアルキレン鎖と、該ポリオキシアルキレン鎖端にウレタン結合を介して結合したアルコキシシリル基を有する重合体は、硬化触媒と混合する前の状態であっても貯蔵中に増粘する場合があることがわかった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、ポリオキシアルキレン鎖と該ポリオキシアルキレン鎖端にウレタン結合を介して結合したアルコキシシリル基とを有する特定の重合体を含有する重合体組成物であって、貯蔵中の増粘が少ない重合体組成物、および該重合体組成物を含有する硬化性組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、ポリオキシアルキレン鎖を有するプレポリマーと、アルコキシシリル基およびイソシアネート基を有する化合物とを、ウレタン化反応させて上記特定の重合体を製造する場合に、ウレタン化反応触媒として使用した有機錫化合物などの金属触媒が残存していると、特定重合体の貯蔵安定性が悪く、粘度が上昇することを知見した。また、得られた特定重合体から該金属触媒を完全に除去した場合であっても、プレポリマーを合成する際に使用した触媒や酸化物等の不純物によって、この特定重合体の粘度が、貯蔵時間が長くなるにつれて上昇することを知見した。そして、かかる知見に基づいて研究を重ねた結果、本発明に至った。
【0007】
すなわち、前記課題を解決するために、本発明の重合体組成物は、ポリオキシアルキレン鎖および水酸基を有する重合体(pP)と、下式(1)で表されるアルコキシシリル基およびイソシアネート基を有する化合物(U)をウレタン化反応させて得られる重合体(P)と、ジアシルヒドラジン系化合物、アミノトリアゾール系化合物、およびベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物(A)を含有することを特徴とする。
(X−)(R−)Si−Q−NCO …(1)
(式中、Xは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルコキシル基であり、Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、aは2または3であり、bは0または1であり、a+bは3であり、Qは、炭素数1〜20の2価の有機基である。)
前記重合体(P)の100質量部に対して、前記化合物(A)を0.01〜10.0質量部含有することが好ましい。
前記重合体(P)の末端基あたりの数平均分子量が5000以上であることが好ましい。 前記重合体(P)の末端基あたりの数平均分子量が7500以上であることが好ましい。
また本発明は、上記重合体組成物および硬化触媒を含有する重合体組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリオキシアルキレン鎖と該ポリオキシアルキレン鎖端にウレタン結合を介して結合したアルコキシシリル基とを有する特定の重合体を含有する重合体組成物であって、貯蔵中の増粘が少ない重合体組成物、および該重合体組成物を含有する硬化性組成物が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下において、数平均分子量をMnと、重量平均分子量をMwと、分子量分布をMw/Mnと記載する。
本明細書における分子量および分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(標品:ポリスチレン)により測定した値である。
【0010】
<重合体(pP)>
本発明において用いられる重合体(pP)は、ポリオキシアルキレン鎖と水酸基を有する重合体である。
重合体(pP)におけるポリオキシアルキレン鎖は、炭素数2〜6のアルキレンオキシドの開環重合により形成されたオキシアルキレンの重合単位からなるのが好ましい。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、およびヘキシレンオキシドからなる群から選ばれる1種以上のアルキレンオキシドの開環重合により形成されたオキシアルキレンの重合単位からなるのがより好ましい。プロピレンオキシドの開環重合により形成されたオキシアルキレンの重合単位からなるのがさらに好ましい。
該ポリオキシアルキレン鎖が2種以上のオキシアルキレンの重合単位からなる場合、2種以上のオキシアルキレンの重合単位の並び方は、ブロック状であってもよくランダム状であってもよい。
重合体(pP)における水酸基は、ポリオキシアルキレン鎖の末端に位置していることが好ましい。重合体(pP)の1分子における水酸基の数は1〜6個が好ましく、1〜4個がより好ましく、2〜3個がさらに好ましい。また1分子中の水酸基の数が1個である重合体(pP)を含む場合は、硬化物が柔軟になり易いため、硬化物をシーリング材として用いる場合に好ましい。
重合体(pP)の1分子における水酸基の数は、開始剤として用いた活性水素原子を有する化合物の1分子における活性水素原子の数とみなすものとする。
重合体(pP)の水酸基1個あたりのMnは、1000〜18000が好ましく、3000〜15000がより好ましい。
【0011】
重合体(pP)は、有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体の存在下、活性水素原子を有する化合物(開始剤)にアルキレンオキシドを開環重合させて得た重合体(pP1)であることが好ましい。
【0012】
前記「有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体」における複合金属シアン化物錯体は、亜鉛とコバルトの組合せ、または亜鉛と鉄の組合せからなる複合金属のシアン化物錯体を骨格とするものが好ましい。亜鉛ヘキサシアノコバルテートを骨格とするもの、または亜鉛ヘキサシアノ鉄を骨格とするものがより好ましい。
有機配位子は、エーテル系配位子またはアルコール系配位子が好ましい。エーテル系配位子の具体例としては、エチレングリコールジメチルエーテル(グライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、トリエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。アルコール系配位子の具体例としては、tert−ブチルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、tert−ペンチルアルコール、iso−ペンチルアルコール、エチレングリコールモノ−tert−ブチルエーテルが挙げられる。
【0013】
活性水素原子を有する化合物(開始剤)は、活性水素原子を有する有機化合物が好ましく、水酸基またはアミノ基を有する化合物がより好ましく、水酸基の1〜6個、特に1〜4個を有する化合物が特に好ましい。
活性水素原子を有する有機化合物の具体例としては、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコール、水素化ビスフェノールA、ネオペンチルグリコール、ポリブタジエングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、グリセリン、トリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のアルコール類;ポリオキシプロピレンモノオール、ポリオキシプロピレンジオール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシエチレンモノオール、ポリオキシエチレンジオール、およびポリオキシエチレントリオールからなる群から選ばれる重合体状のアルコールが挙げられる。重合体状のアルコールの水酸基1個あたりのMnは、300〜2000が好ましい。
【0014】
活性水素原子を有する化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。2種以上の活性水素原子を有する化合物を用いる場合には、水酸基の2個を有する重合体状アルコールと、水酸基の3個を有する重合体状アルコールを組み合わせて用いるのが好ましい。
重合体(pP)を重合する際の重合温度は、適宜選定すればよいが、通常80〜150℃が好ましい。
本発明においては、1種の重合体(pP)を用いてもよく、2種以上の重合体(pP)を用いてもよい。
【0015】
<化合物(U)>
本発明において用いられる化合物(U)は、アルコキシシリル基及びイソシアネート基を有する化合物であり、下記式(1)で表される化合物である。
(X−)(R−)Si−Q−NCO …(1)
(式中、Xは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルコキシル基であり、Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、aは2または3であり、bは0または1であり、a+bは3であり、Qは、炭素数1〜20の2価の有機基である。)
【0016】
式(1)におけるXは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、またはヘキシルオキシ基が好ましく、メトキシ基が特に好ましい。式(1)における2個または3個のXは、同一の基であってもよく互いに異なる基であってもよい。同一の基であるのが好ましい。Rは、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、またはヘキシル基が好ましく、メチル基が特に好ましい。aは2または3であり、3が好ましい。
【0017】
式(1)におけるQは、炭素数1〜20の2価の有機基である。
この2価の有機基は、炭素数1〜14のアルキレン基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基であり、特に好ましくは炭素数1〜5のアルキレン基である。
該2価の有機基の特に好ましいものは、トリメチレン基、メチレン基である。
【0018】
化合物(U)の具体例としては、
1−イソシアネートメチルトリメトキシシラン、
2−イソシアネートエチルトリメトキシシラン、
3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、
3−イソシアネートブチルトリメトキシシラン、
3−イソシアネートペンチルトリメトキシシラン、
1−イソシアネートメチルトリエトキシシラン、
2−イソシアネートエチルトリエトキシシラン、
3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、
3−イソシアネートブチルトリエトキシシラン、
3−イソシアネートペンチルトリエトキシシラン、
1−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、
1−イソシアネートメチルジメトキシメチルシラン、
1−イソシアネートプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
これらのうちで、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、1−イソシアネートメチルジメトキシメチルシランが好ましく、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシランが特に好ましい。
本発明において、重合体(pP)と反応させる化合物(U)として1種を用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0019】
<ウレタン化反応触媒>
本発明において、重合体(pP)と化合物(U)のウレタン化反応においては、触媒(以下、ウレタン化反応触媒という。)を用いることが好ましい。ウレタン化反応触媒としては、例えば、有機スズ化合物(ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート等。)、ビスマス化合物等の金属触媒;有機アミン等の塩基触媒が挙げられる。
重合体(pP)と化合物(U)を反応させる際の、ウレタン化反応触媒の使用量は、重合体(pP)の質量に対して、5〜500ppmが好ましく、10〜200ppmがより好ましく、20〜100ppmが特に好ましい。5ppm以上であると、ウレタン化反応が充分に進み易く、500ppm以下であると、重合体組成物の良好な長期貯蔵安定性が得られやすい。
【0020】
また、該ウレタン化反応触媒として、有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体触媒を用いることもできる。重合体(pP)を、有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体触媒を用いて製造した場合、すなわち重合体(pP)が上記重合体(pP1)である場合、重合体(pP1)製造後に、当該有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体触媒が残存していれば、該残存触媒を精製除去することなく、そのまま用いて重合体(pP1)と化合物(U)をウレタン化反応させることができる。または該残存触媒を用いるともに、さらに他のウレタン化反応触媒を加えてウレタン化反応を行ってもよい。該ウレタン化反応において、有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体触媒が残存している重合体(pP1)は、1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
ウレタン化反応において触媒として用いられる「有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体」は、重合体(pP)と化合物(U)がウレタン化反応し得るように活性化された状態であればよい。
活性化された状態の「有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体触媒」としては、例えば、有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体の存在下で、活性水素原子を有する化合物にアルキレンオキシドを開環重合させたときの状態の有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体や、同様な状態の有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体が挙げられる。この場合、「有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体」は、アルキレンオキシドの開環重合反応開始直後のものであってもよいし、該開環重合反応の途中のものであってもよいし、又は該開環重合反応の終了後のものであってもよい。
【0022】
ウレタン化反応触媒として、「有機配位子を有する複合金属シアン化物錯体触媒」を用いる場合、該触媒の使用量は、ウレタン化反応が良好に進行する量であればよい。例えば重合体(pP)の質量に対して、金属量換算で5〜500ppmが好ましく、5〜200ppmがより好ましく、8〜100ppmがさらに好ましく、10〜80ppmが特に好ましい。5ppm以上であると、ウレタン化反応が充分に進み易く、500ppm以下であると、重合体組成物の良好な長期貯蔵安定性が得られやすい。
【0023】
<ウレタン化反応>
ウレタン化反応に用いる重合体(pP)の水酸基の総量に対する化合物(U)のイソシアネート基の総量のモル比(イソシアネート基/水酸基)は、0.80〜1.05が好ましく、0.85〜1.00が特に好ましい。この範囲であると、該ウレタン化反応によって得られる重合体(P)を含む重合体組成物の速硬化性及び貯蔵安定性を顕著に向上する効果がある。その理由は必ずしも明確ではないが、この範囲においては、得られた重合体(P)中に水酸基が残存するとしても、該水酸基が少ないため、重合体(P)中のアルコキシシリル基とアルコール交換反応する数が少なく、そのため重合体の貯蔵安定性や貯蔵後の重合体の速硬化性が維持できる。また、ウレタン化反応における副反応(アロファネート化反応、イソシアヌレート化反応等。)が抑制されるため、副反応物が生成しにくく、重合体組成物が増粘しにくいと考えられる。
【0024】
ウレタン化反応における反応温度は、20〜200℃が好ましく、50〜150℃がより好ましく、50〜120℃が特に好ましい。また、ウレタン化反応は、不活性ガス(窒素ガスが好ましい。)雰囲気下に行うのが好ましい。
【0025】
<重合体(P)>
上記ウレタン化反応により得られる重合体(P)は、ウレタン結合を介して、末端にアルコキシシリル基を有するオキシアルキレン重合体である。具体的には、下記の式(2)で表される末端基およびポリオキシアルキレン鎖を有する重合体である。この重合体(P)は湿気硬化性を有する。該硬化反応には末端のアルコキシシリル基の加水分解反応による架橋反応が寄与する。
(X−)(R−)Si−Q−NHCOO− …(2)
式中のX、R、a、b、およびQは、その好ましい態様も含めて前記式(1)と同じである。
重合体(P)は、末端基あたりのMnが大きい方が貯蔵時の増粘率を低く抑えることができる。該末端基あたりのMnは5000以上が好ましく、7500以上がより好ましく、8500以上が特に好ましい。また作業性に優れ、取り扱い易い点で重合体(P)の末端基あたりのMnは20000以下が好ましく、15000以下が特に好ましい。
【0026】
<化合物(A)>
本発明の重合体組成物は、上記重合体(P)と化合物(A)を含有する。化合物(A)は(A1)ジアシルヒドラジン系化合物、(A2)アミノトリアゾール系化合物、および(A3)ベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる一種以上である。
(A1)ジアシルヒドラジン系化合物は、下式(I)で表される構造を有する化合物であり、好ましくは下式(Ia)または(Ib)で表される化合物である。
【0027】
【化1】

【0028】
(式(I)、(Ia)、(Ib)において、R1、R2はそれぞれ独立に水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、または置換基を有してもよいアリールアルキル基を表し、R2’はアルキレン基を表わす。)
R1、R2としてのアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。水酸基等の置換基を有していてもよい。
R1、R2としてのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましい。水酸基、炭素数1〜4のアルキル基等の置換基を有していてもよい。
R1、R2としてのアリールアルキル基におけるアリール基は上記R1、R2としてのアリール基と同様であり、アルキル基は上記R1、R2としてのアルキル基と同様である。
R2’としてのアルキレン基は、炭素数1〜12の直鎖状アルキレン基が好ましい。
【0029】
(A1)ジアシルヒドラジン系化合物の具体例としては、
N,N’−ジホルミルヒドラジン、
N,N’−ジアセチルヒドラジン、
N,N’−ジプロピオニルヒドラジン、
N,N’−ブチリルヒドラジン、
N−ホルミル−N’−アセチルヒドラジン、
N,N’−ジベンゾイルヒドラジン、
N,N’−ジトルオイルヒドラジン、
N,N’−ジサリチロイルヒドラジン、
N−ホルミル−N’−サリチロイルヒドラジン、
N−ホルミル−N’−ブチル置換サリチロイルヒドラジン、
N−アセチル−N’−サリチロイルヒドラジン、
N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン(下式(Ia−1)で表される化合物)、
シュウ酸−ジ−(N’−サリチロイル)ヒドラジン、
アジピン酸−ジ−(N’−サリチロイル)ヒドラジン、
ドデカンジオイル−ジ−(N’−サリチロイル)ヒドラジン、
デカメチレンカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド(下式(Ib−1)で表される化合物)等が挙げられる。
【0030】
【化2】

【0031】
【化3】

【0032】
(A2)アミノトリアゾール系化合物は下式(II)で表される。
【0033】
【化4】

【0034】
(式中、R4、R5はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、カルボキシ基、置換基を有してもよいアルキルエステル基、置換基を有してもよいアリールエステル基、ハロゲン原子、またはアルカリ金属原子を表し、R3は、水素原子またはアシル基を示す。)
R4、R5としてのアルキル基は、炭素数1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。水酸基等の置換基を有していてもよい。
R4、R5としてのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましい。水酸基、炭素数1〜4のアルキル基等の置換基を有していてもよい。
R4、R5としてのアルキルエステル基におけるアルキル基は上記R4、R5としてのアルキル基と同様であり、アリールアエステル基におけるアリール基は上記R4、R5としてのアリール基と同様である。
【0035】
(A2)アミノトリアゾール系化合物としては、例えば、
3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、
3−アミノ−1,2,4−トリアゾール−カルボキシリックアシッド、
3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、
3−アミノ−5−ヘプチル−1,2,4−トリアゾール、およびこれらの誘導体が挙げられる。該誘導体の具体例としては、
3−(N−サリチロイル)アミノ−1,2,4−トリアゾール(下式(II−1)で表される化合物)、
3−(N−サリチロイル)アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、
3−(N−アセチル)アミノ−1,2,4−トリアゾール−5−カルボキシリックアシッド等が挙げられる。
【0036】
【化5】

【0037】
(A3)ベンゾトリアゾール系化合物は、下式(III)で表される。
【0038】
【化6】

【0039】
(式中、R6、R7、R8、R9、R10はそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、置換基を有してもよいアリール基、カルボキシ基、置換基を有してもよいアルキルエステル基、置換基を有してもよいアリールエステル基、ハロゲン原子、またはアルカリ金属原子を表す。)
R6〜10としてのアルキル基は、炭素数1〜10の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。ハロゲン原子、カルボキシ基、水酸基等の置換基を有していてもよい。
R6〜10としてのアリール基としては、フェニル基、ナフチル基が好ましい。水酸基、炭素数1〜4のアルキル基等の置換基を有していてもよい。
R6〜10としてのアルキルエステル基におけるアルキル基は上記R6〜10としてのアルキル基と同様であり、アリールアエステル基におけるアリール基は上記R6〜10としてのアリール基と同様である。
【0040】
(A3)ベンゾトリアゾール系化合物の具体例としては、1H−ベンゾトリアゾール(下式(III−1)で表される化合物)およびその誘導体が挙げられる。
1H−ベンゾトリアゾールの誘導体としては、例えば、トリルトリアゾール、キシリルトリアゾール、4−(または5−)エチルベンゾトリアゾール、4−(または5−)クロロベンゾトリアゾール等のようにベンゼン環の水素を置換した誘導体;
1−ヒドロキシメチルベンゾトリアゾール、1−クロロベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾールナトリウム塩、ベンゾトリアゾールカリウム塩等のように1位の窒素に結合した水素を置換した誘導体;
トリルトリアゾールカリウム塩等のようにベンゼン環の水素と1位の窒素に結合した水素を置換した誘導体を挙げることができる。
【0041】
【化7】

【0042】
化合物(A)は市販品から入手できる。具体例な製品としては、
アデカスタブCDA−10(旭電化社製、上式(Ia−1)で表される化合物)、アデカスタブCDA−1(旭電化社製、上式(II−1)で表される化合物)、アデカスタブCDA−6(旭電化社製、上式(Ib−1)で表される化合物)、アデカスタブZS−27、アデカスタブZS−90(いずれも旭電化社製)、スタビノールBTZ(住友化学工業社製、上式(III−1)で表される化合物)、スタビノールM−BTZ、スタビノールM−BTZ(K)(いずれも住友化学工業社製)等が例示できる。
【0043】
<重合体組成物>
本発明の重合体組成物は、上記ウレタン化反応により得られる、重合体(P)を含有する反応生成物に、または該反応生成物からウレタン化反応触媒を分離除去したものに、化合物(A)を添加し混合することにより得られる。化合物(A)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(A)の添加量は、重合体(P)の100質量部に対して、0.01〜10.0質量部が好ましく、0.1〜5.0質量部がより好ましく、0.1〜1.0質量部がさらに好ましい。
化合物(A)の添加量が上記範囲の下限値以上であると、重合体組成物の貯蔵中の増粘を抑える効果が良好に得られやすい。上記範囲の上限値以下であると、適度な粘度が得られやすい。
【0044】
本発明によれば、重合体(P)を含有し、貯蔵中の増粘が少ない重合体組成物が得られる。
重合体組成物の粘度の増粘率は、50℃で4週間貯蔵した後に、6%以下であることが好ましく、4%以下であることがより好ましく、3%以下であることが特に好ましい。
【0045】
<硬化性組成物>
本発明の重合体組成物を用いて硬化物を製造する場合は、該重合体組成物と硬化触媒を含有する硬化性組成物を調製し、該硬化性組成物を所望の部位に適用する。
硬化触媒は、重合体(P)のアルコキシシリル基の加水分解反応による架橋反応を触媒する化合物であれば、特に限定されない。該硬化触媒の具体例としては、有機スズ化合物、スズ以外の金属を含む有機金属化合物、金属有機アルコキシド、スズ以外の金属を含む錯体、有機アミン、その他の触媒が挙げられる。
【0046】
有機スズ化合物の具体例としては、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジラウレート、ジオクチルスズジラウレート、(n−CSn(OCOCH=CHCOOCH、(n−CSn(OCOCH=CHCOO(n−C))、(n−C17Sn(OCOCH=CHCOOCH、(n−C17Sn(OCOCH=CHCOO(n−C))、(n−C17Sn(OCOCH=CHCOO(iso−C17))等の有機スズカルボン酸塩;(n−CSn(SCHCOO)、(n−C17Sn(SCHCOO)、(n−C17Sn(SCHCHCOO)、(n−C17Sn(SCHCOOCHCHOCOCHS)、(n−CSn(SCHCOO(iso−C17))、(n−C17Sn(SCHCOO(iso−C17))、(n−C17Sn(SCHCOO(n−C17))、(n−CSnS、(C17Sn(SCHCOOC17等の硫黄原子を含む有機スズ化合物;
【0047】
(n−CSnO、(n−C17SnO等の有機スズオキシド化合物;
有機スズオキシドとエステル(エチルシリケート、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジオクチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジオクチル等。)を反応させて得た反応生成物;(n−CSn(acac)、(n−C17Sn(acac)、(n−CSn(OC17)(acac)、(n−CSn(etac)、(n−C17Sn(etac)、(n−CSn(OC17)(etac)、ビスアセチルアセトナートスズ等の有機スズ化合物のキレート;有機スズ化合物のキレートとアルコキシシラン(テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラプロポキシシラン等。)を反応させて得た反応生成物;(n−C(CHCOO)SnOSn(OCOCH)(n−C、(n−C(CHO)SnOSn(OCH)(n−C等の−SnOSn−結合を有する有機スズ化合物;2−エチルヘキサン酸スズ、n−オクチル酸スズ、ナフテン酸スズ、ステアリン酸スズ等の2価スズカルボン酸塩が挙げられる。
ただし、上記acacはアセチルアセトナト配位子を、etacはエチルアセトアセテート配位子を、示す(以下同様。)。
【0048】
スズ以外の金属を含む有機金属化合物の具体例としては、カルボン酸カルシウム、カルボン酸ジルコニウム、カルボン酸鉄、カルボン酸バナジウム、ビスマストリス−2−エチルヘキソエートなどのカルボン酸ビスマス、カルボン酸鉛、カルボン酸チタニウム、カルボン酸ニッケルが挙げられる。
【0049】
有機金属アルコキシドの具体例としては、テトライソプロピルチタネート、テトラブチルチタネート、テトラメチルチタネート、テトラ(2−エチルへキシルチタネート)等のチタンアルコキシド;アルミニウムイソプロピレート、モノ−sec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウムアルコキシド;ジルコニウム−n−プロピレート、ジルコニウム−n−ブチレート等のジルコニウムアルコキシド;チタンテトラアセチルアセトナート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクチレングリコレート、チタンラクテート等のチタンアルコキシドが挙げられる。
【0050】
スズ以外の金属を含む錯体の具体例としては、アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート等のアルミニウムキレート;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、ジルコニウムビスアセチルアセトナート、ジルコニウムアセチルアセトナートビスエチルアセトアセテート、ジルコニウムアセテート等のジルコニウムキレートが挙げられる。
【0051】
有機アミンの具体例としては、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ラウリルアミン等の脂肪族モノアミン;エチレンジアミン、ヘキサンジアミン等の脂肪族ジアミン;トリエチルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の脂肪族ポリアミン;ピペリジン、ピペラジン等の複素環式アミン類;メタフェニレンジアミン等の芳香族アミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン;エポキシ樹脂の硬化に用いられる各種変性アミンが挙げられる。
【0052】
その他の触媒の具体例としては、リン酸、p−トルエンスルホン酸、フタル酸が挙げられる。
硬化触媒は、取扱性の観点からは、有機スズ化合物であるのが好ましい。速硬化性の観点からは、(n−CSn(acac)、(n−C17Sn(acac)、(n−CSn(OC17)(acac)、(n−CSn(etac)、または(n−C17Sn(etac)が特に好ましい。
【0053】
また、硬化触媒を適宜選択して硬化性組成物の硬化速度を制御することも可能である。たとえば、硬化触媒として活性の低い触媒を選択することにより、硬化性組成物の硬化速度を遅くすることも可能である。
活性の低い触媒の具体例としては、特定の、配位子中に硫黄原子を含む有機スズ化合物(クロンプトン社製、商品名:UL−29、日東化成社製、商品名:ネオスタンU−860等。)が挙げられる。
【0054】
硬化性組成物は、硬化触媒の1種を含んでいてもよく、硬化触媒の2種以上を含んでいてもよい。硬化触媒の2種以上を含む場合、硬化性組成物は、硬化性に優れることから、有機スズ化合物と有機アミンを含むのが好ましい。
硬化性組成物は、重合体(P)の100質量部に対して、硬化触媒の0.001〜10質量部を含むのが好ましい。この場合、硬化速度が速く、かつ硬化時の発泡が抑制され、さらに硬化物の耐久性が優れるという効果がある。
【0055】
硬化性組成物は、さらに公知の添加剤を含有してもよい。具体的には、充填材、可塑剤、接着性付与剤、溶剤、脱水剤、チキソ付与剤、老化防止剤、および顔料からなる群から選ばれる1以上の添加剤を含んでいてもよい。
充填材の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、シリカ、無水ケイ酸、カーボンブラック、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、木炭、パルプ、木綿チップ、マイカ、くるみ殻粉、もみ殻粉が挙げられる。充填材は、微少粉体であってもよく、微小中空体(シリカバルーン、シラスバルーン、ガラスバルーン、樹脂バルーン等。)であってもよい。
硬化性組成物は、充填材の1種を含んでいてもよく、充填材の2種以上を含んでいてもよい。
【0056】
上記炭酸カルシウムは、脂肪酸または樹脂酸により表面処理された炭酸カルシウムであるのが好ましい。炭酸カルシウムは、平均粒径1μm以下の膠質炭酸カルシウム、平均粒径1〜3μmの軽質炭酸カルシウム、または平均粒径1〜20μmの重質炭酸カルシウムであるのが好ましい。
硬化性組成物における充填材の含有量は、重合体(P)の100質量部に対して、1000質量部以下が好ましく、50〜250質量部が特に好ましい。
【0057】
可塑剤は、フタル酸ジオクチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ブチルベンジル等のフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸ビス(2−メチルノニル)、セバシン酸ジブチル、オレイン酸ブチル等の脂肪族カルボン酸エステル類;ペンタエリスリトールエステル等のアルコールエステル類;リン酸トリオクチル、リン酸トリクレジル等のリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、4,5−エポキシヘキサヒドロフタル酸ジオクチル、エポキシステアリン酸ベンジル等のエポキシ系可塑剤;塩素化パラフィン;2塩基酸と2価アルコールを反応させて得たポリエステル系可塑剤類;ポリオキシプロピレングリコール等のポリエーテル系可塑剤;ポリ−α−メチルスチレン、ポリスチレン等のスチレン系可塑剤;ポリブタジエン、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン、水添ポリブテン、エポキシ化ポリブタジエン等の高分子可塑剤が挙げられる。
硬化性組成物における可塑剤の含有量は、重合体(P)の100質量部に対して、1000質量部以下が好ましい。
【0058】
接着性付与剤の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシラン、アミノ基を有するシラン、エポキシ基を有するシラン、カルボキシ基を有するシラン等の有機シランカップリング剤;イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)プロピルトリメトキシチタネート、3−メルカプトプロピルトリメトキチタネート等の有機金属カップリング剤;エポキシ樹脂が挙げられる。
【0059】
(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランの具体例としては、3−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランが挙げられる。
アミノ基を有するシランの具体例としては、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−(N−ビニルベンジル−2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0060】
エポキシ基を有するシランの具体例としては、3−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
カルボキシ基含有シラン類の具体例としては、2−カルボキシエチルトリエトキシシラン、2−カルボキシエチルフェニルビス(2−メトキシエトキシ)シラン、N−(N−カルボキシルメチル−2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0061】
また、2種以上のシランカップリング剤を反応させて得た反応物を用いてもよい。該反応物としては、アミノ基を有するシランとエポキシ基を有するシランを反応させて得た反応物、アミノ基を有するシランと(メタ)アクリロイルオキシ基を有するシランを反応させて得た反応物、エポキシ基を有するシランとメルカプト基を有するシランを反応させて得た反応物、異なるメルカプト基を有するシランの反応物が挙げられる。
【0062】
エポキシ樹脂の具体例としては、ビスフェノールA−ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ビスフェノールF−ジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA−グリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールA−プロピレンオキシド付加物のグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、4−グリシジルオキシ安息香酸グリシジル、フタル酸ジグリシジル、テトラヒドロフタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ジグリシジルエステル系エポキシ樹脂、m−アミノフェノール系エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン系エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、N,N−ジグリシジルアニリン、N,N−ジグリシジル−o−トルイジン、トリグリシジルイソシアヌレート、ポリアルキレングリコールジグリシジルエーテル、多価アルコール(グリセリン等。)のグリシジルエーテル、ヒダントイン型エポキシ樹脂、不飽和重合体(石油樹脂等。)エポキシ樹脂が挙げられる。
【0063】
硬化性組成物が前記シランカップリング剤を含む場合、シランカップリング剤の含有量は、重合体(P)の100質量部に対して0超〜30質量部が好ましい。硬化性組成物が前記エポキシ樹脂を含む場合、エポキシ樹脂の含有量は、重合体(P)の100質量部に対して100質量部以下が好ましい。
【0064】
硬化性組成物の溶剤の具体例としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、ハロゲン化炭化水素、アルコール、ケトン、エステル、エーテル、エステルアルコール、ケトンアルコール、エーテルアルコール、ケトンエーテル、ケトンエステル、エステルエーテルが挙げられる。アルコールを用いた場合には、重合体組成物の保存安定性が向上する。アルコールは、炭素数1〜10のアルキルアルコールが好ましく、メタノール、エタノール、イソプロパノール、イソペンチルアルコール、またはヘキシルアルコールがより好ましく、メタノールまたはエタノールが特に好ましい。
硬化性組成物が溶剤を含む場合、溶剤の含有量は、重合体(P)の100質量部に対して500質量部以下が好ましい。
【0065】
脱水剤の具体例としては、オルトぎ酸トリメチル、オルトぎ酸トリエチル、オルトぎ酸トリプロピル、オルトぎ酸トリブチル等のオルトぎ酸トリアルキル;オルト酢酸トリメチル、オルト酢酸トリエチル、オルト酢酸トリプロピル、オルト酢酸トリブチル等のオルト酢酸酸トリアルキルが挙げられる。
硬化性組成物が脱水剤を含む場合、脱水剤の含有量は、重合体(P)の100質量部に対して、0.001〜30質量部が好ましい。
【0066】
チキソ性付与剤の具体例としては、水添ひまし油、脂肪酸アミドが挙げられる。
老化防止剤としては、紫外線吸収剤、光安定剤が挙げられる。老化防止剤の具体例としては、ヒンダードアミン系、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、ベンゾエート系、シアノアクリレート系、アクリレート系、ヒンダードフェノール系、リン系、または硫黄系の老化防止剤が挙げられる。
顔料の具体例としては、酸化鉄,酸化クロム,酸化チタン等の無機顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の有機顔料が挙げられる。
【0067】
硬化性組成物の製造方法は、特に限定されず、たとえば、重合体組成物に、前記硬化触媒、前記充填剤、前記接着性付与剤、前記溶剤、前記チキソ性付与剤、前記老化防止剤、前記顔料等。)(以下、他の成分という。)を配合する場合、他の成分を添加する順序は、特に限定されないが、重合体組成物と硬化触媒以外の他の成分とを混合した後に、硬化触媒を混合するのが好ましい。
【0068】
硬化性組成物の硬化方法は、特に限定されず、硬化性組成物と所望の他の成分とを混合密封して保存し、使用に際して空気中の湿気により硬化性組成物を硬化させる1液型硬化組成物の硬化方法でもよく、硬化性組成物と所望の他の成分とを使用に際して混合して、適宜硬化させる2液型硬化組成物の硬化方法でもよい。
【0069】
本発明の硬化性組成物は、硬化性が高く、かつ良好な機械物性を有する硬化物を形成できる。したがって被覆・密封用の硬化組成物として、建築用シーラント、防水材、接着剤、コーティング剤として有用であり、特に接着剤として有用である。
【0070】
硬化性組成物からなる接着剤の好ましい使用態様としては、硬化性組成物と所望の他の成分とを配合密封して保存し、使用に際しては空気中の湿気により接着剤を硬化させる1液硬化型接着剤、硬化性組成物と所望の他の成分とを使用に際して混合して硬化させる2液硬化型接着剤が挙げられる。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
以下において、重合体(pP)の水酸基の総量に対する化合物(U)のイソシアネート基の総量のモル比をNCO/OHという。重合体(pP)の水酸基の総量は、JIS K1557 6.4に準拠して測定した水酸基価(mgKOH/g)より算出した。
【0072】
(水分量の測定)
三菱化成社製(現ダイアインスツルメンツ社)電量滴定式水分測定装置(CA−06型/Ver5.0)を使用して行った。陽極液にはアクアミクロンAS(エーピーアイコーポレーション社製)を使用し、陰極液にはアクアミクロンCXU(エーピーアイコーポレーション社製)を使用した。測定時の試料採取量は、試料の含水量に応じて調整し、0.1g〜10gの範囲で適正な量を用いた。測定は5回行い、最大値および最小値を除いた3点の平均値を測定値とした。
【0073】
(貯蔵安定性試験)
調製直後の重合体組成物の粘度(初期粘度)を25℃にてE型粘度計で測定した後、該重合体組成物の240gを250ml缶に入れ、窒素パージして密封した。これを50℃に調整された雰囲気中で保管貯蔵し、2週間後及び4週間後に取り出して25℃の雰囲気中に24時間保持した後に、缶を開封して重合体組成物の粘度(貯蔵後粘度)を25℃にてE型粘度計で測定した。増粘率を下式により算出した。
増粘率(%)={(貯蔵後粘度−初期粘度)/初期粘度}×100
【0074】
[製造例1:重合体(P−1)の製造]
配位子がtert−ブチルアルコールである亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒360mgの存在下、ポリオキシプロピレンジオール(水酸基1個当たりのMnが500)300gにプロピレンオキシド4200gを開環重合させてポリオキシアルキレンジオール(水酸基1個当たりのMnが7500、水酸基価7.5mgKOH/g)(重合体(pP−1))を得た。得られた反応生成物中における、残存複合金属シアン化物錯体の触媒量は、亜鉛原子とコバルト原子の合計量が約10ppmであった。
【0075】
つぎに、上記で得た反応生成物の3000gを耐圧反応器(5L)に入れ、さらに酸化防止剤としてジブチルヒドロキシトルエンの500ppmを添加し、110℃で3時間脱水を行った。反応容器内の温度を80℃に降温し、ウレタン化反応触媒としてジ−n−オクチルスズビス(メルカプト酢酸イソオクチルエステル)の50ppmを添加して30分間撹拌した。その後、水分量を測定し、60ppmであることを確認した後、下式(1a)で表される化合物(純度95質量%)の84gを添加して8時間反応させた。NCO/OHは97/100であった。反応生成物をフーリエ変換赤外分光光度計にて分析し、イソシアネート基が消滅していることを確認した。反応生成物を分析した結果、ウレタン結合およびポリオキシプロピレン鎖を有し、かつ末端にトリメトキシシリル基を有する重合体(P−1)の生成を確認した。重合体(P−1)の末端基あたりのMnは7500であった。
Si(−OCH−CHCHCHNCO …(1a)
【0076】
[実施例1〜5:重合体組成物の製造]
得られた重合体(P−1)に、化合物(A)として表1に示す化合物を表1に示す配合量で添加し、撹拌して重合体組成物を得た。表1に示す配合量の単位は質量部である。
得られた重合体組成物の初期粘度、2週間保管後および4週間後の貯蔵後粘度を測定し、それぞれ増粘率を求めた。結果を表1に示す。
化合物(A)としては、アデカスタブCDA−6(旭電化社製、上式(Ib−1)で表される化合物)、アデカスタブCDA−1(旭電化社製、上式(II−1)で表される化合物)、およびアデカスタブCDA−10(旭電化社製、上式(Ia−1)で表される化合物)を用いた。
【0077】
[比較例1]
実施例1において、化合物(A)を添加しない他は、実施例1と同様にして、重合体組成物を得た。
得られた重合体組成物の初期粘度、2週間保管後および4週間後の貯蔵後粘度を測定し、それぞれ増粘率を求めた。結果を表1に示す。
【0078】
[参考例1:ウレタン結合を有しない変成シリコーン樹脂]
下記の方法により、ポリオキシプロピレン鎖の末端にトリメトキシシリル基を有する重合体を製造した。
すなわち、プロピレングリコールを開始剤とし、亜鉛ヘキサシアノコバルテート−ターシャリーブチルアルコール錯体触媒の存在下で、プロピレンオキシドを反応させて、数平均分子量(Mn)が15000で、分子量分布(Mw/Mn)が1.2のポリオキシプロピレンジオールを得た。このポリオキシプロピレンジオールにナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加し、加熱減圧下でメタノールを留去してポリオキシプロピレンの末端水酸基をナトリウムアルコキシドに変換した。次に塩化アリルを反応させて、未反応の塩化アリルを除去し、精製して、末端にアリル基を有するポリオキシプロピレンを得た。この反応生成物に対し、ヒドロキシシリル化合物であるトリメトキシシランを白金触媒の存在で反応させ、その後ジブチルヒドロキシトルエンを500ppm加えて溶解させ、アリル基の75モル%をトリメトキシシリル基末端に変換したポリオキシプロピレン(変成シリコーン樹脂)を得た。該変成シリコーン樹脂の末端基あたりのMnは7500であった。
得られた変成シリコーン樹脂の初期粘度、2週間保管後および4週間後の貯蔵後粘度を測定し、それぞれ増粘率を求めた。結果を表1に示す。
【0079】
【表1】

【0080】
表1の結果より、化合物(A)を添加しなかった比較例1に比べて、化合物(A)を含有させた実施例1〜5の重合体組成物は増粘率が大幅に低減しており、貯蔵中の増粘が少なかった。
ポリオキシアルキレン鎖端にウレタン結合を介さずにアルコキシシリル基が結合している参考例1の重合体(変成シリコーン樹脂)は、化合物(A)を添加しなくても貯蔵中の増粘は少なかった。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の重合体組成物は、これを用いて硬度が優れた硬化物を形成できる。本発明の重合体組成物は、シーリング材(建築用弾性シーリング材シーラント、複層ガラス用シーリング材等。)、封止剤(ガラス端部の防錆・防水用封止剤、太陽電池裏面封止剤等。)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆剤。)等の分野に用いられる接着剤として有用である。また、本発明の重合体組成物は、粘着剤、塗料材料、フィルム材料、ガスケット材料、注型材料としても使用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオキシアルキレン鎖および水酸基を有する重合体(pP)と、下式(1)で表されるアルコキシシリル基およびイソシアネート基を有する化合物(U)をウレタン化反応させて得られる重合体(P)、およびジアシルヒドラジン系化合物、アミノトリアゾール系化合物、およびベンゾトリアゾール系化合物からなる群から選ばれる一種以上の化合物(A)を含有することを特徴とする重合体組成物。
(X−)(R−)Si−Q−NCO …(1)
(式中、Xは、それぞれ独立に、炭素数1〜6のアルコキシル基であり、Rは、炭素数1〜6のアルキル基であり、aは2または3であり、bは0または1であり、a+bは3であり、Qは、炭素数1〜20の2価の有機基である。)
【請求項2】
前記重合体(P)の100質量部に対して、前記化合物(A)を0.01〜10.0質量部含有する、請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項3】
前記重合体(P)の末端基あたりの数平均分子量が5000以上である請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項4】
前記重合体(P)の末端基あたりの数平均分子量が7500以上である請求項1に記載の重合体組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の重合体組成物および硬化触媒を含有する硬化性組成物。

【公開番号】特開2009−149822(P2009−149822A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330866(P2007−330866)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】