説明

重合性組成物、硬化膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、および固体撮像素子

【課題】感度が高く、且つ光重合開始剤であるオキシムエステル光重合開始剤が加水分解せず、液状での保存安定性が良好で経時保管後における感度低下が抑制された重合性組成物を提供する。
【解決手段】(A)オキシムエステル光重合開始剤、(B)分子量300以下の有機酸無水物、および(C)重合性化合物を含有する重合性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性組成物、該重合性化合物を用いてなる硬化膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、およびカラーフィルタを備える固体撮像素子に関する。
【背景技術】
【0002】
重合性組成物としては、例えば、エチレン性不飽和結合を有する重合性化合物に光重合開始剤を加えたものがある。このような重合性組成物は、光を照射されることによって重合硬化するため、光硬化性インキ、感光性印刷版、カラーフィルタ、各種フォトレジスト等に用いられている。
【0003】
近年、特に短波長365nmの光源に感受性を有する重合性組成物が種々の用途から望まれており、そのような短波長の光源に対して優れた感度を示す化合物、例えば、光重合開始剤に対する要求が高まってきている。
【0004】
このような重合性組成物に用いられる光重合開始剤として、オキシムエステル誘導体が提案されている(例えば、特許文献1〜6参照)。しかし、これらの公知のオキシムエステル誘導体は、波長365nmに対する吸光度が低いため、この波長の露光感度に関しては、なお、改良の余地があった。
このため、近年、365nm近傍の短波長における吸収を高め、感度を向上させ、且つ、安定性も比較的良好なオキシムエステル誘導体が新たに提案されている(例えば、特許文献7〜8)。しかしこれらのオキシムエステル誘導体も酸性または塩基性の強い重合性組成物とした場合にはオキシムエステル部位の加水分解が起こるために経時安定性について今尚課題が残っていた。
【0005】
一方、イメージセンサー用カラーフィルタは、CCDなどの固体撮像素子の高集光性、かつ、高色分離性による画質向上のため、カラーフィルタの高着色濃度・薄膜化への強い要求がある。
高着色濃度にするために顔料には顔料と相互作用しうるシナジストや、シナジストと相互作用しうる分散剤が使用される。これらの相互作用基として酸-塩基イオン性相互作用が一般的に広く用いられる。高着色濃度を実現するためにこれら酸、塩基性の置換基が重合性組成物中に多量に存在すると、組成物中でオキシムエステル誘導体を加水分解させるので、重合性組成物の経時安定性が悪くなることがある。
【0006】
また高着色濃度を得るために着色剤を多量に添加すると、2.5μm以下の微細な画素パターンの形状を忠実に再現するには感度が不足してしまい、パターンの欠落が多発する傾向がある。なお、この欠落をなくすためには、より高エネルギーの光照射が必要なため、露光時間が長くなり、製造上の歩留まり低下が顕著になる。
以上のことから、カラーフィルタの着色領域を形成するために用いられる重合性組成物に関しては、着色剤と分散剤とを高濃度で含有しつつも、良好なパターン形成性を得る必要があるという点から、硬化感度が高いこと、さらに酸または塩基性の置換基を有する分散剤が重合性組成物中に含まれていても、オキシムエステル誘導体が加水分解を起こさず、重合性組成物が経時保存で感度低下しないことが望まれているのが現状である。
【0007】
一方、カラーフィルタ用光重合性組成物に分子量800以下の有機カルボン酸無水物を添加し、カラーフィルタを形成する現像工程における残渣等による地汚れの発生を抑制することが知られている(例えば、特許文献9参照。)。しかし、特許文献9には重合性組成物の経時保存性の向上についての記載も示唆もなく、オキシムエステル誘導体を開始剤として用いた高感度で高精細な画像を形成する重合性組成物の経時保存性の向上が待ち望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4255513号明細書
【特許文献2】米国特許第4590145号明細書
【特許文献3】特開2000−80068号公報
【特許文献4】特開2001−233842号公報
【特許文献5】特開2006−342166号公報
【特許文献6】特開2005−202252号公報
【特許文献7】特開2007−269779号公報
【特許文献8】特開2009−191061号公報
【特許文献9】特許3610626号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、感度が高く、且つ光重合開始剤であるオキシムエステル光重合開始剤の加水分解を抑制し、液状での保存安定性が良好で経時保管後における感度低下が抑制された重合性組成物を提供することにある。
また、前記重合性組成物を用いてパターン形状が良好な硬化膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、および固体撮像素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、以下の手段により前記課題を解決できることができることがわかった。
前記課題を解決するための具体的手段を以下に示す。
【0011】
<1> (A)オキシムエステル光重合開始剤、(B)分子量300以下の有機酸無水物、および(C)重合性化合物を含有する重合性組成物。
【0012】
<2> 前記(B)有機酸無水物の沸点が100℃以上200℃以下である<1>に記載の重合性組成物。
【0013】
<3> 前記(A)オキシムエステル光重合開始剤と前記(B)有機酸無水物単量体との質量比が、20:1〜1:1である<1>または<2>に記載の重合性組成物。
【0014】
<4> 前記(A)オキシムエステル光重合開始剤が、下記一般式(1)で表される化合物である<1>〜<3>のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【0015】
【化1】

【0016】
一般式(1)中、Rはアリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表し、Rはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表し、Rはアルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を表す。RとRとは、酸素原子または硫黄原子を介して連結させた2価の有機基を含んで環を形成してもよい。
【0017】
<5> 前記(A)オキシムエステル光重合開始剤が、下記一般式(2)で表される化合物である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【0018】
【化2】

【0019】
一般式(2)中、Aは芳香族基、またはヘテロ芳香族基を表し、Rはアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。Rはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表す。AとRとは、酸素原子または硫黄原子を介して連結させた2価の有機基を含んで環を形成してもよい。Rは炭素数8以下のアルキル基、または炭素数8以下のアリール基を表す。nは0または1、mは0または1を表す。
【0020】
<6> 前記(A)オキシムエステル光重合開始剤が、下記一般式(3)または(4)で表される化合物である<1>〜<4>のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【0021】
【化3】

【0022】
一般式(3)中、Rは-SAr基を有するアルキル基を表し、Rはアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。R10は炭素数8以下のアルキル基または炭素数8以下のアリール基を表す。Arはアリール基を表す。Bは下記<B群>から選ばれる1種の置換基を表す。pは0または1、qは0または1を表す。
一般式(4)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価のアルキレン基を表す。R11はアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、R12は炭素数8以下のアルキル基または炭素数8以下のアリール基を表す。Qは下記<B群>の1種から水素原子が1個除かれX−Yと共同して環を形成する置換基を表す。rは0または1、sは0または1を表す。
<B群>
下記において、Rはアルキル基またはアリール基を表す。
【0023】
【化4】

【0024】
<7> 前記(B)分子量300以下の有機酸無水物が、下記一般式(5)で表される化合物である<1>〜<6>のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【0025】
【化5】

【0026】
一般式(5)中、2個あるR13は同一で、炭素数8以下のアルキル基、または炭素数8以下のアリール基を表し、一般式(2)におけるR、一般式(3)におけるR、または一般式(4)におけるR12と同じ構造の置換基を示す。
【0027】
<8> 前記一般式(2)におけるR、一般式(3)におけるR10、一般式(4)におけるR12、および一般式(5)におけるR13が、いずれもメチル基である<5>〜<7>のいずれか1項に記載の重合性組成物。
<9> さらに、(D)着色剤を含有する<1>〜<8>のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【0028】
<10> 前記(D)着色剤が染料である<9>に記載の重合性組成物。
<11> 前記(D)着色剤がチタンブラックである<9>に記載の重合性組成物。
<12> さらに、(E)分散剤を含有する<9>〜<11>のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【0029】
<13> カラーフィルタ用である<1>〜<12>のいずれか1項に記載の重合性組成物。
<14> <1>〜<13>のいずれか1項に記載の重合性組成物を用いてなる硬化膜。
<15> 支持体上に、<1>〜<13>のいずれか1項に記載の重合性組成物を用いて形成されたパターン領域を有するカラーフィルタ。
【0030】
<16> 支持体上に、<1>〜<13>のいずれか1項に記載の重合性組成物を付与して重合性組成物層を形成する工程と、前記重合性組成物層を、パターン状に露光する工程と、露光後の前記重合性組成物層を現像して着色パターンを形成する工程と、を含むカラーフィルタの製造方法。
<17> <15>に記載のカラーフィルタを備える固体撮像素子。
【0031】
本発明においては、オキシムエステル光重合開始剤を含有する重合性組成物に分子量300以下の有機酸無水物を添加することで、前記酸無水物が重合性組成物中の水分を補足するものと考えられる。これにより重合性組成物中でオキシムエステル光重合開始剤の加水分解を抑制し、重合性組成物を液状態で経時保管したときの感度低下を抑制し、高感度を維持することができたものと考えられる。
また、仮にオキシムエステル光重合開始剤が加水分解してオキシムとなったとしても、重合性組成物中に酸無水物が存在することによってオキシムのエステル化がおこり、元の構造のオキシムエステル光重合開始剤に戻ることができるものと考えられる。これによって重合性組成物の経時保管したときの感度低下を抑制し、高感度を維持することができたものと推測される。
【0032】
さらに分子量が小さく、沸点の低い有機酸無水物を使用することによって、露光前のプリベーク工程で重合性組成物層から酸無水物が揮発したものと考えられ、パターン形状が良好で、しかも残渣などが生じないパターン状の硬化膜を作成できた。
オキシムエステル光重合開始剤は、中性以外では加水分解を受けやすいが、特にカラーフィルタ用途のような重合性組成物では、顔料分散剤、現像のための樹脂などの酸性基、塩基性基を含む化合物が存在すると、オキシムエステル光重合開始剤の加水分解を助長することがある。したがって本発明の重合性組成物をカラーフィルタの着色領域形成に用いる場合には、重合性組成物を経時保管したときの感度低下がなく、高感度で硬化し、さらにパターン形成性が良好で、且つ未露光部の残渣がないパターンが得られた。これは、カラーフィルの着色パターンとしては、極めて好ましく、そのような着色パターンを形成しうる本発明のカラーフィルタは、微細な着色パターンを必要とする固体撮像素子用途に好適である。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、感度が高く、且つ光重合開始剤であるオキシムエステル光重合開始剤の加水分解を抑制し、液状での保存安定性が良好で経時保管後における感度低下が抑制された重合性組成物を提供することができる。
また、前記重合性組成物を用いてパターン形状が良好な硬化膜、カラーフィルタ、カラーフィルタの製造方法、および固体撮像素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<<重合性組成物>>
本発明の重合性組成物は、(A)オキシムエステル光重合開始剤、(B)分子量300以下の有機酸無水物、および(C)重合性化合物を含有することを特徴とする。
以下、本発明の重合性組成物に用いられる各成分について順次説明する。
【0035】
<(A)オキシムエステル光重合開始剤>
本発明における(A)オキシムエステル光重合開始剤は、重合性化合物の重合を開始する能力を有する限り、特に制限はなく、公知のオキシムエステル光重合開始剤の中から適宜選択することができる。
また、光励起された増感剤と何らかの作用を生じ、活性ラジカルを生成するオキシムエステル光重合開始剤であってもよく、モノマーの種類に応じてカチオン重合を開始させるようなオキシムエステル光重合開始剤であってもよい。
さらに、(A)オキシムエステル光重合開始剤は、約200〜800nm(300〜500nmがより好ましい。)の範囲内に少なくとも約50以上の分子吸光係数を有する成分を少なくとも1種含有していることが硬化性を付与するために好ましい。
また近年ではUV光源として水銀ランプ、メタルハライドランプのみではなく単色UV-LED光源が使用されることがある。単色としては365nm又は405nmが主に使用される。このため高感度化の観点から、365nmや405nmにおけるオキシムエステル光重合開始剤のモル吸光係数は、50〜10,0000であることが好ましく、100〜70,000であることがより好ましく、500〜50,000であることが特に好ましい。
【0036】
本発明で(A)オキシムエステル光重合開始剤として好適に用いられるオキシム誘導体としては、例えば、3−ベンゾイロキシイミノブタン−2−オン、3−アセトキシイミノブタン−2−オン、3−プロピオニルオキシイミノブタン−2−オン、2−アセトキシイミノペンタン−3−オン、2−アセトキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンゾイロキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オン、3−(4−トルエンスルホニルオキシ)イミノブタン−2−オン、及び2−エトキシカルボニルオキシイミノ−1−フェニルプロパン−1−オンなどが挙げられる。
【0037】
オキシムエステル化合物としては、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.1653−1660)、J.C.S.Perkin II(1979年)pp.156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995年)pp.202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報、特表2004−534797号公報、特開2006−342166号公報の各公報に記載の化合物等が挙げられる。
市販品ではIRGACURE−OXE01、IRGACURE−OXE02、CGI−325(以上、チバジャパン社製)も好適に用いられる。
さらに、特開2007−231000号公報、及び、特開2007−322744号公報に記載される環状オキシム化合物も好適に用いることができる。
最も好ましくは、特開2007−269779号公報に示される特定置換基を有するオキシム化合物や、特開2009−191061号公報に示されるチオアリール基を有するオキシム化合物が挙げられる。
【0038】
本発明における(A)オキシムエステル光重合開始剤は、下記一般式(1)で示される化合物であることが好ましい。
【0039】
【化6】

【0040】
一般式(1)中、Rはアリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表し、Rはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表し、Rはアルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を表す。RとRとは、酸素原子または硫黄原子を介して連結させた2価の有機基を含んで環を形成してもよい。
【0041】
本明細書において、前記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アルコキシ基、およびアシル基は特に指定しない限り、置換基を有しないものに加え、さらに置換基を有するものをも包含することを意味する。
【0042】
以下、一般式(1)で表される化合物の詳細を説明する。
一般式(1)中、Rはアリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表す。
【0043】
がアリール基を表す場合の、置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6〜30の芳香環が好ましく、炭素数6〜20の芳香環がより好ましく、炭素数6〜10の芳香環が更に好ましい。
【0044】
具体的には、例えば、フェニル基、p−メトキシフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−ブロモフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ビフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、9−アンスリル基、9−フェナントリル基、1−ピレニル基、5−ナフタセニル基、1−インデニル基、2−アズレニル基、9−フルオレニル基、ターフェニル基、o−、m−、及びp−トリル基、キシニル基、o−、m−、及びp−クメニル基、メシチル基、ペンタレニル基、ビナフタレニル基、ターナフタレニル基、ビフェニレニル基、インダセニル基、フルオランテニル基、アセナフチレニル基、フルオレニル基、アントリル基、ビアントラセニル基、ターアントラセニル基、アントラキノリル基、フェナントリル基、トリフェニレニル基、p-フェニルチオフェニル基等が挙げられる。
【0045】
がヘテロアリール基を表す場合の、置換基を有していてもよいヘテロアリール基としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子又はリン原子を有する芳香族或いは脂肪族の複素環基が挙げられる。そのなかでも、カルバゾリル基、チエニル基、ピリジル基、フリル基、ピラニル基、又は、イミダゾリル基が好ましく、チエニル基、ピリジル基、フリル基が更に好ましい。
【0046】
がアシル基を表す場合の、置換基を有していてもよいアシル基としては、炭素数6〜30のアシル基が好ましく、炭素数6〜20のアシル基がより好ましく、炭素数6〜10のアシル基が更に好ましい。
例えば、ベンゾイル基、3−(N-エチルカルバゾール)カルボニル基、(4-フェニルチオ)フェニルカルボニル基などが挙げられる。
【0047】
がアルキル基を表す場合の、置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜20のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキル基が更に好ましい。
具体的には例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクダデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、トリフルオロメチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。
【0048】
がアルキル基を表す場合には、置換基を有するアルキル基であることがさらに好ましい。具体的には下記<A群>で表される置換基を有するアルキル基である。
<A群>
ハロゲン原子、シアノ基、アリール基、アルケニル基、アルキニル基、−ORa、−SRa、−CONRaRb、−OC(O)NRaRb、−OC(O)Ra、−C(O)ORa、−S(O)Ra、−S(O)Ra。Ra、Rbはそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、又は、ヘテロアリール基を示す。
【0049】
がアリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表す場合の好ましい範囲はRと同様である。
【0050】
がアルキル基を表す場合は、置換基を持たない炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜5のアルキル基がより好ましく、炭素数1〜2のアルキル基が更に好ましい。最も好ましくはメチル基である。
【0051】
がアリール基を表す場合は、置換基を持たない炭素数6〜20のアリール基が好ましく、炭素数6〜15のアリール基がより好ましく、炭素数6〜10のアリール基が更に好ましい。最も好ましくはフェニル基である。
【0052】
がアルコキシ基を表す場合は、置換基を持たない炭素数1〜10のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜5のアルコキシ基がより好ましく、炭素数1〜2のアルコキシ基が更に好ましい。最も好ましくはメトキシ基である。
【0053】
一般式(1)で示される化合物は、さらに下記一般式(2)で表されることが好ましい。
【0054】
【化7】

【0055】
一般式(2)中、Aは芳香族基、またはヘテロ芳香族基を表し、Rはアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。Rはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表す。AとRとは、酸素原子または硫黄原子を介して連結させた2価の有機基を含んで環を形成してもよい。Rは炭素数8以下のアルキル基、または炭素数8以下のアリール基を表す。nは0または1、mは0または1を表す。
【0056】
Aが芳香族基を表す場合、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、ビフェニル、ベンジル、ターフェニレン、スチルベン、ジフェニルスルフィド等から水素原子を1個除いた残基が挙げられる。
【0057】
Aがヘテロ芳香族基を表す場合、N-エチルカルバゾール、チオキサントン等から水素原子を1個除いた残基が挙げられる。
【0058】
がアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す場合の好ましい範囲は一般式(1)におけるRで記述した範囲と同様である。
また、Rがアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、アシル基を示す場合の好ましい範囲は一般式(1)におけるRで記述した範囲と同様である。
【0059】
は炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアリール基を表し、より好ましくは炭素数1から4のアルキル基、炭素数6から7のアリール基である。具体的にはメチル基、フェニル基などである。
【0060】
一般式(1)で示される化合物は、さらに下記一般式(3)または(4)で示されることが好ましい。
【0061】
【化8】

【0062】
一般式(3)中、Rは-SAr基を有するアルキル基を表し、Rはアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。R10は炭素数8以下のアルキル基または炭素数8以下のアリール基を表す。Arはアリール基を表す。Bは下記<B群>から選ばれる1種の置換基を表す。pは0または1、qは0または1を表す。
一般式(4)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価のアルキレン基を表す。R11はアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、R12は炭素数8以下のアルキル基または炭素数8以下のアリール基を表す。Qは下記<B群>の1種から水素原子が1個除かれX−Yと共同して環を形成する置換基を表す。rは0または1、sは0または1を表す。
<B群>
下記において、Rはアルキル基またはアリール基を表す。
【0063】
【化9】

【0064】
10は炭素数8以下のアルキル基、または炭素数8以下のアリール基を表し、より好ましくは炭素数1から4のアルキル基、炭素数6から7のアリール基である。具体的にはメチル基、フェニル基などである。
【0065】
は-SAr基を有するアルキル基を表し、Arはアリール基を表す。具体的には4−クロロフェニルチオエチル基、4−ブロモフェニルチオエチル基、4−フルオロフェニルチオエチル基、2,6−ジメチルフェニルチオエチル基、4−メチルフェニルチオエチル基、4−メトキシフェニルチオエチル基、4−クロロフェニルチオプロピル基、4−ブロモフェニルチオプロピル基、4−フルオロフェニルチオプロピル基、2,6−ジメチルフェニルチオプロピル基、4−メチルフェニルチオプロピル基、4−メトキシフェニルチオプロピル基などが挙げられる。
【0066】
<B群>におけるRがアルキル基を表す場合の置換基を有していてもよいアルキル基としては、炭素数1から8のアルキル基が好ましい。最も好ましくはエチル基である。
がアリール基を表す場合の置換基を有していてもよいアリール基としては、炭素数6から12のアリール基が好ましい。最も好ましくはフェニル基である。
【0067】
一般式(4)におけるXは酸素原子または硫黄原子を表し、Qは<B群>の1種から水素原子が1個除かれX−Yと共同して環を形成する置換基を表す。Qとの結合は<B群>から選ばれる1種の置換基の芳香環の任意の位置で連結される。
【0068】
Yは2価の連結基を表し、炭素数1から10の置換基を有していてもよいアルキレン基が好ましく、炭素数1から5の置換基を有していてもよいアルキレン基がさらに好ましい。具体的にはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、イソプロピレン基、ブチレン基、イソブチレン基、sec-ブチレン基等が挙げられる。
【0069】
365nm又は405nmにおけるオキシムエステル光重合開始剤のモル吸光係数は、感度の観点から、1,000〜300,000であることが好ましく、5,000〜300,000であることがより好ましく、10,000〜200,000であることが特に好ましい。
化合物のモル吸光係数は、公知の方法を用いることができるが、具体的には、例えば、紫外可視分光光度計(Varian社製Carry−5 spctrophotometer)にて、酢酸エチル溶媒を用い、0.01g/Lの濃度で測定することが好ましい。
【0070】
以下、本発明に使用されるオキシムエステル光重合開始剤の具体例〔例示化合物(A−1)〜(A−46)〕を以下に示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0071】
【化10】

【0072】
【化11】

【0073】
【化12】

【0074】
【化13】

【0075】
【化14】

【0076】
【化15】

【0077】
上記具体例のなかでも、例示化合物(A−1)、(A−2)、(A−5)、(A−6)、(A−8)〜(A−10)、(A−22)〜(A−24)、(A−27)〜(A−32)、(A−40)〜(A−46)が好適であり、さらに好適なのは(A−2)、(A−6)、(A−8)、(A−9)、(A−22)、(A−24)、(A−27)、(A−29)、(A−43)〜(A−46)である。
【0078】
(A)オキシムエステル光重合開始剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の重合性組成物に使用される(A)オキシムエステル光重合開始剤の含有量は、目的に応じて適宜選択されるが、一般的には、重合性組成物の固形分に対し、1質量%〜20質量%が好ましく、3質量%〜15質量%が更に好ましい。なかでも、本発明の重合性組成物をカラーフィルタの着色領域の形成に用いる場合には、7質量%〜15質量%が好ましく、固体撮像素子のカラーフィルタ形成に用いる場合には、3質量%〜20質量%が好ましい。
この範囲内とすることで、感度、および経時感度低下抑制に優れる硬化膜を得ることができる。
なお、本明細書における重合性組成物の固形分とは、重合性組成物を構成する溶剤を除いた重合性組成物の全成分の合計含有量のことである。
【0079】
(A)オキシムエステル光重合開始剤は、オキシム構造のα位にカルボニル基を有する場合に特に経時感度低下が顕著であり、本発明の(B)分子量300以下の有機酸無水物との組み合わせにより、特に経時感度低下抑制に対して顕著な効果を表す。
【0080】
本発明の重合性組成物はオキシムエステル光重合開始剤以外の光重合開始剤を含んでもよい。
オキシムエステル光重合開始剤以外の光重合開始剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素誘導体(例えば、トリアジン骨格を有するもの、オキサジアゾール骨格を有するもの、など)、アシルホスフィンオキサイド等のアシルホスフィン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール、有機過酸化物、チオ化合物、ケトン化合物、芳香族オニウム塩、アミノアセトフェノン化合物、ヒドロキシアセトフェノン化合物などが挙げられる。
【0081】
前記トリアジン骨格を有するハロゲン化炭化水素化合物としては、例えば、若林ら著、Bull.Chem.Soc.Japan,42、2924(1969)記載の化合物、英国特許1388492号明細書記載の化合物、特開昭53−133428号公報記載の化合物、独国特許3337024号明細書記載の化合物、F.C.SchaeferなどによるJ.Org.Chem.;29、1527(1964)記載の化合物、特開昭62−58241号公報記載の化合物、特開平5−281728号公報記載の化合物、特開平5−34920号公報記載化合物、米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物、などが挙げられる。
【0082】
前記米国特許第4212976号明細書に記載されている化合物としては、例えば、オキサジアゾール骨格を有する化合物(例えば、2−トリクロロメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロロフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−フェニル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリブロモメチル−5−(2−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール;2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−クロルスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(4−n−ブトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリプロモメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾールなど)などが挙げられる。
【0083】
また、オキシムエステル光重合開始剤以外の光重合開始剤として、アクリジン誘導体(例えば、9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9、9’−アクリジニル)ヘプタンなど)、N−フェニルグリシンなど、ポリハロゲン化合物(例えば、四臭化炭素、フェニルトリブロモメチルスルホン、フェニルトリクロロメチルケトンなど)、クマリン類(例えば、3−(2−ベンゾフロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−ベンゾフロイル)−7−(1−ピロリジニル)クマリン、3−ベンゾイル−7−ジエチルアミノクマリン、3−(2−メトキシベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジメチルアミノベンゾイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3,3’−カルボニルビス(5,7−ジ−n−プロポキシクマリン)、3,3’−カルボニルビス(7−ジエチルアミノクマリン)、3−ベンゾイル−7−メトキシクマリン、3−(2−フロイル)−7−ジエチルアミノクマリン、3−(4−ジエチルアミノシンナモイル)−7−ジエチルアミノクマリン、7−メトキシ−3−(3−ピリジルカルボニル)クマリン、3−ベンゾイル−5,7−ジプロポキシクマリン、7−ベンゾトリアゾール−2−イルクマリン、また、特開平5−19475号公報、特開平7−271028号公報、特開2002−363206号公報、特開2002−363207号公報、特開2002−363208号公報、特開2002−363209号公報などに記載のクマリン化合物など)、アシルホスフィンオキサイド類(例えば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチル−ペンチルフェニルホスフィンオキサイド、Lucirin TPOなど)、メタロセン類(例えば、ビス(η5−2,4−シクロペンタジエン−1−イル)−ビス(2,6−ジフロロ−3−(1H−ピロール−1−イル)−フェニル)チタニウム、η5−シクロペンタジエニル−η6−クメニル−アイアン(1+)−ヘキサフロロホスフェート(1−)など)、特開昭53−133428号公報、特公昭57−1819号公報、同57−6096号公報、及び米国特許第3615455号明細書に記載された化合物などが挙げられる
【0084】
前記ケトン化合物としては、例えば、ベンゾフェノン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、4−メトキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン、2−エトキシカルボニルベンゾルフェノン、ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はそのテトラメチルエステル、4,4’−ビス(ジアルキルアミノ)ベンゾフェノン類(例えば、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビスジシクロヘキシルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジヒドロキシエチルアミノ)ベンゾフェノン、4−メトキシ−4’−ジメチルアミノベンゾフェノン、4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、4−ジメチルアミノベンゾフェノン、4−ジメチルアミノアセトフェノン、ベンジル、アントラキノン、2−t−ブチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、フェナントラキノン、キサントン、チオキサントン、2−クロル−チオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、フルオレノン、2−ベンジル−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−1−ブタノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルホリノ−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−〔4−(1−メチルビニル)フェニル〕プロパノールオリゴマー、ベンゾイン、ベンゾインエーテル類(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル、ベンジルジメチルケタール)、アクリドン、クロロアクリドン、N−メチルアクリドン、N−ブチルアクリドン、N−ブチル−クロロアクリドンなどが挙げられる。
アミノアセトフェノン系開始剤としては、市販品であるIRGACURE 907、IRGACURE 369、及び、IRGACURE 379(商品名:いずれもチバジャパン社製)を用いることができる。
【0085】
前記アシルホスフィン化合物としては、例えば、特許第4225898号公報に記載のアシルホスフィンオキシド系開始剤を用いることができ、市販品であるIRGACURE 819やDAROCUR TPO(商品名:いずれもチバジャパン社製)を用いることができる。
【0086】
前記ヒドロキシアセトフェノン化合物としては、例えば、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン(DAROCUR 1173)、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルブタン−1−オン、1−(4−メチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブチルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−(4−オクチルフェニル)プロパン−1−オン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メトキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−メチルチオフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−クロロフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ブロモフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−ジメチルアミノフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−カルボエトキシフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(IRGACURE 184)、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン(IRGACURE 2959)などが挙げられる。
また、市販のα−ヒドロキシアセトフェノン化合物として、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製からイルガキュア184(IRGACURE 184)、ダロキュア1173(DAROCUR 1173)、イルガキュア127(IRGACURE 127)、イルガキュア2959(IRGACURE 2959)、イルガキュア1800(IRGACURE 1800)、イルガキュア1870(IRGACURE 1870)及びダロキュア4265(DAROCUR 4265)の商品名で入手可能な重合開始剤も使用することができる。
【0087】
上記したオキシムエステル光重合開始剤以外の光重合開始剤は、本発明の重合性組成物におけるオキシムエステル光重合開始剤の含有量100質量%に対し、質量基準で10質量%〜500質量%の範囲で使用することができる。
【0088】
<(B)分子量300以下の有機酸無水物>
本発明の重合性組成物は、(B)分子量300以下の有機酸無水物を含む。
(B)分子量300以下の有機酸無水物としては、分子量80以上であって、脂肪族カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸無水物、スルホカルボン酸無水物が挙げられる。
有機酸無水物は対称であっても非対称であってもよい。
【0089】
具体的には、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水イソ酪酸、無水酪酸、無水2−メチル酪酸、ピバル酸無水物、無水イソ吉草酸、無水吉草酸、無水2−メチル吉草酸、無水3-メチル吉草酸、無水4-メチル吉草酸、無水ヘキサン酸、無水2−メチルヘキサン酸、無水3−メチルヘキサン酸、無水4−メチルヘキサン酸、無水5−メチルヘキサン酸、無水ヘプタン酸、無水2−メチルヘプタン酸、無水3−メチルヘプタン酸、無水4−メチルヘプタン酸、無水5−メチルヘプタン酸、無水6−メチルヘプタン酸、3−フェニルプロピオン酸無水物、無水フェニル酢酸、無水メタクリル酸、無水アクリル酸、無水トリクロロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水グルタル酸、などの脂肪族カルボン酸無水物が挙げられる。
芳香族カルボン酸無水物としては、無水安息香酸、無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物、無水ナフタル酸などが挙げられる。
スルホカルボン酸無水物としては2−スルホ安息香酸無水物が挙げられる。
【0090】
(B)分子量300以下の有機酸無水物は、沸点が100℃以上200℃以下であることが好ましい。ここでいう沸点は760mmHgにおける値を示す。
沸点を200℃以下にすることで、重合性組成物を塗布、加熱乾燥時に有機酸無水物が揮発するものと考えられ、これにより露光、現像後のパターン形状への有機酸無水物の影響が少なく、また現像残渣が生じにくい硬化膜を得ることができる。
この観点から有機酸無水物として最も好ましくは、無水酢酸、無水プロピオン酸、イソ酪酸無水物が挙げられる。
【0091】
また、(B)分子量300以下の有機酸無水物は、下記一般式(5)で表されることが好ましい。
【0092】
【化16】

【0093】
一般式(5)におけるR13は炭素数8以下のアルキル基、炭素数8以下のアリール基を表し、一般式(2)におけるR、一般式(3)におけるR10、および一般式(4)におけるR12と同一の置換基を表す。
13として好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、フェニル基であり、最も好ましくはメチル基である。
【0094】
(A)オキシムエステル光重合開始剤と(B)有機酸無水物との質量比は、オキシムエステル光重合開始剤:有機酸無水物が100:1〜1:5、好ましくは20:1〜1:1、さらに好ましくは20:1〜4:1である。これよりも少ない酸無水物量であると、経時感度低下の効果が薄く、逆に酸無水物量が多いとパターン形状が悪化する。
また、酸無水物の好ましい含有量は、本発明の重合性組成物における固形分100質量%に対し、質量基準で0.2質量%〜1.2質量%の範囲である。この範囲にあると、ベーク時に、酸無水物の揮発によるパターン形状への影響や、さらには酸無水物の揮発による装置への汚染が少なく、良好である。
【0095】
<(C)重合性化合物>
本発明の重合性組成物は重合性化合物を含有する。前記(A)オキシムエステル光重合開始剤が開始能を有することから、本発明の重合性組成物は、(A)オキシムエステル光重合開始剤の機能により(C)重合性化合物が重合硬化して硬化膜を形成しうる。
本発明の重合性組成物に用いることができる重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えばモノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物並びにそれらの共重合体などの化学的形態をもつ。
【0096】
本発明に好適に用いられる(C)重合性化合物について、より具体的に説明する。
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類或いはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステル或いはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物を使用することも可能である。
【0097】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー、イソシアヌール酸EO変性トリアクリレート等がある。
【0098】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0099】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0100】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号公報、特開昭57−196231号公報に記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号各公報に記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。更に、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0101】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726号公報に記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
なかでも、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなど、後述する実施例において使用される多官能重合性化合物を好ましいものとして挙げることができる。
【0102】
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(I)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0103】
CH=C(R31)COOCHCH(R32)OH (I)
(ただし、一般式(I)中、R31及びR32は、それぞれ、H又はCHを示す。)
【0104】
また、特開平10−62986号公報において一般式(1)及び(2)としてその具体例と共に記載の、前記多官能アルコールにエチレンオキサイドやプロピレンオキサイドを付加させた後に(メタ)アクリレート化した化合物も、重合性化合物として用いることができる。
【0105】
中でも、重合性化合物としては、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、及びこれらの(メタ)アクリロイル基がエチレングリコール、プロピレングリコール残基を介している構造が好ましい。これらのオリゴマータイプも使用できる。
本発明に用いられる重合性化合物としては、4官能以上のアクリレート化合物がより好ましい。
【0106】
また、重合性化合物としては、特公昭48−41708号、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号各公報に記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。更に、重合性化合物として、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによって、非常に感光スピードに優れた硬化性組成物を得ることができる。
重合性化合物の市販品としては、ウレタンオリゴマーUAS−10、UAB−140(以上、山陽国策パルプ社製)、UA−7200(新中村化学社製)、DPHA−40H(日本化薬社製)、UA−306H、UA−306T、UA−306I、AH−600、T−600、AI−600(以上、共栄社製)などが挙げられる。
また、重合性化合物としては、酸基を有するエチレン性不飽和化合物類も好適である。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物類は、前記多官能アルコールの一部のヒドロキシ基を(メタ)アクリレート化し、残ったヒドロキシ基に酸無水物を付加反応させてカルボキシ基とするなどの方法で得られる。市販品としては、例えば、東亞合成株式会社製のカルボキシ基含有3官能アクリレートであるTO−756、及びカルボキシ基含有5官能アクリレートを含むTO−1382などが挙げられる。
【0107】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、重合性組成物の最終的な性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、更に、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、重合性組成物に含有される他の成分(例えば、光重合開始剤、着色剤(顔料、染料)等、バインダーポリマー等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合性化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体などの硬質表面との密着性を向上させる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0108】
重合性化合物は1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の重合性組成物における(C)重合性化合物の含有量は、該組成物の固形分に対し0.1〜30質量%が好ましく、0.2〜20質量%がより好ましく、0.3〜15質量%が更に好ましい。
【0109】
<(D)着色剤>
本発明の重合性組成物は(D)着色剤を含有してもよい。着色剤を含有することにより、所望色の着色重合性組成物を得ることができる。従って、重合性組成物の使用目的によって、適宜選択された着色剤を用いればよい。
なお、本発明の重合性組成物は、短波長の光源である365nm光源に優れた感度を有する重合開始剤を含有するため、着色剤を高濃度に含有する場合にも高感度で硬化することができる。
【0110】
本発明の重合性組成物において用いられる着色剤は特に限定されるものではなく、従来公知の種々の染料や顔料を目的に応じて、1種又は2種以上混合して用いることができ、これらは重合性組成物の用途に応じて適宜選択される。本発明の重合性組成物をカラーフィルタ製造に用いる場合であれば、カラーフィルタの色画素を形成するR、G、B等の有彩色系の着色剤(有彩色着色剤)、及びブラックマトリクス形成用に一般に用いられている黒色系の着色剤(黒色着色剤)のいずれをも用いることができる。
前記(A)オキシムエステル光重合開始剤を含有する本発明の重合性組成物は、露光量が少なくても高感度に硬化することができるため、光を透過し難い黒色着色剤を含有する重合性組成物に、特に好ましく用いることができる。
【0111】
以下、重合性組成物に適用しうる着色剤について、固体撮像素子に用いるカラーフィルタ用途に好適な着色剤を例に詳述する。
−(D−1)顔料−
有彩色系の顔料としては、従来公知の種々の無機顔料又は有機顔料を用いることができる。また、無機顔料であれ有機顔料であれ、高透過率であることが好ましいことを考慮すると、なるべく細かい粒子サイズのものが好ましく、ハンドリング性をも考慮すると、上記顔料の平均粒子径は、0.01μm〜0.1μmが好ましく、0.01μm〜0.05μmがより好ましい。
【0112】
無機顔料としては、金属酸化物、金属錯塩等で示される金属化合物を挙げることができ、具体的には、鉄、コバルト、アルミニウム、カドミウム、鉛、銅、チタン、マグネシウム、クロム、亜鉛、アンチモン等の金属酸化物、及び前記金属の複合酸化物を挙げることができる。
【0113】
有機顔料としては、例えば、特開2008−224982号公報の段落番号〔0030〕〜〔0036〕及び同〔0039〕〜〔0048〕に記載のもの、さらには、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントブルー79のClをOHに換えたものなどを挙げることができる。
【0114】
本発明では、特に顔料の構造式中に塩基性の窒素原子をもつものを好ましく用いることができる。これら塩基性の窒素原子をもつ顔料は重合性組成物中で良好な分散性を示す。その原因については十分解明されていないが、感光性重合成分と顔料との親和性のよさが影響しているものと推定される。
【0115】
これら有機顔料は、単独若しくは色純度を上げるため種々組合せて用いることができる。
上記組合せの具体例を以下に示す。例えば、赤の顔料として、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料などのそれぞれ単独又はそれらの少なくとも一種と、ジスアゾ系黄色顔料、イソインドリン系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料又はペリレン系赤色顔料と、の混合などを用いることができる。
【0116】
例えば、アントラキノン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド177が挙げられ、ペリレン系顔料としては、C.I.ピグメントレッド155、C.I.ピグメントレッド224が挙げられ、ジケトピロロピロール系顔料としては、C.I.ピグメントレッド254が挙げられ、色再現性の点でC.I.ピグメントイエロー139との混合が好ましい。
【0117】
また、赤色顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:50が好ましい。上記範囲とすることで、色純度を向上することができ、フォトダイオード等の目標分光への適合が良好となる。
特に、上記質量比としては、100:10〜100:30の範囲が最適である。なお、赤色顔料同士の組み合わせの場合は、色度に併せて調整することができる。
【0118】
また、緑の顔料としては、ハロゲン化フタロシアニン系顔料を単独で、若しくはこれとジスアゾ系黄色顔料、キノフタロン系黄色顔料、アゾメチン系黄色顔料、又はイソインドリン系黄色顔料との混合を用いることができる。
例えば、このような例としては、C.I.ピグメントグリーン7、36、37とC.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180又はC.I.ピグメントイエロー185との混合が好ましい。緑顔料と黄色顔料との質量比は、100:5〜100:150が好ましい上記範囲とすることで、色純度を向上することができ、フォトダイオード等の目標分光適合が良好となる。
上記質量比としては100:30〜100:120の範囲が特に好ましい。
【0119】
また、緑の顔料としては、亜鉛を含むハロゲン化フタロシアニン系顔料を用いることが好ましい。このような顔料として、C.I.ピグメントグリーン58が挙げられる。
【0120】
青の顔料としては、フタロシアニン系顔料を単独で、若しくはこれとジオキサジン系紫色顔料との混合を用いることができる。
例えばC.I.ピグメントブルー15:6とC.I.ピグメントバイオレット23との混合が好ましい。青色顔料と紫色顔料との質量比は、100:0〜100:120が好ましく、より好ましくは100:60以下である。
これら顔料の中でも、亜鉛を含む顔料を用いることは、所望の吸収帯における透過率向上が達成でき、色分離に優れた分光設計が可能となるので好ましい。
【0121】
−(D−2)遮光性顔料−
また、本発明の重合性組成物をカラーフィルタのブラックマトリックスやウエハレベルレンズ用遮光膜などの形成に用いる場合に好適な遮光性の顔料としては、カーボンブラック、チタンブラック、酸化鉄、酸化チタンなどのそれぞれ単独又は混合が用いられ、チタンブラックがより好ましい。
【0122】
以下、遮光性の顔料として好適なチタンブラック及びその好適な使用態様であるチタンブラック分散物について詳述する。
チタンブラック分散物とは、着色剤としてチタンブラックを含有する分散物のことである。
重合性組成物にチタンブラックを、予め調製されたチタンブラック分散物として含むことでチタンブラックの分散性、分散安定性が向上する。
以下、チタンブラックについて説明する。
【0123】
本発明で用いうるチタンブラックとは、チタン原子を有する黒色粒子である。好ましくは低次酸化チタンや酸窒化チタン等である。チタンブラック粒子は、分散性向上、凝集性抑制などの目的で必要に応じ、表面を修飾することが可能である。酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウムで被覆することが可能であり、また、特開2007−302836号公報に示されるような撥水性物質での処理も可能である。
【0124】
チタンブラックの製造方法としては、二酸化チタンと金属チタンの混合体を還元雰囲気で加熱し還元する方法(特開昭49−5432号公報)、四塩化チタンの高温加水分解で得られた超微細二酸化チタンを、水素を含む還元雰囲気中で還元する方法(特開昭57−205322号公報)、二酸化チタン又は水酸化チタンをアンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭60−65069号公報、特開昭61−201610号公報)、二酸化チタン又は水酸化チタンにバナジウム化合物を付着させ、アンモニア存在下で高温還元する方法(特開昭61−201610号公報)などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0125】
チタンブラックの粒子の粒子径は特に制限は無いが、分散性、着色性の観点から、3〜2000nmであることが好ましく、より好ましくは10〜500nmであり、更に好ましくは、20〜200nmである。
【0126】
チタンブラックの比表面積は、特に限定がないが、かかるチタンブラックを撥水化剤で表面処理した後の撥水性が所定の性能となるために、BET法にて測定した値が通常5〜150m/g程度、特に20〜100m/g程度であることが好ましい。
【0127】
チタンブラックの市販品の例としては例えば、三菱マテリアル社製チタンブラック10S,12S,13R,13M,13M−C,13R,13R−N,赤穂化成(株)ティラック(Tilack)Dなどが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
【0128】
−(D−3)染料−
重合性組成物において、着色剤が染料である場合には、組成物中に均一に溶解した状態の着色組成物を得ることができる。
重合性組成物に含有される着色剤として使用できる染料は、特に制限はなく、従来カラーフィルタ用として公知の染料が使用できる。
【0129】
化学構造としては、ピラゾールアゾ系、アニリノアゾ系、トリフェニルメタン系、アントラキノン系、アンスラピリドン系、ベンジリデン系、オキソノール系、ピラゾロトリアゾールアゾ系、ピリドンアゾ系、シアニン系、フェノチアジン系、ピロロピラゾールアゾメチン系、キサテン系、フタロシアニン系、ペンゾピラン系、インジゴ系、ピロメテン系等の染料が使用できる。
特に、ピロメテン系染料は、例えば、特開2008−292970公報に詳細に記載され、ここに記載の化合物、具体的には段落番号〔0093〕〜〔0130〕に記載の化合物は本発明に好適に使用される。
【0130】
重合性組成物に含有される(D)着色剤の含有量としては、重合性組成物の固形分中、30質量%〜95質量%であることが好ましく、40質量%〜90質量%がより好ましく、50質量%〜80質量%が更に好ましい。
着色剤の含有量を上記範囲とすることで、重合性組成物によりカラーフィルタを作製した際に、適度な色度が得られる。また、光硬化が充分に進み、膜としての強度を維持することができるため、アルカリ現像の際の現像ラチチュードが狭くなることを防止することができる。
【0131】
<(E)分散剤>
重合性組成物が、(D)着色剤として(D−2)チタンブラックや有機顔料などの(D−1)顔料(以下、適宜(D−2)チタンブラックと(D−1)顔料とを総称して、単に「顔料」と称する。)を含有する場合、顔料の分散性を向上させる観点から、さらに(E)分散剤を添加することが好ましい。
【0132】
本発明の重合性組成物に用いうる(E)分散剤としては、高分子分散剤〔例えば、ポリアミドアミンとその塩、ポリカルボン酸とその塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物〕、及び、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルカノールアミン、顔料誘導体等を挙げることができる。
高分子分散剤は、その構造から更に直鎖状高分子、末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子に分類することができる。
【0133】
高分子分散剤は顔料の表面に吸着し、再凝集を防止するように作用する。そのため、顔料表面へのアンカー部位を有する末端変性型高分子、グラフト型高分子、ブロック型高分子が好ましい構造として挙げることができる。
一方で、顔料誘導体は顔料表面を改質することで、高分子分散剤の吸着を促進させる効果を有する。
【0134】
本発明の重合性組成物に用いうる分散剤は、市販品としても入手可能であり、そのような具体例としては、BYKChemie社製「Disperbyk−101(ポリアミドアミン燐酸塩)、107(カルボン酸エステル)、110(酸基を含む共重合物)、130(ポリアミド)、161、162、163、164、165、166、170(高分子共重合物)」、「BYK−P104、P105(高分子量不飽和ポリカルボン酸)、EFKA社製「EFKA4047、4050〜4010〜4165(ポリウレタン系)、EFKA4330〜4340(ブロック共重合体)、4400〜4402(変性ポリアクリレート)、5010(ポリエステルアミド)、5765(高分子量ポリカルボン酸塩)、6220(脂肪酸ポリエステル)、6745(フタロシアニン誘導体)、6750(アゾ顔料誘導体)」、味の素ファィンテクノ社製「アジスパーPB821、PB822」、共栄社化学社製「フローレンTG−710(ウレタンオリゴマー)」、「ポリフローNo.50E、No.300(アクリル系共重合体)」、楠本化成社製「ディスパロンKS−860、873SN、874、#2150(脂肪族多価カルボン酸)、#7004(ポリエーテルエステル)、DA−703−50、DA−705、DA−725」、花王社製「デモールRN、N(ナフタレンスルホン酸ホルマリン重縮合物)、MS、C、SN−B(芳香族スルホン酸ホルマリン重縮合物)」、「ホモゲノールL−18(高分子ポリカルボン酸)」、「エマルゲン920、930、935、985(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル)」、「アセタミン86(ステアリルアミンアセテート)」、ルーブリゾール社製「ソルスパース5000(フタロシアニン誘導体)、22000(アゾ顔料誘導体)、13240(ポリエステルアミン)、3000、17000、27000(末端部に機能部を有する高分子)、24000、28000、32000、38500(グラフト型高分子)」、日光ケミカル者製「ニッコールT106(ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート)、MYS−IEX(ポリオキシエチレンモノステアレート)」等が挙げられる。また、川研ファインケミカル(株)製 ヒノアクトT−8000Eなどの両性分散剤も挙げられる。
【0135】
これらの分散剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明においては、(E)分散剤として特に、顔料誘導体と高分子分散剤とを組み合わせて使用することが好ましい。
【0136】
重合性組成物における(E)分散剤の含有量としては、(D)着色剤である顔料100質量部に対して、1〜80質量部であることが好ましく、5〜70質量部がより好ましく、10〜60質量部であることが更に好ましい。
具体的には、高分子分散剤を用いる場合であれば、その使用量としては、顔料100質量部に対して、5〜100質量部の範囲が好ましく、10〜80質量部の範囲であることがより好ましい。
また、顔料誘導体を併用する場合、顔料誘導体の使用量としては、顔料100質量部に対し、1〜30質量部の範囲にあることが好ましく、3〜20質量部の範囲にあることがより好ましく、5〜15質量部の範囲にあることが特に好ましい。
【0137】
本発明の重合性組成物において、(D)着色剤として顔料を用い、(E)分散剤をさらに用いる場合、硬化感度、色濃度の観点から、着色剤と分散剤との含有量の総和が、重合性組成物の固形分に対して30質量%以上90質量%以下であることが好ましく、40質量%以上85質量%以下であることがより好ましく、50質量%以上80質量%以下であることが更に好ましい。
【0138】
<その他の成分>
重合性組成物は、本発明の効果を損なわない限りにおいて、必要に応じて、以下に詳述する任意成分を更に含有してもよい。
以下、重合性組成物が含有しうる任意成分について説明する。
【0139】
<(F)増感剤>
重合性組成物は、オキシムエステル光重合開始剤等のラジカル発生効率の向上、感光波長の長波長化の目的で、増感剤を含有していてもよい。
本発明に用いることができる増感剤としては、前記した(A)オキシムエステル光重合開始剤に対し、電子移動機構又はエネルギー移動機構で増感させるものが好ましい。
【0140】
重合性組成物に用いられる増感剤としては、例えば、特開2008−32803号公報の段落番号〔0101〕〜〔0154〕に記載される化合物が挙げられる。
重合性組成物中における増感剤の含有量は、深部への光吸収効率と開始分解効率の観点から、重合性組成物の固形分に対して、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、0.5質量%〜15質量%がより好ましい。
増感剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0141】
<(G)バインダー>
重合性組成物においては、皮膜特性向上などの目的で、必要に応じて、更に(G)バインダーを使用することができる。バインダーとしては線状有機ポリマーを用いることが好ましい。
このような線状有機ポリマーとしては、公知のものを任意に使用できる。好ましくは水現像或いは弱アルカリ水現像を可能とするために、水或いは弱アルカリ水に可溶性又は膨潤性である線状有機ポリマーが選択される。線状有機ポリマーは、皮膜形成剤としてだけでなく、水、弱アルカリ水或いは有機溶剤現像剤としての用途に応じて選択使用される。例えば、水可溶性有機ポリマーを用いると水現像が可能になる。
このような線状有機ポリマーとしては、特開2008−32803号公報の段落番号〔0166〕〜〔0175〕に記載の化合物が挙げられ、これらを本発明にも適用しうる。
また、同様に側鎖にカルボン酸基を有する酸性セルロース誘導体がある。この他に水酸基を有する重合体に環状酸無水物を付加させたものなどが有用である。
【0142】
本発明におけるバインダーの別の好ましい例として、下記一般式(ED)で示される化合物(以下、適宜「エーテルダイマー」と称する。)由来の構造体を重合成分として含むポリマーが挙げられる。
【0143】
【化17】

【0144】
前記一般式(ED)中、R21およびR22は、それぞれ独立に、水素原子または置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基を表す。
エーテルダイマー由来の構造単位を含むバインダーを用いることにより、本発明の重合性組成物は、耐熱性とともに透明性にも極めて優れた硬化塗膜を形成しうるという利点を有することになる。
前記エーテルダイマーを示す前記一般式(ED)中、R21およびR22で表される置換基を有していてもよい炭素数1〜25の炭化水素基としては、特に制限はないが、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、t−アミル、ステアリル、ラウリル、2−エチルヘキシル等の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル等のアリール基;シクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ジシクロペンタジエニル、トリシクロデカニル、イソボルニル、アダマンチル、2−メチル−2−アダマンチル等の脂環式基;1−メトキシエチル、1−エトキシエチル等のアルコキシで置換されたアルキル基;ベンジル等のアリール基で置換されたアルキル基;等が挙げられる。これらのなかでも、特に、メチル、エチル、シクロヘキシル、ベンジル等のような酸や熱で脱離しにくい1級または2級炭素の置換基が耐熱性の点で好ましい。
【0145】
前記エーテルダイマーの具体例としては、例えば、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−プロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソプロピル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(n−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−アミル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ステアリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ラウリル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−エチルヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−メトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(1−エトキシエチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジフェニル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(t−ブチルシクロヘキシル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(ジシクロペンタジエニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(トリシクロデカニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(イソボルニル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジアダマンチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジ(2−メチル−2−アダマンチル)−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート等が挙げられる。
【0146】
これらのなかでも特に、ジメチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジエチル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジシクロヘキシル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエート、ジベンジル−2,2’−[オキシビス(メチレン)]ビス−2−プロペノエートが好ましい。これらエーテルダイマー由来の構造単位は、バインダー中に1種のみ含まれてもよく、2種以上含まれていてもよい。
前記一般式(ED)で示される化合物由来の単量体を含んでなるバインダーは、一般式(ED)で示される化合物由来の構造体以外の他の単量体を含む共重合体であってもよい。併用可能な他の単量体としては、前掲のバインダーの構成成分として挙げた単量体が同様に挙げられ、エーテルダイマーの特性を損なわない範囲で適宜、併用される。
【0147】
本発明の重合性組成物で使用しうるバインダーの重量平均分子量としては、好ましくは5,000以上であり、更に好ましくは1万〜30万の範囲であり、数平均分子量については好ましくは1,000以上であり、更に好ましくは2,000〜25万の範囲である。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は1以上が好ましく、更に好ましくは1.1〜10の範囲である。
また、パターン形成性の観点から、酸価が、50mgKOH/g以上150mgKOH/g以下のものが好適である。
これらのバインダーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等いずれでもよい。
【0148】
バインダーを用いる場合の含有量は、重合性組成物の固形分に対し、1〜50質量%が好ましく、1〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%が更に好ましい。
【0149】
<(H)重合禁止剤>
重合性組成物においては、重合性組成物の製造中或いは保存中において、(C)重合性化合物の不要な熱重合を阻止するために少量の(H)重合禁止剤を添加することが望ましい。
本発明に用いうる重合禁止剤としては、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソフェニルヒドロキシアミン第一セリウム塩等が挙げられる。
【0150】
(H)重合禁止剤の添加量は、重合性組成物の固形分に対し、約0.01質量%〜約5質量%が好ましい。
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で塗布膜の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸誘導体の添加量は、重合性組成物の固形分に対し、約0.5質量%〜約10質量%が好ましい。
【0151】
<(J)有機溶剤>
本発明の重合性組成物は、有機溶剤を含有することができる。
有機溶剤は、並存する各成分の溶解性や重合性組成物としたときの塗布性を満足できるものであれば、基本的には特に制限はなく、特に、バインダーの溶解性、塗布性、および安全性を考慮して選ばれることが好ましい。有機溶剤としては、例えば、特開2008−32803号公報の段落番号〔0187〕に記載の各種溶剤が挙げられる。
【0152】
有機溶剤の具体例としては、エステル類として、例えば、酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸イソブチル、ギ酸アミル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、プロピオン酸ブチル、酪酸イソプロピル、酪酸エチル、酪酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、オキシ酢酸アルキルエステル類(例:オキシ酢酸メチル、オキシ酢酸エチル、オキシ酢酸ブチル(具体的には、メトキシ酢酸メチル、メトキシ酢酸エチル、メトキシ酢酸ブチル、エトキシ酢酸メチル、エトキシ酢酸エチル等が挙げられる。))、3−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:3−オキシプロピオン酸メチル、3−オキシプロピオン酸エチル等(具体的には、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。))、2−オキシプロピオン酸アルキルエステル類(例:2−オキシプロピオン酸メチル、2−オキシプロピオン酸エチル、2−オキシプロピオン酸プロピル等(具体的には、2−メトキシプロピオン酸メチル、2−メトキシプロピオン酸エチル、2−メトキシプロピオン酸プロピル、2−エトキシプロピオン酸メチル、2−エトキシプロピオン酸エチル等が挙げられる。))、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−オキシ−2−メチルプロピオン酸エチル(具体的には、2−メトキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−エトキシ−2−メチルプロピオン酸エチル等が挙げられる。)、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2−オキソブタン酸メチル、2−オキソブタン酸エチル等が挙げられる。
【0153】
また、エーテル類としては、例えば、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノプロピルエーテルアセテート等が挙げられる。
ケトン類としては、例えば、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2−ヘプタノン、3−ヘプタノン等が挙げられる。
芳香族炭化水素類としては、例えば、トルエン、キシレン等が好適に挙げられる。
【0154】
これらの有機溶剤は、前述の各成分の溶解性、及びバインダーを含む場合はその溶解性、塗布面状の改良などの観点から、2種以上を混合することも好ましい。この場合、特に好ましくは、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、エチルセロソルブアセテート、乳酸エチル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、酢酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、2−ヘプタノン、シクロヘキサノン、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールメチルエーテル、及びプロピレングリコールメチルエーテルアセテートから選択される2種以上で構成される混合溶液である。
【0155】
有機溶剤の重合性組成物中における含有量としては、組成物中の全固形分濃度が10質量%〜80質量%になる量が好ましく、15質量%〜60質量%になる量がより好ましい。
【0156】
<(K)密着向上剤>
重合性組成物においては、形成された硬化膜の支持体などの硬質表面との密着性を向上させるために、密着向上剤を添加することができる。密着向上剤としては、シラン系カップリング剤、チタンカップリング剤等が挙げられる。
【0157】
シラン系カップリング剤としては、例えば、特開2008−32803号公報の段落番号〔0185〕に記載の化合物が挙げられる。
なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、が好ましく、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが最も好ましい。
密着向上剤の添加量は、重合性組成物の固形分に対して、0.5質量%〜30質量%が好ましく、0.7質量%〜20質量%がより好ましい。
【0158】
<(L)界面活性剤>
本発明の重合性組成物には、塗布性をより向上させる観点から、各種の界面活性剤を添加してもよい。界面活性剤としては、フッ素系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、シリコン系界面活性剤などの各種界面活性剤を使用できる。
【0159】
特に、本発明の重合性組成物は、フッ素系界面活性剤を含有することで、塗布液として調製したときの液特性(特に、流動性)がより向上することから、塗布厚の均一性や省液性をより改善することができる。
即ち、フッ素系界面活性剤を含有する重合性組成物を適用した塗布液を用いて膜形成する場合においては、被塗布面と塗布液との界面張力を低下させることにより、被塗布面への濡れ性が改善され、被塗布面への塗布性が向上する。このため、少量の液量で数μm程度の薄膜を形成した場合であっても、厚みムラの小さい均一厚の膜形成をより好適に行える点で有効である。
【0160】
フッ素系界面活性剤中のフッ素含有率は、3質量%〜40質量%が好適であり、より好ましくは5質量%〜30質量%であり、特に好ましくは7質量%〜25質量%である。フッ素含有率がこの範囲内であるフッ素系界面活性剤は、塗布膜の厚さの均一性や省液性の点で効果的であり、重合性組成物中における溶解性も良好である。
【0161】
フッ素系界面活性剤としては、例えば、メガファックF171、同F172、同F173、同F176、同F177、同F141、同F142、同F143、同F144、同R30、同F437、同F475、同F479、同F482、同F780、同F781(以上、DIC(株)製)、フロラードFC430、同FC431、同FC171(以上、住友スリーエム(株)製)、サーフロンS−382、同SC−101、同SC−103、同SC−104、同SC−105、同SC1068、同SC−381、同SC−383、同S393、同KH−40(以上、旭硝子(株)製)等が挙げられる。
【0162】
ノニオン系界面活性剤として具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ソルビタン脂肪酸エステル(BASF社製のプルロニックL10、L31、L61、L62、10R5、17R2、25R2、テトロニック304、701、704、901、904、150R1等が挙げられる。
【0163】
カチオン系界面活性剤として具体的には、フタロシアニン誘導体(商品名:EFKA−745、森下産業(株)製)、オルガノシロキサンポリマーKP341(信越化学工業(株)製)、(メタ)アクリル酸系(共)重合体ポリフローNo.75、No.90、No.95(共栄社油脂化学工業(株)製)、W001(裕商(株)製)等が挙げられる。
【0164】
アニオン系界面活性剤として具体的には、W004、W005、W017(裕商(株)社製)等が挙げられる。
【0165】
シリコン系界面活性剤としては、例えば、トーレシリコーン株式会社製「トーレシリコーンDC3PA」、「トーレシリコーンSH7PA」、「トーレシリコーンDC11PA」,「トーレシリコーンSH21PA」,「トーレシリコーンSH28PA」、「トーレシリコーンSH29PA」、「トーレシリコーンSH30PA」、「トーレシリコーンSH8400」、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製「TSF−4440」、「TSF−4300」、「TSF−4445」、「TSF−4460」、「TSF−4452」、信越シリコーン株式会社製「KP341」、「KF6001」、「KF6002」、ビッグケミー社製「BYK323」、「BYK330」等が挙げられる。
界面活性剤は、1種のみを用いてもよいし、2種類以上を組み合わせてもよい。
【0166】
<(M)その他の添加剤>
更に、重合性組成物に対しては、硬化皮膜の物性を改良するために無機充填剤や、可塑剤等の公知の添加剤を加えてもよい。
可塑剤としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジドデシルフタレート、トリエチレングリコールジカプリレート、ジメチルグリコールフタレート、トリクレジルホスフェート、ジオクチルアジペート、ジブチルセバケート、トリアセチルグリセリン等があり、結合剤を使用した場合、重合性化合物とバインダーポリマーとの合計質量に対し10質量%以下添加することができる。
【0167】
以上述べたように、本発明の重合性組成物は、(A)オキシムエステル光重合開始剤、(B)分子量300以下の有機酸無水物、および(C)重合性化合物を含むことから、高感度で硬化し、保存経時後も、硬化感度の低下が見られず、保存安定性に優れ、更に、形成された硬化膜パターンが良好であり、未露光部における現像後の残渣を大きく低減することができる。
このような重合性組成物は、着色剤を大量に含有する場合でも、高感度でパターン形成が可能であり、形成された着色硬化膜が、基板との密着性に優れる点、繰り返し加熱或いは光照射を受けても着色、変色が抑制される点などの利点を有することから、特に、カラーフィルタの着色領域を形成するのに有用であり、本発明の重合性組成物は、カラーフィルタ用重合性組成物として用いた場合に、その効果が著しいといえる。
特に、オキシムエステル光重合開始剤の分解を促進する、塩基成分を有するような(E)分散剤や(G)バインダーを用いる場合には、有機酸無水物の添加によって経時感度低下抑制の本発明の効果が顕著に現れる。
【0168】
なお、本発明の重合性組成物は、高感度で硬化し、経時安定性も良好であることから、前記カラーフィルタ用以外の他の用途にも好適に使用される。他の用途としては、例えば、成形樹脂、注型樹脂、光造形用樹脂、封止剤、歯科用重合材料、印刷インキ、塗料、印刷版用感光性樹脂、印刷用カラープルーフ、プリント基板用レジスト、半導体製造用レジスト、マイクロエレクトロニクス用レジスト、マイクロマシン用部品製造用レジスト等、絶縁材、ホログラム材料、ウエハレベルレンズ本体或いはレンズ用遮光膜の形成材料、導波路用材料、オーバーコート剤、接着剤、粘着剤、粘接着剤、剥離コート剤等が挙げられ、これら種々の用途に利用することができる。
【0169】
[カラーフィルタ及びその製造方法]
次に、本発明のカラーフィルタ及びその製造方法について説明する。
本発明のカラーフィルタは、支持体上に、本発明の重合性組成物を用いて形成されたパターン領域を有することを特徴とする。
以下、本発明のカラーフィルタについて、その製造方法(本発明のカラーフィルタの製造方法)を通じて詳述する。
【0170】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、支持体上に、本発明のカラーフィルタ用重合性組成物〔前記重合性組成物〕を付与して着色重合性組成物層を形成する工程(以下、適宜「重合性組成物層形成工程」と略称する。)と、前記重合性組成物層を、パターン状に露光する工程(以下、適宜「露光工程」と略称する。)と、露光後の前記重合性組成物層を現像して未露光部を除去し、着色パターンを形成する工程(以下、適宜「現像工程」と略称する。)と、を含むことを特徴とする。
【0171】
具体的には、本発明のカラーフィルタ用重合性組成物を、直接又は他の層を介して支持体(基板)上に塗布して、重合性組成物層を形成し(重合性組成物層形成工程)、所定のマスクパターンを介して露光し、光照射された塗布膜部分だけを硬化させ(露光工程)、現像液で現像することによって(現像工程)、各色(3色或いは4色)の画素からなるパターン状皮膜を形成し、本発明のカラーフィルタを製造することができる。
以下、本発明のカラーフィルタの製造方法における各工程について説明する。
【0172】
〔重合性組成物層形成工程〕
重合性組成物層形成工程では、支持体上に、本発明のカラーフィルタ用重合性組成物を付与して着色重合性組成物からなる層を形成する。
【0173】
本工程に用いうる支持体としては、例えば、液晶表示装置等に用いられる無アルカリガラス、ソーダガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、石英ガラス及びこれらに透明導電膜を付着させたものや、固体撮像素子等に用いられる光電変換素子基板(例えばCCD用、CMOS用のシリコン基板)等が挙げられる。これらの基板は、各画素を隔離するブラックストライプが形成されている場合もある。
また、これらの支持体上には、必要により、上部の層との密着改良、物質の拡散防止或いは基板表面の平坦化のために下塗り層を設けてもよい。
【0174】
支持体上への本発明のカラーフィルタ用重合性組成物の付与方法としては、スリット塗布、インクジェット法、回転塗布、流延塗布、ロール塗布、スクリーン印刷、転写等の各種の方法を適用することができる。
【0175】
カラーフィルタ用重合性組成物の膜厚(重合性組成物層の膜厚)としては、乾燥後の膜厚で0.1μm〜10μmが好ましく、0.2μm〜5μmがより好ましく、0.2μm〜3μmが更に好ましい。
また、固体撮像素子用のカラーフィルタを製造する際には、カラーフィルタ用重合性組成物の膜厚としては、解像度と現像性の観点から、乾燥後の膜厚で0.35μm〜1.5μmが好ましく、0〜40μm〜1.0μmがより好ましい。
【0176】
支持体上に付与されたカラーフィルタ用重合性組成物は、通常、70℃〜110℃で2分〜4分程度の条件下で乾燥され、着色重合性組成物層が形成される。
【0177】
本発明の重合性組成物を付与する工程において、例えば、塗布装置吐出部のノズル、塗布装置の配管部、塗布装置内等に重合性組成物が付着した場合でも、公知の洗浄液を用いて容易に洗浄除去することができる。この場合、より効率のよい洗浄除去を行うためには、本発明の重合性組成物に含まれる溶剤として前掲した溶剤を洗浄液として用いることが好ましい。
【0178】
また、特開平7−128867号公報、特開平7−146562号公報、特開平8−278637号公報、特開2000−273370号公報、特開2006−85140号公報、特開2006−291191号公報、特開2007−2101号公報、特開2007−2102号公報、特開2007−281523号公報などに記載の洗浄液も、本発明の重合性組成物の洗浄除去用の洗浄液として好適に用いることができる。
洗浄液としては、アルキレングリコールモノアルキルエーテルカルボキシレート、又はアルキレングリコールモノアルキルエーテルを用いることが好ましい。
洗浄液として用いうるこれら溶剤は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
溶剤を2種以上混合する場合、水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤とを混合してなる混合溶剤が好ましい。水酸基を有する溶剤と水酸基を有しない溶剤との質量比は、1/99〜99/1、好ましくは10/90〜90/10、更に好ましくは20/80〜80/20である。混合溶剤としては、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)とプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)の混合溶剤で、その比率が60/40であることが特に好ましい。
なお、重合性組成物に対する洗浄液の浸透性を向上させるために、洗浄液には、重合性組成物が含有しうる界面活性剤として前掲した界面活性剤を添加してもよい。
【0179】
〔露光工程〕
露光工程では、前記重合性組成物層形成工程において形成された重合性組成物層をパターン状に露光する、パターン露光は、通常、マスクを介して露光し、光照射された重合性組成物層の部分だけを硬化させる方法で行われるが、目的に応じて走査露光によるパターン露光が行われる場合もある。
露光は放射線の照射により行うことが好ましく、露光に際して用いることができる放射線としては、特に、g線、h線、i線等の紫外線が好ましく用いられ、高圧水銀灯がより好まれる。照射強度は5mJ/cm〜1500mJ/cmが好ましく10mJ/cm〜1000mJ/cmがより好ましく、10mJ/cm〜800mJ/cmが最も好ましい。
【0180】
〔現像工程〕
露光工程に次いで、アルカリ現像処理(現像工程)を行い、露光工程における光未照射部分をアルカリ水溶液に溶出させる。これにより、光硬化した部分だけが残る。
現像液としては、下地の回路などにダメージを起さない、有機アルカリ現像液が望ましい。現像温度としては通常20℃〜30℃であり、現像時間は20秒〜90秒である。
【0181】
現像液に用いるアルカリとしては、例えば、アンモニア水、エチルアミン、ジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン、ピロール、ピペリジン、1,8−ジアザビシクロ−[5、4、0]−7−ウンデセンなどの有機アルカリ性化合物を濃度が0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%となるように純水で希釈したアルカリ性水溶液が使用される。
なお、現像液には無機アルカリを用いてもよく、無機アルカリとしては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、硅酸ナトリウム、メタ硅酸ナトリウムなどが好ましい。
このようなアルカリ性水溶液からなる現像液を使用した場合には、一般に現像後純水で洗浄(リンス)する。
【0182】
なお、本発明のカラーフィルタの製造方法においては、上述した、着色重合性組成物層形成工程、露光工程、及び現像工程を行った後に、必要により、形成された着色パターンを加熱及び/又は露光により硬化する硬化工程を含んでいてもよい。
【0183】
以上説明した、着色重合性組成物層形成工程、露光工程、及び現像工程(更に、必要により硬化工程)を所望の色相数だけ繰り返すことにより、所望の色相よりなるカラーフィルタが作製される。
【0184】
[固体撮像素子]
本発明の固体撮像素子は、本発明のカラーフィルタを備えることを特徴とする。
本発明のカラーフィルタは、本発明のカラーフィルタ用重合性組成物を用いているため、形成された着色パターンが支持体基板との高い密着性を示し、硬化した組成物は耐現像性に優れるため、露光感度に優れ、露光部の基板との密着性が良好であり、かつ、所望の断面形状を与える高解像度のパターンを形成することができる。従って、液晶表示装置やCCD、CMOS等の固体撮像素子に好適に用いることができ、特に100万画素を超えるような高解像度のCCDやCMOS等に好適である。つまり、本発明のカラーフィルタは、固体撮像素子に適用されることが好ましい。
本発明のカラーフィルタは、例えば、固体撮像素子を構成する各画素の受光部と集光するためのマイクロレンズとの間に配置されるカラーフィルタとして用いることができる。
【0185】
(重合性組成物により形成された硬化膜について)
本発明において、本発明の重合性組成物により形成された硬化膜は、現像後の加熱や、さらなる経時による着色が抑制されることを大きな特徴とするものである。
本発明において、硬化膜の着色を評価するためには、色差ΔEabを用いればよい。ここで、色差ΔEabは、大塚電子(株)製MCPD−3000で測定することができる。
評価の際の条件としては、まず、本発明の重合性組成物を超高圧水銀灯プロキシミティー型露光機(日立ハイテク電子エンジニアリング(株)製)、若しくは、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)(365nm)で10mJ/cm〜2,500mJ/cmの範囲の種々の露光量で露光し、硬化膜を形成する。そして、所望により現像を行った後、硬化膜を200℃で1時間加熱する。
この硬化膜の加熱前後の色差ΔEabを測定することで、硬化膜の加熱経時による着色状態を評価することができる。
本発明の重合性組成物によれば、加熱前後の色差ΔEabを5以下とすることができる。
【0186】
なお、本発明により得られた硬化膜は、パターン成形性が良好であり、過熱や経時によって着色が抑制されるのでカラーフィルタ用以外の他の用途にも好適に使用される。他の用途としては、例えば、成形樹脂、注型樹脂、光造形用樹脂、封止剤、歯科用重合材料、印刷インキ、塗料、印刷版用感光性樹脂、印刷用カラープルーフ、プリント基板、半導体製造用レジスト膜、マイクロエレクトロニクス用レジスト膜、マイクロマシン用部品製造用レジスト膜等、絶縁材、ホログラム材料、ウエハレベルレンズ本体或いはレンズ用遮光膜、導波路用材料、オーバーコート層、接着剤、粘着剤、粘接着剤、剥離コート剤等に利用することができる。また、固体撮像素子用カラーフィルタの平坦化膜、保護膜、あるいは液晶表示装置用、有機EL表示装置用のカラーフィルタにおける平坦化膜、層間絶縁膜などの用途にも使用できる。
【実施例】
【0187】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準であり、「%」は、「質量%」である。
【0188】
下記に本実施例で使用した(A)オキシムエステル光重合開始剤、(B)分子量300以下の有機酸無水物、および比較化合物である分子量300以上の有機酸無水物を示した。
【0189】
【化18】

【0190】
【化19】

【0191】
<実施例1−1>:顔料ピグメント グリーン58を用いた緑色の重合性組成物
〔1.着色重合性組成物A−1の調製〕
重合性組成物として、着色剤として顔料ピグメント グリーン58を含有する緑色の着色重合性組成物A−1を調製した。
【0192】
1−1.顔料分散液(P1)の調製
顔料としてC.I.ピグメント グリーン58と、C.I.ピグメント イエロー180との30/70(質量比)混合物40部、分散剤としてBYK2001(ビックケミー社製、固形分濃度45.1%)10部(固形分 約4.51部)、及び、溶媒として3−エトキシプロピオン酸エチル 150部からなる混合液を、ビーズミルにより15時間混合・分散して、顔料分散液(P1)を調製した。
得られた顔料分散液(P1)について、顔料の平均粒径を動的光散乱法により測定したところ、200nmであった。
【0193】
1−2.着色重合性組成物A−1の調製
下記組成A−1の成分を混合して溶解し、緑色の着色重合性組成物A−1を調製した。
<組成A−1>
・顔料分散液(P1) 600部
・バインダー:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(mol比:80/10/10、Mw:10,000) 200部
・重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 60部
・オキシムエステル光重合開始剤:(A)−1 20部
・酸無水物:(B)−9 1部
・有機溶媒:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、PGMEAと称する。) 1,000部
・界面活性剤(商品名:テトロニック150R1、BASF社) 1部
・密着向上剤:γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン 5部
【0194】
〔2.性能評価〕
着色重合性組成物の調製直後と経時保存後とにおける光重合開始剤残存量、および露光感度、得られた着色パターンの表面粗さ、未露光部の残渣について、下記のようにして評価した。評価結果をまとめて表1に示す。
【0195】
<着色重合性組成物中の光重合開始剤残存量の測定方法>
着色重合性組成物中の光重合開始剤残存量は、高速液体クロマトグラフィー(Waters社製、型番:2695、カラム:(株)島津製作所製、Shim-pack CLC-ODS、カラム温度:40℃)を用いて定量した。
詳細には、着色重合性組成物1gを100mLのアセトニトリルで希釈したのち、超音波で5分間溶解させたのちフィルタを用いてろ過した。このろ液10μLを、送液条件アセトニトリル/バッファー(リン酸/トリエチルアミン=0.1%/0.1%)=90/10で45分間測定した。検出波長を300nmとした際の開始剤のメインピークの面積%を開始剤残存%とし、加水分解体ピークの面積%を加水分解量%とした。
なお、着色重合性組成物の試料として、着色重合性組成物調製直後に測定したものをフレッシュ品とし、調整後に密閉容器に封入し45℃の恒温槽中で3日保存してから室温に戻して測定したものを経時品とした。
【0196】
2−1.着色重合性組成物の露光感度(フレッシュ)
調製直後の着色重合性組成物を、ガラス基板上にスピンコート塗布後、乾燥して膜厚1.0μmの塗膜を形成した。スピンコート条件は、300rpmで5秒の後、800rpmで20秒とし、乾燥条件は100℃で80秒とした。得られた塗膜を、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長で1μmのラインアンドスペースを有するパターンマスクを通して10〜1600mJ/cmの露光量で照射した。次に、60%CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)現像液を使用して、露光後の塗膜を、25℃、60秒間の条件で現像した。その後、流水で20秒間リンスした後、エアー乾燥しパターニングを完了した。
露光感度の評価は、露光工程において光が照射された領域の現像後のパターン線幅が、1.0μm以上となる最小の露光量を露光感度として評価した。露光感度の値が小さいほど感度が高いことを示す。
【0197】
2−2.着色重合性組成物の露光感度(経時品:加熱経時45℃3日)
着色重合性組成物を調整後密閉容器に封入し、45℃に設定されたサーモセルコ(EYELA/LTI−700)に3日間放置した着色重合性組成物を用いること以外は、23−1と同様の操作で露光感度を求めた。これを経時品の露光感度とした。
【0198】
2−3.パターンの表面粗さ評価
2−1において、現像後のパターン線幅が1.0μm以上となる最小の露光量で得られたパターン付基板を220℃のオーブンにて1時間加熱した。このパターン付基板の着色パターン(着色領域)の表面粗さを、原子間力顕微鏡(NanoScope IIIa、ナノワールド社製)を用いて測定し、下記基準にて評価した。
◎:表面粗さ(Ra値)が、50Å以下。
○:表面粗さ(Ra値)が、50Åを超え、100Å以下。
△:表面粗さ(Ra値)が、100Åを超え、200Å以下。
×:表面粗さ(Ra値)が、200Åを超える。
【0199】
2−4.未露光部残渣評価
2−3で評価に用いた同じパターン付基板について、露光工程において光が照射されなかった領域(未露光部)の残渣の有無をSEM(倍率:20000倍)にて観察し、未露光部残渣を評価した。評価基準は以下の通りである。
−評価基準−
◎:未露光部には、残渣が全く観察されない。
○:未露光部1.0μm四方に残渣が1から3個。
△:未露光部1.0μm四方に残渣が3個を超え、10個以内。
×:未露光部に、残渣が著しく確認された。
上記、いずれの評価基準においても、◎〜△は実用上問題のないレベルであり、◎及び○は優れた性能を有すると評価する。
【0200】
<実施例1−2〜1−20、比較例1−1〜1−4>
実施例1−1における着色重合性組成物A−1の調製に用いた組成A−1において、オキシムエステル光重合開始剤および酸無水物を表1に示される光重合開始剤および酸無水物の種類と量とにそれぞれ変更し、その他は組成A−1と同様にして、着色重合性組成物A−2〜A−20及びA’−1〜A’−4を調製した。
得られた着色重合性組成物A−2〜A−20及びA’−1〜A’−4を、実施例1−1と同様にして評価を行った。結果を表1に示す。
なお、比較例1−4に用いた光重合開始剤(A)’−1は、2−(2’−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体であり、(A)’−2は、ミヒラーズケトンである。比較例1−4においては、(A)’−1を4部と(A)’−2を16部との2種の開始剤を用いた。
【0201】
【表1】

【0202】
表1の結果から、分子量300以下の有機酸無水物((B)-1〜(B)-9)を含有する各実施例の緑色着色重合性組成物は、初期の露光感度が高く、また着色重合性組成物を加熱経時した後の感度低下も殆ど無く、着色重合性組成物の保存性が良好であることがわかる。実施例の重合性組成物の開始剤残存%はいずれも高く、また加水分解生成物が見られない。これに対し比較例1−1〜1−3の重合性組成物の開始剤残存%は経時品で低くなっており、また加水分解量%が大きい。このことから実施例の重合性組成物中のオキシムエステル光重合開始剤の加水分解が抑制されたことにより、感度低下が見られなかったものと考えられる。また、比較例1−4の結果から、オキシムエステル光重合開始剤を用いない場合には、重合性組成物の調整初期から感度が低い。
さらに、分子量300以下の酸無水物の添加によって、パターンの表面粗さが小さく平坦であり、未露光部の現像後の残渣が少なく現像性が優れていることがわかる。分子量300以下の酸無水物の添加によって、パターン形成性が良好になることが判る。沸点の低い酸無水物ではその効果が顕著な傾向が認められる。
オキシムエステル光重合開始剤と酸無水物との組み合わせが、高感度であり、且つ保存安定性に優れることがわかる。
【0203】
<実施例2−1>:染料ピロメテン化合物を用いた青色の重合性組成物
〔1.下塗り用レジスト液の調製〕
下記組成の成分を混合して溶解し、下塗り用レジスト液を調製した。
−下塗り用レジスト液の組成−
・PGMEA 19.20部
・乳酸エチル 36.67部
・樹脂:ベンジルメタクリレート/メタクリル酸/ヒドロキシエチルメタクリレート共重合体(mol比:60/22/18、Mw:20,000)の40%PGMEA溶液 30.51部
・重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 12.20部
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール 0.0061部
・フッ素系界面活性剤:DIC(株)製 F−475 0.83部
・光重合開始剤:みどり化学(株)製 TAZ−107(トリハロメチルトリアジン系の光重合開始剤) 0.586部
【0204】
〔2.下塗り層付シリコンウエハ基板の作製〕
6inchシリコンウエハをオーブン中で200℃で30分間加熱処理した。次いで、このシリコンウエハ上に前記レジスト液を乾燥膜厚が2μmになるように塗布し、更に220℃のオーブン中で1時間加熱乾燥させて下塗り層を形成し、下塗り層付シリコンウエハ基板を得た。
【0205】
〔3.着色重合性組成物B−1の調製〕
−C.I.Pigment Blue15:6分散液の調整−
C.I.Pigment Blue15:6を11.5部(平均粒子径55nm)、及び分散剤BY−161(BYK社製)を3.5部、PGMEA 85部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散液を得た。顔料分散液について、顔料の平均1次粒子径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製))により測定したところ、25nmであった。
【0206】
下記組成B−1を混合して溶解し、着色剤(顔料、および染料)を含有する着色重合性組成物B−1を調製した。
<組成B−1>
・溶剤:PGMEA 21.09部
・重合性化合物1(下記構造) 0.582部
・重合性化合物2(下記構造) 0.582部
・光重合開始剤:(A)−1 0.360部
・酸無水物:(B)-9 0.018部
・着色剤(下記構造の染料化合物1) 1.200部
・前記C.I.Pigment Blue 15:6分散液(固形分濃度13.17%、顔料濃度10.13%) 24.8766部
・界面活性剤:DIC(株)製 商品名:F−781、PGMEAの1.0%溶液) 1.250部
・重合禁止剤:p−メトキシフェノール(PGMEAの1.0%溶液) 0.060部
【0207】
【化20】

【0208】
【化21】

【0209】
【化22】

【0210】
〔4.着色重合性組成物B−1によるカラーフィルタの作製及び評価〕
前記3.で調製した着色重合性組成物B−1を、前記2.で得られた下塗り層付シリコンウエハ基板の下塗り層上に塗布し、重合性組成物の塗布膜を乾燥膜厚が0.6μmになるように形成し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理(プリベーク)を行なった。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長でパターンが1.0μm四方のIslandパターンマスクを通して10〜1600mJ/cmの露光量で照射した。
その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウエハ基板をスピン・シャワー現像機〔DW−30型、(株)ケミトロニクス製〕の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行ない、シリコンウエハ基板上に着色パターンを形成した。
【0211】
着色パターンが形成されたシリコンウエハ基板を真空チャック方式で前記水平回転テーブルに固定し、回転装置によって該シリコンウエハ基板を回転数50r.p.m.で回転させつつ、その回転中心の上方より純水を噴出ノズルからシャワー状に供給してリンス処理を行ない、その後スプレー乾燥した。
以上のようにして、基板上に着色パターンが形成されたカラーフィルタを得た。
【0212】
着色重合性組成物の調製直後と経時保存後とにおける光重合開始剤残存量を、実施例1−1と同様にして評価した。また、露光感度、得られた着色パターンの表面粗さ、未露光部の残渣については、前記4で得られた着色パターンが形成されたカラーフィルタを用いて実施例1−1と同様にして評価した。なお、露光感度は、前記4において露光工程において光が照射された領域の現像後のパターン線幅が、1.0μm以上となる最小の露光量を露光感度として評価した。結果をまとめて表2に示す。
【0213】
<実施例2−2〜2−14、比較例2−1〜2−3>
実施例2−1での着色重合性組成物B−1の調製に用いた組成B−1において、オキシムエステル光重合開始剤、および有機酸無水物を表2に記載の種類と量とにそれぞれ変更した以外は組成B−1と同様にして、着色重合性組成物B−2〜B−14及びB’−1〜B’−3を調製した。得られた着色重合性組成物B−2〜B−14及びB’−1〜B’−3を用いて、実施例2−1と同様の評価を行った。結果を表2に示す。
【0214】
【表2】

【0215】
表2の結果から、(B)分子量300以下の有機酸無水物((B)-1〜(B)-4、(B)−9)を含有する各実施例の青色の着色重合性組成物は、初期の露光感度が高く、また着色重合性組成物を加熱経時した後の感度低下も殆ど無く着色重合性組成物の保存性が良好であることがわかる。実施例の重合性組成物の開始剤残存%はいずれも高く、また加水分解量%が小さい。これに対し比較例の重合性組成物の開始剤残存%は経時品で特に低くなっており、また加水分解量%が大きい。このことから実施例の重合性組成物中のオキシムエステル光重合開始剤は加水分解が抑制されており、感度低下が見られなかったものと考えられる。
また、実施例においては分子量300以下の有機酸無水物の添加によってパターンの表面粗さが小さくなっており平坦であることがわかる。さらに、未露光部の現像後の残渣が少なく現像性が優れており、分子量300以下の有機酸無水物の添加によってパターン形成性が良好となることが判る。特に沸点の低い酸無水物ではその効果が顕著であることがわかる。
【0216】
<実施例3−1>:赤色の着色重合性組成物
−C.I.Pigment Red254分散液の調整−
C.I.Pigment Red254を14.0部(平均粒子径75nm)、及び顔料分散剤BY−161(BYK社製)を4.0部、PGMEA 85部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散液を得た。顔料分散液について、顔料の平均1次粒子径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製))により測定したところ、30nmであった。
【0217】
−C.I.Pigment Yellow139分散液の調整−
C.I.Pigment Yellow139を13.0部(平均粒子径70nm)、及び顔料分散剤BY−161(BYK社製)を3.0部、PGMEA 90部からなる混合液を、ビーズミル(ジルコニアビーズ0.3mm径)により3時間混合・分散して、顔料分散液を調製した。その後さらに、減圧機構付き高圧分散機NANO-3000-10(日本ビーイーイー(株)製)を用いて、2000kg/cmの圧力下で流量500g/minとして分散処理を行なった。この分散処理を10回繰り返し、顔料分散液を得た。顔料分散液について、顔料の平均1次粒子径を動的光散乱法(Microtrac Nanotrac UPA−EX150(日機装社製))により測定したところ、25nmであった。
【0218】
下記組成C−1を混合して溶解し、着色剤(顔料)を含有する赤色の着色重合性組成物C−1を調製した。
<組成C−1>
・溶剤:3−エトキシプロピオン酸エチル 17.9部
・着色剤 C.I.PigmentRed 254の分散液 26.7部
(固形分:15質量%、固形分中の顔料含有率:60%)
・着色剤 C.I.PigmentYellow 139の分散液 17.8部
(固形分:15質量%、固形分中の顔料含有率:60%)
・重合性化合物:ペンタエリスリトールトリアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの3:7(質量比)の混合物 3.5部
・オキシムエステル光重合開始剤:(A)−1 0.5部
・有機酸無水物:(B)-9 0.1部
・バインダー:ベンジルメタアクリレート/メタクリル酸共重合体(モル比=70/30、Mw=20,000) 2.0部
【0219】
着色重合性組成物の調製直後と経時保存後とにおける光重合開始剤残存量、露光感度、得られた着色パターンの表面粗さ、未露光部の残渣については、実施例2−1と同様にして評価した。結果をまとめて表3に示す。
【0220】
<実施例3−2〜3−15、比較例3−1〜3−5>
実施例3−1において、着色重合性組成物C−1の調製に用いた組成C−1中のオキシムエステル光重合開始剤、および有機酸無水物を、表3に示されるオキシムエステル光重合開始剤、有機酸無水物の種類と量とにそれぞれ変更し、その他は組成C−1と同様にして、着色重合性組成物C−2〜C−15及びC’−1〜C’−5を調製した。得られた着色重合性組成物C−2〜C−15及びC’−1〜C’−5を用いて、実施例2−1と同様にして評価を行った。結果を表3に示す。
【0221】
【表3】

【0222】
表3の結果から、(B)分子量300以下の有機酸無水物((B)-1〜(B)-7、(B)-9)を含有する各実施例の赤色着色重合性組成物は、初期の露光感度が高く、また着色重合性組成物を加熱経時した後の感度低下も殆ど無く着色重合性組成物の保存性が良好であることがわかる。実施例の重合性組成物の開始剤残存%はいずれも高く、また加水分解量%が小さい。これに対し比較例の重合性組成物の開始剤残存%は経時品で特に低く、加水分解量%は経時品では検知されていない。これは分子量300以上の酸無水物である(B)’-1を用いると結果として加水分解は抑制されたことを示しているが、これは当初の置換基と異なるオキシムエステル光重合開始剤を生成したことに加えて、酸無水物の分子量が大きいことによって発生するラジカルも分子量の大きなラジカルを発生することになり、発生したラジカルの拡散性が低下し、重合開始能が低下したものと推定される。
実施例においては、分子量300以下の酸無水物の添加によってパターンの表面粗さが小さく平坦であり、未露光部の現像後の残渣が少なく現像性が優れており、分子量300以下の有機酸無水物の添加によってパターン形成性が良好となることが判る。沸点の低い酸無水物ではその効果が顕著となる。
【0223】
<実施例4−1>:黒色重合性組成物
〔チタンブラック分散液Aの調製〕
下記組成d−1を二本ロールにて高粘度分散処理を施し、分散物を得た。なお、高粘度分散処理の前にニーダーで30分混練した。
【0224】
<組成d−1>
・チタンブラック(平均一次粒径75nm、三菱マテリアルズ(株)製 13M−C) 35部
・PGMEA 65部
【0225】
得られた分散物に、下記組成d−2を添加し、3000rpmの条件でホモジナイザーを用いて3時間攪拌した。得られた混合溶液を、0.3mm径のジルコニアビーズを用いて、分散機(商品名:ディスパーマット GETZMANN社製)にて4時間微分散処理を施して、チタンブラック分散液A(以下、TB分散液Aと表記する。)を得た。
【0226】
<組成d−2>
・特定樹脂1(下記構造:x:50モル%、y:50モル%、Mw:30,000)のPGMEA 30%溶液 30部
【0227】
【化23】

【0228】
〔黒色重合性組成物D−1の調製〕
下記組成D−1を攪拌機で混合して、黒色重合性組成物D−1を調製した。
<組成D−1>
・バインダーポリマー:ベンジルメタクリレート/アクリル酸共重合体 2.0部
〔組成比:ベンジルメタクリレート/アクリル酸共重合体=80/20(質量%)、Mw:25000〕
・重合性化合物:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート 3.0部
・TB分散液A(前記で得たもの) 24.0部
・溶剤:PGMEA 10部
・溶剤:エチル−3−エトキシプロピオネート 8部
・オキシムエステル光重合開始剤:(A)−2 0.8部
・有機酸無水物単量体:(B)-1 0.1部
・重合禁止剤:4−メトキシフェノール 0.01部
【0229】
<実施例4−2〜4−15、比較例4−1〜4−6>
実施例4−1において、黒色重合性組成物D−1の調製に用いた組成D−1中のオキシムエステル光重合開始剤、有機酸無水物を、表4に示されるオキシムエステル光重合開始剤、および有機酸無水物の種類と量とにそれぞれ変更し、その他は組成D−1と同様にして、黒色重合性組成物D−2〜D−15及びD’−1〜D’−6を調製した。
【0230】
〔評価〕
上記のようにして得られた黒色重合性組成物D−1〜D−15、及びD’−1〜D’−6を用いて、前記実施例3−1と同様の評価を行った。その結果を表4にまとめて示す。
【0231】
【表4】

【0232】
表4の結果から、(B)分子量300以下の有機酸無水物((B)-1〜(B)-5、(B)-8、(B)-9)を含有する各実施例の黒色着色重合性組成物は初期の露光感度が高く、また着色重合性組成物を加熱経時した後の感度低下も殆ど無く着色重合性組成物の保存性が良好であることがわかる。実施例の重合性組成物の開始剤残存%はいずれも高く、また加水分解量%が小さい。これに対し比較例の重合性組成物の開始剤残存%は経時品で特に低くなっており、また加水分解量%が大きい。このことから実施例の重合性組成物中のオキシムエステル光重合開始剤は加水分解が抑制されており、感度低下が見られなかったものと考えられる。
また、分子量300以下の酸無水物の添加によってパターンの表面粗さが小さく平坦であり、未露光部の現像後の残渣が少なく現像性が優れ、分子量300以下の有機酸無水物の添加によってパターン形成性が良好となることが判る。沸点の低い酸無水物ではその効果が顕著となる。
【0233】
<実施例5>
〔フルカラーのカラーフィルタの作製〕
まず、前記着色重合性組成物A−1における顔料(C.I.ピグメント グリーン58と、C.I.ピグメント イエロー180との30/70〔質量比〕混合物)を、青色顔料(顔料C.I.ピグメント ブルー15:6とピロメテン染料(前記染料化合物1)との30/70〔質量比〕混合物)と赤色顔料(C.I.ピグメント レッド254)とにそれぞれ変更した以外は、着色重合性組成物A−1の調製と同様にして青色(B)、赤色(R)の着色重合性組成物をそれぞれ調製した。
【0234】
前記黒色重合性組成物D−1を前記下塗り付きシリコンウエハ基板上にスピン塗布し、黒色重合性組成物層を乾燥膜厚が0.6μmになるように形成し、100℃のホットプレートを用いて120秒間加熱処理を行なった。
次いで、i線ステッパー露光装置FPA−3000i5+(Canon(株)製)を使用して、365nmの波長でパターンが1.5μmの格子パターン(格子幅は0.3μm)のマスクを介して1200mJ/cmの露光量で照射した。
その後、照射された塗布膜が形成されているシリコンウエハ基板をスピン・シャワー現像機(DW−30型、(株)ケミトロニクス製)の水平回転テーブル上に載置し、CD−2000(富士フイルムエレクトロニクスマテリアルズ(株)製)を用いて23℃で60秒間パドル現像を行ない、シリコンウエハ基板上に1.2μm四方の矩形の開いた黒色の格子パターンを形成した。
上記で得られた黒色の格子パターンを有する基板に、前記着色重合性組成物A−1を用いて、実施例1−1に記載の方法と同じ要領で1.2×1.2μmの緑色(G)の着色パターンを形成した。
次いで、緑色(G)重合性組成物A−1で実施したのと同様にして、1.2×1.2μmの青色(B)、赤色(R)パターンを順次形成して固体撮像素子用のカラーフィルタを作製した。
【0235】
得られたフルカラーのカラーフィルタについて、SEMで観察したところ、いずれのパターンも矩形であり、またいずれもパターン欠損が無いことがわかった。
【0236】
<固体撮像素子の作製、評価>
実施例5にて得られたフルカラーのカラーフィルタを固体撮像素子に組み込んだところ、該固体撮像素子は、高解像度で、色分離性に優れることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)オキシムエステル光重合開始剤、(B)分子量300以下の有機酸無水物、および(C)重合性化合物を含有する重合性組成物。
【請求項2】
前記(B)有機酸無水物の沸点が100℃以上200℃以下である請求項1に記載の重合性組成物。
【請求項3】
前記(A)オキシムエステル光重合開始剤と前記(B)有機酸無水物単量体との質量比が、20:1〜1:1である請求項1または請求項2に記載の重合性組成物。
【請求項4】
前記(A)オキシムエステル光重合開始剤が、下記一般式(1)で表される化合物である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【化1】


一般式(1)中、Rはアリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表し、Rはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表し、Rはアルキル基、アリール基、またはアルコキシ基を表す。RとRとは、酸素原子または硫黄原子を介して連結させた2価の有機基を含んで環を形成してもよい。
【請求項5】
前記(A)オキシムエステル光重合開始剤が、下記一般式(2)で表される化合物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【化2】


一般式(2)中、Aは芳香族基、またはヘテロ芳香族基を表し、Rはアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。Rはアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、またはアシル基を表す。AとRとは、酸素原子または硫黄原子を介して連結させた2価の有機基を含んで環を形成してもよい。Rは炭素数8以下のアルキル基、または炭素数8以下のアリール基を表す。nは0または1、mは0または1を表す。
【請求項6】
前記(A)オキシムエステル光重合開始剤が、下記一般式(3)または(4)で表される化合物である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【化3】


一般式(3)中、Rは-SAr基を有するアルキル基を表し、Rはアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表す。R10は炭素数8以下のアルキル基または炭素数8以下のアリール基を表す。Arはアリール基を表す。Bは下記<B群>から選ばれる1種の置換基を表す。pは0または1、qは0または1を表す。
一般式(4)中、Xは酸素原子または硫黄原子を表し、Yは2価のアルキレン基を表す。R11はアルキル基、アリール基、またはヘテロアリール基を表し、R12は炭素数8以下のアルキル基または炭素数8以下のアリール基を表す。Qは下記<B群>の1種から水素原子が1個除かれX−Yと共同して環を形成する置換基を表す。rは0または1、sは0または1を表す。
<B群>
下記において、Rはアルキル基またはアリール基を表す。
【化4】

【請求項7】
前記(B)分子量300以下の有機酸無水物が、下記一般式(5)で表される化合物である請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【化5】


一般式(5)中、2個あるR13は同一で、炭素数8以下のアルキル基、または炭素数8以下のアリール基を表し、一般式(2)におけるR、一般式(3)におけるR、または一般式(4)におけるR12と同じ構造の置換基を示す。
【請求項8】
前記一般式(2)におけるR、一般式(3)におけるR10、一般式(4)におけるR12、および一般式(5)におけるR13が、いずれもメチル基である請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【請求項9】
さらに、(D)着色剤を含有する請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【請求項10】
前記(D)着色剤が染料である請求項9に記載の重合性組成物。
【請求項11】
前記(D)着色剤がチタンブラックである請求項9に記載の重合性組成物。
【請求項12】
さらに、(E)分散剤を含有する請求項9〜請求項11のいずれか1項に記載の重合性組成物。
【請求項13】
カラーフィルタ用である請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載の重合性組成物。

【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の重合性組成物を用いてなる硬化膜。
【請求項15】
支持体上に、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の重合性組成物を用いて形成されたパターン領域を有するカラーフィルタ。
【請求項16】
支持体上に、請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の重合性組成物を付与して重合性組成物層を形成する工程と、
前記重合性組成物層を、パターン状に露光する工程と、
露光後の前記重合性組成物層を現像して着色パターンを形成する工程と、
を含むカラーフィルタの製造方法。
【請求項17】
請求項15に記載のカラーフィルタを備える固体撮像素子。

【公開番号】特開2011−252945(P2011−252945A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−124667(P2010−124667)
【出願日】平成22年5月31日(2010.5.31)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】