説明

重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体、その重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法、及び重合体

【課題】重合性置換基を有する新規の硫黄含有糖誘導体及びその重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法を提供する
【解決手段】糖誘導体とメルカプタン化合物を反応させた後、アクリル(メタクリル)化剤を反応させて下記一般式(1);
【化1】


(式中、Gは糖残基を示す。Rは水素原子又はメチル基を示す。Lは2価の連結基を示す。Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。)で示される重合性置換基を有する新規の硫黄含有糖誘導体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体、その重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法、及びその重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体をモノマー原料として用いて合成された重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
硫黄化合物はゴム薬品、潤滑油、表面処理剤、高屈折率用プラスチック等の添加物として有用であることは広く一般に認められている。また、従来、側鎖に糖残基を有する重合体は、親水性、吸水性、生体適合性などに優れており、表面処理剤、医療用材料など種々の用途への展開がなされている。このことから重合性置換基を有する糖誘導体はモノマー原料としてその産業上の有用性が広く一般に認められている。
【特許文献1】特許第2990284号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、特許文献1に記載されている重合性置換基を有する糖誘導体は有機溶媒への溶解性に乏しい。このような糖誘導体に硫黄を含有した置換基を導入すると、疎水性が向上し、親疎水性のバランスが取りやすくなることが見込まれる。つまり、親水性のモノマーだけでなく、スチレンのような疎水性のモノマーとの共重合が可能な糖誘導体モノマー原料として利用できるため、その有用性は増すと考えられる。
【0004】
しかしながら、糖と重合性置換基を持つ側鎖とがスルフィド結合により結合している化合物は得られていない。
【0005】
本発明は係る実情に鑑みてなされたものであって、糖と重合性置換基を持つ側鎖とがスルフィド結合により結合している化合物、すなわち、重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体及びその重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題に対して鋭意検討を重ねた結果、糖残基を側鎖に有する硫黄含有重合体の合成に有用な新規のモノマー化合物を得ることに成功し、本発明を完成した。すなわち、本発明は、重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体及びその重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法を提供するものである。
【0007】
本発明に係る重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体は、下記一般式(1);
【0008】
【化1】

(式中、Gは糖残基を示す。Rは水素原子又はメチル基を示す。Lは2価の連結基を示す。Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。)で示される。
【0009】
本発明に係る重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体で、上記一般式(1)においてLで示される2価の連結基は、下記一般式(2)〜(5)のいずれかで示される2価の連結基であってよい。
【0010】
【化2】

(式中、Rは2価の炭化水素基を示す。)
【0011】
【化3】

(式中、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。nは、1以上の整数を示す。)
【0012】
【化4】

(式中、R、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。A、Aはそれぞれ独立に硫黄原子又は酸素原子を示す。)
【0013】
【化5】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。A、A、Aはそれぞれ独立に硫黄原子又は酸素原子を示す。)
【0014】
また、本発明に係る重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法は、下記一般式(6);
【0015】
【化6】

(式中Gは糖残基を示し、Xは脱離基を示す。)で示される糖誘導体と、下記一般式(7);
【0016】
【化7】

(式中、Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。Lは2価の連結基を示す。)で示されるメルカプタン化合物とを反応させた後、アクリル(メタクリル)化剤を反応させて、下記一般式(1);
【0017】
【化8】

(式中、Gは糖残基を示す。Rは水素原子又はメチル基を示す。Lは2価の連結基を示す。Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。)で示される重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体を得る工程を含むことを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法で、上記一般式(6)においてXで示される脱離基は、ハロゲン原子、もしくは下記一般式(8)又は(9)で示される脱離基であってよい。
【0019】
【化9】

(式中、Rはニトロ基、ハロゲン原子を含んでいてもよい1価の炭化水素基を示す。)
【0020】
【化10】

(式中、Rはニトロ基、ハロゲン原子を含んでいてもよい1価の炭化水素基を示す。)
【0021】
また、本発明に係る重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法で、上記一般式(7)においてLで示される2価の連結基は、下記一般式(10)又は(11)で示される2価の連結基であってよい。
【0022】
【化11】

(式中、Rは2価の炭化水素基を示す。)
【0023】
【化12】

(式中、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。nは、1以上の整数を示す。)
【0024】
また、本発明に係る重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法では、下記一般式(12)〜(15)で表されるカルボン酸誘導体からなる群より少なくとも1つを前記アクリル(メタクリル)化剤として選択してよい。
【0025】
【化13】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Yは、ハロゲン原子、水酸基、又は有機残基を示す。)
【0026】
【化14】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【0027】
【化15】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。Yは、ハロゲン原子、水酸基、又は有機残基を示す。)
【0028】
【化16】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。)
【0029】
また、本発明に係る重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法では、前記アクリル(メタクリル)化剤は、メタクリル酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド、2−アクリロイロキシエチルコハク酸クロライド、及び2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸クロライドからなる群より選択される少なくとも1つであってよい。
【0030】
また、本発明に係る重合性置換を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法では、前記メルカプタン化合物は、2−メルカプトエタノール、2,2’−チオジエタンチオール、及び4−メルカプトフェノールからなる群より選択される少なくとも1つであってよい。
【0031】
また、本発明に係る重合体は、本発明に係る重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体をモノマー原料として用いて合成されたものである。
【0032】
以下本発明を詳細に説明する。
【0033】
上記一般式(1)、(12)〜(15)におけるRは水素原子又はメチル基である。
【0034】
上記一般式(2)〜(5)、(10)、(11)、(14)、(15)におけるR〜Rは2価の炭化水素基である。このような炭化水素基の例としてはアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基を挙げることができ、炭素数は1〜18であることが好ましい。より好ましくは、炭素数2〜12、特に好ましくは炭素数2〜8のアルキレン基若しくはアルケニレン基、炭素数6〜12のアリーレン基、又は炭素数3〜8の環式飽和若しくは環式不飽和炭化水素基である。具体的には、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基、ドデカメチレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基等が挙げられる。なお、R〜Rはそれぞれ同一の炭化水素基でも異なる炭化水素基であってもよい。
【0035】
上記一般式(8)、(9)におけるRはニトロ基、又はハロゲン原子を含んでいてもよい1価の炭化水素基である。このような炭化水素基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、モノフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジフルオロメチル基、ジクロロメチル基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタクロロエチル基、フェニル基、パラトルイル基、パラニトロフェニル基、パラフルオロフェニル基、パラクロロフェニル基、パラブロモフェニル基、ジニトロフェニル基等を挙げることができ、炭素数は1〜12であることが好ましい。
【0036】
上記一般式(1)、(3)〜(5)、(7)、(11)におけるA〜Aは硫黄原子、又は酸素原子である。
【0037】
上記一般式(1)におけるLは、2価の連結基である。Lで示される2価の連結基としては、特に制限はなく、上記一般式(1)におけるA−Lの構造は、例えば、エーテル結合、スルフィド結合、エステル結合、チオエステル結合により炭化水素鎖が繋がっているものであってよい。よって、Lの連結基の具体例としては、上記一般式(2)〜(5)のいずれかで示される連結基を挙げることができる。
【0038】
また、上記一般式(3)におけるnは、1以上の整数であり、R−A部分の構造の繰り返し回数を示す。なお、上記一般式(3)で示される2価の連結基は、例えば、−(CH−S)−(CH−S)−R−といったように、同一のR−A構造が繰り返されたものであってよいし、例えば、−(CH−S)−(CHCH−O)−R−といったように、異なるR−A構造が繰り返されるものであってもよい。
【0039】
上記一般式(7)におけるLは、2価の連結基である。Lで示される2価の連結基としては、特に制限はなく、上記一般式(7)におけるA−Lの構造は、例えば、エーテル結合、スルフィド結合により炭化水素鎖が繋がっているものであってよい。よって、Lの連結基の具体例としては、上記一般式(10)又は(11)で示される連結基を挙げることができる。
【0040】
また、上記一般式(11)におけるnは、上記一般式(3)におけるnと同様に、1以上の整数であり、R−A部分の構造の繰り返し回数を示す。なお、上記一般式(11)で示される2価の連結基は、例えば、−(CH−S)−(CH−S)−R−といったように、同一のR−A構造が繰り返されたものであってよいし、例えば、−(CH−S)−(CHCH−O)−R−といったように、異なるR−A構造が繰り返されるものであってもよい。
【0041】
上記一般式(6)におけるXは脱離基である。Xで示される脱離基としては、公知の脱離基であれば特に制限はされないが、具体例としては、塩素、フッ素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子、もしくは上記一般式(8)又は上記一般式(9)で示される脱離基を挙げることができる。
【0042】
上記一般式(12)、(14)におけるYはハロゲン原子、水酸基、又は有機残基である。有機残基は水酸基と縮合することが可能な基であればいずれであってよく、例えばアルコキシ基、アルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、イミダゾリン基を挙げることができる。有機残基の炭素数は1〜18が好ましく、1〜12が特に好ましい。
【0043】
上記一般式(1)、(6)におけるGは糖残基を示す。糖残基とは糖の1級水酸基が外れた基である。糖残基の糖としては特に制限はなく、具体的には、1級水酸基を有する単糖、オリゴ糖、及び多糖等のいずれであっても良い。また、糖の1級水酸基以外の水酸基の一部又は全ては、アセチル基などのエステル結合、イソプロピリデン基などのアセタール結合、臭素などのハロゲン原子、ベンジル基などのエーテル結合などにより保護されていてもよい。
【0044】
一般式(1)で示される重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体としては、特に制限されないが、具体例としては、上記一般式(2)で示される2価の連結基Lを有する、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル)−α−D−グルコピラノシド、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル−4−フェニル)−α−D−グルコピラノシド、ベンジル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル)−α−D−マンノピラノシド、フェニル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル)−β−D−グルコピラノシド等;上記一般式(3)で示される2価の連結基Lを有する、メチル−6−チオ−(2−チオメタクリルエチルスルファニルエチル)−α−D−グルコピラノシド等;上記一般式(4)で示される2価の連結基Lを有する、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−グルコピラノシド、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸−4−フェニル)−α−D−グルコピラノシド、メチル−6−チオ−(2−アクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−グルコピラノシド、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸エチル)−α−D−グルコピラノシド、ベンジル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−マンノピラノシド、フェニル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−β−D−グルコピラノシド等;上記一般式(5)で示される2価の連結基Lを有する、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル−O−モノチオコハク酸−S−エチルスルファニルエチル)−α−D−グルコピラノシド等;を挙げることができる。なお、これらの硫黄含有糖誘導体において、重合性置換基はアクリル基又はメタクリル基である。
【0045】
このような本発明の上記一般式(1)で表される重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体は硫黄原子を含んでいるため、糖残基による親水性と硫黄原子による疎水性を併せ持つ、つまり両親媒性を有する。すなわち、本発明の重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体は、親水性のモノマーだけでなく、スチレンのような疎水性のモノマーとの共重合が可能であるため、重合体の合成に有用なモノマー原料として使用することができる。また、本発明の上記一般式(1)で表される重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体をモノマー原料として用いて合成した本発明の重合体は、糖残基を側鎖に有することとなるため、親水性、吸水性、生分解性及び生体適合性に優れる。
【0046】
さらに、本発明の重合体はスルフィド結合を有するため、スルフィド結合を有していない従来の糖残基を有する重合体と比べて、高い屈折率を有するとともに、劣化(酸化)防止効果、金属又はプラスチック等との相互性、及び柔軟性に優れる。よって、例えば、本発明の重合体が適用された接着剤では、高い屈折率によって結合界面での散乱を生じ難くくすることができる上、劣化防止効果により耐青色劣化性を高めることができ、さらに、柔軟な硬化皮膜が得て密着力を高めることができるといった特性を期待できる。また、高い屈折率と、劣化(酸化)防止効果を有することから、光化学関連の素材へ適用させることができる。
【0047】
このように、本発明の重合体は、種々の製品に適用することができる。例えば、治療パット、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、硬膏剤、シップ剤、リザーバー型貼付剤等の外用製剤の粘着基材として、或いは、医薬部外品、医薬品、芳香剤、徐放製剤等のそれぞれの基剤として利用することができる。また、本発明の重合体は、コンタクトレンズ、生体適合性インプラント材料(人工の骨、歯など)等の医療材料に利用することができる。また、本発明の重合体は、オムツ、失禁パット、衛生ナプキン、タンポン等の吸収品における吸収剤として利用することができる。また、本発明の重合体は、紙、板紙、壁紙、及び厚紙の製造のための乾燥及び湿潤補強剤や、紙、板紙、壁紙、厚紙、及び織物のサイジング剤として利用することができる。また、塗料として、より具体的には、再パルプ可能なインキ、プライマー塗料、オーバープリント塗料として利用することができる。また、樹脂、ゴム製品、及び繊維として、より具体的には、ポリマーフィルム、トナー、トレイ、生分解性樹脂、ゴム、高屈折率プラスチックとして利用することができる。また、本発明の重合体は、化粧品又はヘルスケア製品用の組成物、具体的には、シャンプー、コンディショナー、トリートメント、パーマネントウェーブ処理剤、毛髪ストレート化剤、毛髪染色又は脱色用の組成物、皮膚用クレンジング組成物、皮膚、唇、毛髪の保護、手入れメークアップなどの美容処理のための製品(口紅、リップクリーム、マスカラ、ヘアワックス、ヘアムース、ヘアジェルなど)用の組成物に配合することができる。また、前記した以外に、本発明の重合体は、穀類種子の被覆剤、なめし剤、接着剤、コンクリート分散剤、洗濯洗剤添加物、保温材、保湿剤、表面処理剤、潤滑油に利用することが可能である。
【0048】
また、上記一般式(1)で表される重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体は、上記一般式(6)で示される糖誘導体と上記一般式(7)で表されるメルカプタン化合物を反応させた後、アクリル(メタクリル)化剤を反応させる工程を経て、安価且つ簡便に製造することができる。
【0049】
なお、上記一般式(6)で表される糖誘導体は、特に制限はされず、市販されているものや、公知の方法により製造したものを使用することができ、例えば、下記一般式(16)で示される糖化合物の1級水酸基をハロゲン化、スルホン酸エステル化、又は炭酸エステル化する工程を経て製造したものを使用することができる。
【0050】
【化17】

(式中、Gは上記一般式(1)及び(6)と同様の糖残基を示し、OHは、糖の1級水酸基を示す。)
【0051】
上記一般式(16)で示される糖化合物としては、1級水酸基を有する単糖、オリゴ糖、多糖のいずれも使用することができる。単糖類の代表例としてはグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトースなどの6炭糖類、アラビノース、キシロース、リボース等の5炭糖類等を挙げることができる。オリゴ糖類の代表例としては、マルトース、ラクトース、トレハロース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラミナリビオース、キシロビオース、マンノビオース、ソホロース等の2糖類、マルトトリオース、イソマルトトリオース、マルトテトラオース、マルトペンタオース、マンノトリオース、マンニノトリオース等を挙げることができる。また、糖化合物は配糖体であってもよく、メチル−α−D−グルコピラノシド、ベンジル−α−D−マンノピラノシド、ベンジル−α−D−グルコピラノシド、フェニル−α−D−グルコピラノシド、フェニル−β−D−グルコピラノシド等のアルキル又はアリール配糖体等が挙げられる。また、一般式(6)で表される糖誘導体の製造に使用する糖化合物は単独で使用してもよくまたは2種類以上を併用しても良い。
【0052】
例えば、上記一般式(16)で示される糖化合物の1級水酸基をスルホン酸エステル化して、上記一般式(8)で示される脱離基Xを有する上記一般式(6)で示される糖誘導体を製造するには、上記一般式(16)で示される糖化合物と下記一般式(17)で示されるスルホニルハライド化合物とを反応させる。
【0053】
【化18】

(式中、Rは、ニトロ基、ハロゲン原子を含んでいてもよい上記一般式(8)及び(9)におけるRと同様の1価の炭化水素基を示す。Xは、ハロゲン原子を示す。)
【0054】
上記一般式(17)で示されるスルホニルハライド化合物としては、特に制限されず、公知の方法に従って製造されたもの、市販されているものを使用でき、具体的には、メタンスルホニルクロライド、エタンスルホニルクロライド、イソプロピルスルホニルクロライド、モノフルオロメタンスルホニルクロライド、モノクロロメタンスルホニルクロライド、ジフルオロメタンスルホニルクロライド、ジクロロメタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、トリクロロメタンスルホニルクロライド、ペンタフルオロエタンスルホニルクロライド、ペンタクロロエタンスルホニルクロライド、ベンゼンスルホニルクロライド、パラトルエンスルホニルクロライド、パラニトロベンゼンスルホニルクロライド、パラフルオロベンゼンスルホニルクロライド、パラクロロベンゼンスルホニルクロライド、パラブロモベンゼンスルホニルクロライド、ジニトロベンゼンスルホニルクロライド、メタンスルホニルブロマイド、パラトルエンスルホニルブロマイド、パラニトロベンゼンスルホニルブロマイド等を使用することができる。スルホニルハライドは単独で使用してもよく、または2種類以上を併用しても良い。また、糖化合物をスルホン酸エステル化する際の糖化合物の使用量は特に制限されないが、通常スルホニルハライドの使用量の1〜10倍モル量程度でよく、好ましくは1〜5倍モル量とすればよい。
【0055】
なお、上記した糖化合物とスルホニルハライドを反応させる際には、反応を円滑に進め、一般式(6)で表される糖誘導体を効率よく得る観点から反応溶媒を使用する。反応溶媒としては反応を阻害しないものであればいずれも使用できる。例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルブチル等のエステル類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、トリアリルアミン、ピリジン、N,N’−ジメチルアミノピリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルイミダゾール、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N’−ジメチルアニリン、N,N,N’,N’,−テトラメチルエチレンジアミン等の3級アミン類を用いることができる。溶媒は単独で使用してもよくまたは2種類以上を併用しても良い。溶媒の使用量としては特に制限されないが、糖化合物1gに対して1〜30ml程度でよく、好ましくは1〜10mlとすればよい。
【0056】
また、反応を円滑に進行させるために、前記した3級アミンを溶媒として、又は他の溶媒に加えて使用することができる。3級アミンの添加量としては特に制限されないが、通常スルホニルハライドの使用量の1〜30倍モルでよく、1〜10倍モルが好ましい。
【0057】
また、上記した糖化合物とスルホニルハライドを反応させる際の反応温度、反応時間は特に制限されないが、通常−30〜100℃、好ましくは−10〜50℃で1〜24時間程度行われる。
【0058】
このように、上記一般式(16)で示される糖化合物の1級水酸基をスルホン酸エステル化して製造された、一般式(8)で示される脱離基Xを有する一般式(6)で示される糖誘導体としては、特に制限されないが、具体例としては6−O−メタンスルホニル−α−D−グルコース、6−O−エタンスルホニル−α−D−グルコース、6−O−モノクロロメタンスルホニル−α−D−グルコース、6−O−ジクロロメタンスルホニル−α−D−グルコース、6−O−トリクロロメタンスルホニル−α−D−グルコース、6−O−ベンゼンスルホニル−α−D−グルコース、6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコース、6−O−パラニトロベンゼンスルホニル−α−D−グルコース、6−O−パラクロロベンゼンスルホニル−α−D−グルコース、6−O−メタンスルホニル−α−D−アラビノース、6−O−メタンスルホニル−α−D−マルトース、メチル−6−O−メタンスルホニル−α−D−グルコピラノシド、メチル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコピラノシド、フェニル−6−O−メタンスルホニル−α−D−グルコピラノシド、フェニル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコピラノシド、フェニル−6−O−メタンスルホニル−β−D−グルコピラノシド、フェニル−6−O−パラトルエンスルホニル−β−D−グルコピラノシド、ベンジル−6−O−メタンスルホニル−α−D−マンノピラノシド、ベンジル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−マンノピラノシド等を挙げることができる。
【0059】
また、上記一般式(16)で示される糖化合物の1級水酸基をハロゲン化することにより、製造することができる、ハロゲン原子を脱離基Xとして有する上記一般式(6)で示される糖誘導体としては、特に制限されないが、6−クロロ−α−D−グルコース、6−ブロモ−α−D−グルコース、6−ヨード−α−D−グルコース、6−クロロ−α−D−アラビノース、6−ブロモ−α−D−アラビノース、6−ヨード−α−D−アラビノース、6−クロロ−α−D−マルトース、6−ブロモ−α−D−マルトース、6−ヨード−α−D−マルトース、メチル−6−クロロ−α−D−グルコピラノシド、メチル−6−ブロモ−α−D−グルコピラノシド、メチル−6−ヨード−α−D−グルコピラノシド、フェニル−6−クロロ−α−D−グルコピラノシド、フェニル−6−クロロ−β−D−グルコピラノシド、ベンジル−6−クロロ−α−D−マンノピラノシド等を挙げることができる。
【0060】
また、上記一般式(16)で示される糖化合物の1級水酸基を炭酸エステル化することにより、製造することができる、上記一般式(8)で示される脱離基Xを有する上記一般式(6)で示される糖誘導体としては、特に制限されないが、6−O−メトキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−エトキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−プロポキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−イソプロポキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−n-ブトキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−t-ブトキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−シクロヘキシロキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−フェノキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−p-クロロフェノキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−m-クロロフェノキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−o-クロロフェノキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−p-ニトロフェノキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−m-ニトロフェノキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−o-ニトロフェノキシカルボニル−α−D−グルコース、6−O−メトキシカルボニル−α−D−アラビノース、6−O−メトキシカルボニル−α−D−マルトース、メチル−6−O−メトキシカルボニル−α−D−グルコピラノシド、フェニル−6−O−メトキシカルボニル−α−D−グルコピラノシド、フェニル−6−O−メトキシカルボニル−β−D−グルコピラノシド、ベンジル−6−O−メトキシカルボニル−α−D−マンノピラノシド等を挙げることができる。
【0061】
また、上記一般式(7)で表されるメルカプタン化合物としては、特に制限されず、公知の方法に従って製造されたもの、市販されているものを使用できる。具体例としては、上記一般式(10)で示される2価の連結基Lを有する、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール、2−メルカプトプロパノール、4−メルカプトブタノール、2−メチル−3−メルカプトプロパノール、メタンジチオール、エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、4−メルカプトフェノール、3−メルカプトフェノール、2−メルカプトフェノール、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,2−ジメルカプトベンゼン、2−メチル−4−メルカプトフェノール、4−メルカプトメチルフェノール、4−メルカプトフェニルメタノール、4−メルカプトメチルフェニルメタノール、4−メルカプトメチルフェニルメタンチオール等;上記一般式(11)で示される2価の連結基Lを有する、メルカプトエチルスルファニルエタノール、メルカプトエチルオキシエタノール、チオジエタンチオール、オキシジエタンチオール等;を挙げることができる。これらのメルカプタン化合物は単独で使用してもよくまたは2種類以上を併用しても良い。メルカプタン化合物の使用量としては、一般式(6)で示される糖誘導体の使用量の0.8〜1.2倍モル量程度でよく、好ましくは0.9〜1.1倍モル量とすればよい。
【0062】
また、アクリル(メタクリル)化剤としては、特に制限されず、例えば、上記一般式(12)〜(15)で表されるカルボン酸誘導体を使用することができる。
【0063】
上記一般式(12)で示されるカルボン酸誘導体の具体例としては、アクリル酸クロライド、アクリル酸ブロマイド、メタクリル酸クロライド、メタクリル酸ブロマイド、メタクリル酸イミダゾール、メタクリル酸エチルカルボネート等を挙げることができる。
【0064】
また、上記一般式(13)で示されるカルボン酸誘導体の具体例としては、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物等を挙げることができる。
【0065】
また、上記一般式(14)で示されるカルボン酸誘導体の具体例としては、2−アクリロイロキシエチルコハク酸クロライド、2−アクリロイロキシエチルコハク酸ブロマイド、2−アクリロイロキシエチルイミダゾール、2−アクリロイロキシエチルコハク酸エチルカルボネート、2−アクリロイロキシプロピルコハク酸クロライド、2−アクリロイロキシブチルコハク酸クロライド、2−アクリロイロキシシクロヘキシルコハク酸クロライド、2−アクリロイロキシフェニルコハク酸クロライド、2−アクリロイロキシエチルアジピン酸クロライド、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸クロライド、2−アクリロイロキシブチルヘキサヒドロフタル酸クロライド、2−アクリロイロキシエチルフタル酸クロライド、2−アクリロイロキシブチルフタル酸クロライド、2−アクリロイロキシエチルマレイン酸クロライド、2−アクリロイロキシブチルマレイン酸クロライド、2−メタクリロイロキシプロピルコハク酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸ブロマイド、2−メタクリロイロキシエチルイミダゾール、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチルカルボネート、2−メタクリロイロキシブチルコハク酸クロライド、2−メタクリロイロキシシクロヘキシルコハク酸クロライド、2−メタクリロイロキシフェニルコハク酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルアジピン酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸クロライド、2−メタクリロイロキシブチルヘキサヒドロフタル酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸クロライド、2−メタクリロイロキシブチルフタル酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルマレイン酸クロライド、2−メタクリロイロキシブチルマレイン酸クロライド等を挙げることができる。
【0066】
また、上記一般式(15)で示されるカルボン酸誘導体の具体例としては、2−アクリロイロキシエチルコハク酸無水物、2−アクリロイロキシプロピルコハク酸無水物、2−アクリロイロキシブチルコハク酸無水物、2−アクリロイロキシシクロヘキシルコハク酸無水物、2−アクリロイロキシフェニルコハク酸無水物、2−アクリロイロキシエチルアジピン酸無水物、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸無水物、2−アクリロイロキシブチルヘキサヒドロフタル酸無水物、2−アクリロイロキシエチルフタル酸無水物、2−アクリロイロキシブチルフタル酸無水物、2−アクリロイロキシエチルマレイン酸無水物、2−アクリロイロキシブチルマレイン酸無水物、2−メタクリロイロキシプロピルコハク酸無水物、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸無水物、2−メタクリロイロキシブチルコハク酸無水物、2−メタクリロイロキシシクロヘキシルコハク酸無水物、2−メタクリロイロキシフェニルコハク酸無水物、2−メタクリロイロキシエチルアジピン酸無水物、2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸無水物、2−メタクリロイロキシブチルヘキサヒドロフタル酸無水物、2−メタクリロイロキシエチルフタル酸無水物、2−メタクリロイロキシブチルフタル酸無水物、2−メタクリロイロキシエチルマレイン酸無水物、2−メタクリロイロキシブチルマレイン酸無水物等を挙げることができる。
【0067】
なお、アクリル(メタクリル)化剤としては、上記した一般式(12)〜(15)で表されるカルボン酸誘導体を単独で使用しても、2種類以上を併用して使用してもよい。カルボン酸誘導体の使用量としては、上記一般式(6)で示される糖誘導体の使用量の0.8〜1.2倍モル量程度でよく、好ましくは0.9〜1.1倍モル量とすればよい。
【0068】
また、上記一般式(6)で表される糖誘導体と一般式(7)で示されるメルカプタン化合物を反応させ、次いでアクリル(メタクリル)化剤、例えば、一般式(12)〜(15)のカルボン酸誘導体を反応させる際には、反応を円滑に進め、一般式(1)で表される重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体を効率よく得る観点から反応溶媒を使用する。反応溶媒としては反応を阻害しないものであればいずれも使用できる。例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、1,1,1,2−テトラクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ノルマルブチル等のエステル類、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶媒、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリイソプロピルアミン、N−メチルジシクロヘキシルアミン、トリアリルアミン、ピリジン、N,N’−ジメチルアミノピリジン、N−メチルモルホリン、N−メチルイミダゾール、N,N’−ジメチルピペラジン、N,N’−ジメチルアニリン、N,N,N’,N’,−テトラメチルエチレンジアミン等の3級アミン類を用いることができる。溶媒は単独で使用してもよくまたは2種類以上を併用しても良い。溶媒の使用量としては特に制限されないが、上記一般式(6)で表される糖誘導体1gに対して1〜30ml程度でよく、好ましくは1〜10mlとすればよい。
【0069】
また、上記一般式(6)で表される糖誘導体と上記一般式(7)で表されるメルカプタン化合物を反応させ、次いで、アクリル(メタクリル)化剤、例えば、一般式(12)〜(15)で表されるカルボン酸誘導体を反応させる際に、目的の反応以外の重合反応が進行してしまう場合には、重合禁止剤を添加して反応を行うことができる。重合禁止剤としては特に制限されず、公知のものがいずれも使用できる。具体的には、例えば、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ハイドロキノンモノエチルエーテル、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルカテコール、ベンゾキノン、ニトロソベンゼン、塩化第2銅、塩化第2鉄を挙げることができる。重合禁止剤は単独で使用してもよく又は2種類以上を併用しても良い。重合禁止剤の添加量は上記一般式(6)で表される糖誘導体の使用量の0.1〜2重量%程度、好ましくは0.3〜1重量%程度とすればよい。
【0070】
また、アクリル(メタクリル)化剤として、例えば、一般式(12)及び(14)で示さるカルボン酸誘導体のような酸ハロゲン化物を使用する場合は、反応を円滑に進行させるために、前記した3級アミンを溶媒として、又は他の溶媒に加えて使用することができる。3級アミンの添加量としては特に制限されないが、通常酸ハロゲン化物の使用量の1〜20倍モルでよく、1〜10倍モルが好ましい。
【0071】
上記一般式(6)で表される糖誘導体と上記一般式(7)で表されるメルカプタン化合物を反応させる際の反応温度は通常−10〜100℃で1〜36時間程度、好ましくは−10〜50℃で1〜24時間程度行われる。次いで、アクリル(メタクリル)化剤、例えば、一般式(12)〜(15)で表されるカルボン酸誘導体を反応させる際の反応温度、反応時間は通常−10〜100℃、好ましくは0〜50℃で1〜24時間程度行われる。
【発明の効果】
【0072】
本発明によれば、糖と重合性置換基を持つ側鎖とがスルフィド結合により結合している化合物、すなわち、重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体及びその重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法を提供することができる。
【0073】
また、本発明に係る重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体は、糖残基を有するとともに、硫黄含有の置換基を有しているため、親疎水性のバランスがとりやすく、糖残基を側鎖に有する硫黄含有重合体の合成に有用なモノマー原料として使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0074】
以下の実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0075】
−実施例1:メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル)−α−D−グルコピラノシドの合成−
100mlフラスコに水素化ナトリウム412mg(9.47ミリモル)とピリジン30mlを加えて氷冷下で撹拌した。この溶液に2−メルカプトエタノール672mg(8.61ミリモル)を氷冷下で滴下し、滴下終了後室温で2時間反応させた後、メチル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコピラノシド3.0g(8.61ミリモル)を添加して室温で8時間、50℃で12時間反応させた。反応終了後、氷冷下でメタクリル酸クロライド901mg(8.61ミリモル)を滴下し、滴下終了後氷冷下で4時間、室温で15時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することでメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル)−α−D−グルコピラノシド0.42gを黄色油状物として得た(収率15%)。このようにして得られた、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル)−α−D−グルコピラノシドの同定データは、以下の通りである。
【0076】
H−NMR(CDCl,400MHz):6.12(s,1H,CH=CCH−),5.57(s,1H,CH=CCH−),4.90(d,1H,アノマー水素),4.71(dd,1H,糖骨格),4.41(dd,1H,糖骨格),4.33(ddd,2H,糖骨格),3.98(dd,1H,糖骨格),3.88(dd,1H,糖骨格),3.78(dd,1H,糖骨格),3.52(dd,1H,糖骨格),3.44(dd,1H,糖骨格),3.38(s,3H,−OMe),3.05(dd,1H,−CH−S−),2.96(dd,1H,−CH−S−),2.78〜2.90(m,2H,−CH−S−),1.93(s,3H,Me)
【0077】
なお、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル)−α−D−グルコピラノシドの生成はピリジン中、室温で無水酢酸を作用させ、トルエンで抽出、水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、有機層を減圧濃縮することで得られるメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドに変換して確認している。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドの同定データは以下の通りである。
【0078】
H−NMR(CDCl,400MHz):6.11(s,1H,CH=CCH−),5.58(s,1H,CH=CCH−),5.52(dd,1H,アノマー水素),4.94(dd,1H,糖骨格),4.82(dd,1H,糖骨格),4.39(dd,1H,糖骨格),4.27〜4.33(m,2H,−C(O)O−CH−),3.93(dd,1H,糖骨格),3.41(s,3H,−OMe),2.84〜2.93(m,2H,−CH−S−),2.67〜2.72(m,2H,−CH−S−),2.08(s,3H,AcO−),2.06(s,3H,AcO−),2.03(s,3H,AcO−),1.96(s,3H,Me)
LC−MS(JEOL AccuTOF JMS−T100LC):449.6628(H
【0079】
−実施例2:メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−グルコピラノシドの合成−
100mlフラスコに水素化ナトリウム412mg(9.47ミリモル)とピリジン30mlを加えて氷冷下で撹拌した。この溶液に2−メルカプトエタノール674mg(8.61ミリモル)を氷冷下で滴下し、滴下終了後室温で2時間反応させた後、メチル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコピラノシド3.0g(8.61ミリモル)を添加して室温で15時間反応させた。反応終了後、氷冷下で2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド2.14g(8.61ミリモル)を滴下し、滴下終了後氷冷下で3時間、室温で18時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することでメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−グルコピラノシド2.23gを褐色油状物として得た(収率56%)。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−グルコピラノシドの同定データは以下の通りである。
【0080】
H−NMR(CDCl,400MHz):6.11(s,1H,CH=CCH−),5.58(d like,1H,CH=CCH−),4.82(d,1H,アノマー水素),4.75(dd,1H,糖骨格),4.24〜4.37(m,7H,糖骨格,−OCHCHO−),3.92(dd,1H,糖骨格),3.66〜3.77(m,2H,糖骨格),3.43〜3.53(m,2H,糖骨格),3.39(s,3H,−OMe),3.03(dd,2H,−CH−S−),2.64〜2.84(m,7H,−OC(O)CHCH(O)CO−,−CH−S−),1.93(s,3H,Me)
【0081】
なお、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−グルコピラノシドの生成はピリジン中、室温で無水酢酸を作用させ、トルエンで抽出、水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、有機層を減圧濃縮することで得られるメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドに変換して確認している。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドの同定データは以下の通りである。
【0082】
H−NMR(CDCl,400MHz):6.09(s,1H,CH=CCH−),5.57(dd like,1H,CH=CCH−),5.41(dd,1H,アノマー水素),4.92(dd,1H,糖骨格),4.84〜4.88(m,2H,糖骨格),4.30(d like,4H,−OCHCHO−),4.18〜4.22(m,2H,糖骨格),3.88〜3.92(ddd like,1H,糖骨格),3.40(s,3H,−OMe),2.63〜2.66(m,2H,−CH−S−),2.59〜2.62(m,6H,−OC(O)CHCH(O)CO−,−CH−S−),2.05(s,3H,AcO−),2.00(s,3H,AcO−),1.98(s,3H,AcO−),1.91(s,3H,Me)
LC−MS(JEOL AccuTOF JMS−T100LC):615.37(Na
【0083】
−実施例3:メチル−6−チオ−(2−チオメタクリルエチルスルファニルエチル)−α−D−グルコピラノシドの合成−
100mlフラスコに水素化ナトリウム417mg(9.56ミリモル)とピリジン30mlを加えて氷冷下で撹拌した。この溶液に2,2’−チオジエタンチオール1.34g(8.68ミリモル)を氷冷下で滴下し、滴下終了後室温で2時間反応させた後、メチル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコピラノシド3.0g(8.61ミリモル)を添加して室温で24時間反応させた。反応終了後、氷冷下で2−メタクリル酸クロライド902mg(8.63ミリモル)を滴下し、滴下終了後氷冷下で2時間、室温で14時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することでメチル−6−チオ−(2−チオメタクリルエチルスルファニルエチル)−α−D−グルコピラノシド1.73gを黄色油状物として得た(収率50%)。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−チオメタクリルエチルスルファニルエチル)−α−D−グルコピラノシドの同定データは、以下の通りである。
【0084】
H−NMR(CDCl,400MHz):6.16(s,1H,CH=CCH−),5.60(d like,1H,CH=CCH−),4.89(d,1H,アノマー水素),3.98(dd,1H,糖骨格),3.70〜3.78(m,3H,糖骨格),3.48〜3.53(m,3H,糖骨格),3.43(s,3H,−OMe),2.67〜2.87(m,10H,−S−CH−),1.94(s,3H,Me)
【0085】
なお、メチル−6−チオ−(2−チオメタクリルエチルスルファニルエチル)−α−D−グルコピラノシドの生成はピリジン中、室温で無水酢酸を作用させ、トルエンで抽出、水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、有機層を減圧濃縮することで得られるメチル−6−チオ−(2−チオメタクリルエチルスルファニルエチル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドに変換し確認している。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−チオメタクリルエチルスルファニルエチル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドの同定データは以下の通りである。
【0086】
H−NMR(CDCl,400MHz):6.09(s,1H,CH=CCH−),5.59(d like,1H,CH=CCH−),5.43(dd,1H,アノマー水素),4.80〜5.00(m,3H,糖骨格),3.91〜3.96(m,1H,糖骨格),3.41(s,3H,−OMe),2.66〜2.85(m,10H,−S−CH−),2.07(s,3H,AcO−),2.05(s,3H,AcO−),2.02(s,3H,AcO−),1.95(s,3H,Me)
LC−MS(JEOL AccuTOF JMS−T100LC):547.45(Na
【0087】
−実施例4:メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルモノチオコハク酸−S−エチルスルファニルエチル)−α−D−グルコピラノシドの合成−
100mlフラスコに水素化ナトリウム413mg(9.46ミリモル)とピリジン30mlを加えて氷冷下で撹拌した。この溶液に2,2’−チオジエタンチオール1.33g(8.62ミリモル)を氷冷下で滴下し、滴下終了後室温で2時間反応させた後、メチル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコピラノシド3.0g(8.61ミリモル)を添加して室温で16時間反応させた。反応終了後、氷冷下で2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド2.14g(8.61ミリモル)を滴下し、滴下終了後氷冷下で2時間、室温で16時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することでメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルモノチオコハク酸−S−エチルスルファニルエチル)−α−D−グルコピラノシド3.52gを黄色油状物として得た(収率75%)。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルモノチオコハク酸−S−エチルスルファニルエチル)−α−D−グルコピラノシドの同定データは、以下の通りである。
【0088】
H−NMR(CDCl,400MHz):6.11(s,1H,CH=CCH−),5.59(s,1H,CH=CCH−),4.82(d,1H,アノマー水素),4.32〜4.34(m,4H,−OCHCHO−),3.92(dd,1H,糖骨格),3.65〜3.78(m,3H,糖骨格),3.40〜3.52(m,3H,糖骨格),3.44(s,3H,−OMe),2.63〜2.90(m,14H,−OC(O)CHCH(O)CO−,−CH−S−),1.93(s,3H,Me)
【0089】
なお、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルモノチオコハク酸−S−エチルスルファニルエチル)−α−D−グルコピラノシドの生成はピリジン中、室温で無水酢酸を作用させ、トルエンで抽出、水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、有機層を減圧濃縮することで得られるメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルモノチオコハク酸−S−エチルスルファニルエチル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドに変換して確認している。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルモノチオコハク酸−S−エチルスルファニルエチル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドの同定データは以下の通りである。
【0090】
H−NMR(CDCl,400MHz):6.11(s,1H,CH=CCH−),5.59(d like,1H,CH=CCH−),5.43(dd,1H,アノマー水素),4.83〜4.97(m,3H,糖骨格),4.32(d like,4H,−OCHCHO−),3.90〜3.95(m,1H,糖骨格),3.42(s,3H,−OMe),2.61〜2.90(m,14H,−OC(O)CHCH(O)CO−,−CH−S−),2.08(s,3H,AcO−),2.05(s,3H,AcO−),2.02(s,3H,AcO−),1.93(s,3H,Me)
LC−MS(JEOL AccuTOF JMS−T100LC):691.50(Na
【0091】
−実施例5:メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシ−4−フェニル)−α−D−グルコピラノシドの合成−
100mlフラスコに水素化ナトリウム416mg(9.53ミリモル)とピリジン30mlを加えて氷冷下で撹拌した。この溶液にパラメルカプトフェノール1.09g(8.61ミリモル)を氷冷下で滴下し、滴下終了後室温で2時間反応させた後、メチル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコピラノシド3.0g(8.61ミリモル)を添加して室温で24時間反応させた。反応終了後、氷冷下で2−メタクリル酸クロライド900mg(8.61ミリモル)を滴下し、滴下終了後氷冷下で2時間、室温で20時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することでメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシ−4−フェニル)−α−D−グルコピラノシド1.69gを黄色油状物として得た(収率53%)。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシ−4−フェニル)−α−D−グルコピラノシドの同定データは以下の通りである。
【0092】
H−NMR:(CDCl,400MHz):7.31(d,2H,芳香環),6.77(d,2H,芳香環),6.16(s,1H,CH=CCH−),5.61(t like,1H,CH=CCH−),4.91(d,1H,アノマー水素),4.72(dd,1H,糖骨格),4.31(dd,1H,糖骨格),3.96(dd,1H,糖骨格),3.78(dd,1H,糖骨格),3.33〜3.56(m,3H,糖骨格),3.37(s,3H,−OMe),3.01(dd,2H,−S−CH−),1.94(s,3H,Me)
【0093】
なお、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシ−4−フェニル)−α−D−グルコピラノシドの生成はピリジン中、室温で無水酢酸を作用させ、トルエンで抽出、水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、有機層を減圧濃縮することで得られるメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシ−4−フェニル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドに変換して確認している。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシ−4−フェニル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドの同定データは以下の通りである。
【0094】
H−NMR(CDCl,400MHz)7.47(d,2H,芳香環),7.02(d,2H,芳香環),6.10(t like,1H,CH=CCH−),5.59(t like,1H,CH=CCH−),5.52(dd,1H,アノマー水素),4.96〜5.01(m,2H,糖骨格),4.83(dd,1H,糖骨格),3.95〜4.01(m,1H,糖骨格),3.37(s,3H,−OMe),3.04(d like,2H,−S−CH−),2.09(s,3H,AcO−),2.08(s,3H,AcO−),2.03(s,3H,AcO−),1.96(s,3H,Me)
LC−MS(JEOL AccuTOF JMS−T100LC):519.47(Na
【0095】
−実施例6:メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸−4−フェニル)−α−D−グルコピラノシドの合成−
100mlフラスコに水素化ナトリウム413mg(9.46ミリモル)とピリジン30mlを加えて氷冷下で撹拌した。この溶液にパラメルカプトフェノール1.09g(8.61ミリモル)を氷冷下で滴下し、滴下終了後室温で2時間反応させた後、メチル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコピラノシド3.0g(8.61ミリモル)を添加して室温で24時間反応させた。反応終了後、氷冷下で2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド2.14g(8.61ミリモル)を滴下し、滴下終了後氷冷下で2時間、室温で15時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することでメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸−4−フェニル)−α−D−グルコピラノシド3.61gを黄色油状物として得た(収率82%)。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸−4−フェニル)−α−D−グルコピラノシドの同定データは、以下の通りである。
【0096】
H−NMR(CDCl,400MHz):7.31(d,2H,芳香環),6.77(d,2H,芳香環),6.10(s,1H,CH=CCH−),5.58(s like,1H,CH=CCH−),4.83(d,1H,アノマー水素),4.76(dd,1H,糖骨格),4.29〜4.35(m,6H,−OCHCHO−,糖骨格),3.90(dd,1H,糖骨格),3.77(dd,1H,糖骨格),3.33〜3.51(m,2H,糖骨格),3.37(s,3H,−OMe),2.85(dd,1H,−S−CH−),2.74(dd,1H,−S−CH−),2.61〜2.70(m,4H,−OC(O)CHCH(O)CO−),1.92(s,3H,Me)
【0097】
なお、メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸−4−フェニル)−α−D−グルコピラノシドの生成はピリジン中、室温で無水酢酸を作用させ、トルエンで抽出、水で洗浄、無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、有機層を減圧濃縮することで得られるメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸−4−フェニル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドに変換して確認している。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸−4−フェニル)−α−D−トリアセトキシグルコピラノシドの同定データは以下の通りである。
【0098】
H−NMR(CDCl,400MHz):7.47(d,2H,芳香環),7.03(d,2H,芳香環),6.11(s,1H,CH=CCH−),5.58(t like,1H,CH=CCH−),5.43(t like,1H,アノマー水素),4.87〜4.98(m,3H,糖骨格),4.32〜4.36(m,4H,−OCHCHO−),3.94〜4.01(m,1H,糖骨格),3.38(s,3H,−OMe),3.00〜3.04(dd,4H,−S−CH2−),2.60〜2.68(m,4H,−OC(O)CHCH(O)CO−),2.08(s,3H,AcO−),2.01(s,3H,AcO−),2.00(s,3H,AcO−),1.93(s,3H,Me)
LC−MS(JEOL AccuTOF JMS−T100LC):663.55(Na
【0099】
−実施例7:メチル−6−チオ−(2−アクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−グルコピラノシド−
100mlフラスコに水素化ナトリウム412mg(9.44ミリモル)とピリジン30mlを加えて氷冷下で撹拌した。この溶液に2−メルカプトエタノール672mg(8.60ミリモル)を氷冷下で滴下し、滴下終了後室温で2時間反応させた後、メチル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコピラノシド3.0g(8.61ミリモル)を添加して室温で12時間反応させた。反応終了後、氷冷下で2−アクリロイロキシエチルコハク酸クロライド2.02g(8.60ミリモル)を滴下し、滴下終了後氷冷下で2時間、室温で15時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することでメチル−6−チオ−(2−アクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−グルコピラノシド2.42gを褐色油状物として得た(収率62%)。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−アクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−グルコピラノシドの同定データは、以下の通りである。
【0100】
H−NMR(CDCl,400MHz):6.40(d,1H,CH=CH−),6.11(dd,1H,CH=CH−),5.83(dd,1H,CH=CH−),4.83(d,1H,アノマー水素),4.71(dd,1H,糖骨格),4.20〜4.35(m,7H,糖骨格,−OCHCHO−),3.91(dd,1H,糖骨格),3.69〜3.73(m,2H,糖骨格),3.41〜3.51(m,2H,糖骨格),3.40(s,3H,−OMe),3.01(dd,2H,−CH−S−),2.60〜2.79(m,7H,−OC(O)CHCH(O)CO−,−CH−S−)
【0101】
−実施例8:メチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸エチル)−α−D−グルコピラノシドの合成−
100mlフラスコに水素化ナトリウム410mg(9.40ミリモル)とピリジン30mlを加えて氷冷下で撹拌した。この溶液に2−メルカプトエタノール672mg(8.60ミリモル)を氷冷下で滴下し、滴下終了後室温で2時間反応させた後、メチル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−グルコピラノシド3.0g(8.61ミリモル)を添加して室温で16時間反応させた。反応終了後、氷冷下で2−メタクリロイロキシヘキサヒドロフタル酸クロライド2.61g(8.61ミリモル)を滴下し、滴下終了後氷冷下で2時間、室温で15時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することでメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸エチル)−α−D−グルコピラノシド3.50gを褐色油状物として得た(収率78%)。このようにして得られたメチル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸エチル)−α−D−グルコピラノシドの同定データは、以下の通りである。
【0102】
H−NMR(CDCl,400MHz):6.11(s,1H,CH=),5.57(m,1H,CH=),4.81(d,1H,アノマー水素),4.72(dd,1H,糖骨格),4.67(dd,1H,糖骨格),4.54(dd,1H,糖骨格),4.33〜4.35(m,1H,糖骨格),4.28〜4.34(m,6H,糖骨格,−O−CH−CH−O−),4.13(d,1H,糖骨格),3.82(m,1H,糖骨格),3.73(dd,1H,糖骨格),3.64(d,1H,糖骨格),3.50(dd,1H,糖骨格),3.34(−OMe),2.90〜3.03(m,3H,−CH−S−,シクロヘキサン骨格),2.70〜2.85(m,3H,−CH−S−,シクロヘキサン骨格),1,96〜2.15(m,2H,シクロヘキサン骨格),1.93(s,3H,−Me),1.59〜1.84(m,2H,シクロヘキサン骨格),1.49〜1.57(m,2H,シクロヘキサン骨格),1.28〜1.46(m,2H,シクロヘキサン骨格)
【0103】
−実施例9:ベンジル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−マンノピラノシドの合成−
30mlフラスコに水素化ナトリウム114mg(2.61ミリモル)とピリジン10mlを加えて氷冷下で撹拌した。この溶液に2−メルカプトエタノール183mg(2.34ミリモル)を氷冷下で滴下し、滴下終了後室温で2時間反応させた後、ベンジル−6−O−パラトルエンスルホニル−α−D−マンノピラノシド1.0g(2.36ミリモル)を添加して室温で10時間反応させた。反応終了後、氷冷下で2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド587mg(2.36ミリモル)を滴下し、滴下終了後氷冷下で3時間、室温で11時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することでベンジル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−マンノピラノシド845mgを褐色油状物として得た(収率66%)。このようにして得られたベンジル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−α−D−マンノピラノシドの同定データは、以下の通りである。
【0104】
H−NMR(CDCl,400MHz):7.25〜7.35(m,5H,芳香環),6.11(s,1H,CH=),5.58(s,1H,CH=),4.88(d,1H,アノマー水素),4.66(dd,1H,糖骨格),4.5(dd,1H,糖骨格),4.51(d,2H,CHPh),4.23〜4.35(m,6H,糖骨格,−O−CH−CH−O−),4.18(dd,1H,糖骨格),4.05〜4.11(m,1H,糖骨格),3.82〜3.95(m,3H,糖骨格),3.64〜3.78(m,2H,糖骨格),3.01(dd,2H,−CH−S−),2.60〜2.79(m,7H,−OC(O)CHCH(O)CO−,−CH−S−),1.92(s,3H,−Me)
【0105】
−実施例10:フェニル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−β−D−グルコピラノシドの合成−
20mlフラスコに水素化ナトリウム58mg(1.33ミリモル)とピリジン5mlを加えて氷冷下で撹拌した。この溶液に2−メルカプトエタノール94mg(1.20ミリモル)を氷冷下で滴下し、滴下終了後室温で2時間反応させた後、フェニル−6−O−パラトルエンスルホニル−β−D−グルコピラノシド496mg(1.21ミリモル)を添加して室温で14時間反応させた。反応終了後、氷冷下で2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド298mg(1.20ミリモル)を滴下し、滴下終了後氷冷下で3時間、室温で15時間反応させた。反応終了後、トルエンで抽出、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。有機層を減圧濃縮することでフェニル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−β−D−グルコピラノシド269mgを褐色油状物として得た(収率42%)。このようにして得られたフェニル−6−チオ−(2−メタクリロイロキシエチルコハク酸エチル)−β−D−グルコピラノシドの同定データは、以下の通りである。
【0106】
H−NMR(CDCl,400MHz):7.23(t,2H,芳香環),6.94〜7.02(m,3H,芳香環),6.09(s,1H,CH=),5.57(s,1H,CH=),4.87(d,1H,アノマー水素),4.47(dd,1H,糖骨格),4.21〜4.40(m,2H,糖骨格),4.26〜4.32(m,6H,糖骨格,−O−CH−CH−O−),3.71〜3.83(m,2H,糖骨格),3.63〜3.68(m,2H,糖骨格),3.59〜3.66(m,1H,糖骨格),3.53〜3.57(m,1H,糖骨格),3.03(dd,2H,−CH−S−),2.63〜2.77(m,7H,−OC(O)CHCH(O)CO−,−CH−S−),1.93(s,3H,−Me)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1);
【化1】

(式中、Gは糖残基を示す。Rは水素原子又はメチル基を示す。Lは2価の連結基を示す。Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。)で示される重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体。
【請求項2】
上記一般式(1)においてLで示される2価の連結基が、下記一般式(2)〜(5)のいずれかで示される2価の連結基である請求項1に記載の重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体。
【化2】

(式中、Rは2価の炭化水素基を示す。)
【化3】

(式中、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。nは、1以上の整数を示す。)
【化4】

(式中、R、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。A、Aはそれぞれ独立に硫黄原子又は酸素原子を示す。)
【化5】

(式中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。A、A、Aはそれぞれ独立に硫黄原子又は酸素原子を示す。)
【請求項3】
下記一般式(6);
【化6】

(式中Gは糖残基を示し、Xは脱離基を示す。)で示される糖誘導体と、下記一般式(7);
【化7】

(式中、Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。Lは2価の連結基を示す。)で示されるメルカプタン化合物とを反応させた後、アクリル(メタクリル)化剤を反応させて、下記一般式(1);
【化8】

(式中、Gは糖残基を示す。Rは水素原子又はメチル基を示す。Lは2価の連結基を示す。Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。)で示される重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体を得る工程を含むことを特徴とする重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法。
【請求項4】
上記一般式(6)においてXで示される脱離基が、ハロゲン原子、もしくは下記一般式(8)又は(9)で示される脱離基である請求項3に記載の重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法。
【化9】

(式中、Rはニトロ基、ハロゲン原子を含んでいてもよい1価の炭化水素基を示す。)
【化10】

(式中、Rはニトロ基、ハロゲン原子を含んでいてもよい1価の炭化水素基を示す。)
【請求項5】
上記一般式(7)においてLで示される2価の連結基が下記一般式(10)又は(11)で示される2価の連結基である請求項3又は請求項4に記載の重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法。
【化11】

(式中、Rは2価の炭化水素基を示す。)
【化12】

(式中、R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。Aは硫黄原子又は酸素原子を示す。nは、1以上の整数を示す。)
【請求項6】
前記アクリル(メタクリル)化剤として、下記一般式(12)〜(15)で表されるカルボン酸誘導体からなる群より少なくとも1つが選択されることを特徴とする請求項3乃至請求項5のいずれか一つに記載の重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法。
【化13】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。Yは、ハロゲン原子、水酸基、又は有機残基を示す。)
【化14】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。)
【化15】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。Yは、ハロゲン原子、水酸基、又は有機残基を示す。)
【化16】

(式中、Rは水素原子又はメチル基を示す。R、Rはそれぞれ独立に2価の炭化水素基を示す。)
【請求項7】
前記アクリル(メタクリル)化剤が、メタクリル酸クロライド、2−メタクリロイロキシエチルコハク酸クロライド、2−アクリロイロキシエチルコハク酸クロライド、及び2−メタクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸クロライドからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか1つに記載の重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法。
【請求項8】
前記メルカプタン化合物が、2−メルカプトエタノール、2,2’−チオジエタンチオール、及び4−メルカプトフェノールからなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする請求項3乃至請求項7のいずれか1つに記載の重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体の製造方法。
【請求項9】
少なくとも請求項1又は請求項2に記載の重合性置換基を有する硫黄含有糖誘導体をモノマー原料として用いて合成された重合体。

【公開番号】特開2009−249368(P2009−249368A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−102409(P2008−102409)
【出願日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【出願人】(000222554)東洋化成工業株式会社 (52)
【Fターム(参考)】