説明

重合性液晶組成物、光学異方性膜、光学部材、及び液晶表示素子

【課題】 光学異方性膜の作製に有用な新規な重合性液晶組成物の提供。
【解決手段】 下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種と、少なくとも2種の光重合開始剤を含有する重合性液晶組成物であって、前記少なくとも2種の光重合開始剤のうち、少なくとも1種が下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする重合性液晶組成物である。Q1及びQ2はそれぞれ反応性基を表し;SP1及びSP2はそれぞれスペーサー基を表し;X1及びX2はそれぞれ連結基を表し;及びMGはメソゲン基を表す。Arは芳香族基を表し;R1はアリール基等を表し;R2はアリール基、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表し;及びmは0又は1を表す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学異方性膜等の作製に有用な重合性液晶組成物に関する。また、本発明は該重合性液晶組成物からなる光学異方性膜、ならびそれを有する光学部材及び液晶表示素子にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置は、薄型軽量、及び低消費電力という大きな利点を持つため、テレビ、パーソナルコンピューター、携帯電話、及び電子手帳等の表示装置に積極的に用いられている。これらの液晶表示装置は、駆動液晶の複屈折性を利用して光のスイッチングを行っているため、駆動液晶の複屈折性に起因して視野角依存性がある。この視野角依存性を解決するために各種の位相差板が開発されている。例えば、この位相差板は、フィルムを延伸すること、及び重合性液晶組成物を配向状態に固定化すること等によって作製されるものであり、通常、液晶セルの外側に設置されている。位相差板を液晶セルの外側に貼り付けると、貼り付け先の部材(例えば偏光板)に応力がかかり、位相差板の位相差が変形し、脱偏光を引き起こす場合がある。そのため、応力変形を受けた領域では黒状態での光漏れが発生する。また、偏光板と位相差板を貼合する際に発生する応力変形や、液晶パネルの動作中、バックライト熱で偏光板が変形して発生する応力変形によっても光漏れが生じるといった問題がしばしば起きる。また、偏光板と位相差板、あるいは位相差板と液晶セルを貼り合わせる際に接着剤を用いるが、接着剤の屈折率が偏光板、位相差板、あるいは液晶セルのガラスと異なるため、貼合界面で外光あるいはセルを通過した光の反射が生じ、コントラストの低下など画像品質を劣化させる場合がある。
【0003】
これらの問題を解決する一つの方法として、液晶セルの内側に位相差機能を有する層(位相差層)を形成することが提案されている(例えば、特許文献1)。一方、位相差層をセルの内側であって、ガラス基板とカラーフィルタ層との間に形成すると、カラーフィルタの製造における加熱工程によって位相差層の性能が劣化するといった問題があり、また、カラーフィルタ層の上に位相差層を形成しても、その後の透明導電膜ITOのスパッタリングによる電極設置工程によって、位相差層にクラックが発生するという、新たな問題があることがわかった。この問題を解決するため、特許文献2では、少なくとも重合性液晶材料と光重合開始剤と架橋剤と溶剤とを含む感光性組成物であって、前記架橋剤が、2つ以上のアルキロール基を有する化合物からなることを特徴とする感光性組成物を利用して、液晶セル内に位相差層を形成することが提案されている。
【特許文献1】特開2000−221506号公報
【特許文献2】特開2006−274093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献2に記載の感光性組成物を用いて位相差層を形成した後にITOをスパッタリングしたところ、クラックの発生は認められなかったものの、スパッタリング前後で位相差が変わったり、スパッタリング後に位相差のムラが発生する場合があり、これらを改善する必要があった。
本発明は、光学異方性膜等の光学異方性部材の作製に有用な新規な重合性液晶組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、耐久性が良好な光学異方性膜の作製に有用な重合性液晶組成物、ならびに該重合性液晶組成物からなる光学異方性膜を有する光学部材及び液晶表示素子を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段は以下の通りである。
[1] 下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種の化合物と、少なくとも2種の光重合開始剤を含有する重合性液晶組成物であって、前記少なくとも2種の光重合開始剤のうち、少なくとも1種が下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする重合性液晶組成物:
一般式(I) Q1−SP1−X1−MG−X2−SP2−Q2
一般式(I)中、Q1及びQ2はそれぞれ反応性基を表し;SP1及びSP2はそれぞれスペーサー基を表し;X1及びX2はそれぞれ連結基を表し;及びMGはメソゲン基を表し;
【化1】

一般式(II)中、Arは芳香族基を表し;R1はアリール基、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、ハロアルキル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、又はジフェニルホスフィノイル基を表し;R2はアリール基、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表し;及びmは0又は1を表す。
【0006】
[2] 前記一般式(I)で表される化合物を2種以上含有することを特徴とする[1]の重合性液晶組成物。
[3] 下記一般式(Ia)で表される液晶化合物の少なくとも1種を含有すること特徴とする[1]又は[2]の重合性液晶組成物:
【化2】

一般式(Ia)中、Xは水素原子又はメチル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく;SP1a及びSP2aはそれぞれスペーサー基を表し;及びR3aは置換基を表す。
【0007】
[4] 下記一般式(A)で表される(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする[1]〜[3]のいずれかの重合性液晶組成物:
【化3】

式(A)中、R1及びR2はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、A1及びA2はそれぞれ炭素原子数2〜18のメチレン基又は少なくとも1つのエーテル系酸素原子を含有する炭素原子数2〜18の炭化水素基を表す。
【0008】
[5] [1]〜[4]のいずれかの重合性液晶組成物からなる光学異方性膜。
[6] 基板、及び該基板上に[5]の光学異方性膜を少なくとも有する光学部材。
[7] [6]の光学異方性膜を有することを特徴とする液晶表示素子。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、光学異方性膜等の光学異方性部材の作製に有用な新規な重合性液晶組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、耐久性が良好な光学異方性膜の作製に有用な重合性液晶組成物、ならびに該重合性液晶組成物からなる光学異方性膜を有する光学部材及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、以下、本発明の代表的な実施態様について説明するが、本発明は以下の実施態様に限定されるものではない。また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
[重合性液晶組成物]
本発明は、下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種と、少なくとも2種の光重合開始剤を含有する重合性液晶組成物に関する。本発明では、前記少なくとも2種の光重合開始剤のうち、少なくとも1種として、オキシム系光重合開始剤を利用する。本発明の重合性液晶組成物は、光重合開始剤を2種以上、特に少なくとも1種としてオキシム系光重合開始剤を含有しているので、該組成物を硬化させてなる膜は、耐久性に優れている。特に、その後に、該膜の上に他の機能層を形成する際に熱に曝されても光学特性の低下(例えば面内レターデーションReの絶対値の低下)が少なく、及びスパッタリング処理等の過酷な処理に曝されても、膜中にクラック等が発生し難く、その結果、該膜上にスパッタリング等によって形成されるITO膜等の面質が良好である。
以下、本発明の重合性液晶組成物に利用可能な種々の材料について説明する。
【0011】
・一般式(I)で表される化合物:
本発明の重合性液晶化合物は、下記一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含有する。より高い耐久性改善効果を達成するためには、本発明の重合性液晶組成物は、下記一般式(I)で表される化合物を2種以上含有しているのが好ましい。なお、下記式(I)で表される化合物は、液晶性を示す液晶化合物であっても、非液晶化合物であってもよい。
一般式(I) Q1−SP1−X1−MG−X2−SP2−Q2
一般式(I)中、Q1及びQ2はそれぞれ反応性基を表し;SP1及びSP2はそれぞれスペーサー基を表し;X1及びX2はそれぞれ連結基を表し;及びMGはメソゲン基を表す。
1及びQ2はそれぞれ、重合性基である。該重合性基は、付加重合(開環重合を含む)可能な重合性基又は縮合重合可能な重合性基であることが好ましい。重合性基の例を以下に示す。
【0012】
【化4】

【0013】
重合性基(Q1及びQ2)は、不飽和重合性基(Q−1〜Q−7)、エポキシ基(Q−8)又はアジリジニル基(Q−9)であることが好ましく、不飽和重合性基であることがさらに好ましく、エチレン性不飽和重合性基(Q−1〜Q−6)であることがよりさらに好ましい。
【0014】
一般式(I)において、SP1及びSP2は、それぞれ二価のスペーサー基である。SP1及びSP2は、それぞれ、−O−、−S−、−CO−、−NR2−、二価の鎖状基及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。上記R2は、炭素原子数が1〜7のアルキル基又は水素原子である。
【0015】
二価の鎖状基は、アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基又は置換アルキニレン基を意味する。アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基及び置換アルケニレン基が好ましく、アルキレン基及びアルケニレン基がさらに好ましい。
アルキレン基は、分岐を有していてもよい。アルキレン基の炭素原子数は、1〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがよりさらに好ましい。置換アルキレン基のアルキレン部分は、上記アルキレン基と同様である。置換アルキレン基の置換基の例には、アルコキシ基、ハロゲン原子が含まれる。
アルケニレン基は、分岐を有していてもよい。アルケニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがよりさらに好ましい。置換アルケニレン基のアルケニレン部分は、上記アルケニレン基と同様である。置換アルケニレン基の置換基の例には、アルコキシ基、ハロゲン原子が含まれる。
アルキニレン基は、分岐を有していてもよい。アルキニレン基の炭素原子数は、2〜12であることが好ましく、2〜10であることがさらに好ましく、2〜8であることがよりさらに好ましい。置換アルキニレン基のアルキニレン部分は、上記アルキニレン基と同様である。置換アルキニレン基の置換基の例には、アルコキシ基、ハロゲン原子が含まれる。
【0016】
一般式(I)において、X1及びX2はそれぞれ独立して、2価の連結基である。X1及びX2は、それぞれ、単結合、−O−、−S−、−CO−、−NR2−及びそれらの組み合わせからなる群より選ばれる二価の連結基であることが好ましい。より好ましくは単結合、−O−、−CO−O−、−O−CO−、−CO−NH−、又は−O−CO−O−である。
【0017】
一般式(I)において、MGはメソゲン基を表す。好ましくは下記式(MG−I)で表される基である。
MG−I: −(A1−Z1m−A2−Z2−A3
式中、A1、A2及びA3はそれぞれ独立して、1,4−フェニレン基、1,4−フェニレン基の1個もしくは2個以上のCH基がNにより置き換えられたヘテロ環基、1,4−シクロヘキシレン基、1,4−シクロヘキシレン基の1個のCH2基もしくは隣接していない2個のCH2基がO及び/又はSにより置き換えられていてもよいへテロ環基、1,4−シクロヘキセニレン基、又はナフタレン−2,6−ジイル基である。これらの基は置換基を有していてもよい。Z1及びZ2はそれぞれ独立して、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−OCH2−、−CH2O−、−CH=CH−、−C≡C−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、又は単結合であり、mは0、1又は2である。
二環状又は三環状のメソゲン基が好ましく、Z1及びZ2が、−COO−、−OCO−、−CH2−CH2−、−CH=CH−COO−、−OCO−CH=CH−、又は単結合である化合物が特に好ましい。
【0018】
MG−Iで表わされるメソゲン基の好ましい例を以下に示す。簡潔にするために略号を用いたが、Pheは、1,4−フェニレンであり、PheLは、少なくとも1個の置換基Lにより置換されていることを表し、そしてCycは、1,4−シクロヘキシレンである。
【化5】

【0019】
これらにおいて、好ましくは、Z1及びZ2は、−COO−、−OCO−、−CH2CH2−、−CH=CH−COO−又は単結合である。
特に好ましいメソゲン基は下記式で表される基である。
【0020】
【化6】

【0021】
【化7】

【0022】
rは0〜4の整数を表し、rは0、1又は2が好ましい。rが2のとき、2つのLは同じでも異なっていてもよい。
次いで、置換基Lについて説明する。置換基の例には、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、炭素原子数が1〜5のアルキル基、炭素原子数が1〜5のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜5のアルコキシ基、炭素原子数が1〜5のアルキルチオ基、炭素原子数が1〜5のアシル基、炭素原子数が2〜6のアシルオキシ基、炭素原子数が2〜6のアルコキシカルボニル基、カルバモイル、炭素原子数が2〜6のアルキル置換カルバモイル基及び炭素原子数が2〜6のアミド基が含まれる。より好ましくはハロゲン原子、シアノ、炭素原子数が1〜3のアルキル基、炭素原子数が1〜3のハロゲン置換アルキル基、炭素原子数が1〜3のアルコキシ基、炭素原子数が2〜4のアシルオキシ基である。
Lは好ましくは、F、Cl、Br、CN、NO2、CH3、C25、OCH3、OC25、COCH3、COC25、CF3、OCF3、OCHF2、及びOC25;より好ましくは、F、Br、Cl、CN、CH3、C25、OCH3、COCH3及びOCF3;よりさらに好ましくは、F、Br,CH3、OCH3及びCOCH3である。
【0023】
本発明の重合性液晶組成物は、前記一般式(I)で表される化合物を2種以上含有しているのが好ましい。前記一般式(I)で表される化合物のうち、少なくとも一種は液晶化合物であるのが好ましく、中でも、下記一般式(Ia)で表される液晶化合物であるのが好ましい。
【0024】
【化8】

【0025】
前記一般式(Ia)中、Xは水素原子又はメチル基を表し;SP1a及びSP2aはそれぞれスペーサー基を表し;及びR3aは置換基を表す。
【0026】
SP1a及びSP2aとしては、上記一般式(I)中のSP1及びSP2と同義であり、好ましい範囲も同様である。また、R3aで表される置換基の例としては、前述のLで表される置換基の例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0027】
本発明の重合性液晶組成物は、下記一般式(Ib)及び/又は(Ic)で表される化合物(好ましくは液晶化合物)を含有しているのも好ましい。
【0028】
【化9】

【0029】
式中、R3及びR4はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、Y3及びY4はそれぞれ、−CO−O−又は−O−CO−を表し、mは2〜6の整数を表す。
【0030】
【化10】

【0031】
式中、Q1、Q2及びQ3はそれぞれ、下記式(c)で表される基、1,4−シクロへキシレン、1,4−シクロへキセニレン、1,4−フェニレン、ピリジン−2,5−ジイル、ピリダジン−3,6−ジイル、ピリミジン−2,5−ジイル、ジオキサン−2,5−ジイル、任意の水素がフッ素で置き換えられた1,4−シクロへキシレン、又は任意の水素がフッ素及び/又は塩素で置き換えられた1,4−フェニレンであり、但し、Q1、Q2及びQ3の少なくとも1つは下記式(c)で表される基である。p、q及びrはそれぞれ0又は1であり、これらの合計は1〜3である。R5は−CN、−CF3、−CF2H、−CFH2、−OCF3、−OCF2H、−N=C=O、−N=C=S、−F、−Cl又は炭素原子数1〜20のアルキルであり、このアルキルにおいて、1つの水素原子は(メタ)アクリロイルオキシ又はビニルオキシで置き換えられてもよく、任意の−CH2−は、−O−、−S−、−CF2−、−CH=CH−、−COO−、−OCO−、又はCO−で置き換えられてもよい。R6は水素原子又はメチルである。Z1、Z2及びZ3はそれぞれ、単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−CF2O−、−OCF2−、−CH2O−、−OCH2−、−CH2CH2−、−(CH24−、−CH=CH−、−CF=CF−、又はC≡C−である。sは0〜10の整数である。tは0又は1である。
【0032】
【化11】

【0033】
式中、2つのX2はそれぞれ、水素原子、フッ素原子、又は炭素原子数1〜8のアルキル基であり、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0034】
本発明の重合性液晶組成物の好ましい態様は、前記一般式(Ia)で表される液晶化合物の少なくとも1種と、前記一般式(Ib)又は(Ic)で表される液晶化合物の少なくとも1種を含有する組成物である。
【0035】
前記一般式(I)で表される化合物の例としては、例えば特開平11−80081号公報、特開2000−281628号公報、特開2002−128742号公報、特開2002−145830号公報、特開2002−265475号公報、特開2002−308831号公報、特開2003−12762号公報、特開2003−192645号公報、特開2007−191442号公報、特開2004−182678号公報、特表2005−502730号公報、特表2005−542219号公報、特表2002−539182号公報、特表2002−522410号公報、特表2002−521354号公報、特表2001−527570号公報、登録特許3901238号公報、登録特許3973707号公報、登録特許3866307号公報、特開2002−30042号公報、特開平11−116538号公報、特表平11−513029号公報、特開2003−238491号公報、特開2004−175728号公報、特開2004−231638号公報、特開2005−15473号公報、特開2005−112850号公報、特開2005−179557号公報、特開2005−206579号公報、特開2005−320317号公報、特開2005−35985号公報、特開2005−60373号公報、特開2006−111571号公報、特開2006−225463号公報、特開2006−241116号公報、特開2006−225607号公報、特開2006−232809号公報、特開2006−241116号公報、特開2006−348022号公報、特開2007−70285号公報、特開2007−70302号公報、特開2001−270848号公報、特開2001−199938号公報、特開2004−91380号公報、特開2006−219533号公報、特開2006−219524号公報、特開2007−119415号公報、特開2005−309255号公報、特表2000−507932号公報に記載の液晶化合物が挙げられる。
【0036】
以下に前記一般式(I)で表される化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0037】
【化12】

【0038】
【化13】

【0039】
【化14】

【0040】
【化15】

【0041】
【化16】

【0042】
【化17】

【0043】
【化18】

【0044】
【化19】

【0045】
【化20】

【0046】
【化21】

【0047】
【化22】

【0048】
【化23】

【0049】
【化24】

【0050】
【化25】

【0051】
【化26】

【0052】
【化27】

【0053】
【化28】

【0054】
・ 光重合開始剤
本発明の重合性液晶組成物は、光重合開始剤を少なくとも2種含有し、そのうち少なくとも1種が、オキシム系光重合開始剤であることを特徴とする。該オキシム系光重合開始剤としては、下記式(II)で表される化合物が好ましい。
【0055】
【化29】

【0056】
前記一般式(II)中、Arは芳香族基を表し;R1はアリール基、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、ハロアルキル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、又はジフェニルホスフィノイル基を表し、但し、R1とArが連結して環を形成していてもよく;R2はアリール基、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表し、mは0又は1を表す。
【0057】
前記式(II)中、Arが表す芳香族基の例には、フェニル基、ナフチル基、フルオレニル基等の炭化水素系アリール基、及びピリジニル基、チエニル基、カルバゾール基等のヘテロ環系アリール基が含まれる。これらの芳香族基はさらに置換基を有していてもよく、該置換基の例としては、前述のLで表される置換基の例と同様であり、好ましい範囲も同様である。
【0058】
前記式(II)中、R1は、フェニル基(但し、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、−OR8、−SR9又は−N(R10)(R11)の1個以上で置換されてもよく、R8及びR9はそれぞれ、炭素数1〜6のアルキル基、又はフェニル基を表し、また、R8及びR9はそれぞれ、フェニル環中もしくはフェニル環への置換基中の炭素原子の一つと共に、5−員環もしくは6−員環を形成してもよく;並びにR10及びR11はそれぞれ、水素原子、アルキル基、又はフェニル基(フェニル環中のもしくはフェニル環への置換基中の炭素原子の一つと共に5−員環もしくは6−員環を形成してもよい)を表す。以下同一の意味で用いる);炭素原子数1〜20のアルキル基(但し、アルキル基の炭素原子数が2〜20の場合、主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有するか、及び/又は1個以上の水酸基で置換されてもよい);炭素原子数5〜8のシクロアルキル基;炭素原子数2〜20のアシル基;ベンゾイル基(但し、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、−OR8、−SR9又は−N(R10)(R11)の1個以上で置換されてもよい);炭素原子数2〜12のアルコキシカルボニル基(但し、アルコキシ基の炭素原子数が2〜11の場合、該アルコキシ基は主鎖炭素原子間に1個以上の酸素原子を有するか、及び/又は1個以上の水酸基で置換されてもよい);アリールオキシカルボニル基(但し、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、−OR8又は−N(R10)(R11)の1個以上で置換されてもよい);シアノ基;ニトロ基;カルバモイル基(−CON(R10)(R11)を表し、R10及び/又はR11は水素原子、アルキル基、フェニル基(フェニル環中のもしくはフェニル環への置換基中の炭素原子の一つと共に5−員環もしくは6−員環を形成してもよい)を表す);炭素原子数1〜4のハロアルキル基;アルキルスルホニル基;アリールスルホニル基;アルキルスルフィニル基;アリールスルフィニル基(−S(O)m−R12(但し、R12は炭素原子数1〜6のアルキル基又は炭素原子数6〜12のアリール基を示し、mは1又は2である);炭素原子数1〜6のアルコキシスルホニル基;炭素原子数6〜10のアリーロキシスルホニル基;及びジフェニルホスフィノイル基;を表すのが好ましい。
【0059】
前記式中、R2は、炭素原子数1〜12のアルキル基(但し、ハロゲン原子又はシアノ基の1個以上で置換されてもよい)、フェニル基(但し、炭素原子数1〜6のアルキル基、ハロゲン原子、シアノ基、−OR8、−SR9又は−N(R10)(R11)の1個以上で置換されていてもよい);炭素原子数2〜6のアルコキシ基;又はアリールオキシ基(但し、炭素原子数1〜6のアルキル基、又はハロゲン原子の1個以上で置換されてもよい);を表すのが好ましい。
【0060】
なお、前記式(II)中、R1とArが連結して環を形成していてもよい。前記式(II)中、mが0である場合に、R1及びArが連結して形成される環の例には、以下のものが含まれる。なお、下記例示中、ベンゼン環は置換基を有していてもよく、また、他の環(芳香族環、脂肪族環、及びヘテロ環のいずれであってもよい)とさらに縮合していてもよい。
【0061】
【化30】

【0062】
以下に前記一般式(II)で表される化合物の具体例を示すが、以下の具体例に限定されるものではない。
【0063】
【化31】

【0064】
【化32】

【0065】
【化33】

【0066】
【化34】

【0067】
【化35】

【0068】
前記一般式(II)で表されるオキシム系光重合開始剤とともに、本発明に用いられる光重合開始剤については特に制限はない。オキシム系光重合開始剤以外の光重合開始剤を用いるのが好ましいが、これに限定されるものではない。前記一般式(II)で表されるオキシム系光重合開始剤とともに用いられる他の光重合開始剤の例には、カンファーキノン、ベンゾフェノン、ベンゾフェノン誘導体、アセトフェノン、アセトフェノン誘導体、例えばα−ヒドロキシシクロアルキルフェニルケトンもしくは2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパノン、ジアルコキシアセトフェノン、α−ヒドロキシ−もしくはα−アミノ−アセトフェノン、例えば(4−メチルチオベンゾイル)−1−メチル−1−モルホリノエタン、(4−モルホリノベンゾイル)−1−ベンジル−1−ジメチルアミノプロパン、4−アロイル−1,3−ジオキソラン、ベンゾインアルキルエーテルおよびベンジルケタール、例えばジメチルベンジルケタール、フェニルグリオキサルエステルおよびその誘導体、二量体のフェニルグリオキサルエステル、ジアセチル、ペルエステル、例えば、欧州特許第126,541号公報に例えば記載されたベンゾフェノンテトラカルボン酸ペルエステル、モノアシルホスフィンオキシド、例えば(2,4,6−トリメチルベンゾイル)ジフェニルホスフィンオキシド、ビスアシルホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−2,4−ジペントキシフェニルホスフィンオキシド、トリスアシルホスフィンオキシド、ハロメチルトリアジン、例えば2−〔2−(4−メトキシフェニル)ビニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−(4−メトキシフェニル)−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−(3,4−ジメトキシフェニル)−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−メチル−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−(4−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチルアミノフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)〔1,3,5〕トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−(1,3−ベンゾジオキソル−5−イル)−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔2−〔4−(ペンチルオキシ)フェニル〕エテニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔2−(3−メチル−2−フラニル)エテニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔2−(5−メチル−2−フラニル)エテニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔2−(2,4−ジメトキシフェニル)エテニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔2−(2−メトキシフェニル)エテニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔2−(4−イソプロピルオキシフェニル)エテニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔2−(3−クロロ−4−メトキシフェニル)エテニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔2−ブロモ−4−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔2−クロロ−4−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔3−ブロモ−4−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、2−〔3−クロロ−4−N,N−ジ(エトキシカルボニルメチル)アミノフェニル〕−4,6−ビストリクロロメチル〔1,3,5〕トリアジン、および例えばG. Buhr, R. Dammel and C. Lindley, Polym. Mater. Sci. Eng. 61,269 (1989)、欧州特許第022788号公報に記載のような、その他のハロメチルトリアジン;米国特許第4,371,606号および第4,371,607号明細書に記載のような、ハロメチルオキサゾール光開始剤;E.A. Bartmann, Synthesis 5, 490 (1993)に記載のような1,2−ジスルホン;ヘキサアリールビスイミダゾール、及びヘキサアリールビスイミダゾール/共開始剤系、例えば、2−メルカプトベンズチアゾール、フェロセニウム化合物、またはチタノセン、例えばビス(シクロペンタジエニル)−ビス(2,6−ジフルオロ−3−ピリルフェニル)チタンと組み合わせたo−クロロヘキサフェニル−ビスイミダゾールが含まれる。
【0069】
本発明の重合性液晶組成物中、オシキム系光重合開始剤とその他の光重合開始剤との割合は、特に制限はないが、質量比で5:95〜95:5であるのが好ましい。また、本発明の重合性液晶組成物中、2種以上の光重合開始剤の合計の含有量は、固形分換算で、2〜20質量%であるのが好ましく、5〜15質量%であるのがより好ましい。
【0070】
・ その他の添加剤:
本発明の重合性液晶組成物は、光増感剤又は助開始剤をさらに含有していてもよい。これらの例には、芳香族化合物、例えば、ベンゾフェノン及びその誘導体、チオキサントン及びその誘導体、アントラキノン及びその誘導体、クマリンやフェノチアジン及びその誘導体、そしてまた3−(アロイルメチレン)チアゾリン、ローダニン、カンファーキノン、しかしまたエオシン、ローダミン、エリスロシン、キサンテン、チオキサンテン、アクリジン、例えば9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9−アクリジニル)ヘプタン、1,5−ビス(9−アクリジニル)ペンタン、シアニン、及びメロシアニン染料が含まれる。
より具体的には、以下の通りである。
1.チオキサントン
チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−ドデシルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、1−メトキシカルボニルチオキサントン、2−エトキシカルボニルチオキサントン、3−(2−メトキシエトキシカルボニル)チオキサントン、4−ブトキシカルボニルチオキサントン、3−ブトキシカルボニル−7−メチルチオキサントン、1−シアノ−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−クロロチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−エトキシチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−アミノチオキサントン、1−エトキシカルボニル−3−フェニルスルフリルチオキサントン、3,4−ジ−〔2−(2−メトキシエトキシ)エトキシカルボニル〕チオキサントン、1,3−ジメチル−2−ヒドロキシ−9H−チオキサンテン−9−オン 2−エチルヘキシルエーテル、1−エトキシカルボニル−3−(1−メチル−1−モルホリノエチル)チオキサントン、2−メチル−6−ジメトキシメチルチオキサントン、2−メチル−6−(1,1−ジメトキシベンジル)チオキサントン、2−モルホリノメチルチオキサントン、2−メチル−6−モルホリノメチルチオキサントン、N−アリルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−オクチルチオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、N−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)チオキサントン−3,4−ジカルボキシイミド、1−フェノキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メトキシチオキサントン、6−エトキシカルボニル−2−メチルチオキサントン、チオキサントン−2−カルボン酸ポリエチレングリコールエステル、2−ヒドロキシ−3−(3,4−ジメチル−9−オキソ−9H−チオキサントン−2−イルオキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパンアミニウムクロリド;
【0071】
2.ベンゾフェノン
ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、4,4′−ジメチルベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(メチルエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4′−ビス(p−イソプロピルフェノキシ)ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2,4,6−トリメチルベンゾフェノン、4−(4−メチルチオフェニル)ベンゾフェノン、3,3′−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチル−2−ベンゾイルベンゾアート、4−(2−ヒドロキシエチルチオ)ベンゾフェノン、4−(4−トリルチオ)ベンゾフェノン、1−〔4−(4−ベンゾイルフェニルスルファニル)フェニル〕−2−メチル−2−(トルエン−4−スルホニル)プロパン−1−オン、4−ベンゾイル−N,N,N−トリメチルベンゼンメタナミニウムクロリド、2−ヒドロキシ−3−(4−ベンゾイルフェノキシ)−N,N,N−トリメチル−1−プロパナミニウムクロリド一水和物、4−(13−アクリロイル−1,4,7,10,13−ペンタオキサトリデシル)ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−N,N−ジメチル−N−〔2−(1−オキソ−2−プロペニル)オキシ〕エチルベンゼンメタナミニウムクロリド;
【0072】
3.クマリン
クマリン1、クマリン2、クマリン6、クマリン7、クマリン30、クマリン102、クマリン106、クマリン138、クマリン152、クマリン153、クマリン307、クマリン314、クマリン314T、クマリン334、クマリン337、クマリン500、3−ベンゾイルクマリン、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、3−ベンゾイル−6,8−ジクロロクマリン、3−ベンゾイル−6−クロロクマリン、3,3′−カルボニル−ビス〔5,7−ジ(プロポキシ)クマリン〕、3,3′−カルボニル−ビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−イソブチロイルクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジメトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジエトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジブトキシクマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(メトキシエトキシ)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジ(アリルオキシ)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジメチルアミノクマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−イソブチロイル−7−ジメチルアミノクマリン、5,7−ジメトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、5,7−ジエトキシ−3−(1−ナフトイル)クマリン、3−ベンゾイルベンゾ〔f〕クマリン、7−ジエチルアミノ−3−チエノイルクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジメトキシクマリン、3−(4−シアノベンゾイル)−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ジメチルアミノ−3−フェニルクマリン、7−ジエチルアミノ−3−フェニルクマリン、特開平9−179,299号および第9−325,209号公報に開示されたクマリン誘導体、例えば7−〔{4−クロロ−6−(ジエチルアミノ)−S−トリアジン−2−イル}アミノ〕−3−フェニルクマリン;
【0073】
4.3−(アロイルメチレン)チアゾリン
3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−β−ナフトチアゾリン、3−メチル−2−ベンゾイルメチレン−ベンゾチアゾリン、3−エチル−2−プロピオニルメチレン−β−ナフトチアゾリン;
【0074】
5.ローダニン
4−ジメチルアミノベンザルローダニン、4−ジエチルアミノベンザルローダニン、3−エチル−5−(3−オクチル−2−ベンゾチアゾリニリデン)ローダニン、特開平8−305,019号公報に開示された、式〔1〕、〔2〕、〔7〕のローダニン誘導体;
【0075】
6.その他の化合物
アセトフェノン、3−メトキシアセトフェノン、4−フェニルアセトフェノン、ベンジル、4,4′−ビス(ジメチルアミノ)ベンジル、2−アセチルナフタレン、2−ナフトアルデヒド、ダンシル酸誘導体、9,10−アントラキノン、アントラセン、ピレン、アミノピレン、ペリレン、フェナトレン、フェントレンキノン、9−フルオレノン、ジベンゾスベロン、クルクミン、キサントン、チオミヒラーケトン、α−(4−ジメチルアミノベンジリデン)ケトン、例えば2,5−ビス(4−ジエチルアミノベンジリデンシクロペンタノン、2−(4−ジメチルアミノベンジリデン)インダン−1−オン、3−(4−ジメチルアミノフェニル)−1−インダン−5−イルプロペノン、3−フェニルチオフタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド、N−メチル−3,5−ジ(エチルチオ)フタルイミド、フェノチアジン、メチルフェノチアジン、アミン、例えばN−フェニルグリシン、4−ジメチルアミノ安息香酸エチル、4−ジメチルアミノ安息香酸ブトキシエチル、4−ジメチルアミノアセトフェノン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、2−(ジメチルアミノ)エチルベンゾアート、ポリ(プロピレングリコール)−4−(ジメチルアミノ)ベンゾアートである。
【0076】
光学異方性膜の形成に利用される態様では、本発明の重合性液晶組成物中には、空気界面配向制御剤、ハジキ防止剤、重合性モノマー等の種々の添加剤を添加するのが好ましい。
(空気界面配向制御剤)
液晶組成物を配向させると、空気界面においては空気界面のチルト角で配向する。このチルト角は、液晶組成物に含まれる液晶化合物の種類や添加剤の種類等で、その程度が異なるため、目的に応じて空気界面のチルト角を任意に制御する必要がある。チルト角の制御には、例えば、電場や磁場のような外場を用いることや添加剤を用いることができ、添加剤を用いることが好ましい。このような添加剤としては、炭素原子数6〜40の置換もしくは無置換の脂肪族基、又は炭素原子数6〜40の置換もしくは無置換の脂肪族置換オリゴシロキサノキシ基を、分子内に1つ以上有する化合物が好ましく、分子内に2つ以上有する化合物がさらに好ましい。例えば、空気界面配向制御剤としては、特開2002−20363号公報に記載の疎水性排除体積効果化合物を用いることができる。
空気界面側の配向制御用添加剤の含有量としては、本発明の液晶組成物(固形分)に対して、0.001質量%〜20質量%が好ましく、0.01質量%〜10質量%がさらに好ましく、0.1質量%〜5質量%が最も好ましい。
【0077】
(ハジキ防止剤)
本発明の液晶組成物中には、塗布時のハジキを防止するための材料を添加することができる。該材料としては、一般に高分子化合物を好適に用いることができる。使用するポリマーとしては、本発明の液晶組成物の傾斜角変化や配向を著しく阻害しない限り、特に制限はない。ポリマーの例としては、特開平8−95030号公報に記載があり、特に好ましい具体的ポリマー例としてはセルロースエステル類を挙げることができる。セルロースエステルの例としては、セルロースアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、ヒドロキシプロピルセルロース及びセルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
本発明の液晶組成物の配向を阻害しないように、ハジキ防止目的で使用されるポリマーの含有量は、本発明の液晶組成物(固形分)に対して一般に0.1〜10質量%の範囲にあり、0.1〜8質量%の範囲にあることがより好ましく、0.1〜5質量%の範囲にあることがさらに好ましい。
【0078】
(重合性モノマー)
本発明の液晶組成物中には、重合性のモノマーを添加することができる。本発明で使用できる重合性モノマーとしては、前記式(I)の化合物と相溶性を有し、液晶組成物の配向阻害を著しく引き起こさない限り、特に限定はない。これらの中では重合活性なエチレン性不飽和基、例えばビニル基、ビニルオキシ基、アクリロイル基及びメタクリロイル基などを有する化合物が好ましく用いられる。上記重合性モノマーの含有量は、液晶化合物に対して一般に0.5〜50質量%の範囲にあり、1〜30質量%の範囲にあることが好ましい。また反応性官能基数が2以上のモノマーを用いると、配向膜と光学異方性層間の密着性を高める効果が期待できるため、特に好ましい。
【0079】
特に、本発明の重合性液晶化合物に、下記式(A)で表される(メタ)アクリレート化合物(本明細書では、「(メタ)アクリレート化合物」の用語は、メタクリレート化合物及びアクリレート化合物の双方を含み意味で用いる)を添加すると、液晶転移温度以上で配向させた後、室温まで低下させても、下記式(A)の化合物の存在により、結晶化するのが抑制されているので、光照射、即ち、重合の開始を室温にて行えるというメリットがある。さらに、下記式(A)で表される(メタ)アクリレート化合物を併用すると、耐熱性がより改善されるので好ましい。
【0080】
【化36】

【0081】
前記一般式(A)中、R1及びR2はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、A1及びA2はそれぞれ炭素原子数2〜18のメチレン基又は少なくとも1つのエーテル系酸素原子を含有する炭素原子数2〜18の炭化水素基を表す。A1及びA2は、炭素原子数2〜18のメチレン基であることが好ましい。
【0082】
1及びY2はそれぞれ−CO−O−又は−O−CO−を表す。Y1は−CO−O−であり、Y2は−O−CO−であるのが好ましい。
【0083】
1は炭素原子数5以上のアルキル基を表す。炭素原子数は5〜32が好ましく、5〜24がより好ましく、5〜18がさらに好ましい。アルキル基は直鎖状、分岐状、又は環状のいずれであってもよく、また、X1中の水素原子が他の基に置換されていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ハロゲン原子及びシアノ基を好ましい例として挙げることができる。これらの置換基の中では、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基がさらに好ましく、炭素原子数1〜12のアルキル基、炭素原子数1〜12のアルコキシ基、炭素原子数2〜12アルコキシカルボニル基、炭素原子数2〜12アシルオキシ基、ハロゲン原子及びシアノ基がよりさらに好ましい。X1は無置換であることが最も好ましい。
【0084】
以下に、一般式(A)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0085】
【化37】

【0086】
【化38】

【0087】
【化39】

【0088】
【化40】

【0089】
【化41】

【0090】
【化42】

【0091】
【化43】

【0092】
【化44】

【0093】
【化45】

【0094】
【化46】

【0095】
【化47】

【0096】
【化48】

【0097】
前記式(A)で表される(メタ)アクリレート化合物は、種々の反応を利用して合成することができる。例えば、ハイドロキノンを出発原料として、Friedel-Craftsアシル化反応、及びそれに続く還元反応により、一方のOHに対してオルト位(他方のOHに対してメタ位)にX1を導入することにより下記中間体(A1):
【化49】

を得、この中間体(A1)と、下記試薬(B1)及び下記試薬(B2):
【化50】

とのエステル化を、混合酸無水物法による反応や、試薬(B1)及び(B2)と塩化チオニルとの反応による酸クロリド化を経由した反応等で進行させることで、合成することができる。試薬(B1)及び(B2)は、特開2002−97170号公報に記載の芳香族カルボン酸の製造方法に従って合成することができる。
【0098】
本発明の重合性液晶組成物中、液晶化合物100質量部に対して、上記一般式(A)で表される(メタ)アクリレート化合物を10〜400質量部含有することが好ましく、さらに好ましくは20〜200質量部、特に好ましくは50〜100質量部である。(メタ)アクリレート化合物が10質量部未満である場合には、室温での結晶化抑制効果が発現し難く、一方、400質量部を超える場合には、液晶性が発現しないという懸念があるため好ましくない。
【0099】
[光学異方性膜]
本発明は、本発明の重合性液晶組成物から形成される光学異方性膜にも関する。該光学異方性膜は、例えば、液晶組成物を配向させる配向工程、及びその配向状態に固定する固定化工程により作製することができる。配向状態の固定化は、重合反応を進行させることにより行うのが好ましい。特に本発明の重合性液晶組成物は、2種以上の光重合開始剤を利用し、しかもオキシム系光重合開始剤を少なくとも1種利用しているので、形成される光学異方性膜の耐久性に優れている。従って、基板上に光学異方性膜を形成した後、さらに熱に曝す処理やスパッタリング処理等の過酷な条件で進行させる処理が必要な光学部材の作製において、特に有用である。
【0100】
本発明の光学異方性膜の作製方法の一例を以下に説明するが、これに限定されるものではない。
まず、本発明の液晶組成物を塗布液として調製する。塗布液の調製に使用する溶媒としては、有機溶媒が好ましい。有機溶媒の例には、アミド(例、N,N−ジメチルホルムアミド)、スルホキシド(例、ジメチルスルホキシド)、ヘテロ環化合物(例、ピリジン)、炭化水素(例、トルエン、ヘキサン)、アルキルハライド(例、クロロホルム、ジクロロメタン)、エステル(例、酢酸メチル、酢酸ブチル)、ケトン(例、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン)、エーテル(例、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタン)が含まれる。アルキルハライド、エステル及びケトンが好ましい。2種類以上の有機溶媒を併用してもよい。
前記塗布溶剤の含有量は、本発明の液晶組成物中、1質量%〜90質量%が好ましく、5質量%〜80質量%がさらに好ましい。
【0101】
次に、調製した塗布液を表面に塗布して、液晶相転移温度以上に維持して、液晶組成物を配向させる。塗布液の塗布は、公知の方法(例えば、ワイヤーバーコーティング法、押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法)により実施できる。
【0102】
液晶分子が均一に配向した状態を実現するためには、前記塗布液を塗布する表面は、ラビング処理などの配向処理が施されているのが好ましく、配向膜のラビング処理面に塗布するのが好ましい。但し、棒状液晶化合物の光軸方向を膜面の法線方向と一致する方向に配向(ホメオトロピック配向)させる態様では、配向膜がなくても均一な配向状態を達成できる。また、添加剤の種類を選択することでも、配向膜がなくても、均一な配向状態を達成できる場合がある。
配向膜は、ポリビニルアルコールやポリイミドなどを主成分として含む膜の表面をラビング処理することで作製することができる。ラビング処理は、一般にはポリマー層の表面を、紙や布で一定方向に数回擦ることにより実施することができるが、特に本発明では液晶便覧(丸善(株))に記載されている方法により行うことが好ましい。その他、配向膜として、無機化合物の斜方蒸着による方法、マイクログルーブを有する層を形成する方法、及びラングミュア・ブロジェット法(LB膜)による有機化合物(例、ω−トリコサン酸、ステアリル酸メチル)の累積等の方法により作製することもできる。さらに、電場の付与、磁場の付与あるいは光照射により、配向機能が生じる配向膜も知られている。
配向膜の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.05〜3μmであることがさらに好ましい。
【0103】
次に、液晶組成物に光照射して、重合反応を開始させ、配向状態を固定して光学異方性膜を作製する。重合のための光照射は、紫外線を用いることが好ましい。照射エネルギーは、10mJ〜50J/cm2であることが好ましく、50mJ〜800mJ/cm2であることがさらに好ましい。また、雰囲気の酸素濃度は重合度に関与するため、空気中で所望の重合度に達しない場合には、窒素置換等の方法により酸素濃度を低下させることが好ましい。好ましい酸素濃度としては、10%以下が好ましく、7%以下がさらに好ましく、3%以下がよりさらに好ましい。
【0104】
光重合反応の進行時の温度条件については特に制限はない。反応を促進するためには、加熱条件下で光照射を実施するのが好ましいであろう。一方、光学異方性膜の生産性を上げるために、光照射及び重合反応の進行を室温で行うことも好ましい。室温で光照射を行う場合は、前記式(A)の化合物を添加するのが好ましい。
【0105】
なお、本明細書において「配向状態が固定化された状態」とは、その配向が保持された状態、より具体的には、液晶組成物に流動性が無く、また、電場、磁場などの外場や外力によって配向形態に変化を生じさせることなく、固定化された配向形態を安定に保ち続けることができる状態を意味するものである。通常の条件下で使用される用途では、0℃〜50℃の温度範囲で配向を保持するのが好ましく、より過酷な条件下で使用される用途では、−30℃〜70℃の温度範囲で配向を保持するのが好ましい。なお、配向状態が最終的に固定化され光学異方性膜が形成された際には、本発明の液晶組成物は液晶性を示す必要はない。例えば、液晶化合物として重合性基を有する化合物を用いているので、結果的に熱、光等で反応により重合又は架橋反応が進行し、高分子量化して、液晶性を失っているのが一般的である。
【0106】
本発明の光学異方性膜の厚さは用途などに応じて異なるが、一般的には、0.1〜20μmであることが好ましく、0.2〜15μmであることがさらに好ましい。
【0107】
本発明は、いわゆるインセル型の液晶表示装置の液晶セル基板等の光学部材の作製に有用である。インセル型では、セル基板の内面に光学補償等に利用される光学異方性膜を形成するが、セル内には光学異方性膜以外にも、カラーフィルタ及びITO膜などの導電膜を形成する必要がある。カラーフィルタの形成には、通常、加熱処理が必要であるので、カラーフィルタを形成する前に光学異方性膜を基板上に形成すると、当該加熱処理によって光学異方性膜は熱に曝される。従来、この加熱処理による光学異方性膜の光学特性の低下(例えば面内レターデーションReの絶対値の低下)が問題になっていた。また、カラーフィルタ形成後に光学異方性膜を形成したとしても、さらにその上にITO膜を形成する場合は、スパッタリング処理に曝されるので、該膜中にクラック等が発生することが問題になっていた。本発明では、上記したように、光重合開始剤を2種以上用い、しかも少なくとも1種をオキシム系光重合開始剤としているので、本発明の光学異方性膜は耐久性に優れている。その結果、熱に曝されても、光学特性の低下がなく、さらにスパッタリング処理等の過酷な処理に曝されても膜中にクラック等が発生し難く、その結果、形成されるITO膜等の面質も良好になる。
【0108】
[光学部材]
本発明は、基板と、該基板の上に本発明の重合性液晶組成物からなる光学異方性膜を有する光学部材にも関する。本発明の光学部材の一態様は、液晶セル基板である。この態様では、基板として液晶セル用のガラス基板やプラスチックフィルムを用い、その上に、上記方法により光学異方性膜を形成する。光学異方性膜と基板との間、又は光学異方性膜の上に、カラーフィルタをさらに有していてもよい。また、光学異方性膜の上に、ITO膜等の導電性膜や、液晶層の配向を制御するポリイミド膜等からなる配向膜を有していてもよい。
【0109】
[液晶表示素子]
また、本発明は、本発明の光学異方性膜を有する液晶表示素子にも関する。本発明の液晶表示素子の一例は、一対の基板と、その間に液晶層を有する液晶表示素子であって、本発明の重合性液晶組成物からなる光学異方性膜を、前記一対の基板の少なくとも一方の内面に有する液晶表示素子である。勿論、基板の外側に、前記光学異方性膜を有する液晶表示素子も、本発明の範囲に含まれる。
【実施例】
【0110】
以下に実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り、適宜、変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に限定されるものではない。
【0111】
[実施例1]
日産化学製の配向膜SE−150を、100×100mmのガラス基板上にスピンコーターを用いて膜厚0.080μmとなるように塗布し、230℃のオーブンにて1時間焼成した。そしてラビング装置を用いて基板に配向処理を施した。
次に、ネマチック液晶相を示す重合性液晶組成物として、以下に示す組成の組成物を調製した。重合性液晶組成物の組成
下記に示す化合物a 20質量部
下記に示す化合物b 80質量部
開始剤c(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製 Irgacure907) 6質量部
下記に示す開始剤d(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製 OXE02) 2質量部
増感剤e(日本化薬製 カヤキュアーDETX) 2質量部
下記に示す配向制御剤f 0.1質量部
溶媒(プロピレングリコールエチルエーテルアセテート) 440質量部
【0112】
【化51】

【0113】
前記重合性液晶組成物の塗布液を、先に用意した配向膜付きガラス基板上に、焼成後の位相差層の厚みが1.3μmになるように、スピンコーティングした。
次に、80℃で3分間加熱し配向処理した後、室温まで冷却して超高圧水銀灯を有する紫外線照射装置により紫外線を40mW/cm2で10秒照射して、光学異方性膜付きガラス基板を作製した。次いで230℃のオーブンで60分間焼成した後、自動福屈折計(KOBRA−21ADH 王子計測機器(株)製)を用いて、波長550nmの面内位相差Reを測定したところ165nmであった。
得られた光学異方性膜付きガラス基板を、230℃のオーブンでさらに180分間焼成し、同様に光学異方性膜の同波長の位相差を測定したところ162nmであった。
【0114】
[実施例2]
実施例1で調製した重合性液晶組成物の組成を、以下の組成に代えた以外は実施例1と同様にして、光学異方性膜付きガラス基板を作製した。
重合性液晶組成物の組成
上記化合物a 70質量部
下記化合物g 30質量部
開始剤c(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製 Irgacure907) 6質量部
開始剤d(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製 OXE02) 2質量部
増感剤e(日本化薬製 カヤキュアーDETX) 2質量部
上記配向制御剤f 0.1質量部
溶媒(プロピレングリコールエチルエーテルアセテート) 440質量部
【0115】
【化52】

【0116】
実施例1と同様に、230℃のオーブンで60分間焼成した後、自動福屈折計(KOBRA−21ADH 王子計測機器(株)製)を用いて位相差を測定したところ、波長550nmの面内位相差Reは152nmであった。
次いで得られた光学異方性膜付きガラス基板を230℃のオーブンでさらに180分間焼成し、同様に同波長の面内位相差を測定したところ、151nmであった。
【0117】
[実施例3]
実施例2の重合性液晶組成物の調製において、化合物gの代わりに、下記化合物hを用いた以外は、実施例2と同様にして、光学異方性膜付きガラス基板を作製した。
【0118】
【化53】

【0119】
なお、化合物hは、下記スキームにしたがって合成した。
【化54】

【0120】
の合成)
200mLの三口フラスコに、ハイドロキノン11g(0.1モル)、n−カプリル酸21.7g(0.15モル)を入れ、50℃に加熱して、BF3ガス9.5g(0.14モル)を導入し、100℃にて1時間攪拌した。室温まで冷却した後、反応物を5%重曹水溶液300mLに注ぎ、室温にて30分攪拌した。析出物をろ過により取り出し、メタノールより再結晶を行い、化合物を白色結晶として5.5g得た(収率23.3%)。
【0121】
の合成)
内容量300mLのオートクレーブに、化合物を5.0g(0.021モル)、パラジウム−炭素(10%)0.7g、氷酢酸50mLを入れ、内温45℃、水素圧50kg/cm2にて反応を行った。窒素置換し、内温を室温に戻した後、反応液をろ過し、パラジウム−炭素を除いた。ヘキサン200mLに注ぎ、析出物をろ過により取り出し、シリカゲルクロマトグラフィーにより精製し、化合物を白色結晶として3.8g得た(収率81.4%)。
【0122】
(化合物hの合成)
200mLの三口フラスコに、化合物(特開2002−97170号公報に記載の化合物)を8.46g(0.032モル)、テトラヒドロフラン80mLを入れ、10℃以下に冷却した。内温を10℃以下に保ちながら、メタンスルホニルクロリド3.67g(0.032モル)、及びジイソプロピルエチルアミン4.55g(0.035モル)を順に滴下により加えた。室温にて1時間攪拌した後、10℃以下に冷却し、化合物を3.5g(0.016モル)、ジイソプロピルエチルアミン4.55g(0.035モル)、及びジメチルアミノピリジン10mgを順に加え、室温にて2時間攪拌した。反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出して飽和食塩水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。ろ過後、ろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して所望の化合物hを白色結晶として10.2g得た。(収率89.2%)得られた化合物HのNMRスペクトルは以下の通りであった。
【0123】
1H−NMR(溶媒:CDCl3、基準:テトラメチルシラン)δ(ppm):
0.84(3H、t)
1.12−1.37(10H、m)
2.53−1.68(2H、m)
1.81−2.00(8H、m)
2.58(2H、t)
4.10(4H、t)
4.26(4H、t)
5.85(2H、dd)
6.15(2H、dd)
6.46(2H、dd)
6.94−7.01(4H、m)
7.08−7.20(3H、m)
8.12−8.18(4H、m)
【0124】
実施例2と同様に230℃のオーブンで60分間焼成した後、自動福屈折計(KOBRA−21ADH 王子計測機器(株)製)を用いて、波長550nmにおける面内位相差Reを測定したところ、149nmであった。
次いで得られた光学異方性膜付きガラス基板を230℃のオーブンでさらに180分間焼成し、同様に同波長における面内位相差Reを測定したところ、145nmであった。
【0125】
[比較例1〜3]
実施例1〜3の重合性液晶組成物の調製において、開始剤dを添加しなかった以外は同様にして、比較例1〜3用の重合性液晶組成物をそれぞれ調製し、実施例1〜3と同様にして、光学異方性膜付きガラス基板を作製した。
次いで実施例1〜3と同様に230℃のオーブンで60分間焼成した後、自動福屈折計(KOBRA−21ADH 王子計測機器(株)製)を用いて、波長550nmにおける面内位相差Reを測定した。
次いで、得られた光学異方性膜付きガラス基板を230℃のオーブンでさらに180分間焼成し、同様に同波長における面内位相差Reを測定した。それらの結果を、実施例1〜3の結果とともに、下記表に示す。
[比較例4]
特開2006−274093号公報の実施例1に記載の方法に従い、光学異方性膜付きガラス基板を作製した。
次いで実施例1〜3と同様に230℃のオーブンで60分間焼成した後、自動福屈折計(KOBRA−21ADH 王子計測機器(株)製)を用いて、波長550nmにおける面内位相差Reを測定した。
次いで、得られた光学異方性膜付きガラス基板を230℃のオーブンでさらに180分間焼成し、同様に同波長における面内位相差Reを測定した。それらの結果を、実施例1〜3の結果とともに、下記表に示す。
【0126】
【表1】

【0127】
上記表に示す結果から、本発明の実施例1〜3の光学異方性膜は、加熱後も位相差の低下がほとんどなく、優れた耐熱性を示すことが理解できる。
【0128】
さらに、本発明の実施例1〜3の光学異方性膜を、アルバック製スパッタ装置(SV9540)を用いて200℃で、圧力6.0×10−13Torr、アルゴンガス流量78.0sccm、酸素ガス流量0.9sccm、印加電力を5kWでITOスパッタリングを15分間行い、膜厚1400Å、表面抵抗30Ω□のITO膜を、光学異方性膜上に成膜した。得られたITO膜にクラックは発生せず、良好な面質だった。
【0129】
[実施例4]
実施例3において化合物aを100質量部添加し、化合物hを添加しなかった以外は、実施例3と同様にして組成物を調製し、実施例3と同様にして、光学異方性膜付きのガラス基板を作製した。
実施例3と同様に230℃のオーブンで60分間焼成した後、自動福屈折計(KOBRA−21ADH 王子計測機器(株)製)を用いて、波長550nmにおける面内位相差Reを測定した。次いで得られた光学異方性膜付きガラス基板を230℃のオーブンでさらに180分間焼成し、同様に同波長における面内位相差Reを測定した。表1に示した実施例3の結果とともに、下記表に結果を示す。
【0130】
【表2】

【0131】
実施例3及び4との比較から、化合物aを単独で使用するよりも、化合物h(一般式(A)で表される(メタ)アクリレート化合物)を併用することでさらに、耐熱性が改善されることが理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種の化合物と、少なくとも2種の光重合開始剤を含有する重合性液晶組成物であって、前記少なくとも2種の光重合開始剤のうち、少なくとも1種が下記一般式(II)で表される化合物であることを特徴とする重合性液晶組成物:
一般式(I) Q1−SP1−X1−MG−X2−SP2−Q2
一般式(I)中、Q1及びQ2はそれぞれ反応性基を表し;SP1及びSP2はそれぞれスペーサー基を表し;X1及びX2はそれぞれ連結基を表し;及びMGはメソゲン基を表し;
【化1】

一般式(II)中、Arは芳香族基を表し;R1はアリール基、アルキル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、シアノ基、ニトロ基、カルバモイル基、ハロアルキル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルスルホ基、アリールスルホ基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルコキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、又はジフェニルホスフィノイル基を表し;R2はアリール基、アルキル基、アルコキシ基、又はアリールオキシ基を表し;及びmは0又は1を表す。
【請求項2】
前記一般式(I)で表される化合物を2種以上含有することを特徴とする請求項1に記載の重合性液晶組成物。
【請求項3】
下記一般式(Ia)で表される液晶化合物の少なくとも1種を含有すること特徴とする請求項1又は2に記載の重合性液晶組成物:
【化2】

一般式(Ia)中、Xは水素原子又はメチル基を表し、互いに同一でも異なっていてもよく;SP1a及びSP2aはそれぞれスペーサー基を表し;及びR3aは置換基を表す。
【請求項4】
下記一般式(A)で表される(メタ)アクリレート化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物:
【化3】

式(A)中、R1及びR2はそれぞれ水素原子又はメチル基を表し、A1及びA2はそれぞれ炭素原子数2〜18のメチレン基又は少なくとも1つのエーテル系酸素原子を含有する炭素原子数2〜18の炭化水素基を表す。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の重合性液晶組成物からなる光学異方性膜。
【請求項6】
基板、及び該基板上に請求項5に記載の光学異方性膜を少なくとも有する光学部材。
【請求項7】
請求項5に記載の光学異方性膜を有することを特徴とする液晶表示素子。

【公開番号】特開2009−186785(P2009−186785A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−27081(P2008−27081)
【出願日】平成20年2月6日(2008.2.6)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】